2021年2月24日 衆院予算委員会公聴会 コロナ対策準備早く
衆院予算委員会が24日に行った来年度予算案に関する中央公聴会で、日本共産党の宮本徹議員は、政府の新型コロナウイルス対策の反省点や金融政策について質問しました。
意見陳述した東京大学の岩本愛吉名誉教授は、国際的な流行状況を把握するための各国との情報共有や、ウイルスの遺伝子解析、科学技術を駆使した対策の重要性を指摘。「公的機関のPCR検査の能力は、昨年1年間にさほど強化されなかった」と述べ、「地方ブロックで保健所や地方衛生研究所の機能を集約するセンターが必要だ。少なくとも首都圏や関西圏では、機動的かつ大量の検査に耐えられる備えが必要だ」と提起しました。
宮本氏は、第1波当時の水際対策の失敗を質問。岩本氏は、「欧州で増え始めたウイルスを国内で研究する体制が遅れた。今後大事なのは、そういう準備や省庁間の連絡を密にすることだ」と述べました。
宮本氏は、東京五輪・パラリンピックの防疫体制についても尋ね、岩本氏は「選手の気持ちを考えれば成功させたいと思う一方、どれくらい日本の(感染)状況を抑えられるのか、世界の国々に納得してもらえるかのバランスも非常に大事だ」と答えました。
宮本氏は、金融政策をめぐり、日本銀行が民間企業の株(ETF)を大量に買って株価を下支えしている現状を問題視。大正大学の小峰隆夫教授は「日銀による株や国債の大量購入は非常時に限られるべきで、金融政策依存から徐々に脱却するべきだ」と応じました。
以上2021年2月25日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2021年2月24日 衆院予算委員会公聴会 議事録≫
○金田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。令和三年度総予算についての公聴会を続行いたします。この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。令和三年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。御意見を賜る順序といたしましては、まず小峰隆夫公述人、次に原田泰公述人、次に岩本愛吉公述人、次に逢見直人公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。それでは、小峰公述人にお願いいたします。
○小峰公述人 大正大学の小峰と申します。本日は、こういう場で意見を申し述べる機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。私のメモをお配りしてあると思いますので、これに基づいてお話をさせていただきます。 私は、マクロ経済が専門でございますので、日本経済全体がどうなっているか、その中で経済政策がどういう課題に直面しているかということについてお話ししたいと思います。まず一番目、コロナ危機下での日本経済についての基本認識ということですけれども、これは皆さん御承知のとおり、GDP成長率は、ほとんど毎期、非常に上がったり下がったり、非常に激しい変動を繰り返しております。この非常に大きな変動というのは大きな特徴で、このグラフにありますように、年率で二九%も下がったかと思うと、二二%もプラスになるといったような動きがありますし、最新の十―十二月期も、この資料は予測の資料ですのでちょっと古いんですけれども、非常に高い成長率になった後、現在は恐らくマイナス成長、一―三月期はマイナス成長だろうというふうに言われています。したがって、今どういう政策があるべきかというときに、分かっている資料はちょっと違う資料が出てきているということで、もう少し長い視野で、中長期的な視野で考えていくということが必要だというふうに思います。それから、生産面の動きですけれども、ここにグラフがありまして、図二の左側が鉱工業生産、右側が第三次産業ということで、サービス業中心の第三次産業なんですけれども、リーマン・ショックのときと比べますと、リーマン・ショックが青、今回のコロナショックが赤という区別になっておりますけれども、製造業の方は、鉱工業の方は、リーマン・ショックも今回も大きく落ち込んでいるんですけれども、第三次産業の方は、リーマン・ショックのときにはほとんど落ち込みがない、横ばいぎみなんですけれども、今回はこれが大きく落ち込んだ。この第三次産業の落ち込み、これは言うまでもなく、旅行業とか外食業のような対面型サービスが非常に落ちたということが大変大きな特徴で、ということは、こういった第三次産業は、これまでこれほど大きな落ち込みを経験したことがなかったということで、更にショックが大きかったのではないかというふうに推察されます。次に、二ページ目に行っていただきまして、所得面の動きについて申し上げたいと思います。これは、GDPの所得面の動きというのが二年ぐらい前から新たに公表されるようになりまして、四半期の動きが分かるようになってきております。これを見ますと、特にコロナショックの影響が大きかった昨年の四―六月の動きを見ますと、ここで赤い丸で囲んでありますけれども、一番左の雇用者報酬、これは賃金ですね、賃金は大きく減っております。十一・一兆円。これは年率ですので、実際はこの四分の一になるんですけれども、年率で十一・一兆円減っている。これは言うまでもなく、雇用機会が失われたり、ボーナスが減ったり、残業時間が減ったりということで大きく落ちたわけです。ところが、その他の経常移転というのが三十九・五兆円も増えている。これは、十万円の給付、これがありましたので、大きく増えた。その結果、可処分所得、使えるお金は三十・五兆円も増えているということです。一方で、家計の最終消費、これはさっき、GDPが大きく落ちたときに消費は大きく落ちました。つまり、所得は大きく増えて、消費は大きく減った。そのため何が起きたかというと、貯蓄が大幅に増えているという結果になっております。四―六月期の貯蓄率が一番右にありますが、これが何と二一・八%というほとんど見たことがないような高い貯蓄率という結果になっております。七―九月期は、これは若干その程度は弱まっておりますが、貯蓄率は依然として一一・三%と高いという結果になっております。それから、雇用面の動きですけれども、これも皆さん御承知だと思いますが、雇用機会は大幅に減ったんですけれども、企業内の休業者、これは雇用調整助成金等の効果だと思いますが、企業内の休業者と、それから、特に非正規を中心に、非正規の女性が中心だと思いますが、雇用機会が失われた結果、求職活動を諦めて家庭に戻ったという方が非常に多かったために、結果的に失業者としては余り大きく増えなかったという形で、雇用面のパニックは防げたという結果になっていると思われます。それから、5に景気の認識というのがありますが、景気というのは通常は方向で判断する、つまり、上を向いているか、下を向いているかということで判断します。そうしますと、現在は上を向いておりますので、景気回復期という認識になります。これは、専門家の意見を聞くアンケートがあるんですけれども、第一線のエコノミストは、これはもうほとんど全員、昨年の五月が景気の底だったという認識を持っている。私もそう思っています。しかし、6にありますように、これはGDPの水準を見たもので、まだ途中段階ですので、将来予測を専門家の予測で入れてあるんですけれども、これを見ますと、来年の四―六月期まではコロナショックの前のレベルを下回るという状況が続くというふうに予想されています。したがって、景気認識の方向としてはプラス方向で、成長率は高いということなんですけれども、水準としてはコロナ前をなかなか上回れないという水面下の状況がまだしばらく続くということになると思います。そうしますと、多くの経済主体は、例えば、今よりももっとボーナスがよかったときがある、今よりももっと売上げが大きかったときがあるという認識でずっとこれからしばらくの間続きますので、景気は回復局面だというふうにいってもなかなか実感を得られないというところになるのではないかというふうに考えられます。次に、三ページ目以降で、コロナ危機への政府の政策対応をどう考えるかということについて、私の考えを申し上げます。これについては、私の基本認識は、コロナ危機というのは三つのフェーズがありますので、そのフェーズに基づいた政策が必要だという考え方をしております。フェーズ1というのは、これは今詳しく説明した昨年の四―六月期、緊急事態のときですけれども、これは、感染防止のために経済活動を抑制しなければいけない時期だったというふうに考えられます。フェーズ2というのは、感染症の広がりを抑えつつ、経済活動もある程度拡大させていくという、両者のバランスを取っていくべき時期ということで、これが昨年の七―九月期以降、現在まで続いているという認識になります。フェーズ3は、感染症がワクチン等で抑えられて、新たな歩みを始めるときということで、残念ながら、これがいつになるかというのはまだ分かりません。こういう認識ですと、当面はフェーズ1、フェーズ2、今はフェーズ2だと思いますけれども、フェーズ2のときには何が必要かというと、一時的なショック、これは所得面のショック、売上げの低下、いろいろあると思いますが、一時的なショックが永続的な傷として残らないような政策というのが中心になるというふうに思います。当面、さっき申し上げましたように、水面下の経済が続いて、多くの人が満足できない経済ということになると思いますけれども、だからといって、通常の景気後退期のように、財政金融面で需要を刺激して景気をよくしようという方向はなかなか取りにくい、経済が活動すると今度は感染症が拡大してしまうという矛盾がありますので、通常の景気政策というのはなかなか取りにくい局面にあるというふうに私は考えております。本格的な景気刺激策は、成長政策はフェーズ3以降の課題になると思いますけれども、そのときには恐らく、今まで旅行に行きたくても行けなかったとか、買いたくても買えなかった、外食に行きたくても行けなかったという需要、これが、抑圧されていた需要ということで、ペントアップディマンドという考え方があります。このペントアップディマンドが何もしないでも恐らく相当出てくるということですので、それを見極めながら景気対策を考えていくということが必要だと思います。それから、(2)の財政面での対応ということですけれども、先ほど申し上げましたように、フェーズ2の段階におきましては、一時的な雇用調整が長期的な失業につながらないようにする、それから、一時的な経営危機が長期的な廃業とか倒産につながらないようにするということが重要だということで、困窮分野に一時的な所得補填をしたりつなぎ融資をしたりというようなことが基本になるというふうに思いまして、この点は今のところ、比較的うまくいっているのではないかというふうに判断をしております。ただ、こういう危機にあっては、各方面から、こういうことにもお金を使ってくれ、ああいうことにもお金を使ってくれという財政への歳出面での拡大要求が相次ぐということで、これをなかなか拒否するのが難しいというような局面になると思うんですけれども、そういったときであるからこそ、しばしば言われます、賢明な支出、ワイズスペンディングとか、それから証拠に基づく政策立案、EBPM、こういった考え方をなるべく重視していくという姿勢が必要だろうというふうに考えております。それから、このコロナへの対応が将来世代への負担として長く残らないようにするという視点も重要だと思いますので、例えば、コロナ関係の歳出を別建てにしておいて、将来、コロナ危機が終息した後、これは誰でも嫌がるんですけれども、増税等によってこれを回収していくということで、将来世代に負担を残さないという視点も必要であろうというふうに思います。それから、やや個別の問題になりますけれども、これまでの政策的対応の中で幾つかの課題が出てきているというふうに思います。一つは、景気対策がこれまでも既に打たれておりますが、そういった中で、非常に大規模な財政支出が行われていることをどう考えるかということです。これは、先ほど申し上げましたように、通常の景気後退期のように、景気が悪いから財政面から需要を増やすという考え方は、単純にはなかなかいかないのではないかということで、四ページ目にありますように、特に、こういった議論をするときに、マクロの需給ギャップ、潜在的なGDPと実際のGDPの差がどれぐらいあるかという需給ギャップに基づいて財政の規模感を考えていくという発想が出てくるんですけれども、これは余り適切な議論ではないんじゃないかというふうに私は考えております。それから、全国民への十万円給付というのが行われたわけですが、これはなかなか、お金に色がついているわけではないので、この十万円がどういうふうに使われたかというのを追跡するのはほとんど不可能だというふうに思うんです。しかし、先ほど国民所得の貯蓄と支出のバランスを見ていただきましたとおり、少なくとも給付の大部分は貯蓄に回ったのではないかという可能性が高いと私は思いますので、今後同じような措置を取るのであれば、これはなかなか、どうやるんだと言われても私も名案はないんですけれども、何らかの手段で困窮世帯に的を絞るというような発想の方が適当ではないかというふうに考えております。それから、GoToキャンペーンについてですけれども、これは私はかなり批判的な意見を持っておりまして、皆様の中にはこれを推進している方も多いと思いますので大変恐縮なんですが、一人の学者の意見として申し上げさせていただきますけれども、経済学的には、現在の段階での外食をするとか旅行に行くというのは、外部不経済、つまり、他人に迷惑をかける行為だというふうに分類されるわけですね。これは、ただ、いつまでもそうではなくて、コロナが終息すれば普通のことで、外部不経済じゃないんですけれども、現在は外部不経済だというふうに認識されます。そうすると、非常に教科書的に考えると、外部不経済に対してはどうしたらいいかというと、外部不経済を出している人に罰金なり課税をしてそれを抑えるか、出さないで我慢している人に補助金を出すかという政策が考えられるということですが、GoToキャンペーンは、残念ながら、外部不経済を出している人に補助金を出すという政策になってしまっているというのが大変難しいところだなというふうに思います。それで、これは私も机上の空論であるということは十分承知しておりまして、恐らくこの中でも賛成してくれる方はいないと思いますけれども、私の理想の政策は、旅行とか外食に課税をして、その得られた収入で業者を直接救うというのが理論的には一番いいんじゃないかというのが私の考えです。これをやりますと、感染の防止、それから被害の救済、それから財政赤字の防止という三つが同時達成できるということですので、一応申し上げておきます。それから、三番目は、ここから先は余り今日のテーマと関係ありませんので簡単に触れますけれども、ポストコロナの日本経済というのを考えたときに、コロナショックによって、これまでの課題がもっと厳しくなるという面と、これまでやろうと思ってできなかったことができるようになってくるという両方があると思います。前者については、これからもっと力を入れて取り組まなければいけませんし、後者については、その流れを積極的に生かしていくということが必要だというふうに思います。前者の従来から直面していた課題がもっと難しくなるという点については、一つは財政再建ということで、これは、これだけの財政支出がありましたので、これをどうするかという議論がいずれ必要だ、その際には、コロナ危機後の経済展望というのを踏まえて財政再建への道を描き直すということが必要だろうというふうに思います。それから、持続的な社会保障を維持していくということも、これまでも重要だったんですけれども、これからもそれは変わりません。このためには、給付を削ったり、拠出を求めたりとか、増税をしたりとか、何らかの国民負担を求めざるを得ないということですが、これがコロナ危機の中ではなかなかそういう議論は出にくいということだろうと思います。それから、金融政策に関係しますけれども、コロナ危機でまた物価が下がりましたので、デフレからの脱却というのが更に難しくなったということがあります。それから、望ましい方向に転ずるきっかけになったという面もありまして、これは最後のページになりますけれども、ここでは二つ指摘しております。一つは、雇用の、働き方改革の面で、従来の日本の働き方はメンバーシップ型だというふうに言われていて、これが、少子化とか生産性だとか労働移動だとか男女共同参画だとか、そういった政策目標と余り相性がよくないというふうに言われてきておりました。多くの経済の専門家は、これをなるべくジョブ型にしていくということが必要だというふうに言っていたんですが、これは要するに、いわゆる終身雇用的な慣行をなるべくなくしていこうという方向ですので、なかなか多くの人の合意を得るのは難しいということでしたが、現在進んでおりますコロナ危機でテレワークが普及してきて、このテレワークがジョブ型と非常に相性がよいということが分かってきて、多くの企業がジョブ型への移行というのを真剣に考え始めているということだろうと思います。それから、これは言うまでもなく、デジタル化がこれまでいかに遅れてきたかということが今回のコロナ危機で非常に鮮明になったということで、これは、問題点が分かってきたわけですから、是非その問題点を解消してデジタル化を推進すべきだというふうに思います。以上で私の意見の陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
○金田委員長 ありがとうございました。次に、原田公述人にお願いいたします。
○原田公述人 名古屋商科大学ビジネススクールの原田でございます。本日は、このような機会を与えていただきまして、大変ありがとうございます。私がこれからお話ししますのは、現状の予算とか現状の財政支出とは全く異なる新しいアイデアを提供するということで、ベーシックインカムについてお話しさせていただきます。ベーシックインカムといいますのは、全ての人に最低限の健康で文化的な生活をするための所得を給付して、貧困をなくすというものであります。一時、議論が盛り上がったこともございますが、最近停滞していたと思うんですけれども、十万円の給付というのがありまして、これが概念的にベーシックインカムと似ているのではないかという議論がありまして、再び注目されるようになったのではないかというように思います。ここでお話しするのは、私の、スライドの二に書いてあります私の著書と、それから、その後の状況の進展によって新たに考えたことをお話ししたいと思います。スライドの三で、一ページにスライドが二つありますので、二ページ目がスライドの三になりますけれども、ベーシックインカムに対する反論というのはあるわけで、なぜ給付しないといけないのかということですけれども、それは、憲法二十五条は生存権を保障すると言っておりますので、憲法二十五条を実現するためには必要なものだということであります。憲法二十五条に反対している政党、国会議員の方というのはいらっしゃらないと思います。ただでさえ財政赤字がひどいのに、更にとんでもないことになるという批判がありますけれども、私の考えでは、既にしていることを別の形で効率的にするだけですので、ひどくはならないというように考えております。それから、三番目の批判として、貧困は、単に所得がないことから生まれるのではなくて、仕事がない、社会から排除されるなどの社会的な根深い問題である、だから、この人々に寄り添って手当てをすることが必要で、単にお金を配って解決することはできないという批判があります。ただし、じゃ、この人々に寄り添って実際に個別に手当てをすることが可能なのか、そういうことができているのかということを問う必要があると思います。スライドの四ですけれども、その一番下に書いておりますが、生活保護水準以下の所得で暮らしている方は人口の一三%おります。実際に保護を受けている人は全人口の一・六%しかありません。ですので、私は、この一三%の人を助けるということが大事だ、つまり給付の普遍化こそが大事だというように考えております。次の、スライドの五にありますが、ベーシックインカムの思想というのは昔からあるわけなんですけれども、基本的に、財政的に考えますと問題があります。つまり、ベーシックインカム、BIの水準を高くすると、当然、税金を払ってくれる人がどんどん減ってしまって財政支出ばかり増えてしまうということになります。財政赤字を減らそうとすれば、ベーシックインカムの基準はある程度低く抑えなければいけないということになります。その下の六ページのグラフを見ていただきたいんですけれども、これは、給与所得者の所得階級別の分布と総所得を描いたものです。青が人数で、それで総所得が赤で描いてあります。つまり、例えば、所得が四百万円ぐらいの人は八百万人弱いるという意味です。そうしますと、ここで、所得が五百万円ぐらいのところで給料をもらっている人が一番多くて、その後減っていくということになります。この赤は、人数と所得を掛けたものです。そうしますと、五百万円から六百万円ぐらいのところでいっぱい所得があって、その後どんどん減っていって、一千万円から二千万円のところでちょっと膨らんでおりますけれども、その後、余り増えていかない。つまり、お金持ちから税金を取ればいいといっても、お金持ちは少ないので、税金をいっぱい取るためには、真ん中ぐらいの人から取らないと税金は足りないということになります。一千万から二千万ぐらいの人たち、そこにもかなりの山がありますので、最近のいろいろな税改正では、この辺りの人を狙ったような、いろいろな手練手管で多少税金を取ろうとされているようですけれども、やはり、本格的に税収を上げようとすれば、この中間の人たちから税金を取るしかない。そうしないと財政的にはうまくいかないということがあります。これが、ベーシックインカムのレベルを少しでも高くすると、一挙に税収が減って、税収がというか、財政赤字が増えてしまって、低くしておけば財政赤字は増えない、あるいは減らすこともできる、そういうことになります。では、ベーシックインカムが実現できない理由を考えてみますと、それは、所得再分配の程度と、生活保護とかそういうもののパターナリズムをどう理解するかということから対立点が生まれるのではないかというように思っております。金額についての合意が得られないというのがまず第一ですね。このベーシックインカムを負の所得税という形で提案したミルトン・フリードマンによると、平均所得の十分の一をベーシックインカムにすれば、それで貧困をなくせると言っております。ただし、そう考えると、日本の場合、年に四十万円配ればいいということになります。年に四十万円であれば財政的に全く問題ありませんが、これでは当然、足りないという多くの批判があると思います。一方、トービンという、フリードマンとは違って、もうちょっと左側の人で、貧しい人の生活をもっとよくしないといけないというように考える学者ですけれども、彼によれば、その倍ぐらいの水準でベーシックインカムを考えておりました。そうしますと、金額によって、足りる足りない、どのぐらいの税金が必要かというのが非常に大きく変わってきますので、これをどうするんだということで、なかなか合意が得られない。もう一つは、福祉政策について、現行の福祉政策は、家父長的な発想が根強いのではないかという気がいたします。貧しい人は、勤労意欲や態度、生活習慣に問題があるから貧しいのであって、それゆえ、彼らを教育し、正しい生活態度を身につけさせなければいけない、こういう考え方があると思うんですね。ただ、では、これをどうやってやるのか、その行政コストはどうなるのかという問題がありまして、実際には一千万以上の人々に何らかの形の生活保護をすることが必要だと思うんですけれども、現実には百数十万人の人にしかできていないということがあります。それは、行政能力の限界を超えているからだと思います。次に、スライドをめくっていただきまして、スライドの十になりますけれども、ベーシックインカムは実現できるかということになります。月七万円程度であればこれは可能ということになりまして、これは私が本に書いて、細かい計算はその本に書いてあるんですけれども、一部は次のスライドで説明できます。月七万円で、余り水準が高くないベーシックインカムの制度であれば実現可能だというように思います。ただし、現行の生活保護水準と比べてこれが極端に低いかというと、そうではないわけでありまして、月七万円というのは都市部では非常に低いものになってしまいますけれども、町村部ではそんなことはない。町村部の生活保護水準というのは、大人二人と子供二人で二十・九万円ぐらいです。私の提案しているBI、ベーシックインカムでは、大人七万円で子供三万円ですので、月二十万円ですので、町村部のレベル、生活保護のレベルと余り変わらないということです。何でこの金額が正当化できるかといいますと、私は四つ理由があります。一つは、日本の生活保護水準はイギリス、フランス、ドイツよりも二、三割高いということがあります。まあ、これは余り皆様は信じてくださらないんですけれども、事実であります。それから、日本の生活保護水準は高いけれども、実際に保護を受けている人は少ない、これは前にも言ったことであります。それから、生活保護水準を都市部で高くして、町村部で低くする理由はないということがあります。つまり、自分の生活しやすいところに行って生活すればいいからです。それから、生活保護を受給させ、その一部を取り上げて利益を得るという貧困ビジネスが成立しているということですので、この水準が低過ぎるということはないと思います。給付の実現性については、スライドの十一にあって、それから十二にもありますが、これは、まず、二十歳以上の人口に月七万円、二十歳未満の人口に月三万円支払いますと、九十六・三兆円の予算が必要になります。そうすると、現在の予算が百兆円ぐらいですから、じゃ、倍にするのかという話になるわけですけれども、現在の所得に三〇%の税率で課税すると七十七・三兆円入ってまいります。ですので、不足額は九十六・三兆円から七十七・三兆円を引いて現行の所得税収を足したもの、つまり三十三兆円が不足額ということになります。この不足額を、例えば、老齢基礎年金とか児童手当とか雇用保険とか、そういうようなものを削って出す。あとは、一般会計のうち雇用維持、生活維持のために現実には使われているのではないのかと思ったところから引いていくと、三十三兆円の代替財源はあるという結論になっておりますが、これは、例えば公共事業を削るとかいう話ですので、なかなか賛同は得られないと思いますが、実際問題として、仕事あるいは所得をつくるためのいろいろな予算がありますので、それはある程度削減できるのではないかということであります。それから、私の数字は二〇一二年度の数字なんですけれども、その後経済が成長しておりますので、三十三兆円足りないと申し上げましたけれども、現在足りないのは二十七兆円というようになっておりますので、成長すればベーシックインカムの財政的な制約は楽になるということが言えると思います。十二ページは、ベーシックインカムの代替予算候補という表を描いてありますが、これについては省略いたします。もう一つ、生活保護制度はうまくいっていないということをお話ししたいと思います。生活保護がベーシックインカムより優れているという人々の主張は、必要な人に必要なだけの保護をピンポイントでできるから優れている、そういう考えだと思うんですけれども、現実を見れば、必要な人には届いていないし、それから貧困のわながあるわけです。つまり、労働すると生活保護を減らされてしまうわけですから、非常にやる気をそぐ制度である。反成長政策と言ってもいいんじゃないかというように思います。それから、働くと給付を削られると同時に、大学進学すると給付を削られるということになります。これも反成長政策ではないかと思います。それから、近年、失業率は低下、というのはコロナ以前の話をしているんですけれども、失業率は低下しているにもかかわらず、生活保護世帯が高止まりしております。それは、その下のスライドを見ていただきたいんですけれども、この赤が失業率です。赤は、二〇一〇年ぐらいから一貫して失業率は下がってきたわけですね。一貫して下がっているのに、失業率ではなくて、これは失業者数です。ですのに、生活保護世帯はずっと高止まりしております。これはなぜかといいますと、次のスライドを見ていただきますと、ちょっと分かりにくいんですけれども、薄い青でどんどん伸びているのが高齢者世帯です。つまり、高齢者世帯の生活保護受給者がどんどん増えているということです。これはつまり、年金が足りないのでこうなってしまう。高齢者は働けない。普通であれば国民年金をもらって何とか暮らせるわけですけれども、国民年金を十分に払えなかった、そういう方がいらっしゃいますので、そうすると、その人たちを助けるために、高齢者世帯の生活保護受給というのが増えてしまっているということがございます。それからもう一つは、その他の世帯というのがあります。その他の世帯は、下の方の紫で高止まっているやつです。つまり、これは、生活保護をもらって、その後、貧困のわなから抜けられなくなった方ではないかというように思います。母子世帯とかそういう方々は、失業率が下がると、ちゃんと少しずつ減るということになっております。というわけで、もう時間も来ておりますので、最後に簡単にまとめさせていただきますと、リーズナブルな金額のベーシックインカムであれば実現できるということと、それから、現在の生活保護で貧しい人を救うという政策は必ずしもうまくいっていないんだということをお話しして、私の陳述を終えたいと思います。どうも大変ありがとうございました。(拍手)
○金田委員長 ありがとうございました。次に、岩本公述人にお願いいたします。
○岩本公述人 岩本愛吉と申します。私は、一九九四年から約二十年間、東京大学医科学研究所で、HIV、エイズを中心に感染症の診療と研究を担当してまいりました。二〇〇〇年にウガンダでエボラ出血熱の集団感染が発生した際、厚労省の要請によりスーダン国境に近い現地に出かけ、現在、世界の新型コロナ対策を取りまとめているWHOのマイク・ライアン博士の下で、エボラ病棟の経験をしました。これまでの感染症に関する経験を踏まえて、本日は新型コロナウイルス感染症と日本の対応について意見を述べさせていただきます。まず第一に、感染症情報とその共有の重要性についてお話しさせていただきます。一昨年十二月三十一日に中国武漢の当局者がWHOに肺炎の集団発生を報告し、昨年一月十五日に武漢への一時訪問者が国内の第一例の報告となりました。武漢滞在歴のない国内第一例は、一月二十八日に奈良県から報告されました。お手元の資料一を御覧ください。資料一では、日本の症例数を青い棒グラフで示しております。二月、三月と首都圏や和歌山県等から小さなクラスターが報告され、三月下旬から、通常第一波と呼ばれる急拡大が始まりました。この頃の国内報道はほとんどクルーズ船や国内流行に関わることであり、ヨーロッパ、特にイタリアの情報が取り上げられるようになったのは三月下旬頃だったと思います。折れ線グラフで示しますように、緑のイタリアが最も早く、次いで、フランスやドイツなど、ヨーロッパ各国で感染者が急増いたしました。グラフ右側の目盛りに示しますように、ヨーロッパの報告数は日本の十倍のスケールです。四月に発表された国立感染症研究所、感染研のデータによりますと、二月、三月の小クラスターは武漢由来で、三月下旬以降、国内で急拡大したのはヨーロッパ由来のウイルスでした。つまり、第一波以降の国内流行は、いわゆる卒業旅行に代表される春の旅行シーズンに日本人がヨーロッパから持ち帰ったウイルスによるものでした。WHO一辺倒の感染症情報ではなく、各国との情報共有が重要だという大きな教訓だと思います。第二は、遺伝子検査の重要性です。資料二を御覧ください。このグラフは片対数グラフで、昨年一月から今年二月までの国内週当たりの新規感染者報告数の推移を示しております。1から4までの四つのピークがありますけれども、感染研によれば、1が武漢由来のウイルス、2、3、4はヨーロッパ由来のウイルスが国内で流行したものです。2、3、4が通常言われる第一波から第三波の流行に当たります。ウイルスの由来は、ウイルスのゲノム、つまり遺伝子を解析し、他国の情報と比較することで可能となります。資料三を御覧ください。中学校の生物の授業のようで申し訳ありませんが、我々の体はたくさんの細胞で成り立っています。左上に示すように、細胞は、たんぱく質、核酸など多数の物質で作られています。一九四〇年代から五〇年代の研究で、核酸、中でも核にあるDNAが世代から世代へと遺伝形質を伝える物質で、DNAはA、G、C、Tという四つの暗号から成る情報分子だと分かりました。細胞の重要な機能を受け持つのはたんぱく質ですが、DNAの情報が直接翻訳されるのではなく、一旦RNAに受け継がれ、RNAを鋳型にして細胞質でたんぱく質が作られます。RNAも、A、G、C、Uというやはり四文字の暗号がつながった情報分子です。我々の体の細胞にはDNAとRNAという二種類の核酸が存在しますが、どちらか一方しか持っていないのがウイルスです。新型コロナウイルスはRNAだけを持つウイルスの仲間ですが、細胞に感染すると、細胞の持つたんぱく質翻訳機構を拝借して次世代のウイルスを作ります。DNAからDNAを複製するメカニズムは非常に正確ですが、DNAからRNA、あるいはコロナウイルスのようにRNAからRNAを読み取るステップは、読み違え、つまり、変異体ができやすいことが知られています。次々と世界のあちこちから新しい変異体が報告される現在、皆さんも肌で感じておられることと思います。図の右側に各種のワクチンの模式図を示しています。一番上が生ワクチン、次がウイルスを失活させた不活化ワクチン、三番目が一部分を使ったサブユニットワクチン、最後がRNAワクチンのイメージです。この一年の大きな進歩の一つは、RNAを使ったワクチンが開発されたことです。承認され、日本でも接種が始まりました。つまり、遺伝子情報さえあれば、ウイルスを増やさなくてもワクチンが作れる産業が生まれたことになります。第三は、科学技術を駆使する必要性です。資料四を御覧ください。感染症を予防するワクチンの開発は、一七九六年にジェンナーが作った種痘に始まるとされています。しかし、感染症の本体をつかまえるためには十九世紀末までかかりました。ウイルスという病原体が発見されたのは一八九二年で、インフルエンザウイルスが見つかったのは一九三三年です。歴史上、また世界中にはたくさんの感染症が存在しますが、出現するや否やあっという間に拡散し、経済や社会生活を破壊する可能性を持つのは、やはり呼吸器を感染経路とする感染症だと思います。インフルエンザウイルスの場合、二十世紀中に新型が三回出現し、二〇〇九年にもパンデミックを起こしました。コロナウイルスの場合、今回の新型コロナを含め、二十一世紀に入ってから既に三回新型が出現しております。パンデミックレベルの感染症はほかにもありますが、国の危機管理のためには、やはり呼吸器感染症に対応できることが最も重要だと思います。このような急性ウイルス性呼吸器感染症に対応するには、やはり科学技術の粋を結集する必要があります。冒頭に、情報共有が重要だというお話をしました。インターネットは多数の技術によって支えられていますが、その一つであるパケット通信技術は一九六〇年代に開発されました。昨年、米国はワープスピード作戦と名づけてワクチン開発を行いましたが、二十世紀半ば以降、それこそワープスピードで開発された技術として、コンピューターと遺伝子解析技術を挙げたいと思います。資料五を御覧ください。一九五〇年頃、計算機は手動で、世界一速い計算機はそろばんでした。一九八四年にマッキントッシュ、一九九五年にウィンドウズ95が販売されました。コンピューター技術が広く実用化され、我々一人一人が使えるようになったのです。現在、日本には、世界一の計算速度を誇る「富岳」があります。DNAが遺伝物質だと分かったのは一九五〇年代ですが、一九七七年にフレデリック・サンガーたちが遺伝子解析技術、いわゆるシークエンス技術を開発しました。DNAが暗号なら人のゲノムを解読しようと、一九五三年にDNAの構造を解いたジェームズ・ワトソンが提唱したヒトゲノム計画が一九九〇年に始まり、日本の研究者も大きな貢献をしました。一九八〇年代には、一日三百個程度の遺伝暗号を読むのがやっとでした。私はこの頃、実験室で実験しておりました。サンガー法が自動化され、さらには次世代シークエンス法と呼ばれる技術が開発され、遺伝子解読は超高速、まさにワープスピードでの開発となりました。その結果、価格もどんどん下がり、自分自身の遺伝子を私費で解読してもらうことも夢ではなくなりました。もう一度、前半に話を戻します。資料六を御覧ください。昨年一月二十九日、日本政府は、武漢在住邦人の帰国を支援するため、チャーター機の第一便を派遣しました。五回のミッションが敢行され、感染者が十五人いたものの、死亡者はなく、国内での流行にもつながりませんでした。民間航空会社、民間ホテルの協力を得た官民協力プロジェクトは成功でした。二月三日に感染者を乗せた大型クルーズ船が横浜港に帰港し、五日から厚労省が検疫を開始しました。検疫の性格上、国の仕事ということかもしれませんが、官、つまり役所だけの対応となりました。この辺りから様々な問題が噴出し、日本の問題点がいろいろ見えてきました。今日、特に申し上げたいのは、PCR検査、より広く言えば、核酸の情報を用いた検査の重要性です。自分も研究者の端くれでしたので、連日報道される日本のPCR検査能力のなさには唖然としました。国内の検査機関の状況を自分で確認するため、三月には大阪健康安全基盤研究所や民間検査会社の見学に参りました。市町村の保健所から持ち込まれる検体は手書きで、判読困難なものもあり、容器はばらばらで、検体受付に多大な時間を要していました。検体は生の鼻汁のままであって、採取した保健所の方が運搬しておりました。検体輸送にも大問題がありました。資料七を御覧ください。機関別に一日のPCR検査数を棒グラフで示したものです。件数は左側に示されています。陽性者報告数は青い折れ線グラフで示し、右側に件数を示しています。昨年二月十八日から本年二月十四日までの経過を示しています。昨年三月中旬までは公的な検査機関が中心で、検査数が伸びませんでした。保険適用が決定され、三月二十五日に検査価格が決まったことにより、ピンクで示します民間検査機関が参入し、次第に半分以上をカバーするようになりました。昨年夏頃から、オレンジ色で示した医療機関も検査件数を伸ばしています。検疫所は次第に検査数を増加させ、七月頃には一日千件から千五百件程度のPCR検査をこなしておりましたが、七月二十九日から抗原定量検査を行うようになり、PCR検査はほとんど実施されなくなりました。地方衛生研究所、地衛研や保健所は、本年一月のピーク時には一万件を超えるPCR検査を実施しています。大手の民間検査機関は大都市に集中していることから、地方において必要性が高いのだろうと推定されます。一方、感染研は、四月のピーク時に四百件を超えたのが精いっぱいで、夏以降はほとんど貢献できていません。以上から、官民協力によって日本のPCR検査は一日最大十万件程度の能力を発揮していますが、公的な機関の検査力は昨年一年間にさほど強化されなかったと言えると思います。民間検査機関や医療機関のパフォーマンスはすばらしいものの、いまだに検査数と陽性者数が連動して動いています。保健所をネットワークでつなぐHER―SYSというシステムが運用を開始しましたが、各PCR検査機関から保健所への検査報告を取りまとめる機能を持つかどうかも不明です。厚労省のホームページによれば、本年二月十八日現在、新型コロナ用の体外診断用医薬品、いわゆる検査キットとして承認されている品目は、核酸増幅法二十四件、抗原検査法十四件となっています。たくさんそろったといえばそれまでですが、規格が決められているわけでもなく、デファクトスタンダードと言えるような突出した検査法もありません。緊急事態ゆえに、海外の大型汎用の自動検査装置も多数輸入されたはずですが、パンデミックが進行し、主要な国々で流行が拡大した今回、試薬や消耗品が逼迫し、輸入できず、機器が使えないという状況が発生したことを耳にします。機器も消耗品も国産化を進めるべきですが、規格化が進まない限り、ロボット機器、他領域で業績を上げている優れた国内企業の参入は望めないと思います。少子高齢化の進む日本の危機対応インフラとしては、ロボットや通信技術の粋を集め、保健所や検査機関、医療機関の優れた、しかも細やかなヒューマンパワーと連動させるべきではないでしょうか。第四で、地域ブロックで流行を把握する重要性について述べたいと思います。資料八を御覧ください。昨年八月頃までは、東京と大阪など、大都市の流行状況がクローズアップされましたが、十二月以降は、特に首都圏や関西圏での地域的な流行状況の連動がより明らかとなってきました。日本は南北に長く、北海道や九州地域には、東京や大阪を経由しない海外からの観光客も多数存在します。東京一極ではなく、地域ブロックで保健所機能や地衛研機能を集約するセンターが必要ではないかと思います。少なくとも首都圏や関西圏には、今回明らかとなったように、大型クルーズ船に対応できる機動的かつ大量検査に堪えられる備えが必要ではないでしょうか。英国では、二〇一三年に、当時の保健省の下にゲノミクス・イングランド社を設立し、全国十か所以上のヒトゲノム解析センターを展開し、ヒトゲノム情報を保健医療に活用する事業を展開しています。新型コロナにおいてもこのゲノミクス・イングランド社が大活躍し、大量のウイルスゲノムを解析し、変異ウイルスの流行状況などを世界に発信しています。ウイルスゲノムの解析が感染研に一極集中し、有力なゲノム解析能力をほとんど使えていないのが日本の状況です。ヒトゲノムは三十億個の巨大暗号ですが、新型コロナはたかだか三万個の暗号から成っています。ウイルスは、小さいですけれども、変異を繰り返します。しかも、今後のパンデミック対策も考えるとなると、病原体ゲノムは、飛来する無数の飛行機と対抗するようなものだと思います。情報戦だと言っていいと思います。強力な遺伝子解析能力が必要ですが、日本は持てる力を発揮していません。ヒトゲノムの研究とウイルスゲノムの研究、それぞれがお互いのタコつぼに入って、ほとんど交流のなかったのがこれまでの日本です。第五番目として、感染研について申し上げます。資料九を御覧ください。手短に感染研の歴史を説明します。感染研のルーツは、北里柴三郎博士がドイツから帰国した際、福沢諭吉翁の支援で創立された伝染病研究所です。伝研と略します。当初、私立衛生会附属でしたが、内務省、文部省、東京大学と移管され、第二次世界大戦前は日本最大の感染症研究所でした。最盛期には、感染症の基礎や治療法の研究を行うとともに、治療血清やワクチンの製造、検定、認可、販売まで事業範囲は広がったようです。そのため、一九四七年に分割され、一方が東京大学に残り、もう一方が国立予防衛生研究所、略称予研となりました。予研の当初の設置目的は、感染症に関わる基礎、応用研究と、抗生物質やワクチン等の開発及び国家検定でした。米国のFDAをイメージしていたのかもしれませんが、英語名はナショナル・インスティテュート・オブ・ヘルス、NIHになりました。白金台から上大崎に移転した後、一九九二年に戸山キャンパスに移転しました。この頃には、グローバルに新興感染症が問題となって、米国CDCのような研究所へ進化する目的で、一九九七年に感染研へと改名されました。現在、感染研のホームページを見ると、感染研のミッションは、研究、レファレンス、サーベイランス、国家検定、国際協力、研修、アウトリーチと極めて多彩です。脇田所長の個人的な奮闘に敬意を払いつつも、研究所としての焦点が拡散し過ぎたのかもしれません。資料十を御覧ください。その他になりますが、法整備、公衆衛生と医療、行政、国民皆保険制度と研究開発を挙げました。いずれも私の能力を超えるトピックです。一つ一つゆっくり説明する時間はありませんが、申し上げたいことは、最大多数の最大幸福を求める公衆衛生と、患者さん一人の命に責任を持つ医療とは異質のものだということです。公衆衛生のために、水際対策は極めて重要です。しかし、急性呼吸器感染症の場合、一度国内で発症者が出れば、公衆衛生と医療の橋渡しや連携がとても大切になってきます。二〇〇九年のパンデミックインフルエンザでも同様のことが起こったわけですが、国内の拡散が非常に速かった。インフルエンザウイルスの場合、診断キットも治療薬もあったわけです。しかし、新型コロナは違います。次のパンデミックを想定すると、しっかりした議論の上で、可能な限り法律に書いておくことが必要だろうと思います。今後、お話しできなかったこともきっと出てくるだろうと思います。国民の皆さんが一丸となって立ち向かい続けることを念じます。ありがとうございました。(拍手)
○金田委員長 ありがとうございました。次に、逢見公述人にお願いいたします。
○逢見公述人 ただいま御指名いただきました連合の逢見でございます。本日は、このような場で私たち連合の意見を表明する機会をいただき、感謝申し上げます。私ごとですが、私自身はこれまで予算委員会公聴会には衆議院で六回、参議院で一回お招きをいただきました。今回は八回目の発言となりますが、公述人としての発言は最後の機会となりますので、万感の思いを込めて意見陳述をさせていただきます。私からは、コロナ禍で求められる各種施策や、ウィズ、アフターコロナの時代で目指すべき社会像を中心に、働く者の立場から見た我が国の経済社会における課題と取るべき政策について申し述べます。私たち連合は、全ての働く仲間が将来に希望を持って働き、安心して暮らしていけるように、私たちの未来を、次の世代に続く持続可能な社会、互いに認め、支え合い、誰一人取り残されることのない包摂的な社会に変えていくことを目指しております。お手元のスライドの二枚目を御覧ください。これらの考え方をまとめた連合ビジョンについては昨年の公聴会でも御説明させていただきましたが、今回のコロナ禍は、連合ビジョンでも指摘してきた不安定雇用や格差、人口減少に伴う社会保障、財政、地域の持続可能性などの課題を顕在化させました。まずは、全ての人の雇用と生活を守るための対策が急務であり、また、中小規模事業者への事業継続支援などが必要です。さらには、デジタルトランスフォーメーションを前提とした社会の構造変革を促すための対策を講じていく必要があります。社会に蔓延する様々な不安を解消し、経済の自律的かつ持続的な成長を取り戻すためには、今まさに連合が目指す、セーフティーネットが組み込まれている活力あふれる参加型社会、誰一人取り残されることのない社会を実現することが不可欠であり、それはSDGsの理念そのものであります。そのような社会の根底には、自由と民主主義の普遍的原理、そして人権の尊重が貫かれていなければなりません。しかし、国内外で憂慮すべき事態も起きています。先日、ミャンマーで起きた軍事クーデターの暴挙に対しては、各国政府、労働組合からも多くの非難と抗議の声が寄せられています。政府には、ミャンマーにおける民主主義、人権、労働組合権を保護する対応を取っていただきたいと思います。また、国内では、コロナ禍における様々な差別が問題となっています。そうした中、オリンピック・パラリンピック組織委員会の森前会長による女性差別発言が世界に発信されました。この問題は森氏の辞任によって終わるものではなく、性差別を含むあらゆる差別をなくして多様性のある社会をつくる行動をオール・ジャパンとして起こしてこそ、信頼を回復する唯一の道であると思います。スライド三枚目を御覧ください。この左側がオリンピック憲章、そして右側にILO百十一号条約を記載してあります。一見して明らかなように、ほぼ同じ文章と言ってよく、これが国際社会における差別禁止のスタンダードと言えると思います。ILO百十一号条約は一九五八年に採択されたもので、百七十五か国が既に批准しているにもかかわらず、いまだ日本は未批准であり、周回遅れのランナーと言える状況です。加えて、スライド四枚目に記載のとおり、昨年十月に政府が取りまとめたビジネスと人権に関する国別行動計画を踏まえ、国際社会に日本が人権を重視しているということを示す観点から、ILO百五号条約についても早期の批准を求めたいと思います。次に、コロナ禍における雇用対策について述べたいと思います。スライド五枚目から七枚目を御覧ください。雇用維持に向けた休業や在籍出向を担っている雇用調整助成金は雇用保険二事業から支出されていますが、その二事業の財源が底をつき、本来は失業保険の給付などのために労使折半で拠出した積立金から融通してしのいでいる状態です。同様に、新たな在籍出向の枠組みである産業雇用安定助成金も雇用保険二事業を財源としており、この財源が確保できなければ、休業に代わって在籍出向させることも困難となる可能性があります。既に、借入先である雇用安定資金及び積立金の残高は急激に減少しており、今後、仮に失業者が増加した場合に備えられるかどうかが問題になります。借入額は二〇二〇年末時点の試算で一兆七千億に達する見込みと聞いており、労使の積立金も二〇二一年に底をつく可能性も指摘されています。この雇用保険財政については、政府として支出すべきである国庫負担率は本則二五%となっているところ、時限措置とはいえ、現在は二・五%にとどまっています。六ページの下の数字です。早期にこれを本則どおりに戻すとともに、非常事態であることから、雇用保険会計に対して一般会計の予備費を投入すべきと考えます。今後、現下の新型コロナウイルス対策をどこまで継続することになるかは不透明でありますが、雇用の維持と、失業者を増やさないことについては、政府としても十分な予算措置をした上で取り組んでいただきたいと思います。コロナ禍の中で、これ以上の保険料の負担増は労使共に対応できないことも申し添えておきます。また、地域ごとの雇用者数を維持、拡充する観点から、地域における新たな雇用創出も不可欠です。仮に失業などになった場合、この地域で雇用が見つからなければ、転居を伴う移動を強いられる労働者も出ることになり、特定地域の過疎化が進みかねません。もちろん、地域において新たな産業を興し労働者を雇用するまでにはそれなりの時間を要するため、例えばグリーン化や防災など、既に政府として取り組んでいる地域に必要な施策を一時的に強化する方向で雇用創出の検討を進めていく必要があります。次に、コロナ禍における生活対策です。新型コロナウイルス感染症の第三波は収束に向かいつつあるというふうに認識をしておりますが、ここで国として力点を置くべきことは、第一に、ワクチン接種体制の確保と国民に対する正確な情報提供、第二に、機動的な生活支援の提供、第三に、疲弊する医療、福祉、介護従事者に対する支援の実施と考えます。まず、ワクチン接種ですが、更なる感染拡大を引き起こさず、人々が安心して暮らし、経済活動にも力を入れていくためには、感染拡大が落ち着いている状況で、できる限り広くワクチンが接種されることが重要と考えます。政府も尽力されていると理解していますが、引き続き、可能な限り早く、十分な量の確保に努めていただきたいと思います。また、接種体制の整備について、接種会場までの移動が困難な住民を含めて、希望者が確実に接種を受けられるよう、国が責任を持って支援していただくことをお願いします。在宅サービスを含め、介護従事者に対する接種もできるだけ早く行われるよう求めます。あわせて、副反応情報等が迅速かつ確実に収集され、国民に提供される体制を講じられるようお願いします。また、ワクチン非接種者等に対する差別や偏見を防止する対策を講じていただくことや、接種を希望しない労働者に対する不利益取扱いがないようにすることなど、丁寧な対応をお願いします。二つ目に、生活支援ですが、生活に困窮する労働者は増加しており、雇用の確保とともに、生活支援の強化は不可欠です。生活困窮者自立支援制度における住宅確保給付金の再申請や、生活保護申請における親族照会の弾力的扱いなど、政府に対応いただいていることは極めて重要です。こうした取扱いが各自治体に徹底され、確実に実施されるよう、十分な財源の確保を求めます。三つ目の医療、福祉、介護従事者支援ですが、こうした従事者は、長期にわたる感染対策の強化、患者、利用者への対応、収入の低下、いわれなき誹謗中傷などにより積み重なる肉体的、精神的負担で疲弊しています。連合が昨年八月に介護事業所の労働組合に行った調査結果では、人材確保への悪影響が出ています。診療報酬などの特例や、介護報酬、介護サービス事業所の人員基準等の臨時的な取扱い、医療従事者、介護・障害福祉従事者への慰労金の給付などを行っていることは、必要な政策と認識しています。介護・障害報酬は二〇二一年度もプラス改定とされますが、人材確保に支障を来さぬよう、現場の従事者に報いるよう、確実に処遇改善を進めていくようお願いをいたします。次に、財政の基盤となる税制について触れたいと思います。今回の税制改革関連法案は、法人税の繰越欠損金控除上限の引上げなどコロナ禍への対応として必要となる措置や、次世代産業の育成支援に向けた新たな税制が盛り込まれる一方、喫緊の課題である、格差是正に向けた所得再分配機能の強化や、持続可能で包摂的な社会保障制度の構築に必要な安定財源の確保に向けた改革の全体像は示されていません。国民の暮らしと将来の希望を確かなものにし、社会の安定と持続的成長を確保するため、税制の抜本改革に向けた議論を一刻も早く行うことを求めます。具体的に三点申し上げます。スライドの八枚目を御覧ください。一点目は、所得再分配機能の強化についてです。コロナ禍により貧困の固定化と格差の拡大が一層進み、所得構造が二極化しています。その解消に向け、他の先進国との比較において決して高いとは言えない税の所得再分配機能を強化すべきであります。特に、金融所得課税の強化については、近年の税制改正大綱で毎年検討課題とされながらも、改革は見送られています。所得再分配機能の強化に向けた重要課題であり、早期に結論を出すべきです。二点目は、将来に向けた安定財源確保についてです。現行制度を前提とした場合、社会保障給付費は二〇四〇年時点で約百九十兆円必要になると言われています。安心社会の実現に向け、各種制度を維持、充実させていくためには、この推計を上回る費用がより早い時点で必要になります。社会保障の安定財源と位置づけられている消費税の在り方を含め、財源調達機能の強化を念頭に置いた税制全体の抜本解決は不可避であり、与党、野党にかかわらず、国会全体での徹底した論議を望みます。三点目は、中長期的な財政運営についてです。コロナ対策として各分野において積極的な財政措置が取られていますが、これらの影響や検証も含め、今後、政府の計画の監視、評価、税財政のバランスを含めた中長期的な財政運営の客観的評価と分析を行う内閣から独立した機関、独立財政機関の設置は、これを機に検討すべきであり、将来世代に対する責任でもあると考えます。次に、目下社会的要請であるデジタル変革への対応とグリーンリカバリーの推進について述べたいと思います。今回のコロナ危機では、オンラインによる行政、診療、学校授業など、我が国のデジタル活用の遅れが明白になり、事業再建、生活再建に多大な影響を及ぼしました。経済社会のデジタル化のための環境整備を積極的に支援することで、生産性や利用者の利便性を高めることはもとより、非常時にも対応可能なインフラを構築し、経済産業構造の変革と持続可能な社会へとつなげていく必要があります。同時に、デジタル化の加速は、年齢、性別、障害の有無、雇用形態、所得の大小などにかかわらず、あらゆる層が暮らしの質の向上などの恩恵を受けられるよう、デジタルデバイドをなくすことが重要です。コロナ禍は、テレワークの増加を始め、新たな日常に対応するための事業環境、就業環境の変化を私たちに迫りました。分散型オフィスやワーケーションなど東京一極集中の解消や地方創生の視点も併せ持ち、適切な労働時間管理の下、多様な人が働きやすい環境づくりを継続的に支援していくことが求められています。また、コロナ禍で困窮した世帯へ迅速に支援金を届けることができなかった反省を踏まえ、感染症拡大などの緊急事態においてマイナンバーを利用できるよう利用範囲の拡大を法制化するなど、国民生活を守るセーフティーネットの仕組みを構築していくことが喫緊の課題です。また、欧米諸国において給付つき税額控除のインフラがコロナ禍対策として迅速な給付、所得に応じた給付に有用であったことを踏まえ、日本でも、マイナンバー制度を活用した税情報と社会保障給付を連携させ一体的に運営するプッシュ型の支援制度として、給付つき税額控除の制度設計を加速させることが必要です。その実現の前提として、マイナンバーと全ての預貯金口座のひもつけが求められ、それにより、正確な所得捕捉と、真に必要とする者に的を絞った支援につなげる必要があります。さらに、デジタル行政の実現に向けては、公的個人認証に必要であるマイナンバーカードの一層の普及促進に向けた取組が重要です。カードを活用した納税手続の簡素化等とともに、災害時において被災者の避難状況を正確に把握できることから、自治体に避難所の入退所管理での利用を促すなど、活用の取組を進めていただきたいと思います。世界に目を転じると、コロナ禍を契機に脱炭素社会に向けた動きが加速しています。政府が掲げる二〇五〇年を目標としたカーボンニュートラルの実現に向けては、SDGsの理念に基づいたグリーンリカバリーを官民一体で推進することが重要となります。同時に、エネルギー移行による産業構造の転換に伴う経済社会、雇用への負のインパクトを最小化するため、労働者を含む関係当事者との積極的な社会対話を行い、公正な移行を確保することを忘れてはなりません。次に、国民生活の基盤である社会保障について述べたいと思います。今回のコロナ禍で、医療、福祉、介護などの社会保障が私たちの暮らしにとって安心の基盤であることが改めて確認されました。生活困窮者支援や生活保護といった社会的セーフティーネットの重要性も広く理解されるに至ったと思います。しかし、今後、コロナの収束が実現すれば、社会保障に対する財政的な締めつけが厳しくなっていくことを心配します。社会保障は、家族や地域、職域のセーフティーネットが弱体化する中で、今後一層重要な役割を果たすことになります。しかし、人口減少、少子高齢化の流れは感染拡大以前と変わらず続いており、社会保障制度を将来にわたって持続させていく努力も必要です。政府は全世代型社会保障制度を進めていますが、連合も、年齢から負担能力に応じた負担への転換が進められるべきと考えています。年齢にかかわらず必要な支援が行われるべきですし、雇用機会に恵まれず生活不安にさいなまれる人々への支援は急務です。また、こうした人が多い世代が高齢期を迎える前に、社会保険の適用拡大を強力に進めておくことも極めて重要です。また、出生者数の減少が各国で見られ、これらがコロナの影響との見方もされています。社会保障制度の持続可能性の確保という観点からは、次世代育成支援対策の強化が重要です。そのような中、児童手当の特例給付の一部廃止を含む子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案が国会に提出されています。施行は令和四年十月支給分からということで、来年度予算には関係ないところではありますが、この間、希望出生率一・八を目標に政策を進めてきたところであり、特例給付の廃止はこうした政策にも逆行しかねず、再考を求めたいと思います。他方で、今回の予算案において、公立小学校の学級定員を三十五人以下に段階的に引き下げる措置が盛り込まれたことは評価したいと思います。その上で、教員が一人一人の子供と向き合う時間を確保し、きめ細かな教育を行うためには、部活動の学校から地域への移行、ICT支援員の配置、専科教員を始めとする学級担任外教員やスクールスタッフなどの拡充の推進を求めたいと思います。次に、雇用の安定と公正労働条件の確保について述べます。昨年来のコロナ禍においては、業務委託や請負といった、雇用契約ではない契約形態で働く人々のセーフティーネットの脆弱性が明らかになりました。特に近年は、IT化等の推進により、雇用労働に近い働き方をしているにもかかわらず、いわゆる雇用契約ではないということから、労働関係法令の保護を受けられない事態が深刻化しています。政府においては、フリーランスとして働く人々への相談窓口を弁護士会の協力を得て設置しておりますが、相談体制を一層充実していただくとともに、労働者概念の見直しについても喫緊の課題として早急に取り組んでいただきたいと思います。外国人労働者の就労支援に関しては、新型コロナウイルス感染症により解雇等された外国人労働者に対する在留資格、特定活動の付与など、政府において積極的に御対応いただいているものと認識しております。一方、日本語及び労働関係法令の理解が十分でないために、突然の解雇や技能実習の中止等の場合において、本来守られるべき権利が十分に守られていない実態があります。連合でも、先般、外国人労働者を対象とした集中労働相談を実施したところですが、コロナ禍における雇用不安や、事業主の不適切対応、ハラスメントや差別などに関する相談が寄せられており、更なる対策の強化が求められます。総合支援のための窓口の周知、地方における相談体制の充実、そして労働法令違反に対しての厳正な対処をお願いします。最後になりますが、今回のコロナ禍を通じて、個人の力ではヘッジし切れない生活上のリスクが多く存在することが明らかになりました。これは自助努力ではいかんともし難いものであり、この問題を放置すると、社会の不安を増大させ、分断を招くことになりかねません。社会の安定か分断か、私たちはその岐路にあると言えます。我が国が正しい道を選択されることを切に願って、私の発言とします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○金田委員長 ありがとうございました。
―――――――――――――
○金田委員長 これより公述人に対する質疑を行います。質疑の申出がありますので、順次これを許します。高村正大君。
○高村委員 自由民主党の高村正大です。公述人の先生方、本当に、今日はお忙しい中、またコロナ禍の中でなかなか外に出づらいこういった中、国会まで来ていただきまして、貴重な意見をお伺いすることができました。本当に参考になりました。勉強になりました。ありがとうございます。十五分という短い持ち時間の中なので、早速質問の方に入らせていただきたいと思います。まず最初に、岩本先生にお伺いしたいんですが、先生の最後のおまとめの中で、公衆衛生から医療への移行の悪さということをおっしゃっておりました。なかなか日本では、公衆衛生を前面に出して、強制力を持った対応というのは難しいんだ、こういうふうに思っております。一方で、我々人類というのは、過去いろいろな疫病が起こっていますが、これらを基本的には克服してきたんだと思っております。ゼロコロナというようなことはあり得ないんだと思いますが、ウィズコロナという面で、先生は、このコロナの終息について、医学的な見地から、どれぐらい期間がかかるんだとお考えでしょうか。あるいは、強制力、公衆衛生を前面に出した場合、それがかなり早まる、そういったことがあるんでしょうか。その辺について教えていただければと思います。
○岩本公述人 どうも御質問ありがとうございました。一点申し上げたいのは、日本は、今日、北里柴三郎博士のことを申し上げましたけれども、最初に微生物学というのが日本に入ってきたために、その前に実は衛生学ということで、病原体は分からないけれども、例えばコレラであって、それを上下水道をきちんとしていくとコレラが防御できるというのは、イギリスでも行われましたし、ドイツなんかでも行われたわけです。それを飛び越えて微生物に、日本は輸入して学問が進みましたので、こういう問題があるとすぐに微生物に行こうとして、そちらに行く基礎の研究者。それから、ちょうど日本がその後、一九五〇年代にすごく感染症自体は国の中で減りましたので、そういうことになると、なかなかその時代に公衆衛生が、いろいろ大事になってきたんですけれども、主に公害問題であるとかほかの問題であったので、やはりコロナとかこういう海外から来るような感染症に対する公衆衛生対策というのは何なんだというのが、余り経験がないのが現実であります。だから、そのことは新しく構築していかないといけないと思います。今度のコロナウイルスと、もう一つは、自然界にはいろいろな、今度のはコウモリから来たというふうにありますので、コロナというのは恐らくいつ新しいコロナが、恐らくコウモリはいろいろな種類を持っていると思いますのでそういうものはあり得るわけですけれども、ウイルスは変異を繰り返しますが、時々は病原性も強くなるかもしれませんが、基本的には、人間の社会に適応して、うつりやすい、その代わり人間を痛めにくいようなウイルスに変わっていくのが本来の性質ですので、やはりその間できるだけ、それがいつになるかというのは難しい点があります。やはり数年とかそういうオーダー以上にはかかるかもしれませんけれども、そういうことを新しい日本の中でつくっていかないと、今までの参考になるものはなかなかないというのが現状だと思います。長くなって済みません。
〔委員長退席、山際委員長代理着席〕
○高村委員 岩本先生、ありがとうございました。続きまして、小峰先生に伺いたいと思います。日本の財政の健全化、こういった観点からになります。コロナ対策の名目で、野党だけでなく、自民党、与党の中の一部からも、消費税の減税、あるいは消費税なんかなくしてしまえ、こういったような議論が出ていることもあります。また、MMT理論、これのいいとこ取りをして、平時から際限なく財政支出をすればいいんだ、こういった議論をされている方もいらっしゃいます。今、新型コロナウイルスの危機に対して十分な財政出動をできるのは、少なくとも、今まで日本の政府が財政健全化に向けたこういった努力をしてきたからこういうことができるんだと私は思っております。そして、現在の新型コロナウイルスの状況を考えると、今年度の予算あるいは補正予算で行っている、又は来年度の予算で今審議いただいている行おうとしている相応の財政出動というのは、不可欠なものだと考えております。一方で、際限なく過度の財政支出を続けることはできませんし、過去の経験からいっても、我々は必ずこの新型コロナを克服して、そして、過去の例を見て、感染症を克服した後というのは経済がV字回復する、こういうことが歴史的にも多いように思っております。民間がしっかりと動き出したら政府は財政出動を少しずつ減らしていく、それが将来の世代への負担を減らせることにつながっていくんだと思っております。現在の新型コロナウイルス克服後の財政再建について先生がどのように考えていらっしゃるか、これについての御所見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
○小峰公述人 どうも御質問をありがとうございます。大変難しい問題ですが、私も含めて多くの経済学者というのは、現在のような状況の中で相応の財政支出に頼らざるを得ないということは、これは当然だというふうに考えておりますが、一方で、中長期的に見て、いつまでも非常に大きな財政赤字を続けるというのは、それこそサステーナブルでないというふうに考えて、いずれ財政再建がどうしても必要になるというのが多くの経済学者の意見で、私もそのように考えております。こういった中で、負担は、これもかなり多くの経済学者は、負担を求めるとすれば、やはり消費税が中心にならざるを得ないというふうに考えるのが多くの意見でありまして、これはよく考えますと、消費税というのはお金をたくさん使った人から取るわけですから、ある意味で、負担能力に見合った負担を、所得税と似たようなところがあるわけですね。そうしますと、今、消費税を下げるとか廃止するという提案が出ていますけれども、これは逆に言うと、今たくさんお金を使って消費税をたくさん払っている人ほど得をするということになりますので、ちょっと余り適当な政策ではないんじゃないか。国民の負担を軽減するという意味で、むしろ、逆進性があるといいますか、所得の高い人を優遇してしまうということで、私は支持できません。いずれ財政再建が必要だというのに対して、それはオオカミ少年の議論であって、いつまでたってもその危機なんて来ないじゃないかという意見がありまして、財政再建が必要だと言う人が、じゃ、いつになったら危機があって、その危機はどういう形態を取るんだというのを言えと言われても、それはなかなか難しい。しかし、言うのが難しいからといって、そういう危機が来ないというわけではない。それは多分来ないだろうと思うのは相当リスクがあるというふうに私は考えておりますので、これは、ある段階で、長期的な観点から、少しずつプライマリーバランスの均衡とか累積政府債務のGDP比率を下げていくという方向にかじを切っていくことが必要だと。MMT等で、日本の国内貯蓄がこれだけあるんだから、又は経常収支が黒字であるから大丈夫だという人もいるんですけれども、これは恐らく金融政策がゼロ金利をずっと続けているということに助けられている面がありますので、こういった好都合な状況がいつまでも続くわけではないということも考えておく必要があると思います。
○高村委員 ありがとうございます。続きまして、もう一問、小峰先生に伺いたいと思います。GoToトラベル事業に関して、かなり先生の御意見に批判的な人間がここに多いんじゃないか、こういったことをおっしゃっておりましたが、コロナ禍であってもやはり我々は生きていくために経済活動をしていかなければならない、このように考えます。感染症は抑えられたが多くの国民が餓死をした、あるいは経済的な困窮で自殺せざるを得ない、こういったことでは意味がないんだと思います。小峰先生、コロナ禍の中で国民が生きていくための経済活動を政府はどのように応援していくべきだと考えられますか。ターゲット、あるいは行う時期、こういうのも含めて御所見をいただければと思います。
○小峰公述人 これもなかなか具体的に申し上げるのは難しい問題だと思いますけれども、GoToトラベルに関しては、私が申し上げたいのは、旅行業者が非常に困窮している、非常に厳しい状況に陥っているということは間違いのない事実で、それを放置しておくと、それが長期的な傷として残ってしまうということもあるかもしれないということですから。ただ、救済するとすれば、旅行業者の需要を増やすことによって救済するというやり方がコロナ危機においては難しい。したがって、直接所得を補償するという方がまだいいんじゃないかというのが私の考えです。そういったように、なるべくターゲットを絞り込んで、本当に所得水準が従来の所得水準より大きく落ちたり、また、事業実績が大きく損なわれるというところを絞り込んで、それをどうやって絞り込むんだ、言えと言われると、私もそんな詳しく制度設計はできないんですけれども、それが基本になるのではないかというふうに思います。
○高村委員 ありがとうございます。私も、いろいろ批判があるかと思いますが、このGoToトラベル事業もやはり多くの、裾野の広い産業でありますから、これをしっかりと応援していくことは絶対必要だと思っております。もう一問、先生にお伺いしたいと思います。先生の資料の中に、今回のコロナ危機をきっかけに、なかなか進まなかった改革が一気に進む可能性がある、こういうのがございました。現在、菅内閣におきましても、河野行革担当大臣が先頭に立って、無駄の排除、あるいは平井デジタル担当大臣の下、行政のデジタル化等が進められています。歴史を振り返りますと、明治維新、戦後の復興、いずれも外圧によって日本が大きく成長するきっかけになった、こういう側面があることも否定できないんだと思っております。そして、今回のこの新型コロナによる危機も、ある意味で海外からもたらされたものです。この危機を克服した後の日本経済について、できれば明るい見通しについて御所見をいただければと思います。お願いいたします。
○小峰公述人 これも結構難しい注文のような気がするんですが。これまでも多くの経済学者が、例えば働き方を変えて、もっと労働移動を弾力化して生産性の高い分野に人が流れていくことが必要だということに対して、なかなか終身雇用的な慣行があってそれを崩すのは難しいんじゃないかという考え方があった。それが今回の働き方改革で図らずもその実現に向かっているんじゃないかというようなこととか、さっきのデジタル化も、コロナ危機の中で感染者情報を保健所からファクスで送っているというようなちょっと信じ難いような話が出てきて、いかにデジタル化が遅れているかというのが改めてよく分かったということですので、これを機会に各方面でデジタル化が進んでおりますし、民間でも、テレワークをやってみたら、結構やはりインフラのところが十分整備されていなかったとか、そういったところがあって、これも大分整備が進んでおりますので、そういったデジタル化を中心にした生産性の上昇というのが更に進んでいけば、これは日本の成長力という点で大きなプラスになると思いますので、是非そういった点をこれから前向きに推し進めていっていただきたいと思います。
○高村委員 多分ぼちぼち時間だと思いますので、本当は原田先生にベーシックインカムについてのお話をもう少し伺いたいという思いもあったんですけれども。僕自身、ベーシックインカムというのはすごく難しい問題だと思っていたんですけれども、今日先生のお話を聞いて、早速先生の本を買って是非読んでみたいな、こういうふうに思いました。また、済みません、逢見先生、質問ができなくて大変申し訳ございませんでした。以上で質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
〔山際委員長代理退席、委員長着席〕
○金田委員長 次に、浜地雅一君。
○浜地委員 公明党の浜地雅一でございます。四人の公述の先生方、貴重な御意見をいただきまして、私からも感謝を申し上げます。十五分でございます。早速に質問に入らせていただきますが、小峰公述人に、冒頭、一問お伺いいたします。先ほど先生の方で、いわゆるGDPギャップに着目したような、そういった規模の経済対策というのは余りよくないんじゃないかというお話がございました。実は、政府が十二月十八日にまとめた新たな経済対策は、GDPギャップが六パーか七パーあるということで、それに沿ったものでございました。規模は規模として、中身が大事になってくるわけでございます。そこで、ただ、一つ、海外との規模感で比べたときに、アメリカは二百兆円規模の中小企業を中心とした対策を打つという報道がございます。アメリカのGDPは約二千兆円、十分の一の割合です。リーマン・ショックのときを思い出しますと、これは通貨供給量の話になるんですが、日本はやはり、あのときなかなか市中に通貨が出ずに、欧米諸国は約二倍の通貨供給量を誇った中、日本はなかなか、一・二倍しか供給量を出せずに、円高になったという要因も指摘されております。ですので、当然、日本独自のGDPギャップに着目するというよりも、海外でこれだけの規模の経済対策をやる中において、やはり日本経済も世界と連動している部分があると思います。そういった観点から、経済対策の規模というものを考えるべきではないかと私は思うわけでございますが、その辺りについて先生の御見解をいただければと思います。
○小峰公述人 御質問ありがとうございます。今のGDPギャップのような指標に着目して財政の歳出を決めるのはどうかなという議論と、それからGDPの規模、GDPとの対比において国際比較をするという議論は、ちょっと似ているところがありまして、GDPギャップは、若干初歩的なミスがあったんじゃないかと思うんですが、GDPギャップは年率ですので、四倍した数字なんですよね。それから、GDPギャップは実質ですから、名目じゃないとか、いろいろな、ちょっと基礎的なところでそもそも対応しない。どういう政策が必要か、景気対策と対応しないというところがあってというのを、細かいところでいえばそういう問題があるんです。私は陳述のときにも申し上げましたが、GDPが大きく落ち込んだ、又はギャップが大きいというのは、それはそれで経済の大きな問題だというのは間違いないと思うんですけれども、これを財政の景気対策でどれだけ回復していったらいいのかという考え方をするときに、コロナ危機におけるGDPの落ち込みというのと、通常の、例えば輸出が落ちてGDPが落ちたとか、そういう落ち込みというのは、ちょっと性質が違うんじゃないかというふうに考えております。したがって、従来の景気対策ですと、やはりこれぐらいの規模をやってGDPにこれぐらいの効果があるんだという需要刺激型のものになるんですけれども、そういう発想はやや難しい局面なのではないかということです。したがって、私自身は、国際比較をするときに、ほかの国はGDPに比べて財政出動が何%だ、日本は何%だということで、お互いに規模感を何となく見て、これは非常に分かりやすいのでそうしたい気持ちは分かるんですけれども、こういう状況においては、やはり必要な救済措置を積み上げていったらこれだけの規模になりましたというのが本来のあるべき考え方であって、最初にこれぐらいの規模があった方がいいんじゃないかということから中身を決めていくというのは、ちょっと逆転しているんじゃないかというのが私の考え方です。
○浜地委員 御所見ありがとうございます。続きまして、岩本公述人にお聞きをしたいと思います。先生、大変な権威でございますので、今からの質問がかなり幼稚でございます。御容赦いただければと思います。基本的なところから、先ほど先生のお話の中で、変異株は、基本的には、感染力は高いけれども、弱毒化、余り強い、そういった症状が出ないのではないかというような御所見もあったところでございます。日本はこういった、いわゆるウイルス性の呼吸器系の感染症、なかなか経験をしておりません。ただ、SARS、MERSは、日本には大きく蔓延はしなかったわけでございます。一つの、今後のコロナウイルスの終えんに向けての参考になる部分が、まず、そもそもあるのかどうか。ただ、蔓延の規模が違いますので、コロナウイルス特有のものがあると思いますけれども、実際には、SARS、MERSはしっかりと終えんをしてきたわけでございます。こういった他のこれまで人類が克服してきた感染症の対策において、このコロナウイルス、参考になる点、ひいて言えば、終息に向かっての道筋ですね、そういったものがございましたら、まず、先生に御所見をいただきたいと思います。
○岩本公述人 御質問ありがとうございました。コロナウイルスの中には、今度の新型を入れて三つ、非常に病原性の高いのがあったわけですけれども、それ以外に、二十世紀から今までに四つ、風邪のウイルスとしてまとめられて余り今まで人の病気の研究者もいないような、風邪のウイルスに分類されるコロナウイルスが四つあります。SARS、MERSは、一つはかなり病原性が強くて、病院に入院した人たちの中でばっと、いわゆるクラスターが医療従事者とかお見舞いの人に起こっていたのが問題だったわけですけれども、今度のコロナはそれが社会の中で起こるわけですね。だから、基本的に、MERS、SARSとは今度のは違って考えた方がいいんじゃないかというふうに思っていまして、だんだん、恐らくどちらかといえば、予測すると外れるかもしれませんけれども、風邪型に行くんだろうと思うんです。ただ、コロナの場合、厄介なのは、子供たちに病気を起こさないわけですよね。ところが、高齢者に非常に病原性が高いので、こういうウイルスはいっぱいあるんですけれども、コロナの場合、それが非常に典型的ですので、うつりやすい、病原性が低くなりますというのは、医療としては、高齢者は気をつけなきゃいけない。これが子供たちの間に広がるようなウイルスになってくる可能性はあるわけです。そうすると、ウイルスの病原そのものは低く測れるけれども、高齢者への病原性はほとんど落ちないというような状態は必ずあると思いますので、このウイルスはむしろ、やはり今までの分類というよりは、我々の人間の、例えばゲノムの情報では、一人一人の違いであるとか、やはり免疫学であるとか、そういうものを駆使してこのウイルスは研究していく必要があると思います。ワクチンがそれをどれだけ加速するかという問題がありますけれども、結局は、恐らく社会にアダプテーションしていくようなウイルスだと。それで、恐らくなくすのは難しいんじゃないかというふうに僕は思います。
○浜地委員 ありがとうございます。さらに、岩本公述人にお聞きしたいと思います。これも、昨年の夏頃、話題となっていました、新型コロナウイルス感染症で二類に指定をされている。そうなると、入院期間も長い、待機期間も長い云々がありまして、当時は、これはもう二類を外した方がいいんじゃないか、無類にすべきじゃないかという議論がございました。ただ、その後、感染が拡大しまして、こういった議論はないわけでございますが、実際、ワクチンができて、ある程度免疫ができてくると、感染症の指定というものは、今後、先生の方では、どのように位置づけるべきだというふうにお考えでしょうか。
○岩本公述人 恐らく感染症の分類は変えざるを得なくなるのではないかというふうに思います。最初、二類が適当だったかどうかというのはいろいろな判断があるかと思いますけれども、やはり情報不足、新しいウイルスというので、これは公衆衛生的には、強めの、要するに重い方の分類に入れておく。だけれども、これが社会の中での流行の度合い、すなわち、私が申し上げている、医療面で対応すべきことが簡単になってきたら、病気の分類を少しずつ弱めながら、逆に、医療の中、病院の中をどういうふうに守るんだというふうなことを重点化していくような対策になってくるんだと思います。
○浜地委員 では、もう一問、済みません、岩本先生にお聞きしたいと思っております。まとめて聞けばよかったんですが、済みません。PCR検査、しっかり全国的にということで、これは賛否両論あります。ただ、昨日もテレビを見ていましたら、ヨーロッパあたりは、街角で抗原検査を無料で受けられるということでございます。私の中では、PCR検査を無限に拡大すると、無症状だけの方が出て、その方のケアも必要なんじゃないかという個人的な意見を持っているところでございますけれども、抗原検査も併せたPCR検査の拡大については、どういう形が今の医療体制も含めてよろしいとお考えか、御所見をいただければと思います。
○岩本公述人 御質問ありがとうございます。PCR検査を要するに今全員にやるとかそういうふうなことは、私は余り、どうかなというふうにはもちろん思いますけれども、一方で、やはり一番感度が低くて、今日、主な主張で申し上げた、次に何か病気があったときに一番対応しやすいのが遺伝子を使ったPCR検査のような核酸の検査なんですね。だから、抗原の検査を作るには半年以上かかったわけですね、日本は八月頃からですので。その間のところをまずやるためには、基本的には、国のシステムとして、きちんとしたPCRのネットワーク、こういうのは機材を何台持つかということではなくて、それをつないで、いかにやっていくか。 それで、恐らく、大学とか、今の保健所とか衛生研究所だけが持つのではなくて、もっと日本全体で、それを結果を合わせながらやれるかというところをまずは整備することを考えておくべきで、結局、抗原検査ができたら、これは少し感度あるいは精度は悪いけれども、それをうまく使いながら利用していくというのは当然のことだというふうに思います。ただ、次のインフラとして、今のままだとPCRが忘れられつつあるけれども、やはり大事な検査ですよということが今日申し上げたかったのであります。
○浜地委員 岩本先生、ありがとうございます。大変参考になる意見でございました。ありがとうございます。原田公述人にもお聞きしたいと思っています。先ほどからベーシックインカムのお話がございまして、我々公明党は、実は昨年の九月二十七日の党大会で、ベーシックサービスについて、まだこれを推進するとは言っておりませんが、ちょっと検討すべきではないかというような見解を幹事長が発表いたしました。今も、日本は、基本的には所得の低い方にはベーシックサービスが行われているんじゃないかなというふうに思うところでございますが、ベーシックサービスでなくてベーシックインカム。私は、ベーシックサービスの方が今の制度に合うんじゃないかなと思っていますが、先生の御見解から、このベーシックサービスについて、欠点も含めて、そういったものがございましたら御所見をいただければと思います。
○原田公述人 御質問ありがとうございます。済みません、私、ベーシックサービスについて十分な知識を持っておりませんので、ちょっと的外れなことを申し上げるかもしれませんが、インカムというのは、基本的にお金でもらうわけですから、何にでも使えるということです。もちろん、世の中には駄目な人もいて、せっかくもらったお金を無駄に使ってしまう。だから、生活保護の方がいいんだという方もいらっしゃるわけですけれども、基本的に多くの人は、一生懸命考えて生きておられて、にもかかわらず、十分な所得が得られない。そういう方に所得を補助すれば有益に使えるはずだ、そういう前提でベーシックインカムというのは考えております。では、どっちがいいのかというと、それは実際に比較しないと分からないわけですね。実際に比較するというのは、ベーシックインカムはやっていないので分からないわけですけれども、生活保護のことを考えてみると、そもそも必要な人に行き届いていないのではないか、それから、働くと所得を奪われてしまうとか、あるいは大学に進学しようと思うとむしろ減らされてしまう。そういうことを考えると、非常に十分に工夫されたベーシックサービスがあって、それはベーシックインカムよりいいものである、そういう可能性はもちろん、それ以上は私はコメントできませんけれども、現在行っていることに比べればベーシックインカムの方が優れている、そのように思っております。
○浜地委員 済みません、ちょっと時間がございません。最後、逢見参考人にお聞きします。今、このコロナの中で、在籍出向が話題になったり、あとは地方移転、これを推進しようというふうな話題が、ただ、なかなか問題が多いと思いますね。地方移住といっても、それはもうウェブでできるといっても、実際、情報が手元になければ地方に移住できないと思うんです。連合さんのお立場で、この在籍出向又は地方移住について何か、又は、政府に対してこういった点を改善すべき、また、連合さんの中でどういった話題があるのか、最後にお聞かせいただければと思います。
○金田委員長 逢見公述人、時間が参りましたので。
○逢見公述人 御質問ありがとうございます。在籍出向については、第三次補正予算の中でこれが通りまして、いよいよ実現するということになります。コロナが長期化している中で、在籍によって、人を送り出す企業と受け入れる企業がうまくマッチングできれば、失業を出さずに、機能できるというふうに思っています。地方移住は、今回の働き方改革の推進、コロナによって動いた部分もありまして、みんなが一斉に同じ時間に出勤して、ラッシュの中でもまれて仕事に行くということから解放されたというのは、コロナが終わっても残していくべきだし、地方にも雇用が生まれるという意味で、全部が全部できるわけじゃありませんが、これを進めていきたいと思っております。
○浜地委員 時間になりましたので終わります。ありがとうございます。
○金田委員長 次に、宮川伸君。
○宮川委員 立憲民主党の宮川伸でございます。本日は、四人の公述人の先生方から非常に貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございます。大変参考になりました。時間の関係で、すぐに質問に入りますが、まず最初に、逢見公述人にちょっと御質問したいと思います。御意見の中で、格差の問題、そして所得再分配機能の強化ということをおっしゃられていました。これは、所得税の問題で、一億円ぐらいの収入の方以上の高所得者の方の所得税率が下がっていく、これは株の部分だということで、金融所得課税の強化が必要だというお話をされていました。これと同じように、よく法人税の話もされます。これは、大企業においていろいろな税の優遇措置がありまして、そのために大企業の法人税率が下がっているということも指摘を受けております。そういった中で、もう一つ、お話の中で、デジタルの部分やグリーンリカバリーの部分、これからの日本をどうつくっていくかということで、新しい分野を力強く進めていかなきゃいけない、こういったお話もあったと思います。この新しい分野をつくっていく上で、じゃ、政府としてどういうふうに、国としてどういうふうにサポートしていくか。こういった中でよく出てくるのが、今までも出てきておりますが、政策減税の問題です。やはり、税金を下げるから、グリーンリカバリー、カーボンニュートラルに事業を移してくださいよ、デジタルを進めてくださいよ、こういった税の部分で優遇策を出して事業を進めていくということが考えられます。今回もいろいろな案が出てきています。一方で、例えばカーボンニュートラルでいうと、炭素税だとか、炭素をたくさん出すと出費が増えますよ、だから抑えてくださいというような形もあると思います。この税の平等性を含めた上で、こういうこれからのデジタルやグリーンリカバリー、どういうふうに企業に対して国が後押ししていけばいいか、ちょっと御意見をいただければと思います。
○逢見公述人 政策減税については、あるべき方向に向けて政策的に誘導する手段の一つとしてこれまでも使われてきましたし、今後も使われる必要があると思います。ただ、租税特別措置というのは時限的なものがあって、常にその効果を検証しながら、それを続けるべきか、あるいは更に拡充すべきかということは議論して、最も効果のあるやり方でやっていく必要があると思います。デジタル化、それからグリーン化というのは、長期的には世界の中でも日本が後れを取らないように、特に環境の問題については、先進国としてむしろそれをリードしていくぐらいの気構えが必要だと思います。ただ、炭素税のような、炭素に価格をつけるということについては、これは一気にやりますと、そこで失われる雇用もあります。私たち連合は、あるいは国際的な労働組合は、公正な移行、ジャストトランジションと言っていますが、そうした転換に伴って失われる雇用と新たに生まれる雇用をうまくマッチングしながら、そのことによって失業者が大量に発生することを防いでいくということが必要なので、炭素税の議論についても、そうしたソフトランディングを考えながら全体のあるべき方向に向けて動いていくということが必要になってくると思います。それは、税だけの問題だけではなくて、雇用の問題にも十分な配慮が必要だということであります。
○宮川委員 ありがとうございます。次に、岩本公述人にお伺いしたいと思います。我が党は、コロナの政策ですけれども、今ゼロコロナ政策というのを提案しています。これは、中途半端に緩めることで感染がまた増えてきてしまう、感染が繰り返すようなことがないように、しっかりまずは命を守る。その間の事業者に対する要請に対してはしっかり支援をするということでありますが、今ちょうどこの緊急事態宣言が、解除するかどうかというような議論が出てきています。今、関西の方は特に出てきておりますが、今の、どのぐらいの状況で緊急事態宣言を解除しても増えないか。その中で、私が一つ気になっているのは、変異体、イギリス等の変異体の問題です。その変異体が今どのぐらい市中感染しているかが不明確ですが、ある程度ありそうだと。ここで、それがだんだんばっと増えてくる可能性があるんじゃないかという懸念も含めて、緊急事態宣言の解除に関してコメントいただければと思います。
○岩本公述人 当初の、第一波、第二波というか、その頃は、要するに、どこを緩めてどこを引き締めればいいのかというのが、なかなかはっきりしていなかったというふうに思います。ただ、だんだん今度のようになってくると、やはり高齢者が非常に悪くなりやすいというのは、ますますよりはっきりしてきていますので、そこの部分を守れる状況であれば、これはやはり、今度の場合、経済がなかなか、飲食とか、非常にそこを、別の産業を見つけられるとかそういうところではないですので、その間どうしても、要するにそちらを動かさないと、病気の対策だけでやっていけないので。二律背反というのを緩められるところというのは出てきて、やはりそれでも、多いところというのは、緩めちゃうと、まさにどんどん対策をきつくしないと感染者が増えて死亡者も増えるということがあると思います。今だんだん地域的な重点化というのは起こりつつあるというふうに思っていて、今、大体、自治体の方の、地域の連携の方でそういう動き方になってくるのは自然な在り方ではないかなというふうに僕は思っています。もちろん、これは揺れ戻しはあり得るとは思いますけれども、その辺りを注意しながら、やはり今の経済を動かさなきゃいけない部分というのは出てくるだろうと思います。
○宮川委員 ありがとうございます。もう一度、逢見公述人に御質問したいと思います。雇用の問題です。先ほど、個人の力ではどうにもならないという事例も出てきているということですが、今回のコロナによって、やはり社会のゆがみといいますか、社会構造の弱いところが本当に顕在化をしていると思います。失業してしまった、そして、今、ハローワークにも多くの方々が来ているということを聞いています。そういった中で、特に非正規の雇用の方々の問題についてちょっとお伺いをしたいんですけれども、具体的な例があった方が分かりやすいのでお話しすると、例えばハローワークで働いている方、たくさん今雇用の相談で来ているんだけれども、その窓口で働いている方々自体が非正規雇用で、一年間で更新になっている。それで、お子さんもいて、収入がなくなると困るんだけれども、四月以降の職に関して、もう二月の終わりですけれども、継続できるかどうか、いまだに発表してもらえないというようなことがあるようです。そういった方々が、雇用の波で、埋まっているならいいんですけれども、ずっと何万人も同じ数が雇われているということで、十年ぐらいそれが繰り返されている。そういった雇用が本当に正しい雇用の在り方なのか、こういった非正規雇用の問題について、どのようにこのコロナの経験も踏まえて思われるかということをお話しいただけますでしょうか。
○逢見公述人 非正規雇用については、働き方改革の中でも、短期に雇用を反復継続するということではなくて、一定期間を過ぎたら期限のない、期間の定めのない雇用に転換するというルールができてきて、徐々にではありますけれども、そうした人たちの雇用不安を取り除くような法律、制度はできてきています。ただ、御質問の公務に関わる人たちは、これはちょっと民間とは違う問題があって、公務員には定数があるものですから、しかし、その定数の中では仕事が賄い切れない、そこで臨時的に雇う人がいるんですが、これは財政年度の限界があって、必ず一財政年度の期間で契約を終えなきゃいけない。その次の年にまた継続して、反復して雇われる人もいますけれども、これが、民間というか、労働契約法とか有期・パート法といった法律がそのまま適用されていないのではないかという問題があって、いわばはざまにいる人たちなんですね。こういう公務の中で非正規でいる人たちがこうした法律のはざまにいて苦しんでいるということは実態としてありますので、こうした問題に取り組んでいかないといけないと思います。非常に大事な仕事、今、ハローワークの件を言いましたけれども、窓口で大変献身的に頑張っている人たちがいるんですが、そういう人たちの雇用の不安、処遇の低さということが問題になっているということは私どもも理解しております。
○宮川委員 もう一度、岩本公述人、お願いします。ワクチンです。ワクチンで、絵も示してくださいましたが、今回のワクチンはメッセンジャーRNAワクチン、新しいタイプのワクチンだということでありますが、まず一つは、今、ワクチンがなかなか入ってこないんじゃないかという懸念があるわけですけれども、日本で発明して日本で作ればいいわけで、なぜこのメッセンジャーRNAワクチンの開発に日本はこんなに遅れてしまったのか。それとともに、私はせめて製造施設は日本で造っていくべきじゃないかという気がしているんですが、ただ、いろいろな規制があるので、今回のコロナワクチン、COVID―19では間に合わないかもしれない。でも、今後のことを考えた場合、このメッセンジャーRNAワクチンが主流になるなら、今からこの製造施設に関しては投資をして造って、次に違うタイプが来てもすぐ作れるようにすべきじゃないかと思うんですが、御意見をお願いします。
○岩本公述人 おっしゃるとおりだと思います。ただ、恐らく、RNAという言葉しか私は説明しませんでしたけれども、基本的には、細胞の中に入って、細胞の機能を使ってワクチンの形になるわけですね。だから、まずは、細胞膜というのは脂肪分で、細胞の中は水の部分なんですけれども、そこを通らなければ例えばいけない。RNAというのも、実は今日時間がないので余り説明しませんでしたけれども、メッセンジャーRNAとか、トランスファーRNAとか、幾つかありますので。たんぱくに読み替えるメッセンジャーRNAには印がついているんですね。そういうものをどういうふうにつけているんだとか、どういうふうに処理しているんだというのは、恐らく、それぞれの研究者のノウハウがあって、その辺りは特許になっている可能性もかなりあると思いますので、基本的には今日申し上げたかったのは、やはりこういうものは、大学なり、そういうアカデミアなりの研究と産業がもっと日本は結びつかないと、大学でやることと産業がやることが乖離がし過ぎていて、早くいい成果を応用していくというようなことの橋渡しが余りうまくできていない。だから、今後は恐らく、私は、RNAワクチンというのは一つの大きな流れになる、まだもちろん安全性確認は要りますけれども、じゃないかというふうには思っております。
○宮川委員 ありがとうございます。次に、小峰公述人にお願いします。御意見の中で、GoToキャンペーンだとか、十万円の特別定額給付金の話がありましたが、もう一つ大きな柱で持続化給付金がありますけれども、その持続化給付金に関してどういう御評価をされているか。二度目のものを出す必要があるかどうか。今、私のところには、今度、一時支援金が出ますが、やはり五〇%以上の収入減というのは、もうこれだけ長く続いていると三〇%減が続いていても苦しいという声もあるわけですけれども、持続化給付金に関してちょっと御意見をいただければと思います。
○金田委員長 小峰公述人、予定の時間が参りましたので、まとめて短めにお願いします。
○小峰公述人 はい。持続化給付金のような考え方は、私が適当だと思っている一時的な傷を長期的な傷にしない政策だということで、基本的にはそういうタイプの政策が望ましいというふうには思っておりますので、GoToトラベルのような予算から、そちらにむしろシフトした方がいいんじゃないかというふうに私は思います。ただ、具体的にどんな条件でやっていったらいいのかというところまでは、私、十分承知しておりませんので、詳しいコメントは差し控えたいと思います。
○宮川委員 時間が来ましたので、原田公述人、申し訳ありませんでした。以上で終わります。ありがとうございました。
○金田委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。今日は、お忙しい中、四人の公述人の皆様、お越しいただいて、ありがとうございます。本当に大変参考になりました。まず、岩本公述人にお伺いいたしたいと思います。岩本先生は、二〇一〇年の新型インフル対策総括会議の提言をまとめたときに副座長をやられていたというふうに思います。あの総括会議の提言を私も拝見させていただきましたけれども、感染研の体制を強化しなきゃいけない、保健所の体制を強化しなきゃいけない、地衛研もしっかりしなきゃいけない、PCRの検査能力もしっかりつくっていかなきゃいけないという、本当にあのときのあの提言を生かしておればなというようなことがたくさん書かれていたなというふうに思っておりますが、あの提言が結果としてなぜ生かされなかったのかということについて、どういう御意見をお持ちなのか、お聞かせいただけるでしょうか。
○岩本公述人 その提言の中にいたのを失念しておりましたけれども、私、その後から、実は感染症部会というもののメンバーを十年やって、二〇一二年ぐらいに外れていますので、特措法とかそういうところは余り関与していないんですけれども、その前のまとめたところはいたのかもしれません。そういう中で、やはり喉元過ぎればというところがあるのは否めない一方で、感染症というのはいろいろな種類があるのはあるわけだけれども、それ全部をきちんと整備していこうというのは、恐らくもたないと思います。だから、機能別にいろいろ分けるであるとか、それから、今日、呼吸器の感染症が非常に国の危機管理としては大事だということを申し上げましたけれども、どの辺を国のインフラとして持っているべきで、例えばワクチンを作る体制はどういうふうにすれば、今回のようなRNAワクチンというのを日本がもうちょっと早く作れるようになったんじゃないかとか、そういう新しい産業も生み出すような形に変えていかないと、旧来のものをそのまま強化しようというのは違うんじゃないかなというふうには思っております。
○宮本委員 ありがとうございます。あと、今日、お話の中で、武漢由来のウイルスの後、ヨーロッパ、欧米由来のウイルス、これが今の感染拡大につながっているんだというお話がありましたけれども、その際、国際的な情報共有がどうだったのかというお話がありましたけれども、本当に、今の事態を考えると、三月の上旬、中旬のときの判断というのが決定的だったのかなというふうに私も思っております。私自身も本当に、イタリアだとかでどんどん増えているときに、何で今頃中国をやっと全部止めるという遅さなのかなというのを感じたのを、先生のお話を聞きながら思い出したんですけれども、今回の入国制限の遅れ、水際対策の失敗、更に深く原因を考えるならばどういうところにあるのか、お聞かせいただけるでしょうか。
○岩本公述人 三月のヨーロッパの増え方というのは物すごく急速でしたので、それでちょうど日本人の春の旅行が増える時期と重なっていたという、非常にちょっとアンラッキーな面もあったと思いますけれども。今後非常に大事なのは、各国との情報共有はもちろん今日申し上げたように大事ですけれども、もう一点、やはり、ヨーロッパで増え始めたものを我々自身でもひょっとすると研究するというか、どういうものが増えているんだというようなことはもっと早く調べられるというか、そういうふうな準備というのをしなきゃいけないし、その体制が遅れて、あとは、そういう水際を守るところと、例えば省庁間の連絡とか、そういうところももう少し密にする必要があるかもしれないというふうには思います。
○宮本委員 ありがとうございます。あと、岩本公述人、もう一点お伺いします。この水際対策との関係で、今大きな問題になっているのが、オリンピックをどうするのかという問題があります。今、東京オリパラの防疫体制でいうと、選手は七十二時間前に向こうで検査をして、また入国時に検査をしてという話になっているんですけれども、PCR検査は当然偽陰性のすり抜けがありますし、それですり抜けたら、飛行機の中というのは長時間ですから、そこで感染が広がるリスクも当然あるというふうに考えているんですけれども、この東京オリパラと防疫体制の在り方といいますか、可能なのかどうなのかということも含めて、もし御見解があればお聞かせいただけたらと思います。
○岩本公述人 そんな難しい話は、ここで私が答えられる立場にも、情報もないというところですけれども。ある意味では、特に選手たちの気持ちを考えると、何とかオリンピックは成功させたい、やりたいというふうに思う一方で、どのぐらい日本の状況を抑えられるのか、それから、世界の国々にそれをどれだけ納得してもらえるのかというようなバランスも非常に大事ではないかと思いますけれども、これ以上いろいろ申し上げると、ほかにも迷惑をかけるといけませんので、この辺りで。
○宮本委員 ありがとうございました。続きまして、逢見公述人にお伺いしたいというふうに思います。今回、コロナ禍の中で、先ほどもお話ありましたけれども、非正規の皆さんも本当に大変深刻な事態に見舞われるということになりました。コロナの経験を経て、非正規の皆さん、先ほどのお話では、この間、出口側の規制ですよね、契約更新を繰り返している場合は直接雇用の申込みという出口の方の規制はあるわけですけれども、実際はその前で切られる方々もおりますし、今回の事態とかいろいろ考えると、入口の規制も含めて法律で考える必要があるのではないかという気がするんですけれども、その点についてのお考えはいかがでしょうか。
○逢見公述人 パートや有期雇用をどうすべきかということは、労働法制の議論の中で繰り返しやってきたことなんですが、そのときに、入口規制、出口規制、あるいは中間における規制というのがあって、入口規制というのは、有期で雇う人については職務を限定するか、あるいは、一切やってはならない、無期しか雇っちゃいけないという考え方もあるんですが、これはやはりちょっと、この入口規制を持っていくことは非常に今の労働市場の情勢からいうと難しいなということで、出口規制に力を置いた法改正の議論をやってまいりました。今後、この法律の効果がどうなっていくかというのはありますけれども、少しずつ改善はされてきていると思います。コロナ禍ということで、非常に多くの人が不安にさいなまれたわけですけれども、そういった問題をよく検証しながら、有期雇用、パート雇用等についての在り方を更に検証していきたいと思っています。
○宮本委員 ありがとうございます。臨時的、一時的な仕事に限るべきではないかという入口規制も、私自身としては是非考えていきたいと思っております。あと、逢見公述人にもう一点お伺いしますけれども、とりわけ今回、非正規雇用の中でもシフト制と言われる働き方をされている方々が、そのままシフトカットがされて、しかし休業ではないんだという扱いで、休業手当がもらえないという事態が大きく広がりました。それに代わって、今回、国の様々な制度というのも、休業支援金などをつくってきたわけでありますけれども、そもそも、そのシフト制の今の労働契約の在り方が今のままでいいのかという問題もあるのではないかと思うんですよね。働き方で、労働時間や労働日数についてはシフトによる、実はゼロになっても構わないんだということについては、やはり何らかの一定の法律上の規制やルールというものを設ける必要があるのではないかと思いますが、今のシフト制の契約の在り方について、御所見があればお伺いしたいと思います。
○逢見公述人 今回のコロナ禍で特に影響を受けた業種というのは、飲食だったりあるいは宿泊業だったり、サービス業が多いわけですけれども、こういうところは、今回初めてこういった状況に、影響を受けたということだと思います。こうしたサービス業というのは、パート、アルバイトも多く使っている業種なんですけれども、曜日によって来客数が変わってくる、あるいは時間帯によっても変わってくる、そのたびにシフトを組んで、お客さんが多く来る時間帯にはそれに対応できる従業員を用意するし、比較的来客数が少ないときはシフトの数も減らしていくという、波に合わせた、レーバースケジューリングと言っていますけれども、こういう形で運営しているわけです。今回は、その通常の波以上にどおんと下がっちゃったので、休業はしていないけれども、シフトの人数を減らして、来客数が少なくても対応できる形にした。その影響が出てきたということで、今回は、シフト制で働いている人たちに対しても休業支援を行うということは行われましたけれども、ただ、シフトそのものを見直すという、サービス業という形態においてどういう働き方がいいのかというのは、非常に難しいところがありまして、今回のケースを学びながら、どういうルールのつくり方がいいか考えていきたいと思います。
○宮本委員 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。最後に、小峰公述人と原田公述人、お二人にお伺いしたいと思います。今、株価も大変上がっている状況があるわけですけれども、こうなってくる背景の一つとして、日銀がいつも、株が下がった局面ではETFを購入して、株を買い支えてきたということもありました。中央銀行が大量のETF、株を購入し続けるというのは、世界で見ても極めて異例な事態だというふうに考えております。こういうのをいつまででも続けているのがいいのかと。私はすぐにやめるべきだと考えておりますが、この問題、そして出口の問題も含めて、御意見をいただければと思います。
○小峰公述人 私も、御指摘のように、日銀が株を大量に購入したり、それから国債を大量に購入するというようなことは、かなり非常時型の対応だというふうに思います。それが効果がないということはないんですけれども、非常時に限られるべきであって、徐々にそういった金融政策依存のやり方からは脱却すべきだと思います。なかなか難しいのは、じゃ、今どういう弊害があるのか、それを更に買い増したらどこがまずいのかと言われると、少しずつやっていく分には特に大きな弊害がそのたびに出てくるというわけではないんですけれども、どこかでやはり長期的にはいろいろな問題点が出てくる可能性はありますので、そこは、なかなか急にというわけにはいきませんけれども、出口を目指して徐々に進んでいくべきではないかなと思います。
○原田公述人 御質問ありがとうございます。日銀のETFの買入れが異例ではないかということですけれども、現在の状況が異例であり、その以前も、非常に長くデフレが続く、そういう異例な状況の中で、異例な状況に対処するためにETFを買い入れる、そういう手段を取ったものだというように理解しております。そう考えてみますと、現在のデフレあるいはこのコロナ禍の不況からなかなか順調に脱却できませんので、ある程度続けざるを得ないのかなというように思っております。ただし、私は、資本主義の自由な市場経済の中で、日銀が無限に買い入れる、無限に民間企業の株を買い入れるということはよくないというように思っておりますが、買い入れることによって、リーマン・ショックのときと比べますと、円も安定して、株は上がっているということを見ますと、効果はあったのではないかというように思っております。
○宮本委員 時間になりましたので終わります。ありがとうございました。
○金田委員長 次に、藤田文武君。
○藤田委員 日本維新の会の藤田文武です。本日は、四名の公述人の皆様、ありがとうございます。まず、小峰公述人に一問お聞きしたいと思います。特別定額給付金、一律十万円給付についてのお話がありました。私も、これを取り上げて、政策目的は何だったのかというふうな問いを政府にしました。考えられる選択肢でいうと、マクロ経済政策として需要拡大、消費喚起というものか、若しくは生活困窮者への支援というものなのか、もう一つは、国民の連帯を強めるという、言い方は悪いですが、ある種のお小遣いというか、頑張ってくださいというお金。どうですかというふうに問うと、政府はいろいろ言いましたが、結論でいうと、三番目の連帯を強めるという色合いが強かったんだろうということを政策目的の一番に挙げたわけであります。実際に結果論として、どの効果が一番あったのかなと。検証した方が、今後やるかやらないかも含めていいかなと思うんですが、政策目的、こういう設定の仕方だったことがどうだったのかと、それから、結果論としてどこに効果があったのかなということを、御見解があればお聞かせください。
○小峰公述人 これは、今御指摘になったいろいろな政策目的が考えられると思うんですが、需要振興という点については、私は余り効果はなかったのではないかというふうに思います。というのは、確かに消費は大きく落ちたんですけれども、これは、皆さん、お金がなくなったので買物を控えましたということではなくて、やはり、コロナ対策で外出を控えたということが消費が落ちた非常に大きな原因ですので、それが十万円給付によって解消するとは考えられないということですので、需要喚起効果というのは余りなかったのではないかというふうに思います。それから、困窮者向けの支援というのは、当然、十万円の給付の中には本当に困窮している人も含まれているわけですから、これは一部効果があったと思いますけれども、当然、困窮していない人にも配ってしまいましたので、相当効果が薄れているというか、そこまで幅広く給付する必要があったのかという疑問が残ります。それから、国民の不安感を除くという点も、これは検証が非常に難しいので、恐らく、何となく安心感があるとか、それから、これは結局私は大部分が貯蓄に回ったと思っているんですけれども、貯蓄だって少し増えた方が多少は安心するという面はありますから、全く効果がないとは言えないので、多少は効果があったかなとは思いますけれども、これだけのお金をかけた割には、全体として得られた効果は少なかったのではないかなというふうに思います。
○藤田委員 ありがとうございます。この十万円給付、私も全否定するつもりもなく、あのとき困窮者にも届いたのは事実だし、よかったんじゃないかなとも思う反面、検証して、今後生かすべきだというふうに思っているんです。その上で、明らかになったのは、国家が、どの人がどの程度困っていて、その人にピンポイントに支援するというすべを持たないということが明らかになったということなのかなと受け止めています。それで、今日お越しいただきました原田先生にお聞きしたいんですが、これはいろいろ、セーフティーネット論を考えているんです、私どもも。ベーシックインカムを軸に、新しいセーフティーネット、チャレンジのためのセーフティーネットをしいて、元気な社会を、経済をつくっていかないといけないなという課題意識がございます。その中で、今日は生活保護のお話がありました。生活保護が非常にセーフティーネット機能として狭く深いという表現、先生も著書でされていましたが、使い勝手が有事には特に悪いというのもあります。それから、生活保護の高齢者が増えているという問題。これは恐らく低年金、無年金問題ともつながっていて、老後、生活保護に吸収されていくという問題。それから、働いているけれどもなかなか所得が低い、いわゆるワーキングプアに近い状態がある。つまり、生活困窮というのは、もうマイノリティーの話ではなくて、かなり多数の人が抱えている、直面している、又は有事には自分事になってしまう問題である。そういうような社会なんだなということが全体像として浮き彫りになっているんじゃないかというふうに思います。それで、ベーシックインカムは大きな話ですけれども、いわゆる給付つき税額控除なりベーシックインカムといったような新たな制度をつくるということと、それから、今、恐らく政府は、現状の制度を、制度自体は維持しながら微修正していく、改善していくと。こういういわゆる政策手法の違いがあると思うんですが、現状維持、微修正で、今後この社会のセーフティーネットというのは持続可能かどうかというのをお聞きしたいのと、ベーシックインカムの優位性についてお聞きしたいと思います。
○原田公述人 御質問ありがとうございます。まず、新たな制度をつくるのと、微修正でいくのかという話ですけれども、政府としてみれば、それは新たな制度をつくるよりも当然微修正でいくというのが、それが役人の習性でもありますし、政治家としても、何か混乱とか、何かまずいことが急に起きたら困るというのは当然あると思いますので、政府は微修正でいくということはあるのだと思います。ただし、では、現状、それでいいのかということですね。一番大きいのは年金の問題だと思うんですけれども、実際、藤田先生もおっしゃったように、低年金、無年金の方がいっぱいいらっしゃる。そうすると、これは生活保護に行くということになってしまうわけですね。そうしますと、では、年金を払っている人たちの立場からすると、一体これはいかがなものかということになってしまう。しかも、国民年金よりも生活保護の方がレベルが高いわけですので。そうすると、これは非常に大きな問題になって、人々の社会福祉制度、社会保障制度に対する不信感がどんどん高まってしまうのではないかというように思います。ですので、微修正が利かなくなれば、あるところで、これはおかしいのではないかという大きな声が高まって、大きな変化を皆が求める、そういうことはあり得ると思いますので、できればそうならないようにうまく移行した方がいいのではないかというように思っております。それからもう一つは、ワーキングプアの問題とか、それから給付つき税額控除制度の問題ですけれども、日本は働いているのに貧しいという人が多い国だというように思います。つまり、日本人はやはり勤勉なんだと思うんですね。それで、生活保護をもらえる権利があっても、もらわないという人がいっぱいいる。私に言わせれば、あえてそういう人に甘えることによって、生活保護制度が何とか成り立っていると思うんですね。つまり、本当は一三%の人がもらえる権利があるにもかかわらず、一・六%の人しかもらっていないから、財政的にも何とかなっておりますし、それから行政的にも何とかなっているわけです。ですから、勤勉な国民に甘えて、ゆがんだ制度が存続しているということは、非常にまずいことなのではないか。つまり、ある時点で、これはおかしいというように人々が思い出しますと、一挙に崩壊してしまう。つまり、十倍の人たちが生活保護をよこせと言えば、お金もないし人もいないということになってしまいますので、そうなる前にやはり何らかの対応を取った方がいいのではないかというように思っております。
○藤田委員 ありがとうございます。非常に示唆に富んだ指摘だなというふうに受け止めました。これは賃金水準の話につながってくると思うんです。可処分所得や賃金水準がなかなか上がらないということは我が党もすごく問題にしていて、それをどうしたらいいのかなというのをいろいろ考えるんですけれども、そもそも日本の社会保障は企業に負わせ過ぎなんじゃないか、そういう問題があります。二つ考え方があって、社会保障をちゃんと賄える、負担できるようなよい雇用を生み出していく、それを増やしていくという考え方と、それから、もうちょっと企業からその負担を引き取ってあげて、国家がユニバーサルに引き取ってあげて、企業の負担を軽くする。そうすることで、逆に私は賃金水準というのを上げやすくなるんじゃないかなというふうに思うわけです。企業の負担というと、例えば、社会保険料は年々上がっていく。雇用の規制を強めれば強めるほど不確実性が上がって、長期雇用の、これは長期的に見ると、コストも上がる。だから、非正規とかで調整するというのは、何か人道的にはどうかなと思う方がいらっしゃるかもしれないけれども、企業側からすると、合理的なことをやっているだけである。つまり、インセンティブ設計をやはりもうちょっと考えないといけないんじゃないかなというふうに思います。そこで、今の件について、原田さん、小峰さん、逢見さんにお伺いしたいんです。このまま企業に、何とか、非正規の方の待遇も上げて、半ば正社員を全部にしたらいい、待遇をどんどん上げよう、最低賃金も上げていこう、社会保険料も年々上がっていく、そうやって、GDPが自然増しない時代に、企業に社会保障を、多くの部分を担わせ続けるのがいいのか。又は、一部それをユニバーサルに国家が引き取って、それが私はベーシックインカムなのかなとは思うんですが、手法は別にして、そうやって引き取ってあげて、ある種の社会保障、セーフティーネット機能をしき直すという方が経済全体が元気になるんじゃないかというふうに思うわけですけれども、ちょっと三名の方に、是非違うお立場から見解を聞きたいと思います。原田先生、小峰先生、逢見先生でお願いします。
○金田委員長 お三方にお願いをいたします。時間の制約がございますから、上手にまとめていただければありがたいと思っております。
○原田公述人 御質問ありがとうございます。まず、企業がやっている限り、やはりユニバーサルにならないと思うんですね。つまり、企業の立場からすれば、どうしても雇用の調整弁みたいなものが必要なわけですし、正社員にしてみると、そういう人がいるから自分の雇用が守られるということも現実としてあるわけです。そもそも、企業にやらせるというのは、鉄血宰相と言われたビスマルクがやり始めたわけで、その当時、ドイツは労働運動が非常に盛んで、皇帝ウィリアム陛下に反抗的な労働者がいっぱいおりましたので、その人たちを籠絡する、懐柔するためにそういうことをやり始めたわけです。ビスマルクは、要するに、非常に組織化されて強い労働者は、やはり、なだめないといけないけれども、それ以外の人はどうでもいいと思っていたわけですね。ですから、そもそも、ユニバーサルにやろうなんということはビスマルクは考えていなかったわけです。ビスマルクの時代なら、それはそれで済んだのでしょうけれども、今、我々は、憲法二十五条を持っていて、ユニバーサルにやらなきゃいけないという使命を持っているわけですから、それは企業に負わせないで、国家がそれを受け取るということが私は必要なのではないかというように思います。私一人で余りお話しするわけにもいきませんので、基本的な考え方は全くそのとおりだということをお話しいたしました。
○小峰公述人 私の基本的な認識は、社会保障の必要な経費はこれからどんどん増えていきますので、こういったものは高齢者も含めて国民全体で負担していくという観点から、消費税が望ましいというふうに私は考えております。その点がなかなか合意が得られにくくて、なかなか消費税を上げないし、上げてもほかの分野でどんどん使ってしまうということがありましたので、その結果、社会保険料をどんどん上げる。こちらは余り選挙の争点にもならなくて上げやすいということから、社会保険料は上がっていったというふうに理解をしております。その半分が企業の負担になるということで、これはなるべく国民全体の負担に変えていくべきだというのが、私の考え方です。これを変えていって、もし社会保険料の負担が下がっていけば企業の負担も減るんですけれども、それは一体誰の負担なのかというと、これは経済学的にかなり難しくて、つまり、企業の負担が減ったときに、それは企業の利益が増えるのか、それともその分賃金を上げてくれるのか、どっちなんだという話があって、これは学問的には、どうも賃金が上がるはずのものが上がっていないんだと、負担の分だけですね。ということを考えると、これは企業の負担ではなくて、やはり働く人が負担しているというふうに考えるのが適当ではないかなと思います。
○逢見公述人 この三十年ぐらいの社会保障制度改革の流れを見ていくと、社会保険で労使が負担した社会保険料財源と、それから税財源とをミックスして使っている。流れとして言うと、税投入の比率が増えてきていると思います。それは、高齢化が進んで高齢者比率が高くなると、現役世代で全部それを賄うというのは大変大きな負担になるということで、これからの社会保障も、税と社会保険料をうまく組み合わせて、安心できる社会保障の仕組みをつくっていくべきだというふうに思っております。
○藤田委員 ありがとうございました。時間なので終わります。岩本先生、済みませんでした。ありがとうございます。
○金田委員長 次に、西岡秀子君。
○西岡委員 国民民主党・無所属クラブ、西岡秀子でございます。本日は、公述人の皆様にはお忙しいところお越しをいただき、ありがとうございました。限られた時間でございますので、早速質問に入らせていただきますけれども、時間の関係上、質問できないこともあろうかと思います。事前に、もしそういう場合はおわびを申し上げたいと思います。まず、逢見公述人にお尋ねをさせていただきます。先ほど御説明の資料の三ページ、四ページでもございました。中国政府による香港あるいはウイグル自治区での人権弾圧や、ミャンマー国軍によるクーデターなど、現在、アジアにおいて、看過できない人権侵害が複数発生しており、人権の尊重、法の支配といった普遍的な価値が危機に瀕しております。諸外国においては、法的な制裁の枠組みが存在をいたしております。一方、国内においても様々な差別も顕在化する中で、ILO第百十一号条約、ILO百五号条約といった中核的労働基準に位置づけられている条約を我が国が批准をしていないということが問題であるという御指摘をいただきました。オリンピック憲章との比較も御説明をいただきましたけれども、この条約の重要性について、具体的に御示唆をいただければと思います。
○逢見公述人 御質問ありがとうございます。国際的な人権じゅうりんの問題については、やはりしっかりとした発信を日本としても、もちろん政府もそうですけれども、我々民間の人間もきちんとした声を上げていかないと、現状を追認するようなことになってしまってはいけないと思っております。ILO条約ですが、百五号と百十一号、四ページにありますように、中核労働基準の二つが未批准だというのは、先進国で非常に恥ずかしいことだと思います。一九五〇年代にILOの日本政府代表であった飼手真吾さんという方が亡くなられた後、その人の追悼録が出て、そこに本人が書かれた文章があるんですが、そこで、百五号条約採択のときに、日本政府は最初は反対であったと。これはささいな問題なんです、国内法でどうしてもひっかかる部分があって、だから反対するということだったんですが、総会の会議場に入ったにもかかわらず、反対はしなかったんですけれども、投票には参加しなかった。それが飼手さんにとって非常に悔しい思い出として残っていると。それから止まっちゃっているんです、判断が。それ以来、もう六十年以上たったにもかかわらず、その問題が依然として放置されたままになっている。今日的に言えば、基本原則です。百七十五か国、百七十六か国が批准している。これを、人権条約を守っていこうという構えがないんじゃないかと日本が国際社会から見られる。あるいは、守っていくことがいかに大事なことかということについて、日本はしっかりと認識していないんじゃないか。こういうことが、国際社会で日本に対する不信感を生むことになってしまっているんじゃないか。まさに、森発言はそういうことの一つの証左だったわけです。これはまた、貿易上の公正公平の競争条件を損なうことになります。日・EUの自由貿易協定の中に、こうした未批准条約の批准を進めるということも書かれています。そして、国内行動計画も既にできています。その国内行動計画をしっかりと実施すること。そして、ILO条約の批准については、二〇一九年に国会でILO百周年について衆参両院で決議がされておりまして、そこにも未批准条約の批准のことが書かれております。まさに、行動して、日本が人権問題について国際社会でもきちんとした対応をしているということを示すことになると思いますので、是非、政府、国会においてこういう行動を起こしていただきたいと思っております。
○西岡委員 ありがとうございます。現在においては、企業が事業活動を行う場合に、やはり人権に配慮しているかどうかによって企業が評価をされるという国際的な状況もございますので、今後、この両条約については、私どももしっかり取り組んでまいりたいと思います。引き続き、逢見公述人に質問をさせていただきます。コロナ禍において、デジタル化の遅れ、行政機能の弱体化というこの二つの側面が大変顕在化をしたと考えております。例えば、デジタル化のあるべき方向性、また、マイナンバー制度活用による公述人から言及をいただきました給付つき税額控除について、また、行政組織の行き過ぎた合理化により現在の危機に対応できなくなっているのではないか、このような側面を含めた今後の在り方、また最優先に取り組むべき課題というものがございましたら、御示唆いただきますようお願いいたします。
○逢見公述人 今回のコロナ禍で国民生活に大きな影響を与えて、その中で人々が大変不安な状況に陥れられた。そのときに、やはり政府は、こういうときこそ国民に安心のメッセージを送らなきゃいけない、これが役割だと思うんですけれども、残念ながら、デジタル化の遅れ、あるいは、例えば保健所に代表されるように、公衆衛生を担う機関がどんどん機能が縮小してしまって、そこにコロナ禍が起きて、もう保健所がパンク状態になってしまったというようなことで、やはり、こういう行政の仕組み、そしてデジタル化の遅れ、これを何とか挽回しないと、また次のパンデミックが来ないとは限りません。そういうときに、今回の教訓がきちんと生かされた形にしていかなきゃいけないと思います。マイナンバーは、私たち連合は、結成以来ずっと、最初は納税者番号制度と言っておりましたけれども、それを、税だけじゃなくて、社会保障とかいろいろな部分で個人の識別に使えるようにしようということで、取組を進めてきました。今回も、十万円の一律給付については政策効果がいろいろ議論されておりますけれども、本当に必要な人にタイムリーに給付をするということであれば、やはり口座とマイナンバーとのひもづけということが行われ、そして所得がきちんと把握できる、そうすると必要なところに迅速に給付が行くということになるはずなので、そういうことを進めていく。それから、消費税の議論は今後やはり避けられないと思います。そのときに、逆進的な消費税をどうするかというのは当然議論になるわけですけれども、給付つき税額控除を入れるべきだというのが私どもの主張ですが、これもやはりマイナンバー制度を活用することによって可能になるというふうに思っております。
○西岡委員 ありがとうございます。逢見公述人に引き続き質問をさせていただきます。今回の令和三年度本予算についてお尋ねをいたします。今、先ほどからも議論があっておりますけれども、コロナ禍において様々な課題が山積をいたしております。また、ポストコロナを見据えたことについてもしっかり予算を振り分けていかなければいけないという課題もございます。特に、コロナ対策について、医療従事者への支援や、雇用や生活のセーフティーネットの再構築、また、不安定な雇用形態における格差の是正、持続可能な働き方、そのような視点から今回の予算をどのように評価をされておられるか。また、特に不十分であるとか、ここは是正を求めたいというようなところがございましたら、御示唆をいただければと思います。
○逢見公述人 これまでの令和二年度の本予算、あるいは幾たびかの補正によって、いろいろな対策が取られてきたというふうに思います。特に雇用について言えば、陳述の際にも申し上げましたけれども、雇用調整助成金はリーマン・ショックのときよりもかなり使われておりまして、それが低失業率にもつながっていると思います。今ここでこれを緩めてしまったら、今度は高失業社会に転換することになってしまうので、ここはもう少し歯を食いしばって今の制度を続けて、失業を引き起こさない社会にしていくべきだと思います。また、リーマン・ショックの際に、生活困窮者支援制度など第二のセーフティーネットがつくられまして、これも今回でも使われてきたと思いますが、ただ、やはり脆弱な層、あるいはフリーランスとかそういったところに、あるいはアルバイトでしか生活できない学生さんもいて、そういうところへの支援が弱いところがあったのかなというふうに思いまして、そこは少し手当てはされておりますけれども、今後、まだ課題として残さなきゃいけないと思います。そういった幾つか課題がありますけれども、これをきちんとやることと併せて、将来に向けての財源の確保ということをやっていかないと、雇用保険会計はもうパンク寸前のところに来ているということがありますので、こうした議論も国会でも検討していただきたいというふうに思っております。
○西岡委員 逢見公述人、ありがとうございました。引き続いて、岩本公述人にお尋ねをさせていただきます。先ほど、私も、議論がございました国産ワクチンや治療薬の開発が大変遅れているということについて、様々な要因があろうかと思っておりますけれども、国民からも、今なかなか海外からのワクチン確保がめどが立たない、はっきりした先の見通しがないという中で、今後の感染症拡大も含めて、国内におけるワクチン開発、治療薬の開発のために、今、何が我が国に足りないのか、ここをやはり改善しなければいけないという岩本公述人からの御示唆があれば、教えていただきたいと思います。
○岩本公述人 御質問ありがとうございます。最近の製薬で、非常に新規性の高いものを出すのはやはりアメリカなんですね。それを見ると、やはり、製薬企業は非常に大きな企業になってきて、例えばそこから一つの製品が、五百億円ぐらいの例えば売上げのものでも、会社の規模から見ると非常に、例えば一%であるとかそういうような形であると、なかなかそれを十年、二十年かけて開発するのも難しくなってきていますので、基本的には大学なりのアカデミアで競争をさせて、それも、五百億円じゃなくて、例えば五億円でも五十億円でも、そういう投資でいかにいいものが出てくるかというところを、どういうふうにそれを見つけるか。それをどういうふうに企業がうまく、例えば場合によったらライセンスでやるとか、あるいはそのものを買い取るとか、研究者を雇ってしまうとか。そういう動きがやはりうまく動いているのがアメリカですけれども、日本の場合、どちらかというと、僕もそうやって育ったんですけれども、金もうけは考えないで勉強しろとか、医学はお金とは関係ない世界だとか。そうではなくて、やはり、医療もちゃんといろいろな点を、COIだとかいろいろなことを考えながら、開発と、それを企業化していく、産業化していくということは、薬だけじゃなくて、ワクチン、機器も全部そうだと思います。そして、それを、要するにブレーキ係は別途いるんだというふうには思いますので、国の仕組みをやはり政府の中でよく考えてつくり変えていっていただく必要があるのではないかと思います。
○西岡委員 ありがとうございます。引き続き、岩本公述人にお尋ねをいたします。今、大学、アカデミアの役割の重要性というものに言及がございました。公述人から配られました資料八の中に、地域CDCの必要性についてということの御説明がございました。ここも大学等アカデミアが連携するというところが大変私も重要な部分ではないかと思っておりますけれども、この地域CDCの具体的なセンターのイメージについて、公述人から御説明いただくことがあればよろしくお願いいたします。
○岩本公述人 御質問ありがとうございます。今、恐らく私が拝見しているのでは、保健所が情報を集める、地方自治体は例えば地方衛生研究所というのを持っていて、国には感染研というのがあって、これが全然分離した状態ではないかというふうに思います。一つ一つの都道府県でそれぞれを確保するのは難しいかもしれませんけれども、日本を幾つかのブロックに分けて、ブロックの中で保健所の機能と地方衛生研究所の研究、要するに機能、だけれども、それだけでやっていると、要するに大学とかのイノベーションの部分が少ないので、そこはどういう協力関係を持てばいいのかというのは、取組自体が新しいので考えなければなりませんけれども。そういう地方衛生研究所と保健所の機能が一緒になったようなものをつくりながら、そこにいかに地域の大学と連携をつくっていって、例えば、人のゲノムがあったら、ゲノムセンターというのが大学とかを重点的につくられていきましたので、そういうものの力を少しでも、地方衛生研究所の、病原体遺伝子を調べたり、重症化する人の遺伝子を調べたり、そういうものとの協力を、まさに動かしているのが、今、イギリスだというふうに思います。日本もそういうふうになっていけるといいというふうに思います。
○西岡委員 ありがとうございました。今日は、公述人の皆様には大変有意義なお話をお伺いすることができました。これで質問を終わります。ありがとうございました。
○金田委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。どうもありがとうございました。(拍手)以上をもちまして公聴会は終了いたしました。