尾身会長に聞く。いま消毒以上に、換気が大事。エアロゾル感染対策。高齢者施設に週1〜2回の検査。3月12日厚労委員会

 3月12日の厚生労働委員会で、宮本徹衆議院議員は、感染リスクを下げるために、飲食店等でのCO2モニターを使っての換気対策への支援を求めました。
 宮本氏は、クラスターにつながる感染経路とそれに対する対策について、国民、社会の共通認識にすることが大事だと指摘。
 尾身茂コロナ分科会会長は、「ここにきてマイクロ飛沫感染(空気を介したエアロゾル感染)が世界的に見ても重要視されてきている。食事の場においても換気がいままで以上に重要になっている」と述べ、「二酸化炭素濃度を定期的にモニターして1000ppmにならないよう、常に換気を考えるような、食の場における文化」を呼びかけました。
 宮本氏は、豊橋保健所が衛生監視員がCO2モニターをもって飲食店の換気対策を支援している例を紹介し、政府としてC02モニター活用の取り組みを援助し、自治体、業界団体、商店会の力も借りて取り組むことを提案しました。
 また、宮本氏は厚労省のホームページに「主に飛沫感染や接触感染によって感染する」としていることが対策の誤解を広げていると指摘。マイクロ飛沫(エアロゾル)感染が重要だと是正すべきと求めました。正林督章健康局長は、「エビデンスに基づきながら、必要な情報をしっ
かりと提供していきたい。
 さらに、宮本氏は、陽性者が確認された場合、同じ空間にいた人をもう少し広く検査することを主張。尾身会長は、「検査前確率が高いところについては、かなり集中的に、濃厚接触だということだけでなくて、幅広にやるのがこれから特に重要」と述べました。

≪2021年3月12日 第204回衆院厚生労働委員会4号議事録該当部分抜粋≫

○宮本委員 それでは、今日は尾身先生に来ていただきました。東京の感染状況を見ていましても、発症日別で私もいつも見ているんですけれども、二月二十七日が底で、そこから二十八、三月一日、二日と、発症日別で見てもちょっと微増というのがありまして、リバウンドが起きかねない状況かなと思っているんですけれども、ちょっと、今の状況についてどう見ていらっしゃるか、一言いただけますか。〔委員長退席、長尾(敬)委員長代理着席〕
○尾身参考人 今の委員の御質問は、感染の減少のスピードが鈍化して、一部下げ止まりということで、その原因は、一部上がっているところもある、これをどう思うかということですけれども、基本的には、私は、いろいろなデータを分析しますと、緊急事態宣言を発出している、解除された地域もありますけれども、どうも最近になって、比較的高齢の人たちの、いわゆるアクティブシニアといいますか、昼間のカラオケなんということで感染が起きているという部分もある。それから、一部解除した地域なんかを見ますと、ここに来て比較的若い人たちも少し行動が元に戻りつつあるという、行動の変容というのが少し、感染の今、下止まりあるいは一部上昇というようなことの原因と我々は考えております。それと同時に、これから懸念をしなくちゃいけないのは、変異株の発生がどれだけ今回のこの下げ止まりに関与しているかということについてもこれから注意深く見ていかなくちゃいけないので、そういう意味では、同時に変異株のモニタリングというのを今よりも以上に、かなりこれは強力に進めていく必要がある、そんなようなところが今私が考えているところでございます。
○宮本委員 変異株のモニタリングが非常に大事だということと、行動変容が起きてきているのが今の感染増につながっているというお話がありました。様々な対策、分科会でも出されていることだと思うんですけれども、やはりクラスターにつながる感染経路とそれに対する対策について、私は、国民、社会の共通認識にするというのが、これ自体がやはり極めてベースとして大事なことだというふうに思っております。二月二十五日の分科会の提言で、飲食店については換気対策というのが以前よりも前に出てきたというふうに思います。その際、尾身会長の記者会見で、感染の仕方というのは、接触と飛沫だけではなくて、マイクロ飛沫というのは当然あるので、空気を介して風の流れで行くことはあることは、当初よりこの重要性は一層増してきていると思う、こう述べられておりました。このマイクロ飛沫感染、私はエアロゾルだと昨年もちょっと議論させてもらいましたけれども、このマイクロ飛沫感染が当初より一層重要性が増しているという認識の根拠についてお伺いしたいと思います。
○尾身参考人 これは、実は、たしか七月三十日、去年ですね、七月三十日のあれは当時専門家会議というかアドバイザリーボードでこのことをかなり強調して、いわゆる従来の飛沫感染とか接触感染に加えて、いわゆるマイクロ飛沫ということが重要になってきたんじゃないかということを提言、見解を示したわけですけれども、それはなぜかといいますと、いろいろなクラスターの分析をしますと、いわゆる換気の悪い空間では、五マイクロメーターというのが一つの目安になると思いますけれども、五マイクロメーター未満の粒子でも、換気の悪い空間では少し離れた距離でも、これは二メートルとかというのじゃなくて、もう少し離れた距離でも感染をすることがあるのではないかという分析が出てきました。ところで、いわゆる空気感染というのがありますよね。これは結核とかはしか、これはもっと長い距離、こういうことは起きていないんだけれども、それよりも少ない距離で行くんだけれども、いわゆる飛沫とか接触に加えてそういうのがあるんじゃないかということで、マイクロ飛沫ということを我々提案させていただいたわけですけれども。ここに来て、もちろん、接触感染ということで、よくいろいろなところで、アルコールでこういうところを拭くという、このことももちろん大事ですけれども、それと同時、あるいはそれ以上に、マイクロ飛沫感染というものが、これは世界的に見ても重要視されてきているので、いわゆる食事の場なんかにおいても、いわゆる換気というものが今まで以上に重要だというふうに我々は考えている。その理由は、そうしたクラスターの分析で、そういうようなことが起きているというふうに我々は考えているということでございます。
○宮本委員 クラスターの分析からそう導いているということです。先ほど、世界でもそうなってきているというお話がありました。今日、幾つか海外の論文なども資料で配っておりますが、アメリカの国立科学アカデミーの紀要でも、ダイヤモンド・プリンセス号の分析で、五〇%以上がエアロゾル感染だった、そのうち三五%は短い距離よりはもう少し長い距離のエアロゾルだったと。あるいは、エンバイロンメンタル・サイエンス・アンド・テクノロジー・レターズに出ていたタフツ大学の研究では、表面からは接触感染のリスクはそんなに大きくないんだ、エアロゾルや飛沫なんだ、こういう話があります。あるいは、ネイチャーでも、コロナは空気の中にあるんだ、表面に注意が行き過ぎていたということなんかも出ているわけですけれども、こうした海外の論文についてのコメントはありますか。
○尾身参考人 今、委員おっしゃるように、マイクロ飛沫というような感染の伝播の方式が非常に重要になってきているという海外の見解については、私も基本的には同じような見解を持っておりまして、したがって、何度も申し上げますように、飲食の場なんかにおいても、私は換気というものがかなり重要になっている。こういうところを拭くということも重要ですけれども、手を洗うということももちろん重要ですけれども。そういう意味では、飲食の場において二酸化炭素濃度なんかをしっかり定期的にモニターして、我々、今のところは大体一〇〇〇ppmぐらいが目安だと思いますけれども、そんなようにならないように、常に換気を考えるというような食の場における文化というものを徹底していただければと思います。
○宮本委員 今、尾身先生がおっしゃったことは私も大変大事だと思うんですけれども、ただ、なかなかそこがまだ伝わり切れていないなという思いがあります。例えば、先日クラスターが発生したある接待を伴う飲食店は、検温もやっていた、消毒もやっていた、働いている人たちの行動管理も物すごいやっていた。だけれども、一つはお客さんがマスクをしていなかったというのと、あと、換気は二時間に一回だったという話でした。やはり換気が肝だというのをもっと伝わる状況をつくらなきゃいけないんじゃないかなというふうに思っておりますが、そうしたやはり空気を介して伝わっていくマイクロ飛沫感染がクラスター発生で大変重要な役割を果たしているんだ、それに対する対策としては換気とマスク、これが非常に大事なんだということをもっと国民の共通認識にする上で、何が大事だと会長は考えられているでしょうか。
○尾身参考人 そのことを一般の社会になるべく普及をしていただく、考えがですね、していただくための最も私は有効な方法は、いわゆる飲食店におけるガイドラインというのを国も出していますけれども、そこの中で私は非常に重要だと思うのは、しっかり頑張っていて、今申し上げたような、換気をしっかりやって、二酸化炭素のモニターもしっかりやって、それ以外にももちろん、当然人と人の距離の問題だとか、人数の制限の問題、こうしたパッケージをしっかりやっている店について、しっかりと国、自治体、業者の団体が協力をして、いいかげんなものじゃなくて、しっかりした認定制度で、この店はしっかりやっていますよということを認定して、そこに一般の市民が分かって、そうした一生懸命頑張った店にはお客さんが多く行くような、そういう仕組みというか、そういう仕掛けというものを早急に私はつくる必要があるというふうに思っております。
○宮本委員 お店と同時に、私、実は厚労省も、いろいろなものを発信するのは、もっと変えた方がいいんじゃないかと思っているんですね。厚労省はホームページでいつも新型コロナウイルス感染症の今の知識というのをバージョンアップしているわけですけれども、これを見ても、新型コロナウイルス感染症は主に飛沫感染や接触感染によって感染するというふうに書くわけですよね。そうすると、これが何をもたらすのかということなんですけれども、あるクラスターが発生した医療機関のホームページを見ていましたら、こう書いていました。空気感染しないことから、密閉に費やす努力を密集と密接に振り向けてほしいと書いてあるわけですよ、ホームページに、コロナの。だけれども、密閉対策は物すごい大事なわけですよね、今。換気をよくする、常時換気が私は一番いいと思いますけれども。そういうことからしたら、やはり飛沫と接触が中心なんだということではなくて、マイクロ飛沫、私はエアロゾルということを言っていますけれども、マイクロ飛沫は、空気を介してのマイクロ飛沫、エアロゾルが、これが大事なんだ、感染として、クラスター発生には重要なんだということをもっといろんな点で厚労省自身が強調するようにしなきゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、その点は、尾身会長の見解をお伺いします。〔長尾(敬)委員長代理退席、委員長着席〕
○尾身参考人 私は、飛沫の接触、つまり手洗いだとかマスク、これをやらなくてよくて換気だけということはなくて、私は、換気をやることも非常に重要だというメッセージは今までよりももう少し強く出してもいいんじゃないかというふうに思います。
○宮本委員 厚労省のホームページ、ちょっと、局長、改めてもらっていいですか。
○正林政府参考人 感染経路をきちんと特定するというのは非常に難しいと思います。飛沫もあれば、接触もあれば、いろんな場合があると思います。もちろん、マイクロ飛沫というのも考えられると思います。可能な限りエビデンスに基づいてホームページでPRしようと思いますが、引き続き、きちんとエビデンスに基づきながら、必要な情報をしっかりと提供していきたいと思います。
○宮本委員 私は本当に、尾身会長と同じような認識を、やはり厚労省を先頭に日本社会に広げていくというのが、実は実効再生産数を落とす上でも非常に大事だというふうに思いますので、しっかり検討いただきたいと思います。それから、尾身会長、最後に検査についてもお伺いしたいんですけれども、今、変異株も含めてのモニタリングも大事だというお話がありました。あとは、いろんなところ、予兆をつかむためのモニタリング検査ということを言われていますが、それと同時に、私自身は、陽性者が確認された場合の検査って今は濃厚接触者ですよね。でも、変異株は感染力が高まっていますので、やはり濃厚接触止まりではなくて、一定時間同じ空間にいた人、もうちょっと広く、しっかり検査を行う必要があるんじゃないかということと、あと、高齢者施設ですね。これは今一回検査しようということで言っていますけれども、やはり頻回、週一、二回ぐらい、頻度も含めてしっかり示して検査をする。やはり、がんじゃないですから、感染症は、今日の検査の陰性があしたの陰性を証明するものじゃないですから、頻回の検査というのをしっかりやっていく必要があるんじゃないかと思います。その点の見解を、検査について二点お伺いしたいと思います。
○尾身参考人 委員の御質問は二つで、一つは、濃厚接触者以外にももう少し検査を広げた方がいいんじゃないかということがまず一点だったと思いますけれども。実は今、国にも、だんだんそういうふうに今やってくれていまして、各都道府県で少しずつ始まっていますけれども、いわゆる無症状者に対する検査というものが、今委員言及されていると思いますけれども、これについては、感染のリスクが比較的高い、別の言葉では、検査前確率が高いというところについては、これはかなり集中的にその周辺も、濃厚接触者なんということだけじゃなくて、かなり、キャパシティーの問題がありますけれども、幅広にやるというのがこれからは特に私は重要だと思っています。それから、二つ目の御質問の、いわゆる高齢者施設での検査の頻回かどうかというのは、これは当然、なるべくたくさん、頻回にやった方がいいということで、これはキャパシティーとの相談ですけれども、一回だけというのはほとんど意味がありませんので、インターバルを置いて、なるべくキャパシティーの許す限り頻回にやった方がいいというのは、これは当然のことだと思います。
○宮本委員 大変明快な答弁をいただいたと思いますので、厚労省も、是非、尾身会長の言われたことを受け止めて、検査も具体化していただきたいと思います。時間になってしまったので本当に申し訳ないんですけれども、今日、内閣府に来ていただいていたわけですけれども、一言だけ申し上げますけれども、換気対策は非常に大事ですので、CO2モニターを活用しての、しっかり測定して、援助する、こういう取組を是非しっかりと援助していただきたいと思うんですよね。豊橋市の保健所なんかは、衛生監視員の方々が組をつくってCO2モニターを持って回っているというお話もありました。自治体、業界団体、そして商店街、商工会なんかの皆さんの力をかりて是非やっていただきたいということを申し上げまして、時間になりましたので、質問を終わります。ありがとうございました。