2021年5月28日 衆院厚生労働委員会参考人質疑 育休中の所得保障と代替要員の確保を 育児介護休業法改正案 宮本氏に 

 衆院厚生労働委員会は5月28日、育児介護休業法改正案について参考人質疑を行いました。同案は、男性の育休取得促進のために新設される「出生時育児休業」制度などを盛り込んだものです。
 全国労働組合総連合の舟橋初恵女性部長は、全労連女性部が実施した「妊娠・出産・育児に関する実態調査」に寄せられた実態や声を紹介。育児休業法の改正要求のトップは育児休業中の所得保障(57・7%)だとして、「賃金が低いことが妊娠、出産をためらう要因。8時間働いたら暮らせる賃金、労働条件の整備を」と述べました。
 日本共産党の宮本徹議員は、男性育休をすすめる「次の一手」は何かと質問しました。舟橋氏は人員不足が育休取得を困難にしているとして、人員増と代替要員の配置の推進を求めました。
 宮本氏はさらに、ジェンダー平等を進める上での男性の育休取得の意義と在り方ついて質問。中央大学大学院の高村静准教授は、就業機会と再生産活動について「次世代、それから前の世代のケアというのを共におこなっていくという両方の意味でのジェンダー平等につながっていく」と述べました。

≪2021年5月28日 第204国会衆院厚生労働委員会第23号 議事録≫

○とかしき委員長 これより会議を開きます。内閣提出、参議院送付、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び雇用保険法の一部を改正する法律案を議題といたします。本日は、本案審査のため、参考人として、中央大学大学院戦略経営研究科准教授高村静さん、独立行政法人労働政策研究・研修機構主任研究員池田心豪君、日本商工会議所産業政策第二部担当部長杉崎友則君、全国労働組合総連合女性部長舟橋初恵さん、以上四名の方々に御出席をいただいております。この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。次に、議事の順序について申し上げます。最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十五分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。それでは、まず高村参考人にお願いいたします。
○高村参考人 ただいま御紹介いただきました、私、中央大学大学院戦略経営研究科の高村と申します。本日は、参考人としてお呼びいただきまして、誠にありがとうございます。私は、企業の職場における働き方ですとか、それからキャリア開発というような課題に取り組んでおります。中でも、ワーク・ライフ・バランスですとか女性の活躍という点に関心を持ちまして、調査研究に取り組んでおります。また、厚生労働省のイクメンプロジェクトの推進委員という立場から、男性の育児休業取得促進に取り組んでおります。イクメンプロジェクトということに関しましては、御存じの方も多くいらっしゃるかとは思うんですが、二〇一〇年にスタートしております。こちらのプロジェクトでは、イクメンのことを、子育てを楽しみ、自分自身も成長する男性というふうに定義をいたしまして、男性の育児、家事参加を進めるための企業ですとか職場の取組、また御本人の工夫などを広く掘り起こしまして、伝えることに取り組んでおります。そうした取組によりまして、男性の育児休業取得とその意義につきましての社会的認知を高め、国の男性の育児休業取得率の目標達成を目指した取組を行っております。現在、イクメンという言葉も広く認知されるようになってきたというふうに思っております。本日は、特にそうした、職場での働き方というような観点から、男性の育児休業取得を進める意味というようなことについて述べさせていただきたいと思っております。まず、男性の育児休業の取得を特に推進しようとすることの背景には、働く場における男女の非対称性という課題があるということを改めて指摘したいと思います。資料を御用意しておりますけれども、こちらの資料にございます、表紙をおめくりいただきまして、資料の一を御覧いただきたいと思います。こちらは、内閣府男女共同参画局が作成しまして、男女共同参画白書の方に掲出されたグラフでございますけれども、男女の生活時間、特に労働時間を抜き出した国際比較でございます。企業で働く時間の参考値といたしまして、有償労働を示すピンクの部分を見ていただきたいと思うのですが、日本は、男性が長いということとともに、男性と女性の比率が、イタリアと並びまして非常に差が大きいというような状況になっております。このような働き方の非対称性ということと育児休業取得の状況の男女の非対称性ということは、表裏一体であるというふうに考えております。つまり、育児休業制度というのは、一九九一年に、男女にひとしく請求権を認める内容として法制化されましたけれども、導入から三十年がたちまして、男女の取得率に大きな乖離が見られます。その背景には、こうした働き方の男女差がある。それが、男女で等しい制度としてスタートしたこの制度が今日異なる影響を男女にもたらす、そういった一因になっているというふうに考えております。私は、男性の育児休業取得の取組というのは、直接的には男性の休み方の問題になるわけですけれども、他方で、働き方を見直す取組であるというふうに考えています。これまで、男女の働く場での差の解消ということは、実質的には、女性の働き方を男性に合わせるという方向で取り組まれてまいりましたけれども、男性の育児休業取得促進ということを通じまして、男性を中心とする職場の働き方を見直すことで、男女共に、育児・介護休業法が目的とします、子の養育又は家族の介護を行う労働者等の雇用の継続及び再就職の促進、それから職業生活と家庭生活の両立を目指す取組であるというふうに位置づけることができるのではないかというふうに考えております。これが私の基本的な考え方でございます。このような認識を基にしまして、男性の育児休業取得促進が重要であるというふうに考える理由、及び、法案御審議に当たりまして御考慮いただきたいというふうに考える点を三点ずつ述べさせていただきます。まず、男性の育児休業取得が重要であると考える理由ですけれども、まず第一は、ただいま述べましたとおり、それを進めることで、従来の休みにくく長時間になりやすい職場の働き方の見直しにつながるのではないか、このように考えるからでございます。毎年、厚生労働省が、イクメン企業アワード、それからイクボスアワードというふうなことを表彰しておりますけれども、これらの表彰制度では、審査項目に、仕事と育児を両立できる職場環境の整備、それから取組による定量的な効果が示されること、こういった項目を加えておりますことから、こういった職場環境の整備ですとか、よい効果を上げているということについて、様々な工夫を行う企業の事例というものが集まってまいります。特に昨年は、予期せぬ新型コロナウイルスの感染症拡大で、仕事の見直し若しくはオンラインへの移行ということで、仕事のプロセスを見直した企業も多かったというふうに思います。昨年のその表彰を受けた企業さんの中では、男性の育児休業取得を促進する中で取り組んできた取組が、そういった中で仕事ですとか仕事プロセスの見直しを進めてきたために、昨年のような緊急事態にもスムーズに対応できたというふうなことを話してくださる企業さんがございました。資料二にお示ししておりますように、育児休業取得というのはこうした仕事ですとか手順の見直しなどにつながるというふうに考えておりますので、二でも、こちらの資料の方でも、チームで仕事を共有するですとか、手順、手続を簡略化する、不要なミーティングを減らすようにしていたなど、仕事上の工夫というものをする人の比率が高いというような報告がありますのも、そういったことに結びついているというふうに考えております。二点目ですけれども、育児休業の期間に男性が幅広い育児や家事に取り組むこと、長い間取り組むということが、育児休業が終了した後も家事や育児への参画の継続につながる可能性があるというふうな観点から、重要であるというふうに考えています。例えば、資料三でございますけれども、ちょっと専門的な内容になっているかもしれませんが、こうした可能性を指摘しているというふうに考えております。夫婦共に家事ですとか育児のできる範囲が広まる、守備範囲というふうに考えられると思うんですが、育児休業終了後も夫婦で連携する、あるいは調整するということがしやすくなるというふうに思います。子育てや家庭管理及び働き方の男女非対称性の緩和につながり、夫婦で子育てをするというスタイルが広まる可能性があるのではないかというふうに考えております。重要と考える三点目ですけれども、こうした育児休業取得をきっかけにして、会社と個人の関係性が強まるという可能性もあるというふうに考えられます。こちらは資料四になりますけれども、育児休業を取得した男性というのは、同時期に子供が生まれまして育児休業を取得しなかった男性に比べて、会社への好感度が高まった、会社への帰属意識が高まったなどと回答する人の比率が高いということが示されております。男性の育児休業取得を推進することには、以上のような効果、影響があるというふうに考えますが、そのために考慮すべき点もあるというふうに考えております。今回の法改正に関わる点として、三点申し上げたいと思います。一点目は、周知についてです。今回新設される個別周知と、従来からの周知の努力義務というのがあるわけですが、双方を組み合わせて、個別に加え幅広い層に対して充実した内容が伝わるようにお願いしたいと考えます。男性本人が育児休業制度を正しく認識するということは育児休業取得の大前提になりますが、様々な調査が示すとおり、上司、同僚が支持的だったとか職場に取りやすい雰囲気があったということが、育児休業取得を希望する男性が実際に取得できたかどうかに大きく影響するということが言われております。職場全体に、男女共に育児休業取得についてひとしく請求権があるということについての周知を一層お願いしたいと思います。また、男性が育児休業を取得しなかった理由に、妻が育児休業を取得したためということが指摘されるわけですが、これは二〇〇九年の育児・介護休業法改正以前、労働者の配偶者が専業主婦等であって子供を養育できる場合には、企業は労使協定によって当該労働者の育児休業取得を認めないとすることができたという扱いであったことが、改正後も、その制度が廃止された後も職場風土として存続している可能性があるのではないかと考えております。こうした除外規定というのが廃止されていること、それから、むしろ、パパ・ママ育休プラスなど夫婦での子育てを進めようとする象徴的な制度があることなどについて、広範囲への積極的な周知をお願いしたいと考えます。二点目は、男性の育児休業取得意向の確認についてです。育児休業の取得時期というのはある程度見通すことができますので、本人から取得の意向が示されましたらば、意向確認と併せまして、仕事の内容ですとか配分、スケジュール等を職場で話し合う機会というふうにしていただきたいと思っております。そのことで仕事や働き方の見直しにつながることになると思いますし、また、休みの間に仕事を託す相手の方を育成する機会として利用している企業さんのケースもございます。三点目ですけれども、育児休業中の行動についてということです。産後八週の間に新設が検討されている仕組みでは、労使協定を前提に、一部就業も認められることとなっております。このような柔軟性を取り入れることで、これまで、職場に迷惑がかかるからということで、取得を希望しながらも二の足を踏んでいたであろう一定数の男性の育児休業の取得が促進されるということが考えられますが、一方で、就業を強要されることのないよう、十分な仕組みの検討をいただきたいというふうに考えています。また、就労を可とするという新たな仕組みに目が行きがちですけれども、新制度は、育児休業とその後に続く長い夫婦での子育てのスタートの期間というふうに位置づけまして、その後の夫婦の子育ての協業や連携が進むような過ごし方、これについても幾つかの事例を基に伝えていただきたいというふうに思います。最後に、個別の内容というよりも、今般、労政審からの建議に、男性に対するポジティブアクションに沿ってと記載されている点について意見を申し述べたいと思います。冒頭申しましたとおり、男女が置かれている社会的な状況の違いによりまして、育児休業取得状況に大きな差が出ているというふうに考えられるわけでして、一定期間のポジティブアクションは必要であるというふうに考えます。ただし、そうであるならば、これは一定期間経過後に見直される必要というものがあるかと思いますので、その点を最後に申し述べたいと思います。私からの意見は以上でございます。どうもありがとうございます。(拍手)
○とかしき委員長 ありがとうございました。次に、池田参考人にお願いいたします。
○池田参考人 おはようございます。労働政策研究・研修機構の池田と申します。平素より当機構の活動に御理解と御協力を賜りまして、ありがとうございます。この場をかりて御礼申し上げます。私は当機構の研究員になって十五年になるんですが、終始一貫して仕事と家庭の両立支援に関する調査研究を担当してまいりました。今日は、その経験を踏まえまして、改正育児・介護休業法の法案の中でも、先ほど高村参考人も言及しました男性の育児休業について私の意見を述べさせていただきたいと思います。このような貴重な機会をいただきましたことに、まず深く感謝申し上げます。お手元の黄色と青の表紙がついております資料に沿ってお話ししていきたいと思います。一枚めくっていただきますと、本日の報告内容ということで概要を記載しておりますが、まず一点目、育児休業に係る政策というのは実は二つの側面を持っているということをまず再確認しておく必要があるというふうに思います。育児・介護休業法というのは、元々、男女雇用機会均等法から独立する形で制定されました労働法の一つです。その趣旨は、男女雇用機会均等、そういう理念の下に、男性にも育児休業を適用する、そういう考え方を取っております。仕事と家庭というふうに、ワーク・ライフ・バランスのワークとライフというふうに二つ並べてみたときに、労働政策ですから、やはり女性の労働参加ということに関心がある。 こちらに育児・介護休業法の第一条の目的規定を載せておりますが、ここで赤字で書いてあるところを読んでいただければ分かりますように、やはり、子育てをする労働者の雇用の継続及び再就職を図る、つまり労働参加を支援するということをはっきりとうたっております。さらに、第三条の二項に、ここも赤字になっておりますが、休業後における就業を円滑に行うよう必要な努力を労働者はしなければならない。つまり、家にいてしっかり子育てをしましょうね、それはもちろんあるんですが、やはり、その後に復職をしてキャリア形成をする、就業を継続する、そういう労働参加への関心の強い法律になっているということをまず再確認しておきたいと思います。一方、同じように育児休業取得促進政策として推進されております次世代育成支援対策推進法、この法は、やはり、目的は、少子化対策、数量的な子供の数を増やすということだけでなく、質的な面でストレスや負担感の小さい、より幸福の感じられる子育て生活を実現しよう、そういう子育て支援という側面があります。これは次世代法の第三条にもそれが明記されておりまして、次世代育成支援対策を通じて、子育ての意義について理解が深められ、かつ子育てに伴う喜びが実感されるようにしよう。つまり、ベクトルが実は仕事と家庭をめぐってちょうど正反対の方を向いていて、それが相補的に関わり合うことで育休政策というのを推進している、そういう性質があるということです。今回は育児・介護休業法の改正ですので、次世代法の発想に引っ張られるとちょっと制度設計がいびつになるという側面がございます。なので、あくまでも労働政策、特に男女雇用機会均等という理念の下に制度設計を考えていただきたいというのが私の第一の主張です。次に、一枚めくっていただいて、じゃ、男女雇用機会均等というふうにいったときに、何で男性が育児休業を取らなきゃいけないんですかということになります。女性の育休の場合は、産後の復職支援という側面があります。現実的に産休だけでは復職がかなわないときに、復職時期を少し先に延ばして復職を円滑にしていく、そういう側面があります。しかし、男性については、育休を取れないと離職をするという話では、なかなかそういうふうな想定では話が進んでいないというふうに思います。だけれども、実は、育休には、一定期間子育てに専念して、かつ雇用が保障されるというメリットだけでなく、その後の更なるキャリアということを考えたときには一定のデメリットがあるということが知られています。それが所得ロスとキャリアロスというふうに言われています。所得ロスというのは、御承知のとおり、育児休業というのはノーワーク・ノーペイの原則ですから、一定期間の休業に伴う就業中断で収入が減る、そういう問題がございます。もう一方で、やはり、休業期間が長くなると、その間就業経験を積めないとか、将来のキャリアアップにつなぐ大事な、例えば契約案件ですとか大口の仕事ですとか、いろんなチャンスをその期間に逸してしまう、そういうリスクがありますので、女性だけでなく男性も育児休業を取りましょうねというのは、この育休取得に伴うデメリットを女性だけが甘受するというのはやはり男女不平等ですね、そういう考え方にのっとっています。なので、できることならば、男女の雇用機会均等という意味では、現状は、雇用保険で夫婦が六か月ずつ育児休業を取るとちょうど所得ロスが一番小さくなるような設計がされていますが、やはり、男女が共に子育てに関わるという家庭生活の面だけではなくて、就業機会を男女で均等にしていく、そういう側面があるんですよということをもう一つ確認しておきたいと思います。その観点から見たときに、先ほど高村参考人も指摘されておりましたとおり、スライドの五番目ですが、男性の育休取得率というのは極めて低調になっています。この圧倒的な男女差、かつ、諸外国と比べても、正直、国際会議に出ますと本当に失笑を買うぐらいの低い取得率ということを何とかしなきゃいけないということで、ここ数年間、男性育休についての関心が盛り上がってきたわけなんですが、実は、その中で余り語られていない事実というのがあります。それがスライドの六ページ目です。実は、育休制度以外の制度を使って、子供が生まれたときに仕事を休むという男性は割と多いんですね。日本の場合は、未消化の年休がかなりあるという状態ですので、やはり年休は所得保障一〇〇%ですし、先ほど言った、半休、時間休、連続休暇、いろんな取り方ができます。非常に柔軟な形で仕事と家庭の事情に合わせて子育てに時間を割くことができる、そういう便利な制度として使われているという面がございます。あるいは、企業の中には配偶者出産休暇とかいろんな特別休暇制度を用意していて、そういったいわゆる育児休業という方式ではない方式で休んでいる人が結構実はいるんですよということがあります。なので、そもそも休めないという人と、休めるんだけれども育児休業は取っていないという人と、育児休業を取っているという、この三層構造になっているということをちょっと頭に置いていただきたい。どうしても、育児休業を取れないイコール休めない、何か、人手が足りない、仕事が忙しい、そういう話になってしまうんですが、休めないという話と育児休業を取らないという話はちょっと段階の違う話として専門家の間では共有されている問題ですので、この点、御注意ください。そうすると、六ページ目のスライドで、いずれも非取得、つまり、どんな手段を使っても休んでいないですよという人は、実は二三・八%なんですね、これは一番新しい調査ですが。そうすると、この人たちが正規の育休を取るとどうなりますかということが問題になります。実は、育児休業といっても、男性の場合は、何か月もの単位で取っている人というのはそれほど多くなくて、やはり短期間、場合によっては五日未満とか一週間とか一か月未満、そういった人たちが圧倒的に多いので、それと例えば二十日間丸々繰り越している年休を全部消化するのと何がどう違うんですか、そういう問いが専門家の間では出ています。 なので、女性が育休を取れないという場合は、やはり最初から何か月単位で取るので、それが取れないとなると非常に仕事と家庭の両立が危うくなるという側面があるんですが、男性はこの短期の取得という問題が間に挟まっているので、非常に問題を複雑にしています。実際に、では、ほかの休業制度を使った場合はどうなのかというと、やはり取得日数というのは短めになります。やはり育児休業を取っている人は長めです。スライドの七ページを見ていただくと分かるんですが、制度の種別を問わない合算の平均、この左側の図の一番下にありますが、これが大体十三・一日、二週間弱ぐらいですね。それに対して、育児休業の場合ですと二十六・二というふうになっていますから、やはり一か月近くというふうになっていますので、単純に考えて倍ぐらいの日数は取っているということになります。そうすると、やはり短くいろいろ小刻みに取っていくというのが今の現状の男性の、要するに両立支援のある種の戦略というか、そういうスタイルなんですよね。それを、育児休業をやはり取りましょうよ、それで、できれば長く取りましょうよというふうに持っていくということが大事じゃないですかねという話になります。そういう観点で、一枚めくっていただいてスライドの八ページ目ですが、改正法を見ましたときに、どういったことが効果として期待できるかといいますと、先ほど申しましたように、育休以外の制度を使って休んで子育てに時間を使っている、そういう男性が育休を取るようになるということです。ですので、年休で十日間とかほかの特別休暇を使って二週間ぐらいとかと言っている人たちが、二週間だったら育休を取りましょうよというふうに、先ほど言った個別周知と意向確認というのがそこにくっついてきますので、育児休業を取りましょうよというふうになります。それによって当事者が育休を取るということを意識するようになって、制度についての十分な理解がないままに他の特別休暇で対応しようとしていたところが育休を取るようになる、それによって育休取得率が上がるということが期待されています。その制度設計の中で、二回に分割できるとか、先ほども言及のありました育休中の就労を一部認めるというのは、これは、現状の、柔軟に、分かりやすく言うと、年休と比べたときに育休の方がいいと思えないと、やはり年休を取った方が当事者にとっては取りやすいんですよね。そうすると、育休中の就労というふうに言うと、何か子育ての片手間に仕事もするというふうに見えますが、現実的には、年休を使う場合は、時間休とか半休という形で、一日の時間を子育ての時間と仕事の時間というふうに割って、それで両方に当たるということが現実的にできるようになっていますので、そういったやり方で取りあえず男性が育休を取るということの道筋をつけよう、そういう考え方というふうに理解できます。実際に、厚生労働省の資料でも、九ページに引用しておりますが、やはり長期一回を最初から念頭に置いて取っていただくのではなくて、断続的に細切れに取っていただく、そういうやり方で取得の取りやすさということを考えていきましょう、そういう制度として理解できます。しかしながら、この九ページのスライドを見ていただいても分かりますように、母と父とで矢印の引っ張り方がやはり違いますよね。ここで問題になってくるのが今後の検討課題ということになりますが、やはり男性と女性の育児休業の取り方の非対称性という問題を今後どう考えていくかということは非常に重要な課題になります。特に、今回新設されました出生後育休につきましては、女性は、産後六週間、これは強制休業です。本人が働きたいと言っても一切の就業が認められない、そういう休業になっております。他方で、出生後育休の方は、分割できるということは、間を挟んで仕事をしてもいいですよということになりますし、労使協定に基づく休業中の就労というのは、これは文字どおり断続的に就業が認められるということになります。これを、やはり男は仕事なんだよねというふうになっちゃうと、性別役割分業を支持し強化する制度になってしまいます。なので、やはりこの非対称性の問題というのは、先ほどポジティブアクションというお話がありましたが、短期的にはポジティブアクションとして考えてもいいですが、やはり男女雇用機会均等の根本的な問題に関わる部分を持っているということを最後にお話ししていきたいと思います。 二つの方向性として、まず、やはり、男性も働けるんだったら女性も育休の合間に働けるということがあってもいいよね、そういう考え方もあると思います。つまり、今回男性に適用した考え方を女性にも適用していきましょうよ、体の体調がよかったら働いてもいいんじゃないんですか、そういう考え方を取っていくという考え方はあると思います。いや、そうではなくて、やはり産休というのは母体保護ですから、これはもう何物にも代え難い保護の対象なので、これはもう鉄板で動かさない。だったら、男性も一定期間は仕事をしないでしっかり休んでください、そういう考え方もできます。だけれども、女性の母体保護の問題というのは、やはり他者が代替できない自分自身に対するケアであるのに対して、男性の育児というのは、現実的には、夫婦以外の人が子育てに関わるという場面が日本では結構あります。実家の親だったり、あるいはシッターさんだったり、産褥シッターを雇ったりとかということもありますので、妻か夫かでいったら、妻が要するに動けないんだから夫がやらなきゃいけない、だけれども夫婦だけじゃないですよという問題がありますので、この点を留意して今後検討を進めていくことが大事じゃないかなというふうに思っています。最後に、締めになりますが、労働政策としての育休政策と子育て支援政策としての育休政策というのはやはりちょっと性質が違うというのは、労働政策というのは労働市場に介入する政策だということを最後に申し添えておきたいと思います。市場である以上は、交換関係、ギブ・アンド・テイクで成り立つ。その当事者の取引関係の中に政府が介入して、市場取引のルールを整備していくというのが労働政策が持っている一つの重要な機能としてあります。
そのときに、育休とか何にしても、使用者の人が気軽に、休んだ分は働いてねと言いますけれども、それは別に意地悪で言っているんじゃなくて、やはりギブ・アンド・テイクの関係で職場は成り立っているということを端的に表している側面がありまして、政策介入によって労働者にある種の便益を与える、今回の場合だと、育休を取りづらいから取れるようにしましょう、なるべく長く取れた方がいいですねということを便益として与えた代わりに、企業側というのは、そのコストに見合った見返りというのをやはり労働者に求めてきます。例えば、休んだ分は働いてねという気軽な言い方は、例えば、女性が育休を取って復職した後には、やはり管理職昇進という形で見返りを求めます。これは、職域拡大とか男女雇用機会均等の理念に合っているので、どちらかといえば望ましいことというふうに捉えられがちですが、やはり、そこまで仕事にフルコミットメントしたくないんだけれどもという女性にとっては厳しい選択を迫られているという側面も当然ございます。そういう意味で、お互いに信頼関係の上で成り立っている職場ではありますが、やはり、営利活動の中で従業員の人材を活用しよう、その基本前提の中でいろいろなベネフィット、便益をやり取りしているというのが労使関係ですので、困っているから助けてあげないといけないという形で、安直な慈悲深さで、労働者に便益を上から介入して無理やり提供するようなことをすると、それは労働者にとってある種の債務を負うことになりかねない。育休を取った見返りにあなたは何をしてくれるんですか、そんなに育休を取りたいんだったら。よく言われるのが、そういうことになると逆に子供を産みづらくなるとか、逆に、それに見合った男性しか要するに企業が期待をかけなくなるとか、そういったことが現実的に懸念される。これは女性についても言われますし、労働政策全般について、やはり、利益を得ると思った方の首を絞める結果という、そういう副作用が常について回るということを考慮して政策を決めなきゃいけない。だから、労使の対話ということが大事になります。対話が大事というと、何か話合いでマイルドに問題を解決しようとするハト派の主張のように見えますが、これは違います。何か思い切ったことをやるのが格好よくて、マイルドな人は弱腰という話じゃなくて、基本的に、取引関係、交換関係について労使が納得していないルールを適用しようとすると、必ずゆがみということが生じます。それは、もう一回強調しますが、利益を与えようと思って、困っているから助けてあげようと思った方の人を苦しめるという結果になるのが労働政策の怖いところです。非正規の人がかわいそうだから、女性の人がかわいそうだから、ああいう人がかわいそうだから何とかしてあげようといっても、急進的なことをやると、その副作用でその人たちが困るということになるということを重々留意して、労働政策としての育児・介護休業法の在り方ということを引き続き御検討いただきたいというふうに思います。どうもありがとうございました。(拍手)
○とかしき委員長 ありがとうございました。次に、杉崎参考人にお願いいたします。
○杉崎参考人 日本商工会議所で労働政策の担当部長をしております杉崎と申します。本日は、このような場を設けていただきまして、誠にありがとうございます。感謝申し上げます。育児・介護休業法の改正案につきまして、労働政策審議会の使用者側委員として議論に参加した立場から、また、商工会議所は全国に百二十二万の会員を擁しておりまして、その大宗が中小企業であるということから、本日は中小企業の実態を踏まえて意見を申し上げたいと思います。まず、改正法案に対する基本認識を申し上げます。今回の改正法案の基本的な考え方となっております男性の育児休業取得の促進につきまして、その趣旨に賛同いたしております。女性の育児休業取得率が八〇%を超えて推移している一方で、男性の取得率は七・四八%にとどまっております。家庭内の家事、育児の負担が女性に偏っている現状を踏まえますと、男性も育児休業を取得し、その後も育児を担っていくということは、仕事と育児を両立できる社会の実現はもとより、女性の雇用継続、ひいては女性の更なる活躍に向け非常に重要であると認識しているところでございます。一方で、育児休業は、労働者が申し出た場合、事業主は必ず取らせなくてはならない強い権利となっております。企業の立場では、労働者が育児休業を取得した場合、いかに業務を円滑に回していくかということが課題になります。人手不足の傾向が続いている中で、特に、企業規模が小さくなるほど、育児休業を取得した労働者の代替要員の確保など、業務の円滑な継続に困難が生じることが考えられます。また、コロナ禍の非常に厳しい経済情勢の中で、多くの中小企業は、雇用調整助成金等の各種支援策を活用しながら事業の存続と雇用の維持にぎりぎりの努力を続けていることから、企業の余力は乏しく、余裕を持って人員を確保しておくということも困難でございます。今回、改正法案の取りまとめに当たりましては、労働政策審議会において議論が行われましたが、現下の企業の厳しい実態も踏まえつつ、男性の育児休業取得促進策を真摯かつ建設的に議論した結果、妥当かつ実効性のある結論に至ったものであると認識してございます。次に、改正法案の具体的な内容について意見を申し上げます。今回の改正法案の大きな柱の一つが、男性について、産後八週の間に四週間分の休業を取得することができる出生時育児休業制度の創設であります。男性が育児休業を取得しない理由として、業務の都合ですとか職場の雰囲気を挙げる割合が多いということを踏まえますと、育児休業の取得が進んでいない男性について、柔軟に取得できる新たな仕組みを設けることは有意義であると考えております。一方で、現実的には、マンパワーが乏しい中小企業においても、年末などの繁忙期に複数の社員が同時に育児休業を取得する可能性もあり得ること、また、休業する男性労働者の仕事を引き継ぐほかの労働者の負担軽減、例えば、引継ぎに係る準備ですとか体制整備を十分な時間的余裕を持って行うことで、特定の個人に過度な負担がかからないようにするということが重要でございます。したがいまして、企業における業務の円滑な継続には、柔軟性を確保することに加えて、現場の実態に配慮した仕組みにしていく必要がございます。特に、今回は、出生時育児休業制度について、通常の育児休業よりも申出期限を短縮し、原則二週間にすることとなっております。これに関しましては、義務を上回るような取組を実施することを労使協定で定めた場合には、申出期限を一か月前とすることが可能となっております。このように、企業の現場に配慮しつつも、男性の育児休業取得促進を図るような仕組みを設けるということが、今回の改正法案の実効可能性を高めることにつながっており、まさに労働政策審議会で労使が議論して結論を得た成果であると考えております。また、今回の出生時育児休業制度については、事前に調整した上で、休業中に就労することが認められる案になっております。一方で、本来休業したい労働者が意に反して就業させられることがないように、労使協定の締結や、個別の同意、労働者側からの条件の申出など、様々な手続や要件を求めております。この点については、労働者の意に反して働かされることを防ぐとともに、男性の育児休業取得のハードルを下げ、育児休業を取得しやすくなる効果が見込めるという点、さらに、中小企業における事業の継続性を担保する点からも評価をしたいと思っております。今回の出生時育児休業制度が新設されることにより、これまでよりも男性が育児休業を取得するようになるということが考えられますが、中小企業はマンパワーに限りがあることから、育児休業を取得しやすい環境整備に向けた支援が重要であると考えます。このため、労働政策審議会の建議では、特に中小企業においては育児休業等取得に伴う代替要員の確保等の負担が大きいことから、派遣等による代替要員確保や業務体制の整備等に関する事業主の取組への支援、ハローワークにおける代替要員確保のための求人に対する積極的な支援を行うことが適当、事業主の取組への支援については、ノウハウが十分ではない中小企業からの相談対応や好事例の周知も含めて行うことが適当とされたところでございます。雇用の七割は中小企業が担っているということから、中小企業において実効性を確保することが重要でございます。こうした形で、国からの支援も受けながら、中小企業においても男性が育児休業を取得できるよう、日本商工会議所といたしましても取り組んでまいりたいと考えております。今回の改正法案のもう一つの柱が、事業主に対する、育児休業を取得しやすい職場環境の整備及び労働者への育児休業制度の個別の周知、取得意向の義務化でございます。男性が育児休業を取得しない理由として、職場の雰囲気が挙げられております。職場での取組の有無によって育児休業取得率が違ってくるということを踏まえますと、育児休業を取得しやすい職場環境の整備ですとか、労働者への個別の周知、意向確認が求められるということについては理解いたしているところでございます。一方で、今回の措置は企業規模にかかわらず事業主に義務づけられるということを踏まえますと、義務の内容については、中小企業でも対応可能なものにしていく必要がございます。このため、労働政策審議会の建議においては、育児休業を取得しやすい職場環境の整備の具体的な内容としては、中小企業にも配慮し、研修、相談窓口の設置、制度や取得事例の情報提供等の複数の選択肢からいずれかを選択することが適当である、また、労働者への個別の周知、意向確認の具体的な方法としては、中小企業にも配慮し、面談での制度説明、書面等による制度の情報提供等の複数の選択肢からいずれかを選択することが適当であるとされたところでございます。これらの取組を行うことは中小企業にとってなかなかハードルが高いものではありますが、国において、これらの環境整備や周知に関する分かりやすく活用しやすいポスター、リーフレット等を提供していただけるということになってございます。これらの国の支援や各種のツールも活用しながら、中小企業においてもこれらの義務を円滑に履行できるよう、日本商工会議所は改正内容の周知に協力していきたいと考えてございます。冒頭にも申し上げましたが、コロナ禍の影響もあり、多くの中小企業は今もなお事業の存続と雇用の維持にぎりぎりの努力を続けており、非常に厳しい経営環境に置かれております。厳しい経済情勢ではありますが、男性の育児休業の取得促進は、仕事と育児を両立できる社会の実現はもとより、女性の雇用継続、女性の更なる活躍のみならず、少子化対策にも資する非常に重要な課題であることから、その必要性を理解し、労働政策審議会においては、労使共に現場の実情に即した建設的な議論を行ってまいりました。今回の改正法案は審議会の議論を踏まえて作成されており、審議会委員の一員といたしまして、この改正法案には賛同いたしております。日本商工会議所といたしましても、今回の改正法案が成立した際には、周知に積極的に協力させていただくとともに、男女共に希望に応じて育児休業が取得できる社会の実現に協力してまいりたいと考えてございます。説明は以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○とかしき委員長 ありがとうございました。次に、舟橋参考人にお願いいたします。
○舟橋参考人 お世話になります。全国労働組合総連合女性部長の舟橋でございます。本日は、育児・介護休業法改正に関わって、労働者の立場、労働組合の立場からの発言の機会をいただき、ありがとうございます。全労連女性部は、昨年のコロナ禍にある四月から七月にかけて、健康・労働実態及び雇用における男女平等調査、七千八百二十九人、妊娠・出産・育児に関する実態調査については、二〇一五年以降に妊娠、出産した人を対象に、二千五百七十一人から回答を集めました。本調査は一九九二年から五年ごとに実施しているものであり、前回は二〇一五年、今回は七回目です。皆さんにお配りをしております資料、「本調査の目的と背景」と記された表紙の五ページからの調査概要につきましては、厚生労働省で記者発表を行い、厚生労働省、内閣府には提出済みのものでございます。本調査は、働く女性の労働環境にどのような変化があり、どのような課題を抱えながら働き続けているか、また、何が仕事と生活の両立を困難にしているか実態をつかみ、女性はもちろんのこと全ての労働者が人間らしく働き続けることができるよう、職場、労働行政に活用するため行っているものです。五年ぶりとなる調査では、前回調査以降、女性活躍推進法、働き方改革関連法の労働時間の上限規制、年次有給休暇の年五日取得義務化、パートタイム・有期雇用労働法の不合理な差別禁止、また、パワハラ防止法などが施行される中で調査を行ったもので、この調査への影響も把握をしたところです。二〇二〇年は、新型コロナウイルスの発生と感染拡大に伴い、これまで以上に、女性労働者、非正規労働者に対して様々な負担が集中しています。その結果、雇用や生活面等への影響も大きく、女性労働者、非正規労働者の実態を踏まえて、改善に向けた実効ある施策を進めるなど、ジェンダーの視点から諸制度を見直すことが求められています。また、第五次男女共同参画基本計画の具体化の充実を図ること、通常国会に育児・介護休業法改正案が審議されており、安心して妊娠、出産、子育て、介護のできる法改正にしていただけることを願い、本日は私からの意見を述べさせていただきます。それでは、配付しております舟橋初恵の参考人資料を御覧ください。まず、資料二ページ。あなたは妊娠、出産、子育てを理由として仕事を辞めた経験はありますかの問いに、非正規は、辞めたことがある五六・四%、前回調査は六〇・二%で、正規は七・〇%、前回五・八%と大きな差があります。非正規で、妊娠、出産、子育てを理由として仕事を辞めた経験がないとする人が四三・三%でした。これは、前回三八・四%から増えており、就労を継続する方は僅かですが増えています。三ページを御覧ください。辞めたことがあるを選んだ方に尋ねています。辞めた理由はの問いに、雇用形態別で見ると、正規は、職場に両立を支援する制度や雰囲気がなかったが二三・七%と最も多く、自分の体力がもたなそう一六・七%、勤務時間が合わなかった一四・七%、家事、育児に専念するため希望して辞めたが一二・二%でした。非正規は、家事、育児に専念するため希望して辞めたが最も多く一八・九%、職場に両立を支援する雰囲気や制度がなかった、自分の体力がもたなそうが共に一七・七%、次いで、勤務時間が合わなかった一六・五%、つわりや体調不良のため一〇・四%でした。退職勧奨、解雇されたが全体で六・一%に上っています。妊娠期間中や育児、短時間勤務が終わって一年以内に解雇や雇い止めなどの不利益扱いを行うことは違法とされているにもかかわらず、そのような違法行為が実際にあることが改めて浮き彫りとなっています。保育園に預けられなかったも三・八%であり、待機児童ゼロが実現されていないことも分かります。職場に両立を支援する制度や雰囲気がなかった二〇・三%、両立支援制度はあったが取れる雰囲気がなかったが六・七%、合わせると、四人に一人は離職せずに済んだかもしれません。五ページです。あなたは妊娠、出産、育児に関わってハラスメントを受けたことがありますかの問いに、二〇一七年十月の育児・介護休業法改正によってマタハラ防止措置が強化されたにもかかわらず、ハラスメントを受けたことがあるは一六・六%、前回の調査より一・一%増えています。法改正が徹底されていない実態があります。六ページです。あると答えた方に尋ねます、どんなハラスメントですかの問いに、表とグラフは前問でハラスメントがあると答えた四百十一人の内訳です。正規七三・九%、非正規七〇・七%が、言葉で嫌がらせを受けたと答えています。七ページです。産後休暇終了後、育児休業を取りましたかの問いに、育児休業を自分が取ったは正規で八二・五%。自分と配偶者が取ったを合計すると、正規女性の育児休業取得は八七・七%です。一方、非正規は五〇・九%です。非正規では、仕事を辞めた二七・八%と三割近くに上っています。八ページです。育児休業を取った方はお答えください、あなた自身育児休業をどのくらい取りましたか。自分が取った、自分と配偶者が取ったの合計です。育児休業の取得期間は、正規、非正規共に十二か月から一歳六か月未満が最も多く三〇・二%です。二〇一五年前回調査と比べて僅かに増加しています。九ページです。配偶者が育児休業を取った方にお聞きします、配偶者の育休期間はどのくらいですか。配偶者が取った、自分と配偶者が取ったの合計。配偶者の育休取得期間について、雇用形態別では、正規は五九・九%が一か月未満でした。非正規では配偶者の育休取得はほとんど例がなく、回答のあった四件は全て三か月未満でした。十ページです。あなたが希望どおりの育児休業を取らなかった理由をお答えください。希望どおりの期間育児休業を取らなかった理由で多かったのは、保育園に入れるため。全体二千五百七十一人から、不明、無回答千三百四十一人を除いて、千二百三十人が希望どおりの期間育児休業を取れておらず、約半数が育児休業期間を短縮する選択をしています。千二百三十人のうち、希望どおりの期間育児休業を取らなかった理由で多かったのは、保育園に入れるためで、正規は五五・七%、非正規四四・〇%となっています。続いて多いのは、休業中の所得保障が少ないで、正規は三一・九%、非正規一六・〇%となっています。十二ページです。夫が育児休業を取らない、又はもっと長く取りたかったが期間を短くした理由は何ですか。この質問は妻に聞いた回答となりますが、全体で、夫の職場に育休を取れる雰囲気がないが最も多く四九・九%。次いで、育児休業の制度が職場にない二一・三%、人員不足二〇・二%です。十七ページです。育児休業法の改善に向けて最も要求したいことは何ですか。育児休業法の改正要求のトップは、育児休業中の所得保障五七・七%。代替要員の配置の義務化二九・二%、男性の取得の推進の措置二五・五%です。十八ページです。子育てに関する両立支援制度の改善に向けて要求したいことは何ですか。両立支援制度の改善に向けての要求では、子供の看護休暇の日数増五五・八%、参観日、PTA活動など家族的責任を果たすための休暇の新設、拡充四八・五%、子供の看護休暇の対象年齢の引上げ三四・七%と、子供のための休暇制度の拡充を求める回答が上位三つを占めています。この傾向は非正規も同様です。十九ページです。あなたが仕事と家庭、育児を両立させて働き続けるために最も切実な要求を五つお答えください。仕事と家庭、育児を両立させて働き続けるための切実な要求五つは、全体では、休暇の取りやすい職場環境四〇・五%、子の看護休暇の拡充三九・〇%、保育や授業参観、行事参加の休暇三三・五%、子育て等に対する職場の理解二八・七%、保育料など育児に関わる負担軽減二八・〇%でした。まとめをさせていただきます。あなたは妊娠、出産、子育てを理由として仕事を辞めた経験はありますかの問いで、辞めた方の回答で、職場に両立を支援する制度や雰囲気がなかった二〇・三%、両立支援制度はあったが取れる雰囲気がなかった六・七%を合わせると、四人に一人は離職をせずに済んだかもしれません。ハラスメントを受けたことがあるは一六・〇%で、言葉で嫌がらせを受けたと七割が答えています。このように、職場における両立支援制度の整備と制度取得を促す体制整備が求められています。自由記載、当事者の生の声です。妊娠中、通勤緩和を利用したら、上司から、妊娠していることを公表し、迷惑かけて済みませんと言いなさい、制度だからといっていつまで取っていいものではない等、精神的、体力的にもつらい思いをしました。こういう声が寄せられています。育児休業法の改正要求のトップは、育児休業中の所得保障五七・七%でした。育児休業中の所得保障の要求が強いのは、女性の賃金が低いからです。国税庁民間給与実態調査二〇二〇年で、平均給与は、男性正規五百六十一万円、女性正規は三百八十九万円、女性の非正規は百五十二万円となっています。女性では、百万円から二百万円は五百二十六万人と最も多く、百万円以下と合わせると八百六十七万人となっています。この賃金が低いことが妊娠、出産をためらう要因で、様々な両立支援制度があっても、所得保障のないために活用せず、無理をしてしまう要因の一つと考えられます。育児休業法の改正要求の、育児休業中の所得保障五七・七%に次いで多かったのが、代替要員の配置の義務化が二九・二%です。これも自由記載からですが、人員不足のため休憩、年休等が取れない、このことが原因で疲労が増し、ハラスメントやメンタルにつながっているのではないでしょうかと声が寄せられています。本日、育児・介護休業法改正に係る参考人意見ということで、妊娠、出産、育児に係る調査結果よりの報告を中心に発言させていただいていますが、二十一ページを御覧ください。もう一つの、健康・労働実態及び雇用における男女平等調査で、要求調査を行っていますが、女性の二大要求ははっきりしています。賃金引上げと人員増です。妊娠、出産、育児を行い、働き続けるためにも、この賃金引上げと人員増は切実な要求です。世界経済フォーラムが毎年発表している男女の格差のギャップ指数では、今年公表されているもので、日本は百五十六か国中百二十位でした。経済分野における順位を上げるためにも、女性が働き続けられる制度整備、男女差別ない、八時間働いたら暮らせる賃金、労働条件の整備をお願いします。また、女性労働者の六割が非正規労働者という現在、本日報告したアンケート結果でも、非正規労働者はより制度利用が困難となっています。そして、今後懸念されるのは、雇用によらない働き方を増やすと政府はしていますが、雇用によらない働き方は、産前産後、育休など労働者保護の制度は使えません。男女とも安心して子育てできる社会であるためにも、非正規雇用や雇用によらない働き方が広がらないようお願いをいたします。最後に、妊娠、出産、育児を自己責任とせず、社会が後押ししていただく制度となることをお願いをし、私の意見とさせていただきます。ありがとうございます。(拍手)
○とかしき委員長 ありがとうございました。以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
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○とかしき委員長 これより参考人に対する質疑を行います。質疑の申出がありますので、順次これを許します。上野宏史君。
○上野委員 自由民主党の上野宏史でございます。四人の参考人の先生方、大変貴重な御意見をいただきました。ありがとうございました。今回の法改正でありますけれども、全ての働く方がその希望に応じて仕事と育児を両立をできるようにしていく、また、足下、コロナウイルス感染症の影響もありますけれども、令和二年出生数が八十七万人、また令和三年は七十万人台にもなるということも言われておりますけれども、子供を産み育てやすい環境をしっかり整えていくという意味からも、大変、その目指すところ、大切な法案であるというふうに思います。参考人の先生方の御意見をしっかりと踏まえながら審議に当たっていきたいと思います。順次お伺いしていきたいというふうに思います。 まず、足下の育児休業の取得率、先ほど各先生方からも言及がありました。女性の八三%に比べて男性は七%である、さらに取得期間についても男性は大変短い、五日未満が三六%ということでもありました。男性に対してなぜ育児休業を取らなかったのかという話を取ると、例えば、会社の中で制度が整っていない、これは周知不足という点もあると思いますけれども、あとは、収入を減らしたくないというような調査結果というのも挙げられているところであります。一方で、こうした点についても従来から指摘をされておりましたし、様々な制度改正において手当てをされてきた、育児休業給付等についても手当てをされてきたところであります。各先生方、様々な、それぞれのお立場で、こうした育児休業の施策についてはコメントをされたり発信をされたり、又は政府の施策決定に関わってこられた先生方もいらっしゃるというふうに承知をいたしております。現行の制度、今の制度についてどのように評価をするのか、また、今回の改正法案でそうした課題がどのように解決をされていくというふうに考えているのか、各先生方、四人の先生方にお伺いをしたいと思います。
○高村参考人 高村でございます。御質問いただきました点でございます。現在の制度についての評価ということと、今回の改正による効果の見通しということで御質問いただいたかというふうに思います。現在の制度の、育児・介護休業法の中に定められていることと、それから、雇用保険法の中から給付される休業給付ということと、両方あるかというふうに思います。御質問の中に特にございました、制度が整っていないということと、それから、所得が減るのではないかという二つのことを中心にちょっと申し述べたいと思います。まず、制度が整っていないということについてなんですけれども、実際には、一定の要件を満たしていれば請求権というのがあるわけでございます。当然、会社の方でも、それを会社として認めるとか、あるいはそれに対して上乗せするというような制度をつくりまして、就業規則などに定めてあればよりよいとは思うのですけれども、実際には、会社に制度がなかったとしても、こちらの制度の中で請求権というのが認められているところでございます。ですので、現在の制度の問題というよりは、議員も御指摘になられましたとおり、やはり周知というところが不足しているのかなというふうに考えております。そういったことでいいますと、今回の改正の法案の中にもございます個別周知ということに関しては、ほかの参考人の方からも御意見がございましたけれども、私は効果が見込めるのではないかというふうに考えております。ちょっと、その程度というところについてまでは申し上げられるところではないのですけれども、効果があるかないかということについて言えば、その点については効果があるというふうに考えております。また、所得保障というところでございますけれども、これはこちらの法律というよりは雇用保険の方の話でございますけれども、私はこちらについても十分に周知が実は足りていないという面があるのではないかというふうに考えております。私は先ほどイクメンプロジェクトの中の推進委員会のメンバーであるということを申し上げたんですが、表彰を受ける企業さんの中には、従業員の方がやはり所得保障ということに関して非常に不安を持っている、それについては情報が正しく伝わっていないこともあるのではないかというふうにお考えになられて、その方の個別の置かれている状況、実際にどのぐらい所得があるとか、そういうことを踏まえてシミュレーションを見せることによって、個人の方の理解それから安心感ということが広がり、取得につながったというふうなことに取り組まれている企業さんもございますので、この点についても周知というところは大切かなというふうに思っております。済みません、ちょっと長くなりました。ありがとうございます。
○池田参考人 御質問ありがとうございます。まず、現行法の制度の評価ですが、これは実は女性に関しては、非常に、もうこの後どう上乗せするかというぐらい、特に無期契約の女性、先ほど非正規の問題に言及されましたが、非正規の問題というのは相変わらずあるというふうに思いますが、正社員として働く女性、無期契約の女性に関しましては、これまで度重なる改正で、相当程度手厚い改正を繰り返してきました。実は、これはある意味皮肉なことなんですが、先ほど申しました、女性の離職防止のために、何とか離職を防ごう、出産退職を減らそう、そういう趣旨から、育児休業期間の延長ですとか短時間勤務制度の単独義務化ですとか、とにかく離職を防ぐということについて、女性に対してかなりいろいろな法改正をして手厚くしてきたんですが、結果として、女性だけが制度を利用すれば何とか離職を防止できるようになってしまっている。つまり、男性の出番というのがどこにあるのかが非常に分かりづらい法体系になってしまっているという問題があります。典型的なのがパパ・ママ育休プラスで、一歳二か月まで育休期間を延長できますよと言っているんですが、女性単独でも保育園に入れない等の事情があれば一歳半ないしは二歳まで延長できるんですから、この一歳二か月までの延長って何なんですか、そういう疑問がやはり出てくるんですね。なので、先ほど言った、男性では制度がないとか、無知だとか、周知が足りていないという問題は当然あるんですが、現状において女性が一人で制度のやりくりをすれば何とかなってしまっているというところで、そこに男性の出番を何とかつくらなきゃいけない、そういう非常に無理難題が実はこの法律にはあります。ですので、どういうことかというと、もう今までの考え方から一つ発想を変えないといけないというのが、多分ここの、今回の法律の大きなポイントだと思います。ですので、分割取得を可能にしたというのは、これまで一つの制度をなるべく長く連続して、長期間にわたって使えた方がいいんだ、そういう発想を一旦やめて、制度を分割してもいいんじゃないかというふうになるということは、断続的に仕事と家庭を調整していくということになりますので、発想の転換が含まれているんですね。今後、男性の育児休業取得を増やそうとか男性の制度利用を増やそうというときには、いかにしてこの発想の転換をしていって、それで、女性の両立の在り方も見直し、そこに男性の両立の在り方というのをはめ込んでいく、そういう発想の転換の第一歩として、今回の改正というのは非常に大きな成果じゃないかなというふうに私は見ています。以上です。
○杉崎参考人 まず、現行制度の評価についてでございますが、制度自体は一定程度は整っているものと認識してございます。ただし、先ほど来、他の参考人の先生方からの御指摘もございましたように、周知の面で課題があるということは考えられるかと思います。例えば現行のパパ休暇制度というものがございますが、これがどれだけ十分に知れ渡っているのか、活用されているのかという課題は挙げられるかと思います。そして、もう一つの観点は、現在、男性の方々が育児休業、休暇を取っていないという現状なんですけれども、年次有給休暇を使っているケースもあるということがございます。じゃ、なぜ年次有給休暇を使っているのか。そこについては、柔軟性、申出期限ですとかを始めとした柔軟性の問題があるのかなという、この周知の問題、柔軟性の問題があるというふうに考えてございます。一方で、今回、改正法案に盛り込まれております新制度の評価ですとか効果といった点についてでございますが、まずもって、非常に柔軟な仕組みとされている、しかも企業の実態を踏まえた上での制度となっている点が評価できると思ってございます。例えば、申出の期限でございますとか、分割、休業中の就労と、非常に柔軟な仕組みになっていることが挙げられます。また、周知の点におきましても、この周知、意向確認の義務化というところが入ってございます。したがいまして、現行の育児休業制度の課題を解決する新制度であるということが言えるのかと思います。こうした制度が実現することによりまして、男性の取得率の向上が図られるのではないかというふうに考えてございます。そして一方で、所得面、育児休業給付に関してでございますけれども、こちらは現在でも国際的に見て高い水準であると認識してございます。これはユニセフの報告などにもございましたと思いますが、世界的に見ても立派なものであるかと思います。一方で、財源の問題でございますが、育児休業給付は雇用保険料を財源としてございます。現在、雇用調整助成金を始め、この財源の確保が非常に大きな課題となっている中で、慎重な検討が必要であろうと思ってございます。今回の改正におきましても、労政審で議論した結果、給付率は現行のままが妥当であるというふうにされたことから、この育児休業給付については非常に現時点でも評価できるということが言えるかと思います。以上でございます。
○舟橋参考人 舟橋から意見を言います。まずは、現行制度よりも、いわゆる男性の育児休業に関しては柔軟な対応、具体的に言えば二週間前に申出をすればいいという期間の短縮なども含めて、より使いやすい方向での改正にはなっているというふうに思います。全体、ほかの意見も出ておりますが、女性も含めて、この制度自体、非常に不十分な周知状況に置かれているということはあると思います。改めて、改正になった場合の、どういう違いがあるのか、また、使うためにはどういうふうに促進していくかということで、丁寧にいろいろ計画されているかと思いますけれども、より徹底をお願いをしたいと思います。 さらに、女性たちも含めて、男性がより柔軟にこの制度を使うことで、女性自身も育児、妊娠、出産も含めて後押しをしてもらえるという制度になっているということでは、特に、柔軟に取れる、出生時ですね、退院時から取れるということなども含めて、いわゆる出産後の女性の非常に不安定な時期に男性が育児に関わってもらい、女性が安定して子育てもできる。そして、男性も子育てに関わることで男女共に子育てをするということの重要性をきちんと感受できるというのは重要な点だというふうに考えています。以上です。
○上野委員 ありがとうございました。各先生方、大変丁寧に御回答をいただきまして、次が最後の質問になるというふうに思うんですけれども、杉崎参考人にお伺いをしたいと思います。先ほどの御説明の中でも若干触れていただきました、人員の確保の件についてお伺いをしたいというふうに思います。企業の経営者又は人事担当者が育児休業を社員の方々、職員の方々に取ってほしいというふうに思っていても、そもそも人手不足であったり、又は専門性のある業務であったり、又は経験が必要な業務ということについて、なかなか代替できる人員を確保できないという点があるんだと思います。日頃から、例えば業務を複数の者で共有をしたり、さらには代替要員を育成をしたり、又は中長期的にそうした人事異動も想定をしながら人事管理をできればいいのだと思うんですけれども、なかなか現実的には難しいということでもあるというふうに思います。そうした中で、こうした課題を解決していくためにはどういう取組があり得るのか、又は具体的にそうした取組事例のようなものがあれば御教授いただきたいというふうに思いますし、あわせて、政府からどのような支援策があればいいのかといった点についてもお伺いをしたいと思います。
○杉崎参考人 御質問ありがとうございます。この点については、中小企業における取得促進をするに当たって、非常に重要な御指摘だと認識してございます。この点については労政審でも議論を尽くしまして、まず一点目が、政府による支援が期待できるということでございます。取りまとめられた建議には、例えば中小企業における代替要員の確保、これについては、派遣等による代替要員の確保、業務体制の整備に関する事業主への支援、ハローワークにおける支援ということが明記されてございます。また、中小企業はなかなかノウハウが十分ではないという実態もございますので、中小企業からの相談対応の支援、好事例の周知というところが建議にも明記されているところでございます。こういった政府による公的な支援を期待しておりますし、実効性ある制度にしていくためには支援が必要だと思っております。一方で、企業側の取組といたしましては、働き方改革を始めとした労働生産性の向上といったようなことも重要だと思いますし、いわゆるチームで仕事をしていくという体制づくり、機運の醸成ということも必要だと思います。先進的な企業においては、多能工化を図って、一人の人が幾つもの仕事をできるような体制を図っていくというような中小企業もあるやに聞いておりますので、こういった好事例をしっかりと周知して横展開していくということが大事だと思っております。いずれにいたしましても、政府の支援に期待するところでございますが、商工会議所といたしましても、政府と緊密に連携いたしまして、中小企業支援に当たってまいりたいと考えてございます。以上でございます。
○上野委員 ありがとうございました。参考人の各先生方の御意見をしっかりと踏まえて、よりよい制度設計、また運用になるよう努めていきたいというふうに思います。ありがとうございました。
○とかしき委員長 次に、中島克仁君。
○中島委員 立憲民主党の中島克仁でございます。本日は、大変お忙しい中、四人の参考人の皆様には、衆議院厚生労働委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場での陳述、拝聴させていただきまして、大変参考になりました。限られた時間ではございますが、私からも何点かお尋ねをさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。まず、池田参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。女性に比べて圧倒的に取得が進んでいない男性の育児休業取得促進ということで、今回の法改正の出発点、男性育休の義務化であったと私自身は承知しているわけでありますが、これは基本的なことで大変恐縮なんですが、男性に限定した義務化といったものが、労働法制上、本来考えられるものなのか、あり得るものなのか、確認をさせていただきたいと思います。
○池田参考人 御質問ありがとうございます。男性育休の義務化の内容ですが、私の理解が間違っていなければ、いわゆる女性の産後休業と同じような強制休業を、男性についても女性の産休期間に課すという、そういう意味での、強制義務化という、そういう御趣旨での御質問というふうに理解いたしました。ほかにもいろんな段階の義務があるんですが、差し当たりそういうふうに理解いたしますと、そういうことが可能だという、そういう労働法学者の意見は私は耳にしたことがございません。御承知のとおり、当機構は学際的な研究機関ですので、労働法の研究者も在籍しておりますし、日々の研究活動の中で、労働法学者と交流し意見交換をするという機会は多数ございますが、この育休の義務化ということが法理論として正当化できるということは、聞いたことがないです。あとは、私の半分解釈と理解ですが、先ほど申しましたように、休業ということはメリットだけじゃなくてデメリットがございます。例えば、休業ということをデメリットというふうに捉えた場合に、どういうことかというと、強制休業ということは、子供が生まれましたと会社に言うと、出勤停止を命じられて給料の支払いを止められるということになるんですよね。これはメリットですかという問いが出てきます。先ほど申しましたように、そのデメリットを上回る大きなメリット、あるいは、そのことよりも更に、休まないと大きなデメリットを被るという、女性の産休の場合には体に影響するという、やはり労働法政策としては、過労死もそうですが、健康とか身体に悪影響を及ぼす可能性があるというのは非常に強い理由になるというふうに理解しています。これに対しまして、先ほど申しましたように、男性がこの期間、家にいて家事、育児をすることの必要性は高いわけですが、強制するほど、そのデメリットを法律とか国家の指示によって全国民に甘受させるというか、それだけの理由があるかというと、やはりそれはちょっとないんじゃないかなというふうに思いますので、そういう意味では、私も、義務化ということが正当化できる理由というのはちょっと見当たらないというのが御回答です。
○中島委員 今回、男性の育休取得率が圧倒的に少ない中で、男性の義務化というところが出発点というふうに承知して、労働法制上はなかなか解釈が難しいという御意見であって、女性の場合は母体保護ということで六週間、男性の場合にそのいわゆるメリットがどこにあるのか、労働法制の上ではなかなか解釈しづらいという御見解だったと思います。池田参考人の資料にありますように、育介法、これは労働政策の観点ということで、もう一方では子育てや少子化対策である社会保障政策の、二面性というか、こういった捉え方の中で、ちょっと混同している状況かなというふうに私は理解しているんですけれども。その上で、高村参考人、池田参考人にお尋ねをしたいと思うんですが、今回、出生時育児休業について、取得が進んでいない男性の育児休業取得策として選択肢になるものだということは理解できると思いますが、主に男性が対象になる制度であって、男女平等の観点に留意することが大変重要なのではないかなと思うわけでございますが、高村参考人、池田参考人の御見解をお伺いしたいと思います。
○高村参考人 御質問いただきましてありがとうございます。私、冒頭の意見で申し上げましたとおり、今回の取組といいますのは、働くという状況におきまして男女で非対称な状況がある。ほかの参考人からも御説明があったとおりでございまして、それを踏まえると、育児・介護休業法自体は男女に平等であるにもかかわらず、結果として非対称の影響というものが男女に及ぶという状況になっている。こういうことの状況であれば、やはりポジティブアクションということを取り得る理由にはなり得るというふうに考えております。これは、ポジティブアクションということでございますので、やはり、一定期間経過したときに、ポジティブアクションが必要とされるような状況に改善などがあるのであれば、見直されるべきであるというふうに考えております。以上です。
○池田参考人 御質問ありがとうございます。私のスライドの十枚目を念頭に置いた御質問というふうに理解させていただきましたが、やはり、正論というか原則論としましては、男女の非対称ということは余り望ましくないといいますか、育児・介護休業法が、結果的に、女性の支援でありながら、先ほど申しましたように、女性が家庭を優先しながら働くことを強化してしまった、そういう側面があるわけなので、やはり、育児・介護休業法には、そういう意味で、男女平等に向かうベクトルと、現状のジェンダーバイアスの中で、男性は男性なりに、女性は女性なりに仕事と家庭を両立していきましょうという、ある種、性別役割分業を是認していく方向性と両方内在していて、常にそのバランスの中で政策を展開している、そういう状況です。そういう意味では、今回の、御指摘の産休期間の出生後育休に関しましては、男性だけに特別な制度、しかも、女性の産休と違うたてつけの制度を、分割取得とか一部の就業を認める。先ほど申しましたように、それは男性だからやはり仕事があるでしょうというふうになってしまうと、やはりジェンダーバイアスの強化になりますので、今後どういうふうにしていくかということで、先ほど言いましたように、一つの発想の転換点として、分割ですとか休業中の就業ということを法律で認めるということをやってみたというところで、この後、女性に関しても、育休が分割取得できるようになりました。例えば、育休中に就労することとか、あるいは、女性の産休期間というものについても本当に六週間強制でないといけないのかとか、いろんなことを問い直すきっかけになっているというのが今回の法律で、その中で、繰り返しになりますが、母体保護といいますか、体に悪影響が出る働き方というのはやはり強い規制をかけなきゃいけないので、そういう意味で、やはり女性に対して適切な保護をしていくということを担保しながら、女性もより就業機会が拡大していく。そういう形で、次のステップでまた違った発想の法改正ができるのであれば、これはある種の、先ほどポジティブアクションという話がありましたが、一時的な措置で、この一歩から次の一歩が、性別役割分業の是認ではなく、やはり男女平等というふうに向かっていく方向に議論を展開していくということが大事じゃないかなというふうに思っています。以上です。
○中島委員 ありがとうございます。時間もないので、まだお聞きしたいことはあるんですが、休業中の就労について、池田参考人、杉崎参考人にお尋ねをしたいと思うんですが、休業中に労働者が事業主から就労を強要されるような場合、関係性から本当に断れるのかという懸念もあったと分科会での意見にもあったというふうに承知しております。この仕組みが本来の趣旨から外れないように、モデルケースなどを明確に示す必要性、例えば、育児休業中の就労においては、仕組みがある上で、改めて明確に、半日は完全に休業にするとか、午後の二時間は就労に当てるとか、部分休業などの仕組みも同時に整備するモデルケースのようなものを明確に示した上でこの仕組みが運用されなければならないというふうに考えるんですが、池田参考人、杉崎参考人にそれぞれお尋ねしたいと思います。
○池田参考人 御質問ありがとうございます。御指摘のとおり、ただ就業を認めますよといって個別の裁量に任せていると、やはり労使のトラブルの元になると思います。やはり、使用者にとか、同じ会社にいても、上司に対して自分の子育てに必要な時間とか要件ということを適切に伝えられる人と、上司に言われるままに、やはりどうしても仕事に引き込まれてしまう人と、両方いると思います。基本的に、今回の法改正というのは、労働者が自分で、元々、育児休業はもう請求権としてあるんだから、権利としてあるんだから主張してくださいよと言ったら、取れるんですから、それで終わりのところを、わざわざ使用者に、周知してください、意向確認してくださいと親切心を求めているわけです。どういうことかというと、そういう労働者を想定した改正なんですよね。 そうすると、使用者に対して、何時から何時までは子育ての用事があるので仕事はできませんときっぱり言える人は、育休を取りたいですと従来法のまま請求したらいいじゃないですかという話になってしまうので。そういう意味では、やはり、個別に任せるのではなくて、きちんと制度設計として、みんなが使いやすい部分就業といいますか、そういったものの制度の在り方というのを、これから施行に向けて、当然、厚生労働省では毎回、そういうことがあるたびに、いろいろガイドラインとかモデルケースとか留意点とか、今日も示しましたが、非常に親切な図を作って現場に情報発信していますので、そういったことをしっかりと周知していくということとセットで、施行上、労使のトラブルが起きないようにしていくということが大事じゃないかなというふうに私も思います。以上です。
○杉崎参考人 御質問ありがとうございます。この点につきましては、労政審の中でも議論があったところでございます。今回の改正案では、労使協定を締結した上で、個別の労働者の同意が必要であるということになってございます。 具体的には、労働者が申し出た範囲内で事業者が日時を提案するという手続になっておりまして、労働者の意に反したものとならないような工夫がなされているものと認識してございます。そういう観点で、労政審でも妥当とされたところでございます。労使双方が決められた手続をしっかりと理解をして、適切に運用していくことが大事だと思います。また、好事例。これから、この法律が成立した後に、好事例の発掘ということも重要だと思いますが、好事例を周知していくということも大事だと思います。今回のこの休業中の就労については、いろいろな議論がなされたところでございますが、男性の育児休業の取得に当たって、取得をしたい、しやすくなる環境整備の一助にもなるのではないかというふうに考えてございます。いずれにしましても、この定められた手続をしっかり周知して、労使双方が理解をする、適切に運用するということが大事だと思っております。以上です。
○中島委員 ありがとうございます。今の、具体的な、先ほど池田参考人の話の中にも、休んだはいいんだけれども、実際何をしたらいいのかということで、他の休業制度と合わせていくと、育児休業以外の休業取得率と合わせていって、今回の法律が施行されたときに育児休業の割合が増えていくという一方で、その中身が具体的に、また、雇用の、就労の話からいえば、そのめり張りを明確に分かりやすく、取得した休業が有意義に使われなければいけないということだと思います。そもそも、家庭における父親の役割、社会的合意というものがまだまだできていない状況の中で、今回の休業制度、出生時の休業がどういった影響を及ぼすのかということも含めて、大事な観点だというふうに思います。もう時間になってしまいまして、舟橋参考人にも質問を用意していたんですけれども、質問できなかったことをおわびを申し上げて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
○とかしき委員長 次に、伊佐進一君。
○伊佐委員 公明党の伊佐進一です。今日は、四人の参考人の皆さん、本当に、更に私もこの法案についての理解が深まりました、ありがとうございます。早速質問に入らせていただきたいと思いますが、まず、育休取得のそもそもの意義という点で、高村参考人に伺いたいと思います。研究を御紹介していただいて、育休を取得することで、働き方にもプラスだし、家事、育児への参画にもプラス、夫婦関係にもプラスだというようなお話もございました。その中で、ちょっと逆の見方をする、意地悪な見方をすると、鶏が先か卵が先か、つまり、育休を取得したことで家事、育児への参画により積極的になれましたという御紹介だったと思いますが、一方で、例えば、元々平日の家事をたくさんやっている長い人が育休を取得している率がそもそも高いんだという意見であったりとか、あるいは、育休を取れたので会社に対する好感度が上がったという御紹介もありました。これも、逆に言えば、会社の理解が逆にあるから育休が取れたんだ、元々いい会社なんだというようなことを言う方もいらっしゃいます。ここはどう、もし御発言いただければと思います。
○高村参考人 御質問を頂戴しまして、ありがとうございます。今のお尋ねの点につきましては、私が本日提出をいたしました資料の中の資料三というところを念頭に置かれての御質問というふうに思いました。議員御指摘のとおり、ここの表で示しているのは、育児休業を取得した人の方が、取得前と取得後の間の差というところ、よりよくやるようになっているよということを示しております。元々育児ですとか例えば家事ということをやる人が育児休業を取得しているのではないかという御指摘なんですが、それはデータでも確かにそういう傾向はございます。さはさりながら、こちらの方でお示ししているのは、元々やっている方が取るんだけれども、その高い水準から比べても、育児休業をすることによって更にその差が大きくなっているよということでございます。なので、そうではあるんですけれども、その影響というのを取ったとしても、更に増えているというようなことが言えるのかなというふうに思っております。こちらの方は、確かにデータでそのようなことが示されており、この出典の元になっている報告書などにもそのように書いてございます。ただ、二点目の御質問でいただきました会社に対する好感度というようなところも、もしかすると、因果というのは、好感度があるからこそ取れたのではないかという御指摘、こちらにつきましては、そうかもしれないということでございます。会社とそれから個人との間の信頼関係というふうなところの因果というのを、なかなかどちらが先というのを示すのは難しいと思うんですが、ただ、一つ言えるのは、そこにはやはり信頼関係なり好感度なりというのはあるということかなというふうに考えております。
○伊佐委員 そうですね。元々家事、育児をやっている人は更にやるようになるし、そうでない人も今までよりはやるようになるということだというふうに理解をしました。次は、杉崎参考人に伺いたいと思います。本当に中小企業の置かれた状況というのは今もう大変な状況だと思っておりまして、でも、中小企業でこそやっていただかないと、なかなかこの育休というのは実効性が上がらないというのももう一つの側面だというふうに思っています。昨年四月から働き方改革をやっていただいて、今年四月から同一労働同一賃金、今コロナ禍という本当に大変な中で、今回、この法案になるわけで、元々、アンケートも取っていただいた中では、育休義務化、七割が反対というようなお声もいただいております。そういう上で、やはり我々はしっかり支援していく必要があるというふうに思っています。先ほどは、代替要員の確保の支援とか、ハローワークの支援とか、好事例の展開とか、こういうのを政府の支援に期待しますというふうに、遠慮されながらおっしゃっていたなという私は印象を受けたんですが、私は、こういう雇用の支援だけじゃなくて、そもそもの、様々な角度からの支援、経済的な支援、いろいろな経営に対する支援も含めて、こういうのも一体となってやることで雇用を守っていくことになるんじゃないかというふうに思っておりますが、その辺の御意見を聞かせていただければと思います。
○杉崎参考人 御質問ありがとうございます。非常に重要な御指摘をいただいたものと認識してございます。中小企業の現状は、このコロナの状況で、まさに事業の継続、雇用の維持に本当にぎりぎりの努力を積み重ねているという状況になってございます。その一方で、いわゆる時間外労働の上限規制、年休取得義務化、また、この四月には中小企業に対して同一労働同一賃金、改正高齢法も施行されたという現状がございまして、中小企業の現場負担、人手不足の中での現場負担というのは高まっているというのは実態としてあろうかと思います。先生御指摘のとおり、労働政策による支援のみならず、公的な融資ですとか助成金などの経済全般にわたる、企業経営全般にわたる支援を是非お願いしたいと思いますし、今、コロナの状況でこそ、こうした中小企業に対する支援を手厚くお願いしたいと思っております。もちろん、商工会議所といたしましても、全国五百十五商工会議所に経営指導員というものがおりまして、日々、中小企業を巡回して、経営面のアドバイスをさせていただいてございます。商工会議所も、こういう状況だからこそ、中小・小規模事業者の支援にこれまでよりも力を入れてまいりたいと考えてございます。以上です。
○伊佐委員 ありがとうございました。しっかり中小企業の支援を様々な角度からやっていかなきゃいけないというふうに思っております。次、舟橋参考人に伺いたいと思います。本当に、今回、最初、冒頭の発表の中で生の声を伝えていただきました。ありがとうございます。本当に貴重な妊娠、出産、育児に対しての調査の結果をお伝えいただきました。その中で、私も様々勉強になりましたが、例えば、一点、夫が育休を取らない理由ということで、職場の雰囲気がないというのが一番多かった、四九・九%というのもございました。今回の法案の中で、ここは、様々、職場の雰囲気を変えるために、例えば研修とか相談窓口の設置、これを義務づけるということであったりとか、あるいは育休取得の意向の確認もしてもらう、これもやはり義務づけで雰囲気を変えることにつながるんじゃないかというふうに思っておりますし、あるいは育休取得の状況も公表するというような話もございます。こうした様々な義務づけの中で、こうした雰囲気づくり、雰囲気を変えていくという中にも今回の法案はプラスに働くのではないかというふうに思っておりますが、御意見をいただければというふうに思います。
○舟橋参考人 御質問ありがとうございます。今の日本の社会では、長らく、いわゆる妊娠、出産に関わって、育児をするのは女性という、やはりそういうものが醸成されてきた時代が長く続いてきたと思います。そこに関わって、今回の育介法の改正については、男性も大いに育児に参加する、男女共に育児を行うという観点に立ちまして、様々な今お話しいただきました研修や、制度そのものも男性が取得しやすい雰囲気、制度設計にされつつあるというふうに認識していますので、ここは、いわゆる事業主さん、そして働く者、両方の立場でこの制度設計そのものを理解をし、お互いに推進していくということが職場また社会全体でも進めば、非常に子育てにとってもよりよい、ジェンダー平等も含めて、推進になるのではないかというふうに考えています。御質問ありがとうございます。
○伊佐委員 次に、ポジティブアクションについて私も伺いたいと思います。池田参考人に質問させていただきたいと思います。確かに、今回、男性の育児休業取得促進のための新たな枠組みということで、これは本当に、ジェンダー平等という中で、男性だけポジティブアクションで是か非かという議論が先ほどの質問でもございましたが、法理論上としては、余り特別の性だけに向けては聞いたことがないという話だったと思いますが、片や、池田参考人も、また高村参考人もおっしゃっていただいたとおり、現状は非対称性があるんだという中で、現状を踏まえてやれば、やはり一つの選択肢として今回の法案になっているということだと理解しています。そういう意味では、一定の期間である程度達成できれば最後は見直していくべきだというのは高村参考人の方もおっしゃっていただいておりますが、その中で、さっき池田参考人の話を聞いていて、なるほどと思いながら、ちょっと悩ましいなと思ったのは、当然、出産は他者が代替できない、女性しかできないという中で、仕事は代替できるというのであれば、最後のところは、やはり、見直したとしても、最後行き着くところ、雇用政策の行き着くところも、どこかでやはり性差の部分というのは残っていくんじゃないかなという気もしておりますが、その辺の御意見をいただければというふうに思います。
○池田参考人 御質問ありがとうございます。非常に哲学的かつ悩ましい問題をいただいたと思っております。産後の六週間、若しくは、今回、八週間のうちの四週間という時期に限った場合に、その非対称性が解消できるかどうかという問題は、私は母体保護に関する専門知識を持ち合わせておりませんので、直接的な回答は避けたいと思いますが、ただ、子供が一歳ないしは一歳半になるまでのトータルの就業中断期間というのは、やはり男女で均等化していく余地は十分にあります。今回の育児・介護休業法の改正が出産直後のところに強いフォーカスが当たっていますが、やはり、本来の育児休業、海外でペアレンタルリーブというふうに呼ばれる期間は、女性が早く復職して、その代わりに夫が休業を取るということになりますので、つまり、繰り返しますが、女性が今ある制度を全部使い切って、かつ、男性はどうですかといったら、それはどうしてもそこに非対称性が残るわけですが、やはり本来の趣旨は、先ほど言いましたが、つまり、八週間の後の方の育休をしっかり議論していくということが実質的な男女雇用機会の均等の確保につながっていくことになるというふうに思います。そういう意味で、雇用保険で、今、育児休業給付が六か月ずつ夫婦で取ればちょうど一番給付率が高くなりますよとか、パパ・ママ育休プラスとか、育休の延長部分を妻が延長して取るんじゃなくて夫が代わりに取るとか、そういったところの議論を深めていくことで実質的な就業中断期間を男女均等にしていくことが可能じゃないかなというふうには思います。以上です。
○伊佐委員 もう一問池田参考人に伺いたいと思いますが、というのは、育児休業給付について、私は聞いていてなるほどと思ったことがあったんですが、今、育児休業給付は、六か月以内であれば賃金の六七%で、六か月たった後は五〇%ということになっています。公明党は、一〇〇%にするべきじゃないかというのをずっと求めておりまして、というのは、今、世の中、共働きがこれだけ多い中で、二人で家計を支えているのに、一人が半分になるというんだと相当生活が厳しくなる、これも育休が取れない大きな一つの原因じゃないか。ここはさっきの舟橋参考人のアンケート調査の中でも結果が出ておりましたが。ただ、厚労省に話すと、元々これは雇用保険なので、あくまで雇用保険というのは離職防止の意味なんですというふうに言われる。この趣旨、一〇〇%にしましょうという趣旨が育休取得促進なら、これは雇用保険、離職防止じゃなくて一般会計なんですよというような説明をずっと受けてきたんです。ところが、今の池田参考人の話でいえば、いやいや、この育介法というのは労働参加を支援する法律なんですと。その趣旨でいえば、雇用保険でもいいんじゃないかというふうに私は今思ったんですが、この育児休業給付についてももし御意見があればいただきたいと思います。
○池田参考人 ありがとうございます。次々に難しい御質問が来るので、回答に迷うんですが、まず、所得保障が一〇〇%である方が望ましいのではないかということに関して言いますと、今日の主題であります男性育休に関して言いますと、先ほど言いましたように、年休が所得保障一〇〇%ですので、やはりその方が使いやすいですよねというのは言えると思います。女性に関しても、例えば看護休暇とかもそうですけれども、年休で代替できる部分はやはり年休から先に使っていくというのは自然な行動ですので、それの理由は何かといったら、看護休暇も所得保障がないですし、となると、やはり所得保障つきの休業を労働者が望んでいるということは確かだと思います。ですけれども、問題は、やはり財源の整合性という問題があるので、これは極めて技術論的な話があります。例えば、男性の今後の出生時育休の期間の所得保障を一〇〇%にしましょうとか例えば言ったとしますね。実際にそういう御意見を伺ったことがあります。そうすると、何で男性だけが一〇〇%なんですかという話が出てきますので、そうすると、当然、先ほど言った、男女平等で、お金が必要なのは男性も女性も関係ないですよということになると、女性も一〇〇%にしないと駄目ですよとなると、今度、健保が財源になっている出産手当金の料率を要するに見直すという話になります。もう一つは、雇用保険だったら何とかなるんじゃないですかというのも、雇用保険も元々はやはり失業給付とか他の給付との兼ね合いの中で給付率というのを決めているところがありますので、そういう意味でいくと、問題意識としては非常によく分かるんですが、技術論として非常に難しい問題があるところですので、この点については拙速な回答は避けることにして。ただ、女性はノーワーク・ノーペイでもいいじゃないか、女性は給付率六七%とか五〇%でもいいじゃないかというふうには言えない状況が今の国民生活の実情として拡大しているのも確かです。シングルマザーでやっている方もいらっしゃいますし、夫婦でやっていても、妻の収入減が家計にダイレクトに響くような生活を送っている夫婦もありますので、そういう意味では、休業とかノーワーク・ノーペイの中で今ノーペイになっている部分にどういう所得保障をつけていくべきかということは、局所的に考えるんじゃなくて、総合的にきちっと議論を積み重ねる重要な問題だというふうに認識しています。以上です。
○伊佐委員 ありがとうございました。時間になりました。本当に、皆さんの意見陳述と意見交換を通じてより議論が深まりました。しっかりと国会の質疑に生かしていきたいと思います。ありがとうございました。
○とかしき委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。四人の参考人の皆様、本当に、今日はお忙しい中、ありがとうございます。大変勉強になりました。四人の参考人の皆様に全員まとめて質問させていただきますので、三点お伺いします。一つは、国会質疑でも紹介したんですけれども、アイスランドは育休の取り方を、男女どちらかが三か月取ったら、その次は相方が取り、残り三か月はどちらが取ってもいいですよということをやることによって、ジェンダー平等の元々先進国ですけれども、更に社会としてのジェンダー平等が進んだということを聞いております。そういう点でいえば、やはり男性が育休をたくさん取っていくことが日本社会のジェンダー平等を進める上で大変大きな意味があるのかなと思っているんですけれども、男性の育休取得のジェンダー平等を進める上での意義と在り方、これについて一点お伺いしたいと思います。それから、二点目に、男性育休は今かなり取得率が低いわけでございます。三〇%を目指そうと政府は言っていますけれども、では三〇%でいいのかといったら、それは三〇%になってもかなり男女差は大きいわけです。もっと進めなきゃいけないということになると思うんですが、今回の法改正は一つの大きな意味があると思うんですけれども、その次の一手ですよね、男性育休を更にみんなが取るような社会にするためには、今回の法改正の次の一手は何が必要だとお考えなのかというのが二点目でございます。それで、三点目ですけれども、先ほど伊佐議員とのやり取りでありましたけれども、政党の側は、やはり育休期間一〇〇%賃金保障というのは、自民党さん、公明党さんから私たち共産党までみんな主張している状況があるわけでございます。やはり男女とも実質一〇〇%の所得保障が育休に際しては望ましいのではないかと思いますが、これも四人の皆さんに改めて伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
○高村参考人 御質問いただきましてありがとうございます。まず、男性の育児休業取得ということがジェンダー平等ということにどのような影響を与えるかという御質問であったかというふうに認識をしております。先ほどの答弁の中で池田参考人から御説明がございましたけれども、育児休業というのは、女性だけが取得するということではなく、女性が早期復職をするということのために、子供が一歳までの期間、女性が復職するのであれば、その間、今度は男性が育児休業を取るんだというようなことで、就業機会というのを男女がひとしくその機会を得るようにするという意味があるというような御説明がありましたが、その御説明に対しましては私も同感でして、そういった形でのジェンダー平等が進むのかなというふうに思っております。就業の機会ということもそうですし、それから、一方で、家庭生活というのでしょうか、子供を産むのは女性なんですけれども、育てるのを一緒に育てていくという、そちらの方のジェンダー平等ということにもつながっていくのかなと思っております。就業機会ということと、それから、再生産活動というのでしょうか、次世代それから前の世代のケアというのを共に行っていくという両方の意味でのジェンダー平等ということにつながっていくのかなというふうに考えてございます。それから、二点目の御質問ですけれども、男性の育休取得というのを更に進める上での次の一手ということであったかと思います。進めるといったときに、その目的というか着地をどこにするかということもあるかと思うんですが、今、女性の育休取得率は大体八割前後かなというふうに認識しているのですが、ひとまずは、やはり女性と同程度ということかなというふうに思っているところでございます。もし、今回の改正が目指しているような、きっちり本人にこの制度のことが伝わり、そして、事業主の認知を通じて職場での取りやすい雰囲気ですとか働きかけということが実現するのであれば、取得率が上がっていくんではないかというふうに思っておりまして、今、認識している認知の問題とか職場の風土の問題というところが一つボトルネックになっているのであるとすれば、そこのところが今回の法律によって緩和されるというか改善される。そうすると、私は、かなり改善の見込みというか期待というのはあるのかなというふうに思っておりまして、ちょっとお答えになっていないかもしれないんですが、その状況を見て、さらに、まだ足りないところはどこなのかというようなことの検討の上に、次の一手を考えていくのかなというふうに考えてございます。それから、三点目、所得保障というお尋ねであったかと思います。ここに関しましても、先ほどの質疑の中で池田参考人がお答えになっておられましたけれども、ほかの様々な給付との兼ね合いということの中で考えていくということが大切かなということと、あと、実質的な水準ということについて考えてみますと、こちらの給付の方からは育児休業中は社会保障の負担というのはないわけでして、給付が六七%、三分の二ということでありまして、そこに対して社会保障の保険料などが免除ということを考え合わせますと、通常の給与所得というものとそれほど違わない水準にはなるのかなというような考えは持ってございます。あと、お答えとしましては、様々なほかの給付との兼ね合いというようなところを考えて検討する必要があるのかなということでございます。ありがとうございます。
○池田参考人 御質問ありがとうございます。若干順不同になりますが、まず、次の一手ということにつきましては、これからこの改正法については施行して影響を見ていくことになりますので、また五年後の見直し等で議論をしていくことになると思いますが、もう一つ、私の意見陳述の冒頭で申し上げました次世代育成支援対策推進法と育児・介護休業法をどう組み合わせて効果的に運用していくかということが実質的な政策推進では重要になります。今回は育児・介護休業法の改正審議ですので、あえて次世代法の話には言及しませんでしたが、やはり次世代法を再延長するかどうかということについては一つの争点になると思います。そこで、やはり、行動計画を立てて、マークを上げるから頑張って取り組んでくださいね、このやり方は結構効果があるというふうなことが専門家の間でも共有されていますし、だから、同じ枠組みで女性活躍推進法ということもやっているわけです。ですので、今回の個別周知とか意向確認ということの実効性を高めるために次世代法を再延長するかどうかということは、またこれも労使との合意を得てしっかりと検討していく次の課題かなというふうに思っています。二〇二五年がちょうど次世代法の二十年目に当たりますので、十年の時限立法の二周目が終わるというタイミングになりますので、これはあるかなというふうに思います。男性育休を通じたジェンダー平等の在り方ということと所得保障一〇〇%ということの考え方は、実は非常に親密な関係にあるというふうに私は認識しています。というのは、申しましたように、男性育休の話が出た途端に所得保障の話が出てくるというのは、これはどういうことなんですかということが、先進的な企業でも、男性に育休を取らせるために最初の一か月は所得保障一〇〇%にしているんですというふうに言って、でも、男性だけじゃいけないから、女性にも適用しているんですという、これは何なんですかという問題がやはりあります。なぜ今所得保障一〇〇%なんですかという文脈の中に、やはりある種のジェンダーバイアスが介在している側面もあります。それを抜きにして、所得保障は何%がいいですかと聞けば、それは何だって誰だって一〇〇%がいいに決まっているんですよね。それは病気休業だったり、だから、病気治療と仕事の両立支援とか、両立支援のテーマも今多岐にわたっていますから、何についても一〇〇%がいいに決まっているんですが、これを、事育休とか、これにだけ一〇〇%の所得保障をする正当な理由が何かあるんですかといったときに、みんながみんな子供を産む社会が一つの理想形かもしれませんが、現実的にそうじゃない状況だったり子供を産む人数も違う中で、ある特定のライフスタイルの人だけが手厚い所得保障を受けるということが本当に国民的な合意が得られるかという問題がやはりありますので、問題意識はシンプルなんですが、考え方の筋道の立て方というのは非常に難しいのがこの所得保障一〇〇%問題だと思います。最後に、ジェンダー平等という意味では、やはり先ほど言った、女性はノーワーク・ノーペイでも家庭に時間を割ければいいですよねという考え方ではなくて、男女が同じようにお金も必要だし子供と関わる時間も必要ですよということを推進していくというのが男性育休を通じたジェンダー平等の在り方だと思いますので、男性がお金が必要なだけじゃなくて、女性もやはり必要なんですよというところで、女性の生活保障とか所得保障ということももう一回見直しながら全体的な議論を進めていくということが大事じゃないかなというふうに思っています。以上です。
○杉崎参考人 御質問ありがとうございました。まず、ジェンダー平等の観点でございますが、今回の新制度は、そもそも、男性の取得が進んでいないという現状を踏まえて、ポジティブアクションの考え方に沿ったものとして設けられております。男性の育休取得が高水準になって、この仕組みがなくても水準を保つことができるとなった場合には見直されるべきものであるというふうに審議会でも結論づけられてございます。今回の、特に新制度は柔軟な仕組みとなってございます。これによって男性の育休取得が進むであろうと思います。その結果として、両立できる社会の実現ですとか女性の就労継続、更なる女性活躍が進むものと思っております。こうした観点から、今回の新制度はジェンダー平等の点からも実現していくべきではないかというふうに考えてございます。また、この制度ができた際にも、しっかりとPDCAを回していくという点も必要だと思います。二点目の、次の一手というところでございますが、真のワーク・ライフ・バランスの定着を図っていくということが大事なのではないかと思います。特に、中小企業は雇用の七割を担っておりますので、中小企業において働き方改革を徹底していくということが大事なのではないかと思います。この点については、商工会議所は厚生労働省と連携協定を締結しておりますので、商工会議所自身も政策普及に努めてまいります。一方で、人手不足は構造的な問題でございます。したがいまして、ワーク・ライフ・バランスの定着につなげていくには、企業からしますと生産性の向上が必要でございますので、是非公的な支援をお願いしたいと思っております。三点目の所得保障についてでございますが、こちらは、先ほども申し上げましたとおり、財源の確保の問題がございますので、慎重な検討が必要になってくるであろうと思います。この点については、労政審で審議いたしました結果、給付率は現行のままが妥当であるとされたところでございますので、この点を是非御留意いただきたいと思ってございます。以上でございます。
○舟橋参考人 御質問ありがとうございます。ジェンダーの促進という意味では、改めて、子育ては女性だけが担うものではないということを社会的にも明らかにしていくもの、推進するものというふうに考えています。大前提になるというところでは、現在、男女の賃金格差があるということが、この育休取得がやはり女性に偏らざるを得ないということとも大きく関係をしています。改めて、男女賃金格差、ここを是正する施策も並行して考える必要性はあるというふうに言いたいと思います。そして、男女共に子育てをする必要性があるよねというのは、職場だけの問題ではなく、社会全体で醸成していくというふうになったときに、改めて、先ほど二つ目の質問にありましたいわゆるその一手はというようなところにもつながるもので、所得の保障そのものも重要ではありますが、さっき中小企業の支援の実態もお話がありましたけれども、やはり人員不足、ここが改めて男性も女性も育休を含めて取得が困難になっている部分はあると思います。やはり、どう職場にゆとりを設けていくか、そのゆとりというのをどういうふうに国として支援していくかという新しい一手が必要ではないか。非常に進んでいるというのは、教職員については代替制度があります。やはり、それと同等にはならないかもしれませんけれども、そういう水準がどこでも推進されていけば安心して子育てに関われるというふうに思います。所得については、どこを財源に取るかという問題が非常にネックになりますけれども、子供というのは未来をつくり上げていくものという社会の合意形成が行われたときに、どこに財政を振り向けていくかということを考えれば、子育て支援を含めて、そこに充当していくことが社会からも支援される、合意形成を図れるのではないかと思っています。以上です。
○宮本委員 初めの質問で時間切れになってしまいました。大変参考になる御意見をありがとうございました。終わります。
○とかしき委員長 次に、青山雅幸君。
○青山(雅)委員 日本維新の会・無所属の会、青山雅幸でございます。今日は大変貴重な意見、各参考人の皆様ありがとうございました。質問に当たりまして、まず前提として、ちょっと私がどういうふうに考えているかについて述べさせていただくと、個々人が子育てに関わる機会を得た場合、それを十分に充実させ、また、負担としてではなく楽しむことができるようにするということは、これは個々人の人生にとって大変重要なことだと考えております。あくまで副次的なものではございますけれども、この人口減少社会、そして人口構成が大変これからゆがみが更に進んでいく今の日本という社会にとって、子供を産み育てやすい社会にしていくことは、将来的に子供たち自身の負担を軽減させていくという意味で大変重要なことだと思っております。そういった観点から、少し今回の法の改正を超えたオープンな質問をさせていただくことをお許しいただきたいと思っております。まず、研究者である高村さん、池田さんへの質問としてお聞きしたいのは、これは非常に当然のことでございますけれども、人間における育児というのは、ほかの普通の哺乳類の動物に比べて非常に長い期間かけて行う、そして、多分に後天的、社会的なものだと考えております。日本の社会においては、男性が育児に関わるということが、自分の親の世代から模倣する、あるいは訓練を受けていないという非常に大きな問題があると思います。あるいは親の世代だけではなく周りを見渡しても、なかなか規範となるべき、あるいは理想となるべき、子育てに男性が関わっている姿というのを見ることがどちらかといえば少ないものだというふうに考えております。 私は弁護士をやっているものですから、しょっちゅう、非常に多い類型の事件として離婚に関わるわけですね。そして、離婚に関わった場合に、特に女性側から非常に大きな不満としてよく聞かされるのが、家事、育児に夫が全く関与しないと。子育て中に、せっかくの休みの日でも、子供そっちのけで、子供が寄ってきても全然相手にしないで、ゲームばかりずっとやっている。負担ばかりあるし、関わらないと。いわゆる破綻事由といいますか、そういったところでも、夫とこれ以上やっていけないというようなことをよく述べられるわけですね。私は、今回の法改正案も含めて、法制度を整備することも、これは当然、極めて大切だと思っております。ただし、それだけではなかなか解決しない部分がありまして、特に、男性の子育てへの関わり方として、模倣の機会がなかった日本の男性に対して、訓練というか教育の機会を与えることが非常に大切だと思います。それは教育の問題なのか、あるいはこういった労働問題として取り扱うのか、いろいろな考え方はあると思いますけれども。そもそも法制度の整備と私は両輪で進めるべきだと思うんですね、そこの部分を。それについてお二人はどのようにお考えなのかを、お伺いさせていただきたいと思います。
○高村参考人 お考えを拝聴いたしまして、私も感銘を受けたところでございます。まさしく制度だけではやはり運用というところはうまくいかないわけでございまして、私たちの中にある意識というところを変えていくということとまさしく両輪で進めていくことで社会の中の状況というのは変わっていくという御指摘、そのとおりかなというふうに思っております。その中で、男性が育児休業を取得するということは、結局、その後ろにありますのは、男性の育児ですとか家事というところの参画というふうに申し上げますけれども、それを進めていくということ。さらに、ひいて言えば、そのことから、育児に関わるということから喜びを感じる、そして自分自身もやはり成長していくということかなというふうに思っております。それで、さらに、今のお話であれば、家族の中の信頼関係というのを構築していくということかなというふうに思っているわけですけれども。こうしたロールモデルがない中で、どのようにして意識の醸成というのを図っていくのかというお尋ねかなというふうに思います。教育なのか、それとも労働の現場なのかというところで最後に御質問があったかと思うんですが、どこか一つということはやはりないというふうに思っております。教育というふうなことであれば、八〇年代からかと思いますけれども、家庭科必修化というふうなことがございまして、かなりそれによって男性、女性の意識が変わったというふうに言われておりますので、教育の中で取り上げていくということは非常に大事であるかなというふうに思っております。また、教育の中では、男女の平等というふうなことですとか、雇用機会の均等の話ですとか、あとワーク・ライフ・バランスですとか、様々なことを取り上げられているというふうに思っておりまして、ロールモデルがないとはいうものの、実際にはかなり認識は変わってきているかなというふうに思っております。また、企業の方とお話しする機会も結構あるんですけれども、最近、面接に来る学生さんは、男女問わず、やはり、子育てができるのかというふうなこと、それから、仕事と御自身の生活というふうなことの両立ということが図れるのかということに関する関心はかなり高いというふうに聞いておりますので、ある程度そういった意味では教育の効果かなというふうに思っております。ただ、そうやって入られた後の労働の現場というところの環境がどうかというところが、またここも非常に大事なところでして、男性でも子育てに関わりたい、家族との信頼関係というのを構築した上で充実した職業人生活を送りたいということに対して、やはり職場も応えていくという必要があり、様々なところが連携してそういった環境をつくっていくことが必要かなというふうに思っております。ロールモデルはないんですが、人間はやはり学ぶ生き物ですし、自ら工夫をしていくところがあるかと思います。また、自分の親だけでも必ずしもないと思いますので、私どものイクメンプロジェクトというふうなところでも、親以外の様々なロールモデルというのも紹介するというふうなことに取り組んでいるところでございます。私の家庭でもかなり夫が子育てをしておりまして、そういった観点から、本当に大切だな、いろいろな面で大切だなというふうに思っているところでございます。どうもありがとうございます。
○池田参考人 御質問ありがとうございます。非常に重要な問題提起だというふうに受け止めておりますが。まず、学習とか模倣あるいは訓練といった、そういった側面に関しましては、高村参考人からも御指摘ありましたが、学校教育において家庭科の共修化ということがもう既にスタートしていて、家庭科共修世代というのは、一つ、そういう意味では固定的な性別、役割にとらわれない新しい世代というふうにちょっと注目されている部分もあります。また、労働法制としても、九七年の均等法改正以降に労働市場に参入した、施行が九九年からですが、その人たちというのは、やはりその前の世代とはちょっと違うんじゃないかというふうに、少しずつ時代の変化の中でジェンダーステレオタイプを見直すような動きというのはありまして、それが浸透しているという様子も一方でうかがえます。学校教育でも、社会科とか公民の授業とかで、そういうことをちゃんと取り上げたりとかしていますので。しかし、一つ大きな問題として、日本についてよく言われることなんですが、新しい役割を積極的に担いましょうというメッセージはすごく出てくるんですが、古い役割にとらわれなくていいですよというメッセージは弱いんですね。つまり、先ほど、夫は家事、育児をしないということを御指摘されましたが、妻が家事、育児をしないということが、社会的にそのことに対して寛容でしょうか。お母さんが作るお弁当、お母さんが子供のために用意する服、お母さんが学校活動に費やす時間、そういうことが、仕事があるのでできません、キャリアがあるのでということを容認できますかという問題。また、今度、お父さんが稼いでこないということ、先ほどの所得保障一〇〇%、何で男性だと出てくるんですか。要するに、お父さんが仕事をしないで家庭で子供と時間を過ごすということに対して寛容ですかという問いがやはりもう一方であって、これは、まさにその役割分担とか性別役割分業の実証的な研究の中で、伝統的役割は免除されないまま新しい役割ばかりがオンされるので、男女が共に二重役割負担に苦しむ、そういう社会に向かっているという警鐘が現に鳴らされています。ところが、これは新しい警鐘では実はないんです、割かし昔からある問題で。そういうところでいくと、新しい役割を積極的に担っていくための教育、あるいはその学習機会の更なる拡充ということも大事ですが、お父さんが育休を取るときに、今の六七%でもやっていける生活とか、何かにつけて、お母さん、どうしているのというふうに言われない社会的雰囲気の醸成とか、そういったこともやはり大事じゃないかなというふうに、改正法とはちょっと離れた大局的な御質問ということで、そういった感想を私は日々の研究活動の中から感じて、思っています。以上です。
○青山(雅)委員 ありがとうございます。常に私は現場でいろんな家庭を見ていて思うんですけれども、こういう議論をするときに、大企業であるとか、うまく当てはまりそうなところが我々想定しがちですけれども、そうじゃない層というのがあって、実はそれが大半であって、そこら辺に普遍化できるようなやり方を是非研究者の皆様方には、やりやすいところよりは難しいところ、そして数が多いところをちょっと頭に入れて研究を進めていただければ幸いだと思っております。ありがとうございます。それで、次は、杉崎参考人と舟橋参考人にお伺いしたいんですけれども、私は前、少子化の問題をかなり研究したことがありまして、そうすると、フランスにどうしても行き着くわけですね。日本と同じように少子化したところを、いろんな社会制度で、五十年かけて出生率を改善していったと。その中で、幾つか読んだときに、やはり、一番そうだよなと思ったのは、フランスはいろんな給付制度もあって、あるいは時短的な制度もある、あるいは育児休業的な制度もあると。問題は、その制度を利用しやすい雰囲気があるかないかだということで、現にフランスで暮らしていらっしゃる方がおっしゃったわけですね。時短で帰るのにも何の気兼ねもなく帰れると、フランスの場合。日本はなかなかそれがないというのは、これは否定しようのない事実で、先ほど舟橋参考人がアンケートを紹介いただいた中でもそういったものが幾つかあったと思います。例えばうちの法律事務所なんかだと、そういったことを研究したこともあったものですから、子育てに関わる時短とか育休には誰も文句は言わないわけですね。ただ、振り返ってみると、うちの仕事というのは、量は多いんですけれども、ある程度おいておけるといえばおいておけるんですね。日々締切りに追われるわけではない、締切りはもちろんあるんですけれども。一方で、今の日本社会というのは、当然ながら、特に物理的な仕事をされている、仕事の種類によりますけれども、そういったところは、ぎりぎりの人員で回しているところがあるものですから、現場で、育休あるいは時短、そういったことを受け入れにくいと。それは、使用者、労働者の問題でもあるし、労働者間同士の問題でもあると思うんですね。いかにしてこういった育児に関わる時間短縮あるいは育休等について周りが受け入れる雰囲気をつくるかが物すごく大事だと思うんですけれども、これについて、どういうことがあり得るのかということについて、杉崎参考人と舟橋参考人の御意見をお伺いしたいと思います。
○杉崎参考人 ありがとうございます。非常に重要な御指摘だと思います。取得しやすい雰囲気づくりという点については、今回の改正法案で柔軟な仕組みの創設が盛り込まれておりますが、これを契機に、各企業、これは中小企業も含めてですが、機運醸成が図られるのではないかというふうに思ってございます。今回、この制度が具現化され、また運用されていく過程の中で、PDCAも必要ですけれども、企業においても大分そういった機運が高まってくるんだろうなということは想像してございます。一方で、中小企業、雇用の七割を担っておりますが、人手不足という現状もございます。そういったことが要因になって、取得しやすい雰囲気づくりがなかなか築けないというのもあろうかと思います。この点については、生産性の向上が必要だと思っております。働き方改革、ワーク・ライフ・バランスを中小企業でも実現していく、これは厚生労働省のいろいろな支援もいただきながらというところでございます。また、各企業においては、例えば、フレックスタイム制度を始めとした柔軟な働き方を導入していくですとか、あと、このコロナ禍で一気に進みましたが、テレワークをうまく活用していく、また、そうした好事例を横展開していくというようなことが大事なのではないかと思っております。代替要員の確保が非常に課題となっておりますので、生産性の向上ですとか、チームで仕事を回していくといったようなことが企業において求められると思っております。以上です。
○舟橋参考人 御質問ありがとうございます。雰囲気づくりはとても重要だと思います。青山議員がさきにお話をいたしました、子育ては長い期間関わりますよねというお話がございました。今回の育介法については、いわゆる男女共に関わる、そのことが貫かれた法改正になるかと思いますので、やはり、従来型の企業社会、男性が中心の社会では、育児にはほとんど関わらない方が中心に座られてきた今の日本の社会というのはあるかと思います。やはり、そこに男性が関わることで、どれだけ育児が大変なことかということの意識改革、理解が深まり、妊娠、出産、育児に関しては、みんなで支え合う、お互いさまというようなものをつくっていくということにつながるような制度設計も含めてしていただくことはすごく重要なことだというふうに思いますので、改めて子育てというのがどれほど大変なものなのかということの教育的な視点も含めて、大いに社会的に進めていただけたら大変ありがたいと思います。以上です。
○青山(雅)委員 ありがとうございます。お互いさまという考え方は大変大事だと思います。本当に日本にとって最も重要な課題だと思っております。参考人の皆様、それぞれのお立場で、是非今後ともよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございました。
○とかしき委員長 次に、高井崇志君。
○高井委員 国民民主党・無所属クラブの高井と申します。今日は、四人の参考人の皆様、本当に貴重な御意見、ありがとうございました。私も宮本委員と同じく、四人の皆様にそれぞれ同じ質問を二問、宮本さんは三問、なかなか厳しいなと思ったんですけれども、二問、しかも一問ずつお聞きしますので。そうすると、大体お一人一分半ずつ、一問についてお答えいただくと、ちょうど時間になる計算です。ちょっとぐらい、せっかくですから、延びても、委員長は許してくださると思いますけれども、大体そのくらいの目安でお答えいただけたらと思いますが。まず一点目は、これは、高村委員からの資料の一枚目にあったこのグラフを見て、私も驚きました。もう一目瞭然ですよね。日本だけが、折れ線グラフのオレンジ、無償労働の男女比が五・五倍という、もう突出していますから、このグラフだけ見たら、日本がいかに遅れているというか、おかしいかということが一目瞭然なんですが。私は、この原因をやはりきちんと追求しないと、いろいろな対策をやるにしても不十分じゃないかと思っていまして、なぜ日本がこうなってしまったのか、ちょっと難しい質問だと思うんですけれども、お聞きしたいんです。私の考えは、やはり、遡って、日本のこの男女差別というか、実は私は選択的夫婦別姓を一生懸命やっているんですけれども、推進しているんですけれども、これは、でも明治からなんですね。江戸時代までは別にそうでも、結構別姓も多くて、明治民法で夫婦同姓になり、そして家制度という、戦前まで続いた家制度というのは、はっきり言って、家長、戸主に物すごい権限があって、女性は家に入ると民法にはっきり書いている。こんな制度が続いたら、それはこうなるよなと思うんですけれども。ただ、実は、民法というのは、ヨーロッパも同じような規定だったんですね、ヨーロッパ民法をそのまま持ってきているわけですから。しかも、日本は戦後に大改革をやって、民法も大改正もしているわけです。そういった中で、ヨーロッパは昔そうだったのがどんどん変わっているのに、なぜ日本だけ、しかも戦後改革まであったのに、いまだにこういう状況が続いているのかということを、ちょっとそれぞれのお立場から、それでは、高村さんから順番に、二問目の質問は今度は舟橋さんから順番に逆方向で聞きたいと思いますので、高村さんからお願いします。
○高村参考人 御質問いただきまして、ありがとうございます。確かに、このオレンジの折れ線のところが目を引くということかと思います。オレンジのところだけにこだわらず、どうしてこのような男女の格差というのが生じているかということの一つは、やはり、固定的なステレオタイプというところが非常に強く、先ほどの池田参考人の答弁にもありましたけれども、女性がこれをする、お母さんが何とかというふうに求めるというところがやはり強いというところが一つかと思います。もう一つは、やはり、何度か出ているとおり、賃金差というところが厳然としてあるということかというふうに思っております。そうすると、やはり分担をするときに賃金の高い人が外で働くという選択になりがちということがあるのかなということでございます。そういうことかなと思います。ありがとうございます。
○池田参考人 御質問ありがとうございます。手短にお答えいたします。私が実際にデータを分析した結果に基づいた回答になりますが、男性稼得役割意識と家庭での夫婦の家事分担の内容というのは相関があります。つまり、夫婦で共に家計を担うという意識の男性の場合は、子育てをする場合でも、妻と同じように子供の身の回りの世話、先ほど言ったお母さんに求められるような役割をします。しかし、自分が主たる稼ぎ手であるべきだと思っている男性は、子育てには関わりますが、子供と遊ぶとか、そういう方面にかなり傾斜するということですので、やはり、ケアと稼得というのが、家庭生活の中では両方見ないとこの問題というのはいけないというのが最近の私の見解です。以上です。
○杉崎参考人 ありがとうございます。やはり、長年の男女間の役割分担意識があるのだと思います。こうした点について、今回の制度創設を契機に女性活躍が更に進んでいくものと思いますし、男女間の差というものは埋まってくるのであろうかと思います。あと、一方で、中小企業は人材確保が非常に重要な課題になっておりますが、人材確保をするに当たって、若い学生の皆さんは、育児ができる、両立できる点を会社選びで非常に重視をするということからしても、企業の現場でこういったことは根づいていくのだろうなというふうに思います。あと、例えば、いろんな会社の若い社員、男性社員の方と話しておりましても、男性自身が家事、育児をするというのは、若い世代ではもう当たり前になっているというのを感じますので、いずれこういった差というのは埋まってくるだろうなと考えてございます。以上です。
○舟橋参考人 ありがとうございます。やはり、歴史的にと先生がおっしゃいましたけれども、ずっと醸成されてきているということで、役割分担意識は、繰り返し繰り返し、まず、もう産み落ちたときからとは言いませんけれども、意識的に、男性は、女性はという役割分担意識を常に植え付けられてくる中で、家庭においても、また職場においても、女性はこうあるべき、男性はこうあるべきという中で、労働時間のまた使い方も含めて格差が出ているというふうに思います。以上です。
○高井委員 皆さん、大変簡潔にお答えいただいてありがとうございます。だから、歴史的経緯だとは思うんですけれども、それにしても、ヨーロッパとかほかの国もそうだったのが変わっているのに、なぜ日本は戦後変われずにここまで来てしまったのかということは、本当に、ちょっと、ここをまず解明しないとこの問題は解決していかないのかなと私は思っております。それでは、二問目お聞きしますが、これは池田参考人の資料の中にもありましたが、四ページにあった、女性だけが所得ロスやキャリアロスを甘受することになるという、私は、特にキャリアロス、これが深刻じゃないかなと思うんですね。私の妻も働いていまして、ただ、子供がいないので育休とかは無縁なんですけれども。ただ、自分ももし子供が生まれたら、とてもやはり育休なんか取れない、周りの働いている女性もみんなそう言っていると。会社の中で、同じ能力、あるいはちょっと男性の方が劣っていても、やはり女性は育休をいつか取るのかとかいうふうに思われると、面倒くさいとか、いろいろこの人には仕事を任せられないとか、そういう現実がもう厳然としてあると思いますね。やはり、私は、このキャリアロスをいかになくしていくか、なかなか本当に難しい問題だと思いますけれども、ここに切り込まないと、幾ら休暇とかを整備しても、実際取れない、取りたくないという女性がまだまだいるということになると思います。このことを聞きたいのと、あと、あわせて、もし、専門外なので、答えられたらでいいんですけれども、私は、実は妻の、妊活、不妊治療をやっていまして、この不妊治療、妊活、つまり育休に入る前もこれは非常に重要だと、全く同じ問題があるんですね、キャリアロスにつながるから。まだ育休は明示的に分かりますよね、出産するから休むってみんな分かるけれども、妊活、不妊治療は言えないわけですよ。言っても職場、男性は理解してくれない。そうなると、余計このキャリアロスの問題は深刻で、後から厚労省にも聞こうと思っているんですけれども、私は、この不妊治療の問題は、お医者さん、不妊治療する医者を、夜間とか休日の診療を拡大する以外にないんじゃないかと思っているんですけれども。専門外ですから、もし分かったらでいいですけれども、不妊治療、妊活の問題についても何か御所見があったら併せてお答えいただけたらと思います。それでは、今度は舟橋参考人から順番にお願いします。
○舟橋参考人 御質問ありがとうございます。女性が現時点では育休取得率が非常に高いわけですけれども、非常にこのキャリアロス、所得ロス、ペナルティーだというふうに思われます。ペナルティーではなく、本当に社会に貢献をしているというような状況をつくり出すのが今回の一歩だというふうには承知をしておりますけれども。一時金や、また昇進、昇格、こういうことにも大きく影響する。つまり、キャリアロスが昇進、昇格にも影響し、生涯賃金にも大きく影響するということが、一歩踏み出せない、様々に影響しているというふうに思いますので、そこの解消は男性も含めて非常に重要な視点だということで、改めてペナルティーのない制度設計を御検討いただきたいというふうに思います。あと、もちろん私は専門家ではございませんが、妊活の問題でいうと、うちの労働組合も、先ほどお示ししましたもう一つの資料というところで、一番最後に、妊活のアンケートも取っております。やはり一割程度の方が、女性、本当にそのことを切実で、制度利用を求めているというふうに私どもの調査結果にも出ております。しかし、その取得に関しては、まだ社会的にも認知度が非常に低くて、積極的に取るというふうにはならないし、柔軟に取らないと、いつ排卵というか、検査も含めて、取得日というのは非常に、決まった日でないと駄目なわけですね。そこを支援する制度にならないと妊活そのものをしようという気にならないことや、金銭的な問題はもちろんのことながら、両方兼ねて、金銭と休暇、社会的にも取得が当たり前だよねというような制度設計を望むところです。以上です。
○杉崎参考人 ありがとうございます。キャリアロスの問題について、これも非常に重要な御指摘であると思います。今回の改正法が具現化されることによりまして、男性の育休は大分進むのではないかと思います。そうなることで女性の就労継続が図られると思いますので、そういった面からも今回の改正法案は重要だと思います。また、いわゆる女性活躍の重要性、女性のみならず、ダイバーシティー経営の重要性というのは、大企業のみならず中小企業の間でも非常に浸透してきていると思いますので、会議所もこういった周知に努めてまいりたいと思います。あと、不妊治療の問題でございますが、不妊治療をされている労働者の方からしますと、突発的に休暇を取得する必要性があるというふうに認識してございます。そうした意味からも、今回の男性育休取得促進にも求められますが、チームで仕事を回すですとか、生産性を高めていくといったようなことが重要だと思いますし、とりわけ不妊治療の問題については厚労省さんが非常に周知に力を入れておられまして、そういった周知により、大分企業の理解も進んできているのかなというのが実感としてございます。以上です。
○池田参考人 御質問ありがとうございます。簡潔にお答えいたします。まず、キャリアロスの問題に関しましては、先ほど現行法の評価のところで申しましたように、やはり、連続した期間仕事から離れる時間を確保する、そういう制度設計の弊害というものがキャリアロスという形で認識されるようになっていて、ですので、今回の改正で分割取得であるとか、より柔軟化を図っていく。ただ、柔軟化を図るということは、非常に労務管理が煩雑になりますし、柔軟性をめぐる労使のトラブルというのもやはり起きますので、非常に慎重な議論が必要な面もあるんですが、一つその発想を変えていくことで、女性活躍含めて、キャリアロスをどう解消していくかという方向にこれから議論が進んでいくだろうというふうに予想はしております。もう一つ、妊活の問題に関しましては、私も断片的にお話を聞くことというのはあるんですが、今回の改正の話とちょっと絡めますと、使用者が理解できる範囲の制度を使用者の判断で周知してくださいね、制度を利用させてくださいねというふうに言っていると、いや、もっと想定していない問題が実は現場では起きている、想定していない悩みを女性労働者は持っているということに対して後手を踏むことになるというふうに思います。ですので、使用者に制度周知を求める、取得勧奨を求めるという形で、使用者の働きかけによって労働者が福祉とかベネフィットを得るという発想から、やはりもう一回、今日、労働組合もいらっしゃいますが、労働者のニーズをしっかりと発言、発話、発信していくような労使関係の再構築の中で、より多様な女性の多様な悩みがきちんと労使関係の中に反映されていくということを考えていかなきゃいけない。今はそれが一つ、妊活という問題が非常に象徴的な問題としてあるというふうに私は認識しております。以上です。
○高村参考人 御質問ありがとうございます。二点であったかと思います。まず、キャリアロスということについてでございます。確かに、長期間職場を育児休業で離れるということであって、そこにキャリアロスが生じるということなんですけれども、私としては、やはり、女性だからというカテゴライズされた見方というのをまず外すということが一番重要ではないかなというふうに思っております。女性なのでもしかすると、いつか長期間休むかもしれないとか、女性だからもしかするとというふうなことはほかにもあるかもしれないんですが、女性だからという、まずそこのところを外す。そこにもし、思っていないけれども無意識にバイアスがかかっていないかというところを、上司の方とか使用者側の方には、自問自答しながら、個を見て、どの人を成長させていくのが大切なのかというところをしっかり見るようにしていただけたらというふうに思っております。女性だからといってチャンスを与えないことによって、やはり意欲というところが下がると、結果的にそのこと自体がキャリアのチャンスをなくすことになるという、予言の自己成就というふうなこともありますので、そこはしっかり個を見ていくということが非常に大切かなというふうに思っております。二点目の妊活ということでございますけれども、非常に、一般論にはなりますが、個別の生活とそれから就業というものを継続させるニーズというのは多様化していると思います。治療の話ですとかあるいは介護というようなこと、突発的に起こりますし、男女を問わず起こるということは様々ございます。先ほど舟橋参考人のお話にもあったとおり、お互いさまというふうな言葉がございましたけれども、様々なニーズがあり得るという理解が職場で進んでいくということが重要かなというふうに思っております。ちょっと一般論になりまして、恐縮です、手短ということで。以上です。
○高井委員 大変参考になりました。どうもありがとうございました。
○とかしき委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。(拍手)午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩といたします。