2022年2月3日 衆院予算委員会 佐渡金山世界遺産推薦 歴史に向き合い誤り認めよ
提出資料 出典:佐渡金山ホームページ(抜粋)
提出資料 出典:(仮訳)「日本政府ステートメント(2015年7月)」外務省提出資料
提出資料 出典:“ Sites of Japan’s Meiji Industrial Revolution Iron and Steel, Shipbilding and Coal Mining ( Japan )( C1484 ), 2021, UNESCO “の仮訳 外務省提出資料
提出資料 出典:産業遺産情報センターについて」 内閣官房・内閣府提出資料
提出資料 出典:佐藤泰治「五 強制連行された朝鮮人」新潟県編『新潟県史 通史編8 近代 三』1988年、pp782-785。
提出資料 出典:相川町史編纂委員会「第二節 国策と鉱山」『佐渡 相川の歴史 通史編 近・現代』1995年、pp682-683。
日本共産党の宮本徹議員は3日の衆院予算委員会で、政府が「佐渡島(さど)の金山」(新潟県)の世界文化遺産の推薦を閣議了解したことについて、「推薦に値する」としたうえで、歴史の事実に謙虚に向きあうよう求めました。
宮本氏は、長崎県の端島(通称・軍艦島)を含む「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録(2015年)の際に出した政府のステートメント(声明)が「意思に反して連れて来られ、厳しい環境下で働かされた多くの朝鮮半島出身者がいたこと」について「理解できるような措置を講じる」としたにもかかわらず、現在の展示資料は1939年以降の徴用による労働者の証言がないと指摘。世界遺産委員会が昨年、強い遺憾を示し、約束の実行を求める決議を採択したとただしました。
野田聖子地方創生担当相は「わが国は世界遺産委員会の決議を誠実に履行している」などと開き直りました。
宮本氏は「ひとりよがりの立場は、国際社会に全く受け入れられない」と批判。「国際社会との約束を履行しない姿勢を取り続ければ、結果として佐渡金山の世界遺産登録のコンセンサス(合意)を得る障害にもなる」と指摘しました。
その上で宮本氏は、新潟県がまとめた『新潟県史』や旧相川町が編さんした『佐渡相川の歴史』などに、朝鮮人労働者の強制労働の事実が克明に記録されていると強調。「こうした事実を認めるか」とただしました。末松信介文部科学相は「さまざまな議論がある」「定かであるかは確認していない」「もう一度調査する」などと述べ、強制労働の事実を認めませんでした。
宮本氏は、安倍晋三元首相が新たな「歴史戦チーム」を立ち上げ、日本の名誉と誇りを守り抜いてほしい述べたことを指摘。政府のタクスフォース(作業部会)は「政権の認識に基づいてそれに合う事実だけ集めるのか」とただしました。
松野博一官房長官は「客観的事実に基づいて、国際社会で正しい歴史認識が形成されることを重視する」などと答弁。宮本氏は「負の側面も顕著に認めることで、遺産の価値が世界遺産としての価値を持っていく」と述べ、日本による植民地支配と侵略への反省とおわびを表明した村山首相談話(1995年)の立場に立って歴史に謙虚に向き合うよう求めました。
以上2022年2月4日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2022年2月3日 第208回衆院厚生労働委員会第9号 議事録≫
○根本委員長 これにて田中君の質疑は終了いたしました。次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。政府が佐渡島の金山を世界文化遺産として推薦することを決定いたしました。我が党としても、推薦に値すると考えます。そもそも世界遺産とは、人類の知的、精神的連帯に寄与し、平和と人権を尊重する普遍的な精神をつくるというユネスコの理念に基づくものです。そして、文化遺産の解説及び展示に関するイコモス憲章では、より広い社会的、文化的、歴史的、自然的な文脈と背景に関連させなければならないとしています。本委員会で高市さんが、佐渡の金山の登録について、江戸時代の産業遺産であって、戦時中とは全く関係がない、韓国は当事者ではあり得ないとおっしゃいました。しかし、史跡佐渡金山のホームページでも、佐渡金山は四百年の歴史が紹介されております。世界文化遺産として、負の面も含め、四百年全体を示すことは当然のことだと思います。この点は、明治日本の産業革命遺産でも問われております。二〇一五年の登録の際、日本政府は、資料二ページ目のステートメントを出しております。日本は、一九四〇年代に幾つかのサイトにおいて、その意思に反して連れてこられ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者らがいたことについて理解できるような措置を講じる、こうあります。そして、これに関わって、昨年、世界遺産委員会は、日本が関連決議をいまだに十分には実施していないことに強い遺憾を示す決議を採択、約束したことを実行するよう日本政府に求めております。外務大臣に確認いたしますが、この二〇一五年のステートメントの最終決裁権者は誰ですか。
○林国務大臣 二〇一五年の明治日本の産業革命遺産の世界遺産登録時に実施した日本政府ステートメントについては、当時、政府全体で意思決定を行ったものでございます。
○宮本(徹)委員 政府全体ということですから、つまり、最終的には安倍総理ということだと思うんですよね。文書自体が、日本政府を代表しとありますから、これも当時の安倍首相が世界に対して約束したことであります。そこで、産業遺産情報センターの展示物を見た場合、安倍元首相が当時約束したように、多くの朝鮮半島出身者が意思に反して連れてこられた、このことが一見して理解できるような展示になっているんでしょうか。
○野田国務大臣 お答えいたします。産業遺産情報センターは、二〇一五年に明治日本の産業革命遺産が世界遺産に登録された際のユネスコ世界遺産委員会の決議を受けて、二〇一九年度末に設置したものです。これまで、我が国は、世界遺産委員会の決議、勧告等を誠実に履行し、明治日本の産業革命遺産の世界遺産価値や歴史全体が理解できるパネル等を展示するとともに、世界遺産登録時の日本政府のステートメントのパネル、国民徴用令を含む第二次世界大戦中の徴用政策等が理解できるパネル、厳しい生活環境や労働環境に関する元端島島民の証言を紹介するパネル等を展示してきているところであり、初めに日本内地で実施されていた国民徴用令が朝鮮半島出身者に対しても実施されたことが明確に理解できる内容となっています。
○宮本(徹)委員 ところが、それを見て、世界遺産委員会は全会一致で、いや、日本は履行していないという決議を昨年上げているわけでございます。ですから、誠実にやっているんだという独りよがりの立場というのは、国際社会からは全く受け入れられていないというのが今の現状だということをしっかり見なきゃいけないというふうに思います。資料を、内閣官房からいただいたものを四ページ目、五ページ目とつけておきました。例えば、五ページ目のものが大きく産業遺産情報センターに貼り出されております。私も、昨日伺って、お話も伺ってまいりました。この方の証言が大きく出ています。ただ、この方でいえば、時期でいえば、一九四〇年代に連れてこられた方ではないわけですよね。この方のお父さんは、その前の時代から端島の炭鉱で働かれていた方ということになっているわけです。一九三九年以降の労務動員計画、そして徴用による労働者の証言が大きく貼り出されているわけではないですよ。是非、現地にも、御覧になっていただいて、本当に、世界遺産委員会がなぜそういう、日本は約束を守っていないという指摘をしているのかというのを考えなければならないというふうに思います。多くの朝鮮半島出身者が意思に反して連れてこられ厳しい環境の下で働かされたと万人が分かる資料の展示にしていくということは、私は非常に大事なことだと思いますし、国際社会との約束を履行していない、こうみなされている姿勢を取り続ければ、結果として、佐渡金山の世界遺産登録のコンセンサスを得る障害にもなるということを指摘しておきたいと思います。その上で、佐渡金山の歴史についてですけれども、資料六ページ目以降に、新潟県がまとめた新潟県の通史を載せております。こういう記述がございます。「昭和十四年に始まった労務動員計画は、名称こそ「募集」「官斡旋」「徴用」と変化するものの、朝鮮人を強制的に連行した事実においては同質であった。本県では十五年末現在募集認可数一八五〇人、移住者数八八〇人であった。家族持ちが六八一人もいながら、家族を呼び寄せたものは三五世帯八一人にすぎず、移住者の不本意さがわかろう。」こう書かれております。そして、新潟県史では、労務動員計画で最も多くの朝鮮人が働いていたのは三菱鉱業佐渡鉱山と書かれております。賃金は内地同様とうたわれているが、両者を職種別で見るなら、その悪平等が判然とする、ここでは半島人が五百八十四人、内地人が七百九人稼働していた、ところが、前者が圧倒的に多数配属されていたのは、削岩と運搬部門であったとあります。つまり、朝鮮人の大多数が坑道の中での危ない労働に割り当てられていたということです。そして、相川の歴史、相川町の町史をまとめた委員会の資料もつけております。こういう記述がございます。昭和十五年二月、九十八人の第一陣が到着した早々、四十人の朝鮮労働者が会社に押しかけて待遇改善の要求、同年四月には三月分の賃金支給を受けた九十七人が応募時の条件と違うとして賃上げストライキを決行し主謀者三人が強制送還されたりしたと。つまり、だから、応募のときは違う条件、もっと厚遇を示して、ある意味だまして募集をしていたということになるわけでございます。そして、佐渡鉱山の半島労務管理についてを見ますと、千五名のうち百四十八名が逃走したという記録もあります。特高月報などには、逃亡した労働者が検挙され、労務調整令違反で送局されたことが記録されております。ちょっと、まず事実の問題として確認したいと思いますが、文部科学大臣、佐渡鉱山の歴史には新潟県史や相川町史に記されているこういう事実があることは、これは否定されませんよね。
○末松国務大臣 お答え申し上げます。御指摘の、意思に反して連れてこられ、厳しい環境の下で働かされた多くの朝鮮半島出身者等がいたとの文言は、明治日本の産業革命遺産が世界遺産に登録された際の日本の政府のステートメントであることは承知をいたしてございます。他方、御指摘をいただきました点ですけれども、様々な議論、そして意見があることは承知をしております。いずれにせよ、文部科学省といたしましては、佐渡の金山の高い文化的価値を評価していただけるよう、関係自治体及び関係省庁と連携しつつ、冷静かつ丁寧な議論に努めてまいりたいと思います。また今般、内閣官房副長官補の下に、関係省庁が参加をいたします世界遺産登録等に向けたタスクフォースが設置されたところでありまして、今先生おっしゃいましたけれども、歴史的経緯も含め、様々な議論をいたしてまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 様々な議論と言いますけれども、私が今紹介したのは、全部、公的記録ですよね。県史だったり、町史だったり、あるいは戦前の特高警察の記録だったり、客観的な資料に基づいて話している。別に、日本共産党史を引用しているわけじゃないわけですよ。ですから、その事実はやはり事実に立って考えなきゃいけないですよ。こういう事実があったということ自体はお認めになりますよね。
○末松国務大臣 佐渡鉱山史とか、その県史のコピーもちょっと送っていただいたことがございますけれども、定かであるかどうかということは私自身は確認はまだいたしておりません。それをきちっともう一度調査はいたしてまいります。知事とも市長とも、そういう話はいたしております。
○宮本(徹)委員 定かであるかどうか分からないって、それをひっくり返すようなものを何か持っているわけでもないわけでしょう。公的なところがしっかりと書いたものを、定かであるかどうか分からないと、ひっくり返そうというのは、本当に私はとんでもない話と思いますよ。やはり、ちゃんと事実はしっかりと認めていくということが必要だと思います。ちなみに、この相川町史は、佐渡金山の異常な朝鮮人連行は、戦時産金国策に始まって、敗戦でようやく終わるのであるということも指摘されております。私は、こういう事実を覆すというような方向で物事を考えるというのであれば、それは大変な誤りだと思います。安倍元首相は、新たな歴史戦チームを立ち上げ、日本の名誉と誇りを守り抜いてほしいとおっしゃっています。そうした中、先ほどお話ありましたけれども、二月一日に、世界遺産登録等に向けたタスクフォース第一回会合が行われました。このタスクフォースの目的を見ると、正しい歴史認識、こういう言葉があるわけです。官房長官にお伺いしますが、このタスクフォースの任務というのは、NHKの「シブ五時」が報じたように、政権の歴史認識に基づいて、それに合う事実を、これだけを集めていくんですか。それとも、政権の歴史認識にとって都合の悪い事実も含めて、事実をしっかりと集めて積み上げていくんですか。どちらですか。
○松野国務大臣 お答えをさせていただきます。二月一日、滝崎内閣官房副長官補の下、世界遺産登録等に向けたタスクフォース第一回会合が開催をされ、内閣官房、外務省、文部科学省等から局長級が出席をいたしました。同会合においては、今後のスケジュールの確認、今後必要となる作業に関する議論等を行ったとの報告を受けています。このタスクフォースは、佐渡の金山のユネスコ世界遺産の登録実現等に向け、歴史的な経緯を含めて、今後行われる様々な議論に対応するための省庁横断的な取組を強化をすること、この関連で、国際社会において、客観的事実に基づく正しい歴史認識が形成をされ、我が国の基本的立場やこれまでの取組に対して正当な評価を受けるため、また、いわれなき中傷には毅然として対応するために、関係省庁の間の情報共有を図るとともに、政府一体となって、発信の在り方を含め、効果的な対応の検討を行うことを目的として立ち上げたものであります。政府としては、客観的事実に基づいて、国際社会において正しい歴史認識が形成されることを重視をしており、引き続きしっかりと取り組んでいく考えであります。
○宮本(徹)委員 初めに申し上げましたけれども、世界遺産は、人類の知的、精神的連帯に寄与し、平和と人権を尊重する普遍的な精神をつくるというのが理念です。ですから、負の側面も謙虚に認めていく、このことでこそ、その遺産の価値が、世界遺産としての価値を私は持っていくと思います。政権に都合の悪い事実から目を背けて、歴史戦だ、こうやって声高に叫ぶのではなくて、私は、村山談話の立場に立って、歴史に謙虚に向き合うことを強く求めたいと思います。最後に、先日の高市さんの質問に、外務大臣はこう答弁されています。日本は、ユネスコ改革を主導して、昨年の四月には、世界の記憶について、関係国間での見解の相違がある案件は関係国間の対話で解決するまでは登録を認めないこととするための異議申立て制度を導入するなどしてきた、こう答弁されておりました。私は、世界文化遺産でも関係各国間での対話というのは極めて大事だと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○林国務大臣 今委員から御指摘がありましたように、世界の記憶においては、関係国間の合意を必要とするルールが日本主導で採択されたところでございます。これを受けまして、世界遺産でも、世界遺産条約履行のための作業指針におきまして、関係国と議論を行うことが推奨されております。我が国としては、この趣旨に沿って、佐渡の金山の文化遺産としてのすばらしい価値が評価されるよう、関係国と冷静かつ丁寧な議論を行っていく考えでございます。
○宮本(徹)委員 時間になりましたから、終わります。
○根本委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。