2022年2月15日予算委員会中央公聴会について 議会人の矜持をもって

 2月17日、突然、「維新」の会の議員が名前を連ねて、宮本徹への懲罰動議を提出しました。

 不当な言いがかりであり、「白を黒と言いくるめる」ようなものです。

 多くの方から、宮本徹は、国会内の良識派だと評価をいただいていますが、これからも、宮本徹は、不当な「威圧」に臆することなく、議会人としての矜持をもって、おかしなことはおかしいと発言します。

 さて、今回のことの発端は、2月15日の予算委員会での公聴会です。

 国会では、議題になっている案件についての審議の参考にするために、公聴会や参考人質疑をしばしば行います。

 国会法で、予算審議に当たっては、公聴会を開くことになっています。

 衆議院規則を見てみましょう。

 第76条 公聴会は、議員又は議長から付託された議案の審査のためにこれを開くことができる。

 第83条 公述人の発言は、その意見を聞こうとする案件の範囲を超えてはならない。

 予算委員会の公聴会の案件は、いうまでもなく、新年度予算案です。

 公聴会の公述人は、国民からの公募と会派からの推薦を踏まえ、理事会で確認します。

 通例、各会派の推薦した人が、そのまま理事会で確認されています。

 ところがです。

 公聴会の朝の理事会で、各公述人から配布された資料を見て、理事会に参加している与野党の理事から、驚きの声がいくつも上がりました。それは、維新の会が推薦した原英史公述人の配布資料が「国会における誹謗中傷について」と題した、予算案についての公聴会のペーパーとはとても思えないものだっかたらです。

 理事会の場では、野党理事からは、「原公述人の資料を見た。公聴会の趣旨にそった議論になることを期待したい」という、旨の異例の発言がありました。

※原英史氏とは、官僚出身で、政府の国家戦略特区ワーキンググループ座長を務め、また、大阪市総合本部顧問を務めている方です。維新の会の政治資金収支報告書によると、原氏が代表をつとめる「政策工房」には毎年、数千万円の政党助成金(政党交付金)が維新の会から「政策工房」に支払われています。なお、宮本徹が、初めて原英史氏の名前を知ったのは、国家戦略特区を使った加計学園疑惑追及の時です。

 しかし、朝の理事会で表明された期待のようには、公聴会は、運びませんでした。

 原英史公述人は、冒頭、「国会における誹謗(ひぼう)中傷の問題にしぼって話したい」と述べ、原氏が毎日新聞や立憲民主党の議員と、裁判で係争中の案件について、原氏の反論をとうとうと述べました。この様子は、衆議院のインターネット配信でご覧になれますが、はっきり言って前代未聞です。私も、国会議員7年務めていますが、こういう公聴会や参考人質疑が、当たり前のようにまかり通るようになると国会運営はメチャクチャになるのではと、心底、嘆かわしい事態だと思いました。公聴会や参考人質疑で、公述人、参考人が議題と関係のない、自分の争っている案件について述べるというのは、おそらく憲政史上ないのではないかと思います。

 公述人・参考人の発言が与野党問わず、参考になる意見も多々あるのが公聴会や参考人質疑です。一方で、安保法制のような与野党対決法案の場合は、公聴会・参考人質疑も、法案の成立の可否をめぐる論争の場となります。いずれにしても、衆議院規則にのっとって、公聴会にしても参考人質疑にしても、議題に沿って行われるところに意味も役割もあります。

 そこで、私は、こうした事態を黙認すべきでないと考え、議会人としての責任を果たすべく、公聴会での質疑の冒頭で

 ・予算委員会での公聴会は、予算案について国民の意見をきき、その後の審議にいかす場であるということ

 ・原公述人の公述は、自らの抱える案件について私的な反論をとうとうと述べられるものであったということ

 ・予算委員会の公聴会のあり方としてふさわしいのかという点でいえば、甚だ疑問に感じていること

 ・推薦した会派の責任も問われること

 を述べました。

 さらに、原公述人の公述後の予算委理事会でも、あらためて宮本から、原公述人の公述について、予算委員会公聴会にふさわしくないと、前代未聞の事態ではないかと指摘しました。予算委員会ベテランの野党筆頭理事からも、長い間予算委員会をつとめてきた経験から、予算委員会の公聴会の性格について、大事な指摘がなされ、「公聴会が充実した議論となるよう、建設的に議論してきた。公聴会の本旨に基づいた議論を」との指摘がありました。委員長からも野党筆頭理事の発言に「そうだなと思う。公聴会の本旨に基づいた議論になることを望みます」という旨の発言がありました。一方で、維新会派の理事の方からは、宮本の発言は公述人に失礼であり抗議すること、推薦会派への言及があったので議事録を精査して対応する旨の発言がありました。

 その後、16日、17日と予算委員会理事会がひらかれましたがその場で、この問題について、維新会派からは発言がないままでしたが、突然、17日、予算委員会分科会の開催中に、維新会派が名を連ねて、宮本徹への懲罰動議が提出され、驚きました。

 維新の会派が推薦した原公述人の発言が、公聴会のあり方としてふさわしいのか、宮本徹の問題的を受けとめかえりみないばかりか、逆に、威圧的に懲罰動議をだし、自らへの批判を封じようとするやり方と言わなければなりません。懲罰動議は、不当な言いがかりそのものです。

 東京新聞がこの問題について、特報面で特集を組みました。維新会派による宮本徹への懲罰動議、維新代表の松井大阪市長による水道橋博士への「法的手続き」をかざしての「圧力」、維新の大阪府議が、大阪での医療崩壊について報じたTBS番組をBPO申し入れしたこと、維新の会の創始者の橋下徹氏がれいわの大石議員を名誉毀損で訴えたことの4つが2週間のうちに起きたことについて、維新を批判するものを強圧で抑え込もうとする維新の体質を論じていました。

 宮本徹は、そうした圧力には決して屈せず、これからも議会制民主主義と人権、平和を守るために、たたかい続けます。
 反省すべきは、維新です。

 その上で、「白を黒と言いくるめる」ために必死になっている人たちが、事実と異なることを繰り返し、流しているので、若干の解説を加えておきます。

 ネット上で、”公聴会終了後、宮本徹が原氏に詰め寄り、予算委員会は予算を議論するところだと述べた”ということが流されているようです。

 都合のよいストーリーをつくるために、デタラメを述べるのは恥ずかしいことだと指摘しておきます。公聴会や参考人質疑のは、慣例として、理事、オブザーバー、質疑者が、開会前もしくは終了後に、公述人・参考人にご挨拶にいきます。私もいつも行きます。これを「詰め寄る」というのは、日本語の使い方を知らないか、何らかの思惑があるかどちらかでしょう。挨拶の際、私は、原公述人には、「公聴会は予算について意見を述べる場」だと一言、お伝えしました。もちろん優しい顔で。他の公述人の方にももちろん、ご挨拶しました。そもそも、詰め寄るような場でないことは、お分かりいただけたと思います。

 ”「モリ・カケ・サクラ」は予算と関係なく議論しているのだから、原氏が予算と関係ないことをテーマにしてもいいではないか”という意見が来ました。森友疑惑、加計学園問題、桜を見る会はいずれも、予算の使い方が関わっている問題です。しかも、桜を見る会や加計学園問題は、総理によって行政の私物化が行われたのではないかという政治のあり方の根幹に関わる問題です。予算委員会では、政府の制作全般が議論する場で、集中審議も、与野党でコロナ対策などなど決めて行います。一方、原公述人は、政策を語ることなく、「「国会における誹謗(ひぼう)中傷の問題にしぼって」、お話しされました。原公述人が、自らの案件について、話したいのであれば、それにふさわしい場で話せばよいのです。原氏は、政府の国家戦略特区のワーキンググループ座長も務め、参考人で国会にきた経験もある方ですから、国会のルールを知らないとは思えないのですが。

 安倍元首相が、この案件に関わる原英史氏のTweetをコメントをつけて拡散していました。とてもわかりやすい行動です。安倍元首相は加計学園疑惑で窮地に追い詰められましたが、早くから鳥インフルエンザの権威の大槻先生を読んで準備し、ライフサイエンス分野でも実績を上げていた京都産業大学ではなく、加計学園だけが獣医学部新設の権利を手にしたのは、まさに、国家戦略特区の枠組みを使ってでした。平成30年4月開学という条件を設定し、そのスケジュール間を加計学園とだけ共有し、京都産業大学には知らせず、加計学園が教員の確保などすすめていきました。しかも、それまでの私立大学にはない巨大な定員を加計学園の獣医学部に認めたわけです。文科省からも愛媛県からも総理の関与が疑われる文書が次々出てきました。国家戦略特区ワーキンググループ座長代理の原氏がどこまで真相を知っているのかは、明らかになっていませんが、本来、こうした疑惑があれば、検証の先頭に立つべき国家戦略特区ワーキンググループが、事実上、疑惑に蓋をする一役も買いました。

≪2022年2月15日 第208回衆院衆院予算委員会公聴会第1号 議事録

○根本委員長 これより会議を開きます。令和四年度一般会計予算、令和四年度特別会計予算、令和四年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。この際、公述人各位に一言御挨拶を申し上げます。公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。令和四年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。御意見を賜る順序といたしましては、まず大槻奈那公述人、次に原英史公述人、次に川口大司公述人、次に小黒一正公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。それでは、大槻公述人にお願いいたします。

○大槻公述人 ありがとうございます。名古屋商科大学並びにマネックス証券というところにおります大槻と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。私からは、日本の金融市場の現状とリスク、そして、それを踏まえました日本の課題、期待についてということでお話をさせていただきたいと思います。まず、新型コロナの発生から約二年ということで、様々なインパクトがあると思いますが、当社の個人のアンケートからちょっとお伝えをしたいと思います。お手元の資料の二ページ目、上段のグラフを御覧いただければと思います。こちらは、新型コロナ発生当初の二〇年四月、そして各種経済対策発表後の二〇二一年一月に、それぞれ、自分の収入がどうなったか、あるいはどうなると思うかということについて聞いたものです。回答者は証券口座を持っている人ということですから、やや楽観的なバイアスがあるかと思われますが、それでも、コロナ発生当初は、収入が減った、あるいは減りそうだと答えた方が全体の五割に上り、増えると答えた方はほとんどいませんでした。これが、二一年一月時点では、右側になりますが、減った、減りそうだといった人が三割に減少しまして、変わらない又は増えたという方が合わせて七割程度に増えました。その背景の一つが、同じページの左下にございますように、過去と違う形での支援を行ったということだと思います。政府が、御存じのとおり、直接の給付金それから補助金等を比較的早期に支給したこと、これに加えまして、真ん中あたりのルートですが、保証協会を通じていわゆるゼロゼロ融資で銀行に貸出しを促したということが表れたと思います。右下にございますように、この結果として、リーマン・ショックのときに比べましても、広い業種についてしっかりと貸出しが伸びているということがお分かりいただけると思います。今回のスキームが奏功したために、次のページにございますように、邦銀は、当初は不良債権の増加による財務の悪化が相当懸念されたわけですが、実は、今期、もうすぐ三月が終わりますが、引き当てを取り崩して、一部の銀行では過去最高益を達成する見込みですし、貸出しを増やしてもなお、右側にございますように、余剰資金が増加して、一月時点ですが、三百三十兆円ということで史上最大となっています。下の方にございます資本につきましても、二〇一九年までは、実は、国内基準行、地域金融機関が主ですが、低下傾向にありましたが、コロナ禍を通じてむしろ充実しています。後ほど触れますが、このことは、今後の日本企業の正常化そして成長のプロセスのために極めて重要だと思っています。四ページ目を御覧いただければと思います。日本を含む各国で行われた財政政策などの結果、左上の図のとおり、御存じのとおりですが、世界のマネーが大きく増加しまして、右上にございますのが日本の個人預金ですが、こちらは増加しました。二一年九月時点の銀行の個人預金の残高は約五百三十兆円となっていますが、これはコロナ前のトレンドから推計される金額よりも十三兆円ぐらい膨らんでいる計算です。これらのマネーの伸びに押されまして、同じページの左下にございますように、二〇二〇年三月のパンデミック宣言で発生しました株価の暴落も、実は、一九二九年以来、史上最短のペースで回復しました。これらに支えられまして、右下にございますが、個人の金融資産ですが、米国と比べますと相当見劣りがするようではありますが、それでも安定的に増加をしています。このように、新型コロナ、今の時点ではございますが、金融市場への影響は、これまでのところ、我々市場関係者の当初の予想がいい意味で大外れだったということだと思います。しかし一方で、これからお話しさせていただきますように、足下の環境の変化、それに対する懸念材料も明らかになりつつあると感じています。五ページ目を御覧ください。まず、一点目の変化といたしましては、これまで持ちこたえてきた企業それから個人の体力に陰りが見えてきた点です。一部業種の不良債権なんですが、コロナ前から大きな増加が見られるのに加えまして、それ以上に目を引くのが、左上の図の一番右側の濃い青棒なんですが、不良債権の予備軍と言われる、その他要注意債権の増加が際立っています。また、これと表裏一体なんですが、下の方にございますように、一部の業種では、赤字それから減益となっている上、借入れの増加で財務力の大幅な悪化が見られるのは御存じのとおりかと思います。不良債権の予備軍と申し上げましたけれども、不良債権そのものの五倍ぐらいになっていまして、これらの企業をどのように再生し、成長軌道に乗せるのかというのが日本経済の明暗を分けるというふうに考えています。それから、同じページでもう一点だけ、個人について。右下なんですけれども、この赤い折れ線のグラフにございますように、預金残高が小さめな、三百万円未満の口座の一口座当たりの預金残高なんですが、ほかの大口の預金の口座はまだ安定的に増加をしているんですけれども、これが足下で減少に転じています。また、ここにはございませんが、一部民間企業のデータでは、住宅ローンの返済に困っている方々の相談件数が、コロナ前に比べて一・五から一・六倍になっていると言われます。第二の変化ということで、次のページ、六ページ目です。資産価格膨張の巻き戻しです。この上の二つのグラフは、日米それぞれの中央銀行の、資産残高を横軸に、縦軸に株価を取っています。様々な要因が関係していると思いますが、日米共に、近年の中央銀行の資産規模と株価にはやはり一定の関係があると見られます。株価は、中長期的には将来の企業収益を表すというものではあるんですけれども、市場のお金の流れに影響されないという考え方がある一方で、昨年、アメリカで発表された研究では、市場に一ドル流入すると株価の時価総額が五ドル程度上昇するというふうにも見られています。加えまして、下の二つの図表は、住宅価格の上昇と消費者物価の上昇の比較ですが、日本の場合、他の先進国に比べますとまだまだ行き過ぎ感というのは少ないんですが、それでも久々に上昇幅が拡大を続けているという状況です。こうした資産価格の上昇ということ自体を否定するものではございません。国民の富を増やすものということだとは思うんですが、御存じのとおり、年初来、市場は極めて不安定になっています。その影響については、今後の見通しとともに、後で少し触れたいと思います。戻りまして、三点目の変化ということで、七ページ目を御覧ください。こちらは四つの図表をお載せしていますけれども、全て我々が定期的に行っているアンケートです。左上にございますとおり、若干傾向は緩やかになっているんですが、まだまだマイナスの方にございます。これはどういうことを意味しているかというと、個人の財布のひもが、全世代で、前年比でまだ引き締めているということになっています。理由を聞いているんですが、広い世代の方々が年金や財政への不安を口にしています。右側を御覧いただきますとおり、これは、全世代をまたいで、いろいろな世代の方が同じような回答をしています。このことは、今後の歳出の在り方を考える上で十分考慮すべきではないかというふうに考えています。それでは、ここから、当面の金融市場のリスク、これを踏まえた日本の課題、機会についてお話をさせていただければと思います。まず、八ページ目、これは、皆さん本当に御存じのとおりのことだと思いますが、インフレ率の上昇です。日本のインフレ率は、消費者物価については、御存じのとおり、今のところ穏やかでございます。しかしながら、左下のとおり、海外からの輸入価格等に左右される企業物価指数はアメリカと連動して大きく上昇している結果、右下のとおり、日本企業が消費者に転嫁できずに耐えている部分、ここで申し上げますと矢印のところになりますが、これは過去最大となっています。足下では、御存じのとおり、ロシア・ウクライナ情勢の緊迫化で原油価格も一バレル百ドルを目前としていますし、その他の資源価格も影響を受ける可能性が十分あると思います。こうなりますと、日本でも今後はさすがに消費者への価格転嫁は必至だと思われますし、それから、最近は、朝起きてから寝るまで、我々の日々の生活に欠かせなくなっているのが海外の商品とかサービスかと思いますが、これも円安も相まって急速に価格が上昇していまして、インフレが個人の消費行動に与える影響、これは可能性は十分あると思っています。こうした物価上昇から、九ページ目にございますように、上の方のグラフは、欧米の先進諸国について、今年織り込まれている金融の引締め、金利の上昇幅でございます。日本につきましては、この図でもお示しのとおり、この限りではございませんけれども、下段のとおり、左側は、まず中長期金利については、日米の金利の相関は高く、足下ですと、十年国債利回りが二〇一六年のマイナス金利導入後最高の〇・二三%を過日つけましたが、昨日の日銀の指し値オペで二ベーシスほど低下をしました。こうした日銀の施策で日本の市場金利は総じて安定しているというふうに言えますが、足下では、右側の下のグラフのとおり、日銀を除くベースで、投資家の中に占める海外の割合を示していますが、増加傾向にございますので、徐々にこうした海外の売買の動向も気にするべきになってきていると思います。また、米国の金融政策については、ここでは金利の話をしていますが、実際に不透明感が多いのはバランスシートの縮小でございます。FRBは金利を一年で二%程度引き上げたことはございますが、バランスシートの縮小は、二〇一九年に年間一割程度縮小したことはありますが、今回はそもそも資産の膨張が類を見ない状態になってございますので、市場としても大変読みにくくなっています。仮に、こうした不透明感から金利が大きく上昇し、株式市場等が動揺した場合についての日本の影響ですが、まず、国債の利払いにつきましては、財務省の試算等を見ましても大きな影響が直ちに出るわけではないと考えられますが、万一金利が一%上昇すれば、徐々に影響は拡大し、毎年数兆円程度の負担増となりますし、また、こうした財政の動向については、先ほどもお伝えしましたように、個人の関心が高まっているということは十分に意識しておくべきではないかと思います。そして、資産価格の膨張の巻き戻しについてですが、十ページには逆資産効果を表しています。実体経済に影響を与えるルートとして、資産価格が下落した場合、逆資産効果で消費に影響を与えるということが言われておりますし、アメリカではそれが特に顕著です。日本はそれほどではないですけれども、ただ、ここで考えなければいけないのは、一連の、この二年間のコロナの影響もございまして、個人、企業、昔に比べて投資を行っている方々の割合が非常に増えていますので、逆資産効果は過去よりも大きくなる可能性もあるかと思っています。さらに、中長期的に注意すべきところは、こうした短期的なものというよりはリスクテイクマインドの後退だと思います。個人が消費を減らせば当然企業の投資は減少しますし、さらに、金融機関やファンドが企業価値を将来の利益から算出していますけれども、金利が上昇し、収益の不確実性が高まれば、収益を現在価値に割り戻すときの割引率が上がってしまい、評価が下がる。これによって企業の調達にも影響が出る可能性があると思います。ここまで金融環境のリスクについて述べてきましたが、もちろん、一方で、新型コロナの収束に伴いまして、物、サービスの実需の巻き戻しも期待できると思いますし、これらを生かし、思い切った改革の機会にもなり得ると思います。そのような中で期待される施策を、金融以外も含めまして、やや広い観点から最後にお話をしたいと思います。十一ページ目ですけれども、仮に金融市場が動揺すると、コロナの前例から、再び緊急避難的な補助金等を求める声が高まる可能性はあると思います。もちろん場合によっては一定程度は必要かと思いますが、それでは成長の後押しにはなりにくく、個人が抱く財政への不安が高まりつつある中では効果が希薄化する可能性もあると思います。成長を促すには、民間の挑戦する人々、そしてリスクマネーが自律的に拡大していけるように促すことが重要であると思います。具体的には、まず、下支えから成長育成へのシフトということです。民間の力が鍵となりますが、さきにも触れましたとおり、金融機関は、このコロナ危機の二年間で、差はありますけれども、全体としては財務余力を維持向上できていますし、現在も一部の金融機関では既に地元企業を積極的に支援しています。今後は、更にこの余力の活用を広めることが望まれると思います。金融機関は、実はコロナ前までは貸出競争激化の影響などで企業のデットガバナンスが弱まっていた印象もございますけれども、今後の企業の再建過程では再び本領を発揮し、一層の成長を助けられるような、企業のエクイティー性の資金の相談、それから、この二年間停滞してきた海外進出の後押し、あるいは、状況によりましては、ニーズがより大きい業態への転換を促すなど、国では人的資源やノウハウの問題でやり切れないような取組を民間金融機関に期待したいと思いますし、また、それを促すような仕組みも必要だと思います。また、もう一つ、民間部門では個人の方々の力に期待したいと思います。今、地方に住む方々の多くは預金を地元の金融機関に預けているわけですが、その資金が地元向けの貸出しで使われる割合は五から六割程度です。また、地方には、御存じのとおり、上場企業が少ないので、個人が地元企業をエクイティー性の資金で助けて育てていくといっても、手だては限られているのが現状です。そういう地元マネーの地産地消を促せるような仕組みが求められているのではと思います。そのためには、例えば、地元企業の非財務情報として、根強いファンがいる、そういうブランドであるとか、ほかにはない技術が隠れているだとか、そういった情報を見える化して、定量化して、個人の方々であっても評価できるような仕組みというものができればというふうに思います。もう一つ、人のリスキリングによる変革です。働き方改革やコロナ禍の生活変容で、個人は、時間は工面しやすくなっているわけなんですが、学び直しについては質も量もまだまだこれからだと思っています。この背景なんですけれども、企業も個人もリスキリングの長期的なリターンを明確にできていないことが大きいのではと思います。一部の個人の方々は、先ほども少し触れましたが、手元資金を市場などへの投資に回しているわけですが、自分への投資の方が中長期的に見てリターンが高いということが分かれば、当然、自分への投資に熱心に取り組むのではと思っています。また、別の観点ですが、今は被雇用者が学び直しの支援の中心にどうしてもなっていますが、増加するフリーランスなどで働く方々にも、自らをアップグレードされる機会を広く与えるべきではと思います。また、リスキリングの中身ですが、ルーティンワークは、御存じのとおり、これから機械化できるということを念頭に、例えば、雇用されながらでも、いつでも自力で起業できるくらいの考える力、創造力、リーダーシップを育成できるようになれば、高齢になっても生き生きと働けるだけのものが身につくのではと思います。もう一つ、支援に対する考え方、手法の変革です。デジタル化は、政府のイニシアティブもあり、進展していると理解をしていますが、やはり、遠い地域、業界については、利便性がぴんときていないというのも現実だと思います。日本全体のデジタル化底上げには、ヒューマンタッチで、デジタル導入の手間暇を圧縮して、利便性を丁寧に周知していくこと。例えば、マイナンバーの普及で、一部の都市で、市の職員の方々が赴いて書類の作成を一括で担うという形で効果を上げたという例などは好事例だと思います。もう一つ、デジタルの先端技術やグリーンイノベーションに対しての理解、そして尊重する企業風土をより一層重視していきたいと思います。日本の東証株価指数の企業の創業から数えた年数、いわば企業の年齢ですが、中央値を取りますと六十年を超えていまして、アメリカのS&P五〇〇の三十年程度とはかなり異なります。それだけ企業が安定的に長寿であるということは日本の強みでありますが、そうした長寿安定社会を前提としつつイノベーションを育成するということでは、大企業がイニシアティブを取っていくという日本独自のモデルも必要ではと思います。一方で、伝統的な大企業では、まだやはり現状維持バイアスが強くて、とっぴなデジタル技術ですとかグリーンイノベーションに対して腹落ちしていないという印象もあります。経営陣の一層の意識改革を促すような施策を求めたいと思います。最後になりますが、今年、申し上げましたように、金融市場は大きな過渡期を迎えていると思います。ただ、非連続的な金融環境だからこそ、人も企業も非連続的に変われる機会になるのではとも思います。短期的な損失穴埋め的な支援からではなくて、中長期的な成長を促すような財政や仕組みづくりを期待したいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○根本委員長 ありがとうございました。次に、原公述人にお願いいたします。

○原公述人 政策工房代表取締役、原でございます。政策シンクタンクの会社を運営しているほか、政府の国家戦略特区ワーキンググループの座長代理などを務めております。今日は、国会における誹謗中傷の問題に絞ってお話ししたいと思います。野党合同ヒアリングについて問題点を指摘いたしますが、特定の議員個人、特定の政党の悪口を言うつもりはございません。国会全体で対応いただきたいこと、政府に対応いただきたいことなどをお話ししたいと思います。まず、私自身、国会での誹謗中傷を受けた当事者であります。その経過についてお話しいたします。二〇一九年六月十一日、毎日新聞が、一面トップで、私が、政府で会議の委員を務めています国家戦略特区に関して、不正を行ったという記事を掲載しました。記事では、私の顔写真が掲載されて、「特区提案者から指導料」「二百万円、会食も」という見出しで、要するに、私が不正な金銭を受領した、会食接待を受けたという内容です。こうした事実は全くありません。即日、事実無根であるという旨の反論文を公開しました。私が事実を直ちに説明しましたので、毎日新聞以外の他紙は一切、後追い記事を出していません。ところが、その中で、六月十三日、私の疑惑を追及する野党合同ヒアリングが設けられました。国家戦略特区利権隠ぺい疑惑野党合同ヒアリングという名称です。六月の十三日が第一回会合で、その後、十月までの間に十回以上開催されています。毎回、内閣府の職員らが呼び出されて、厳しい追及がなされていました。この会議は公開で行われました。今も、私が不正をしたと決めつけられて追及をされている様子が動画で公開され続けています。しかし、結果として、私が不正を行ったという事実は存在しないので、当たり前なんですが、結局、そんな不正の事実は全く出てきませんでした。そうした中で、二〇一九年の七月、篠原孝議員ですが、この野党合同ヒアリングに参加されていた篠原孝衆議院議員がブログを掲載され、その中で、八田達夫教授、国家戦略特区のワーキンググループの座長の八田達夫教授と私、原英史委員の利権コンビによるいかがわしい政策づくりが行われている、原は、悪辣なことばかりし、自分の懐を肥やしているといった激しい誹謗中傷をされたということです。それから、二〇一九年の十月ですが、これも野党合同ヒアリングの主力メンバーでいらっしゃった森ゆうこ参議院議員が、参議院予算委員会でこの疑惑を取り上げて、原さんが国家公務員だったら、あっせん利得収賄で刑罰を受けるんですよと言われました。これは、私が金銭を受け取った、犯罪相当の行為をしたという明らかな誹謗中傷なわけです。この後、私は、毎日新聞、篠原議員、森議員を名誉毀損で提訴いたしました。このうち、篠原議員との訴訟の判決が、先月、一月に確定しています。一審の東京地裁の判決は、昨年三月でしたが、私の主張を認めて、篠原議員に百六十五万円の賠償を命ずる内容でした。二審、東京高裁の判決が、先月、一月ですが、賠償額が更に上積みになって、二百二十万円の賠償が命じられました。上告はなされず、この判決が確定しています。訴訟の中で篠原議員は、五十年間、毎日新聞を取ってきた、全国紙であって、信用するのは当然だと主張されていましたが、こうした抗弁は認められませんでした。判決では、新聞記事などについて、特段その内容を吟味することもなく、全面的に信頼して、被告に相当軽率な面があることは否めないなどとされ、名誉毀損が成立するという判断になったわけです。この判決によって、野党合同ヒアリングで議員の方々がなさっていた疑惑追及は不当だったということが、これは司法の場で決着しています。つまり、そんな不正があった事実は認められない、また、新聞記事にそう書いてあったからと言っても許容されないということです。なお、ほかの二つの訴訟は係争中ですが、これらがどうなっても、野党合同ヒアリングにおける疑惑追及が不当だったという結論は変わりません。毎日新聞との訴訟では、毎日新聞は、記事には私が金銭を受け取ったとは書いていないなどの主張をしています。私は、そんなわけがないとして争っていますが、仮に毎日新聞の主張が通ったとしても、記事にも書いていない疑惑追及をしていた方々の責任がより重くなるだけです。森ゆうこ議員との訴訟、これは争点が異なります。なぜかというと、国会議員には免責特権があります。国会内での国会議員の発言は、原則、訴訟で争うことができないのです。ただ、森議員の場合には、国会での御発言以外にも、私の自宅住所の記載された文書をネットで拡散するなど、国会の外での不法行為がありました。これを訴訟の対象としています。したがって、これらの訴訟は係争中なんですが、どうなろうと、野党合同ヒアリングでの一連の疑惑追及が不当だったということは、司法判断では確定しているということです。こうした経過を踏まえて、お願いしたい事項、三つございます。第一に、事実に基づく国会質疑をお願いしたいということです。新聞や週刊誌報道をうのみにした誹謗中傷、これは一般社会では不法行為です。判決の言葉をかりれば、自ら事実関係を十分吟味せず、新聞報道をうのみにするような行為は、相当軽率との批判を免れません。もちろん、人間なので、間違ってしまうことはあると思います。誤った誹謗中傷を行ったときは、国民の代表にふさわしい責任ある御対応をお願いしたいと思っております。私の事案の場合、篠原議員が個人的に行った話ではありません。政党が野党合同ヒアリングを結成して行っていた組織的な誹謗中傷です。篠原議員と森議員以外にも、誹謗中傷していた国会議員が何人もいらっしゃいます。これは、今も公開されている動画のアーカイブを見ればすぐ分かることです。間違っていたことが司法の場でも明らかになったのですから、政党として責任を持って、動画アーカイブを消す、真実性の認められない疑惑追及だったことを正式に認める、こういった最低限の対応をお願いできないかと思っております。篠原議員の同僚議員の方々からは、篠原さんはとても知性的な方だ、本来、そんなことをする人ではないというお人柄を伺っております。私も、篠原議員のブログのほかの記事、幾つも拝見いたしました。ライフワークとして取り組まれている漁業政策の経過など、大変勉強になる内容でした。政策に真摯に取り組まれている政治家でいらっしゃるんだと思います。しかし、そんな篠原議員が何でこんな誹謗中傷をされたのかというと、これは、野党合同ヒアリングといういわば集団リンチの場に参加して、集団心理にのまれてしまったということなんだろうと思います。その意味で、野党合同ヒアリングという器を設けられた政党の責任は重いのでないかと思います。第二に、免責特権それから国会議事録の扱いについて、国会での議論をお願いできないかと思います。免責特権は、国会での自由な議論を妨げないため国会議員に与えられた特権です。これは必要な制度だと思います。しかし、事実に反する誹謗中傷を行うことまで免責特権による保護に値するんでしょうか。これは国会議員の免責特権の濫用ではないのでしょうか。一定の限界を設ける必要はないのでしょうか。免責特権の在り方について、憲法改正の可能性も含めて、国会で是非御協議いただけないかと思います。国会議事録の扱いについても協議をお願いできないかと思います。森議員の、先ほど申し上げた国会での発言、私が犯罪相当の行為をしたという発言は、国会議事録にそのまま掲載されています。これは私にとって大変不名誉なことです。もし同様の発言がネットメディアに掲載されていたら、私は直ちにそのメディアの運営者に削除を要請します。まともなネットメディアであれば、すぐに削除してくれます。これは実例があります。これは森議員ではなくて別の議員なんですが、お名前はもうあえて申し上げませんが、ある立憲民主党の議員の方、国家戦略特区の件で私が不正を行った疑惑のある人物だという記事をネットメディアに掲載されていました。私が、そのメディアに連絡をして、事実に反しています、ほかの議員のブログで判決も出ていますということをお伝えしたところ、迅速に削除をしていただけました。ところが、問題は、この議員の方はネットメディアに投稿したのと同じ内容を国会でも発言されていたことです。同様の文面が国会議事録にも掲載されています。国会議事録については、削除を要請しようにも、そんな窓口がないんです。名誉毀損をする内容がネットで公開されていても、何も手を出せない状態になっている。ネットメディアについては、よくデマだらけだといったことを言われがちです。しかし、こうした側面だけ見れば、ネットメディアよりもはるかにひどいのが国会議事録です。失礼な言い方に聞こえるかもしれませんが、この点に関する限り、国会議事録はデマを無責任に垂れ流している三流ゴシップメディア並みということだと思います。さらに、問題は、国会議事録はすぐに潰れてしまうメディアではないということです。私が犯罪相当の行為をしたといった国会発言が、恐らく百年後までネット上に残ると思います。今、私はこうやって事実ではないと発信していますから多くの人に御理解いただけますが、数十年たって、私の孫やひ孫たちがネット上で私の名前を見つけたときにどうなるのか。ひいじいさんはとんでもない不正をやっていた人物だったのかと、恥ずかしい思いをさせてしまうのではないかと思います。これはさすがに何とかしていただけないでしょうか。議事録からの削除は難しいのかもしれません。そうであれば、例えば、苦情申立てを受けて、この部分は事実ではないとか争いがあるといった注記を議事録に加えるといった仕組みを御検討いただけないものでしょうか。是非国会での御検討をお願いしたいと思います。三点目です。第三に、政府の対応について申し上げたいと思います。疑惑の追及に対して真摯に、かつ毅然とした対応をすべきだと思います。この種の疑惑追及に対し、情報を出さないといった対応がなされることがあります。情報を出すとそれを曲解して、あらぬ追及を更に受けかねないといったことを考えると、気持ちは分からないではないんですが、こうした対応をしていると無用な疑念を深めるだけです。森友問題での公文書の改ざん、こんな話はもう言うまでもなく論外です。一方で真摯に応えつつ、誤った追及には毅然と対処すべきだと思います。特に、役所の人たちの場合、不当な追及を受けたときであっても、ただ頭を下げて、言われっ放しになりがちです。これは健全な関係ではないと思います。不当な追及がなされがちになる元にもなると思います。ここは、大臣、副大臣、政務官が前面に出て毅然と対応いただくべきではないかと思います。篠原議員の訴訟の判決に関して、一月二十五日の衆議院の予算委員会ですが、岸田総理がこの判決についての見解を質問で求められて、お答えは、個別の判決にコメントしないという御答弁でした。役所で答弁を作るとまあこういう答弁になるのかなと思いましたが、率直に言ってこれはどうなのかなと思いました。私の事案に関しては、決して私個人だけの不正という話ではなくて、国家戦略特区の運営という、政府の行政運営について疑惑がかけられていたわけです。当時、北村大臣、特区担当の北村大臣が国会で何度も追及されていらっしゃいました。内閣府の職員、連日のように野党合同ヒアリングに呼び出されて、どなられて、私の会議謝金を支払った記録とか、膨大な資料提出を求められて、本来業務が止まるようなこともありました。司法の場で疑惑が晴らされて、不正はなかったと明らかになったんですから、本来は、政府として、その旨の公式見解を出して、疑惑追及を行ってこられた政党に訂正を求められてもよいのではないでしょうか。そうした対応をせずにいつも言われっ放しになっている、これが根拠のあやふやな疑惑追及がなされがちになる要因ではないかと思います。国家戦略特区はいまだに腫れ物扱いで、養父市の農業特区など、すばらしい動きが進んできているんですが、運営が停滞して、なかなか前に進みません。政府には、国家戦略特区を再起動するためにも、もう一段踏み込んだ対応をお願いできないかと思っております。それから最後に、関連して、ドラマの「新聞記者」についてのお話を少しだけしたいと思います。このドラマは、国会で長らく疑惑追及がなされた森友問題がモデルになっています。学園の名前などはもちろん変えられていますが、見ればすぐに森友問題の話だと分かります。ドラマの冒頭では、官邸の職員が財務省の理財局長に総理の意向だといって土地代金の十二億円の値引きを求める場面があります。国会で、こうした官邸の関与があったに違いないといって長らく疑惑追及がなされてきたことです。しかし、これは、明らかにされた赤木ファイルで否定されたのではなかったのでしょうか。赤木ファイルでは、本省から相手方である森友学園を厚遇したと受け取られる部分を削除するよう指示された、しかし、現場で厚遇した事実はないと記載されていたと認識しています。これに対して、ドラマでは、総理の意向による値引き要請があったという前提でこのストーリーが組み立てられています。これが真実かのごとく世界に配信される。日本ではこういった、途上国並みの、縁故主義の行政がなされているかのような認識を広げてしまう。これが真実なら仕方ないわけですが、前提となっていることが事実に反すると思われるわけです。これはまずいのではないでしょうか。政府はネットフリックスに抗議すべきではないか。この部分は事実とは異なるといったことを記載するなど、何らかの対処を求めるべきではないかと思います。ネットフリックスは恐らく、これはフィクションですと言われるんだろうと思います。しかし、過去に、モデル小説に関して、モデルとされた個人がプライバシー侵害や名誉毀損に当たるといって争われた事例が幾つかありました。三島由紀夫さんの「宴のあと」事件とか、「石に泳ぐ魚」事件といったものがありましたが、これらは訴訟で争われて、判決においては、小説の形を取っていても、真実らしく受け取られる内容であれば不法行為が成立するとされています。これになぞらえて考えれば、単にフィクションですとテロップを出しておけばよいということではないはずです。この件は訴訟で争う話ではないでしょうが、日本政府の信用が毀損されているわけですから、日本政府がネットフリックスに抗議をして、対処を求めるべきではないかと思います。こうしたことを放置していると、根拠のあやふやな疑惑追及、不当な誹謗中傷が起きる要因になってしまうのではないかと思います。以上です。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○根本委員長 ありがとうございました。次に、川口公述人にお願いいたします。

○川口公述人 東京大学の川口と申します。本日は、このような場で意見を述べさせていただく機会を与えていただき、ありがとうございます。資料の二ページに私の略歴が書いてありますけれども、東京大学経済学研究科に設置されました政策評価研究教育センターのセンター長を務めておりまして、この五年ほど、エビデンスに基づく政策決定、いわゆるEBPMの実践に関わってまいりました。そのような立場から、予算編成過程におけるEBPMの必要性についてお話をさせていただければと存じます。EBPMの実践例として、コロナ禍での政策対応を例に取り、EBPMにおけるエビデンスが具体的にどのようなものであり、EBPMを実践する上でどのようなことが課題になっているか、お話しさせていただければと思います。資料の三ページを御覧ください。二〇二〇年の二月頃から新型コロナウイルス感染症が拡大する中、政府や自治体は次々に対応するための政策を行ってきました。第一義には公衆衛生上の政策対応だったわけですけれども、行動自粛に伴う経済的なダメージを和らげるための経済政策も数多く行われてきました。こちらに挙げたのはそのうちの数例ですが、最初の例は、雇用調整助成金、持続化給付金といった、ダメージを受けた事業者に対する補助金の給付であります。また、予算的により大きいのは、政府による利子補給や債務保証を通じた特別貸付けの実施です。この中では、実質無利子無担保のいわゆるゼロゼロ融資も行われてきました。今日は、この政策の評価について御紹介させていただきます。次の例は、公衆衛生上の政策であるとともに経済政策でもある、自治体が実施する飲食店における感染予防対策の認証制度についての評価でございます。今日は、山梨県が実施した認証制度の効果を評価した例を御紹介させていただきたいと思います。このほかに、より重要な経済政策として、二〇二〇年四月より行われた、一人当たり十万円を配る定額給付金政策というものがあるわけですけれども、これについては、早稲田大学の研究者のグループが、銀行口座の出入金状況や家計簿アプリであるマネーフォワード社のデータを用いて、十万円がどのように使われたのか、どのように貯蓄に回ったのか、大変興味深い研究を行っていますが、時間の関係で割愛させていただきます。参考文献を下の方につけておりますので、御関心がある向きにおかれましては御参照いただければと思います。さて、既に定着した感のあるEBPMという言葉ですが、内閣府によると、EBPMとは、政策の企画をその場限りのエピソードに頼るものではなく、政策目的を明確化した上で合理的根拠(エビデンス)に基づくものとすることとされています。このエビデンスを提示するという作業に経済学者が関わることが多いということです。エビデンスとしては、二種類、大きく分けてございまして、一つは、その政策が想定している人々に的確に届いているかという、ターゲティングについて評価するものであります。もう一つは、政策が所期の目標を達成しているかを調べるプログラム評価ということになります。資料の四ページを御覧ください。最初の例は、企業支援策の評価です。コロナ禍の中で企業支援が大きく拡大していて、それはあたかも当たり前の対策であるかのように行われていますが、実を言うと、経済学的に考えると、本来は、企業を支援するのではなくて、ダメージを受けた個人や世帯を助けるというのが、政府が国民に対して保険を提供する、こういう観点からは望ましいということになります。その中で、企業を支援するという政策を正当化しようとすると、企業が、取引ネットワークですとか労働者のスキルですとか、こういった無形資産を持っていて、一度倒産してしまうとその無形資産が不可逆的に散逸してしまう、これを防ぐために企業の存続を一時的に助ける、こういった理屈が必要になってきます。もしも企業を労働や資本といった有形資産の集合体だというふうに考えてしまえば、企業が一旦倒産しても、その企業に仮に存在意義があるとすればまた復活するということがあり得ますし、仮に、もとより業績が余り振るわないような企業であれば、倒産することによって、そこに存在していた労働や資本がほかの企業に移るという形によって経済の新陳代謝が起こるというふうに考えられます。もちろん、企業が潰れて次の企業に行くまでに労働者は失業を余儀なくされるわけで、資産を十分に持たない人々は塗炭の苦しみを味わうことになります。ただ、この痛みを和らげるためには失業保険を充実させた方がよくて、必ずしも企業を守るという話にはなりません。このように、経済理論が考える望ましい経済政策は複雑なのですが、政策評価という観点からは、比較的単純に整理することができます。一つは、企業支援策が適切な対象に当たっているかというターゲティングの視点になります。コロナ前には健全であったものの、一時的に売上げ減となっていて存続が難しくなっている企業を助けるというのが望ましいターゲティングだと考えられますけれども、もとより不健全な経営を行っていた企業がどさくさに紛れて支援策を受け、生き延びるということがあるとすれば、それは望ましくないということになります。次に、プログラム評価の視点では、企業支援策を受けた企業が、支援策が想定するように存続し、かつ雇用を維持しているかどうかを調べることが必要になります。資料の五ページを御覧ください。まず、ターゲティング評価の例を紹介します。同僚の星岳雄教授とコロナ対策について話をしているうちに、どのような企業が支援を受けているのか、違った仮説を持っていることに気づきました。星さんは、よくない企業の方が支援を受けているというふうに思っておられて、私は、よい企業の方が情報のアンテナ感度が高くて、事務処理能力も高くて、支援策を受けているのではないか、こういう仮説を持っておりました。もう一人、共同研究者に植田健一教授がいるんですけれども、彼の仮説も、どちらかというと星さんの仮説に近かったように思います。そこで、実際にデータでどういう企業が支援策を受けているかを調べる必要があるということになったわけですけれども、残念ながら、二〇二〇年秋の時点で、どのような企業が支援策を受けているかを示すデータはございませんでした。そこで、我々のセンターがふだんから共同研究をしている東京商工リサーチ、略してTSRというふうに言いますけれども、TSRと共同してアンケート調査を行うことにしました。このアンケートへの約五千社からの回答を整理して、コロナが起こる前の各企業のいわゆる評点と呼ばれるものと支援策受取の関係を分析いたしました。ここで、評点とは、TSRがつけた各企業への評価で、民間企業が取引先に与信をするかどうかを決める際に広く使われている指標になります。この評点が五十点を下回る企業を、TSRは一応警戒すべきだというふうに言っています。資料の六ページを御覧ください。ここに出ているグラフは、横軸に二〇一九年十二月時点の評点を取り、縦軸に特別貸付けへの申込みや承認の有無を取ったものになります。上のグラフが申込みの確率で、下のグラフが承認の確率を示すものになっております。特別貸付けが行われる経路というのは幾つかの金融機関を通してということになるんですけれども、ここでは、日本政策金融公庫、商工中金、民間金融機関をそれぞれ考えております。これは、御覧いただくと、どのグラフにおいても関係は右下がりになっています。左側にある企業というのは、評点が低い企業なんですね。コロナ前の評点です。低い企業の方が、特別貸付けに申し込んでいる、かつ、それが認められている、こういう傾向が認められます。右下がりですので、評点が高い企業の方がこのような融資を受けていないというようなことが明らかになっております。このことは、元々経営が健全でなかった企業ほど支援策を受ける可能性が高いということを示唆しております。また、貸出額についてのデータもございますので、このアンケートが聞いた二〇二〇年九月までの貸付総額の何割がいわゆる要警戒と呼ばれる企業に向かったのかというところを調べますと、約二割の貸出しは、そのような、TSRが要警戒だと言っているような企業に貸し付けられているということが分かりました。資料の七ページを御覧ください。次に、企業支援策、特に、特別貸出しを受けた企業が雇用を維持しているかどうかを調べようとしました。データを分析すると、特別貸出しを受けた企業ほど雇用を削減していることが分かりました。ただし、これは、足下の売上げが落ち込んだ企業が雇用を減らす一方で特別融資を受けていることの結果かもしれません。つまり、これは単なる相関関係であって、特別貸付けを受けると雇用が減る、そういう因果関係を示すものとは言えません。実証経済学の手法を用いるとこのような状況でも因果関係を推定することができるのですが、残念ながら、五千社のデータでは正確な結果を導くことができませんでした。この問題を解決するためには、より大きなデータセットが必要で、例えば特別貸付けの貸付先の全リストが必要です。このようなデータがあれば、どのような産業、企業規模、地域で政策の効果が大きいのかを知ることもできそうです。資料の八ページを御覧ください。これまでの結果から、金融支援策が市場をゆがめるという懸念について、これは多く語られてきたことだと思いますけれども、経営状態がもとより悪い企業に特別貸付けが行われる傾向があるということを示すことによって、定量的な証拠を得ることができたというふうに考えております。これは、最終的に国が債務保証をすることで金融機関の貸出し規律が緩んでしまい、そのことの当然の帰結としてこういったことが起こってしまった可能性があるということだと思います。この資金配分のゆがみは、コロナ後も長期にわたって日本経済の停滞をもたらすことにつながりかねないことであり、十分に警戒が必要だというふうに考えております。一方で、特別貸付けや雇用調整助成金といった企業の支援策が、現在の雇用を維持することに役立った可能性も否定できません。この点については、今後、よりよいデータを使って実証分析を深めていく必要があります。貸出先のリストというのは、とてもセンシティブな情報であることは間違いありませんが、今後の政策の望ましい在り方を見定めるためには必要な情報です。このようなデータを、個別企業の秘密を守りつつ統計分析に使えるように、環境を整備することが必要だと思います。資料の九ページを御覧ください。もう一つのエビデンスを紹介させてください。山梨県が行った飲食店の感染予防認証制度、いわゆるグリーンゾーン認証制度と呼ばれる制度の評価についてです。現在、我が国では、コロナ対策をめぐって、新規感染の抑制を優先すべきか、経済活動の維持を優先すべきかの議論が交わされています。この飲食店の感染予防認証制度は、飲食店が換気などの感染予防対策を取っているかどうかを実地調査して認証することによって、感染拡大を抑えつつ経済活動も維持しようとする、二兎を追うことを目的とした意欲的な政策です。この政策の効果は山梨県の政策担当者もよく分かっていなかったわけですけれども、本学の公共政策大学院で正木祐輔准教授と共同担当している授業において、山梨県と協力してプログラム評価に取り組みました。グリーンゾーン認証に関するデータは山梨県様から御提供いただき、新規感染者数はNHKのウェブサイトからダウンロード、飲食店の売上げに関するデータはポスタス社のデータを御提供いただきました。その他、官民のデータを統合して分析を行っています。なお、データ収集やデータ分析を担当したのは修士課程の学生たちです。資料の十ページを御覧ください。左の図は、新規感染者数のグラフで、赤い線がグリーンゾーン認証制度がなかった場合の新規感染者数です。これは仮想の値ということになります。緑の線がグリーンゾーン認証制度があった場合の新規感染者数です。これは実際の値ということになります。赤の線と緑の線の間の薄く色がついている部分が、グリーンゾーン認証制度のプログラム効果ということになります。計算してみると、グリーンゾーン認証制度の導入は新規感染者数を四五・三%減少させたことが明らかになりました。右の図は、売上げの推移を示したものです。赤の線はグリーンゾーン認証制度がなかった場合の仮想的な売上げ、緑の線はグリーンゾーン認証制度があるときの売上げとなります。これを見ると、グリーンゾーン認証制度は飲食店の売上げを増加させたことが分かります。計算してみると、売上げ増加の効果は一二・八%となることが分かりました。実は、このような大きな効果をこの政策が持っていたということに、政策担当者自身も驚いておられるようでした。資料の十一ページを御覧ください。この分析結果は、感染防止と経済活動の両立を実現する政策があることを示しています。山梨県の政策が他の都道府県の類似政策に比べてユニークだったのは、行政機関が立入調査をした上で認証をするという形で、行政のコミットメントが深かった点が挙げられます。その分、認証制度の信頼性が高かったと言うことができると思います。手前みそとなってしまいますけれども、この例は、データと適切な指導があれば大学院生でも役に立つプログラム評価ができることを示しています。なお、この授業では、内閣府が行ったアンケート調査で個人レベルの回答が公開されているデータを御提供いただきまして、リモートワークに関する分析を行い、山梨県の方に結果を御報告いたしました。回答者個人や回答企業の秘密を守るのは重要ですが、ある程度の地理的な単位で集計したり、個人が特定できないような匿名化を施したデータを公開することで、統計分析のためには有用なデータを提供することができます。このように、データをオープンな形で公開することは、エビデンスづくりに多様な人々が参加できる仕組みをつくることであり、自由闊達な政策論議のためには欠かすことができません。資料の十二ページを御覧ください。本日は、皆様の貴重な時間をいただき、EBPMのエビデンス例二つを紹介させていただきました。このように、過去の経験を振り返り、次の予算編成に生かしていくということは、厳しい財政状況の中、限られた予算を適切に配分するためには欠かすことができません。また、国が行う政策には、様々な規制など、財政支出を伴わないものもありますが、EBPMはそのような政策立案にも有用です。EBPMを進めていくためには周到な準備が必要で、エビデンスがない政策は行わないというのはばかげておりますけれども、これから行う政策をどう評価するか、こういったことに関してはあらかじめ考えておく必要があります。エビデンスを得るためにはスキルのある人と解像度の高いデータが必要であり、それらを手当てするために、あらかじめ予算措置をすることが必要だと思います。例えば、事業費全体の〇・一%から〇・五%程度をあらかじめ評価のためのコストとして計上しておくなどの工夫があり得るかと思います。同時に、政府が収集するデータを、できる限りオープンデータとして公開することも有用です。ワクチン接種状況を記録したVRSシステムは、そのデータを日時、都道府県別に集計して、ダウンロードできるように公開しています。これを成功事例として、他の行政データにも取組を広げていくことが求められていると考えます。最後に、資料の十三ページを御覧ください。現在は経済産業研究所長の森川氏が五年前に書かれた文章です。ここでは、国会における質疑内容がEBPMの普及に対して強い影響を与えるということが述べられています。私も同じ思いでございますので、是非御検討いただければというふうに思います。長い時間にわたり御清聴いただきまして、誠にありがとうございました。(拍手)

○根本委員長 ありがとうございました。次に、小黒公述人にお願いいたします。

○小黒公述人 法政大学教授をしております小黒と申します。本日は、このような貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。お手元の方に資料をお配りしてございますので、そちらの資料を使いながら説明させていただきます。なお、本日は、内閣府の一次速報が今日ございましたけれども、実質GDPが十月から十二月で年率五・四%という形で、二期ぶりにプラスになったということで、直近の七月から九月までのGDPですけれども、ピーク時が大体五百六十兆円だったものが五百三十八兆円という形で落ち込んでいる中で少し心配してございましたが、昨今のオミクロンの感染拡大もございますけれども、経済は何とか持ちこたえているのかなというふうに思っております。お手元の方の二ページ目、少し見ていただきますと、こちらの方に私の本日の主な意見が書いてございます。ここで、釈迦に説法でございますけれども、今、日本の財政、非常に厳しい状況の中で、しかも、感染拡大がまだ収まらないという中にございます。そういった中で、財政再建を進めながら、同時にコロナ問題にも対応していかなければいけないというような状況になっているということでございます。そこで、やはり、現政権もでございますけれども、まずコロナ問題について早急に解決するということが重要ではないか。そういった中で、財政的にはなかなか厳しい状況でございますが、思い切った財政政策も含めて、機動的な財政出動を行うということについて、これは致し方ないのかなというふうに思ってございます。 他方で、今の財政状況を考えますと、これは昨今ずっと問題になってございますが、やはり、平時と非常時の財政を切り分けるという意味で、東京財団で我々が提言してございますように、東日本大震災の復興のときに特別会計をつくってその債務を処理してございますが、新型コロナ対策特別会計といったものを設置して、きちっとその債務を償還していくというようなことについても御検討いただけないかなというふうに思ってございます。それから、あともう少し中長期的な問題でございますけれども、人口減少それから少子高齢化の問題、それから経済成長率が低迷しているという問題、それから貧困化が進んでいるというこの三つの問題について、きちっと対応した予算を作っていくということも非常に重要な問題ではないかというふうに思っております。そういった意味で、二〇二二年度の今回の予算でございますけれども、完璧な予算というものは存在しませんので。ただ、実際は、限られた時間の中で予算編成をしなければいけないということもございます。ですので、この本予算に対して反対するものではございませんけれども、先ほど申し上げました新型コロナウイルスの対策の特別会計の創設みたいなものも含めて、あるいは、これからもう少しお話しさせていただきますけれども、やはり、社会保障費や国債費が膨張する中で財政が非常に硬直化してございますので、そういった中で、少子化対策であるとか成長促進のための予算の方に一部予算を組み替えていくというようなことも少し御審議いただけないかなというふうに思ってございます。ページを少しおめくりいただきまして、釈迦に説法でございますが、少し財政の現状についてお話しさせていただきます。四ページ目を御覧ください。これは政府が出している資料でございますけれども、令和四年度の一般会計の予算。ここで、政府は、二〇二五年度までにプライマリーバランスを黒字化させるという目標を掲げてございますが、その一般会計の予算から計算しますと、右側に赤いところがございますけれども、公債金が大体三十七兆円、それから国債費が二十四兆円でございますので、差引きしますと十三兆円がプライマリー赤字という形になってございます。ただ、ページを少しおめくりいただきますと、こちらの方に少し赤線で枠をくくってございますが、もしこのコロナ問題を脱却することができますれば、新型コロナウイルス対策予備費五兆円分は自然と消えていくということになりますので、実際は八兆円というふうに見ることもできるのではないかなというふうに思っています。そうしますと、かなり厳しい状況でございますけれども、財政の方、この当初予算ベースではかなり財政規律が働いたような形で今編成されているのではないかというふうに思ってございます。次のスライドになりますけれども、ただ、そうはいっても、今回当初予算を出してございますけれども、補正予算が組まれたりする中で、財政がまた膨らむということに多分なるということは当然あり得る。ただ、足下、この赤い線で示してございますが、法人税を中心として税収が増えてきているという中で、二〇二五年度のプライマリーバランスの赤字の方については何とか維持できるような状況に今進んでいるのではないかというふうに思ってございます。次のページになりますけれども、じゃ、本当に二〇二五年度のプライマリーバランスの黒字化が達成できるのか、あるいは債務の膨張を今のコロナ禍の中でどうにか安定的な水準に維持できるのかということでございますけれども、七ページ目が直近の内閣府の中長期試算でございます。こちらの右側の上のところに名目GDP成長率がございますけれども、赤い線が成長実現ケースでございますけれども、大体三%ぐらいの成長率になっていくと。他方で、青い方でございますけれども、二〇三〇年度ぐらいに一%ぐらいの成長率になっていくというような形になってございます。政府の方ではプライマリーバランスの黒字化目標を重要視してございますが、やはり、債務水準のGDP比を安定化するという意味では、国、地方の財政収支のGDP比がどうなっていくのかということの方が重要だということでございます。これは後の方でドーマー命題との関係で御説明させていただきますけれども、赤い方の成長実現ケースですと、若干マイナスのGDP比の赤字が二〇三一年度に残ると。他方で、一%の成長率のベースラインケースですと、一・七%の赤字幅が残るというような形になってございます。上の、その名目GDPの成長率ですけれども、次のスライドを見ていただきますと、政府が出しております名目GDPの成長率、これは実現できればいいわけですけれども、実際は、先ほども日本経済の問題ということで、低成長が続いているということでございますが、こちらの方は、一九九八年度から二〇一八年度までの政府の経済見通しと実績を見比べたものになってございます。実績の平均は〇・一六%ですけれども、政府の見通しの方の平均は一・六%という形で、大体十倍ぐらい違っているというような形になってございます。そうすると、一%もないようなのがここ最近の成長率になってございまして、次のスライドになりますけれども、この九ページ目のスライドを見ていただきますと、黒い実線が名目GDPの成長率の推移の平均になってございます。他方で、赤い線それから青い線が成長実現ケースとベースラインケースになってございますけれども、黒い線の平均をこの期間で取りますと、〇・三七%という形でやはり一%もないという形になってございます。したがいまして、足下ではかなり財政規律が働いた形で御努力いただいてございますが、次のスライドになりますけれども、ドーマー命題を使って長期的に収束する債務残高を計算しますと、こちらのような形になってございます。基本的に、今後大体これぐらいの財政赤字のGDP比が国、地方であるというものをqとしまして、それから、成長率の平均を今後大体これぐらいがnという形にしますと、n分のqというのを計算すると、どの辺に債務残高GDP比が収束していくのかということが分かります。nがここでは例えば〇・五%でGDP比の赤字幅が例えば一・七%というふうに計算しますと三・四という値が出ますので、三四〇%ぐらいまで膨らんでいくというような状況に今なっているということではないかというふうに思っております。したがいまして、名目GDP成長率が例えば〇・五%で推移するのであれば、債務残高GDP比をまず二〇〇%ぐらいにとどめようとすると、財政赤字のGDP比を一%水準程度まで、もう少し努力して圧縮するということが必要ではないかというふうに思ってございます。次のスライドの十一ページ目でございますけれども、これは過去の実績が黒い線になっておりまして、ほかのカラーリングされている線が、内閣府が出しております、過去の中長期試算の予測になっております。見ていただければ分かりますけれども、比較的、予測では全部なだらかに下がっていくというような形になってございますが、実績はどんどん膨らんでいるというような状況になってございます。次に、社会保障改革について、少し私の私見も交えて御説明させていただきます。十三ページ目になりますけれども、先ほど東京大学の川口先生がミクロ的な分析をされてございましたが、やはり、今、コロナ禍で経済が二極化していて、困っている方々もそれなりにいらっしゃるということだろうと思います。そういった中で、やはり、デジタル政府、デジタル庁をつくられましたけれども、こういったデータを使って、きちっと本当に困っている方々に手を差し伸べていく。そういう意味では、十四ページ目のところにございますけれども、プッシュ型の行政サービスをきちっと構築していくということが重要ではないかというふうに思ってございます。時間が限られてございますので余り細かいことは申し上げませんけれども、二つ、重要なことがあるのではないかというふうに思っております。一つは、やはりリアルタイムの所得情報をきちっと把握できる体制をつくるということです。このためには、日本にはイギリスとオーストラリアと同じような形で源泉徴収制度がございますので、この仕組みを、企業の方を使いながら、ソフトウェアでデータをタイムリーに報告させる仕組みをつくる。その場合、国税庁は、現在、大体年収が五百万円以下については源泉徴収の方を国税庁というか税務当局の方に提出する義務を免除してございますけれども、この部分の見直しということも考えていくということも重要ではないかというふうに思っております。そういった形でタイムリーな所得情報が手に入れば、もしソフトウェアで手に入ることができれば、年ごとではなくて、例えば月ごととか半月ごととか、そういった形でタイムリーな情報を集めることによって、本当に困っている人に集中的に支援するというようなことも次第に可能になっていくのではないかなというふうに思ってございます。それから、ページをおめくりいただきまして、十五ページ目になりますけれども、これは私が従来から少し提言しているものでございまして、今の話も、比較的モディファイ、モディファイというか、余り難しい改革をしないでできるような話をしたんですけれども、社会保障についても、大胆な改革というのはいろいろ提言することができますが、なるべくグラデュアルで、実現可能な改革というものがないかと。今回御提言させていただくのは、一番問題になるのは、十六ページ目でございますけれども、医療の方に年金と同じようなマクロスライドを導入することができないかという御提案でございます。今、財政の方で一番大きな問題になっているのは、こちらは二〇一八年に政府が出しているベースラインケースでの社会保障給付の見通しでございますけれども、二〇一八年に百二十一兆円であった社会保障給付費が、二〇四〇年になりますと百九十兆円に膨らむ。他方で、年金を見ていただきますと、五十七兆円から七十兆円という形で年金も膨らんでいるんですけれども、GDP比で見ますと、大体一〇%から九・三%という形で、それほど大きく伸びていない。政府は今、基本的には、医療費と介護費が伸びていくということで、ここについて大きなターゲットにしているわけですけれども、医療費を見ていただきますと、二〇一八年で三十九兆円だったものが大体、二〇四〇年度になりますと七十兆円ぐらいになるということで、これは年金と同様に膨らんでいるわけですね。ですけれども、医療の方が問題だと言っている最大の理由は、GDP比で二〇一八年は七%だったものが、二〇四〇年になりますと大体九%弱ぐらいまで膨らむという形になってございます。このGDP比で二%ポイントぐらい膨らむところは、これは財政的に裏側に、税収であったり社会保険料が、経済成長率が増えれば当然増えるわけですけれども、それ以上にGDP比で見て医費費が増えるということで、改革のターゲットにしているわけでございます。ここをコントロールすることができれば、もう少し違った方法で解決できるのではないかというふうに思ってございます。次のスライドを見ていただきますと、今お話しした内容が書いてございます。大体二十年間で、二〇一八年度から二〇四〇年度で、年金は大体一〇%から九・三%という形でGDP比が伸びていくわけでございますけれども、医療は七%から九%ぐらいまでという形で伸びていくわけです。次のスライドがお話ししたい内容でございまして、十八ページ目になります。じゃ、医療費のGDP比というものを見た場合、どういうものなのかということでございますが、これは名目GDPで医療費を割ったものでございますけれども、医療費は、ちょっと大ざっぱに申し上げれば、釈迦に説法ですけれども、診療報酬という公定価格Pに使った量のQを掛けたものでございます。これが、要は、価格を二十年間で二%調整できれば、GDP比で見た医療費をコントロールすることができる。じゃ、診療報酬をマイナスにしろということではなくて、現状でも診療報酬は若干プラスで改定していますので、その伸びを少し、若干緩めにするだけで、GDP比で見た医療費を安定化できるのではないかというふうに考えてございます。そのイメージを示したものが、十九ページ目のスライドになります。診療報酬本体全部ではなくて、一番大きなのは七十五歳以上の後期高齢者医療制度、これが高齢者の伸びに従って伸びていきますので、この部分の診療報酬について、例えば今回、診療報酬本体で〇・五五%伸ばすとすれば、それを例えば〇・四%ぐらいの伸びに抑えるというような形で少し伸びを抑えていくというようなメカニズムを入れたらどうかということの御提案でございます。二十ページは、令和二年度のときの診療報酬改定の実際のイメージを書いてございますけれども、今申し上げましたように、この〇・五五%というのを例えば〇・四%に抑えることができれば安定化できる。今の話は、次のスライドの二十一ページとも関係するんですけれども、私がちょっと心配しているのは、これは財政的な帳尻合わせだけの問題ではなくて、医師の需給推計について厚労省が出してございますけれども、二〇三〇年ぐらいに需給均衡が崩れて供給過剰になるというような話が出てございます。そうすると、例えば、二〇四〇年ぐらいにGDPに連動する形で医療費を伸ばしていけば、むしろ医療費の方が安定化できる可能性もあるのではないかなというふうに考えてございます。少し資料を飛ばせていただきまして、二十三ページ目、次世代投資や少子化対策について少しお話しさせていただきます。先ほど少し御説明させていただいたとおり、予算は、社会保障と国債費の方で相当財政が硬直化してございますので、成長を促進するためにも、やはり次世代への投資あるいは少子化対策の方に力を入れていくということが重要ではないかというふうに思ってございます。二十四ページ目のところで、岸田さんが総裁選のときに、日本でオーストラリアのようなHECS、要は出世払いの奨学金みたいなものを導入できないかということをおっしゃられていましたけれども、私もそれは非常に賛成で、そういったようなものを日本でも是非検討していただけないかというふうに思ってございます。これは、今コロナ禍で学費が払えなくて困っている学生さんもいらっしゃいますけれども、そういった方々の救済にもなる。可能であれば、ポートフォリオの中になるべく多くの学生が入った方がいいですので、例えば全大学生に一回全部入っていただくというようなことも、ちょっと暴論かもしれませんけれども、検討いただければというふうに思ってございます。それから、二十五ページ目と二十六ページ目でございますけれども、これはかなり奇策というか、今の非常に限られた財政の中で少子化対策に力を入れようとしますと、やはり財源的な面、これは例えば国債発行でやるのか、あるいは税収を新しく取ってきて増税をするのかという議論になると思います。非常にそれは難しい。でも、他方で、この資料の方に書いてございますけれども、元々、国立社会保障・人口問題研究所が予測していた人口減少のスピード、これは、出生数が大体八十万人を割るのが二〇三〇年ちょっと先だという話だったわけですけれども、もう既に割りそうになっているということでございます。そうすると、異次元緩和というのがございましたけれども、異次元の少子化対策として、例えば出産手当というものを創設して、子供一人当たりだと五百万円ぐらい、思い切った支援をしていくということも考えてもいいのではないかなというふうに考えてございます。仮に、年間の出生数が二百万人になりますと、これだけで年間十兆円になります。これを例えば十年間続けると百兆円ですね。二十年間続けると二百兆円ということで、これを全部国債発行あるいは増税でするというのは相当難しい。そういった中で、一つ可能性があるのが、デジタル通貨というものを今、日本銀行も考えてございますけれども、十年間で償却されてしまうというような通貨を発行してこの手当を出していくということも考えてもいいのではないかなというふうに考えてございます。詳細は二十六ページの方に書いてございますけれども、十年間で償却するデジタル通貨を出しますと、例えば出生数が毎年二百万人、今は大体もう八十万人近くになっていますけれども、これが二百万人になったとしても、最大ピーク時で発行する通貨の量は大体五十兆円ぐらいということになります。あるいは、累進型の出産手当というものも考えられるのではないかなというふうに考えてございます。それから、最後に二点だけ、厳しいお話と朗報を少しお話しさせていただければと思います。二十七ページの、まず、注意すべきリスクとして挙げてございますけれども、二十八ページ目、これはもう議員の先生方、釈迦に説法でございますが、今、金利がアメリカを中心にして上がり始めている。インフレも出てきてございます。そういった中で、もし金利が正常化しますと、政府と日本銀行を一体で見た場合、日本銀行が持っている超過準備、これはスーパー短期の国債みたいなものですから、政府と日本銀行を一体で見ると、やはり財政的なコストが顕在化してくるということになると思います。そういったところで、この問題をちゃんと処理していくようなところも少し考えていただければというふうに思ってございます。それから、二十九ページ目、三十ページ目でございますけれども、我々は今ちょっと自信をなくしているんだと思いますが、こちらの方は、頑張れば実は一人当たりGDPで見ても先進国の中でもう一度最高水準を取り戻せる可能性があるというような試算になってございます。これは三十ページ目に、ちょっと見ていただきますと、試算の概要が書いてございますが、例えば、一九九〇年、日本の一年間の平均、労働者が大体どれぐらい働いていたかといいますと、二千三十一時間働いていたわけです。この当時、アメリカは大体千七百六十四時間ですし、イギリスは千六百十八時間です。その後何が起こったかということなんですけれども、次のページを見ていただきますと、一九八八年、これはちょっと大分前の話ですけれども、閣議決定で、一人当たりの年間労働時間を千八百時間程度とするという、これは日米構造協議の中で日本の経済力を、ちょっと余り踏み込んで言うのはあれですけれども、そぐために突きつけられたもので、その後、九二年に時短促進法が制定されて、九四年に労働基準法が改正されるという流れになってございます。これはちょっと私の仮の推計なんですけれども、三十二ページ目を見ていただきますと、仮に一九九〇年と同じ労働時間を日本の労働者一人当たりが働いたとすると、じゃ、日本の一人当たり実質GDPはどうなるのかということですが、三十二ページ目の赤い太い線が日本になってございます。ここではイギリスとかアメリカとかそういった国々がありますけれども、この中で一番高い水準になるということです。他方で、現状の日本は細い方の赤い線になってございまして、下から二番目という形になってございます。このときにはマクロのGDPがどれぐらい増えるのかということですけれども、私の仮定計算では、大体百六十兆円ぐらい増えるというような形になってございます。最後の話は、ワーク・ライフ・バランスの話とかと少しバッティングする話ですので、そうしろという話ではないんですけれども、自信を取り戻すという意味では、そういったような仮定計算の話もございますということでございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

○根本委員長 ありがとうございました。これより公述人に対する質疑を行います。質疑の申出がありますので、順次これを許します。藤井比早之君。
○藤井委員 おはようございます。自由民主党の藤井比早之です。本日は、大槻公述人、原公述人、川口公述人、小黒公述人、皆様、公聴会で貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。また、理事の皆様、委員の皆様、質問の機会をいただきまして、ありがとうございます。早速質問をさせていただきたいと思います。実は、ちょっと私、感慨深いところがありまして、大槻公述人とは、一年間で、ちょっと数えてみたんですけれども、十七回以上は御一緒させていただいているんです、会議で。原公述人とも十四回以上御一緒させていただいていて、実は、こうして向き合って、目を合わせて、同じ空間で議論させていただくのはこれが初めてなんです、ずっとオンラインだったから。原公述人とは、たしか一遍、名刺交換だけさせていただいたんですけれども、こうして向かい合って議論するのは初めてです。じゃ、それで成果がなかったのかというと、そんなことはなくて、あの会議で、まさしく書面や押印の見直しが進んで、また、具体的なところでいくと、忘れもしないんですけれども、固定資産税とか自動車税の収納の効率化、QRコードとかデジタル化とか、えらい突っ込んだ具体的な話もしました、物流の効率化も、また再生可能エネルギー。そう考えますと、やはりデジタル化というものの未来、私は期待をしております。その点で、大槻公述人と原公述人に、デジタル化がもたらす未来とその期待、そしてまた可能性と克服すべき課題について、お答えをお願い申し上げます。
○大槻公述人 御質問ありがとうございました。デジタル化の未来ということなんですけれども、確かに、今おっしゃっていただいたとおり、相当程度、省力化のステージというのはおかげさまでできたと思うんですけれども、やはりまだまだできていない部分というのはすごく多いと思っています。何かというと、やはり教育のところも、オンラインのところがまだ、対面の方がいいところもたくさんありますし、それをどうやって生かしながら効率化を図っていくか。あるいは、遠くにいても、例えばリモート、地方であっても、東京の方が卓越した教師の方がいるんだったらば、それをオンラインで受けられるような仕組みですとか、そういったところがもうちょっと柔軟化できるのではないかというのが一つあると思います。それを進めることによって、恐らく将来的には教育の質を上げることができると思います。今、オンライン授業については上限が様々な形で設けられているわけですが、そこで想定されていたオンラインというのは、あくまで、よくないとされていたのは、やはり一方方向で、そして同じ教材をずっと使って、それを流し続ける。そうではない形の、様々な形のオンラインということをより積極的に認めれば、効率化だけでなくて成長につながるというのが一点です。もう一つは、今実験的にやっているようなバーチャル会議ですね。今はZoomとか、皆さんも使っていらっしゃると思うんですが、そういったものから、今度は、アバターを使った、全くいないんだけれども、まるでいるように隣から声が聞こえるとか、ああいった形のものまでが高速で時差なくできるようになるという実験を我々も始めているんですけれども、これが発達すれば、もしかしたら、今あるオフィスの姿というのは、みんなで集まっていますけれども、十年後、二十年後にその写真を見た未来の方々は、こんなところに集まってわざわざ仕事をしていたのかというふうに見られるかもしれないので、そういったより一層の効率化というのを新しいデバイスを持ってやっていけるようになるということを期待したいと思います。
○原公述人 ありがとうございます。最初に、規制改革の会議で十数回以上オンラインで御一緒したことを触れていただきました。それを伺っていて思いましたのは、やはりこの国会の会議も是非早くオンラインでやっていただけるといいんじゃないかなと思いました。それから、デジタル化の未来についてということでございます。デジタルトランスフォーメーション、それからその先の、今、今度はグリーントランスフォーメーションがどんどんと進んでいきます。これは産業革命なんだと思います。産業革命であって、この新しい社会構造にいち早く乗った企業や国が、その先の、恐らく数十年とか百年の覇権を握っていくという、その今非常に重要な局面にあるということなんだと思います。この十年ほどで何が起きたかということを考えれば、例えば、産業の中で、世界でどんな産業が成長したのかというと、例えばライドシェアです。これは従来の産業の枠とは全然関係ない。十年前に、ライドシェア産業を振興しようなんて言っていた人は一人もいないはずです。そんな産業が今や巨大な産業に世界では成長した。一方で、日本ではどうなっているかというと、規制の壁があって、いまだに食事のデリバリーしかできないわけです。これをやらないと、従来の産業の枠にとらわれて産業振興をやりますというところだけやっているのでは、これはもう世界の成長に取り残される。この先の産業革命に乗り遅れて、今後数十年とか百年とか、日本は貧しい国に転落をしていくということになりかねないのではないかという心配をしております。ありがとうございます。
○藤井委員 ありがとうございます。日本の国のどこにいても会議ができると大槻公述人からお話がございましたけれども、特に教育ですね。先ほどお話しいただきました人材の育成、リカレント教育、もうまさにおっしゃるとおりで、私の子供の頃とかは、海外に行ったことがないという方が英語を教えていたというような状況でございます。どこにいてもひとしく平等に教育が受けられる、また人材育成の機会が得られる。まさにデジタル田園都市国家構想の実現ということなんだと思います。そこで、岸田内閣は、成長と分配を経済政策の大きな柱としております。今、先ほど原公述人から成長の鍵となるようなお言葉も出ましたけれども、成長のために、再び日本経済が復活するために何が必要だ、それをちょっと一言で、大槻公述人、原公述人、そして川口公述人にお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
○大槻公述人 ありがとうございます。一言ですよね。一言、詰まってしまいますけれども、突き詰めていくと、どんな方とお話ししていても、これをやった方がいい、あれを、いろいろありますけれども、最終的にはやはり教育に行き着くと思います。
○原公述人 一言で申し上げますと、構造改革、藤井副大臣にもお取り組みをいただいた規制改革などをしっかり進めていく必要があると思います。
○川口公述人 女性の活躍推進が大事だと思います。日本の女性は、男性と同じぐらいのスキルを持っているんですけれども、スキルを使っていない、こういう統計の結果がありますので、そこの部分を、十分に活躍していただけるような仕組みというのを整備していくことが必要だと思います。ありがとうございます。
○藤井委員 ありがとうございます。時間の都合もあって、一言でということで御回答いただきまして、ありがとうございます。やはり成長が必要なんだと思います、それで日本経済が復活することが。その上で、岸田内閣は成長と分配の好循環というのをうたっております。やはり、分配という点では、これは成長が欠かせない上で、私は、賃上げといいますか、若い方の所得というか給料を上げるということが何よりも大事なんだと思います。ただしかし、これは賃上げしようと思ったら、企業サイドの都合というのもあります。財務体質とか置かれた状況というのもありますし、今はコロナでございます。そういう状況も加味しながらも、しかしながら、やはり若い人の給料を上げるというのが大事だと思うんですけれども、こうした賃上げの必要性と、そしてまた、これを実現するための課題とはどういったものがあるとお考えか、大槻公述人と川口公述人と小黒公述人にお伺いしたいと思います。
○大槻公述人 ありがとうございます。まず、賃上げの必要性というところにつきましては、もうこれはマストですね。先ほどのお話でもさせていただきましたとおり、企業物価からの、CPIの方に移転することはもうほぼ間違いないということで考えると、当然、賃金の方が上がらない中ですと、生活のレベルが下がってしまうということになりますから、ここは、賃金の上昇というのはマストだと思います。一方で、これの課題というところなんですが、案外、若年の方々に聞くと、一斉の賃金上昇というのはどう思いますかと言うと、一斉はちょっとと言う方も意外といまして、モチベーションとして、自分が頑張ったから、それに応じて、ほかの方々と比べても自分がそれで評価をされているという評価軸として、生活のためというのに加えて自己実現としての賃金というのを考えているということで、それですと、やはり、分配の中でも、もう既に皆さんに取り組んでいただいているところだと思いますけれども、より頑張った人、成長を目指した人に対してのより深く広い分配ということが重要で、課題なんじゃないかなと思います。
○川口公述人 賃上げに関しましては、めり張りをつけることが重要だと思います。若くても優秀で能力がある人には賃金をしっかりと上げていく、その結果として実現する不平等というものに関しては社会保障等を通して是正していく、二段階に分けて考えることが必要かなと思っております。
○小黒公述人 ありがとうございます。賃上げにつきましては、まず、生産性に見合った賃金にするということ、それから、賃金を上げる場合に、構造改革にも資すると思いますので、それが企業に対してのプレッシャーになるということですね。もう一つ、中長期的にやはり一番重要なのは、人口を増やすことだと思います。先ほど申し上げましたとおり、もう少し抜本的なものとして、出生数を増やすような対策に力を入れていただければというふうに思います。
○藤井委員 ありがとうございます。いずれの公述人も、賃上げの必要性というのはお認めになっておられる、ただ、しかしながら、様々な企業の置かれた状況というのも考えないといけないということなんだと思います。そこで、ちょっと最後にお伺いしたいんですけれども、今、物価が諸外国はすごく上がってきています。日本もどうなるかというのは非常に懸念されるところ、これはまた、金利もどうなるかというところが懸念されるというところなんですけれども、ちょっと、今後の経済運営としての必要な、そうしたいわゆる物価上昇についての対応策をどう考えるのか、金融的にどう考えるのかというところについて、大槻公述人にお伺いしたいと思います。
○大槻公述人 ありがとうございます。非常に難しいところだと思います。これほどの急激な物価上昇ということを久しく経験していなかった中での金融政策ということになりますので、様々な観点から考えなければいけないということだと思います。今の前提としましては、恐らく、基本的には、この消費者物価指数の上昇は比較的一時期的であろうということだと思います。それであれば、どうしても、金融政策、これから引締めということになりますと、それに伴う、先ほど来申し上げたようないろいろな副作用もあるということになりますので、それは少し時期を見定めてから動くことが必要だと思います。その上で、日銀も、からめ手というか金利ではない形で、昨日来の施策も指し値オペ等をやっていますけれども、そういう形で、少し金利を鎮静化させながら、消費者物価の動向を少し見ながらやっていくということが必要なんじゃないかなと思っています。
○藤井委員 ありがとうございました。質問時間が終わりましたので、これで終わらせていただきますけれども、四人の公述人の皆様には、貴重な意見をいただきまして、ありがとうございました。どうもありがとうございました。

○根本委員長 次に、輿水恵一君。
○輿水委員 公明党の輿水恵一でございます。今日は、本当に貴重なお話を聞かせていただき、心より感謝を申し上げます。また、このように質問をさせていただくことに重ねて感謝を申し上げます。先ほど、大槻公述人の方から、本当に、企業物価指数が上がる中でなかなか景気が回復しない、また、様々なインフレ傾向のある中で賃金も上昇しない、こういった非常に厳しい状況に置かれている。あるいは、少子高齢化、人口減少、またGDPの伸び悩みと、そんな中で、これからどうそれを回復していくのか、大事な課題があると思います。そんな中で、大槻公述人の方から、最後、今後求められる施策と期待ということで、私も、まさに自分への投資というか学び直し、人のアップグレード、あるいは、自分で起業できるような力を持ちながら一人一人が創造力を持って、持てる可能性を国民がどう発揮してこれらを解決していくのかなということは本当に大事だなと思いました。そんな中で、先ほど川口公述人から、EBPMのお話をいただきました。私も、これから、人のアップグレードと、そのアップグレードのためには、デジタル化という新しい流れの中でどういう政策をそこに打ち出すのか。そういう面では、後ほど、デジタル化と人のアップグレードに向けてのターゲティングとかプログラミングについてどのように考えているのかなどということをまた聞かせていただきたいなと思っている。一方で、また、小黒公述人、GDPのアップとか医療費のという、そのGDPをアップする上で、やはり、かつて日本人がしっかり働いていたというか、あの時代というものをどういうふうに実現していくか。そういった中で、私も、本業と副業というか、自分の持っている仕事をやりつつ、デジタル化ということで、それと併せて、例えば、時間的、空間的な、そういった制約が大分軽減されるという中で、空いた時間をいかに新たな生産的な活動に持っていき、GDPを上げるか。こんな点についてどのように考えているかについて、後ほどお話を聞かせていただければと思います。また、原公述人からは、本当に、やはり物事を具体的に、発言する前にしっかり調査をして、そして、皆様が本当に持っている能力を、官僚の皆さんもどう引き出していただいて本来のあるべき仕事をしっかり進められるようにするか、大事なお話をいただきました。ありがとうございます。そういった中で、またいろいろお話を伺えればと思います。そういった流れの中で、まず、大槻公述人に伺いますけれども、人の可能性をしっかり伸ばしていく、これは、まさに人間が、特化型から、複数のことができるというか、そういう形のアップグレード、またそういう社会をつくっていく、またそういう文化をつくっていくということも必要なのかなと思いますけれども、この点についての見解をお聞かせ願えますでしょうか。
○大槻公述人 ありがとうございます。まさに私も同じことを考えておりまして、クリエーティビティー、創造性ということがないと、恐らくは今から、先ほども述べましたように、ルーティンはもうやれる機械がありますから、そうすると、我々に求められるクリエーティビティーがどういう形で生まれるか。これについてはいろいろな研究などもされていますけれども、やはり、御指摘いただいたように、ダイバーシティーで、自分がいろいろなことをやったりとか、あと、いろいろな違う人からの意見とか、気が合わない人と話すことによって生まれていく、そういう新しい形の教育というのが重要なのではないかなと思っています。ただ、もう一つ問題は、クリエーティビティーが生まれて何かいいアイデアを出したとしても、それが報われて世の中に出てくるかどうかというのが、もうワンステップあるかと思います。それが、先ほど申し上げましたように、ベンチャーがいかに世の中で認められ、マネタイズというか、事業化できるかということは、日本においては、恐らく、大企業がこれだけ安定的に多く存在していますので、そことのコオペレーション、協業ということが必要になるんじゃないかなと思っています。ありがとうございます。
〔委員長退席、葉梨委員長代理着席〕
○輿水委員 ありがとうございます。まさに、日本の企業のその六十年、でもアメリカは三十年ということで、そういう新陳代謝、あるいは企業の体質の改善も含めながら、一人一人のクリエーティビティーがどう生かせるか、そういった構造改革も必要なのかなということで、ありがとうございます。そして、続きまして川口先生に、先ほど川口先生も、まさに企業の持っている可能性とか健全性、そういったものをどう生かせるか。そこには、私は、人も、ダイバーシティーとか、多様性も必要、企業も、自分が今までやってきた職種、業種と併せて、他とのコラボレーションの中で新しい価値も創造できる。そしてそこを、デジタル化も含めながら、企業も成長して人も成長していく。そういう新たな政策というか、先生は今、コロナとか、あとは山梨の取組、そういったもののやった評価をしていただいたんですけれども、今後進めるべきものについてのそういったターゲティングだとかプログラミング評価ということも必要かと思うんですけれども、このデジタル化、あるいは企業の体質転換等に向けてのそういった考えの下で、ターゲットとかプログラムというのはどのように考えればいいのか、お聞かせ願えますでしょうか。
○川口公述人 御質問ありがとうございます。企業に対してどのような政策を打っていくべきなのかということに関しては、難しい問題だと思いますけれども、東京商工リサーチのデータを使った研究の中で明らかになってきているのは、取引先企業が多い企業、こういったところの方が成長の機会が多いというようなことが分かっておりまして、コロナ禍の中で人と人とが会うことが難しくなっていく中で、新たなビジネスとビジネスの出会いみたいな機会が減っていることも懸念されるわけで、そういった機会をまた取り戻していくといったような政策というのも必要になってくるのかなというふうに思います。また、地方の金融機関を通じて、これが合併するような流れというのがあると思うんですけれども、そういった金融機関を通じて、またビジネスとビジネスが新たなつながり方をしていくといったようなことを促進していくといったようなことも必要なのかなと思います。また、今御指摘いただきましたように、企業の中で大切なのはやはり人材ということになると思いますので、ここの部分の投資をいかに促進していくのか。企業にとっては、難しい問題があるのは、デジタル化が進んで人のスキルが一般化していく、あるいはモジュール化していくに従って、企業が人材投資をしてもその果実が他の企業に漏出してしまうという問題がどうしても出てくるわけですね。ですので、労働者が自分自身でファイナンスをしてスキル投資をする必要が出てくる、こういう社会に、デジタル化というのはそういうことを意味する変化だというふうに考えられます。このときに、若い労働者で、十分にお金がないんだけれども自己に投資をしたいという人々がいる場合に、今までは、大企業でしたら会社の負担でそれを行っていたわけですけれども、それができなくなってくるということを前提にして、この人たちのファイナンスをどういうふうに保っていくのか、こういったことを考えていく必要もあるのかなというふうに思います。ありがとうございました。
〔葉梨委員長代理退席、委員長着席〕
○輿水委員 どうもありがとうございます。まさに、一人一人にどうやってしっかりとした投資ができるのか、その可能性を伸ばせるのか、その辺の視点を持って政策をどう進められるかなということも今後しっかりと議論をさせていただければと思います。そして一方で、そういった、人への投資が最終的にはGDPのアップにつながる、そういった、時間と同時に人への投資を含めたGDPのアップ策について、小黒先生、どのようにお考えか、お聞かせ願えますでしょうか。
○小黒公述人 輿水先生、ありがとうございます。労働時間で空いている時間について、副職という言葉がございますけれども、私、先ほど資料の方で、お配りさせていただいた資料の中に、「日本経済の再構築」という本を二〇二〇年三月に出しております。この中では、サブではなくてマルチという意味での、複数の複職ですね、こういったものをやはり権利として認めていただく、推進していただくことによって、労働者が空いている時間で別の仕事もしやすくする、こういうことによってGDPを増やしていくということも一つ重要なのかなと。また同時に、これが賃金の上昇にも結びつくと思ってございまして、これは私よりも先ほどの東京大学の川口先生の方が専門だと思いますけれども、よく経済学の実証分析で、転職しやすい国々の方が賃金が上昇しやすくなるというふうな話もございます。ですので、複職を幾つか持っていれば交渉力も高まりますので、そういったことによってGDPを増やしていく、スキルもためていくというようなこともできるんじゃないかというふうに思ってございます。
○輿水委員 どうもありがとうございます。本当に、世界デジタル化という中で、一人一人の働き方とか、時間とか、様々変化していく、その変化にどうやってこの社会、日本も変革していくのか。そこで新しい文化とか働き方が生まれて、日本の新しい豊かな未来が開けるのかななんて、そのように感じているところでございますが、まさにその日本のデジタル化の欠点が、デジタル人材がIT企業にほとんど偏在しているとか、首都圏にいる、偏在している、こういった中で、現場になかなかデジタル人材がいない。一方で、今までの日本だと、デジタル人材がいないんだったら外注に頼もうとか、外にお願いする。でも、それだと今の人材育成にならない。今いる社員が、また職場の一人一人がデジタルを学んで、自分でその現場でデジタルを生かして業務を効率化したり新しいものを創造できる、そんな社会も必要かと思うんですけれども、そのデジタル人材を、外からお願いするとか外注委託じゃなくて、現場で育成していくためにはどのような取組が必要なのかについて、短めに全ての公述人の皆様にお聞きしたいと思いますので、大槻先生から、原先生、川口先生、小黒先生と、よろしくお願いを申し上げます。
○大槻公述人 職場でのリスキリングという意味では、今はツールがいろいろございますから、私も実は五十を過ぎてからPythonをやりましたので、そういうことは十分あると思いますが、個人的に今問題だと思っているのは、人材として海外の優秀なIT人材、トップレベルの方々をなかなか採用できない。なぜならば、御存じのとおり、給与のレベルが日本と海外で大きく差がついてしまっていて、なかなか来てくれなくなっている。ここについては、やはり企業の側での努力が必要で、そういった異能というか特異な才能を持っている方々に対しての硬直的ではない給与の在り方というのが必要なんじゃないかなと思います。
○原公述人 ありがとうございます。まず、リカレント教育、これは大変重要だと思います。それから、いわゆる日本型雇用慣行で、社内に閉じて人材を育成しているというだけでは限界があるということで、これも政府で取り組まれていることですが、ジョブ型への切替えなども含めた政策が必要だと思います。
○川口公述人 御質問ありがとうございます。今、私、人材派遣の会社と共同研究をしておりまして、派遣先がサーバーの管理とかをするような、そのサーバーを管理するような人材を派遣している会社なんですけれども、そういった意味でちょっと利益相反があるかもしれないですけれども、しない範囲で私が感じたことを申し上げると、ビジネスモデルは、初心者の方を雇って二か月ほどトレーニングして、それで資格を取ってもらって、その後派遣するという形になっているんですね。これが普通の学校とちょっと違うなと思ったのは、このカリキュラムの二か月の間で十分に人材育成できないとビジネスにつながらないということで、あと、職業紹介の部分も同時に張りついているという形になっていて、どうも見ている範囲だと、うまくビジネスが回っているようにも見えます。それで、何年かすると、社員の方は辞めていって、恐らく直接雇用などに移行しているのではないかと思うんですけれども、ここはデータがないから分からないんですけれども。そういった意味で、様々な形の、学校以外の形の人材育成というビジネスモデルがあり得て、そこをやることが実を言うとビジネスとしても成功し得るというような余地があるわけですね。今、本当に人材が不足しているので、そこの部分を民間企業がやることによって、ビジネスを行うことができて、かつ効率性も上げることができる、こういった視点というのも人材育成の中には必要なのかなと今思っておるところです。ありがとうございます。
○根本委員長 小黒公述人、大変恐縮ですが、時間が経過しておりますので、手短にお願いします。
○小黒公述人 ありがとうございます。簡潔に。日本以外の国で幾つか取っている国があるというふうに聞いているんですけれども、コア人材を増やすという意味で、大手以外のところにいろいろなIT系の発注を例えば政府であるとか自治体がしていくということによって裾野を増やしていくというような方策もあるんじゃないかと思ってございます。
○輿水委員 どうもありがとうございました。以上で終わります。

○根本委員長 次に、近藤和也君。
○近藤(和)委員 立憲民主党の近藤和也でございます。各公述人の皆様から貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。まず、川口先生から伺います。EBPM実行のための予算化、最初から入れておくべきだという御意見は、なるほどなというふうに思いました。ちなみに、このようなことをしている国がほかにあるのかということをまず伺いたいと思います。そして、いわゆるゼロゼロ融資やグリーンゾーン認証制度などは効果があったというお話を伺いましたが、一方で、例えば、現在進行形でワクチン接種そして重症化やお亡くなりになる方の情報を逐次取っていくことの難しさ、効果といったところの現在進行形での難しさもあると思います。これらに対しての対処、このスピード、時間軸をどうやって取っていくかということが二つ目。そして、三つ目なんですけれども、これらの、うまくいった例は今ほどおっしゃっていただきましたが、うまくいっていないんじゃないか、若しくは、調べたけれどもうまくいっていなかった、そういった、このコロナ対策の中で何かあれば教えていただければと思います。
○川口公述人 御質問ありがとうございます。具体的に、どこまで評価のための予算を入れているのかということについて、具体的な数字を知っているわけじゃないんですけれども、少なくとも、アメリカで、リスキリングにも関わることですけれども、公共職業訓練というのが行われているんですけれども、こういった事業を行うに当たっては、あらかじめランダム化をして、参加する人をランダム化して、本当の意味での、トレーニングがその後の再就職につながる確率をどれだけ上げたのかとか、再就職後の所得をどれだけ上げたのかを評価することが求められるようになっているそうです。ですので、医薬の世界ですとそうだと思いますけれども、プロトコールが決まっていて、そのプロトコールに従って評価をして、それを次の予算につなげていくということがもう行政プロセスの中に組み込まれているというふうに聞いております。それで、ワクチン接種に関してなんですけれども、これはもう既に、やろうと思ったらできることはたくさんあると思います。私は公衆衛生の専門家ではございませんので、既に研究はあるかもしれないですけれども、VRSのデータベースを見ていて、都道府県別、日別の接種者数が分かるんですね。接種の対象になっている方の年齢別の接種者数も全部分かるようになっています。これを、例えば新規感染者数ですとか、あるいは経済活動の指標というものと相関させることによって、すぐにでも、このワクチン接種というものが経済活動ですとか新規感染の抑制にどのような効果を与えているのかということを評価することは、スキルがある先生がやればすぐにできるというふうに思います。ですので、スピードは、非常に速いスピードで実行することは理屈としては可能だというふうに思いますし、もう既にやられているのかもしれません。それで、ごめんなさい、三番目が……(近藤(和)委員「三番目は、うまくいっていなさそうなもの。うまくいっていないもの」と呼ぶ)うまくいっていない政策、率直に申し上げて、たくさんあると思いますけれども。大事なのは、うまくいっていないから、例えば、今回の企業支援に関しても、やや負の面があるということをお伝えした部分もあるんですけれども、政策というのは全ての人に同じように利くとは限らないんですね。この人には利かなかったんだけれどもこのタイプの人には利くというようなことがありまして、誰に対して利くのかというところを、ゼロ、一ではないので、この人には利いたんだというようなところを探り出して、そこにより重点的に予算を配分していくというような、何か駄目だったからゼロ点というような減点法ではなくて、うまくいっている部分はどこなんだ、そこに対して予算をより配分していくんだというような、そういうポジティブな考え方をしていくことも必要なのかなというふうに思っています。ありがとうございます。
○近藤(和)委員 貴重な御意見、ありがとうございます。ワクチン等についてはまだまだやるべきことがあるということは、与党の皆様もお聞きいただいたのかなというふうに思います。それでは、マーケットのことについて大槻さんと小黒さんに伺えたらと思います。まずは、ゼロゼロ融資のことについては、私も大変これはよかったなというふうに思っています。一番のこの利益の享受者は、先ほど川口先生からもお話が伺えましたが、やはり厳しい企業なのかなという一方で、実は、地域の金融機関もかなりありがたかったんですよね。リスクがかなり低くて、そして利子補給してもらえるという、大体四十兆ぐらいですから、それだけで年間四千億円ぐらい安定して入ってくる。一方で、もう一年と九か月たちました。あと一年と数か月たてば、利子の分を払わなきゃいけない。三年と数か月たてば、元金の部分を返さなきゃいけない。一つありますのが、余裕のある企業も借りています、一方で。そして、あと一年と数か月して利子を払わなきゃいけないというときに、全部返すという可能性もあるんですよね。そこも含めて、そして、今、地域の企業がどんどんなくなってきていることを考えれば、先ほど不良債権のお話もありましたが、かなり厳しい企業がたくさん出てくるんだろうなというふうに思っています。その中で、今、このコロナ対応としては、世界中がありとあらゆる手を尽くして、リスクをうまく、まずは第一義的には逃れることができた、これはリーマン・ショックからの教訓だというふうに思います。そして一方で、傷口を浅くしたがゆえに、後々に、傷を未来へ送り込んでいるだけという見方も一方でできますので、これらのリスク要因について、今年についての最大のリスク要因は何だと思われるのかということ。いろいろあると思います。金融機関のリスクもあれば、企業のリスクもあれば、国債のリスクもあれば、日銀のリスクもあれば、財政のリスクもあれば、そして中国の恒大のリスクもあれば、資源高のリスクもあると思いますが、その中で今年最大のリスク要因というのを、お二方、大槻先生と小黒先生に伺いたいと思います。
○大槻公述人 ありがとうございます。最大というのは非常に難しいんですが、今御指摘、御質問いただいた趣旨に最も沿ったお答えとしては、やはり地域の活性化がどこまでいけるかということだと思います。ゼロゼロ融資につきましては、先ほども御指摘いただいたとおり、銀行としては、リスクを負っていない分、それ以外にやることがたくさんあって、プロパーの融資も、傷んでいくようなことがあれば、どうしても労力のかけ方が違ってしまうかもしれないので、そうではなくて、やはりゼロゼロ融資をやったということは、御指摘いただいたとおり余裕のあるところもありますが、助ける必要があったからやったということでしょうから、ここからが正念場だと思っておりまして、そこに対してどこまで、金融機関、特に地方の金融機関になると思いますけれども、積極的に、ハンズオンで再生、あるいは再生ではなくて業態転換をあえてお勧めするような形で手助けをしていけるのか、そこの見極めをしていくということが必要だと思います。逆に、それができないことというのが一番のリスクではないかと思います。
○小黒公述人 先生、ありがとうございます。今年最大のリスクというのは、やはりアメリカが中間選挙がございますので、バイデンがインフレについて相当敏感になっている、これはFRBの議長の方にある程度プレッシャーになっていると思いますけれども。アメリカの金利が上がっていったときに、やはり日本との金利のギャップが拡大していく、それが日本にどう波及するのか。これは、日本銀行と政府が今いろいろシミュレーションとか真剣に考えていると思いますけれども、場合によってはそれが地方銀行の方に影響を与えるということもあると思いますので、その辺についてやはり少し踏み込んで考えていくということが重要ではないかというふうに思ってございます。
○近藤(和)委員 ありがとうございます。今、金利上昇、特に海外のところはもうせざるを得ないという状況の中で、昨日は指し値オペ、実質的には見せ金といいますか、それで止まったということですが、突破したらどうなるんだろうなという、むしろ私も恐ろしさがあるのではないかなと思います。その中で、特に、この十年近くの金融政策での日本における来年、再来年の一つのリスクといいますか、心構えは、やはりポスト黒田日銀総裁なのではないかなと。ここまで、今、国債の残高は少し減り始めてはきていますが、ETFは減りようがないというところで、ポスト黒田に望むことということで、再度、小黒先生、そして大槻先生に伺います。
○小黒公述人 先生、ありがとうございます。ポストコロナといいますか、これは、国会の先生方とか政権も含めて、日本銀行に滞留している国債をどうするのかということについて、外では余り議論はできないと思いますけれども、内々で議論していただくということ。だから、それができるような総裁ということがやはり一番重要ではないかと思ってございます。
○大槻公述人 ありがとうございます。ポスト黒田ということで考えますと、一年後ということになりますからまだ読み切れないところはありますけれども、そこから先のところでは、どうしても、出口に近づく、そのタイミングとやり方ということが一番市場としては関心事項でもありますし、懸念でもあると思います。御指摘いただいたとおり、期限がないものについての減らし方というのは、これから何かやはり大きく変えない限りは実現できないところではありますので、それをどう議論していくのか。そして、一番は、やはりマーケットに対してどう伝えるかだと思います。パウエルFRB議長は去年はMVP並みに相当うまくコミュニケーションを取ってきたと思いますが、今までのお話でもあったとおり、市場は何も動きがないというのが日銀への今のところの期待感だと思いますが、それが中長期的に続くというふうには考えづらい中で、どういう形で前出しをしながら、市場に過度な影響を与えない形で正常化を図っていくか、このコミュニケーション能力に期待したいと思います。
○近藤(和)委員 ありがとうございます。特に、黒田日銀総裁については、最初は、バズーカということで、むしろコミュニケーションの取り方で評価を得てきて、今は、むしろ何もしないことが期待されるという、ある意味大変な、かわいそうといいますか、そのような状況になってきているのかなと思います。ただ、一方で、その後始末をするのは私たち、皆様でございますから、ここについてはしっかりと前向きな議論をしていかざるを得ないのかなというふうに思います。ありがとうございます。時間が参りました。大変失礼いたしました。原先生におかれましては、様々な御意見をいただきまして、ありがとうございます。野党合同ヒアリングの在り方については、様々な議論があるということは承知をしています。私たちの思いとすれば、政府にちゃんと出てきてくれ、説明もちゃんとしてほしい、役人の人たちとのコミュニケーションもそうですが、ちゃんと政府、特に政治家とのコミュニケーション、出しにくい情報もちゃんと出していただく、それが国のために資するんだという思いでありますので、この国会の在り方については、しっかりと前向きな、私たちも姿勢を見せていきたいと思いますので、様々なことについてはまたいろいろな場で議論していけたらというふうに思いますので、どうかよろしくお願いいたします。各先生の皆様、今日は大変貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございました。

○根本委員長 次に、足立康史君。
○足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。公述人の皆様、今日はありがとうございます。今、近藤和也委員から一言コメントがあったのは、それはそれとするわけですが、謝罪がなかったので、謝罪した方がいいと思うんですけれどもね。ああ、関係ないですね。しかし、今日、こういう形で原公述人の方から話があって、私は大変重要な陳述であったと思っています。私たち日本維新の会は、この十年、国会の構造改革に取り組んできました。まさに、失礼ながら、万年与党、これからは違いますけれども、これまでの万年与党の皆様と万年野党が茶番劇を繰り返してきた。そういう中で、原先生のようにいろいろ被害を被っていらっしゃる方がいるわけですから、私は、今、近藤さん、こういう機会だったんだから、ちょっと一言ぐらい謝罪があってしかるべきだと思いますが、立憲民主党の方はとにかく謝りませんからね。委員長、これは是非、今日、原先生の方から、公述人の方からあった、国会への要望みたいなものがありました。これはもちろん予算委員会ののりを越えるところもあると思いますが、大事な指摘がありますので、是非、これをどう扱うかということを理事会で御検討いただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○根本委員長 これは理事会で協議します。
○足立委員 是非お願いをしたいと思います。私たち日本維新の会は、とにかくそういう思いで、そういうことはあってはならないということでずっと取り組んできましたが、ようやく、昨年の総選挙を経て、今話題になっている野党合同ヒアリングはなくなりました。本当に、政治は選挙を経て国会も変わるし、日本の経済社会も変わるということを国民の皆様にはお伝えしていきたい、こう思います。さて、できるだけ四名の皆様に御質問したいと思いますが、まず、原公述人ですが、今日は忌憚のない御意見をありがとうございました。問題になっている篠原議員、謝罪はありましたか。
○原公述人 ありませんでした。
○足立委員 私は、しっかりと、これはもちろん篠原さんだけではありません、野党合同ヒアリングですから、政党としてしっかりと対応していくべきだと思うんですね。立憲民主党だけではないと思いますが、立憲民主党に、先ほどもちょっとおっしゃいました、何をしてもらいたいか。もちろん、今日こういう形で陳述いただくことで、お孫さんは今日の議事録を見れば真実が分かるということですから、一歩前進だと思いますが、立憲民主党に何をしてほしいか、ちょっと忌憚のないところをお願いします。
○原公述人 ありがとうございます。先ほども少し申し上げましたけれども、やはり、野党合同ヒアリングにおける疑惑追及が不当なものであったということは、これは正式に認めていただきたいということです。それから、今も野党合同ヒアリングの動画のアーカイブが多く残されています。これはやはり消していただけないものかなと思っております。以上です。
○足立委員 私たちは、別にこの問題だけを取り上げているんじゃないんですね。これは一つの事件です。ほかにもたくさんあるんですね。例えば、私が先日この予算委員会でも取り上げました、菅直人最高顧問による福島の子供たちに係る風評加害。これも、結局、今どうなっているか、何かまた環境大臣、環境省とやり取りが続いていて、一切、反省の色が全くないんですね。だから、私は、この予算委員会が開催されている間に、菅直人最高顧問そして立憲民主党が、この一連の、原公述人が今日おっしゃったこともそうです、福島の問題もそうです、様々な問題について一切弁明も謝罪もされていませんので、この予算委員会をやっている間にそれが前進するというか、対応されることをこの場で立憲民主党に求めておきたいと思います。さて、もう一問、原公述人にお願いしたいんですが、私たちがこの国会改革を求めてきたのは、ひとえに、日本の経済社会、日本の繁栄のためです。国会が遊んでいると日本の未来が危ういので、まず国会改革に取り組んできた。私たち日本維新の会が生まれて、この十年の私たちの活動で国会は変わってきたと思うし、昨年の総選挙を経て、野党の在り方も大分変わってきた。次、これからの十年は日本の新しい経済社会をつくっていかなあかん、こう思っています。原公述人の問題で大変私たちが危惧しているのは、規制改革、構造改革へのマイナスのインパクトです。予算委員会で、私、国家戦略特区の活動が低迷しているということを御紹介申し上げましたが、事実上、既得権側が勝利をしている側面があると思うんですね。やはり、改めて原さんの名誉回復をするとともに、この戦い、構造改革、規制改革をめぐる戦い、もう一回エンジンを吹かしていきたい、こう思っているわけですが、その点、御意見ありましたらお願いします。
○原公述人 ありがとうございます。先ほどから国家戦略特区のお話をいたしました。国家戦略特区については、私の疑惑の話もありましたが、その前に加計問題もありました。こういった疑惑追及によって、国家戦略特区での取組が大きく停滞をしてきたということだと思います。初期には、岩盤規制改革の突破口にするんだということで、石破特区担当大臣がやっていらっしゃった頃にはこれはもう大きな前進があったわけですが、その後、加計問題が取り上げられた頃以降は、残念ながら、前進がないということになっています。ここをもう一回再稼働しないといけないんじゃないかと思っております。
○足立委員 ありがとうございます。本当にこれは、一部、共産党の方だと思いますが、予算委員会でやる議論かというコメントがありましたが、もう全く予算委員会でやる議論ですね。今あったように、まさに国会の在り方が日本の経済社会の在り方を決めているんです。これまで、国会が遊んできたから日本経済も低迷しているんです。だから、私たち日本維新の会は、まず国会改革に取り組んできた。国会改革に一定のめどが立ちつつあるので、次は新しい経済社会の構築に取り組んでいきたいということで、ちょっと御質問をシフトさせていただきたいと思います。大槻参考人、今日はありがとうございます。大変貴重な御意見を賜りました。私は、いずれもごもっともで、一つ、労働市場改革についてちょっと御意見を賜りたいんです。というのは、岸田内閣は新しい資本主義と言っていますが、この予算委員会で論戦しましたが、結局何をやりたいか、よく分かりません。勤労者皆保険とおっしゃっていたのも、実は中身がないということが分かった。それから、私たちがいろいろ提案をしている大改革プランというのがあるんです。要は、今日、大槻参考人がおっしゃっていただいた、挑戦、リスクテイク。これは、別に企業のマインドだけじゃなくて、制度がそうなっているわけですね。様々な、労働市場、労働法制とか、あるいは税制とか、先ほど川口参考人がおっしゃった女性の問題もそうです。女性は、特に扶養の問題とかで、一定の、壁がいっぱいあるわけです。要は、働かないように働かないように、あるいは挑戦しないように挑戦しないように制度ができているんです。だから私は、やはり立法府ですから、様々な制度、税制から社会保障から労働市場まで、制度が悪いと思っているんです。まさに、これから挑戦を支援できるような制度的な大改革をそろそろ真面目に取り組んで、これからはそういう、構造改革とおっしゃいましたが、新しい経済社会をつくっていくための制度改革をちょっと本格的に取り組まないといけないという危機感が私たち日本維新の会にありますが、いかがですか。
○大槻公述人 ありがとうございます。労働問題は本当に非常に難しい。私も、プライベートカンパニー、普通の企業におりますけれども、労働環境ということ、一般的、全般的に申し上げて、海外と仮に比較した場合、いろいろな条件の違いがあるので一概には言えないと思いますけれども、適材適所と、働きに見合った、ジョブ型という言い方になるのかどうかは分かりませんけれども、能力とそれから働きに応じた支払いのシステム、給与とかボーナスの仕組みというのは、やはりこれはマストだろうと思います。先ほども、一斉の賃上げについて意外と若い方々がそこまでよいというふうにおっしゃらなかったのは、やはり、自分がやっただけのものを評価されてこその給与であり、モチベーションであり、成長であるというふうに考えているからだと思います。だとしますと、おっしゃっていただいたように、労働に応じた、成果に応じたものに変えていくための一つの鍵としては、適材適所、それには、ひょっとしたら、流動性を、うまく回すような仕組みというのも重要になるかもしれないと思っております。
○足立委員 ありがとうございます。時間は限られていますが、川口参考人、小黒参考人に一問ずつちょっとお願いしたいんです。川口参考人、本当に面白いというか、大事だと思います。ただ、多分英米ではもう当たり前の世界というか、私はちょっと知り合いがイギリスの官庁に勤めていますが、あらゆるセクションにエコノミストが張りついていて、そういうエコノミストが、いや、これはちょっと合理的じゃないよと言う政策はそもそも提案さえできない。もちろん、後のフォローもあるということで。私は、今日御提案いただいた話はもう当たり前にしていかないといけないと思っていますし、それから、いろいろデータの入手とかで御苦労が多いようですが、私に言っていただければ質問しますので、まあ迷惑かもしれませんが、是非、こういうものをもっとやっていく。今日、最後に御提案いただいたように、国会の議論が、そういう週刊誌の下請のような国会じゃなくて、まさに今日いただいたようなことを私たちが、国会議員と政府が議論できる、そんな国会にしていきたいと一応決意を申し上げますが、せっかくですから一言いただければと思います。
○川口公述人 どうもありがとうございます。一点申し上げたいのは、今、議員からも御指摘ございましたとおり、イギリスの政府にはエコノミストがたくさんいて、博士号を取っている人たちが各セクションにいて、やっているわけですね。日本でも、公務員の方々、優秀な方々は多いですけれども、そういう博士号を持っているようなエコノミストをしっかりと処遇できるような人事の仕組みをつくっていただきたいなというふうに思います。
○足立委員 ありがとうございます。小黒公述人、いつもありがとうございます。財政については様々な議論があります。自民党の中にも両派あります。しかし、私たち日本維新の会は、どちらかといえば、安倍さんに集まっていらっしゃる学者の先生方とかと同じ考え方です。少なくとも、今日申し上げたように、これから十年、構造改革を進めて日本をもう一回成長軌道に、中長期、長期のですね、成長軌道に戻していくためには、金融、財政、いわゆるアベノミクス的な世界標準の経済政策はこれからも必要で、今プライマリーバランスとかにこだわって何かまた減速するようなことは絶対にあってはいけないと思いますが、ちょっとお考えと違うかもしれませんが、どう思われるか、お願いします。
○小黒公述人 先生、御質問ありがとうございます。一つ重要なことは、安倍政権下で消費税を二回増税したことによって、相当税収が増えてきているということ。それから、今、コロナ禍でも、先ほど御説明しましたとおり、プライマリーバランスの方については、予算編成も含めて、それなりに財政規律が働いた形で今動いているということ。ただ、長期で見ますと、この財政再建の問題というのは、バブルが崩壊してからしばらくずっとやってきたわけですけれども、一つだけ言えることは、やはり債務残高GDP比は依然として伸び続けているということは事実でございますので、経済との関係を含めながら、いろいろ御議論いただければというふうに思ってございます。
○足立委員 本当にありがとうございました。参考になりました。

○根本委員長 次に、前原誠司君。
○前原委員 国民民主党の前原でございます。四名の公述人の皆様方、今日は、御多用のところ、わざわざ国会にお越しをいただきまして、貴重な意見をお述べいただきましたことに心から感謝申し上げます。ありがとうございました。まず、一点目は、大槻公述人のお話を伺っていて、五枚目の資料ですか、不良債権予備軍の話をされました。不良債権の五倍ぐらいじゃないかということでありましたし、また、川口公述人のお話の中では、評点の低い方ほど融資を受けているということで、具体的な分析をされたわけでありますけれども、コロナ禍も三年目に入りまして、飲食それから旅行業、これは、インバウンド、アウトバウンド、国内旅行、こういった方々、あるいはそれに関連する産業、あるいは、政府がステイホームを推進し、テレワークを推進したり、オンライン授業、コンサートなどのイベントが自粛をされているという状況の中で、需要が減ったわけですね。そして、需要が減る中で、需要を埋める支援策もありました。十万円の定額給付金とかいろいろな支援策がございまして、雇用調整助成金なんかは一日上限を一万五千円に上げて特例措置を続けている、これはよかったと思います。ただ、需要というのは返ってくるわけじゃないんですね。じゃ、旅行客が戻ってきて、お土産を倍買ってくれるか、あるいは食事を倍食べてくれるか、あるいは新幹線で二往復してくれるかというと、そうではないわけですね。失われた需要というのがある。その需要を埋めているのが、先ほどからお話があるゼロゼロ融資などを含めた借金。そしてまた、納税や社会保険料についても、減免じゃなくて猶予しているんですね。猶予しているということは、その翌年に二年分とか三年分とかまとめて払わなきゃいけない、こういう状況になるわけですね。ここからが本当に正念場だというふうに私は思っていますけれども、先ほど大槻公述人からは、同僚議員の質問にお答えされて、企業の再生とか業態転換ということが必要だということをおっしゃいましたけれども、なかなかそれは、私、できる業種とできない業種もあると思いますけれども、この根雪のようなゼロゼロ融資とか、税や社会保険料のいわゆる猶予という問題がこれからいよいよ本格的に重くのしかかってくると思うんですが、これに対してどう対応したらいいかということについて、それぞれ一言ずつお答えをいただければありがたいと思います。
○大槻公述人 ありがとうございます。確かに非常に難しいと思いますが、需要はあるところにはあると考えますと、御指摘いただいたように、例えば、経営者の年齢等から考えてもそう簡単に転換できることではないというのは、物すごくよく分かります。ただ、一方で、ほかになかなかいい道があるわけではなく、できる範囲でもって新しい道を、例えば、おっしゃっていただいた飲食でしたらば、既にEコマースなどに一定程度振り向けているところはむしろ利益が伸びているなど、御存じのとおりだと思います。そういった形で、需要があるところにどうやってシフトをしていくか、それは多分単独では難しいと思いますので、先ほど申し上げたような形で伴走者が必要だと思います。それは、保証協会さんなども人を増やすなどのこともやられていつつあるとも聞いておりますけれども、やはり一義的には、貸出手でもあり、近くでフェース・トゥー・フェースで見ている地域金融機関さんにそこを期待をしたいと思います。
○原公述人 ありがとうございます。業態転換できるところは進めていく、一方で、おっしゃるようにできないところもある、そこに対してセーフティーネットをきっちりと張っていくということが重要だと思います。できないところがあるので、みんなで我慢しましょうとか、みんなで貧しくなりましょうというのはやめた方がいいんじゃないかと思います。
○川口公述人 ありがとうございます。例えばなんですけれども、今回のコロナ禍でテレコンファレンスが非常に広がって、企業の出張なんかというのがコロナが収まった後にどれぐらい戻ってくるかというところはかなり不確定なところがあって、構造的に縮小してしまうことがやむを得ないような場合もあるとは思うんですね。こういった構造変化というものを捉えて資金の流し先を変えていくというのは、やはり、先ほども大槻公述人の方から御指摘がありましたけれども、民間の金融機関がやるというのが資本主義の原則だというふうに思いますので、やはり、貸し手に一定のリスクを取ってもらう、貸出しの規律をしっかり取り戻してもらうといったことを考えていくことが必要なのかなというふうに思います。
○小黒公述人 御質問ありがとうございます。非常に難しい問題だと思います。業種転換ができるところとできないところがある等ございますので。基本原則としては、まず、民間の金融機関などを使ってきっちりサポートしていくということ、ただ、それでも難しい場合については、やはり政府が後ろからサポートするということもある程度必要なのではないかなというふうに思っております。その上で、財政的な問題でコストがやはり跳ね返ってくる可能性もある等ございますので、その場合、冒頭、少し先ほど公聴会の陳述で述べさせていただきましたけれども、やはり特別会計をつくって債務をきちっと処理していくということも重要ではないかというふうに思ってございます。
○前原委員 皆様、ありがとうございました。例えば、Eコマースの話を大槻公述人はされましたけれども、店頭販売が難しいので、そういうことをされているところというのは結構あるんですね。それは、でも、失われた需要が全て埋まるわけではありません。それからまた、川口公述人がおっしゃいましたけれども、ポストコロナで、テレコンファレンスの話をされました。こんなに便利なのかと。我々もZoomの会議が非常に多くなってきまして、恐らく国内的にも国際的にもそれが定着してくるということになると、公共交通機関というものは、恐らくこれから使われる方はコロナ前と比べると減っていくと思うんですね、人口動態に関係なく。ですから、こういったところの中で、やはり、もちろん経営努力ということもそれぞれやっていただかなきゃいけませんが、最後に小黒公述人がおっしゃったように、モラルハザードにならないという大きな線を引きながら、債務についての一定のやはり処理というのは私も必要になってくるのではないかなという気がしております。ありがとうございました。川口公述人、一点だけちょっとお伺いしたいんですけれども、EBPMというものについて、私、本当にこれは元々大事な考え方だというふうに思っていましたし、全ての予算にこういうものが予算編成の段階からビルトインされるということは大事なことだと思うんですね。その観点の中で、今回の予算委員会でも私、取り上げたんですけれども、租税特別措置。これは特別措置なんだけれども、だらだら続いているものがたくさんありますし、特に第二次安倍政権以降、例えば、賃上げの税制とか、あるいは研究開発税制ということで、この租特、租税特別措置についてかなり積み上げをしているんですけれども、結果を見ると、賃金はさほど変わっていないし、もっと変わっていないのは研究開発税制。これについては、額を増やしても、研究開発費というのは前と比べてもほとんど増えていない。賃金は若干上がったりしているんですけれども、ただ、効果が一%もないような状態でございまして、そういう意味では、このEBPMという観点から考えると、この租特、特に賃上げ税制、研究開発税制というものは、私は徹底的に検証されるべきだというふうに思いますが、お考えを聞かせていただけますか。
○川口公述人 はい、検証されるべきだというふうに考えております。それで、賃上げ税制に関して申し上げると、そもそも法人税を払っている法人が半分以下というような現実もございまして、どこまでその政策が届くのかという段階でやや疑問もあるのかなというふうに思っております。それで、これが制度的に可能かどうかということはちょっと脇に置いた議論になってしまうのですけれども、労働者あるいは企業に係る租税負担を減らすということで申し上げると、社会保険料の企業負担、労働者負担分を減らすという方がストレートな政策なのかなというふうに思っておりまして、いろいろな方法を、法人税だけでなくて、様々な角度から、実質的な賃金をどうやって上げていくのかということを政策的に考える必要はあるかなというふうに思っております。ありがとうございます。
○前原委員 ありがとうございました。小黒公述人にお伺いしたいわけでありますけれども、私は、先生の本は読ませていただいているのである程度理解はしているつもりなんですが、減価するデジタル通貨、異次元の少子化対策ということをお話をされましたけれども、この減価するデジタル通貨について、恐らく耳慣れない方もたくさんおられると思いますので、議事録に残す意味において、少し御説明をいただければと思います。
○小黒公述人 先生、ありがとうございます。減価するデジタル通貨ですけれども、これは、ゲゼル貨幣とデジタル通貨を両方融合した話になります。ゲゼル貨幣については、経済学者というか経済思想家のゲゼルという方が、普通の財・サービスであれば、必ず時間を置くと摩耗していったり減価するというような特徴があるわけですけれども、貨幣については、インフレであれば違いますが、デフレのレベルでは全く減価しない。そうすると、やはり貨幣だけが特殊な財になるということで、ゲゼルのアイデアでは、一定期間ごとに、スタンプを取る、そのスタンプを取ることによって貨幣の価値が維持できるんだけれども、例えば、一か月後に一〇%減価するとか、二か月後に二〇%減価するという形で、次第に価値が減価していくようなものになるということでございます。当時はそういったことをやろうとすると相当難しかったわけですけれども、今は、ブロックチェーンとか、いろいろなデジタル技術が出てきておりますし、それから、中央銀行の方でもデジタル通貨というものを今検討中だということで、財務省の方でも、新しい部屋の中で体制が増員されているというような話も報道ベースで出ております。ですので、そういったデジタル通貨とゲゼル貨幣を両方併せれば、これはちょっと非常に微妙な話で、はっきり申し上げれば、財政ファイナンス的な部分もあるわけですけれども。ただ、普通に貨幣を発行してしまうと償還されませんけれども、毎年例えば一定パーセントで減価してきて十年後にゼロになるという形にすれば、ある程度、政府でもコントロール可能になる。仮に十兆円出したとしても、十年後にはその十兆円の貨幣はなくなりますので、若干インフレの圧力は当然高まるとは思うんですけれども、そういったものも少子化の財源として使っていけるのではないかということで御提案させていただきました。
○前原委員 ありがとうございます。小黒公述人にもう一点お伺いしたいんですけれども、私も、今でもかなりの財政赤字の中で国家が運営されているわけでありますけれども、やはり、国際競争力も落ちて、そして、様々な面での劣化が見えるこの日本において、いかに、それこそアベノミクスの三本の矢の三本目、先ほどの原公述人の話ですけれども、規制改革とか構造改革とか、成長する体質に変えるために、やはりそこに集中的にしっかり投資をしながら、そして、成長する体質に変える中で財政再建を図るというバランスが必要なのかなという気がいたします。そういう意味では、私は教育というのはすごく大事だと思うんですね。我々は、教育国債というものを必要性を、当面、そして、その行う中で将来的には財源をということでお訴えをしております。質問しようと思ったんですけれども、時間が来ましたので。教育の必要性については全ての公述人の方がおっしゃいましたので、リカレント教育、リスキリングも含めて、しっかりと国がカバーできるように、公述をいただいた内容も参考にしながら取り組んでいきたいと思います。ありがとうございました。

○根本委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。今日は、公述人の皆様、大変お忙しい中、貴重な意見を賜りまして、ありがとうございます。予算委員会の公聴会は、やはり予算案の審議に当たって国民の皆さんの意見を伺い、その後の審議に生かすために開かれているわけでございます。先ほど、原公述人からの公述は、自らの抱える案件について私的な反論をとうとうと述べられるということでありました。予算委員会の公聴会の在り方としてふさわしいのかという点でいえば、私は甚だ疑問であるということを申し上げておきたいと思います。推薦した会派の責任も問われるということも申し上げておきたいと思います。その上で、国家戦略特区についてのお話がありましたので、あえて一問だけお伺いをさせていただきたいというふうに思います。国家戦略特区を使って、加計学園の獣医学部の新設について、これは安倍政権による行政の私物化ではないのかということで、この間、さんざんこの場でも議論になってまいりました。当時、京都産業大学が、鳥インフルエンザの権威であった大槻先生を早くから招聘して、文科省やあるいは農水省に対して、獣医学部をつくりたいという働きかけをやられていたわけでございます。しかし、国家戦略特区の枠組みの中で、加計学園だけが獣医学部の新設の権利を手に入れるということになったわけです。その過程であったのが、平成三十年四月開学という条件がつけられたという問題がありました。一方の加計学園については、この平成三十年四月開学というスケジュールを、政府を通じて共有して準備を進めていた。もう一方の京都産業大学は、そのスケジュールは知らされていなかった。一方は教員の確保などの準備を進めていったわけでございますが、当然、獣医学部の先生をできる方々というのは限られているわけであります。一方だけが情報を持って準備を進めれば、他方は極めて不利な条件になるのは火を見るよりも明らかだったわけであります。平成三十年四月開学、この条件が大変決定的な条件になりまして、結局、京都産業大学は獣医学部新設については断念に追い込まれるということになったわけであります。そこで、原公述人にお伺いしたいんですけれども、この平成三十年四月開学という条件というのは一体誰の指示で入ったんですか。
○原公述人 ありがとうございます。よろしゅうございましょうか、御質問の前に私が私的な反論をしたということをおっしゃられましたが、今日申し上げましたように、私は国会全体で御検討いただきたい事項をお話をしたつもりであります。是非お受け止めいただけませんでしょうか。済みません、先にそれだけ申し上げさせていただきます。その上で、国家戦略特区、獣医学部の新設についての御質問がありました。獣医学部の新設、これは二〇〇〇年頃以来の、もう二十年以上にわたってなされてきた議論です。大学や学部の新設について抑制をせず、新規に参入できるところは参入できるようにする、退出するところは退出する仕組みをつくるというのは、これはもう、二〇〇一年だったと思いますが、閣議決定がなされ、獣医学部については積み残しの課題として検討がなされてきたものでした。一校だけ優遇されたんじゃないかという御質問でありましたが、早く二校目、三校目、認めたらいいと思いますということに尽きると思っております。以上です。
○宮本(徹)委員 私の質問に全くお答えにならなかったわけですよね。平成三十年四月開学という条件がなぜ途中で課されたのか、ここにこの問題の核心があって、ここでもさんざん議論されてきたわけですよ。二校目、三校目、つくりようがない条件が課されたわけであります。そんなにたくさん獣医学の教育をできる先生はいないというのは明らかなわけですから、そのために、実際、現に京都産業大学は獣医学部新設を断念せざるを得なくなったわけです。この決定的な問題についてもお答えになられないわけですよね。ですから、この国家戦略特区というのは極めて行政の私物化につながっている仕組みではないのかということを私たちは申し上げているわけでございます。さて、小黒参考人にお伺いをしたいというふうに思います。財政健全化に向けてのいろいろなお話があったわけですけれども、この間、防衛省の予算が増えております。民主党政権の頃は当初予算で四兆円台だったわけですけれども、今回、当初予算は財政規律は保たれているといいますけれども、補正予算で相当な額を積んでいますので、六兆円を超えるというところまで来ました。その上、昨年の自民党の選挙公約ではGDP比二%を念頭に増やしていくということになっておりますが、この防衛省予算をどんどん増やしていくということについては、財政の観点から見てどうお考えでしょうか。
○小黒公述人 先生、御質問ありがとうございます。防衛費をどれぐらいのGDP比にするかということにつきましては、やはり、アメリカと中国のはざまで日本がどう生き残っていくのかということとの関係も考えていくということが重要ではないかというふうに思ってございます。ただ、私が先ほど少し申し上げましたのは、社会保障費と国債費がやはりかなりどうしても膨らんでいくという中で、ほかの予算が相当厳しい改革のプレッシャーにもさらされている。私、専門は安全保障ではないんですけれども、財政学者の立場から見ても、やはり安全保障と財政が本当に逼迫した場合、どっちが本当に大変な問題かというなれば、私は、やはり安全保障の方が上なのではないかというふうに思ってございます。ですので、そういった中で、やはり防衛費についても御議論いただければいいのではないかというふうに思ってございます。
○宮本(徹)委員 際限のない軍拡競争ということになれば、それは本当に、私は、先のない、財政破綻の道だということは申し上げておきたいというふうに思います。あと、川口公述人にお伺いをしたいというふうに思います。先ほどのお話で、山梨県のグリーンゾーン認証制度のお話がございました。この中で、新規感染者を四五・三%減少させ、売上げを一二・八%増加させたという効果があったという話でございます。本当に、今、オミクロン株の下でもエアロゾル感染対策というのが極めて重要になっております。そういう下で、様々な場でしっかりとした制度をつくっていくというのは非常に大事だと思うんですけれども、その上でお伺いしたいのは、この四五・三%減少させたという計算の根拠といいますか、一般的にどうやってこれは比較したのかなと、大変興味深く聞いていたものですから、お聞かせいただけたらというふうに思います。
○川口公述人 どうもありがとうございます。どのように計算したかということなんですけれども、やはり、このグリーンゾーン認証をやらなかったときにどういうことが起こっていたのかという仮想現実を計算する必要があるんですけれども、この部分に関しましては、近隣の五県のデータを使って再現をいたしました。具体的には、栃木県、茨城県、静岡県、群馬県、長野県、こういったところの新規感染者あるいは飲食店の売上げのトレンドというものを持ってきて、これらの五県に関しましては、グリーンゾーン認証が始まるまでの新規感染の動き方ですとか、特に飲食店の売上げ、ここの部分のトレンドが非常に似ているということを確認した上で、仮に山梨県がこの政策を打たなかったならばそういう状況が実現しただろう、こういった仮定の下で計算をしております。
○宮本(徹)委員 大変ありがとうございました。続きまして、大槻参考人にお話をお伺いしたいというふうに思います。大槻参考人の配付されました資料の中で、七ページのところで、財布のひもがなかなか緩まらない原因として、将来の年金が不安だからという問題と財政が不安だからだという問題があるというお話がございました。これは本当に大変大きな問題だというふうに思います。今、財政のことが理由で、年金は、マクロ経済スライドということで、どんどんどんどん将来にわたって減る仕組みになっているということなわけですよね。逆に、じゃ、どうするのかという問題が出てくるかと思うんですけれども、安心の年金制度、減らない年金制度にしていくということと財政の状況ということを考えた場合には、やはりしっかりとした財源を持ってくるしかないということになると思います。しかし、それを消費税で頼るということになった場合は、当然、この財布のひもをまた締めつけていくということになってしまうというふうに思うんですね。ですから、そういう点では、この課題を解決していくためには、国際協調もしながら、しっかりと、富めるところに応分の負担を求めていく。日本でいえば、大企業が内部留保を大きく増やしている状況がございます。また、貧富の格差もかなり広がっている状況があるわけですけれども、そうした応能負担の原則に立った税収の増加というものをしっかり図っていく必要があるかと思うんですが、この年金が不安だから、財政が不安だからということについて、どういう対策をお考えでしょうか。
○大槻公述人 ありがとうございます。確かに、そういう意味では、何をもってこれに対しての対策とするかということについては、ここのデータだけでは何とも言えないところではございますけれども、おっしゃるように、応能負担というのは、将来的に、資産に応じたもの等々も含めて、考えるべきポイントの一つかとは思います。一方で、そうしますと、こういった不安というものについては、もしかしたらなかなか減らないかもしれない。御指摘いただいたように、持っている人、持たざる人がいる中で、より持たざる方々に対してはそういった形があり得るかとは思いますが、一義的にはやはり、いかにして経済活動を活性化することによって税収を増やしていくか、企業とそれから民間、個人も含めた民間の力で活性化、そしてGDPを上げていき、税収を上げていくというのが一番、多分オプティマルな形なのではないかと思っています。
○宮本(徹)委員 ありがとうございました。あと少し時間がありますので、小黒公述人にもう一問お伺いしたいと思います。この間、ここの委員会なんかでもベーシックインカムというものも議論されておりますけれども、これについてはどういうお考えをお持ちでしょうか。
○小黒公述人 先生、御質問ありがとうございます。基本的には、まずツーステップで考える必要があるというふうに思ってございまして、一つは、ベーシックインカムで一回配った後に、その財源を賄うために、先ほど少し議論になっておりましたけれども、少し所得が高くて資産がある方に多めに負担していただいて、そうじゃない方を少なめに、そういうことによって、実質的に、いわゆる負の所得税と呼ばれるものがございますけれども、本当に困っている人だけに集中的に給付するというような効果を出すということはある程度可能かなというふうに思ってございます。ただ、理論的にはベーシックインカムの方が調達する財源が大きくなりますので、そうしますと、経済学の用語であるディストーションというか、税率の二乗に比例する形で経済に影響、インパクトを与えますので、その影響を考えますと、可能であれば、やはり本当に困っている人だけに集中的に投下した方が効率的だというふうに考えてございます。
○宮本(徹)委員 ありがとうございました。時間になりましたので、終わります。

○根本委員長 次に、北神圭朗君。
○北神委員 どうもありがとうございます。公述人の先生方には、今日は本当に貴重なお時間をありがとうございます。大変勉強になりました。まず、コロナの間の経済対策、それから中長期的な経済政策、金融政策も含めて、これをちょっと、この流れに沿って質問したいと思います。まず大槻先生、コロナの間で、今までの経済対策はそれなりに効果があった、むしろ個人が豊かになったという皮肉な現象にもなっていると。今、オミクロンがまたぶり返して、蔓延をしていて、この中で、私は京都なんですけれども、信用保証機構とか、この辺の話を聞いていると、これまで倒産件数も減らして、非常にうまくいった、しかしながら、また厳しい状況に陥ってきて、そろそろ借換えの、今一応三月末が期限になっているので、この延長をすべきだという話があるんですが、それについてどう思われますか。
○大槻公述人 ありがとうございます。資料の方でもお示ししましたように、銀行口座の規模が少ない方の預金の残高が少し減っている、マイナスに転じてしまっているというのは、御指摘いただいたとおり、御指摘のオミクロンとの関連というのは必ずしも分かりませんけれども、何らかの形で、今、豊かになったはずの個人の預金が取り崩されているフェーズに一部ではなっているということなのかと思っていますので、その意味では、御指摘のとおり、懸念をどこまで、どういう形でサポートしていくかというのは、ここから、恐らく今年の、二〇二二年の最も大きな問題だと思います。ただ、では、それをゼロゼロでやっていくのか。それはやはり、最初の図でお見せさせていただきましたように、今回の非常に特徴のある点だと思います。これがあったからこそ早くできましたし、金融機関がここから先の支援のための余力を残していたということになりますので、もしかしたらやり方を変えて、しかしながら御指摘の趣旨に沿った形で、支援が必要なところには早めに届けるということが、やはり三月以降も必要なんだろうと思います。
○北神委員 ありがとうございます。だから、どういう方法でやるかということなんですけれども、私も、単純にゼロゼロで延長してもいいと思っている方なんですけれども、先ほど川口先生から、EBPMの分析によりますと、不健全な企業も救われてしまうということなんです。これは、考えてみますと、不況でもそうなんですけれども、経営者の責任をどこまで問うかという中で、当然、コロナという外的な要因で最初に厳しくなるのはふだんから不健全なところだというふうに思いますので、ある意味では当たり前の結果だと思うんです。二割でしたよね、たしか。二割ってむしろ少ないかなと思って、それなりに評価してもいいんじゃないかと思うんですが、それについてどう思われますか。
○川口公述人 そうですね。二割という部分は、ひょっとしたら、少ないというのも、判断としてはあり得ると思います。こういう数字が出てくることによって議論が盛んになればというふうに思っております。それで、前段の部分の、元々悪いところの方が、今回、コロナ禍でのダメージが大きかったんじゃないかという御指摘は、全くそのとおりだと思います。その点を踏まえて分析を、実を言うとしておりまして、二〇二〇年の二月から九月にかけての対前年同月比の売上げの減少というのを整えた上での分析もやっているんですけれども、それをやった上でも、例えば、同じダメージを食らっている元々評点が高かった企業と低かった企業というのを比べると、それでもなおも評点が低い企業の方が貸付けを受けているというような結果が出てきておりまして、その意味では、我々が出してきた結果というのは、そこまで当たり前でもない部分があります。このような金融支援というものが非効率な企業を永続させてしまったんじゃないかという議論というのは、実を言うと、前の金融危機に対しての政策対応に関してもずっと言われていて、実を言うと、長期にわたって、この問題というのが日本経済を襲っているというか、覆っている問題なのかなというふうにも思います。
○北神委員 ありがとうございます。もう一つ、川口先生にお聞きしたいのは、では、仮に、このゼロゼロ融資というのが少しモラルハザード的な問題があるとするならば、ほかの手段で、例えばドイツなんかは消費税を一定期間徴収しなかった。減税じゃないですね、減税じゃなくて、企業が本来税務署に払わないといけない分を、例えば半年間払わなくて、それを固定費に回すことができたという方法で、これは同じ税金なので、補助金も、いわゆる税金を取らないのも。逆に、補助金ですと、やはり、これは補助金との比較をちょっとさせてもらっているんですが、申請の手間とか、審査をしないといけないとか、振り込みの時間がかかるとか、いろいろな条件が、ある意味で非合理な条件があるとか、そういうことで、そういうEBPMで、効率性とか目的を果たすための一番効率的な手段という分析をされるんでしょうか。
○川口公述人 御質問ありがとうございます。例えば、コロナの初期で、流動性制約に厳しく直面している企業を救うという意味でいうと、全ての企業を救うというような選択肢が短期的には合理的だった可能性というのも十分にあると思います。それで、政策の手段を考えるときには当然その実行可能性を考える必要がありまして、先ほど小黒公述人の方から、本当に困っている人にピンポイントで支援をという話があって、かつ、その所得の変動を年内で捉えられるような仕組みをつくり上げるような必要があるというような御指摘があったと思うんですけれども、それを例えば税務データを使ってどのように実現していくのかといったようなことも含めて、EBPMというのは考えていく必要があろうかというふうに思っております。ですので、実行可能性というものを考えるというのは非常に大切なことだというふうに考えております。
○北神委員 ちょっと中長期的な話にも行きたいと思いますけれども、大槻先生、金利の話なんですけれども、当面、米国なんかは物価上昇が六%ぐらいですかね、今、そのぐらいだと思いますけれども、いわゆる政策金利を引き上げると。これは米国だけじゃなくて欧州もそうなんですが。これが日本に対して、日本はそれどころじゃないんですけれども、日銀も上げるつもりはないような感じなんですが、例えば欧米がどんどん上げていくと、日本の金利というのはどのように影響されるのか、短期的に。それをちょっと教えていただければと思います。
○大槻公述人 ありがとうございます。短期については、おっしゃっていただいたとおり、政策金利に連動しますから、そういう意味では、日本だけ上がらない。そして米欧は、先ほどお示ししたように、少なくとも市場が織り込んでいる金利としては、一年の間にアメリカでいうと五回程度の利上げが既に織り込まれているというところだと思います。一方で、長期については、投資家の問題もありまして、そこは連動していきますので、そうしますと、長期については若干、もちろん中央銀行、日銀のコントロールがございますので、そこまでではないにしても、連動する。そうしますと、問題としては、おっしゃっていただいた点で、影響の方で気になることがあるとすれば、やはり金利の格差が拡大していきまして、そうすると円安になる。その場合というのは、輸出にはいいですけれども、釈迦に説法ですけれども、輸入、特に輸入物価が、先ほど申し上げたようなインフレにつながっていくということが懸念されるところだと思います。
○北神委員 ありがとうございます。あともう一つは、中長期的に、これは当面は多分、世界、日本を除けば、欧米の金利というのはどんどん上がっていくと思うんですよ。ところが、中長期的にいくと、例えば世界の高齢化の進捗率でいえば、五十歳以上の方が現在たしか二五%ぐらいかな、これが二一〇〇年までに四〇%ぐらいまで比率が上がっていく。そうすると、貯蓄と投資の均衡上、どちらかというと貯蓄の方が増えていって、そして金利というものが、やはり長期的には非常に低い水準でかなり長期間推移するというふうに言う人がいるんですけれども、どう思われますか。
○大槻公述人 ありがとうございます。長期的には、国際的な金利の水準としては御指摘いただいたとおりだと私どもも考えていまして、高齢化の問題もございますし、そもそもお金に対してのニーズというのが減っていて、がっつり大きな工場というのが今やソフト化によって必要なくなっているということで、お金が必要じゃないということを考えますと、例えばですけれども、今のトレンドでいきますと、アメリカの十年国債利回りについては、二・五%を超えてくるようなものとなると、やや、おっしゃっていただいたトレンド線からすると高いかなという感じがいたします。
○北神委員 ありがとうございます。小黒先生、財政健全至上主義者じゃないということが今日分かりましたので非常に喜んでおりますけれども、お聞きしたいのは、確かに、私も決してMMT論者ではなくて、それなりの財政規律は大事だというふうに思っています。ただ、何回も皆さんから話があったとおり、成長というのも非常に大事だと。この中で、一部の論者は、財政赤字があっても、金利がある程度低くて名目成長率の方がそれを上回る状態であれば、それなりに賄うことができるという議論がありますけれども、今の大槻先生の話のとおり、当面というか、五十年ぐらいの単位で少なくとも世界的にも超低金利というのが続くと思われるんですけれども、こういう中で、日本の財政について、どのようにお考えでしょうか。
○小黒公述人 北神先生、ありがとうございます。資料の十ページにドーマー命題というのを載せてございまして、ここで重要になるのは、金利は関係ございません。一番重要なのは、財政赤字のGDP比、もし金利がゼロであればその分ゼロになりますので、プライマリー赤字ですね、これのGDP比と成長率の比で決まるということでございます。先ほど御説明しましたのは、例えば、二〇三一年ぐらいに、国と地方の財政赤字が例えば一・七%ぐらい、成長率が〇・五%ですと、大体三・四になりますので、今の債務残高GDP比、二五〇%ぐらいだったと思いますけれども、これが三四〇%ぐらいまで膨らんでいくような形になるというのが数式上の計算になるということでございます。
○北神委員 今のドーマーの定理というのは、財政赤字の対GDP比というものを一定収束させるという話ですよね。でも、これは必ずしも、いわゆる財政破綻になるかどうかというのとはまた別だというふうに思いますので、これまた、ちょっと時間がない中、難しい話なので、議論したいと思いますけれども。最後に、原先生、中傷誹謗の問題、私もよく分かります。ただ、これはもう一つの視点として、官僚が、憲法十五条で全体の奉仕者とか、こういう言葉に勘違いをされる方がいて、やはり、例えば厚生労働省の官僚というのは厚生労働大臣の部下であって、国会議員全体の部下ではないわけですよ。こういった人たちが、ああいういわゆる党内ヒアリングであそこまで労働時間を奪われてがたがた言われるというのは、こういう観点からも考えるべきだと。ただ、反面、これは与党議員もそうで、あくまで、例えばイギリスなんかだったら、政治家に対する接触禁止の規定というものがあるわけですよ。つまり、厚生労働省の官僚は、厚生労働大臣や副大臣、政務官にしか接触できない。与党でも野党でもない。こういうことについてどう思われますでしょうか。
○原公述人 大変ありがとうございます。かつて、二〇〇六、七年に公務員制度改革を政府の中でやっていて、私も担当しておりましたが、あの当時、イギリス型の政官接触の禁止についても議論がありました。議論があったんですが、最終的にはそれは法制化はされませんでした。ということでしたが、おっしゃられましたように、政治と行政との関係、これはもう、よく見直していくべき課題だと思います。先ほど、私、冒頭の発言の中でも少し申し上げましたように、野党合同ヒアリングのような形で政府の行政に問題があるんじゃないかということを追及していく、これは重要な機能だと思います。何かそれ自体がいけないことでは全くなくて、これは大事な役割です。ただ、そのときに、やはり、弱い立場にある役所の人たちをやっつけるということではなく、できれば政治家同士で、与党の政治家の方々、これは大臣、副大臣、政務官、あるいは足りなければもっとチームをつくっていただいてもいいと思いますし、政治家同士で闘うという仕組みをつくっていただけるといいんじゃないかと思います。
○北神委員 ありがとうございました。
○根本委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)午後一時から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。