2022年4月12日 衆院厚生労働委員会参考人質疑 薬緊急承認限定的に 薬機法改正案で参考人

 緊急時にワクチンなどを緊急承認する制度を導入する薬機法改正案の参考人質疑が12日、衆院厚生労働委員会で行われました。
薬害オンブズパースン会議事務局長の水口真寿美弁護士は、緊急承認制度は有効性の検証が行われていない医薬品に推定だけで承認を与えるため「具体的な適用要件を明確にし限定すべきだ」と述べました。
 日本共産党の宮本徹議員は「どのようなものに限るべきか」と質問。水口氏は「承認薬があってもパンデミックが広範にわたり供給が追いつかない時や、ある集団の人たちに承認薬が使えない場合」と述べた上で、米国の緊急使用許可制度(EUA)はホームページ上に具体例を示しており、「ガイダンスで明確にすることが必要だ」と強調しました。
 第3相試験について問われた東京医科大学茨城医療センターの福井次矢病院長は「緊急承認した後も並行して行うべきだ」と述べました。
 宮本氏は、ウイルス量は減るが症状改善の効果がない場合、緊急承認の対象となるかと質問。水口、福井両氏は「効果がないと承認の対象にはならない」と述べました。

以上2022年4月15日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2022年4月12日 第208回衆院厚生労働委員会第12号 議事録≫

○橋本委員長 これより会議を開きます。内閣提出、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案並びに中島克仁君外十六名提出、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律及び新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案、新型コロナウイルス感染症に係る健康管理等の実施体制の確保に関する法律案及び新型インフルエンザ等治療用特定医薬品の指定及び使用に関する特別措置法案の各案を議題といたします。本日は、各案審査のため、参考人として、東京医科大学茨城医療センター病院長、京都大学名誉教授福井次矢君、コロナ自宅放置死遺族会共同代表高田かおり君、一般社団法人新時代戦略研究所理事長、前ファイザー株式会社代表取締役社長梅田一郎君、日本製薬団体連合会安全性委員会前委員長荒井美由紀君、薬害オンブズパースン会議事務局長、弁護士水口真寿美君、以上五名の方々に御出席をいただいております。この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。次に、議事の順序について申し上げます。最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十二分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。それでは、まず福井参考人にお願いいたします。

○福井参考人 おはようございます。東京医科大学茨城医療センターの福井と申します。本日は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する考え方を御説明し、意見を述べさせていただく機会をいただきまして、大変ありがとうございます。私は、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会の会長としまして、昨年末に緊急承認制度の方向性に関する取りまとめを行いました。また、現在、東京医科大学茨城医療センターの病院長といたしまして、新型コロナウイルス感染症への対応等に日々従事しております。ここでは、本改正案に賛成の立場から、主に三点、緊急承認制度の必要性と基本的考え方、緊急承認制度の運用基準、そして電子処方箋についての考え方等を申し上げたいと思います。まず、緊急承認制度の必要性と基本的考え方についてでございます。緊急時の薬事承認の在り方につきましては、昨年十一月から三回にわたり制度部会を開催し、医療関係者や製薬企業、学会、薬害関係団体の方々など、様々なステークホルダーの委員から御意見を伺い、緊急時の薬事承認制度の方向性について取りまとめを行いました。導入するに当たって、基本的な考え方といたしましては、国民の生命と安全を守る観点から、緊急時におけるリスクとベネフィットを比較考量した上で、我が国の薬事承認について制度的観点から検討を行う必要があること。米国やEUでは緊急時において医薬品の供給を許容する制度が存在することなどに照らし合わせて、我が国においても緊急時の薬事承認制度を整備していく必要があると考えられること。他方、緊急時であったとしましても、安全性は通常の薬事承認と同等の水準で確認することを前提とした上で、有効性については、緊急時に時間的余裕がなく、多数の患者さんを対象とした十分なエビデンスが得られる検証的臨床試験ではなく、例えば、探索的な臨床試験成績等によって、推定される有効性に比して安全性が許容可能であり、医薬品、医療機器等としての使用価値が認められる場合には、承認を可能とすることが考えられます。以上のような整理を行っております。今回の新型コロナウイルス感染症に関しましては、私自身、医療現場から見ておりましても、国民一人一人が医学的に合理的な予防的行動を取り、ワクチン接種、治療薬の開発と臨床導入が徐々に進み、重症化や死亡率は明らかに低下してまいりました。しかし、収束にはもうしばらくの時間が必要と思われます。今後ともこのような有事がいつ起こるか分からない状況下で、将来への備えとして、本改正法の速やかな成立、施行をお願いいたします。次に、緊急承認制度の運用基準について申し上げます。本改正法では、安全性は確認し、有効性は推定で承認可能としております。この確認と推定の考え方についても制度部会で議論がございました。薬機法では、申請に係る効能又は効果を有すると推定されるものであることを有効性の推定といい、申請に係る効能又は効果が、有効性の推定に比して著しく有害な作用を有することにより医薬品等として使用価値がないと推定されるものでないことを安全性の確認といっております。審査プロセスでは、何よりも、透明性、公平性、国民への十分な情報開示が不可欠であります。本制度の考え方について、患者を含めて医療現場に分かりやすく伝えていくことが必要だという指摘も制度部会で何度もなされました。その際、そもそも、医療上の対応方法、治療やワクチンなどについては科学的に安全性が一〇〇%確認されるということはあり得ないということも含めまして、丁寧に説明していく必要があると思います。すなわち、リスクコミュニケーションを含めまして、幅広い周知広報をお願いできればと思います。次に、電子処方箋についてでございます。私が病院長を務めております東京医科大学茨城医療センターでは、急性期医療から慢性期医療までをカバーし、とりわけ大学附属病院としての高度な専門医療の提供を基軸としております。一方で、少子高齢化を背景に人口が減り始めたこの地域での医療提供の在り方、特に地域包括ケアへの関わりや総合診療の提供、研修の在り方は、重要かつ喫緊の課題となっております。私は、こういった課題の解決にはデジタル技術の活用が不可欠ではないかと考えております。コロナ禍により、オンライン診療、服薬指導の導入など、デジタル化のトレンドは更に加速しています。現在、政府で取り組んでおりますマイナンバーカードの保険証利用や電子処方箋システムの構築といったデータヘルス改革は望ましい方向と考えております。特に、電子処方箋につきましては、処方、調剤情報のリアルタイムでの情報共有、医師と薬剤師間のコミュニケーションの促進、重複投与等の抑制、データ入力の省力化といった、患者、医療機関、薬剤、それぞれにとってメリットがある仕組みであります。できるだけ多くの医療機関、薬局に導入されることで、その効果が高まり、確実になると思います。来年一月運用開始に向けて、政府におかれましても、丁寧な周知広報やシステム改修支援など、御支援いただきたいと考えております。最後に、医療データ連携について意見を申し述べさせていただきます。今回のコロナ禍において、医療データ連携の必要性について語られることが増えたように感じます。私が座長を務めた制度部会においても、ワクチンの市販後安全対策について、自治体の予防接種データベースとなぜひもづけができていないのか、デジタル技術により、もっときめ細やかなフォローアップができるのではないかといった指摘もありました。政府におかれましては、緊急承認制度の創設等様々な機会を活用して、リアルワールドデータの更なる活用について取り組んでいただくようお願いいたします。英国では、国主導で医療情報の標準化や連携が進んでおり、病院や一般医といった多くの医療機関での情報連携が可能となっております。米国でも、VSDというワクチンのモニタリングシステムがありまして、CDCと全米にある九つのマネージドケア組織のネットワークで九百八十万人の国民をカバーして、ワクチンの接種歴や医療機関の受診歴等に関する電子情報を集約して、ワクチンの接種者と非接種者における有害事象の発生率を比較することが可能となっております。他方、日本は、世界の中でも比較的、個々の病院での電子カルテ導入が行われましたが、その標準化や横の連携は大きく遅れており、情報共有が困難な要因となっております。将来的には、電子カルテ情報がマイナンバーカードを通じて関係者間で情報共有できるような仕組みができれば、本人同意を前提として様々な用途活用ができるようになり、日本の医療サービスの向上、創薬イノベーションの強化、患者の安全性強化につながるものと考えております。以上でございます。今回の改正法案に対する私の認識でございます。御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)

○橋本委員長 ありがとうございました。次に、高田参考人にお願いいたします。

○高田参考人 コロナ自宅放置死遺族会共同代表の高田かおりと申します。よろしくお願いいたします。昨年の八月、第五波のさなか、単身で沖縄で在住していた私の弟が新型コロナに罹患し、必要な医療を受けられず、他界しました。弟は、十年前に沖縄に移住し、飲食店を経営しておりました。当時、感染状況が悪化してお店は休業しておりましたが、地元の人や観光客の人がたくさん来店していただけるお店でありました。弟は、八月五日、陽性が判明し、その後二日間、保健所からの連絡は取られず、八月八日、保健所の方が自宅を訪問したところ、ベッドに横たわった状態で、死亡し、発見されました。自宅には八月六日が賞味期限の総菜が腐敗して残っておりました。誰にもみとってもらうこともなく、大丈夫ですかという声もかけられず、本人もどうしたらいいのかも分からず、亡くなっていったのだと思います。また、本人は体調が悪く、本当にしんどくて、電話すら、どこにかけてもいいかも分からず、亡くなっていったのかもしれません。コロナに感染したという怖さと孤独の中で息を引き取ったんだなと思うと、本当に胸が締めつけられます。私は、保健所が訪問するまでの丸二日間何もしてもらえなかったことは、療養死ではなく放置死だと思っています。弟が死亡した当時、コロナが国内で感染確認されてから既に五百日以上が経過していました。第五波にまでなってなぜ必要な医療とアクセスできなかったのかという、やり場のない悲しみと憤りがありました。まだコロナ感染症の薬もなく、治療法が確立されていない中、弟の死を無駄にしたくありませんでした。去年九月に、さいたま市で自宅療養中に必要な医療を受けられず父親の西里昌徳さんを亡くされた西里優子さんと出会い、遺族会を立ち上げました。会には、保健所と連絡が取れず、家族が療養先に見に行くと亡くなっていた事案、目の前で容体が急変し、何もできないまま呼吸が止まり、冷たくなっていく様子を目の当たりにした事案、連絡を取っていた遠く離れた独り暮らしの家族に何もできないまま死亡した状態で見つかった事案の遺族が数組所属しております。また、第六波で自宅療養中に亡くされたお子さんの遺族もいらっしゃいます。自宅放置死遺族会という名前を一見、見て、放置という強い言葉を使っていることに違和感を覚えられる方もいらっしゃると思います。しかし、家族を亡くした側からすれば、自宅で必要な医療を受けられず、アクセスできない状態で亡くなった状況は放置です。会では、主にオンラインで遺族同士が交流し、悲しみを分かち合うほか、自治体ごとに対応や遺族への対応が異なっていることも分かり、情報交換の有用性を感じています。また、現在、医師や弁護士にも手伝っていただきながら、個別事案の検証を行い、改善点についても今後発信できていければなと考えております。ワクチン接種も進み、一度はコロナが収束したかのようでしたが、年初からの第六波では、オミクロン株が猛威を振るいました。第六波では、私の友人が感染し、その友人も独り暮らしで、持病が原因でワクチンが未接種でした。症状が出た日は休日で、検査もなかなか受けられず、陽性の結果が出てからも、自宅で独り、保健所と医師の電話を待ちました。保健所からの連絡では、ワクチン未接種だと重症化するおそれがありますね、十日間は外に出ないでください、具合が悪くなったら自分で病院を予約して行ってくださいとだけ伝えられました。全身の状態がとても悪かったのですが、陽性が判明してから三日後にようやく、電話し、医師とつながることができ、病院に行けたそうです。第六波では、自宅療養者がたくさんいらっしゃいました。今もなお、いらっしゃると思います。この友人のように、ほかにも、なかなか医療にたどり着けず、不安の中で療養された方がいらっしゃるのではと思っております。また、発症後一か月近くたちますが、非常に、起き上がれないぐらいの後遺症に苦しまれております。保健所や医師、医療関係者の方々、最前線の方々を責める気持ちはありません。逆に、昼夜問わず精いっぱい御対応いただいており、感謝しております。特に保健所には、波が来るたびに負担が集中し、職員の方も疲弊されているのではないかと思います。会に関わっていただいている医師の方に、先生みたいなクリニックの先生が近くにいてたらということを伝えると、いや、それだけでは解決しないと。例えが正しいかどうか分からないですが、水害に例えると、小雨であれば、傘を持って、かっぱを持って助けに行けるし、何かの手だてはある、ただ、災害級になると、僕一人の力ではできることは本当に限られているということをおっしゃっていました。第六波でも、自宅で多くの方が亡くなられたという報道も目にしております。第五波までの検証がされていないことで同じことが繰り返され、第六波になっても改善はまだ行われていないのだと感じています。私は、今まで、体調が悪くなったり具合が悪くなったら医療とつながれるのが当然だと思って生きてきました。制度や仕組みをつくるのがどれだけ難しいのか、私には分かりません。なかなか医療につながれないだけでなく、PCR検査から医療と、継続的な治療が全て分断されているように感じています。このようなことを言うと、コロナ禍だから仕方ない、遺族だからと言われるかもしれませんが、ただ、適切な医療に簡単につながれない状況がある今、起こり得る状況を想定していただいて、速やかに必要な人が医療とつながれる準備はできなかったのかと思っています。医師とつながらなければ、インターネット等の情報で自己判断となります。当然、基礎疾患、体質などで感染後の状態は個々によって違うと思います。専門家の判断ではなく、真偽不明の情報による個人の判断に頼るのは、とても危険なことだと思っております。第六波では、感染者数や死者数がこれまでになく多い日が続きました。その状況に社会が慣れてしまっているのではないかなとも感じています。コロナだから仕方がない、そういう言葉さえ聞こえてきます。これでは、早期に医療とつながれれば助かったかもしれない命が報われません。第六波では、お亡くなりになられる方が百人を超える日も珍しくありませんでした。人は物や数ではなく、当然、その百人お一人お一人に人生があり、悲しむ家族、友人がいます。私は、昨年五月、第四波のときに母をがんで亡くしました。母は、コロナで医療が逼迫している中、運よく県をまたいで入院できましたが、なかなか医療にたどり着けませんでした。ほかの疾患の方も、コロナで医療が逼迫し大変な状況なのは、身をもって重々理解しております。一部自治体ではもう第七波に入ったという報道も目にしております。今後、全国的に感染者が増えたときに、感染したら早い段階で、そして緊急時に医師につながれ、適切な医療を受けられる状況への改善を願っております。コロナ自宅放置死遺族会、高田かおり。ありがとうございました。(拍手)

○橋本委員長 ありがとうございました。次に、梅田参考人にお願いいたします。

○梅田参考人 新時代戦略研究所の梅田でございます。この度は、意見表明の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。現在の特例承認制度においては、主要な外国で承認されていることが要件となっているため、国内での開発が先行した医薬品等は該当せず、これらを適切かつ迅速に使用するための新たな法的根拠、緊急承認の制度が待ち望まれておりました。その意味で、多くの皆様方の努力で今回薬機法が改正され、この仕組みが導入されることを大変意義深く感じております。日本で先行開発された医薬品は、日本だけでなく世界の医療にも広く活用される可能性があります。改正法の狙いを真に生かし、この可能性を追求していくために、世界の経験から学び、今後日本としても取り組んでいくべき課題として五点、お話しさせていただきたいと思います。第一に、サイエンスの重要性です。承認の判断は、緊急時であったとしても、あくまで科学的根拠に基づいてなされる必要があります。そして、審査のプロセスは透明性が担保されていなければなりません。現在、最も頑健な科学的根拠とされるのは、統計学的に適切にデザインされたランダム化比較試験です。特に、プラセボ対照試験の実施に際しては、プラセボ投与群が不利益を被らないよう、倫理的な妥当性を追求することも求められます。高い科学性を担保するにはどうしたらよいか。まず人材、そして資金であろうというふうに思っております。欧米の企業やアカデミアは、こうした科学性の高い臨床試験や医師主導治験を国際的規模で計画し、遂行できるだけの専門性を持った人材そして資金を有しており、今回、ファイザーやモデルナのワクチンの米国における緊急使用許可、EUA、欧州における条件付製造販売承認、CMA、我が国における特例承認等の根拠となったランダム化比較試験は、感染者数の多い北米、南米、南アフリカ等の多くの国々の医療機関で迅速、適切に実施されました。日本も、このように国際的なランダム化比較試験を主導できる人材を育成し、平時からより多くの日本人が臨床研究、治験に参加できるような仕組みを構築するなど、臨床研究、治験の基盤を整備する必要があります。資金については後ほど触れます。次に大切なことは、指導する行政の迅速性、柔軟性です。米国において緊急使用許可、EUAを与えるかどうかの判断は、適切に管理された臨床試験の結果を含め、入手可能な科学的根拠の全てを鑑みてなされます。新型コロナウイルスワクチンについては、FDAが速やかにガイドラインを発出し、第三相プラセボ対照ランダム化比較試験で示す必要のある有効性、安全性を明示しました。これは弾力性のある制度で、FDAが案件ごとに裁量を持って判断しています。バイオテロに対する治療薬の場合には、第二相臨床試験で許可した例もあったと聞きます。次に、審査プロセスの透明性を担保するにはどうしたらよいか。米国では、緊急使用許可の判断が、政治的思惑等、サイエンス以外の影響を受けないよう工夫がなされています。例えば、新型コロナウイルスワクチンの緊急使用許可において、ワクチン及び関連生物製剤に関する諮問委員会の議論は、全てユーチューブを用いて公開されていました。欧州の条件付製造販売承認であるCMAも同様に、科学的根拠と透明性を大変重視しています。CMAは、通常必要とされるよりも少ないデータでアンメット・メディカル・ニーズを満たす医薬品を承認する制度ですが、医薬品やワクチンのベネフィットがあらゆるリスクを上回ることがデータをもって客観的に示されなければ認められません。さらに、CMAが得られた後、企業は、あらかじめ定められた期限内に、進行中又は新規の試験から得られるデータを全て提出することが求められます。こうした制度として、科学性、透明性を担保するとともに、当然ながら企業に対しても高い倫理観を持って研究開発に取り組むことが求められており、新型コロナウイルスワクチンの開発に際して、欧米の製薬企業九社のCEOは、科学、そしてワクチンを接種される方の安全と福祉を最優先にするという誓約に署名しています。第二に申し上げたいのは、緊急事態に対応して動かす特別な仕組みではなく、平時から画期的新薬を迅速に自国及び世界に届けるための制度を整備しておくべきということです。平時からの積み重ねが大事です。米国は、平時においても画期的な新薬を迅速に患者に届けることを目的とした法律、トゥエンティーファースト・センチュリー・キュア・アクトなどを導入しています。そのような政府の方針の下、FDAには、平時から既存の規制やガイダンスにとらわれることなく、その時点で得られている科学的根拠に基づき必要な対応を柔軟に判断する専門性とリソースを備えています。こうしたことがあったがゆえに、例えば、新型コロナウイルスワクチンの研究開発において、一部の非臨床試験を臨床試験と並行して実施すること、第一、二、三相試験を一つの試験として実施すること、限られた製剤の安定性試験データに基づいて薬剤の有効期間を設定することなどが判断されました。FDAと開発企業は、随時、科学的、倫理的に最善の方法を協議し、速やかに合意しており、その要点はガイダンスとして公表されます。第三に、臨床試験における有効性、安全性をリアルタイムで評価できるリアルワールドデータの整備が必要です。リアルワールドデータの重要性については、日本でも随分以前から議論されてきました。これが、今回のパンデミックでも海外では威力を発揮しています。特例承認された医薬品であるなら、海外実臨床下での有効性や安全性に係るデータが存在します。しかし、パンデミック時などに緊急承認される医薬品では、海外実臨床下でのデータは存在せず、承認時までに得られる臨床試験データだけでは評価が困難な項目があります。例えば、重大ではあるがまれな有害事象、長期的な追跡データ、臨床試験における評価集団よりも多様な実臨床下の集団での有効性などです。そこで、承認後に企業により追加提出される臨床試験データに加えて、国内実臨床における有効性、安全性をリアルタイムに評価することが求められます。米国や英国、イスラエル等では、実臨床における新型コロナウイルスワクチンの有効性、安全性の評価に利用できるリアルワールドデータがあり、リアルワールドデータに基づくエビデンスをアカデミアや政府が速やかに公表しており、企業との共同研究にも利用されています。今回のコロナ禍でも、イスラエル政府とファイザーの取組は度々報道されました。米国では、国の機関である疾病予防管理センター、CDCやFDAが医療関係者から直接有害事象等の報告をオンラインで受けるワクチン・アドバース・イベント・リポーティング・システムや、オンラインでデータを収集して仮説を検証して因果関係を評価できるワクチン・セーフティー・データリンク等を構築、管理し、タイムリーかつ積極的にワクチン接種後の安全性を監視しています。欧米では、変異株等に関するデータもアカデミアが速やかに解析し、公表論文や査読前のプレプリントで発信しています。そこで、これらのエビデンスを、変異株に対する有効性の評価、接種年齢をどの範囲にするべきか、拡大するのか、限定するのか、追加接種の要る、要らない、接種間隔の決定、安全性の注意喚起等の行政判断に活用しています。実臨床データに基づく臨床試験結果の一般化や、まれに起こる重大な副作用情報の収集と評価等は、パンデミック時に限らず平時も重要であるため、日本でもリアルワールドデータを活用できる体制や基盤を整えることが有用かつ重要です。現在、緊急時の薬事承認制度の議論の中で、主に市販後の安全対策の観点からリアルワールドデータを活用することが検討されており、大変期待しております。四番目に、緊急時の医薬品安定確保、迅速使用のためには、品質に関する制度の見直しも重要です。この点、国際規制調和や共同審査、相互認証の枠組みを推進すべきと考えます。需要が極めて高いワクチンを日本で開発し、世界各国に安定供給することを考えると、製造所の追加を含む製造能力の拡充、製造方法の改善、原材料の確保、製剤の改良を行う必要があります。その都度、各国の規制当局による審査、承認が必要となります。企業、規制当局双方の負担を軽減するために、規制当局間の品質に関する共同審査、承認、査察結果の相互認証、それを可能とする法整備を進めるべきです。国家検定について、今回、迅速化の特例措置の一部として特例承認制度と同様の措置がされる方向と理解しておりますが、国家検定は、省略あるいはPMDAへ移管することも検討すべきです。ワクチンには、企業による出荷判定に加えて、各国で国家検定が課されています。国家検定は、安全、有効で品質が均一なワクチンを国民に届けることを目的として行われていますが、これは、平時に従来の鶏卵等を用いて製造するワクチンを対象として行うことを想定しています。緊急時や、メッセンジャーRNAワクチンのような従来のワクチンに比べ品質が均一なワクチンを対象とすることは想定しているものではありません。米国では、緊急使用許可の対象ワクチンに対しては、国家検定が省略されることになっています。日本も、緊急時のみならず平時であっても、科学的根拠に基づき、国家検定の要る、要らないや、PMDAでの承認時の審査に組み入れるなどの方策を検討すべきと考えます。最後に、健全なマーケットを準備することの重要性についても触れておきたいと思います。日本が重要な治療薬やワクチンを世界に先駆けて開発していくためには、開発、承認、製造等の条件整備とともに、市場としても魅力あるものとなって投資が集まってくることが重要です。医薬品市場が世界的に安定成長している中で、日本では、度重なる薬価制度改革から、将来の見通しの大変立ちにくい状況になっています。高齢化の中で社会保障費負担が大きな財政問題となっていますが、財政との調和を図りつつ、日本から画期的な医薬品、ワクチンが開発されやすい薬価制度、市場を用意することは、とても大切なことであると考えております。以上でございます。ありがとうございました。(拍手)

○橋本委員長 ありがとうございました。次に、荒井参考人にお願いします。

○荒井参考人 日本製薬団体連合会の荒井でございます。本日は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案に対する日薬連の考え方を御説明する機会をいただきまして、誠にありがとうございます。私からは、本改正案に賛成の立場から、主に三点、一つ目は緊急承認制度の創設、二つ目として安全対策、三つ目としてGMP調査など各種特例措置についての考え方を申し上げたいと思います。まず、緊急承認制度の創設についてです。製薬企業は、グローバルな競争環境の中で、どうしたら必要とされる方に迅速で的確にお薬を届けられるか、そして適切に使用いただけるかということを日々考えております。いろいろな要因はありますが、日本で新薬を開発、供給するため、他の先進国と同様の予見性の高い薬事承認制度を持つことが国際的な競争環境下では大変重要だと考えております。私は、昨年の厚生科学審議会制度部会において、米欧の緊急時の薬事審査制度を参考にしながら、本制度案についての議論に参画してまいりました。今回の緊急承認制度の創設は、まさに日本が米欧と比肩する薬事制度を有することになると大変評価しております。新型コロナウイルス感染症では、海外で既に承認、許可されている医薬品が日本で現行の特例承認制度を使用して実用化されていますが、国内での治験の要否の検討を行うなど、承認審査のためのデータ収集や手続が慎重に行われ、一定の時間を要したことは御承知のとおりです。医薬品等の承認に当たっては、人種差や医療環境の違いなど様々な要因を考慮する必要はありますが、急速に拡大する感染の中で、この緊急時に、どの程度厳密に、外挿ではなく日本人のデータを確認する必要があるかということは、緊急時のリスクとベネフィットを踏まえ十分考える必要があるというふうに思います。また、特例承認制度は、日本と同水準の薬事制度を有する国の承認、許可が前提です。例えば、日本あるいはアジアなど特定の地域だけでの感染症流行で、欧米で開発がなされない場合、通常の制度での開発、申請、承認となり、供給まで一定の年月が必要です。したがって、日本国内で開発が先行した治療薬やワクチンを早期に国民に供給可能とするために、緊急承認の枠組みを設置していくことは大きな意味があると考えています。対象範囲も、ワクチンを含む医薬品、診断薬、医療機器、再生医療等製品と広く取られています。より精密又は簡便な診断薬、緊急時の医療環境にあっても投与しやすいデバイスなど様々なものが開発される可能性もあることから、法律に記載されていないため適用除外ということにならないよう、緊急時であることに鑑み、法律では広く制定し、政省令や運用通知で細かい規定を設けるなど、柔軟に対応できるようにすることが肝要です。開発に当たっては、これまでも、規制当局と対面、オンラインを通じて開発計画を相談させていただきながら進めてまいりましたが、今回想定されている緊急時というのは、バイオテロや核など様々な有事が想定されており、有事であればなおのこと、規制当局と製薬企業が開発から市販後までシームレスに、かつ迅速に相談できる環境を構築しておくことが重要と考えています。例えば、行政側であらかじめ緊急承認制度の運用基準においてお示しいただくなど、平時からの産業界とのコミュニケーションを一層密にしていくことが有事の備えにもなると考えております。加えて、デジタル技術の飛躍的な進展に伴い、様々な方法で取得されたリアルワールドデータを承認審査の中で使えるようにしていくことが重要です。先行して欧米では承認への活用事例が出始めていると聞いていますが、今後、日本が世界に先駆けてリアルワールドデータによる薬事承認をリードしていく意気込みで取り組んでいくことが重要と考えています。二点目は、安全対策について申し上げます。安全な医薬品を患者の皆様にお届けするのは、製薬企業として当然の責務です。緊急承認制度により、仮に平時よりも少ない治験データで薬事承認が可能となったとしても、安全性をおろそかにすることは当然許されません。少ないデータだからこそ、有効性、安全性共に、より一層の細心の注意を払って治験に取り組んでまいる所存です。申請後も並行して検証試験を実施するとともに、市販後には、安全性監視策として、市販後調査、医師、薬剤師、患者様からの自発報告を受け、さらにリアルワールドデータの使用も選択肢の一つとして、多角的に情報収集し、解析し、審議会での専門家による評価もいただきながら、タイムリーに安全対策上必要な注意事項を添付文書の使用上の注意に反映し、医療現場に伝達し、最小化を行います。他方、緊急時には、医療機関でないところでの使用や医療従事者のリソースの逼迫もありますので、平時のように企業の医薬情報担当者による安全性情報の収集は困難となることも予想され、十分な配慮が必要です。今後、品目特性、使用状況を考慮した上で、安全管理情報の収集の仕方について官民で一緒に考えていきたいと思います。将来的にリアルワールドデータを一層活用していくことは、安全対策の更なる強化の観点から重要です。緊急時に、同時に多くの国民、患者様に投与されることが想定されるため、例えば、現在のマイナンバーカードを活用した医療データ連携を更に進めるとともに、様々な患者情報データベースを連携して、市販後安全対策に有効活用していくことも必要ではないかと考えております。加えて、緊急承認制度では安全性の確認を前提としておりますので、健康被害が発生した場合には、速やかに、独立行政法人医薬品医療機器法等に基づき救済を行うことも重要だと考えております。三点目に、本改正案では、GMP調査や国家検定、容器包装等への表示を承認の要件としない特例措置が設けられております。GMP調査等の各種調査は、一定の時間を要し、審査期間短縮の律速にもなるため、これを承認要件としないことで、供給の早期化につながります。ただし、企業では各種基準を遵守して実施し、いつでも調査可能な状況を整備しています。昨今、品質の問題が相次いで報告され、医薬品の安定供給に支障を来すとともに、業界全体の信頼を大きく失墜することとなりました。日薬連としましても、このような特例措置を設けていただく以上、一層の緊張感を持って、ガバナンス、コンプライアンスの徹底を図り、国民、患者様の信頼を回復できるよう、業界一体となり品質確保、安定供給に取り組んでいく所存です。最後に、製薬業界の使命は、有効で安全な医薬品を創出すること、人々の生活に欠かせない高品質な医薬品を製造し、安定供給を維持することです。今般、新型コロナ感染症において、国産ワクチン、治療薬を期待する多くの声を頂戴しておりまして、政府から多大なる御支援をいただきながら、製薬企業は懸命に開発に取り組んでおります。日本が世界に冠たるパンデミックからの救い手として、ひいては真の意味での健康大国となる礎として、製薬業界は貢献していかなければならないと考えております。生命科学の進歩に加えて、ここ数年のデジタル技術の進歩は特筆すべきものがあります。これらの技術は、創薬から臨床開発、薬事承認、製造、流通、情報収集、提供という医薬品のバリューチェーンを一層高度なものに革新し得る可能性を持っています。一方、医薬品のバリューチェーンのエコシステムの枠組みは、民間だけで構築できるものではなく、官民一体となって構築していく必要があります。本改正案はそのための第一歩となるものであり、できるだけ早い施行を期待しておりますので、よろしくお願いいたします。以上、簡単でございますけれども、今回の改正法案に対する私どもの認識でございます。御清聴、どうもありがとうございました。(拍手)

○橋本委員長 ありがとうございました。次に、水口参考人にお願いいたします。

○水口参考人 事務局長をしております薬害防止のためのNGO、薬害オンブズパースン会議の活動を踏まえ、緊急承認制度について意見を述べさせていただきます。基本的な見解は配付いたしました薬害オンブズパースン会議の意見書に記載しておりますが、要点について、本日、お手元のスライドを用意いたしましたので、これを御覧になりながらお聞きいただければと思います。私どもの緊急承認制度に関する意見の趣旨は、四点でございます。まず初めに申し上げたいのは、緊急事態を想定した新しい制度を創設する必要性自体を否定するものではないということです。しかし、新制度を創設するに先立って、既存の早期承認のための制度の運用の問題点の批判的な総括が必要である、これなくして新制度を創設することには賛成できない、これが意見の第一点目です。早期に承認された問題のある医薬品として、イレッサ、ゾフルーザ、ステミラックなどを挙げております。また、最近の例では、アビガンをめぐる問題があります。アビガンは、季節性インフルエンザの治療薬として承認申請されましたけれども、有効性を示すことができませんでした。他の抗インフルエンザウイルス薬が無効又は効果が不十分な将来の新興のインフルエンザ感染症に備える医薬品として、流通に置かないという承認条件の下で、備蓄用として異例の承認が与えられたものです。承認当時の審議会では、委員から、季節性のインフルエンザに有効でないものがなぜ病原性の高いインフルエンザに有効なのか不明だとする指摘が相次ぎましたが、部会長が、保留という手も考えていたのですけれども、いつまで保留したらデータが出るか分からない、流通に置くわけではありませんのでと述べて、承認に至ったわけです。ところが、御承知のように、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言発令後の記者会見で、首相が、観察研究の枠組みの中で、希望する患者への使用をできる限り拡大すると述べて、厚生労働省もこれに沿った通知を出しました。結果、一万五千人以上に使用されるに至っています。しかし、公表されたデータからは、軽症者や六十歳未満の致死率がアビガン投与群の方が高いことが示されております。また、催奇形性のために禁忌とされている妊婦の使用例も出てしまいました。一方、新型コロナウイルス感染症に対する有効性については、その証明に重ねて失敗し、本年三月末には治験組入れが中止となりました。投入された税金は、令和二年だけでも、購入費百五十九億、設備費四十億です。こういうことが起きているわけですね。そして、関連する問題として、申請中の新型コロナウイルス感染症の治療薬をめぐる問題についても指摘しておきたいと思います。この申請薬については、開発した企業の社長が国会議員の先生方へのロビーを行い、これを受けて、大臣の経験者がツイッターで、効果が他を圧倒していますなどと期待を語りました。しかし、プレスリリースには、抗ウイルス効果はあるけれども、症状改善効果において主要評価項目を達成できなかったと明記されているわけです。それでも、企業は条件付早期承認制度を希望して申請し、緊急承認制度も選択肢の一つとする報道もあるといった状況にあります。アビガンは早期承認の制度を使ったものではないんですけれども、そういう制度がなくても、通知一本でこういうことが起きるということなんですね。アビガンのこのような批判的な総括もないまま、日本発の新薬となると、期待の余り前のめりになる、そういう環境の中で新しい制度が創設されることに危惧を抱かざるを得ない、これが批判的な総括がまず不可欠であると申し上げる次第です。私どもの意見の趣旨、第二点目は、承認ではなく使用許可にするべきだということです。EUAは使用許可にしております。承認薬は、国によって有効性と安全性を確認したものであるというのが国民の理解です。しかし、新制度において、有効性は推定でしかありません。また、安全性確認は通常の承認と同様に行うと説明されていますけれども、第三相試験の結果を待たずに市場に出すわけですから、安全性確認において限界があるということは明らかだと思います。それなのに承認薬とすれば、国民の誤解を生みます。特に、命に関わる緊急事態においては、患者の方々や医療現場に過剰な期待が生まれやすいということは経験的に明らかなのです。現にアビガンでさえ、使ってほしいという患者さんが多くいて、強く求められて医師が断れない事態が生まれたと聞き及んでおります。また、日本は、承認薬となると、これを取り消すということは大変ハードルが高いのですね。現に既存の早期承認のための制度において承認取消しとなった医薬品は一つもありません。一方、米国のEUAでは、許可を与えた後、オミクロン株の派生型に対しては有効性が低いということが分かったとか、追加で行われた大規模な臨床試験の結果を見るとメリットがリスクを上回るとは言えないといったような理由で、複数の医薬品の使用許可が取り消されています。その中には日本が特例承認した薬も含まれております。また、制度的にも、使用許可の方が、緊急事態の期間に限定して、例外的な対応であるということが明確で、理にかなっているのではないかと考える次第です。私どもの意見の第三点目は、仮に、使用許可ではなく承認を与えるという緊急承認制度、これを採用するとした場合に、現在の法案についての具体的な意見ということで申し上げます。意見は四点ございますけれども、本日はこのうちの二点のみ説明させていただきます。最初は、適用要件の明確化です。これには二つあり、一つは緊急事態についてです。厚生科学審議会では、米国EUAと同様、パンデミックとか原発事故、テロの緊急事態を想定した制度であるとして審議をしてきました。しかし、条文は、特例承認と同じで、非常に抽象的です。有効性について推定のみで承認を与えるという極めて重大な例外的制度ですから、緊急事態という危機的な出来事において適用がされるのだということを明確にするため、どのような場合かを具体的に例示し、より適用要件を明確にするべきであると考えております。適用要件の二点目、明確化の二点目は、代替性をめぐる問題です。法律案には、「当該医薬品の使用以外に適当な方法がないこと。」とありますけれども、この解釈について、厚生労働省は、他の複数の医薬品が承認されている状況において、治療の選択肢を拡大し、より安定的な供給に資する場合ならば適用が可能である、このように説明しています。確かに、既に承認薬があっても、供給が絶対的に不足している場合とか、禁忌とされる特定の集団があるといったような場合などは、適用が可能とすべき場合があり得ると思います。しかし、治療の選択肢の拡大、より安定的供給という言葉が独り歩きすると、不適切な拡大適用を招くおそれがあるということが気になります。具体的にどういう場合が想定されているのか、この法文の解釈について法案の審議の過程で明らかにしていただきたいと考えております。次に、期限内に行う正式承認に求める資料の件です。これは非常に重要な論点です。現行法では、十四条三項で臨床試験の試験成績を求めています。これに対して改正法では、これを試験成績ではなく、使用成績と規定するとしています。厚生労働省は、通常承認と同様に第三相臨床試験の結果の提出を求めるけれども、例外としてリアルワールドデータの提出を認める場合があるとしております。しかし、リアルワールドデータは、安全性確保のための探索的なシグナル検出ですとか、安全性確保のために適切に利用すれば非常に有用ですけれども、正式承認のための有効性の検証において臨床試験に代わるものではないと考えております。期限内の資料提出を経て正式承認されれば、その効果は通常承認と同じです。したがって、第三相試験の結果の提出を求めるべきです。そうでなければ、本当に有効な医薬品なのかどうか不明なまま承認薬として市販され続けるということになります。厚生労働省は、例外的にリアルワールドデータの提出を認める場合としてパンデミックが急速に収束して臨床試験の実施が困難な場合を想定しているようですけれども、パンデミックの収束は例外的対応の必要性をむしろ失わせるものであり、それがなぜ特別扱いが必要であるのかということが不明であります。医薬品は、一度市販されてしまうと、もうプラセボ対照の試験を組むことは倫理的に難しく、真の有効性を評価することが困難となります。リアルワールドデータであれば市販後であっても有効性が評価できるというものではないと考えております。緊急承認制度では、緊急承認申請の時点で第三相の臨床試験が走っていることが結果として求められていくことになると考えております。最後が、安全対策と救済制度の適用についてです。緊急承認制度は、知見の集積、有効性の検証などが不十分なまま承認を与える制度ですから、市販後安全対策と救済の適用も、それにふさわしい対応が必要であると考えます。この点で、やはり知見の集積が不十分なまま特例承認した新型コロナウイルスワクチンが問題を提起しております。新型コロナウイルスワクチンについては、審議会において死亡報告の九九%以上が情報不足により評価不能とされ、安全対策に生かされず、救済制度においても死亡例の救済事例はありません。情報不足というのは、当初、患者の状態についての情報が不足しているのかというふうに理解していたんですが、しかし、そうではなくて、経過が分かっていて、解剖されていても情報不足なんですね。つまり、その解剖した結果とワクチンの関連性について判断するための知見の集積がない、そういうことを情報不足といい、それによって因果関係評価が不能である、このように言っているわけです。知見の集積がないことを織り込み済みのこととして、それを前提として承認を与えたのに、安全対策や救済では知見の集積がないことを理由に棚上げしてしまうというのはバランスを欠いた対応であると考えております。厚生労働省は、安全対策にも集団の傾向として生かしているとか、救済制度は因果関係が否定できないものも救済していると説明していますが、これは実態の運用とは乖離した説明であると思います。緊急時の制度をどのように設計していくのか、バランスのよい制度を設計するというのは大変難しいことではありますけれども、どのような制度設計をする場合においても、透明性の確保、これが制度への信頼の基礎として不可欠であるということを最後に申し添えて、私の意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。(拍手)

○橋本委員長 ありがとうございました。以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。これより参考人に対する質疑を行います。質疑の申出がありますので、順次これを許します。松本尚君。

○松本(尚)委員 自由民主党の松本尚でございます。参考人の皆様、今日はどうもありがとうございました。まず、高田参考人のお話を伺いました。改めまして、医療システム、かかる非常時に医療がしっかりと機能するような仕組みをつくっていかなきゃいけないということ、それから、やはり本法案も含めて法律をしっかりと改善していかなければいけないこと、それから最後に、必要なときに必要な薬がしっかりと皆様の元に届くように人やそれから資金を投入していくこと、そういったことについて、立法府にいる人間として、そしてまた、私個人、医師として、しっかりと努めていかなければいけないということを改めて心したところでございます。弟様のお悔やみを申し上げたいと思います。さて、福井参考人にお伺いしたいんですけれども、冒頭、参考人は、リスク、ベネフィットのお話をされたと思います。私は、この薬機法の改正案、ある意味これまでの厚生労働省の政策よりもかなり踏み込んで、思い切った緊急承認制度というものを出してきたかなというのが、非常に個人的には考えているところなんですけれども、ある意味そういう点では評価をしているんですけれども。それについて、そういう位置づけ、考え方でよろしいか、そういう方向性で議論がなされていたかということをお伺いしたいんですけれども。
○福井参考人 緊急時のことでして、放置しておけばそれなりの疾病に罹患したり死亡したりする、背景のリスクが高い状態でのこれは話でございますので、そのことを常に頭に置きながら、ベネフィットの方も判断するということです。御存じのように、医療におきまして一〇〇%確実ということはほとんどございませんで、そこのところは、残念ながら、確率で考えざるを得ないというのが実情でございますので、そういう意味で、常にリスクとベネフィットを頭に置きながら部会では議論してきた、そういう経緯がございます。
○松本(尚)委員 ありがとうございます。このリスク、ベネフィット、要はトレードオフですよね。こういった考え方というのは、やはり、これから医療政策を進める上では非常に重要な部分だろうと思っています。私も医師として、やはり、医療というものは一〇〇%はないんだということで、国民の皆さんはどうしたって一〇〇を求めるのは正直分かるんですけれども、科学の場合はそうはいかない部分もありますから、そういったことを考えながらこの改正案が作られたということは、ある意味、非常に現実的なことではなかろうかというふうにも思っております。それから、この法案、安全性の確保は当然前提条件になっていると思います。そこで、可能性のある薬はどんどん拾い上げる、すなわち、効果が推定されるものが複数あれば、それをどんどん拾い上げていって承認をしていく。そして、その緊急承認の下で、効果を同時に判定しながら、途中でどんどんふるい落としていくというような、そういう運用の、この制度そのものの運用の仕方というのはありやなしやということをお伺いしたいんですけれども、いかがでしょうか。
○福井参考人 先生おっしゃるとおりでして、たとえ一旦承認したとしましても、多くの場合、並行して検証的臨床試験も可能であれば続けてほしいとは思いますけれども、もしそれが可能でない場合には、リアルワールドのデータを使ってでも評価を常にして、期待したような効果が得られない場合には、やはりそれは承認を取り消すということも当然考えられる、そのような報告書を私たちは作成いたしました。
○松本(尚)委員 ありがとうございます。あくまでもこれは緊急承認ということでございますから、使いながら、治験を並行して走らせながら、逐次評価をしていくということをしっかり担保することは必要だろうというふうには思っております。梅田参考人にちょっとお伺いをしたいんですけれども。治験のお話がございました。参考人は、たしか、治験の基盤を平時からしっかりつくっておくことが必要だということをおっしゃられていたと思いますけれども、私、この治験の過少性、日本では非常に、治験の数がなかなか集まらないという問題を持っておるんですけれども、この治験の過少性をどういうふうに解決していくかというのは、例えばメーカーさんの側から何かアイデアみたいなものがございますでしょうか。
○梅田参考人 ありがとうございます。今先生おっしゃられました、日本における治験の過少性ということの意味合いが測りかねているところはありますけれども。一つに、最近、日本において、新薬開発のための臨床試験そのものが、当然、アメリカは圧倒的に多いわけですけれども、そして伸びているわけですけれども、さらに、それに次いで中国が増えてきている、あるいは最近は韓国も伸びているという状況の中で、日本の臨床試験の数が停滞しているといいますか、伸びが非常に少ないという状況があって、これは放置しておけば、当然、先々にはまたしてもドラッグラグということにもなりかねないというようなことも想定される状況にある。これを、もし、治験の今の現状の過少性というふうに捉えて、これはどうしてそういうことが起こっているかということについて考えてみますと、一つの説明としては、一般的に、日本で、ある化合物の最初の治験を開始するという際には、それまでに評価した非臨床、あるいはその化合物の品質に関するデータが、日本でこれから試験を進めていくということに、規制当局の要件をしっかりクリアしているかというようなこと等を見ていく必要があるわけで、こういったことが、バーを越えられなければなかなか前に進まないという状況がありますし、最近、御存じのように、国際共同試験という形で、世界で同時に行う試験の中に日本もできるだけ入っていくということが、最終的に日本で世界に遅れずに製品を出していくということにつながるわけですけれども、そうしますと、日本で先ほど申し上げたようなことで要求されるようなことについて遅れがあったりしますと、あるいは確認しなければならないことがあったりしますと、どうしてもそこに入り込めないという、追加で、後にしなければいけないというような状況にもなってくるということがあります。国際共同治験に入る前には、少数でも、日本人での、ある程度の安全性等の確認をしておく必要があるというようなことがあったりします。ですので、こういったことを解決していくためには、それこそ平時から、そういうような、世界的に要求されるものと日本で要求されるものとの間のすり合わせというか、そういったことをしていって、できるだけ遅れることなく入っていけるようなことというような準備が必要であろうと思いますし、それから、恐らく企業の立場とすれば、日本で試験をしていくということが、先々、日本で使用する、日本でも販売するということにおいて、非常にマーケットとしての魅力がどうなのかというのは、当然、企業の開発意欲ということにもつながるわけですので、こうした点も、先ほど私、今触れましたようなことということも重要な要素であろうというふうに思っております。
○松本(尚)委員 ありがとうございます。今、治験のお話を少ししていただきましたけれども、この緊急承認制度そのものをいかにうまく生かすか、あるいは使わずに済むかというところもあるかもしれませんが、日本の治験の制度というものをもっともっとしっかりと固めていって、いろいろな人がちゃんと治験に参加して、回数、それからnの数ですよね、それが増えてくるということをこれから我々もしっかりと確保していかなきゃいけないなというふうに思っています。荒井参考人にちょっとお聞きしたいんですけれども、製造者側からの見方として、今回の緊急承認制度があるということによって、今、梅田参考人もおっしゃいましたけれども、メーカー側の意欲というか、こういう制度があるから、意欲、モチベーションというのは上がるものなのか、それとも、それは別個なものなのかというところは、ちょっと本音の御意見を伺いたいんですけれども。
○荒井参考人 御質問ありがとうございます。製薬企業の使命としては、よりよい医薬品をより早く患者様に届けることというふうに思っていますので、その観点からいうと、より早く患者様に届けられる、国民に届けられるということで、モチベーションは上がると思います。日本の企業、日本における外資の企業もそうだと思うんですけれども、世界に先駆けて日本で開発していくというところも、モチベーションの上がる一つの要因になると思います。
○松本(尚)委員 ありがとうございます。やはり、製薬メーカーがどれぐらいモチベーション高くやれるかということが、結局、どれだけこういった緊急承認とかのルールをつくっても、作る側のモチベーションがなければ全く我々の手元には届かないわけですから、そういったところでは、再三お話も出ましたけれども、人や資金の投入ということを私たちもしっかりと進めていきたいというふうに思います。最後に一つだけ、福井参考人の方から電子処方箋のお話がちょっとありました。電子処方箋の、私は救急医療をやっておったものですから、マイナンバーカードで、全てデジタル化してしまうと、全く身元も分からなくて、それから意思の疎通もできない人を、どうやってその情報を取り出すか、パスワードが分からないみたいなことがあるので、顔認証、指紋認証、いろいろあると思うんですけれども、顔も怪しいものですよ、病気になっていると。ですから、そういった状況になると、完全にデジタル化をしていることによって情報が取り出せないという袋小路に入る可能性があると思うんですけれども、そういった議論はありませんでしたか。
○福井参考人 部会では、必ずしもそのような個別のケースについてのディスカッションはなかったように思います。確かに、先生おっしゃるようないろいろな事例を、やはりこれから一つ一つ潰していくといいますか、対応策を考えていくという、そのような作業を続けていく必要があると思います。
○松本(尚)委員 どうもありがとうございました。では、私の質問を終わります。

○橋本委員長 次に、中島克仁君。

○中島委員 立憲民主党の中島克仁でございます。本日は、大変お忙しい中、五人の参考人には厚生労働委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。政府提出の薬機法改正案と、立憲民主党、我々が提出をしておりますコロナかかりつけ医法案を含むコロナ対策三法案の審議の参考人質疑ということでございます。あらかじめ時間が限られておりまして、全ての参考人に質問できないことを、先におわびをさせていただきたいと思います。私からは、高田参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。先ほどの陳述で、コロナ感染をされ、自宅で医療にアクセスできずお亡くなりになった弟様、その無念の思いと、そして行き場のない憤りを抱えながらも、二度とこのようなことを発生させないと、その思い、委員の方々、各会派に十分伝わった内容だったと私は思います。高田参考人は、同じ思いを抱える遺族の皆様や行政とも話合いをされておるということでございますが、現在、第六波が収束しないまま、第七波への懸念、予断を許さない状況で、自宅療養される方、この第六波では、二月の中旬、ピーク時には約六十万人、そして先週、そのピーク以後初めて二万人増え、現在、三十二万人の方が自宅療養されておるとも言われております。現在どのような自宅療養をされている環境、様々行政とも話合いをされている高田さんの立場から、現在の状況をどのように思われるか。また、昨年以降改善されていると思われる点等ございましたら、お教え願いたいと思います。
○高田参考人 私、皆さんのように専門家でもなく、難しいことは分からないです。ただ、やはり第五波から第六波を見て、医療アクセスに関してはかなり悪化、改善ではなく悪化をしているんじゃないかなと思います。現に、ほかの友人も、休日に八度五分の熱が出て、ただ、コロナ、オミクロンの症状を考えると恐らく罹患しているだろうということで、救急車も呼べず、近隣の病院に電話しても受け入れてもらえず、車もなかったので自転車で四十分かけて夜に行った友人もいます。なので、薬の開発や、医療、ワクチンの開発、感染予防対策をたくさん取っていただいているのは分かるんですけれども、このコロナというものの怖さと、どうしたらいいかが分からない状況を改善していただくには、やはり、医師と早くつながりたい、そこで、大丈夫ですよであったりとか、少し何かの医療が関われば全然また結果が違うのかなということを今見させていただいています。
○中島委員 とにかく医療にアクセスする、つながっていくということがこの第六波でも、今事例を挙げられておりましたが、今のお話を聞くと、政府もコロナ対策として対応されておるというふうなことでありますけれども、昨年の第五波、その前の第三波からいわゆる自宅放置死、まあ強い言葉でという話もございましたが、これは、改善されているというよりは、現在のオミクロン株、伝播力は強く、一方で軽症で済むかもしれないという状況の中で、全体の自宅療養される方の数が増えているとはいえ、状況はより複雑化し、むしろ悪化しているとも取れるということでよろしいでしょうか。
○高田参考人 今おっしゃっていただいたように、軽症で済むということが言われていても、やはり重症化していっている方もいらっしゃる中で、悪化していっていると思います。また、後遺症、友人ではすごく重たい後遺症になられて、そこで、もう後遺症は仕方がないということをお医者様から告げられると、絶望でしかないんですね。オミクロンだから家にいてくださいといっても、どう我慢していいかも分からない中で、本当にまだ何もかも確立されていない中で、どこを責めるわけではないんですけれども、ただ、何かとつながる孤独や、医療とアクセスするという仕組みはどうしても必要で、それがあれば、やはり、感染予防ももちろんですけれども、暮らしと命が守られるんじゃないかなということを強く思っています。
○中島委員 私は、やはり、どんなにいい薬が登場しても、そもそも医療につながっていなければ行き届かない、当然ですが症状は変化しますし、最初は微熱だった若しくは無症状だったけれども、その後症状が変化して、そのときに適切に適応する薬が行き届くという環境の整備が必要なんだというふうにおっしゃったのだと御理解しています。我々、コロナかかりつけ医法案ということで、いわゆるかかりつけ医という言葉、社会に氾濫しているわけでありますが、これを明確に定義をして、そして制度化する、そのことによって、事前に登録をし、そして、平時は健康相談、いざ濃厚接触、感染が確認された場合には確実に医療につながる。そして、同時に出している特定医薬品特措法案で、その場でその個別性に応じた薬が行き届く内容の法案を提出させていただいております。このかかりつけ医の制度化について、コロナ自宅放置死を防ぐという観点から高田参考人の御意見を賜りたいと思います。
○高田参考人 やはり、人それぞれ、基礎疾患があったりとか、抱えている状況、生活状況があると思います。一概に、コロナに罹患したら、ガイドラインというんですかね、十日間は家から出ないでください、何日目がピークですと。ある友人は、薬局で売っている薬、市販薬と処方できる薬は変わらないので、それで何とか対応してくださいと言われたりしています。それで回復する人はいいと思うんですけれども、やはり体に不安を抱えている方々もいらっしゃったりとか、ワクチンが打てないとか、小さいお子さんを含めて、かかりつけ医という形で、誰か、頼れる医療機関が、すぐにアクセスできて、あれば、やはり心強いし、放置という状態は防げると思います。
○中島委員 我々は、高田参考人を含む遺族の方とも話をしながら、このコロナかかりつけ医、これを明確にコロナ対策として、そして、先ほど、改善というよりはむしろ問題は複雑化しているのではないかということで、我々は提出をさせていただいております。岸田総理は、昨年、二度とこういう状況を招かないということの中で、今にあるわけでありますけれども、これは国民の皆様、まさに患者さんの立場での今日のお話だったと思います。最後に一点なんですが、是非、こういう機会に、政府に、若しくは我々は立法府という立場で、代弁する形、弟様、また遺族の行き場のない憤りを最後にお話をいただければと思います。
○高田参考人 やはり、先ほども申し上げたように、コロナだから仕方がないということを言われがちです。そして、コロナだけが病気ではないとも思っています。ただ、何が遺恨かというと、やはり医療につながれば、幾ばくか、遺族とすれば気持ちの落としどころがあったんじゃないかなということもありますし、仮にそこで医療とつながって後遺症が残っても、何とかまた立ち上がれるんじゃないかな、後遺症からの脱却もあるんじゃないかなと思います。やはり、心の部分で、いつまでも悲しみを持って生きていくというのはすごくつらいことで、その部分においても、どうすれば自分はその悲しみを少しでも和らげることができるのかなということを思うと、あのときにもしかして医療につながっていたらというその遺恨がなければ、もう少し、幾ばくか軽減されていくのかなということを感じています。どうか、放置、同じ悲劇が起こらないように心から願っております。
○中島委員 今日のお話をしっかり受け止めて、審議に臨んでまいりたいと思います。本日はありがとうございました。

○橋本委員長 次に、池下卓君。

○池下委員 日本維新の会の池下卓です。本日は、参考人の皆様、お忙しい時間帯、また貴重な御意見を聞かせていただきまして、本当にありがとうございました。私の方からは、梅田参考人の方に御質問をさせていただきたいという具合に思います。現在の新型コロナウイルス感染症になりますけれども、この収束、抑えるために、今、ワクチンを含め、海外の製薬メーカーさんが医薬品を早期に実用化されまして、いろいろな方々、世界の方々の命を救っていただいているという状況であります。日本ではなかなか、この間、効果的な医薬品というのが開発できない、進まない、また承認がされないという状況が今続いているわけなんですが、これは、薬機法も含めまして、その周辺設備というものがしっかり進んでいないということも理由にあるのではないかなと思っております。医薬品開発が遅れているところなんですが、これは単に法律を、今回の薬機法を整備するだけではいけないと思っております。まさに仏を作って魂入れずという状況ではいけないと私は思っております。そこで、梅田参考人は先ほど、医薬品の承認に当たってはサイエンスが重要であると言われておりました。また、当然ですけれども、薬機法の第一義は、安全性をしっかりと担保するということが大事であります。そこに政治的関与というものは当然あってはならないとも考えております。透明性の確保においては、先ほど、米国のEUAでは、緊急使用許可の判断の際は、ユーチューブなどの動画配信もして透明性を図られているという具合に言われておりました。日本において、高い科学性を担保するためにも、国際的な臨床試験や治験に参加できる仕組みが必要と言われておりましたけれども、具体的にはどのような形が必要なのか、そして、医薬品の承認の透明性を確保して国民に説明責任をしっかりと果たしていくためにはどのようなことに取り組んでいくべきなのかにつきまして、お伺いをしたいと思います。
○梅田参考人 ありがとうございます。もちろん、今回のコロナに対応するために、ワクチンであったり治療薬である、そうしたものを日本から出していきたい、緊急に使えるようにしていきたい、もしそういう事態の中ではどうしたらいいかというのが今回の法律の改正の狙いではあります。そして、これが先々、もし幸いなことに今回のパンデミックのようなことが将来起きなければ、この法律を利用する機会は余りないのかもしれません。そうであれば幸せなことであると思いますけれども、今回のパンデミックの中でこの法律を作ることで達成すべきことを考えたときに、これを契機に、今まで進んでいなかった、もっと臨床試験が進みやすくなる、国際共同試験に参加しやすくなる。あるいは、場合によって、その状況は日本よりも、まあ今回のコロナもそうなんですけれども、ほかの国でもって最初に起きて、ほかの国で広がって、そして日本にも広がってくるというような、例えば試験を考えたときでも日本が一番ベストではないかもしれないです、スタートするのに。そういう状況の中でも、日本から開発の種を出してきて、それを試験をして使えるようにするということのためには、先ほど申し上げましたような、日本での日本独自の規制、海外と違う部分、そういったようなところというのをしっかりとすり合わせていって、日本だから特別であるということがないような、そういう仕組みを平時からつくっていくということが非常に大事であると思います。透明性の観点につきましては、先ほど、ユーチューブで議論の様子を配信しているというようなことの例も紹介しましたけれども、日本ではこれまでもPMDAがしっかりと指導されているわけで、ここにしっかりとついていって、その議論にのっとって進めていくというようなことで担保していくのであろうというふうに思っています。
○池下委員 御回答ありがとうございます。私の方も、当然海外の治験であったり、当然日本でも治験をやらなきゃいけないです、当然体格も、いろいろな形で海外の方とも日本人は差異があると思いますけれども、日本独自の規制というのもあるかと思うんですが、ただ、これがガラパゴス化をしてしまうと、やはり、世界からも乗り遅れてしまいますし、日本が世界に打って出ていくような創薬というのも出てこない、ひいては、国民の皆さんの生命とか財産にも影響を与えてくるんじゃないかなと私は思っております。次に、緊急承認におけます医薬品の承認後の対応としまして、厚労科学審議会医薬医療機器制度部会の中でも、先ほどもありましたが、リアルワールドデータの活用をうたわれておりました。また、本日の梅田参考人のお話の中にも、いろいろな例が挙げられましたけれども、リアルワールドデータに基づくエビデンスをアカデミアや政府が速やかに公表しており、企業との共同研究にも利用されているということでありました。リアルワールドデータということは、まさにリアルタイムの評価が必要でありまして、遅い情報では、その後の対応も合わせて遅くなると思います。そこで、梅田参考人にお伺いしますけれども、リアルワールドデータを国内で活用する上で、海外では一般的でも日本のリアルワールドデータと相違する点や、パンデミックに限らず平時でも重要であるため、日本でもリアルワールドデータを活用できる体制や基盤を整えることが重要であると言われておりましたけれども、実際、具体的にどのようなことを国としてやっていくべきかということにつきまして、御回答お願いいたします。
○梅田参考人 ありがとうございます。リアルワールドデータにつきましては、今日私も申し上げましたけれども、福井先生からもあるいは荒井参考人からも何度もこの言葉が使われております。既に、医療従事者であろうとなかろうと、医療に関わる人の中で、リアルワールドデータという言葉そのものを知らないということはもうない状況なんですけれども、これは言葉だけであって、実際にそれを活用している欧米の状況と日本の状況との間の差が非常に大きいことはどこまで知られているかということです。私、技術的にどこをどう違えていったらいいかということについては、先ほどもちょっと触れていますし、ほかの先生方からより詳細に触れられておりましたけれども、今ここで大事なのは、今回のこのコロナのパンデミックの機会にこの問題をどこまで推し進めていくかという、これは政治的な決意であるというふうに思っています。これが、海外に追いついていくというだけではなくして、日本から独自にリアルワールドデータを取っていったものを発表していって、日本が一歩でも前に出てリードしていく、こういうような決意を今回のこの機会にするということが私は何よりも重要ではないかというふうに思っています。
○池下委員 ありがとうございます。まさに、今日、各委員であったりとか、今日御質問されている委員の皆様からも、このリアルワールドデータの活用というものにつきましてしっかりとやっていただきたいと。当然、メーカーさんの方ももちろんそうなんですけれども、やはり厚生労働省の方もしっかりと御意見を含んでいただきまして、国として率先してやっていただきたいなという形で思います。ちょっと時間がなくなってきますので、ちょっと端的に最後の質問をさせていただきたいと思います。緊急時にすぐに対応できる国内製薬企業であったりとか、また、今回のワクチンの件でもそうですが、緊急承認時にも我が国に対応してくれる海外の製薬企業、どちらも国民にとっては大変重要な存在であると思っております。ただ、ドラッグラグ、国内と海外とのドラッグラグの再燃なども改めて今、危惧されているところですけれども、公定薬価制度を採用する我が国の政治が果たすべき、国民の命を守る医薬品確保に向けた取組の中で最も大事なのは何か、最後に梅田参考人の方にお尋ねしたいと思います。
○梅田参考人 残念ながら、ドラッグラグということがまた少し見えてきているというのは事実であるというふうに思っています。今回のコロナの経験を機に、私は、国として日本が世界有数の創薬先進国であり続けるということの強い、ぶれないポジションをしっかりと意識する、持つということが大事であるというふうに思っています。この点、昨年の骨太の方針ですとか、あるいは成長戦略、厚生労働省の医薬品産業ビジョン等にはそうしたことがしっかりと明記されているんですけれども、これをいかに具体的に実現していくかということ、そのことを今回の経験の中で推し進めていく、取り組んでいくということが大事である、そのことが将来の次のパンデミックであったり危機対応にもつながっていくんだというふうに考えております。
○池下委員 ありがとうございました。また今後とも、御知見の御教示の方、よろしくお願いします。ありがとうございました。

○橋本委員長 次に、伊佐進一君。

○伊佐委員 公明党の伊佐進一です。本日は、参考人の皆様、お忙しい中、足を運んでいただき、また貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。まず、福井参考人に質問させていただきます。まず安全性についてです。審議会の部会でどのような議論があったかということなんですが、我々も党内で、与党プロセスの中で議論していまして、安全性は、緊急といえども、ここはしっかりと確認すべきだというような意見が非常に強かったです。その中で、例えば今回の法案でワクチンについて言えば、国内治験が未実施であったとしても、高いベネフィットがあれば承認されるということになっています。一方で、安全性は、従前と同じで、しっかりと確認するということになっておりまして、これは今回のコロナのワクチンもそうだったと思いますが、人種差とか地域差があるかもしれないというような中で、一応、国内治験を今回もやっています。国内治験をせずに安全と言えるのかどうかというのが党内でも議論になりました。緊急といえども、やはり安全性をしっかり確認していかないと国民の信頼を得られないんじゃないかというような声もあったんですが、ここをどう考えるかということを伺いたいと思います。
○福井参考人 治験の第三相レベルまではやらないレベルでの安全性の確保というのは、今、通常にやられているわけですね。第一相試験、それから、探索的なといいますか、少数の患者さんについての安全性や有効性を第二相で見るということをやっておりますけれども、安全性に関しましては、そのレベルまではやはり確保する、つまり、平時と同じ手段で安全性については確保しようと。有効性は、第三相まで、非常に多くの患者さんについて治験をしないと、現在我々が考えているレベルでの確率でもって有効性を期待できるということができないものですから、そこまでは要しない。ただ、安全性については、平時と同じレベルでのものを求めるということになっているというふうに考えておりますし、そのような議論がなされました。
○伊佐委員 まり、一相、二相においてしっかりと安全性は確認されていくんだ、ここは推定じゃなく確認されていくということだと理解しております。次に、荒井参考人に伺いたいと思います。今回、野党の皆さんも法案を提出していただいております。私も中身をいろいろ勉強させていただいていて、その中で、緊急承認について、今回、政府案についての緊急承認も製薬企業が申請するというものになっていますが、野党の皆さんの案を見ていますと、緊急時においては、この薬が必要だというふうに国が必要性を認めて指定する、その後買上げもしていくというようなたてつけになっております。つまり、本来の薬事承認とは切り離して、緊急使用的な形で、つまり薬事承認のプロセスそのものの信頼性に傷をつけないように国が指定をすると。なるほど、それも一つの考え方かなと思って私も勉強しておるんですが、是非、荒井参考人に伺いたいのは、そもそもこの薬を作ったのは製薬企業ですので、製薬企業の立場として、この考え方をどう思われるか、伺いたいと思います。
○荒井参考人 御質問ありがとうございます。その国が買い上げるという医薬品は、既存の効能で承認されている医薬品で、新たな効能に対してということかと思います。国が買い上げてということになりますと、承認という形ではないというふうに思っておりまして、そうなりますと、市販後の調査等をメーカーの方で、企業の方で行えないことになるのかなということと、あとは、それがどういう形になるのかもしれないですけれども、未承認効能という考え方もできるかと思います。そうしますと、企業の方では、それに対する安全性の情報提供というのもなかなか難しくなりますし、あとは、添付文書の中にどういうふうに書くのか。国が買い上げる分と、企業で通常の効能として出しているものと、その添付文書の内容ですとか、パッケージの包装、レーベル、そういったところ、細かいところがどうなるかというのはちょっと懸念されるところです。そこのところを変えるのであれば、医療機関の方でも混乱が起こる可能性もありますので、そこのところはもうちょっと詳細に議論が必要かと思います。
○伊佐委員 ありがとうございました。恐らく、添付文書の内容を含めて、作った製薬企業側と相当のコミュニケーションをしっかりやっていかないとということだというふうに理解しております。次に、高田参考人に伺いたいと思います。日本は国民皆保険制度と言われて医療へのアクセスが保障されているはずなのに、こうして自宅で、医療へのアクセスが受けられず、また支援がなく亡くなられる方々がたくさん、特に第六波でいるという状況で、本当に、お話を伺って、これは何とか日本からなくしていかなきゃいけないという思いを更に強くいたしました。その中で、なかなか答えにくい話かもしれませんが、教えていただきたいのは、今回、このオミクロン株というのは無症状とか軽症が多いというふうに言われています。ただ、今までとの大きな違いは何かというと、今までであれば、呼吸器系にダメージがあって、そこで亡くなられた方々が多かった。ところが、今回はどうやらそうじゃないんじゃないかと。ただ、今、国が、厚労省が出している診療の手引には、重症判定というのがありまして、これが軽症とか中等症、重症と。その判定基準になっているのは酸素濃度であったりとか呼吸器の状況で、基本的には、この人は重症、この人は軽症と分けている。そうすると、何が起こるかというと、呼吸器は見ていてもそんなに酸素濃度は問題ないのに、基礎疾患が悪化して亡くなられる方が出てくる。だから、私は、このコロナ・イコール呼吸器疾患という概念は、もう第六波以降、変えなきゃいけないというふうに思っているんです。 この点について、恐らく、遺族会の皆さんの中でも、保健所あるいは医療機関から、酸素濃度は大丈夫ですから自宅に取りあえずいてくださいと言われて、実は基礎疾患が悪化して亡くなっていく、こういう方々が実は今多くなっているんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○高田参考人 実際、私のワクチンを未接種の友人も、最初は、オミクロンの症状で喉が焼けるように痛くて、熱も三十八度ぐらいで、肺炎までは至っていないから解熱剤だけをいただいたんですけれども、だんだん症状が下がってきて、腹痛であったりとか、今度、物を食べるときに、食道を通るときにまた焼けるように痛かったりとか、何か解明されていないウイルスで体がむしばまれていっているような状態になっていると聞きました。それで、医療に、十日間はまだ自宅療養中なので、緊急時は、どうしても我慢ができなかったら病院にということで、予約で行ったんですけれども、やはり、そこでも薬は、症状による処方はされずに、もう少し待ってくださいということで、軽いせき止めと消炎剤をいただかれたんですけれども。結局、その次は後遺症ということで違うクリニックに行くと、後遺症は辛抱してください、ただじっと我慢してくださいと。何も解明がされていない中で楽観的なことを伝えていただくのもできないことだとは思っていますが、何年かかるか分かりません、後遺症はみんな我慢していますという言葉でお医者様から伝えられると、やはり絶望でしかない。今頑張ってこの後遺症の解明もしていくので、いましばらく頑張ってつき合っていきましょうねということも、お医者さんから言われるとまだ頑張る気力が湧くけれども、やはり友人は、自死もよぎるとはっきり言っていました。何年続くか分からないこの体の苦しみ、そうすると、やはり誰かを責めたくなるんですね。一生懸命みんなどうにかして改善していこうと思っていても、そういう先の見えなさだけで誰かを責めたくなったり絶望感にやられるので、やはり、コロナの株の変化に応じて医療を繰り出していただきたい。その薬が、どの方に何が合うかなんて私たちには分からないので、そういう、医療ともやはりつながっていく。後遺症もすごく重篤ということは近しい人たちで見ているので、医療とつながれる仕組み、検査、陽性中、そしてその後、全部が分断されないような形でつくっていただきたいなと思っています。
○伊佐委員 ありがとうございます。本当に、思い出してしゃべるたびにつらい思いをされながらこうして活動されているんだと思います。今日はありがとうございます。時間になります。最後、梅田参考人に一言伺いたいと思います。健全なマーケット、市場として魅力あるものにしていかなきゃいけないと。まさしくG7で、私、データを見ると、ほかの各国は医薬品の市場は拡大するけれども、日本だけマイナス成長というふうに予測されているという状況の中で、恐らくこれは、個人的にもいろいろ梅田参考人には教えていただいてやらせていただいておりますが、このイノベーションの評価、薬価制度について、いろいろほかにもっと言いたいことがあるんじゃないかと思いますので、最後、発言いただければと思います。
○梅田参考人 日本の市場の変化そのものがよく議論されますけれども、二〇一五年くらいまではある程度の成長をしていたけれども、ここのところの五、六年というのは停滞をしていて、ここから先の予測というのも、そういうような厳しい状況が見えているというように私も理解しています。その根っこのところには、やはり、日本の社会保障制度が大変厳しいという状況の中で、仮にイノベーティブな製品であってもアメリカやヨーロッパに比べて低めの価格に設定せざるを得ないとか、成長していく製品に対して、それの成長の抑制もしなければいけないというようなこと等がだんだん利いてきているという状況かと思い、それらのことが回り回って、やはり、開発投資、開発の意欲ということにもつながっていくのではないかというふうにも思って、いかに、社会保障、財政、そういったこととイノベーションということを両立させていくかということの議論をこれから進めていかなければいけないだろうと思っております。ありがとうございます。
○伊佐委員 ありがとうございました。本日いただいた意見をしっかりと踏まえながら、また審議を行ってまいりたいと思います。ありがとうございました。

○橋本委員長 次に、田中健君

○田中(健)委員 国民民主党の田中健です。今日は、参考人の皆さん、貴重な御意見、ありがとうございます。早速でございますが、梅田参考人にお伺いをしたいと思います。今回のコロナ禍で、多くの国民の思いは、どうして国産のワクチンや治療薬ができないんだろうかということであったかと思います。緊急承認制度が日本の国民の命と健康を守るということに加えて、やはり、日本から画期的な医薬品やワクチンが開発されるための、今回、法改正につなげていかなければならないと考えています。その中で、先ほどの御説明の中で、日本で先行開発された医薬品が日本のみならず世界の医療にも広く活用される可能性があるというお言葉は、大変心強く思っていますし、その指摘は大変重要なことだと思っています。つまり、今回、法制度はできましたけれども、それが実際機能するための条件整備というのが更に必要なことだと思っています。今回、日本のファイザー製ワクチンの承認が二か月遅れたことから始まりました。これにはいろいろと要因があるかとは思うんですけれども、製薬会社からして、なぜこのような時間がまずかかってしまったと考えているのか、御見解を伺いたいと思います。
○梅田参考人 ありがとうございます。私、たまたま前職がファイザーの社長をしておったということなんですけれども、これはもう四年前までのことで、今回のコロナのとき、私はもう退職しておったわけなんですけれども、したがって、ちょっと、私の考えるところ、想像するところになるわけですけれども。先ほど来から申し上げていますような、日本から治験をスタートしていくというとき、あるいは、国際的な共同治験に直ちに一緒に入っていくというようなことをやっていく上でのテクニカルな問題というのが一つあるということはあるかと思いますし、あるいは、今回の場合に限って言えば、幸いにしてか、日本で感染者が当初は少なかったということが、よくも悪くも前に進まないということにもなっていたかと思うんですけれども、あわせて、先ほど来から申し上げていますような、実際には試験をやっていくのは企業ですから、企業が取り組めるような、そういうようなマーケットの状況、環境、こうしたことも非常に重要である、そういったことが影響していたのではないかと思います。二か月遅れたということそのものは、実際にはテクニカルなことであろうとは思っておりますけれども。
○田中(健)委員 今のお話ですと、日本が後れを取ったのは、テクニカルの問題と、またマーケットの問題があるということを述べていただきました。マーケットの問題については、先ほどの御説明の中では、薬価制度の問題や市場整備の課題ということにも言及をされていました。そして、今あったように、当初は日本においては幸運にも感染者が少なかったということで、臨床試験や治験が物理的にできなかったことというのもあるかと思います。これらを乗り越えていくためにも、指摘があったように、平時からの制度整備、平時からということを何度も梅田参考人はおっしゃっていましたからこれをお聞きしたいんですけれども、平時の積み重ねが重要だということだと思います。有事と平時の関係、ないしは今から取り組んでいくことができること、そこから私たちも始めていかなきゃならないと思うんですけれども、もう少し、この点について詳細に御説明いただければと思います。
○梅田参考人 最近、本当に有事と平時という言葉が、このコロナのことに限らず、たくさん使われるわけですけれども、そこでいつも言われますように、有事というのは、あくまで平時の積み重ねの後に対応できる話であって、突然にして対応できることではないということであります。今回、我々は欧米の進んだ取組を理解したわけですけれども、そして我々は、その間、遅れを詰めていかなければいけないわけですけれども、聞いているところでは、決して欧米も、はるか昔からこういった制度が開発されて進められてきたということではなくて、炭疽菌の問題であったり、SARS、MERSであったり、幸いにして日本では大きな被害にはならなかったけれども欧米では大変大きな危機で、そういった問題を乗り越える中でいろいろと生まれてきた安全性担保であったり、早く試験をする、早く承認を持っていくというようなことの取組が積み重ねられてきているということだと思っていますので、あくまで平時のそういった取組、それが有事のときに利いてくるんだということを理解して、今回の有事をいかに生かして、リアルワールドデータ、そのほかに取り組んでいくかということが極めて重要である、そういうふうに思っています。ちょっとお答えにならないんですけれども。
○田中(健)委員 ありがとうございます。今、最後にリアルワールドデータということのお話がありましたので、これについて私も委員会で何度か取り上げさせていただいて議論してきたので、これについては、梅田参考人、また荒井参考人、また水口参考人にもお聞きをしたいと思います。せっかくですので、このリアルワールドデータの整備の必要性というものも挙げられておりますし、各委員の皆さんからも御指摘がありました。まず、実際、ファイザー始め世界の製薬会社というのは、このリアルワールドデータをどのように活用をされているのかということをお聞かせいただければと思いますし、また、日本の現状や課題をどう捉えているのかというのを梅田参考人にお聞きをしたいと思います。また、同じく荒井参考人にも、資料をいただいたものの中には、MID―NETの期待とともに、部会の議論の中では、この安全性対策についてのリアルワールドデータについてが言及されていました。是非この御見解を伺えればと思います。そして、水口参考人には、リアルワールドデータ、利用の手法も幾つかのまだ懸念があるということで、それについては今日いただいた資料にも幾つかの言及がありましたが、それらについて、お立場から三人の御意見をいただければと思います。
○梅田参考人 ありがとうございます。多分、お二人の方の方がずっと専門家でいらっしゃるんで、私は一言。先ほども申し上げたことなんですけれども、私自身も新聞で知ったことなんですけれども、あのイスラエル、コロナワクチンの使用が始まった中で、圧倒的に、ファイザーも、イスラエルという国は全ての人のデータが集まる国であると。そうすると、使い始めて実臨床のデータが右から左に集まってくる、そういう国であるならば、最初の段階ではワクチンは引っ張りだこなわけですよね、一番にイスラエルにやれば、そこから新たな、次に何を考えるべきかというような参考になるデータがどんどん集まってくるということで、イスラエル、イスラエルというのが記事になっていたというふうに思います。また、もう一つ、リアルワールドデータといって、これがリアルタイムでなければ、実臨床のデータだけでも集めるのに時間がかかって、分析して検討しているのに時間がかかって、あるいはそのデータの中身も処方箋データ程度であってということであれば、なかなか本当に生かせるものにはならないだろうと思いますので、この辺りも、専門家だけでなくして、関係する人みんながしっかり理解する必要があるのではないかと思います。
○荒井参考人 データベースを用いた安全対策についてお話ししたいと思います。弊社でも、MID―NETを使った安全対策というのをしております。MID―NETというのは、検査値というのが、契約した医療機関のものがしっかり記載されていまして、標準化されておりますので、大変解析がしやすいものとなっております。そういったところでいろいろな情報を得ることができるんですけれども、例えば疾病名ですとか症状名、そういったものが入ってきておりませんので、そういったものも標準化されたデータベースというものがあれば、もっともっと安全対策に使えるようになるのではないかというふうに考えております。現時点、電子カルテ等もございますけれども、電子カルテの中でも、そういった項目の標準化がされていない。メモのところに、例えば、熱、三十六度とか三十六度Cとか三十六・〇度とかというふうな書き方がされていますと、それだけでは解析にすぐに使えないわけなんですね。やはり標準化して、一つのフォームを作って、そこの中に数値を入れていくというふうなことができれば、すぐに解析に使えるですとか。あとは、電子カルテの普及が進んでいないということもありまして、デンマーク、スウェーデンは一〇〇%ぐらい行っているんですけれども、そのほかの欧米と比べましても日本の普及率が低いというところですので、安全対策をやる上では、もっともっと普及率を上げていきたいというところが一つあります。あとは、医療機関の間での連携ですね。こういったところでより多くのデータをデータベースで拾って解析できるようになると、安全対策の中にもとても活用できると思います。あとは、個人情報の保護法の問題ですね。こちらの方も、要配慮個人情報に該当するということで、しっかり対応していかなければならないところなんですけれども、次世代医療基盤法も施行されまして、進んできてはいるんですけれども、ただ、条件が厳しくて、有効活用が余り進んでいないと聞いています。ですので、こちらの方の改善というのも必要になってくるかと思います。匿名化されてしまって全く元のデータに戻れないということになってしまうと、その患者さんの経過がどうだったかなというところにもなりますので、しっかりデータをつないだ解析ができるようなデータベース、こちらの方を望んでいます。ありがとうございます。
○水口参考人 リアルワールドデータの活用について私が申し上げたいのは、まず、有効性を検証する場面なのか、安全性において、そのシグナルを検出しようとする、また、補足的にそれを安全性確認に役立てる場面なのかということを区別して考えることが必要であろうと。リアルワールドデータは、活用をするということに別に反対しているわけではありません。これを活用して、臨床試験で補えないところを補足していくという考え方は十分あり得ると思いますけれども、しかし、先ほど申し上げたのは、これが臨床試験による有効性確認に代わるようなものではない、ここはまずはっきりと申し上げておきたいと思います。それと、リアルワールドデータというと、何か非常に今注目が集まっているので、バラ色と言ったらちょっと大げさですけれども、理想がいろいろ語られるんですけれども、やはり、FDAとか私どものNGOで情報提供をウェブサイトでさせていただいていますけれども、この利活用については様々な課題があるということが海外のジャーナルでも指摘されているところです。やはりバイアスが生じやすいということもありますし、それから、使い方によっては、思うような結果が出るまでいろいろなやり方を何回も繰り返すというようなことをもしやるとしたら、結果を操作することも場合によってはできてしまう。そういうデメリットを解消するようなやり方、本当に適切な活用の仕方はどういうものなのかということが今まさに研究されている段階であるというふうに理解されています。制度をつくるときは、どうしても理想を語る、それから、どうしても建前の話になってしまうけれども、私どもNGOの役割は、実態はどうなのか、現実はどうなのかという問題提起をしていくということにあると考えておりまして、そういった観点から情報提供させていただいているし、今日、見解を述べたということであります。以上です。
○田中(健)委員 時間が来ました。皆さん、ありがとうございました。

○橋本委員長 次に、宮本徹君。

○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。今日は、参考人の皆さん、お忙しい中、大変貴重なお話を伺いまして、ありがとうございました。まず、高田参考人にお伺いをしたいと思います。本当に早期検査、早期治療の体制ができていればもっと救える命があったのではないのか、そういう本当に悔しい思いで、お話を伺わさせていただきました。日本は外国に比べて流行の波はそこまで高くはなかったにもかかわらず、放置死が起こってしまいました。日本は、お医者さんの数がOECDの平均に比べて十三万人少ない、看護師も病床当たりで見れば少ないというのが現状でございます。やはり、パンデミック時にも医療アクセスが途切れないようにするためには、もっと医療体制に余裕を持たせる必要があるのではないかと思いますが、その点、どうお感じでしょうか。
○高田参考人 医療体制の余裕というよりも、明確にどこにどうつながったらいいのかということの情報が、余りにも。知り合いなんですけれども、結局、酸素濃度がオミクロンでも下がってきて、救急車に電話すると、コロナ陽性中は保健所を通してくれと。保健所に電話すると、今いっぱいだからここに電話してくれと。四件、五件、二時間かかってようやく救急車で搬送されたんです。やはり、速やかにというのは、一番緊急、今というときにも医療につながれるということが一番なんですけれども、救急車、たらい回しにされるという感覚ってすごく怖いんですね。どこにどう電話をして、どうつながれるのかということを明確に教えてもらえたらいいんですけれども。ただ、この第六波、本当にすごいことになっていたので、確かに病床数であったりとか医療機関が逼迫していたのもよく分かっているんですけれども、どんどんどんどん酸素濃度が下がっていく中で二時間たらい回しにされると、やはり不安しかないので、どこにどういうふうにつながっていけるのかをもっと明確に教えていただきたいなということも改善していただければ、次また何かがあったときって思います。
○宮本(徹)委員 ありがとうございます。しっかり取り組んでいきたいと思います。続きまして、水口参考人にお伺いをしたいと思います。緊急承認制度の適用については要件の明確化が必要だというお話がありました。政府は、お話がありましたように、他の複数の医薬品が承認されている状況においても、治療の選択肢を拡大したり、より安定的な供給に資する場合も可能だというふうに言っているわけでございます。私、医療現場の方から聞くお話では、やはり、既に使える薬がある現状では、もっと第三相試験までやって、しっかり有効性を確認するというのは大事なんじゃないかというお話も伺うわけです。その点で、水口参考人からは、拡大適用を招くおそれを生じさせないために、想定される具体的事例を明確にして限定をというお話がございましたが、これは具体的にはどのようなものに限るべきなのか、その点、お考えがあればお聞かせいただきたいと思います。
○水口参考人 基本的に、承認薬があるときに、その代替手段がないという通常の条文の見方からすれば、原則としては当てはまらないわけですね。しかし、先ほど申し上げましたように、パンデミックが大変に広範に広がっているときに、承認薬があっても、それでは供給が全然追いつかないということがかなり明白に分かるとき、こういうときはあり得ると思います。それから、先ほど申し上げましたけれども、ある集団、こういう人たちにはこの薬は使えないということになった場合ですね。その集団にとっては、承認薬はあっても、結局はないのと同じですから、そういう禁忌となるような集団がある、そういう人たちを想定した場合に、やはり、既に承認薬があっても代替性がないということから、条文に当てはまるということで、適用が可能となるという場合があると思います。EUAなどのウェブサイトを見ますと、こういう場合、こういう場合ということが、ある程度具体的に示されているわけですね。ですので、先ほど申し上げたように、言葉が非常に、治療の選択肢とか、より安定的な供給となると、何か通常時の対応をほうふつとさせるわけで、これはあくまでも緊急事態における極めて例外的な対応であるということを念頭に置いて、今申し上げた、そのほかにもあると思いますけれども、具体的にどういう場合なのかということは、やはりガイダンスで明確にしておくということが必要だろうと思っております。
○宮本(徹)委員 ありがとうございました。続いて、福井参考人にお伺いしたいと思います。水口参考人のお話の中で、正式承認の際にはやはり第三相試験が必要であろうと、リアルワールドデータには限界があるというお話がございました。国会での質疑の中では、原則は第三相試験が必要ですというのが大臣の答弁ということになっております。ただ、パンデミックが急速に収束した場合は例外があり得る、これが答弁なんですけれども。先ほど水口さんのお話にありましたように、パンデミックが急速に収束した場合は、ある意味、緊急性がない事態になっているわけですから、逆に、通常の承認制度のルールでやっていくという考え方が筋が通るのかなと思うんですが、その辺りについてはどうお考えでしょうか。
○福井参考人 突然パンデミックが収束した場合とか、そういうときには、当然、通常の、緊急承認した薬さえも使う状況でなくなるわけですので、随分特別な状況だとは思います。通常でも、緊急承認した後は、薬が使えるようになるのと並行して、やはり第三相試験は行うべきで、それで、できるだけ早く平時に行う第三相試験に相当する検証的臨床試験のデータを出して、それで正式の承認に持っていくべきであって、そのまま漫然と使うというのは私は好ましくないというふうに思いますし、それで、緊急承認された薬を使う、そういう患者さんのデータは、できることなら悉皆性をもってというか、全例につきまして電子的にデータを集積するということも、当然ですけれども、これはやるべきだというふうに思っています。安全性につきましても、通常の方法で安全性を確保したとはいうものの、非常にたくさんの患者さんで使いますと、通常の方法で確認したときには見られなかったような、副作用に相当するようなものも出てくるということは、これはもう今までの歴史が幾つも証明していることですので、そういう副作用も含めまして、それから有効性も含めまして、私としては、緊急承認した薬につきましては、データを悉皆性をもって収集する、それで分析するということも同時に進めるべきだと、第三相試験と並行して、そのように思います。
○宮本(徹)委員 ありがとうございます。あと、福井参考人と梅田参考人と荒井参考人と水口参考人に同じ質問をお伺いしたいと思うんですけれども、今度は緊急承認制度ですけれども、有効性の推定についてですけれども、ウイルス量は減るということが確認されたけれども症状改善の効果が見られない場合、こういうのは緊急承認の対象になり得るとお考えか、使っていいとお考えか、この辺りをお伺いしたいと思います。
○福井参考人 ウイルス量が減っても、患者さんにとって重要なアウトカムが全然変化がなければ、それは効果があったとは臨床的には言えないと思います。したがって、何かしら患者さんへの健康上のアウトカム、それは、当然ですけれども、いろいろな症状であったり、自覚症状であったり、それから客観的に外部から分かる、我々が兆候と呼んでいる体の変化であったり、そういうところ、又はQOLといいますか、自覚面も含めまして、そういう、何かしら健康上のアウトカムに変化がないと、なかなか効果があったとは臨床上は言いにくいのではないかなというふうに思います。血液上の変化はそれなりの変化が起こったとしましても、我々が呼んでいる健康上のアウトカムというのにつながらなければ、どうかなとは思います、個人的には。
○梅田参考人 おっしゃられるようなことは、医学的なサイエンスに基づいて判断されるべきと思いますが、私はそういう知識を持っておりませんので、ちょっとお答えは差し控えたいと思います。
○荒井参考人 私の方でも、いろいろな臨床試験、組まれると思いますけれども、そこで何を見ていくのかということが重要なことだと思います。今回の事例ですと、ウイルス量は減る、症状は改善しないということですけれども、実際のプロトコールを見てみないと、今ここの場で一般的なことは言えないので、ちょっと回答は差し控えさせていただきます。
○水口参考人 臨床症状の改善がなければ、やはり緊急承認制度で承認の対象になるというのは難しいと思います。なぜかというと、結局、緊急事態においてある一つの薬を使うということは、別の薬を使わないとか、要するに、その薬に頼っていくということになるわけで、患者さんにとって臨床的なメリットが認められないものについて、この制度の下で承認の対象にしていくということは、基本的には適切ではないというふうに考えます。恐らく臨床的な症状改善というのもその臨床試験の主要評価項目になっているはずなんですね。そこで結果が出なければ、やはり緊急承認制度といえども有効性推定の対象にはならない、なるべきではないというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 時間になりましたので終わります。どうもありがとうございました。

○橋本委員長 次に、仁木博文君。

○仁木委員 有志の会の仁木博文と申します。本日は、五名の参考人の皆様方、本当にありがとうございました。最後の質問者として質問していきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。今回のこの法案に関しまして様々な御意見を賜りました。まず、福井参考人にお聞きしたいと思いますが、私、この法案、陰では、やはり日本のバイオヘルスにおける、いろいろ例えば新薬でありますとか医療機器の申請から承認、そういったものに向けてのスピード感のないことも、非常に大きな、今回の法改正に至っていると思われます。そういうことで、PMDAというものの改革も本当はもっともっと進めていくべきだという考え方を、ここの、ほかの議論の場で、私も再三申し上げています。そういう中で、今、この法案に至る過程において、福井参考人が取り組まれてきた中、あるいは議論された中において、例えば、AIとかICTを用いて、臨床研究そのもののデザインであるとか、あるいは、どういった薬が緊急時に必要かということを、例えば立憲民主党の皆さんにおきましては、例えば政府、厚労大臣の方からも提案するような場面も出てくるわけですけれども、その辺に対しても問題があることも今議論が出ました。ただ、そういったことに関して、何が本当に現場から必要なのか、例えばどういう医療機器が必要なのかも含めて、そういった選定に関しての議論というのはなかったんでしょうか。
○福井参考人 済みません、ちょっと、その選定というのはどういう意味か。
○仁木委員 どういった薬が承認されるべきかという、例えば、ワクチンであるとか治療薬という概念がありますけれども、今の症状に対してどういうふうな薬が必要かということですね。その辺に対しての、どういった薬が急がれるかということの、そういう議論はなかったんでしょうか。
○福井参考人 一応想定しておりますのは、やはり、今回のパンデミックでしたので、治療薬でありワクチンというものを想定して議論を進めてまいりました。当然それ以外に、放射線暴露だとかテロリズムだとか、いろんな場合が考えられますけれども、議論の重立ったところは、ワクチンそれから治療薬、感染症の治療薬を頭に置いた議論が行われました。以上です。
○仁木委員 私は、現場の声というのは非常に重要でして、今、弟さんを亡くされました高田参考人の、本当に大切な、重い話を伺いましたけれども。例えば、その弟さんのいらっしゃる御自宅に、ウェアラブル端末とかがございまして、バイオデータ、いわゆるバイタルサインとかいいますけれども、そういったものを拾えるような医療機器、今、セルフメディケーションと広く言いますけれども、患者さんの体のバイタルサインをくみ取るようなシステムがその場にあったとするならば、また状況は変わったと思います。ただ、私も今、臨床で、訪問診療もやったりしていますけれども、そういった患者さんの情報が入らない。仮に入ったとしても、今回、患者さんあるいは医師も、どの医療機関、どの先生に、今の段階で診れるのか。そういうシステムができ上がっても、その先生がほかの患者さんでいっぱい従事していて診れないかもしれない。あるいは、例えばその先生がいらっしゃらないかもしれない。受入れ体制になっていないかもしれない。そういうことを分かるようなシステムがあれば、また違ってくると思うんです。そういうものも、そういうシステム全体も、例えばこのPMDAで議論するようなAIあるいはシステムになればいいかなという議論もこれからあるわけでございまして、私は、今、実は、福井参考人に、どういった薬とかどういった内容、製薬メーカーから上げる窓口ですね、相談窓口がちょっと一部レギュラトリーサイエンスの下で変わっているわけですけれども。ただ、やはり、待っている状態で、ハードルが高いんですね。だから、現場のこの声を聞いて、どういったシステムであったり、どういった医療機器、そういったものがあるいは現場の方にそぐっているかということも非常に大切な議論になるということで申し上げているわけでございます。ちょっと質問を変えてみますけれども、そういうことでいいますと、今、参考人がおっしゃった電子処方箋の話ですけれども、この際、例えば医療機関と薬局、そしてそういった電子処方箋システム、そしてまた今回は、例えばマイナポータルとかお持ちでしたら、患者さんにもいわゆるICTでつながります。そこで、患者さんの情報を、今プッシュ通知とかいうふうな、そういうものもあるわけですけれども、そこに、これからシステムの利活用、あるいはシステムのバージョンアップにおいて、将来的に、例えばそういった今私が申し上げたような患者さんのリアルタイムのバイタルサインを含めたり、あるいは、第四相試験に象徴されるような、企業が本来やるべきことを、そういったシステムとしてあれば、企業さんも臨床に出した後の第四相試験等々のコストも抑えられるような国になる。先ほど来、イスラエルのいわゆる保健システムにおいて、企業さんの方もそういったシステムが整っている国においては創薬がやりやすいし、また市場としては魅力があるということをおっしゃっていたと思いますけれども、そういったことに対しては議論にあったんでしょうか。あるいは、なかったとするならば、どういった、今私が申し上げたこと、ちょっと全容は見えないかもしれませんが、個人的な御見解でもいいですので、お答えいただければうれしいです。
○福井参考人 特に電子カルテなどの診療情報の共有といいますか、横の連携が日本には本当に欠けていると私も思っておりまして、例えばコロナの患者さんにつきましても、多くの医療機関のデータを大量に集める、いわゆるビッグデータにして迅速に解析をしてということをやりさえすれば、ほかの国のデータを参考にすることなく、いろいろな臨床上の決断もできるようになると思うんですね。必ずしも研究論文になる必要はなくて、こういう緊急時には。そういう意味で、電子的なデータの横の連携というのは、私は、今回の緊急承認にも並行して、承認後もデータを集める必要があるということも含めまして、重要なことだというふうに思っています。それから、非常に患者さんが増えた状況で、御家庭で様子を見ざるを得ない、こういう有事のときには、恐らくこれは仕方のない判断だったとは思うんですけれども、でも、悪くなる可能性のある人と、恐らく安定的に、これからも、治癒するだろうという人のやはり見極めのためのデータを集積して解析するということを、よりもっと早くやるべきだというふうに思っていますし、それで、できれば、先生おっしゃったように、体の状態をモニターするいろいろな機器もあるわけですので、それを電子的に医療機関で見れることができるような、そういうこともできるだけ迅速にやっていただきたいというふうに思っています。以上です。
○仁木委員 いろいろありがとうございました。私は、そういう意味でいうと、日本は、創薬、そして医療機器の開発につながる臨床研究、もっと手前の基礎研究もそうでございますけれども、そういったことに対する投資を、これは人もお金も含めて、この間怠ってきたことの結果が、従来は例えば三大創薬地域と言われていながら、そのプレゼンスが世界の中で落ちてきているのではないかというふうに非常に思っております。もちろん、大切なのは、この間も厚労大臣にもお伝えしましたが、やはり国民お一人お一人に対する啓発活動も重要でして、されど、いい意味で日本は皆保険制度がありますが、やはりそういうのは、自分がそういったことに参画しなくとも、順番さえ待っていたら、そういったお薬、あるいは先端医療が享受できるのではないかというようなことも国民に一部あると思われます。そこで少しお聞きしたいんですけれども、荒井参考人、そして梅田参考人、水口参考人、それぞれにお聞きしたいと思います。治験含めて、いわゆる、ある種、人体実験というふうな言い方もありますが、これに関してですけれども、例えば皆保険制度が十分整っていない国においては、そういったことにエントリーする際に、例えば有償で、つまり、お金をもらってエントリーすることが恒例に近い国もあるかもしれません。そういう意味で、日本においてこれからのありようというのは、例えば今私は、より技術的な面で、あるいはシステム上そういった治験なり臨床研究がしやすいようなことも申し上げましたが、企業の側の方もいらっしゃいますので、いろいろそういう見地から、そういった治験あるいは臨床研究のあるべき姿というか、そういうことに関しまして、個人的に思われていることがありましたらおっしゃっていただきたいと思います。そして、スピード感というのはやはり重要なわけでございまして、それに関しての御意見もいただけたらうれしいと思います。
○荒井参考人 ありがとうございます。治験と研究のあるべき姿ということは、あくまでも安全に治験の被験者様に投与されて、有効性、安全性が確認されるということかと思います。ほかの重篤な疾病、既往症を持った患者様等は今、治験に入れない、除外されるケースも多いんですけれども、これからは、そういう方でも入れるようなプロトコールなりなんなりというのを考えていければいいなというふうにも思います。
○梅田参考人 ありがとうございます。薬であれ、医療機器であれ、そうしたことの研究が日本で進んでいくということのために、先ほど先生、諸外国においては患者さんのエンロールを有償ででもというようなこともおっしゃられましたけれども、日本においてそういったことが、うまく日本国民のマインドに合うものかどうか、ちょっと私は分かりませんけれども、考えるのは、そうした医療に使われる医薬品であれ、機器であれ、これらがコストとしてだけ見る風潮といいますか、そういう見方があるように思うんですね、高いということで。今回、コロナの経験の中で、日本から世界に出ていくものがなかった、今のところまだないというようなことを経験する中で、医療が大切であり、そのためには、医薬品であり、医療機器であり、そうしたことの開発も大変大切であり、であれば、そこに有償であるから参加しましょうじゃなくて、自分もそれに該当するのであれば治験の中に積極的に入っていくというような、そういう機運をつくっていくためには、こういった開発をコストとだけ見ない、健康への投資、未来への投資というようなものを国としてつくっていくようなことが大事なのではないかと感じております。
○水口参考人 臨床研究のあるべき姿という広い御質問というふうに受け止めて、お答えをさせていただきます。まず基本的に、臨床的に本当に意味のあるお薬を開発していただきたい。まずそこが一つの選択。それから、臨床試験の設計が適切なものであること。これが、実は私どもNGOで検討していますと首をかしげるというようなこともあるわけですね。本当に患者の利益になる薬の開発と臨床試験のありようを考えるときに、その臨床試験は本当に適切なのかということを考える上で、患者が参加するというようなスキームもあっていいと思います。それは試みられているところもあります。それから、日本の臨床研究にとって今やはり大きな課題というのは、日本だけではなくて世界だと思いますけれども、やはり利益相反の管理をしっかりやって公正な研究が行われるということ。臨床研究法はできましたけれども、そこは重要で、それと、やはりインフォームド・コンセントをきちっと取っていくということで、課題はたくさんあって、それに対する信頼こそが臨床研究が活発になることの基礎であるというふうに考えております。
○仁木委員 幅広い質問でありましたのに、お答えいただきまして、ありがとうございました。委員長、終わります。ありがとうございました。

○橋本委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。参考人の方々には、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。次回は、明十三日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。