2022年5月11日衆院経済産業委員会 産業保安事業者丸投げ
配付資料1 出典:2004年4月20日 総合資源エネルギー調査会高圧ガス部会 第1回制度検討小委員会
配付資料2 出典:経済産業省HP
配付資料3 出典:2009年2月18日 総合資源エネルギー調査会高圧ガス部会「産業事故分析・対策検討ワーキンググループについて」
配付資料4 出典:「高圧ガス、都市ガス及びLPガスの各分野における事故要因と今後の対策の在り方について」産業自己分析・対策検討共同ワーキンググループ、平成21年6月
配付資料5 出典:「ボイラー等の自主検査制度の導入の可否に関する検討会報告書」、ボイラー等の自主検査制度の導入の可否に関する検討会、平成19年3月
配付資料6 出典:「産業構造審議会保安分科会報告書」産業構造審議会保安分科会、平成25年3月29日
配付資料7 「保安力の維持・向上を目的とする基礎調査報告書」平成30年度石油・ガス供給等に係る保安対策調査等事業 accenture
電気・都市ガス・高圧ガスの産業保安分野で事業者任せの自主保安を押し進める高圧ガス保安法等改定案が12日の衆院本会議で賛成多数で可決されました。日本共産党は反対しました。
日本共産党の宮本徹議員は11日の衆院経済産業委員会での反対討論で、自主保安導入後、法令違反や重大事故が相次いでいるにもかかわらず、「さらに産業保安を事業者に丸投げするものだ」と厳しく批判しました。
宮本氏は質疑で、改定案で新設される「認定高度保安実施事業者」に認定されれば、年に1回以上義務付けられている定期自主検査が除外される上、保安検査も自主検査で良いとなれば技術基準への適合性が全く担保されないとして、「これでどうやって労働者の命や地域住民の安全が守れるのか」とただしました。
萩生田光一経産相は「安全確保が大前提」だと述べながら、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)技術の活用により安全性は確保できるという答弁に終始。宮本氏は、自主検査の記録の都道府県への届け出等が不要となることで国の監視・監督を大きく後退させると重ねて批判しました。
以上2022年5月14日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2022年5月11日 第208回衆院経済産業委員会第14号 議事録≫
○古屋委員長 次に、宮本徹さん。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。今日は、法案のうち、二十六年ぶりの改正となる高圧ガス保安法の認定高度保安実施者の導入に絞って質問をさせていただきます。この間、産業保安の分野では、国や都道府県が行ってきた保安検査を事業者の自主検査に委ねる自主保安へと規制緩和が進められてきました。最初に、大臣に、法案の前提に関わって確認をいたします。自主保安制度は、高度な保安能力を有していると認定を受けた事業者が、法令に適合した検査を自らがきちんと実施し、設備が技術基準を満たしていることを確認する、これが制度の大前提だと思いますが、大臣も同様の認識ですよね。
○萩生田国務大臣 そのとおりです。
○宮本(徹)委員 そのとおりでございまして、自主保安制度は、事業者が法令に適合した検査を自ら実施して、設備の健全性を確認するものであります。その上で、検査結果を都道府県に届け出ることで、監督する側も自主保安の適切性が確認できる、こういう制度になっているわけですね。高圧ガス保安法に自主保安が導入されたのは、一九九六年の高圧ガス取締法改正案のときからであります。このときに、法律の名称が高圧ガス保安法に改められ、事業者を取り締まる規制法から自主保安へ、法律の性格が大きく変更され、同時に認定事業者制度が導入されることになりました。当時、我が党は、法案に対して、第一に、保安を事業者に委ねれば、短期的なコストを追求することになり、保安がおろそかになる、第二に、自主保安の促進により重大事故がもたらされれば、労働者や地域住民に危険を及ぼしかねない、こう言って反対してきたわけでございます。そこで、今回の法案を見ますと、この自主保安促進の認定事業者制度を今度は認定高度保安実施者制度へ、更に事業者の裁量を拡大する、こういうものになっております。まず、この間の認定事業者制度が石油コンビナートなどの保安の向上に結びつくものとなったかどうかを検証したいと思います。一九九七年度の制度導入から僅か六年後の二〇〇三年度に、認定事業者で、法令に定められた検査が適切に行われていなかった事例が相次ぎました。このとき、当時の原子力安全・保安院が認定取消処分を行った企業数と事業所数をそれぞれ示していただけますか。
○太田政府参考人 お答え申し上げます。二〇〇三年六月から二〇〇四年一月にかけて経済産業省において認定取消処分を行った企業数は六社、十一事業所でございます。
○宮本(徹)委員 六社、十一事業所の、配付資料の一ページ目につけております。ここにあるとおりですけれども、この中を見ますと、新日本石油精製、今のENEOSですね、旭化成ケミカルズ、三井化学など、業界トップ企業が含まれているわけでございます。配付資料、次を見ていただきたいんですけれども、当時、二〇〇四年一月二十三日、原子力安全・保安院長は、認定保安検査実施者の認定の取消しについてという異例の談話を発表しております。この談話では、自らを律するべき認定事業者の法令違反は見逃せない問題であり、厳正に対処した、こうも述べているわけでございます。そして、この認定取消処分後、審議会での議論を経て、認定基準が見直されました。その内容を端的に御紹介いただけますか。
○太田政府参考人 お答え申し上げます。御指摘の平成十六年一月二十三日付原子力安全・保安院長談話においては、認定事業者制度の位置づけについて、次のように述べてございます。(宮本(徹)委員「いや、違う、そんなことは聞いていないですよ。審議会で」と呼ぶ)
○古屋委員長 答弁を続けてください。
○太田政府参考人 はい。認定事業者制度の位置づけについて……(宮本(徹)委員「いや、だから、認定事業者の位置づけを聞いたんじゃなくて、審議会での、認定基準が」と呼ぶ)
○宮本(徹)委員 いいですか。認定取消処分の後に、審議会での議論を経て認定基準が見直されましたが、その内容について端的に紹介してくださいと言っているわけです。
○太田政府参考人 大変失礼いたしました。二〇〇四年の認定基準見直しの内容についてでございますけれども、二〇〇四年度に認定保安検査実施事業者等の認定基準に係る制度の見直しを行い、高圧ガス保安法の関連省令の一部を改正をいたしました。具体的には、認定完成検査実施者及び認定保安検査実施者、すなわち現行の認定事業者制度の認定基準について、まず、本社による認定事業所及び検査管理組織に対する監査の実施、並びに本社における法令遵守窓口の設置、それから、検査管理組織の第三者性の強化のための措置、認定事業所内部で保安管理についてPDCAサイクルが実施されるシステムの構築、それから、法人の代表者のコミットメントの確保を新たに義務づけ、これら四つを追加したところでございます。
○宮本(徹)委員 四つ、認定基準を見直したわけですけれども、問題は、この認定基準を見直した後も事故や法令違反はなくならなかったわけでございます。二〇〇四年から二〇〇七年にかけて、高圧ガス事故の件数が急増しております。二〇〇七年には、三菱化学鹿島事業所の火災で作業員四人が死亡するなど、二〇〇〇年の三倍、過去最大の二百八十三件もの事故が起こっております。そこで、配付資料の三を見ていただきたいんですけれども、二〇〇九年二月の高圧ガス部会で配付された産業事故分析・対策検討ワーキンググループの分析によりますと、事故の多くが製造プラントからのガス漏えいに伴うものだったということであります。事故を起こしたプラントは、当時、もう設置後三十年以上というものが半数。高度経済成長期に運転を開始し老朽化したコンビナートの保安が自主保安制度の下でおろそかにされてしまった、こういうことなのではないかと思います。そこで、大臣、配付資料の四ページですけれども、このワーキンググループの報告書では、その年の六月のものですけれども、高圧ガス事業所での事故多発の背景として、グローバル化の進展がコストダウンへの圧力となり、これが結果として設備面では経年設備の更新投資にネガティブな影響を与えている可能性や、保安担当能力や保安意識の十分に醸成されていない人員を作業に従事させる事態を生んでいる可能性は否定できない、こう指摘しているわけですね。結局、事業者任せだと、事業者が、短期的なコストを追求する、これを優先して保安を後回しにしていた、こういうことなんじゃないですか。
○萩生田国務大臣 委員御指摘の報告書において、当時の高圧ガス分野等の事故原因を分析した上で、一部の経営者に、保安を最優先する意識が低下し、又は財務制約から、保安のための設備投資や保安教育などが十分になされていない兆候が見え始めているとの指摘がされているところです。その上で、同報告書では、人材投資も含め、事業者において、経年劣化対策など計画的に保安投資を実行するとともに、規制当局においても、保安投資の促進に向けた適切な指導や環境整備を含む側面支援をすることとされております。これを受けまして、経産省としては、これまで産業界に対して、継続して、適切な設備投資を積極的に働きかけてまいりました。資金面では、平成二十六年から令和二年まで、耐震補助金を設置して、高圧ガス設備の耐震化措置を支援するとともに、保安分野におけるデジタルの投資を後押しするDX投資促進税制の設置、また、この結果、十年間でプラントの設備維持、更新に関する投資額は産業界で三倍に増加しており、着実に成果が表れているものと承知をしているところです。
○宮本(徹)委員 実際、その当時どうなっていたのかということですけれども、配付資料五を見ていただきたいと思うんですけれども、二〇〇六年八月に石油連盟が厚労省の研究会に提出した資料によれば、保安防災関連費用は、自主保安制度が導入された一九九七年度の一千十三億円から、二〇〇五年度には七百三十四億円へと、三割も減っているわけであります。本当だったら、設備が老朽化していけば、その中で保安レベルを保とうとしたら、保安関係の投資は積み上がるのが普通だと思うんですよ。ところが、そうではなくて、コスト抑制に走って、業界団体の調査でも、事業者が保安コストを抑制している、このことがはっきり示されている。やはり、事業者任せでは、どんどんやはりコスト抑制に走るということなんじゃないですか、大臣。
○萩生田国務大臣 そういう問題意識は我々も持っております。したがって、今までのような自主管理のみならず、データをもって、言うならば、外からしっかり透明化をさせて、どういう取組をしているのかということをチェックする、そういう仕組みに今回法改正をお願いしているところです。
○宮本(徹)委員 しかし、後で議論しますけれども、実際は、この法案の中身は、更に事業者任せを広げるものがたくさん入っているわけであります。その後、二〇一一年から二〇一二年にかけてもコンビナートで重大事故が相次いでおります。発生日、事業所名、人的被害、それぞれどうなっているか、教えていただけますか。
○太田政府参考人 お答え申し上げます。一件目は、二〇一一年十一月十三日に発生いたしました三井化学株式会社岩国大竹工場における爆発事故でございます。人的被害は、死亡者一名、重傷者二名、周辺住民を含む負傷者二十三名でございます。二件目は、二〇一二年四月二十二日に発生した東ソー株式会社南陽事業所における爆発事故でございます。人的被害は死亡者一名。三件目は、二〇一二年九月二十九日に日本触媒株式会社姫路製造所における爆発事故でございます。人的被害は、死亡者一名、重傷者五名でございます。
○宮本(徹)委員 今紹介いただきましたけれども、三井化学岩国大竹工場の爆発火災事故では、工場周辺の住宅九百九十九軒にも被害を及ぼしているということになるわけですね。じゃ、この三件の重大事故のうち、認定を受けていた事業所は幾つだったのかといいますと、二件なんですよ。多数は大臣認定を受けた事業所でこうした事故を起こしていたということであります。ですから、やはり過去の事例を見ていてもはっきりしていると思うんですね。法令違反や重大な事故の発生を受けて再発防止策を取っても、また事故が起きる、更に再発防止策をまた取っていく、この繰り返しということだと思います。私は、事業者任せの自主保安では安全性は確保されないということがこの歴史ではっきり証明されていると思いますよ。そこをしっかり見ていただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。
○萩生田国務大臣 高圧ガス保安法の下では、高圧ガスの製造等に関する規制と、事業者による自主保安の取組の両輪で安全の確保を図っていくこととしています。保安を高度化し、安全の確保につなげていくためには、単に規制措置だけではなく、保安に関する事業者の自主的な活動を促進することも重要です。実際、保安に関する技術の進展、過去の経験も踏まえた事業者のリスク管理体制の整備、強化などの取組を通じて、高圧ガス分野における重大事故は大幅に減少し、二〇一〇年代における死亡事故件数は一九七〇年代の三〇%にまで減少しています。今般の法改正で創設する認定高度保安実施事業者制度の下では、テクノロジーを活用しつつ自立的に高度な保安を確保できるとの厳しい要件の下で、国が認定する事業者に限って、その保安力に応じて、保安規制に関する手続、検査の在り方を見直すこととしておりますが、認定後の適時適切な立入検査も含め、行政による厳格な監督の下で、事業者による自主保安の取組も活用しながら、産業全体での保安レベルの向上につなげていきたいと思います。
○宮本(徹)委員 ただ、行政の立入りもあるからということを言いますけれども、その前提の部分が今回更に規制緩和されるわけであります。配付資料の六ページ目を見ていただきたいと思います。これは二〇一三年三月の保安分科会の報告書であります。ここで、認定事業者の確認手続の強化が提言をされております。これを受けて、認定事業者としての適性を確認するための高圧ガス保安協会の事前調査の実施体制の強化や、認定期間中の経産省の立入検査の実施など、事前事後の監督強化策を盛り込みましたよね。
○太田政府参考人 お答え申し上げます。二〇一三年三月の産業構造審議会保安分科会の報告書は、当時の産業事故の発生状況を踏まえまして、認定制度の改善を提言いたしてございます。これを踏まえまして、事前の監督強化策として、認定要件を見直し、リスクアセスメントの強化や危険予知能力を養成、向上するための教育訓練の実施等を認定要件に追加をいたしました。それから、今御指摘ございました、高圧ガス保安協会が実施する事前調査の調査体制について、企業において保安活動や設備の管理を経験した専門家を追加をいたしました。また、調査方法につきまして、非定常時の、実際に設備を動かしたり止めたりするときのリスクアセスメントの実施状況、保安の管理に必要な設備や人材に対する資源配分の状況や、会社の中長期計画等でどう位置づけているか、教育訓練の実施状況などにつきましても重点的に確認をすることといたしました。また、事後の監督強化策として、五年の認定期間の途中の任意の時点で、経済産業省による立入検査を実施することにいたしました。
○宮本(徹)委員 今紹介のあったような監督強化策を盛り込んだわけでありますが、ところが、経産省は、これらの対策の効果を見極めることもなく、制度全体を規制緩和の方向へ大転換させることになったわけです。それが二〇一七年度のスーパー認定事業者制度であります。これは、高度な保安対策を実施している事業者に更にインセンティブを与えることが自主保安の取組の裾野を広げることになる、こういって導入されたものであります。大臣、現行の認定事業者制度ですら自主保安がおろそかになってきた、これはもう先ほど来議論してきたとおりであります。にもかかわらず、更に事業者の裁量を広げる規制緩和をすることが、どうして自主保安の高度化になるんですか。
○萩生田国務大臣 二〇一七年度に導入されたスーパー認定事業者制度は、通常の認定事業者と比較して厳しい認定要件の下で、高度な自主保安が認められる事業者に限って自主的な保安活動を認める制度であって、御指摘のような、事業者の裁量を拡大することで自主保安を高度化していくものではありません。具体的には、自主的に高度な保安管理を行うことが可能と認定するために必要な要件として、高度なリスクアセスメントの実施や、設備の運転期間、検査手法の適切な評価体制の整備等を満たす事業者に限って、その保安レベルに応じて、長期の調査周期や自主的な検査方法の設定など、事業者による自主的な保安活動を認めることとしております。その上で、本制度の下で自主保安の高度化を進めるに当たっても、国は、認定後も、適時適切な立入検査を行うとともに、法令違反や認定要件への不適合が確認された場合には速やかに認定を取り消すなど、厳格な監督を行っており、安全確保には万全を期しています。
○宮本(徹)委員 ですから、違反があってから取り消すというのは、事故が起きてから取り消すということになりかねないわけですよね。私は、そういう重大な事故を起こさないためにどうするのかということを考えなきゃいけないのではないかというふうに思います。この自主保安制度が創設されて以降、これまで、二十事業所が認定を取り消されております。直近の十年間を見ても、認定事業所での重大事故は六件、法令違反は二十四件もあります。配付資料の七ページ目を見ていただきたいと思います。これは経産省の委託調査ですよ。この中で、こう言われているんですね。認定事業者の方が非認定事業所よりも高圧ガス事故の発生頻度が高い。もう一回言いますよ。認定事業所の方が非認定事業所よりも高圧ガス事故の発生頻度が高い。これは経産省の委託調査でこう分析されているわけです。これはもう、経産省の委託調査から見ても、事業者の自主保安任せでは駄目だということがはっきりしているんじゃないですか。
○萩生田国務大臣 先生御指摘の、二〇一八年委託調査で分析結果が記載されていることは承知しております。一方で、本委託調査は、高圧ガス保安法の対象となる全事業所ではなくて、一部の石油精製、石油化学プラントや一般化学プラントを対象に分析した結果でありまして、この点、高圧ガス保安法の対象となる全事業所に関する分析について申し上げれば、産業構造審議会の中でお示ししているとおり、高圧ガス保安法における重大事故は、過去十年間で、全体で四十四件発生しているところ、このうち、認定事業所については六件、非認定事業所は三十八件となっており、認定事業所の方が非認定事業所と比べて事故発生頻度が少ないものと承知しております。
○宮本(徹)委員 一部というふうにおっしゃいますけれども、石油化学プラントでの事故というのは重大なことが起きるからこそ、経産省自身も委託してこういう調査をやってもらったんじゃないんですか。それはそういうことですよね。ですから、しっかりとここで言われている指摘は受け止めなきゃいけないと思いますが、そこは受け止められないんですか、こういう、石油化学プラントで非認定事業者よりも認定事業者の方が発生頻度が高いと。これは真剣に受け止めなきゃいけない点だと思いますよ。
○萩生田国務大臣 たまたま、今、先生、資料の説明の中でファクトを私申し上げただけで、だから問題ないんだなんて開き直るつもりは全くなくて、重く受け止めて、おっしゃるとおりですよ、それは事故が起きてからでは遅いわけですから。そのためにも、この認定制度と検査制度、そして国や都道府県の関わりというものをしっかりつくり上げていくこと。そして、先ほど申し上げたように、一番のメリットは、やはりデータを蓄積できるということだと思います。口頭や紙で一時的な報告じゃなくて、写真や映像を残しながら、安全管理を外からもしっかりやっていくということに心がけていきたいと思います。
○宮本(徹)委員 いや、じゃ、データの蓄積をすれば更なる規制緩和をしていいのかといったら、私はそれは違うということを申し上げているわけです。さらに、昨年の十月二十五日の高圧ガス小委員会で、高圧ガス保安協会の近藤会長はこう言っているんですね。協会が把握しているだけで、この十年間に三割弱が法令違反行為を行っている、こう指摘しているわけです。私、三割弱が法令違反行為をやっているという中で、更なる規制緩和というのは進められる状況は全くないと思いますが、大臣、いかがですか。
○太田政府参考人 お答え申し上げます。委員から御説明がありました産業の事故の歴史を踏まえまして、私どもの新しい法律も、決して保安のレベルを下げるというものではなくて、テクノロジーを活用して保安のレベルを上げていこうということをお願いしてやってございます。認定事業者についてはより厳格な認定条件を課しますし、事後の取締り、立入検査も機動的に行って、もちろん、これまでの制度より保安のレベルが下がらないということを狙っての法改正でありますので、そういうふうに保安のレベルを少しでも上げるという取組を続けていきたいと考えてございます。
○宮本(徹)委員 いや、大臣、本当に三割弱のところで法令違反が行われているという状況ですよ。こういう中で更に規制緩和を進めていくというのは、私は大変不安な状況だと思いますが、それはみじんもないというのが大臣の認識なんですか。
○萩生田国務大臣 その近藤さんのコメントというのは、私ちょっと事実関係が分かりませんので、これは控えさせていただきたいと思いますが、先生のように大変心配していただける御指摘、これは重く受け止めて、制度をスタートするに当たって、私はしっかりおそれを持って対応していきたいと思っています。先ほどの他の委員の質問からも、例えば、IT化をする、AIを使うことによって何か人をどんどん減らしていくことになるんじゃないかという危惧がありましたけれども、逆でありまして、この業務に携わる人たちのレベルを上げて、安全性をしっかり確保していくということを心がけていきたいと思いますので、御指摘は重く受け止めたいと思います。
○宮本(徹)委員 指摘を重く受け止めるんだったら、私は、立ち止まるべきだということを申し上げたいと思うんですね。というのも、この法案では、高度保安実施者に認定されれば、少なくとも一年に一回以上実施が義務づけられている定期自主検査すら不要になる。これは法律三十九条二十七の第二項でこうなっているわけですよね。定期自主検査の義務づけもなくして、保安検査も自主検査でよいとなれば、技術基準への適合性が全く担保されない、こういうことになるんじゃないでしょうか。これでどうやって労働者の命や地域住民の安全を守れるんでしょうか。
○萩生田国務大臣 産業保安分野において安全の確保は大前提であり、今般の法改正においては大原則については何ら変わることはありません。今般新たに導入する認定高度保安実施事業者制度は、現行の認定制度と比較して強化されるコンプライアンスの要件や、新たに追加されるコーポレートガバナンス要件など安全確保に向けた会社全体の健全性や、高度なリスク管理体制の構築などの厳しい要件を満たしていると国が直接認定する、自立的に高度な安全を確保できる事業者に限り、規制の特例措置を講ずるものでありまして、その上で、御指摘の保安検査については、現行制度において、既に認定要件を満たす高度な保安体制を有する事業者に限っては、自治体等が実施している保安検査を事業者自ら行うことが認められており、今般の法改正による変更はございません。また、定期自主検査については、自立的に高度な保安を確保できる認定高度保安実施事業者に限って、保安検査を通じて、定期自主検査で確認していた技術基準への適合性確認等を行うことを前提に、今般の法改正で、その義務を課さないこととしたものであります。これは、厳格な要件を満たした事業者にのみ認められる特例措置でありまして、労働者や地域住民の安全に重大な危険をもたらすとの指摘は当たらないと考えています。なお、スマート保安の取組が進む中、高圧ガスを始めとする産業保安分野において、事業者と地域住民の方々の間でのリスクコミュニケーションは一層重要となります。経産省としては、事業者が今後、労働者や地域住民の方々の安全上の理解を得て、安全が引き続き確保されるよう取り組むよう指導してまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 いや、要件を満たしたところだけ定期自主検査の義務づけはなくすんだというふうに大臣はおっしゃいますけれども、じゃ、ちゃんと要件を満たしてしっかりとやっているのかということを国がチェックできているのか。今日、先ほど維新の議員から、国交省の所管ですけれども、知床の遊覧船の話もありましたけれども、いろいろな問題で、じゃ、行政がちゃんといろいろなものをチェックし抜けているのかといったら、そうじゃないことがいっぱい繰り返されてきているわけですよ。本当に命と安全に関わる分野なんですよね。例えば、今年三月三十一日に認定を取り消された太陽石油四国事業所では、二〇一一年四月から十年以上も法令違反を続けてきた。故意の法令違反や組織的な関与があったにもかかわらず、経産省は全く見抜けなかったじゃないですか。こうした事実をどう考えているんですか。
○太田政府参考人 お答え申し上げます。御指摘のとおり、太陽石油の認定取消しを行ったわけですけれども、私ども、その件を踏まえまして、やはり、我々がきちっと、認定をした後にも、ちゃんと、きちっと機動的に事後の検査をしていなかったことが問題ではないかと考えてございますので、機動的な立入検査を含めて、事後報告の徴収を含めてきちっと対応して、新しい制度では、入口の認定をより厳しくして、安全のレベルを下げないようにしたいと考えてございます。
○宮本(徹)委員 何か自信なさげな答弁ですけれどもね。結局、一回認定しちゃったら、その後、なかなかなかなかちゃんとチェックし切れていないというのがこの間の現状なんですよね。私、根拠なく不安だ不安だと言っているんじゃなくて、実際に監督ができていないから、私は、そういう下でこうした規制緩和を更に進めるのは問題ではないのかということを申し上げているわけでございます。更にもう一つ重大なのは、高度保安実施事業者に認定されると、自ら行った完成検査、保安検査の記録の都道府県への提出が不要になります。事業者が保存してさえいればいいということになるわけです。これでは都道府県が法令の適合状況のチェックができない。大臣、これは監督機能が大きく後退することになるんじゃないですか。
○萩生田国務大臣 現行の認定制度の下では、事業者自ら完成検査、保安検査を行った後、検査記録を都道府県に提出することとされています。一方で、今般導入する認定高度保安実施事業者制度の下では、厳しい要件を満たしていると国が認定する、自立的に高度な保安を確保できる事業者に限っては、規制の特例措置を講ずることとし、自ら行う完成検査、保安検査の記録について、都道府県への提出を要しないこととしたものであります。しかしながら、産業保安に万全を期す観点から、今般の法改正に当たっても、事業者には、完成検査、保安検査の実施と検査記録の保存を義務づけるとともに、引き続き、都道府県は機動的に立入検査などを実施して完成検査、保安検査の状況を確認することも可能としていることから、行政による監督機能は十分に果たされていると考えています。今般の法改正によって、自立的に高度な保安を確保できる事業者については、保安レベルに見合った、合理的な、めり張りある規制体系に移行することで、都道府県としても限りある行政リソースをよりリスクの高い分野に展開することが可能となることから、我が国の保安レベルの全体的な底上げに結びつくものと期待しています。
○宮本(徹)委員 私は、逆のことが起きることを大変懸念をしております。法案は、認定の申請を行った事業者に対する高圧ガス保安協会の事前調査もなくす、こうなっているわけですよね。国、自治体、専門機関のチェックが一切働かない、全くのブラックボックスになるのではないのかということを厳しく指摘して、質疑時間終了の紙が来ましたので、質問を終わらせていただきます。
○古屋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。
―――――――――――――
○古屋委員長 これより討論に入ります。討論の申出がありますので、これを許します。宮本徹さん。
○宮本(徹)委員 私は、日本共産党を代表して、高圧ガス保安法等改正案に反対討論を行います。本法案には、頻発、激甚化する災害への対応策として、小規模な太陽光、風力発電事業者への基礎情報の届出等の義務づけや、一般導管ガス事業者への災害時連携計画の策定など、賛成できる措置も盛り込まれております。しかし、電気、都市ガス、高圧ガスの産業保安分野に事業者の裁量を一層拡大する規制緩和を促進することは、とりわけ、稼働から五十年以上経過し、老朽化した石油コンビナートでの事故をもたらしかねません。労働者の命や地域住民の安全に重大な危険を及ぼしかねず、看過できません。反対理由の第一は、事業者任せの自主保安制度を導入した後も法令違反や重大事故が相次いだこれまでの経緯を直視せず、更に産業保安を事業者に丸投げしようとするものだからであります。高圧ガス保安法への認定事業者制度導入から二十六年。高度な保安能力を有すると大臣認定を受けたものの、取り消された事業所は二十にも及んでおります。直近十年間だけで二十四件もの法令違反が発覚している事実は、保安レベルの低下を如実に表しております。今やるべきは、質疑の中でも示した、認定事業者の方が事故の発生頻度が高いとの経産省委託調査の分析を正面から受け止め、事業者任せの産業保安の在り方そのものを根本から見直すことであります。第二は、認定高度保安実施事業者に対する自主検査義務の除外、都道府県への検査記録の届出を不要にする規制緩和が、事故を未然に防ぐ機会を失うのみならず、第三者の監視、監督権限を大きく後退させることになるからであります。事業者は、この間、保安人員の育成や修繕、改修に関わる投資を抑制してきました。産業保安の土台をおざなりにしたままでは、いかに最新のテクノロジーを活用しようとも、保安の高度化、自律化は絵に描いた餅だと言わざるを得ません。以上を指摘し、反対討論といたします。
○古屋委員長 これにて討論は終局いたしました。
―――――――――――――
○古屋委員長 これより採決に入ります。内閣提出、高圧ガス保安法等の一部を改正する法律案について採決いたします。本案に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○古屋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。
―――――――――――――
○古屋委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、石川昭政さん外四名から、自由民主党、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党及び国民民主党・無所属クラブの五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。提出者から趣旨の説明を求めます。落合貴之さん。
○落合委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表し、その趣旨を御説明申し上げます。まず、案文を朗読いたします。
高圧ガス保安法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案) 政府は、本法施行に当たり、次の諸点について十分配慮すべきである。
一 本改正が産業保安分野におけるこれまでの事前規制を中心とする規制体系から新たな規制体系への転換を図るものであることを踏まえ、改正事項の運用に当たっては、公衆及び保安作業者に対する安全の確保を大前提とし、我が国の産業保安水準の更なる高度化と持続的な向上を図るために必要な措置について不断に検討を行うこと。
二 高圧ガス、都市ガス及び電気事業の各分野における「認定高度保安実施事業者」の認定及び安全管理検査の特例等の運用に際しては、中小事業者であっても電気・ガス等の安定供給に必要な保安の実施、大規模災害等に対する迅速な設備復旧並びに公衆及び保安作業者の安全確保を可能とするための人材・技術基盤を確立することができるよう、保安分野におけるテクノロジーの活用方法及び自律的な検査の実施方法等の周知徹底、技術開発への支援等を通して、我が国全体の産業保安の水準が確保されるために必要な実効性ある措置を講ずること。
三 スマート保安の推進に当たっては、テクノロジーの活用と人が担うべき保安とを相互に連携・融合させつつ、より高度で強靱な保安管理体制を目指すものとし、デジタルトランスフォーメーションも見据えた専門人材の活用、熟練した技術者による中央・地方の事業者に対する技術伝達の促進、若年層にとって魅力ある職場環境の形成に向けた支援等の取組を進め、保安人材の持続的な育成・確保に万全を期すこと。
四 ガスに係る災害発生時の事業者の連携体制に関して見直しを行い、災害時対応に参画するガス小売事業者についてはその適格性を確認し、技術向上への支援とともに、連携の在り方や役割分担等について検討するなど、より適切な保安体制で災害時対応を実施することができるよう引き続き検討を行うこと。
五 太陽光発電及び風力発電に係る小出力発電設備に対する規制の見直しにより、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けて有意義な小出力発電設備の導入が必要以上に抑制されることのないよう、再生可能エネルギーの導入と規制の実施とのバランスの取れた運用の在り方について引き続き検討を行うこと。また、基礎情報等の届出手続については、設置者の負担を軽減するとともに、事務処理の効率化を図るため、可能な限りのデジタル技術の活用に努めること。さらに、再生可能エネルギー発電設備の設置状況及び保安の適正化が図られているかについて立入検査等を通して十分に監視し、その是正・改善に努めること。併せて、いわゆる「分割案件」のような規制逃れの抑止、安全規制や立地規制等の法令遵守の徹底等に努めるとともに、改正事項の趣旨・内容について、再生可能エネルギー発電事業者及び地域住民・地方自治体等に対し、十分に周知徹底及び情報提供等を行うこと。
以上であります。
附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、詳細な説明は省略させていただきます。
何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○古屋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。採決いたします。本動議に賛成の皆さんの起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○古屋委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。この際、萩生田経済産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。萩生田経済産業大臣。
○萩生田国務大臣 ただいま御決議のありました本法律案の附帯決議につきましては、その趣旨を尊重してまいりたいと考えております。
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○古屋委員長 お諮りいたします。ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○古屋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。