2022年10月18日 衆院予算委員会 解散命令請求ただちに 統一協会の不法行為明らか 首相を追求
パネル1 鳥取地方裁判所米子支部平成26年7月10日和解調書 下線は宮本徹事務所記入
パネル2 宗教法人法第81条第1項より抜粋
パネル3 厚生労働省第98回社会保障審議会(2022年9月26日)をもとに宮本徹事務所作成
日本共産党の宮本徹議員は18日の衆院予算委員会で、統一協会(世界平和統一家庭連合)による組織的支援の見返りに、政府・自民党が統一協会側に便宜を図った疑惑を告発し、被害を野放しにしないために解散命令請求(宗教法人格取り消し)をただちに行うよう迫りました。岸田文雄首相は聞かれたことに答えられず、解散命令請求にも後ろ向きの姿勢に終始しました。
宮本氏は、高額献金などで被害を広げてきた反社会的団体である統一協会の考えの根源にあるのが、日本を韓国に貢ぐ“エバ国”とする考え方だと指摘。「韓国教団に送金するために違法に国民の財産を収奪してきた団体との認識はあるか」とただしましたが、岸田首相は「韓国の本部への送金も報道等で承知している」などと述べるだけでした。
宮本氏は、「選挙での支援目あてに国民を苦しめる反社会的カルト集団の広告塔になった議員は罪深い」と批判。安倍晋三元首相らが参院選比例区で統一協会票を差配していたとの証言などを示し、「自民党自身が参院選で統一協会の組織的支援を受けていたことになる。自民党としての総括と反省が必要だ」と迫りました。しかし岸田首相は「選挙等を通じて各議員がどのような関わりを持ったかは議員それぞれ」などと無責任な答弁に終始しました。
宮本氏は「組織的支援で得られた議席にはけじめを」と追及。その上で選挙支援の見返りに政府が便宜を図った疑惑の徹底究明が必要だと告発しました。
被害者が国と統一協会信者らを訴えた国家賠償請求訴訟の和解調書(14年)では、国が裁判長の提案をうけて適切な宗務行政を行うことを約束したのに、何らの改善策も取られませんでした。そればかりか「適切な宗務行政」とは逆に、和解調書の翌15年、安倍政権前には認められなかった名称変更が認められました。
宮本氏は09年まで行われた国による協会への事情聴取が国賠訴訟を理由に中止され、その後も再開しなかった理由を追及。ところが永岡桂子文部科学相は聞かれたことに答えず無関係なペーパーを読み上げ、議場から「質疑妨害だ」「答弁になっていない」などの声が飛びました。
宮本氏は「文化庁宗務課の方針がなぜ変わったのかの資料は3カ月たっても示されない。統一協会との関係を断ち切るというのであれば、便宜をはかった疑惑は政府が徹底究明すべきだ」と強調しました。
被害を野放しにしないためには、宗教法人法に基づく解散命令請求をただちに行うことが必要です。宮本氏は政府が解散命令請求の要件を刑法等の違反に限り、民法の不法行為責任は入らないとする運用をとる一方、民事裁判で統一協会の不法行為責任を認めた判決をふまえて、宗教法人法の質問権の行使を指示したことを指摘。「解散命令請求も、運用を変えるべきだ」とただしました。ところが岸田首相は「法律の解釈は変わっていない」と繰り返すばかり。宮本氏は「その解釈では、質問権をいくら行使しても、解散命令請求はしないことになる。宗教法人法の要件には刑法等に限るとは書いていない。勝手な解釈への固執はやめるべきだ」と求めました。
日本共産党の宮本徹議員は18日の衆院予算委員会で、反社会的、反国民的カルト集団の統一協会から選挙で組織的支援を受けてきた自民党と統一協会の癒着の根深さを追及するとともに、まともに対応してこなかった政府の責任を厳しくただしました。宮本氏は、統一協会が長年求めてきた名称変更まで認めたことをあげ、「統一協会に便宜を図った疑惑を政府自身が徹底的に究明すべきだ」と主張。被害者が求める「解散命令請求」にただちに踏み切るよう求めました。また、介護保険の利用者負担増を厳しく批判しました。
宮本 自民党への支援 反省を
首相 個々の議員によって異なる
宮本氏は、統一協会が正体を隠して伝道を行い、異常な高額献金などで被害を広げてきた反社会的団体で、「この根源にあるのが日本を韓国に貢ぐエバ国とする考え方」だと指摘。毎年数百億円が韓国教団本部に送金されてきたことなどを紹介して認識をただしました。
宮本 違法なやり方で国民の財産を収奪してきた団体であるとの認識はあるか。
岸田文雄首相 社会的に問題が指摘されている団体であると認識している。
宮本氏は、「選挙での支援目当てに国民を苦しめる反社会的、反国民的カルト集団の広告塔になった議員は本当に罪深い」として、「自分の議席を優先するのか、国民の幸せを優先するのか、政治の根本姿勢が問われる」と強調。統一協会関連団体の世界平和連合、勝共連合などの日本代表が安倍晋三元首相について「2012年ごろから応援させていただいた」とし、「選挙においては、依頼された方を各地で応援させていただいた」と述べたとして、「8万票といわれる統一協会票が当落を左右するのが参議院比例区だ」と指摘しました。同党の宮島喜文(16年)、井上義行(22年)両氏が統一協会の組織的支援を受けて当選しています。
参院比例区は個人名の得票が政党の得票としてカウントされ、政党の議席数に結び付く制度です。宮本氏は自民党が組織的支援を受けたということだとして追及しました。
宮本 自民党としての総括と反省が必要ではないか。
首相 (党としての反省に触れず)統一協会との関係は、個々の議員によって異なる。
宮本氏は、参院比例区での統一協会の組織的支援の始まりが13年の北村経夫議員だとして、安倍元首相直々の同氏への支援依頼や、当時の菅義偉官房長官の招待による統一協会幹部の官邸訪問などの報道を指摘して追及。岸田首相が統一協会との関係で「8項目にわたって(議員の)行動を点検している政党はわが党だけだ」などと答弁すると、議場は「質問に答えろ」など批判と怒号で一時騒然となりました。
宮本氏は「官邸ぐるみで取引があったのではないかという重大な疑惑だ」と批判し、菅前首相と北村氏の参考人招致を求めました。
宮本 一転、名称変更認める
首相 経緯わかる資料見ていない
宮本氏は、政府が選挙支援の見返りとして統一協会に便宜をはかってきた事実を徹底的に究明する必要があると迫りました。
宮本氏は、国が統一協会を野放しに、解散命令請求や質問権行使をしなかったことを違法と訴えた国家賠償請求訴訟で、2014年に和解が成立したことを指摘。その調書で、裁判長は、「従前の宗務行政の適法性・妥当性に対する疑問の余地がないわけではない」との見解を示しました。
宮本 和解調書を受けてどういう改善をしたのか。
永岡桂子文部科学相 正当な法務行政をやっていく。
宮本氏の質問に永岡文科相は答えられず、かわって葉梨康弘法務相が答弁し、委員会室は騒然。答弁にたった永岡文科相も支離滅裂なことしか言えません。
宮本氏は、調書を受けて国が適切な宗務行政を行うことを約束しながら、「何にも改善されていない」と批判。1996年から2009年までの間に統一協会に面接を9回行い、活動状況を聴取していたものの、「国賠訴訟中であることを理由に中断し、終了したのちも再開していない」として次のようにただしました。
宮本 なぜ統一協会の事情聴取を再開しなかったのか。
永岡文科相 所轄庁としては、報告徴収・質問権の行使に向けた手続きを進める必要があると考えている。
永岡文科相は、質問とは関係ない答弁書を延々と読み上げるだけ。宮本氏は「聞いたことに何にも答えていない」と厳しく批判するとともに、和解調書の翌年には統一協会の名称変更が認められ、正体隠しの勧誘がいっそう容易になり、新たな被害につながったと指摘。1997年以来、文化庁宗務課が認証はできないとしてきた考え方が「どういう検討・経緯で2015年に変わったのか、説明できる資料が一切示されていない」と批判しました。
宮本 首相は、経緯がわかる当時の資料を見たことがあるか。
首相 見ていない。
宮本 資料を出さないまま闇に葬るなど許されない。
宮本氏は、国が和解調書での約束をかなぐりすてる一方、安倍政権以前は認めてこなかった統一協会の望む名称変更を認めたことは「統一協会に対する便宜が選挙支援の見返りで行われたということになる」と強調しました。
宮本 解散請求へ運用変えよ
首相 政府判断変わっていない
統一協会の被害をこれ以上広げないためには、政府がただちに解散命令請求を行う必要があります。宮本氏は、政府は解散命令請求の要件を自ら狭く限定する運用を続けているとして、「勝手な解釈に固執するのはやめるべきではないか」とただしました。
これまで政府は解散命令請求について、要件を刑法等の刑事罰に限定し、統一協会の不法行為責任や使用者責任が認められた民事裁判の判決は要件に当たらないと拒否。質問権の行使も同様の理由で背を向けてきました。宮本氏は、岸田首相が17日に統一協会の民事裁判での不法行為責任を認めた判決などを理由に「質問権」の行使を初めて指示したものの、解散命令請求の要件については変更を明言していないとして、次のように迫りました。
宮本 解散命令請求についても、民事裁判の判決を根拠に行う運用に変えるべきだ。
岸田 要件の定義に民法は該当しない。政府の判断は変わっていない。
宮本 質問権をいくら行使しても統一協会の役員が刑事罰を食らわない限り、解散命令請求はしないことになる。
宮本氏は、宗教法人法の解散命令請求の要件には、刑事罰に限るなどとはどこにも書かれていないと指摘しました(表)。解散請求における「禁止規範または命令規範に違反するもの」との文言をあげ、民法の不法行為は教科書にも「禁止・命令規範に違反すると評価される」と記述されていると強調。民法は要件に該当しないとする政府の姿勢を批判しました。
さらに、宮本氏はオウム真理教の地下鉄サリン事件以降、宗教法人設立にあたっての審査基準が厳しくなっており、統一協会のような詐欺的布教を行い、組織的不法行為の判決を受けている団体では新たな宗教法人として認証はされないと指摘。一度設立の認証を受ければ、その後不法行為が認定されても宗教法人格を失わないのは「法律の運用として明らかな矛盾だ」と迫りました。
介護保険大改悪中止を
宮本 2割負担対象拡大中止を
首相 どこまで負担お願いするか判断
国では3年に1度の介護保険見直しの議論が行われ、年内にも利用者負担増がまとめられようとしています。社会保障審議会介護保険部会は主な論点として、▽介護サービスの利用料2割、3割負担の対象拡大▽ケアプランの有料化―などを示しています
宮本氏はこれらをパネルで示しながら、「介護保険の大改悪だ」と批判。3年前の介護保険見直しの議論でも高齢者の生活への影響を理由に反対意見があり、利用料の原則2割負担が見送られた経緯を示し、政府の姿勢をただしました。
宮本 物価高騰の中で所得の少ない人ほど生活は厳しい。高齢者は6月から年金が切り下げられ、10月から75歳以上、370万人の窓口負担が2倍になった。介護保険の利用料2割負担の対象拡大の検討は、総理のイニシアチブで中止すべきではないか。
岸田文雄首相 能力のある方に負担してもらうことも重要との意見もあり、どこで線を引いて、どこまで負担をお願いするのか。こうした観点に基づいて、現状の中で判断する。
宮本氏は、年収280万円以上の人に利用料の2割負担が導入された2015年、介護施設運営者でつくる「21世紀・老人福祉の向上をめざす施設連絡会」の影響調査で、「配偶者の生活苦」「多床室へ移った」「利用料の滞納」「支払い困難を理由に退所」といった施設が続出したことを紹介しました。
宮本 高齢者の生活は年々厳しくなっている。介護保険の利用料を2倍化したら、尊厳ある生活ができなくなるのではないか。
首相 今、厳しい生活の中で苦労している皆さんに負担をお願いするというものではない。政治の責任として持続可能性を考えていくことが重要だ。
宮本氏は「介護という人生の中で最も支えが必要なときに、介護を取り上げることにつながる」と指摘し、「制度の持続可能性を言うのであれば、軍事費2倍ではなく、介護保険の国庫負担を増やして、国民の暮らしこそ支えるべきだ」と主張しました。
以上2022年10月19日付赤旗日刊紙より抜粋
≪以下2022年1月18日 第210国会衆院予算委員会第3号議事録抜粋≫
○根本委員長 これにて斎藤君の質疑は終了いたしました。次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。まず、統一協会と自民党の癒着について質問したいと思います。数十年にわたり統一協会の被害が続いてきた背景として、政治と統一協会とが癒着し、統一協会を野放しにしてきたことを指摘しなければなりません。統一協会は、正体隠しの伝道、異常な高額献金などで被害を広げてきた反社会的な集団であります。この根源にあるのが、日本を韓国に貢ぐエバ国とする考え方です。毎年数百億円もが韓国教団本部に送金されてきました。裁判で認定された事実でも、文鮮明の子である文国進は、メシアである文鮮明の後継者と目されており、月一回来日して、献金を指示していたとあります。岸田総理の基本的な認識をお伺いしますが、統一協会が、日本を韓国に貢ぐエバ国とし、韓国教団本部に送金するために違法なやり方で国民の財産を収奪してきた団体である、こういう認識はございますか。
○岸田内閣総理大臣 旧統一教会については、悪質商法に関する問題、親族の入信に起因する家族の困窮等の問題等、様々な問題が指摘されていると承知をしており、このような状況を踏まえて、社会的に問題が指摘されている団体であるとの認識を持っています。また、韓国の本部への送金についても報道等で承知をしています。政府としては、旧統一教会への対応については、相談体制強化等による被害者の救済、そして、消費者契約等の法制度の見直し等による再発の防止、そして、宗教法人法に基づく報告徴収、質問権を通じた事実把握、実態解明、この三つを並行して進めるべき課題であると認識をして取り組んでまいります。
○宮本(徹)委員 選挙での支援を目当てに国民を苦しめる反社会的、反国民的カルト集団の広告塔となる、こういう議員は本当に私は罪深いと思いますよ。自分の議席を優先するのか、国民の幸せを優先するのか、政治の根本姿勢が問われる問題だと指摘しておきたいと思います。統一協会関連団体の世界平和連合、国際勝共連合、UPFなどの日本代表を務める梶栗正義氏は、安倍元首相について、二〇一二年頃から応援させていただいたと述べ、選挙においては依頼された方を各地で応援させていただいたと述べています。八万票と言われる統一協会票が当落を左右するのが参議院比例区です。二〇一六年は宮島喜文氏、今年は井上義行氏が統一協会の組織的支援を受けて当選をしております。この統一協会票の差配を行っていたのが安倍元首相らだったと証言されています。参議院比例区は、個人名の得票は政党名の得票としてカウントされ、政党の議席に結びつきます。つまり、自民党幹部が統一協会票を差配して統一協会が組織した個人名の得票は、自民党の比例得票になっていたわけです。総理、つまり、自民党自身が参議院選挙において統一協会の組織的な支援を受けていた、こういうことになるんじゃありませんか。
○岸田内閣総理大臣 まず、この場に内閣総理大臣として立たせていただいています。答弁はその立場を踏まえて申し上げなければならないわけではありますが、事柄の性質上、自民党についてお答えをさせていただきたいと思います。政治家の使命の一つ、これは、可能な限り多くの方々と接し、意見に耳を傾け、そして、自分自身の考えを説明し、理解いただく努力を重ねることであると認識をしています。そうした活動の一環として、結果的に多くの議員が旧統一教会あるいは関係団体と接触を持つこととなり、国民の皆様の政治への信頼を傷つけたこと、このことにつきましては率直におわびを申し上げなければならないと考えております。他方、各議員と旧統一教会との関係は個々の議員によって異なり、選挙においても、見返りというお尋ねもありましたが、様々な関わりがあったという報道があることを承知しております。いずれにせよ、大切なことは、過去の関係を点検した上で、未来に向かって関係を絶つことであると考えております。政治に対する国民の皆様の信頼を取り戻すことができるよう、これを徹底してまいりたいと思っています。このために、党ガバナンスコードを改定し、指針を明確化する、あるいは、党内に議員からの個別照会に応じる事前のチェック体制を構築をする、こうした取組を進めるとともに、党としての関係遮断に向けた方針の具体化の対応を、全所属国会議員そして地方組織に対し今月中に具体的に周知徹底する、こうしたことを対応として進めていくことを考えております。
○宮本(徹)委員 個々の議員の問題を今聞いたわけじゃないんですよ。総理は自民党の総裁ですから、参議院の比例区の選挙の仕組み上、参議院の比例区の自民党候補が統一協会の組織票を受けたら、それは自民党自身が比例得票を統一協会から組織的にもらったということになるわけですよ。そのことについて私は聞いているんですよ。自民党としての反省が必要なんじゃないですか。
○岸田内閣総理大臣 今申し上げたように、まず、関わりを持ったことについては率直におわびを申し上げなければなりませんが、選挙等を通じて各議員がどのような関わりを持ったか、これについては議員それぞれ、様々であります。そういったことを受けて、党としては今後関係を絶つということを明らかにしたということであります。是非、党として、今後、政治の信頼の回復という観点から、この関係を絶つということを徹底していきたいと申し上げております。
○宮本(徹)委員 個々の議員が応援をもらっても、参議院の比例区という性格上、党として応援をもらったことになるんですよ。そして、党として関係を絶つというのであれば、この統一協会の支援で生まれた井上義行さんの議席はどうするおつもりなのか。けじめをつけるお考えはありませんか。
○岸田内閣総理大臣 今申し上げたように、関係を持ったことについては率直におわびを申し上げなければならないと思っています。ただ、関係はそれぞれ、様々であります。それを国民の皆さんに率直に説明をし、政治の信頼回復のために努力することは重要であり、そして何よりも、未来に向けて関係を絶つことが重要であるということを党の方針として確認をしています。そのために、先ほど申し上げました取組を今後進めていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 統一協会との関係を絶つと口では言いながら、実際は統一協会の組織的支援で得られた議席についてもけじめもつけようとしない。そういう姿勢だから支持率がどんどん下がるんじゃないですか。安倍政権時の参議院比例区での統一協会の組織的支援の始まりは、二〇一三年の北村経夫氏です。自民党の資料を基にした報道では、北村氏の支援団体として世界平和連合とあります。世界平和連合は統一協会の政治集団としての顔であります。このとき、安倍元首相が北村経夫氏の支援を直々に頼んだとする内部資料、そして、当時の菅官房長官の仕切りで、北村氏が統一協会の福岡の教会を回ったとの証言が報道されております。その後、二〇一六年、二〇一七年と統一協会幹部が首相官邸に訪れ、二〇一七年については菅官房長官の招待だとの報道があります。これは事前に通告しております。総理、菅前総理らに、事実かどうか確認されましたか。
○岸田内閣総理大臣 まず、旧統一教会関係者が官邸に招待されたとする御指摘の報道については、当時の入邸に関する記録が残っていないと報告を受けております。そして、なお、御指摘の報道においては、菅元総理の事務所より官邸訪問の招待をした事実はない旨回答がされたと報じられていることも承知をしております。
○宮本(徹)委員 菅総理にちゃんと確認をして、この二〇一三年、北村氏が統一協会の福岡の教会を回ったというのは、当時の北村事務所の選対部長の証言なんですよ。その点、確認はされましたか。
○岸田内閣総理大臣 自民党においては、各議員がこの社会的に問題を指摘されている団体とどう関わったのか、これは、八項目にわたってそれぞれの行動を点検し、それを党として整理、集約をしております。こうした対応を取っている政党は我が党だけであると認識をしています。そして、その上で、それぞれ国会議員が自らの行動を説明した上で関係を絶つ。それを徹底するために、ガバナンスコードの改定、そしてその裏づけとなるための事前チェック体制を整備する。そして、さらには、地方に対しても、その方針の具体的な対応、これを徹底するべく、政府としてしっかりと周知をする。こうした対応を取っている政党も我々自民党だけであると認識をしております。こうした対応を徹底することによって、信頼回復を行っていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 何にも質問に答えていないじゃないですか。私、わざわざ事前に、菅前総理にこの二〇一三年のことについて確認をして答えてくださいと先週通告しているんですよ。あえて確認をせずに、べらべら質問通告していないことを答えられる。何で菅前総理に二〇一三年のことをお聞きにもならないのかと、疑惑は深まるばかりであります。二〇一三年に、このときに、官邸ぐるみで統一協会との取引があった、こういう重大な疑惑が指摘されているわけであります。委員長、菅前総理と北村経夫議員を本委員会に参考人招致することを求めたいと思います。
○根本委員長 理事会で協議します。
○宮本(徹)委員 安倍元首相は、昨年、統一協会関連団体UPFの集会に、韓鶴子総裁を始め皆様に敬意を表しますとビデオメッセージを寄せておられました。この件について、梶栗氏は、六度の国政選挙において私たちが示した誠意というものもちゃんと本人が記憶していた、こういう背景があったんだ、こう発言されております。選挙の支援の見返りとして元総理が反社会的カルト集団の広告塔となった、極めて重大なことであります。同時に、六回の選挙の支援の見返りはこれだけなのか、政府が見返りとして便宜を図ったことはないのか、徹底的な究明が必要だと思います。パネルを見ていただきたいと思います。これは、被害者が国と統一協会と信者らを訴えた損害賠償請求訴訟の和解調書であります。この裁判は、国が統一協会を野放しにして解散命令請求や質問権行使をしなかったことを違法だと訴え、二〇一四年に和解しています。記されております裁判長の言葉を読みます。被告国においても、従前の宗務行政の適法性、妥当性に対する疑問の余地がないわけではないことや、今後適切な宗務行政がなされることを期待する意味から、本和解への参加を求めることが適当であると考えた。この裁判長からの和解の提案を受けて、国は、宗教法人法の趣旨目的にのっとり、適切にその職務を行っていく、こう約束をされました。総理、この和解調書は御存じですよね。
○岸田内閣総理大臣 和解調書を知っていますかということですが、和解調書自身は、提出資料として今委員の方から示されて、現物というか、この文書を初めて見た次第であります。
○宮本(徹)委員 今初めて見たということですけれども、この和解調書を受けて国はどういう改善策を取ったんですか。
○根本委員長 法務大臣葉梨康弘君。(宮本(徹)委員「宗務行政なんですよ」と呼ぶ)
○葉梨国務大臣 宗務行政ではなくて、訟務ということで、裁判の代理人を訟務局で務めておりますので、私からお答えさせていただきます。ここの、今、赤字の部分については、更正決定がなされて削除されておるというふうに聞いております。
○宮本(徹)委員 そうなんですね。この赤字の部分は、その後、更正調書を作らせて、国が圧力をかけて削除させたという、とんでもないことまでやっているわけですよ。この和解調書そのものは、国の代理人も含めて全ての代理人、当事者が参加した場で一言一句裁判長が読み上げた言葉ですよ。それを、終わった後に更正調書を作らせるという異様なことまでやったわけでございますが。この中では、この裁判長の言葉を受けて、その場で国は、宗教法人法の趣旨目的にのっとり、適切にその職務を行っていく、こう約束されたわけですけれども、もう一度お伺いします。この和解調書を受けて、国は統一協会に対する宗務行政をどう改善したんですか。
○永岡国務大臣 お答えいたします。御指摘のうち、国の抵抗で和解調書の文言が削除されたという点につきましては、あえて申し上げますと、御指摘の和解調書には裁判長が発言をしていない内容が記載されていたことから、その旨を裁判所に申し入れまして、裁判所の判断により更正されたものと承知をしております。
○宮本(徹)委員 全然、聞いたことに答えていないですね。私は、これは弁護士の方に、この部分はちゃんと読み上げたと参加している弁護士の方に聞いております。でたらめを言わないでください。その上で、どういう改善策を取ったんですかということを聞いているんですよ。宗務行政を……(発言する者あり)何言っているんですか。和解調書そのものは、宗教法人法の趣旨目的にのっとり、適切にその職務を行っていくというところは削除していないですよ。
○永岡国務大臣 お答えいたします。引き続き、正当な宗務行政をやっていくということでございます。以上です。
○宮本(徹)委員 もう何か、とんちんかんな答弁をされても困るんですよ。結局、皆さんのところにも和解調書、事務連絡の部分、つけてありますので御覧になってください。国は、宗教法人法の趣旨目的にのっとり、適切にその職務を行っていくということを約束したにもかかわらず、何にも統一協会に対しての宗務行政は改善されていないんですよ。なぜほごにされたのか、ここは極めて解明しなければならない点であります。さらに、資料を見ていただきたいと思いますが、四ページ目。国は、一九九六年から二〇〇九年までの間に統一協会と面接を九回行い、活動状況を調査し、一連の民事事件の確定判決で認定された使用者責任を踏まえ適切な管理運営や個別事案への誠実な対応をするよう求めてきました。ところが、国による統一協会のこの事情聴取は、国賠訴訟中であることを理由に中断して、国賠訴訟が終了した後も再開しておりません。なぜ統一協会の事情聴取を再開しなかったんですか。
○永岡国務大臣 お答えいたします。これは、宗務行政の妥当性につきましては、旧統一教会の所轄庁が東京都知事から文部大臣となった平成八年以降、文化庁におきまして、当該法人の協力を得て、旧統一教会に関する報道、訴訟に関する情報等を基に活動状況を聴取するとともに、民事事件の確定判決で認定された使用者責任を踏まえた、これは、宗教法人としての適正な管理運営や個別事案への誠実な対応をするよう、強く求めてまいりました。一方で、旧統一教会につきましては、平成二十七年の名称変更後、平成二十八年、二十九年においては、それまで認められていた使用者責任とは異なり、法人自体の組織的な不法行為責任を認めた民事裁判の例が見られること、また、今般、政府が設けました合同電話相談窓口におきまして、金銭トラブルから心の健康に関するものまで、九月三十日時点で幅広く千七百件以上の相談が寄せられております。法テラスや警察を含めた様々な機関、そして相談につながれていることなどの状況が生じているものと承知をしております。その上で、こうした状況を踏まえれば、旧統一教会については、宗教法人法に定める、法令に違反をして著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたことや、宗教団体の目的を著しく逸脱した行為をしたことといった解散命令の事由に該当する疑いがあると考えられます。
○根本委員長 簡潔にお願いします。
○永岡国務大臣 このため、所轄庁といたしましては、報告徴収、質問権の行使に向けた手続を進める必要があると考えており、その準備に速やかに着手をしてまいりたいと考えております。以上でございます。
○宮本(徹)委員 ちょっと余りにもひど過ぎますよ。聞いたことに何にも答えずに、違うペーパーを延々と何か読んでいるような感じにしか聞こえないんですよね。この事情聴取は、国賠訴訟を理由に中断して、しかし国賠訴訟が終わった後も再開していないんですよ。なぜ再開していないんですかと聞いても、何にも関係ないことをぺらぺらぺらぺらしゃべり続ける。結局、事情聴取をなぜ再開しなかったのかという理由を説明できないということじゃないですか。次に行きます。二〇一四年の和解調書の翌年、統一協会の被害防止のための適切な宗務行政と真逆のことが行われております。統一協会が長年求めてきた名称変更が認められました。下村大臣の関与が指摘されております。これにより正体隠しの勧誘が一層容易になり、新たな被害につながりました。文化庁宗務課は、一九九七年以来十八年間、認証できないから申請しないでくれと言い、統一協会も申請してこなかった。にもかかわらず、統一協会の側がなぜ態度を変えて二〇一五年というタイミングで訴訟も辞さず申請するという行動に出たのか。名称変更の認証について、申請さえすれば認証まで進んでいくという何らかの見通しがあったと考えざるを得ません。ところが、統一協会の名称変更は認証できないという宗務課の一貫した考え方がどういう検討経緯で二〇一五年に変わったのか、説明できる資料が一切示されていません。総理は、この名称変更が認証できないという考えがなぜ変わったのか、経緯が分かる当時の資料を御覧になったことがありますか。見たことがあるかないかでいいです、ちょっともう時間がなくなってきちゃいましたので。
○岸田内閣総理大臣 御指摘の点については、二〇一五年以前から名称変更の相談はありました。しかし、二〇一五年までは、相談の結果、旧統一教会からの申請はなかったと認識をしています。申請が初めて行われたのが二〇一五年の時点であると承知をしています。そして、初めて申請が行われた二〇一五年の時点に、申請が行われ、そして所轄庁として当該申請の内容が法令に規定された要件を備えていることを確認し、認証の決定を行った、こうしたことであります。二〇一五年までに、いろいろの動きについては、結果として具体的な申請は存在していなかった、これはしっかりと確認しておかなければならないと思っています。
○宮本(徹)委員 私が聞いているのは、その宗務課の方針が変わった資料を見たことがあるかどうかですよ。私は、何にも示されない。私は、三か月間、当時の経緯を示す資料を出してほしいと言っていますけれども、いろいろある、確認中と言って一切出てこない。桜を見る会以来ですよ、こんなに資料が出てこないのは。総理は、その資料を見たことありますか。それだけ答えてください。長い答弁をしたら時間がかかりますので、見たことがあるかないか、それだけでいいですよ。
○岸田内閣総理大臣 具体的な書類、現物を見たかということでありますが、その書類の現物は見ておりません。これは、今申し上げたような報告を受けて、それに対してこの判断をした、そうしたことであります。
○宮本(徹)委員 ですから、総理も見たことないんですよ。誰も見たことがないんですよ。名称変更がなぜ行われたのか、なぜ宗務課の方針が変わったのか、そこの政治に関与があったのかなかったのか。この資料は、出さないまま闇に葬るなんていうのは許されないですよ。結局、二〇一三年の参院選で統一協会が自民党の組織的支援をした。それ以降、和解調書で約束した宗務行政の改善、解散命令請求や質問権行使はやらない、安倍政権以前行っていた統一協会の事情聴取も行わない。逆に、安倍政権以前は認めてこなかった、統一協会の望む名称変更だけが行われた。これはまさに、総理、統一協会に対して便宜が選挙の支援の見返りで行われたということになると思いますよ。私は徹底的な究明が必要だと思います。その上で、解散命令請求についてお伺いしたいと思います。
○根本委員長 総理が答弁したいと言っていますよ。総理が答弁したいとおっしゃっている。
○宮本(徹)委員 いや、いいです。もう時間がないですから。解散命令請求について伺います。統一協会の不法行為責任、使用者責任を認めた民事裁判の判決は多数あります。全国弁連の皆さんも速やかな解散命令請求を求めてまいりました。ところが、政府はこれまで、解散命令請求の要件を刑法等の違反に限り、民法の不法行為責任は入らないとする解釈を取り、解散命令請求に背を向けてきました。質問権の行使も同様の理由で慎重でしたが、今回、総理は、民事裁判での統一協会の不法行為責任を認めた判決を踏まえて、質問権の行使を指示いたしました。総理、解散命令請求についても、民事裁判の不法行為責任や使用者責任を認めた判決を根拠に行える運用に変えるべきではありませんか。
○岸田内閣総理大臣 解散請求を、解散を認めるに当たっての裁判所の判断については、午前中も議論になりましたが、平成八年の年に最高裁において判決を通じて明らかにされています。その要件について午前中も申し上げたところでありますが、その判断は政府としても踏襲しておりますし、政府としての対応は変わっておりません。その中で、刑法等の実定法規という部分がありますが、これは必ずしも刑法典のみを指すわけではないものの、典型的には、罰則により担保されている刑法等の実定法規の定める、その基本の内容があらかじめ具体的かつ明確に定まっているものであると考えています。この定義に当てはめますならば、午前中も申し上げたように、民法はこれには該当しないと思っています。例えば、特定商取引法ですとか著作権法ですとか外為法、こうした法律がこうした法規に該当するものであると認識をしております。いずれにせよ、政府の判断は変わっておりません。
○宮本(徹)委員 変わっていないじゃなくて、変えてくれという質問をしているんですよ。その解釈では、質問権を幾ら行使しても、統一協会の役員が刑事罰を食らわない限り、解散命令請求はしないということになるわけですね。しかし、宗教法人法の解散命令の要件には、刑法等に限る、刑事罰のものに限るということは、どこにも書いていないわけであります。教科書もこう書いていますよ。民法の不法行為とは、私的生活関係において他人の権利を侵害する行為であって、法秩序がその権利を保護するために、行為者の権利にも配慮しつつ設定した禁止・命令規範に違反すると評価されるものをいうということです。これが教科書でありますよ。教科書の中でも、禁止・命令規範違反だと、民法の不法行為は、こういうふうに書かれているわけです。ですから、刑事罰に限るような勝手な解釈に固執するのはやめるべきではありませんか。
○岸田内閣総理大臣 先ほど申し上げましたとおり、刑法等の実定法規に定める禁止規範又は命令規範、これは別に刑法典に限っているというものではありません。これの解釈として、禁止規範への違反に対して刑罰を科すことを定めた法令であると認識をしています。よって、刑法以外にも、外為法や著作権法や特定商取引法、こうした法律を挙げることができると思っております。こうした判断は、従来から変わっておりません。
○宮本(徹)委員 私は、今、民法の関連の教科書の中身を読み上げたわけですよ。全く反論になっていないですよ。民法についても、不法行為については、禁止・命令規範に違反すると評価される、これを不法行為というんだと書いているんですから、そこはちゃんと整理していただきたいと思いますよ。さらに、もう一点申し上げますと、地下鉄サリン事件を受けて、宗教法人設立に当たっての規則の認証の審査基準を厳しくしております。このときに、布教方法に、社会的に相当と認められる範囲を逸脱した詐欺的、脅迫的手段を用いていないか、暴力的行為、反社会的な活動又は公序良俗に反する活動を行っていないか、こうしたことを調査することになっております。つまり、地下鉄サリン事件以降の新しく宗教法人をつくる際の認証の審査基準でいえば、今の統一協会のような詐欺的な布教、これをやって組織的不法行為と断じられる判決があるような団体は、新たに宗教法人になろうと思っても、もうなれないんですよ、今は。絶対に新たには認証されません、今は。ところが、一旦設立の認証を受ければ、不法行為が認定されても宗教法人であり続けられる。これは、はっきり言って、法律の運用として矛盾していませんか。
○岸田内閣総理大臣 先ほど来説明しているように、政府としての法の解釈、運用、これは全く変わっておりません。平成八年の最高裁の判決に示された解散命令に至るまでの要件、これは、この解釈、変わっていないということであります。違法性とそして組織性、これをしっかり兼ね備えたものでなければならない、こうした判断を踏襲しているところであります。こうした法令に基づいて今回の案件についてもしっかりと判断をすること、これがこの判断の正当性を裏づける上でも重要であると考えております。
○宮本(徹)委員 質問に全く答えていないですよ。宗教法人設立に当たっての認証の審査基準との関係でいったら、どう考えたって、不法行為をやっているものは今新たになれないのに、現に不法行為をやっている宗教法人はそのまま解散もされずに宗教法人のままでいられるというのはおかしいじゃないかということを言っているんです。そこはおかしいと感じませんか。
○岸田内閣総理大臣 解散に至るまでの考え方について申し上げております。そして、それは全く変わっていないということを説明させていただいています。法律に従って粛々と対応することが重要であると思います。設立の考え方と法律の解散の考え方、これが矛盾しているのではないかという指摘でありますが、私たちが今議論しておるのは、解散に向けての過程であります。法律に従って粛々と対応することが、この法律への対応の正当性を確実なものにすると考えております。
○宮本(徹)委員 総理、結局、間違った勝手な解釈をしているから、法律の運用上、設立時の認証と、そして解散できるところに大きなずれが生まれてしまっているんですよ。ここは、法律の解釈を法律どおりに、法令に違反してというのは、法令に違反していたんだから、民法も含めてあらゆる法律を入れて解釈すれば、整合性が取れて、しっかりと被害防止に向けて解散命令請求につなげられるわけです。その点、しっかりと考えていただきたいと申し上げまして、次のテーマ、介護の問題について行きたいと思います。三年に一度の介護保険制度の見直しの議論が行われております。年内に方向性がまとめられます。この中で、介護保険の利用者の負担増があるわけですね。パネルを見ていただきたいと思います。大改悪であります。利用料の二割、三割負担の対象の拡大、ケアプランの有料化、多床室の利用料の引上げ、要介護一、二の生活援助の保険給付外しなどなどです。三年前の介護保険の見直しの際も、介護保険の利用料を原則二割にすることが検討課題とされましたが、三年前は見送られました。どういう反対意見があって見送られたのか、総理は御存じですか。
○岸田内閣総理大臣 これは、厚生労働省の審議会の過去の経緯についての御質問でありますので、詳細につきましては厚生労働大臣から答弁をさせていただきます。
○加藤国務大臣 介護保険の利用者負担割合については、負担能力に応じた負担を通じて制度の持続可能性を確保する観点から見直しを重ねてきました。御指摘の令和元年の社会保障審議会の介護保険部会では、利用者負担を原則二割とすることについては、生活への影響も踏まえて慎重に検討するべきという慎重意見もあったところでありますが、他方、能力のある人には負担していただくことも重要であり、二割負担の対象について拡大が必要との意見もあり、それらを踏まえて引き続き検討を行うことが適当とされて、今日に至っているわけであります。
○宮本(徹)委員 つまり、生活への影響を考えて慎重であるべきだということから、負担増は三年前は見送られるということになりました。じゃ、今、三年前と比べて国民生活はどうなっているのかということであります。今日も物価高騰の問題が議論されておりますが、本当に今、物価高騰の中で所得が少ない人ほど厳しい状況を迎えております。その中で、高齢者でいえば、六月から年金は切り下げられ、この十月から、七十五歳以上の方、三百七十万人の医療費の窓口負担が二倍になっております。三年前も、生活の影響、これを考えたら見送らざるを得ない、こういうものを、この物価高騰の中行っていくというのはあり得ないと思うんですよね。この介護保険利用料の二割負担の対象拡大、この検討は総理のイニシアチブで中止すべきじゃありませんか。
○岸田内閣総理大臣 ただいま厚生労働大臣から答弁がありましたように、三年前の議論においても、生活への影響を懸念する声もあった、一方で、この制度の持続可能性ということを考えた場合に、能力のある方々には負担をお願いする、こうした議論も大事だ、そうした議論が行われたという答弁であったと聞いておりました。能力のある方には負担を負ってもらう、そのことによって制度全体を維持していく、多くの方々の生活を支えていく、こういった結果につながるという考え方は重要であると思います。能力のある方に負担していただく、これを、どこで線を引いて、どこまで負担をお願いするのか、こうした観点に基づいて今の現状の中で判断をしていく、こうした考え方は当然大事な考え方ではないかと考えます。
○宮本(徹)委員 この物価高騰の中、負担増の検討を進めるというのは驚きの姿勢だと言わなければなりません。能力がある方ということをおっしゃいますけれども、今、介護保険は、一割負担が九割以上の方が占めております。この二割負担が導入されたのは二〇一五年です。能力があるといって導入されましたけれども、何が起きたのか。年収二百八十万円以上の人に二割負担が導入された二〇一五年、介護施設運営者らがつくる連絡会が実施した影響調査があります。千五百八十九施設の特養などが回答しておりますが、ショートステイの利用日数、回数が減ったのが四百七十一施設、配偶者が生活苦に陥ったが三百十一施設、多床室へというのが二百十一施設、利用者の滞納が二百六施設、支払い困難を理由に退所者が生まれたのが百一施設であります。そして、在宅の場合は、そのままデイサービスやヘルパーの日数を減らすということにつながったわけであります。高齢者の生活は本当に年々厳しくなっております。在宅の高齢者の方が紙おむつも干して再利用しているのも珍しくない、こういう話も介護現場の皆さんからお伺いします。介護保険の利用料を倍加したら、尊厳ある生活ができなくなるんじゃないですか、総理。
○岸田内閣総理大臣 今、厳しい生活の中で御苦労をされておられる方皆さんに負担をお願いするというものではないと理解をしています。今のこの状況の中で負担をお願いする方々、収入等、様々な条件の中で、どこまで絞り込んだ上で負担をお願いするのか、こうした議論が続いてきた結果であると認識をしています。制度全体を維持し、そして未来につなげていく、これは、次につながる世代にとっても大切な課題であり、政治の責任として、持続可能性、しっかり考えていくことは重要であると認識をしています。
○宮本(徹)委員 介護保険制度は、家族介護から社会で支える介護にするためにつくったわけであります。介護という人生の中で最も支えが必要なときに介護を取り上げることにつながるんですよ。二百八十万円のところまで二割負担にしただけでも大変なことが起きました。制度の持続可能性というのでしたら、軍事費二倍ではなくて、介護保険の国庫負担を増やして国民の暮らしこそ支えるべきだ。このことを申し上げまして、時間になりましたので、質問を終わります。
○根本委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。