2022年11月2日 衆院厚生労働委員会 介護保険改悪 給付外しは国家的詐欺
配布資料 出典:第100回社会保障審議会介護保険部会(2022年10月31日)資料抜粋
配布資料 出典:全国老人福祉施設協議会他「軽度者への生活援助サービス等に関する在り方について(要望)」
配布資料 出典:第100回社会保障審議会介護保険分科会(2022年10月31日)資料抜粋
配布資料 出典:新型コロナウイルス感染症対策分科会(2022年10月13日)資料抜粋
配布資料 出典:厚生労働省提出資料
配付資料 出典:環境省提出資料
日本共産党の宮本徹議員は2日の衆院厚生労働委員会で、要介護1・2の訪問介護・通所介護を市町村の総合事業へ移行し保険給付から外す介護保険改悪案について、「在宅介護を崩壊させる深刻な事態が起きる」と警鐘を鳴らし、断念を政府に迫りました。10月31日の社会保障審議会介護保険部会では、委員から要介護1・2の総合事業への移行に反対する意見が続出。全国老人福祉施設協議会など介護8団体も反対声明を出すなど、業界ぐるみで反発が広がっています。
宮本氏は「要介護1・2を移行して総合事業の報酬が下がれば、介護の担い手確保が困難となる」と主張。「保険料だけ納めて保険給付が受けられない、文字通り国家的詐欺になる」と批判しました。
加藤勝信厚労相は、反対の意見があることを認め、「こうした意見をしっかり受け止めながら、高齢者に必要なサービスが提供できるよう丁寧に議論を進める」と答えました。
介護保険部会の資料は、10月に強行された75歳以上の高齢者医療の負担割合(一定所得以上2割)を参考に、介護保険の負担割合を2割に引き上げることを示唆しています。対象は単身で年収200万円以上で、所得上位30%に広がります。これについて加藤勝信厚労相は「基本的には能力のある人にそれなりに負担していただく」と負担増を正当化しました。宮本氏は「その能力のある人に年収200万円の人は入らない」と反論し、撤回を強く求めました。
以上2022年11月3日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2022年11月2日 第210国会衆院厚生労働委員会第5号 議事録≫
○三ッ林委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。まず、介護保険についてお伺いをいたします。一昨日、社会保障審議会介護保険部会で、給付と負担の見直しの七つの論点が示されました。要介護一、二の訪問介護、通所介護を地域支援事業へ移行する、これも一つのテーマになっているわけでありますが、この問題については、社会保障審議会介護保険部会で委員から反対意見が相次ぐということになっております。今日、配付資料でもお配りしておりますけれども、要介護一、二は専門的ケアが必要なんだ、専門的ケアがあってこそ重症化防止ができるんだという意見だとか、あるいは、サービス単価の切下げにつながれば人材確保も難しくなっていくんだ、こういう意見が相次いでいるわけです。ちょっと確認しますけれども、これまでの介護保険部会の中で、この件について、推進すべきと意見を述べている人は何人で、懸念や慎重意見を示している方は何人いらっしゃるでしょうか。
○大西政府参考人 お答えいたします。介護保険部会で、今おっしゃられました要介護一、二の訪問介護、通所介護を地域支援事業へ移行する件について、推進すべきとする委員は何人で、反対を示される委員は何人いるかという御下問でございます。(宮本(徹)委員「反対じゃない、懸念や慎重ね」と呼ぶ)はい。反対や、丁寧なとか、御懸念を示す委員は何人いるかという御下問でございます。軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方につきましては、現在、御指摘の社会保障審議会介護保険部会において、幅広い観点から御議論をいただいているところでございます。介護保険部会における御発言に基づきまして、各委員のお立場を、賛成又は反対、御懸念も含めまして、いずれかに集約するということは必ずしも現時点でできないことですから、お尋ねについて一概にお答えすることは困難であると考えております。いずれにいたしましても、高齢者の方々に必要なサービスが提供されますよう、様々な御意見をしっかりと伺いながら、丁寧に御議論いただき、検討を進めてまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 驚きですけれども。今日、資料一ページ目と二ページ目に、これは三十一日に皆さんがまとめられた意見ですからね、二十五人中十九人の意見がここに掲載されているんですかね、丸の数は十九ありますが。推進というのは三つですね。それ以外は慎重、懸念、反対、時期尚早、時期尚早、慎重、慎重、慎重、こういう意見がずらっと並んでいる。圧倒的に、やるべきではないというのが介護保険部会の中での意見だと思います。これをカウントしたくないという気持ちは分かりますけれども、現実は見なきゃいけないと思うんですね。さらに、次の資料をつけておりますけれども、全国老人福祉施設協議会を始め介護八団体も、反対声明というものを出しております。業界ぐるみでの反対という状況になっているわけですね。恐らく皆さんの地元でもそうだと思いますけれども、例えばヘルパーさんというのは、本当にどこでも六十代、七十代が主力ということで、二十代、三十代はほとんどいないという状況だと思います。賃金が安くて不安定ですよね。キャンセルがあってもその補償もない。この間もお話を聞きましたら、十万円の収入を予定した月が、キャンセル、キャンセル、キャンセルで五万円になってしまった、こんな話も起きているわけですね。スーパーのパートの方が安定している、こういうことも言われていて、ヘルパーさんの確保は大変苦労しているわけですよ。ですから、本当は、やらなきゃいけないのは、賃上げをどう進めるのかというのを議論しなきゃいけないわけですけれども、これを、要介護一、二を、訪問介護、通所介護を、地域支援事業、こういうものに移していくということになれば、当然、総合事業は報酬が下がります。そうなれば、本当に担い手が、いよいよ確保が困難になる。在宅介護を崩壊させる事態が起きかねないと私は思います。大臣、これだけ懸念の声が出ているのをどう受け止めているんでしょうか。断念すべきじゃないでしょうか。
○加藤国務大臣 そもそも、軽度者への生活援助サービス等に関する給付の在り方、これは令和元年の社会保障審議会介護保険部会でも当時議論がされ、引き続き検討を行うことが適当とされたわけでありますので、それを踏まえて、今年の介護保険部会でも御議論いただいているということでございまして、それについては、今委員がお示ししたように、様々な観点の御意見をいただいているところでもあります。また、十月二十一日には介護関係団体からも、総合事業に移行することに関する反対の意見書もいただいたところでございます。こうした意見もしっかりと受け止めながら、引き続き、高齢者の方々に必要なサービスが提供できるよう、介護保険制度を持続可能なものにしていく中で、そうした必要なサービスを提供していくためにどうすべきなのか、これについて丁寧な議論を進めていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 出されている意見はしっかり受け止めながらというふうにおっしゃいましたので、しっかり受け止めれば結論ははっきりしていると思いますので、この要介護一、二を介護保険給付から外す、総合事業に移すというのはやめるというのを決断していただきたいと思います。要支援一、二に続いて要介護一、二まで外したら、本当に、保険料だけ納めて介護保険給付が受けられない、文字どおり国家的詐欺のようなことになってしまいますので、そこは早く断念を決断していただきたいと思います。次に、一昨日の社会保障審議会の介護保険部会で示された論点を見ていますと、利用料の負担についてこう書いてあります。資料の五ページ目ですけれども、「「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準をどのように考えるか。」「その際、本年十月に施行された、後期高齢者医療制度の患者負担二割(一定以上所得)の判断基準が、後期高齢者の所得上位三〇%とされていることとの関係をどのように考えるか。」こう書いてあるんですね。つまり、これを見ると、介護保険は今、一定所得以上は、単身の場合は年収二百八十万円以上、比率でいえば九%ですけれども、これも後期高齢者医療制度に合わせて、二百万円以上、三〇%に広げよう、こういうふうに読めるわけであります。大臣にお伺いしたいと思いますけれども、この単身、年収二百万円の方、あるいは複数世帯、後期高齢者、三百二十万で二割負担ですけれども、こういう世帯に余裕があるとお考えでしょうか。
○加藤国務大臣 利用者負担割合の在り方についても、先ほどの議論と同様に、令和元年の社会保障審議会の介護保険部会で議論が行われ、慎重、積極的な、それぞれの意見があり、引き続き検討を行うことが適当とされた。それを踏まえて今御議論いただいているところでございまして、現時点において具体的な見直しの方向性が決まっているわけでもなく、まさに同部会において議論をしていただきたい。そして、今お話のあった点は、現在の後期高齢者医療制度においては年金収入等二百万円以上とされているわけでありますけれども、それを踏まえながら、介護保険の現状の水準等を見て、それをどう判断するのか、こういうことでありまして、まさにそこをこれから更に議論をしていただいて、高齢者の方々に必要なサービスが提供されながら、先ほど申し上げた介護保険全体の持続可能性をどう担保していくのか、それに関しても丁寧に議論を重ねていただきたいと思っております。
○宮本(徹)委員 私のお伺いしたことにお答えになっていないんですけれども。年収二百万円、単身世帯の方に余裕がある、こういう認識は大臣にございますかとお伺いしております。
○加藤国務大臣 後期高齢者医療制度においては、まさに、年金をもらっている方、そして今働いている方、そしてその間の負担関係をどう考えるのか、様々な観点で議論をされたところであります。介護については、医療とはまた違った形で負担が発生するわけでありますから、それらも踏まえて判断する必要は当然あると思います。
○宮本(徹)委員 大臣おっしゃるとおり、医療と介護の負担の発生の仕方は違いますね。介護はずっと長期にわたって負担が発生するという点では、大変、この引上げというのは生活に大きな影響を与えるということになると思うんですね。私は、何で余裕があるとお考えですかと聞いているかといいますと、実は、後期高齢者の二百万円の議論をしたときに、当時、田村大臣が、年収二百万円の方には家計調査を見れば十二万円の余裕がある、こう答弁されたので、それでお伺いしているわけですよ。ですけれども、余裕があるといって、後期高齢者は、二百万の方に一人当たり三・四万円の負担増ということに、医療費ではなったわけですね。さらに、この間、物価高もあります。こういうことを考えたら、とてもじゃないけれども、これは、年収二百万円まで二割負担を広げるというのはやってはならないと思います。その辺りの生活のところの、大臣も、地元は忙しくて余り歩けないかも分からないですけれども、回っていて感じられていることはあると思うんですよね。二百万円の人にここまで求めるというのはいかがかなと。生活実感としてどうでしょう。
○加藤国務大臣 まさに、保険料の負担をどう求めていくのか、また、実際のサービスの利用に当たっての負担割合をどう求めていくのか、これは介護でも医療でも同じようなことが出るわけでありますけれども、まさに縦、横、斜めといいますか、高齢者の方、若い方、それぞれの中で全体でバランスを取って、基本的には能力のある方にそれなりの負担をしていただく、こうした視点に立って議論をしていくべきものなんだろうというふうには思います。
○宮本(徹)委員 その能力ある方に年収二百万円の方は入らないということを私は申し上げているわけですね。そこを本当に是非、生活実態をよく見ていただきたいと思います。大体、年収二百万円の方で、単身で施設に入っているような方でいえば、今、特養だって、ユニット型だったら月十八万円ぐらいかかりますよ。もう赤字で、貯金を取り崩しながら入っている状況ですよね。そういう方々に二割負担というのは本当に酷な話になってきます。在宅においても一緒です。これは本当にやめるべきだということを申し上げまして、次に行きます。次に、先ほど田中議員から大変すばらしい質問がございましたが、エアロゾル感染対策についてお伺いをしたいと思います。医療を逼迫させずに最大限日常を取り戻していく上で、新型コロナの主要な感染経路であるエアロゾル感染対策、そういった換気を徹底的に強化をしていく、これが本当に大事だと思います。私も二年余りこのことをずっと本委員会でも訴えてまいりましたが、この間、コロナ分科会でも、七月と十月に、換気対策等の位置づけを更に高める、こういう提言も出ているところです。その上で、まずは、命を守る上で、高齢者施設や医療機関でのクラスターをできるだけ減らして小さくすることが大事です。ウィズコロナが今後続いていく中で、高齢者施設等において機械式換気やHEPAフィルターつき空気清浄機が基本設備となるぐらいにまで私は財政的支援を一層強めていく必要があると思いますが、この点、大臣、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 まさに、先ほどの議論ではありませんが、換気等をしっかりするということの重要性はそのとおりでありますし、特に重症化リスクの高い方が入所している高齢者施設においては、なお一層確実に感染対策を行っていく必要があると思います。立地等によって窓があっても十分な換気が行えない場合等にも定期的に換気できるよう、高齢者施設への換気設備設置の支援を行っているところでございます。また、新型コロナウイルス感染症対策分科会における提言も踏まえ、効果的な換気対策についての高齢者施設等への周知も行っているところでございます。実際、現状においては、手を挙げていただいたところには皆、設置というか、それを認めているということで運用がなされておりますが、まだまだ活用していただけるところがあるのではないかと思っておりますので、更に、こうした支援措置があることも含めて、換気対策をしっかりやっていただくことについて一層周知を図っていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 手を挙げたところは予算がつくようにしているということですけれども、ついている数自体は少ないんですよね。資料の八ページ目と九ページ目に、この間、換気設備が導入されたところを政府に出していただきました。八ページ目が、これは厚労省がやっている事業ですかね、地域介護・福祉空間整備等施設整備交付金における換気設備等の実績。令和三年度で八十二か所。令和四年度、まだこれは途中ですけれども二十四か所。それから、資料九ページ目が、これは環境省の方がやっております事業ですけれども、これは高機能換気設備等の導入支援事業ですけれども、老人ホーム六十二か所、福祉ホーム三十三か所等々ということになっておりまして、全体の高齢者施設の数からすれば本当に極めて限られたところにしかついておりません。もちろん寒冷地で必要なのは言うまでもないわけですけれども、それ以外のところでも、やはり冬は寒くて、窓を開けて換気というのはなかなか大変なんですよね。入所されている方も、やはり認知症が進んでいたら、何で開けるんだということで、職員の人とコミュニケーションをする上でもいろいろな困難があるという話も伺っていますから、やはり機械式で換気できるようにしていく、それができない段階では、HEPAフィルターつきの空気清浄機。これは大変効果があるというのも、この間、論文などでも出ておりますので、ここは本当に徹底的に支援をしていくと、大臣からも思い切ってアナウンスをする。あわせて、補助率を上げることも含めて、政府内で是非検討していただきたいと思います。加えて、具体的な感染対策についても是非進めてほしいと思うんですけれども、高齢者施設でのエアロゾル感染対策や換気対策について、厚労省として、専門家の知見を結集した動画配信だとか講習会、こういうものを是非やっていってはどうか、やっていただきたいと思いますし、あるいは、分科会では、今回、提言で、陽性者への対応について、N95というのを高齢者施設についても初めて言及をしていただきました。こうした点も周知徹底していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○大西政府参考人 エアロゾルの感染対策、換気等につきまして御下問いただきました。重症化リスクの高い方々が入所されています高齢者施設ですので、感染対策の徹底を行うことは重要でございます。そのため、換気を含めた感染対策のポイントをまとめました手引ですとか関連の動画を作成いたしますとともに、感染症の専門家が実際に施設等を訪問して実地で研修を行うといったことも取り組んでおります。加えて、効果的な換気対策につきまして高齢者施設等への周知も行っているところでございます。また、N95マスクにつきましては、気道吸引ですとか気道挿管など、エアロゾルが発生しやすい場面での着用が推奨されているところでございまして、今般、N95マスクの着用について記載されております新型コロナウイルス感染症対策分科会の提言につきましても周知を行っているところでございます。引き続き、様々な手法を組み合わせながら、高齢者施設におきます感染対策の周知徹底を進めてまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 分科会の提言は、口腔ケアだとかそういうときも含めてN95は考えた方がいいですよと書いているんですよね。今までよりも一歩踏み込んで書いてあります。本当に、高齢者施設をどう守れるかというのが、命を守る上でも、医療提供体制を守る上でも本当に大事なんですよ。何回も同じことを言っていますけれども、もっとここに力を集中していただきたいと思います。あわせて、今日、文部科学省に来ていただきましたけれども、ウィズコロナが続いていく中で、学校についても感染しにくい場にしていくというのは非常に大事だと思います。寒冷地を始め、高機能な機械式換気を基本設備にしていくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○伊藤大臣政務官 新型コロナウイルス感染症につきましては、今後、この夏を上回る感染者が発生する可能性があること、また、季節性インフルエンザとの同時流行が発生するおそれがあることなどが懸念をされております。その中で、感染拡大を防止し、学校教育活動を継続していくためには、引き続き、三密回避や身体的距離の確保、適切なマスクの着用、手指衛生、換気等の基本的感染対策を徹底することが必要と考えております。特にこれからの季節におきましては、寒冷地やそれ以外の地域におきましても、気温が下がり、窓開け等による常時換気が困難となることが想定されることから、いかにして十分な換気を確保するかが重要と考えております。文部科学省におきましては、これまでも、CO2モニターやサーキュレーター等の換気対策機器の導入、また、全熱交換機等の高機能換気設備の設置等に係る経費の支援を行ってきたところです。特に、常時換気が困難となる冬季に向けましては、寒冷地における換気方法の工夫等について周知を行うとともに、サーキュレーターやHEPAフィルターつき空気清浄機などの導入など、換気のための補完的な措置を講ずること、学校施設の状況等に応じて高機能換気設備の導入等も積極的に検討すること、これらについて都道府県教育委員会等に依頼をしたところであります。文部科学省としましても、引き続き、地域の実情に応じて適切な換気対策が行われるよう取り組んでまいります。
○宮本(徹)委員 文部科学省も、厚労省も含めて政府全体で是非、財政的な措置を取っていただいて、社会全体の換気対策を一層進めていただきたいと思います。本当にこれからのウィズコロナ時代の一大公共事業だと思っていますよ、私は、この換気対策というのは。それをやっていくことが、このウィズコロナ時代で感染者数を抑えながら日常生活を可能な限り取り戻していく、こういう時代になっていくと思いますので、その点もよろしくお願いしたいと思います。残された時間で、前回の続きについてお伺いしたいと思います。感染症法についてです。病院に対するペナルティー。前回の質疑では、このコロナパンデミックで病床確保の要請に正当な理由なく応じない医療機関はあったのかと伺いましたが、政府の御答弁は、でき得る限りの協力を医療機関はしていたということでございました。ペナルティーを設ける立法事実は存在しません。なら、なぜあえてペナルティーを設けるのか、こう考えますと、それは、でき得る限りの協力以上のことを病院に押しつけようとしているのではないか、こういうことを前回の答弁から勘ぐってしまうわけです。そのために、念のためにお伺いしますが、都道府県の予防計画の数値目標が達成できないときに、実情に合わない病床割当てが医療機関に求められることは絶対にない、こう言えますか。
○榎本政府参考人 お答え申し上げます。医療資源には御承知のとおり限りがあるところでございますが、そういった中で、予防計画における数値目標の設定に当たりましては、まず、都道府県において各医療機関に対して意向あるいはその対応能力をよく調査をしていただくことなどによりまして、現実の医療提供体制を踏まえた内容とするということを想定しているところでございます。また、この計画に基づいて確保する病床数等を協議する際にも、やはり、個別の医療機関の状況などをよくお聞きをして丁寧に協議を行うことが、必要なときに速やかに病床を確保していく上で重要でございまして、実態に合った協定につながるものというふうに考えております。こういった考え方を、予防計画や医療計画の策定に当たりまして国から都道府県にお示しする基本指針などを通じてお示しをして、実態に合った協定が締結されるように取り組んでいくことで対応していきたいというふうに考えているところでございます。
○宮本(徹)委員 もう一点、念のために聞きますけれども、予防計画の数値目標が達成できない、こういう場合はどうされるんですか。
○榎本政府参考人 お答え申し上げます。今お答え申しましたように、できるだけ実態に合った協定が締結されるように取り組んでいくところでございますが、仮に予防計画の数値目標が達成できないといった場合には、都道府県医療審議会の御意見を踏まえた再協議、また、他の医療機関に対して、協定で締結する確保病床数を積み増しできないかといった確認を行うなど行いました上で、それでも達成が難しい場合には計画を見直すなどの対応を行うことになるというふうに考えてございます。ただ、いずれにしましても、個別の医療機関の実情に合わない対応を強いるということではなく、関係者間でしっかりと協議を行っていくということが重要でございますので、予防計画や医療計画の策定に当たりましては、国から都道府県にお示しする基本指針などを通じて、その趣旨が正しく御理解いただけるように、丁寧に周知してまいりたいというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 その再協議の過程で事実上の強要みたいなことがなされては絶対にならないというふうに思います。その上で、この間のコロナの対応でも、じゃ、確保病床数というのが本当にそれぞれの病院がちゃんと受け入れられる数として積み上がったものだったのかという点で、私、疑問がある点がございます。確保病床数いっぱいの受入れができなかった病院というのがいろいろあったわけですけれども、例えば都立病院が、これは報道でもありました、東京なんかでは、民間の医療機関が満床いっぱいぐらいにまで受け入れているときに、例えば第七波では、一方で都立病院は受入れが平均四割ぐらいだったとか、こういうことも報道で出ていたわけでございます。こういうことを考えると、都立病院ですから、東京都としてはやはり、確保病床数をちゃんと確保しているんだというのを都民に示すためにかなり無理をして数字を積み上げていた面もあったんじゃないかなというふうに思うんですよね。そういう、無理して数字を積み上げてきた、だから私は、確保病床数いっぱいの受入れができなかった要因だったんじゃないかと思うんですね。もちろん、医療関係者が感染しちゃった、濃厚接触者になっちゃった、こういうこともあったと思います。あるいは、元気な人じゃなくて、高齢者で介護状態が、必要な方がたくさん、第七波で多かった、こういうこともあると思いますけれども、ただ、他の病院との比較ということを考えた場合に、なぜ都立病院がああいう、受入れがほかの民間病院だとか他の病院に比べて少なかったのかと考えると、元々、確保病床数として公表していたものにかなり無理があったんじゃないかと私は思わざるを得ないわけですよね。やはり、そういう点を見て、この協定の問題も考えていかなきゃいけないというふうに思います。加えてもう一点お伺いしたいんですけれども、ペナルティーを設ければ、ペナルティーを避けるために、協定を結ぶことへの消極さ、あるいは協定で確保する病床を小さくする方向に力が働く可能性、こういうものがないのか、お伺いしたいと思います。
○榎本政府参考人 お答え申し上げます。今般の改正案におきましては、都道府県知事があらかじめ地域の医療機関と協議を行っていただいて、地域における役割分担について十分に関係者間で認識共有を図った上で、有事に備えた医療提供体制の構築のための協定を締結することとしておりまして、それぞれの医療機関の機能や役割に応じて御協力いただくということが前提でございます。その上で、協定を締結した医療機関や医療提供義務の対象となりました医療機関に対しましては、履行を確保するための措置として、協定や義務に沿った対応をするよう都道府県知事が指示、公表などを行えることとしてございますが、これは、正当な理由なく、協定や医療の提供義務にのっとった対応をされない場合に対象となるというものでございます。この正当な理由があるかどうかにつきましては、ウイルスの性状や個別の医療機関の状況を十分に踏まえて個別具体に判断するということとしておりまして、こうした考え方を都道府県や医療機関などにしっかり周知をいたしまして、対応可能な範囲での協力を求めていくなど、協定の締結が円滑に進むように丁寧に対応してまいりたいと考えてございます。
○宮本(徹)委員 ですから、医療機関は正当な理由なく協力しないということは基本的にはないわけですから、本来、ペナルティーは要らないわけですよ。実際、コロナでも、正当な理由なく協力しなかった例はないというのが皆さんの認識なんですから。ところが、このペナルティーを設けているから、私は大変、何かおかしなことがやられるんじゃないかという懸念を持っているわけですよね。この協定を守れない正当な理由に当たる例というのを、考えつく限り挙げていただけますか。
○榎本政府参考人 お答え申し上げます。協定を締結した医療機関が感染症発生、蔓延時に協定に沿った対応をしない場合の正当な理由について例を挙げろという御指示でございますが、これにつきましては、感染状況や医療機関の実情に即した判断が必要なものでございます。例えば、病院内での感染拡大などによって医療機関内の人員が縮小している場合、あるいは、ウイルスの性状などが協定を締結したときに想定したものと大きく異なって、患者一人当たりに必要となる人員が異なる場合といったことも想定されます。また、感染症以外の自然災害などによって人員や設備が不足している場合など、協定を締結したときの想定と異なる事情が発生をして、協定に沿った対応が困難であることがやむを得ないと判断されるような場合が該当するのではないかというふうに考えているところでございます。
○宮本(徹)委員 正当な理由は三例しかないわけですよね。ちょっと時間になっちゃいましたので今日はここまでにしますけれども、正当な理由は三例しかないわけですよね。それ以外の例で、医療現場の判断で、いや、今は感染症対策でもやらなきゃいけない、本当に命を守らなきゃいけない医療があるんだという判断をする場合だってあると思うんですよね。そのことによってやむを得ず協定が守れないということは、いろいろな形で起き得る可能性があるわけですよね。私はやはり、この都道府県が正当な理由があるかないか判断してペナルティーを科すという仕組みは、大変無理があると思います。医療現場をもっと信頼してやるべきだということを申し上げまして、質問を終わります。
○三ッ林委員長 次回は、来る四日金曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。