2022年11月15日 衆議院 科学技術イノベーション推進特別委員会 理研雇い止めただせ 宮本氏「政治の責任で財源を」
配付資料 出典:「多様化する労働契約のルールに関する検討会報告書」、2022年3月厚生労働省、pp13‐14
配付資料 出典:「博士人材追跡調査 第4次報告書」、2022年1月、文部科学省科学技術・学術政策研究所、p.45
配付資料 出典:「博士人材追跡調査 第3次報告書」、2020年11月、文部科学省科学技術・学術政策研究所、pp.31‐32抜粋
配付資料 出典:日本学術会議声明「有期雇用研究者・大学教員等のいわゆる「雇止め」問題の解決を目指して」2022年7月12日
日本共産党の宮本徹議員は15日の衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会で、大学や理化学研究所での非正規研究者の大量雇い止め問題をただし、政治の責任で解決するよう求めました。
労働契約法で非正規雇用の研究者は、有期雇用契約が10年を超える場合、本人の希望で無期雇用への転換が可能。理研は来年3月末に雇用期間が10年を迎える研究者の雇い止めを狙っています。
宮本氏は、理研で国家プロジェクトの研究責任者を務める研究者の声を紹介。プロジェクトはこの研究者が発想し、共同提案先企業との調整や提案書の作成を行ってきましたが、雇用が継続されなければ関われなくなります。宮本氏は、雇い止めの姿勢を崩さない理研を指導するよう政府に求めました。
高市早苗科学技術政策担当相は「各プロジェクトが今後も継続して発展するよう理研に必要な支援、取り組みを行ってもらいたい」として、理研は新たな研究職の公募など「考えながら工夫をしていくべきだ」と答弁。宮本氏は「理研の新たな提案は、穴だらけで救済策になっていない」と批判しました。
宮本氏は文部科学省科学技術・学術政策研究所の調査では、研究者のアカデミアでの雇用期間は1年が最も多く、「この状況をたださないと日本の科学研究の未来はない。大学も研究所も無期転換のポストをつくる財源がないことが最大のネックだ」とし、政治の責任で財源を確保するよう訴えました。
以上2022年11月16日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2022年11月15日 第210回衆院科学技術・イノベーション推進特別委員会第3号 議事録≫
○下条委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。研究者の雇い止め問題について質問いたします。無期転換ルールの十年特例が適用される二〇二三年三月を前に、千人単位の研究者が雇い止めになる可能性があります。まず、文科省にお伺いをしたいと思いますが、理研で、来年三月で通算雇用期間十年を迎える方で、研究代表者や研究分担者となっている方は何人か、そして、その方々の二〇二二年度の受託額は総額幾らでしょうか。
○井出副大臣 理研の方に確認しましたところ、令和四年十一月十日時点において、理化学研究所の研究系任期制職員のうち、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律等の特例適用者であって、来年三月三十一日で通算雇用が十年となり、任期を満了する二百三名のうち、二〇二二年度、政府又はファンディングエージェンシーの公募型研究資金を受給している研究代表者、研究分担者は八十六名、その総額は十・六億となっております。
○宮本(徹)委員 この額は、公募研究費ですので、主には、国や、NEDOやAMEDなど国関係の資金配分機関からのものであります。単純に頭割りしたら、一人当たり年間一千万円程度の予算を得ておられるわけですね。先日、この理研の雇い止めの問題で院内集会が開かれました。そこで、この受託研究の責任者である当事者が発言をされておりました。Aさんとしますけれども、少し長くなりますけれども、事態がよく分かりますので、そのAさんの発言を紹介したいと思いますので、お聞きいただきたいと思います。私が研究開発責任者をしているナショナルプロジェクトは、二〇二一年六月に採択が決まり、配賦元機関が理研と委託契約を締結して実施しています。実施期間は二〇二四年度までの四年間。配賦予算総額はおよそ二億五千万、そのうち理研へは一億五千万程度が配賦されます。先週、配賦元担当者からは、管轄省庁から配賦元へ予算計上が行われないなどの不測の事態が起こらない限り、二〇二四年度までプロジェクトは継続すると言われました。このナショナルプロジェクトでは、研究予算の直接経費から研究開発責任者である私自身の人件費を出してよいという制度があります。しかし、この予算から来年度の私の人件費を出すためには、委託契約先になっている理研に私が二〇二三年四月以降も継続されている必要があります。二〇二三年三月末で私が雇い止めになれば、二〇二三年四月以降は委託契約先である理研に所属できないため、この制度を用いて、来年度の私の人件費をこの予算から支出することができません。自身の人件費が支出できる予算を持っているのに、これをさせてもらえない。また、雇用継続されなければ、私が発想し、共同提案先企業との調整を行い、提案書を作成し、プレゼン審査を経て採択されたナショナルプロジェクトの研究開発責任者であるにもかかわらず、強制的に他の研究者に研究開発責任者を交代するしかなくなります。私がアカデミアで、かつ、この研究に関わってよいという職制のポジションに就けなければ、私自身がこのナショナルプロジェクトに関わることすら許されない状況になります。個人的な事情で転職せざるを得ないわけでもなく、自身が提案したナショナルプロジェクトが継続するにもかかわらず、組織からの雇い止めのせいでこのような状況に陥る人事制度は絶対に間違っていると思います。こういう発言だったわけですね。理研は、この方の三月末での雇い止めの姿勢というのを崩しておりません。ちなみに、この方は、このナショナルプロジェクトだけじゃないんですね、ほかに、科研費基盤研究Bの研究代表者、他の独法の研究者との共同研究の理研側の研究責任者を二件、チーム内の他の研究者が実施している研究プロジェクトの研究分担者を三件、合計七件、研究テーマ、関わっておられる。今日、私の前のやり取りの中で、優秀な研究者が雇い止めされるようなことがないように高市大臣も文科大臣におっしゃったというお話がございましたけれども、継続している国家プロジェクトの責任者でさえ雇い止めすれば、私は国家プロジェクトに大きな影響が出ることは明白だと思います。頓挫するかも分かりません。こういうことは許されないんじゃないんでしょうか。大臣、いかがでしょう。
○高市国務大臣 国家的、社会的ニーズの極めて高い研究プロジェクトを機動的に進めていくということが我が国の科学技術力の強化には大変重要だと考えております。理化学研究所におかれましては、様々な公募型資金を活用し、重要な研究プロジェクトに取り組んでいただいております。現在進めている各プロジェクトが今後も継続されて、より発展させられるように、理化学研究所におかれて必要な支援、取組はしっかりと行っていただきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 しっかりと継続するためには、私は、当然、人的な継続性というのは、研究開発責任者ですから、それは極めて大事なことだと思うんですよね。ところが、それが雇い止めというふうになっちゃうわけですよ。ここは強く、高市大臣のイニシアチブを発揮して、理研に対して指導する必要があるんじゃないですか。
○高市国務大臣 理研でもいろいろ考えていただいております。一つは、やはり、「理研には、国際的な人材流動を通じて優れた研究者・技術者を迎え入れ、育て、次のポストへ送り出す、世界の頭脳循環のポンプとしての使命があります。」これは理研の方がそのように発表されています。「より良いポストを獲得しキャリアを形成していく、そうした動きを促進する人事制度が必要です。」ともおっしゃっております。今回ですけれども、結局、有期雇用の期間を五年から十年にしたというのは、これはよかったと思っております。ただ、その十年がやってきてしまうということなんですが、これについても、理研では、経営陣が重く受け止めて、いろいろ議論されたようでございます。既に理研で活躍している有期雇用の研究者に対し、任期満了後、別の有期の研究プロジェクトに参画できる機会を提供するため、理研での通算契約期間の上限規制を撤廃しますということで、今年の九月二十一日の時点ですけれども、新しい研究職、技術職の公募が百七十五件公開されております。こういう有期雇用ポストを公募して、これまでの理研での通算契約、こういう期間によらず誰もが応募可能としている、それによって雇用の切れ目なく参画できる体制というのを開きますということでございますので、いろいろなことを考えながら工夫をしていかれるべきものだと思っております。
○宮本(徹)委員 この理研の新たな提案というのは、大変穴だらけで救済策にはなっていないんですよね。そもそも雇用上限の撤廃というのは来年四月からの適用ということになっているわけで、来年三月で雇い止めされる人には、どうなるのかということでいえば、雇い止めというのは現に撤回はされておりません。その上で、新しい研究を公募して、そこに応じてもいいですよという話になっているわけですけれども、そもそも三百八十人雇い止めになるわけですよね。そのうち、新たなポストの数というのは、今大臣の話は百七十五ですか、二百という話も私聞いていますけれども、元々数は足りない。しかも、例えば、分子イメージングの研究をやっている、生物系の研究をやっている人が化学系や物理学系の公募を幾ら出されたって応じようがないわけですよね。全く救済策に私はなっていないと思います。ですから、ここはもっと踏み込んだ指導が必要だということを厳しく指摘をしておきたいと思います。加えて、同じように、理研以外も、国立大学も同じようなことが起きているわけですけれども、理研のひどいのは、当初の契約時に通算雇用期間の上限が設けられていない人に対して、後から就業規則を変更して雇用上限十年という期間を設定して、その起算日を二〇一三年に遡らせて今年度末に雇い止めしようとしている点であります。資料一ページ目を御覧いただきたいと思いますが、これは、今年、厚労省が、多様化する労働契約のルールに関する検討会報告書として出したものでございます。「契約更新のタイミングで更新上限が設定された場合、多くの場合に労働者は同意を余儀なくされることから、司法判断においては、自由意思による同意の有無について厳格に認定される傾向がある。これを踏まえ、使用者が更新上限の有無及び内容の明示をしたことや労働者が更新上限条項に異議を唱えず契約更新に応じたことのみでは、更新上限について有効な合意が成立したとは認められず、更新の合理的期待は必ずしも消滅しない」と言っているわけですね。つまり、後から更新上限を設けても無効になる可能性は高いですよ、こういうことを厚労省の検討会の中でも言われているわけです。ちなみに、経産省傘下の産総研の方は、当初の契約時に雇用上限がなかった職員については、来年三月末で通算雇用期間十年となっても、本人の意向を聞いて、本人が希望すれば無期転換するというのを取りました。この産総研の対応というのは厚労省の検討会の報告書に沿っていると私は思います。ところが、理研はそうなっていないわけですよね。なぜ、厚労省や経産省と違って、文科省傘下の理研は同じ姿勢が取れないのか。後から更新上限を決めて更新上限の起算日を遡らせる運用について、文科省はこれは適法だと考えているんじゃないですか。だから理研はこんなことになっちゃっているんじゃないですか。
○井出副大臣 資料で出していただいております検討報告書、今年の三月にまとまったものは、その報告書を受けて、現在、厚労省の方で議論をしていただいていると聞いております。また、先生の御指摘、この報告書もそうですが、一般論で言えば、後から遡及するようなことはよくないといったような答弁もあった、これまで答弁がされていると思います。理研につきましては、理研にかかわらず、まず、その法人がしっかり法令遵守をして、法令に基づいてやっていただくことが重要だと思っておりますが、御指摘の件につきましては、理研は基本的には単年度契約をずっとしてきている、その更新の見通しを平成二十八年に雇用上限という形で示したもので、新たな不利益を生じるというようなことではないというふうに聞いております。
○宮本(徹)委員 いやいや、新たな不利益なんですよ。だって、一番初めに十年上限なんて示していなかったわけですから、後から十年までですよというのを決めるのは、これは国会で厚労大臣がこの間何回も答弁していますけれども、これは不利益変更ですよ。許されないですよ。後藤さん、この間まで厚労大臣だったから、うなずいていらっしゃいますけれども。これは、やはり文科省の側が理研を擁護するというのは本当によくないと思いますよ。産総研と同じように、せめて、当初、雇用上限がなかった方については、しっかりと、そうしたやり方というのは脱法行為だということで私は指導すべきだと思いますよ。本当に、日本の頭脳を担っているような研究者が雇い止めになって、いいことは何一つないですよ。そのことを厳しく申し上げておきたいと思います。別の角度で質問したいと思います。この間、私、研究者の雇い止め問題を何度も取り上げてまいりましたけれども、政府の側からは、研究者の流動性と安定性の両方が求められている、こういう答弁がよく出るわけですよね。欧米では、研究者はテニュア職に就くまで、大変競争は激しいですけれども、通常七、八年程度で結論を得て、テニュアを得る。テニュアを得た後は、場合によっては他の大学に動くということもありますけれども、元の大学のテニュアはそのままということが大変多いです。ところが、日本は、正規のポストが減っており、博士課程を修了してもアカデミックにおける安定した雇用を得ることが大変難しくなっております。資料二ページ目を御覧いただきたいと思いますが、これはNISTEPの博士人材追跡調査の今年出た四次調査ですね。任期付の職ということで見れば、三十五から三十九歳で五四・三%、四十歳代で三七・八%、五十歳以上でも三八・八%が任期付の職ということになっております。常に新しい職を探し続けなければならないという点でいえば、既に非常に流動性は高いというのが日本の状況だと思うんですよね。日本の若手研究者にこれ以上の流動性というのは必要ないと思いますが、いかがですか。
○高市国務大臣 近年ではあらゆる研究活動がグローバルかつダイナミックに展開されております。そういう中で、最適な人材を集めて知見を結集するということが求められておりますので、私は人材の流動性を一定程度確保することは必要だと思います。そのため、各研究機関が、若手研究者などの人材の流動性を確保しながら、適切な人事の運用を行うということが重要だと考えております。また、優秀な研究者はふさわしい処遇を得て我が国で研究を続けたいと思うような研究環境を整備することも、他方、重要だと考えておりますので、第六期科学技術・イノベーション基本計画に基づいて、研究者が研究に専念できる環境を構築して、また研究の魅力向上も図ってまいる、こういう考え方でございます。
○宮本(徹)委員 流動性が高過ぎるんですよね。ですから、若手研究者が研究に専念できるという環境にはおよそなっていないわけですね。資料の三ページ目、御覧いただきたいと思いますが、これは博士人材追跡調査の三次調査でございます。アカデミアでの雇用期間を調査しているわけですけれども、最も多いのは一年なんですよね、雇用期間、任期付の場合。コホートによっても違いますけれども、三割から四割が一年という雇用になっています。ですから、日本においては、非正規の研究者というのは、博士号を取得した後に任期なしポストを探しながら短い雇用期間を繰り返しているというのが政府の調査でも明らかだと思うんですよね。そして、これは三十代、四十代、五十代でもこの任期付が半数近くになっているということです。大臣にお伺いしたいんですけれども、高度専門教育を受けた研究者が五十歳になっても四割近くが任期付ポストと、安定した雇用を得ていないというのは、私は大変異常な状況だと思いますけれども、高市大臣、いかがですか。
○高市国務大臣 内閣府としましても、間接経費や競争的研究費の直接経費から研究者の人件費を支出することで捻出した運営費交付金など、多様な財源を戦略的かつ効果的に活用するということによりまして、任期なしポストを確保し、優秀な若手研究者の安定的なポストの確保を図っていくということを促しております。
○宮本(徹)委員 これは、本当に今の状況が異常だという認識を是非持っていただいて、どう正すのかというのを考えないと、日本の科学研究の未来というのは本当に、ますますなくなっていくと思いますよ。この調査には自由記述があります。幾つか読みます。博士課程を修了しても安定的な職業や収入を得られない現状では研究を続けたくても続けることはできない、将来に希望を持てるような政策を実行してほしい。五年の契約期間という若手研究者の採用モデルが一般化してしまい、当人にとっては将来への漠然とした不安しかない。あるいは、ポスドク期間中に経済的困窮から自殺してしまう人がいたりすると聞きます、このような調査がそうした人を少しでも減らせる役に立つことを願います。政府関係の研究機関がやった調査でこういう声がたくさん寄せられているわけですよ。これに本当に真剣に応えることを政治はやらなければならない。ところが、この上、今日議論しております労働契約法の無期転換ルールを避ける目的の十年目の雇い止めというのが行われれば、今以上にますます雇用は不安定になっていくということになります。このルールを本当に放置したら、今の進行中のナショナルプロジェクトだって足が引っ張られる、博士号を取得した人は、雇用不安がいよいよ増しますから、研究職にいよいよ進まなくなっていくというのが一層進んでいくということになります。ですから、本当に研究力の向上ということを考えたら、やはり無期転換ルールの問題、真剣に財源を確保して解決するということに政治が責任を果たさなきゃいけないと思いますよ。大学の側も、研究所の側も、無期転換のポストをつくる財源がありません。そこが最大のネックになっております。指導と同時に、政治の責任で財源を確保して、雇用の安定化は是非図っていただきたいと思います。大臣、いかがですか。
○高市国務大臣 財源の確保につきましては、先ほど私は答弁を申し上げたと思います。大学によりましては、学長の強いリーダーシップによって、若手研究者のポストを短期間で急激に増やしたところもございます。また、精いっぱい努力をしながら寄附を集めたり、いろいろな形で財源を確保している、そういった大学もございます。個別の法人の業務運営については、各法人を所管する省庁において対応いただくものでございますけれども、意欲と能力のある研究者がふさわしい処遇を得て研究に取り組めるようにするということは、日本全体の研究力強化にとっても必要だと思いますから、そのために努めてまいりたいと存じます。
○宮本(徹)委員 時間になりましたから終わりますけれども、意欲と能力がある研究者が研究を続けられない事態になっているというのが、この十年特例の運用をめぐる問題だ。井出副大臣はよくお分かりだと思いますけれども、高市大臣ともよく相談していただいて打開に当たっていただきたいということを重ねて申し上げまして、質問を終わります。
○下条委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。