2022年11月18日衆院厚労委員会 意に反する強制入院 宮本徹氏が見直しを要求

配付資料 出典:朝日新聞2022年11月17日付

 日本共産党の宮本徹議員は18日の衆院厚生労働委員会で、精神福祉法など五つの法案を束ねた障害者総合支援法に含まれる精神障害者の医療保護入院について、強制入院が安易にできる仕組みだと批判し、見直しを迫りました。
 ひきこもり支援を自称する「引き出し屋」が本人の意に反して「精神疾患を有している」と決めつけて連れ出し、ずさんな手続きで精神科病院に強制入院させられたことを訴えた東京地裁の判決で、入院が違法とされ、医療法人側に損害賠償が命じられました。
 宮本氏は、この判決にふれ「医師一人の判断で家族同意で強制入院できる医療保護入院制度が悪用された」と指摘。加藤勝信厚生労働相は「適正な手続き、適正な運用が図られるよう、実地指導の徹底を図っていきたい」と述べました。
 宮本氏は「今回の法改正では、こうした事件は防げない。医療保護入院制度の抜本的な見直しこそ、すみやかに行うことが必要だ」と迫りました。加藤厚労相は法案には付則で見直しの規定があるとして「国連の人権委員会の勧告等や当事者の意見もふまえて検討したい」と答弁しました。
 また、宮本氏は、障害支援区分認定データと障害福祉サービス等給付データの連結によって、支援区分ごとの標準的な支援内容や量が把握できるとして、「支給決定にあたっては、データによるものではなく個人のニーズや環境をふまえることを明確にするべきだ」と求めました。

以上2022年11月22日付赤旗日刊紙より

≪2022年11月18日 第210回衆院厚生労働委員会第10号 議事録≫

○三ッ林委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。配付資料を御覧いただきたいと思います。これは、昨日の朝日新聞です。医療保護入院の闇を示す判決が一昨日ありました。引きこもり支援を自称して本人の意に反して連れ出す、いわゆる引き出し屋が、精神障害がない人を精神疾患を有していると決めつけて精神科病院に送り、そして、本人の主張を無視してずさんな手続で強制入院が行われました。医療保護入院五十日間、拘束もその中で行われたということです。これについて裁判所は、指定医による診察という要件を欠く上、原告が精神障害者であったという要件を欠くことから、本件入院決定は違法であるとして、医療法人に損害賠償を命じております。私は、この判決は、医師一人の判断で家族同意で強制入院できるという医療保護入院制度が悪用されたということを示したものだと思います。この事件を見ても、やはり、本人の意に反する強制入院が安易にできてしまう医療保護入院制度の仕組みそのものも私は見直していく必要があると思いますが、大臣はこの判決をどう受け止めたでしょうか。
○加藤国務大臣 本件も含めて、個別事案について、まさに係争されているところでもありますからコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、医療保護入院は、患者の権利擁護に責任を有する精神保健指定医が入院治療の必要性を判断した上で、医師から十分な説明を受けた家族等の同意に基づく入院を行うことで、権利擁護を図りながら入院治療のアクセスを保障する、こういう仕組みでありますから、これに当たっては、適正な手続また適正な運用が図られるよう、引き続き、各都道府県における実地指導の徹底等を図っていきたいというふうに思っております。
○宮本(徹)委員 適正な手続といいますけれども、違法な手続があったということに今回なっていますけれども、やはり、医師一人によって判断ができてしまうというこの容易な仕組みがこうした事態にも私はつながったと思うんですよね。やはり、入院治療が不要な方がどんどんこうした形で強制入院できてしまう仕組みというのが、今の医療保護入院制度がはらんでいる問題点だということだと思いますので、ここは本当に抜本的な見直しを是非考えていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 まさにそうした点も含めて、附則の第三条において検討規定を設けさせていただいておりますので、今般の国連の人権委員会の勧告等も踏まえて、また各当事者の方からの御意見も踏まえながら、しっかり検討させていただきたいと思っております。
○宮本(徹)委員 医療保護入院制度の根本的な見直しを求めていきたいと思います。そして、次に、障害福祉分野のデータ連結についてお伺いいたします。障害福祉サービスの切下げに使われるのではないかと不安の声が上がっております。障害支援区分認定データと障害福祉サービス等給付データの連結によって、障害支援区分や同じ状態のグループごとに標準的なサービス内容やサービス量が把握できるようになりますが、支給決定に当たっては、こうしたデータによるのではなく個人のニーズや環境を踏まえる、このことを明確にすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 まず、障害福祉データベースの情報、これは匿名化されていますので、したがって、個々の支給決定に活用することをそもそも想定はされていないということでございます。その上で、都道府県や市町村による障害福祉データベースの活用としては、例えば障害福祉計画の策定等を支援するための地域差分析などが想定をされております。また、個々の障害者に必要な障害福祉サービスの支給量は、障害者総合支援法の規定に基づき、今委員御指摘のように、障害支援区分等を勘案して、市町村において支給決定されるということで、こうした勘案要素については、データベース導入後の変更も予定をしておりません。
○宮本(徹)委員 その地域差がつかめた場合に、いや、ここは、あなたのところの自治体は緩く障害者福祉サービスを出し過ぎている、こういうようなことになってサービスが削られていくんじゃないかという不安の声があるわけですよね。同じ障害支援区分であっても、やはり個人の状態、個々人が置かれている環境というのは様々ですから、ここは本当に、個人の状態を踏まえてというのを明確にしていただきたいと思います。もう一点ですけれども、障害福祉関係データベースと介護データベースと連携することで、高齢になられた障害のある方の介護保険サービスへの切替えによる提供量の変化などの分析が可能になります。こうしたデータを根拠に、介護保険優先原則の機械的な適用が行われないように明確にすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 障害福祉データベースと介護データベースとを連結して解析をする、そのことによって、高齢障害者の介護サービスの利用実態の把握、分析等が可能になると考えております。それを通じて、障害福祉サービスの質の向上に向けた取組、これを推進していきたいと思っております。他方で、介護優先原則の運用に当たっては、一律に介護保険サービスが優先されるものではなく、一人一人の個別の状況を丁寧に勘案し、介護保険サービスだけではなく、障害福祉サービスの利用も含めて、その方が必要とされている支援が受けられることが重要だ、こうした考え方は、データベース導入後も変わるものではございません。
○宮本(徹)委員 ただでさえ、自治体によっては、介護保険優先原則の機械的な適用というのがこの間何度も問題になってきておりますので、そこはしっかりと指導していただきたいと思います。続きまして、就労アセスメントについてお伺いいたします。就労系サービスを利用している当事者が、ここは自分には合わないということで、利用する事業所を替えるというのは私の周りでもよく聞く話です。あくまでも、本人の意向に沿った支援でなければならないと思います。そして、アセスメントする側が押しつけるようなことがあっては決してならないと思います。ただ、現状でも自治体の就労支援室のスタンスというのはばらつきがあって、本人の意向に沿った支援になるのか、地域によっては心配だという声も私のところにも寄せられております。この就労アセスメントについては、本人の意向の支援のためであることを明確にして運用していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 就労選択支援については、これは事業者が一方的に評価を行うということではなくて、アセスメントを行った結果を踏まえて、障害者本人が納得の上、働き方や就労先を適切に選択できるようにするということ、そして、事業者から必要な情報提供や助言等が行われるということでありますから、当然、その本人、障害者本人の利益に資するというものでなければならないのは当然のことであります。このため、地域の関係機関を交え、その後の適切な支援について意見交換や検討を行うケース会議の実施、地域においてサービス提供を行う就労支援機関などについて本人への情報提供などにより、事業者が本人の希望や能力に沿って適切に支援するよう具体的な方策を考えていきたいと思っておりますし、また、就労選択支援の実施に当たっては、就労支援の経験を有する人材の配置、中立性の確保、地域の協議会の参画などが必要と考えており、施行に向けて必要な基準等を定めることを通じて、事業者の質の確保も図っていきたいと思っております。
○宮本(徹)委員 あなたの能力はこういうものだからということで、本人の意向と違うものが押しつけられることがないように、丁寧な運用をお願いしたいと思います。続きまして、障害福祉政策に関わりまして、よく聞く声を幾つか質問したいと思います。一つは、障害児福祉、医療の多くに所得制限があります。特別児童扶養手当、障害児福祉手当、補装具費の支給、日常生活用具給付など、一定の所得を超えれば、これは支援がなくなります。また、放課後等デイサービスなどは、一定の所得を超えれば、上限額は八倍の三万七千二百円になります。医療費の様々な支援制度もありますけれども、これも所得制限、所得によってかなり差があるものになっています。こうした下で、何も支援を受けられない家庭から、放課後等デイの必要日数を我慢せざるを得ないとか、あるいは必要な補装具の買換えを我慢しなければならないだとか、あるいはきょうだい児が進学を我慢したりしなければならない、こういう深刻な実態があります。大臣は、この障害児福祉、医療の所得制限が当事者に与える影響について、どう認識されているでしょうか。また、政府として実態調査を行っていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 障害児の保護者の方々においては、子供さんの育ちやあるいは生活面、様々な分野において、いろいろな事情また御苦労があるものと承知はしております。厚労省としても、障害児やその家族を支援するため、様々なサービスの提供に取り組んでいるところでありますが、制度の持続可能性や公平性の観点から、所得に応じた一定の負担や支給の制限があること、このことは是非御理解をいただきたいと思っております。他方で、当事者の声に真摯に耳を傾け、制度等の改善を行っていくことは重要でありますし、これまでも逐次そうした見直しも行ってきたところであります。また、実態とお話がありましたが、厚生労働省としては、生活のしづらさなどに関する調査などにより、障害者の生活実態やニーズの把握に取り組んでいるところであります。引き続き、こうした実態把握を行い、その結果を踏まえながら、障害者施策を適宜推進していきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 この実態把握の中で、是非、所得制限がかかっていることについてのところも焦点を当てたつかみ方もしていただきたいと思いますけれども、その点、大臣、いかがでしょうかね。
○加藤国務大臣 直接それを取り上げるかどうか、そこはまたよく中で議論しなきゃいけないので、今、私、ここでストレートに、全体としての調査との整合性とかいろいろなことがありますので、ここで直ちに御返事はできないところでありますけれども、先ほど申し上げましたように、障害者の方々の実態、それを踏まえた施策を進めていくに当たって、必要な情報の取得には努めていきたいと思っています。
○宮本(徹)委員 公平性が大事だというお話ありましたけれども、様々な所得制限が一定のところからかかりますから、そこで所得の逆転現象的なものも起きていて、逆にサービスが使えなくなっているという実態があると思いますので、しっかりとした調査をお願いしたいと思います。そして、私は、基本は所得制限はなくすべきだということを申し上げたいと思います。続きまして、いわゆる十八歳の壁についてお伺いいたします。特別支援学校卒業までは放課後等デイサービスがありますが、特別支援学校卒業後は、福祉的就労などは十五時台に終わるわけで、その後、障害者の皆さんの平日夕方の余暇活動を支援する全国一律の給付サービスはありません。自治体ごとによって、地域活動支援センターや日中一時支援や、あるいは移動支援などで支援しておりますけれども、これも財政支援が弱くて、事業者の持ち出しになっている場合も少なくなく、ニーズに応じたサービスというのは絶対的に不足しております。そのために、親御さんが仕事を辞めたりパートに変わったりしなければならない深刻な問題が生じております。是非、実態把握をしていただいて、全国的な新たな障害福祉サービスをつくっていただきたい、その検討をしていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 障害のある方々の平日夕方の過ごし方について、その方の障害の状態、本人の御意向、また地域社会や家族の状況において、御自宅で過ごされる、知人と過ごされる、地域の方が集まる場所で過ごされるなど、様々な過ごし方があるというふうに認識をしております。こうした多様なニーズに対応するため、多くの市町村では、地域生活支援事業を実施をしております。創作的活動等の機会を提供する地域活動支援センター、また日中活動の場を確保する日中一時支援事業等を地域の実情に応じた形で実施をしているところであります。さらに、中重度の方を対象とした生活介護においては、通常の営業時間後もサービスを提供した場合に、障害福祉サービス等報酬として延長加算を算定可能としているところであります。地域の実情に応じた様々なやり方を活用して、必要な支援を行う体制を整備していくことが重要だと考えております。今後とも、地方自治体と連携しつつ、今委員からもお話がありましたように、当事者の意見を聞きながら実態を把握しつつ、検討を行い、必要な対応を図っていきたいと思っております。
○宮本(徹)委員 国から自治体に出ている財政支援もこの分野では大変弱いですから、やはりかなり事業者が持ち出しをせざるを得なくて、できない、必要なニーズに応え切れないというところが全国各地で起きておりますので、是非ここは思い切った検討をお願いしたいと思います。そのことを申し上げまして、時間になりましたので、質問を終わります。
○三ッ林委員長 この際、暫時休憩いたします。