2022年11月29日(午前) 衆院予算委員会 集中審議 「軍拡増税」許されない 平和外交に尽力こそ

 日本共産党の宮本徹議員は29日の衆院予算委員会で、政府が検討している大軍拡は物価高と実質賃金低下に苦しむ国民にのしかかるもので許されないと批判し、「軍拡増税」の中止を求めました。
 岸田文雄首相は28日、2027年度に防衛省予算と関連経費を合わせた軍事費が国内総生産(GDP)比2%に達する予算措置を指示。約11兆円となり、現在のGDP比で現行の2倍近い大軍拡です。
 宮本氏は、軍拡財源について有識者会議の報告書が「国民全体での負担視野」「幅広い税目による負担の必要」に言及しており、軍事費倍増を増税でまかなえば国民1人当たり4万円、4人家族で16万円にのぼるとして、「軍拡のために『幅広い税目』で増税を行うのか」と追及。岸田首相は「27年度に向け、安定的な財源確保を考える際、さまざまな財源について精査し、年末に向け結論を出していく」と述べ、「幅広い税目」の増税を否定しませんでした。
 さらに宮本氏は、昨年10月の総選挙、今年7月の参院選の公約で自民党は「軍拡増税」に一言も触れておらず、国民は白紙委任を与えていないと主張。「国会多数の力で『軍拡増税』を押し通すことは許されない」と中止を求めました。
 また、政府が検討する敵基地攻撃能力=反撃能力の保有は、憲法9条のもと、攻撃的兵器は持てないとする「専守防衛」を宣言してきた日本のありかたを覆すと指摘し、日本が同能力を持てば、相手がそれを上回る強力な攻撃を日本に向け、「安全保障のジレンマに陥る」と警告。岸田首相は「日本の考えを透明性を持って周辺国に説明していく」と弁明しました。
 宮本氏は「『専守防衛』を宣言してきた日本が攻撃力を持てば、軍拡競争に際限がない。中国のGDPは日本の3・7倍だ。財政的にもたないのは日本であり、国民の暮らしだ」と批判。それでも「『専守防衛』の姿勢は変わらない」と繰り返す首相に、「『専守防衛』と言うが、集団的自衛権のもと、(日本への攻撃がなくても)敵基地攻撃能力行使はできると言ったのは岸田政権だ」と反論し、平和外交への尽力を求めました。

以上2022年11月30日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2022年11月29日午前 第210回衆院予算委員会第8号 議事録≫

○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。昨日、総理は、二〇二七年度軍事費、GDP二%を指示されました。軍事費倍増、中身は敵基地攻撃能力の保有であります。これまで憲法九条の下で歩んできた日本の在り方をひっくり返すもので、許されないと思います。まず、財源についてお伺いします。先日まとめられました国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議報告書では、「戦前、多額の国債が発行され、終戦直後にインフレが生じ、その過程で、国債を保有していた国民の資産が犠牲になったという重い事実があった。」と指摘して、「国債発行が前提となることがあってはならない。」としております。岸田総理は同じ認識ですか。
○岸田内閣総理大臣 防衛力の抜本的な強化に向けて、この五年以内に緊急的にその強化を進める必要があると考え、その予算のためには、財源がないからできないというのではなく、様々な工夫が必要であるということを申し上げてきました。他方、令和九年度以降も、将来にわたり維持強化していかなければならないわけですので、まずは国家の責任として歳出改革に最大限努力する、そして、それを行った上で、これを安定的に支えるための財源を考えていくという考えに基づいて取組を進めてまいります。このために、年末に、緊急的に整備すべき五年間の中期防衛力計画の規模、将来にわたり強化された防衛力を安定的に維持するための令和九年度に向けての歳出歳入両面での財源確保の措置、これを一体的に決定していきたいと考えています。これを昨日、私から防衛大臣、財務大臣に指示を出した、こうしたところであります。両大臣で調整を加速させたいと思っています。
○宮本(徹)委員 国債ということをおっしゃらずに、安定財源ということをおっしゃるわけですけれども、有識者会議の報告書は、「国民全体で負担することを視野に入れなければならない。」「幅広い税目による負担が必要」としております。仮に、軍事費倍増を増税で賄おうとしたら、国民一人当たり四万円以上、四人家族で十六万円の増税ということになります。この物価高で実質賃金も下がっている中、総理は、軍拡のために幅広い税目で増税をやろうというんですか。
○岸田内閣総理大臣 先ほども申し上げました、まずは歳出改革に最大限努力する、これは、有識者会議の報告書においても、基本的な姿勢として大事だということが指摘をされています。政府としては、その努力をいたします。しかし、その上で、令和九年度に向けて安定的な財源確保を考えていかなければならない。その際に、様々な工夫を必要とされると考えます。様々な財源についてしっかり精査した上で、年末に向けて結論を出していきたいと思っています。
○宮本(徹)委員 その様々な工夫の中には、増税を否定されないというわけですね。
○岸田内閣総理大臣 今、議論を行っています。私が断定的に申し上げることは控えます。しかし、年末に向けて結論を出してまいります。
○宮本(徹)委員 増税を否定されないということなわけですよね、今の答弁では。昨年の総選挙や、あるいは今年の参議院選挙で、総理は、幅広い税目で増税をするなんてことは一言も公約されていないですよ。そのことの自覚はありますか。国民は、選挙で岸田政権に対して、軍拡増税を行う白紙委任状など一切与えておりません。この下で、数の力で軍拡増税を決めて押し通すというのは許されないんじゃないですか。
○岸田内閣総理大臣 選挙に際しても、我が国の防衛力を国民の命、暮らしを守るために充実させていく、この必要性は訴えたと記憶しております。こうした、防衛力を充実させる、国民の命や暮らしを守るために、今、あらゆる選択肢を排除せず、新しい国家安全保障戦略の策定に向けて議論を行っています。それを裏づけする予算、財源について、年末まで議論を行い、結論を出していきたいと考えています。
○宮本(徹)委員 選挙で確かに防衛力の強化を訴えられましたけれども、その財源については、年末まで検討するということしか選挙のときはおっしゃらなかったわけですよ。軍拡のために増税するなんて、一言もおっしゃっていないんですよ。代表なくして課税なしというのは議会制民主主義の根本ですよ。この物価高騰であえぐ国民生活にのしかかる軍拡増税を選挙で公約もせずに決めていくなど、断じて許されないということを申し上げておきたいと思います。その上で、政府・与党が軍事費を倍増して保有しようとしているのが、長距離巡航ミサイルなど敵基地攻撃能力であります。これまで政府は、憲法九条の下で持てる防衛力というのは我が国を守る必要最小限度なんだ、専守防衛なんだ、そして、他国に脅威を与える軍事大国にはならないんだ、攻撃的兵器は持てないと言ってきたわけです。これを覆そうとしているわけであります。総理、日本が攻撃能力を保有すれば、相手国は当然、それを上回る強力な攻撃力を日本に向けていくことになるんじゃないでしょうか。結果として、日本への脅威は増していくんじゃないでしょうか。この敵基地攻撃能力保有が安全保障のジレンマに陥るリスクというのを、総理はどう認識されているんでしょうか。
○岸田内閣総理大臣 我が国において国民の命、暮らしを守るために何が必要なのか、これをしっかりと検討をし、そしてそれを充実させていく、これは政治の責任として、誠に重要な責任であると考えています。そして、その際に、憲法、国際法を始めとする様々な規範の範囲内で議論をするということ、これは当然のことであります。そして、安全保障のジレンマについて御指摘がありましたが、そうした安全保障のジレンマを防ぐためにも、防衛政策の具体的な考え方、これを透明性を持って周辺国に説明をしていく、こうした努力が必要だと思っています。是非、国民の安心のために、具体的に防衛力について考え、そしてそれを実際に充実させなければいけないと思っていますが、あわせて、国際社会の協力を得るためにも、透明性を持って説明をする、その際に、憲法あるいは国際法との関係、これについても適切に説明することは重要であると認識をしています。
○宮本(徹)委員 幾ら透明性を持って説明するといっても、これまで専守防衛を宣言してきた我が国が攻撃能力を保有していくということになれば、相手国は日本に攻撃の意図があると思うのは当然のことですよ。軍拡競争になれば際限ありませんよ。中国のGDPは日本の三・七倍ですよ。軍拡競争の道を続ければ財政的にもたないのは日本であり、国民の暮らしです。先がない道じゃありませんか。
○岸田内閣総理大臣 これは再三申し上げておりますが、我が国の憲法に基づく基本的な安全保障の姿勢、専守防衛を始めとする基本的な姿勢は全く変わりません。その範囲内で、最大限、国民の命や暮らしを守るために我が国としてどのような防衛力を用意しなければいけないか、こういった議論を続けています。国際社会の、そして周辺国の理解を得るためにも、憲法や国際法、あるいは日米同盟の基本的な役割分担等、従来の姿勢はしっかりと維持をしている、その範囲内での対応であるという、こういった説明を行うことは重要であると認識をしています。
○宮本(徹)委員 専守防衛とおっしゃいますけれども、集団的自衛権の行使としても敵基地攻撃能力は、できると言っているのが岸田政権じゃありませんか。
○根本委員長 宮本徹君、申合せの時間は過ぎております。簡潔に。
○宮本(徹)委員 平和外交こそ必要だということを申し上げまして、質問を終わります。
○根本委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。