2023年2月28日 衆院本会議 23年度予算案衆院通過 宮本徹氏反対「異次元の大軍拡」
2023年度予算案が28日、衆院本会議で自民、公明両党の賛成多数で可決しました。日本共産党、立憲民主党などは反対しました。
日本共産党の宮本徹議員は反対討論で「憲法違反の敵基地攻撃能力の保有、異次元の大軍拡を進める戦後最悪の予算だ」と強調。審議で岸田文雄首相は同能力保有を「憲法の趣旨ではない」としてきた政府答弁との整合性を全く説明できなかったとして、9条に反する「立憲主義のじゅうりん」だと批判しました。
攻撃と防御を一体に行う統合防空ミサイル防衛(IAMD)体制を地球規模で同盟国と築く米国の方針のもと、トマホークをはじめ大量の長射程ミサイル購入・開発の推進は「自ら進んで米国の戦争に巻き込まれる道」「国民を惨禍に巻き込む亡国の道」だと指摘。5年で43兆円もの大軍拡の財源確保のための復興特別税の転用などに反対しました。
宮本氏は、中小企業や非正規労働者などへの賃上げ支援、消費税5%への緊急減税、インボイス(適格請求書)導入中止を要求。再エネ・省エネの抜本的推進を求め、原発運転期間延長・新増設への大転換に反対し、国民の暮らし最優先の予算への組み替えを主張しました。
日本共産党は同日の衆院予算委員会で、同予算案の組み替え動議を提出しましたが、否決されました。
本会議では所得税法、地方税法、地方交付税法等の改定案がそれぞれ与党などの賛成多数で可決。日本共産党は反対しました。
以上2023年3月1日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2023年2月28日 第211国会衆院本会議第7号議事録≫
○議長(細田博之君) 三案につき討論の通告があります。順次これを許します。野間健君。
○野間健君 立憲民主党・無所属の野間健です。私は、会派を代表して、ただいま議題となりました令和五年度一般会計予算外二案について、反対の立場から討論をいたします。(拍手)この間の予算審議では、岸田政権の抱える問題が次々と明らかになりました。まず指摘しなければならないのは、子ども・子育て政策の迷走であります。岸田総理は年頭記者会見で、異次元の少子化対策に挑戦し、子供ファーストの経済社会をつくり上げると宣言されました。その後、民主党政権の子ども手当を、ばらまきだ、愚か者めとさんざん非難してきた自民党の茂木幹事長でさえ児童手当の所得制限撤廃を求めるなど、多くの国民は、ようやく政府・与党も重い腰を上げ、子ども・子育て政策を転換させるのではと大きな期待を寄せました。しかし、その期待は裏切られました。二月二十日、立憲民主党は、日本維新の会と共同で、児童手当所得制限撤廃法案を提出いたしました。この議員立法に自民党が賛成さえすれば、二月から児童手当の所得制限は撤廃され、六月に、二月分から五月分まで四か月分の児童手当が、所得制限により対象外であった世帯にも支給されるのです。しかし、岸田政権も自民党も全くやる気がありません。岸田総理、昨日の予算委員会で、我が党の長妻昭議員の少子化対策に関する質問に対して、気色ばみ、いら立っているように見えました。私から見ますと、総理の少子化対策は、根拠もなく勢いで倍増と言ってしまい、政府内で何の調整もされないから、それでいら立っているんじゃないんでしょうか。ただ勢いだけで、中身のない、口先だけの子供政策が国民に不安と不信を与えているのです。防衛費については、五年間で総額四十三兆円という、合理性や必然性のない、数字ありきの増額目標を打ち立てて、増税まで含めた財源確保策を極めて短時間に決定しました。この少子化対策との差は一体何なんでしょうか。待ったなしの課題とは口先ばかりで、子ども・子育て政策は後回し、置き去りではないんでしょうか。全くやる気がないことを自ら証明しているにほかならないんです。このやる気のなさと対照的なのが、防衛費の増額です。我々も、日本を取り巻く安全保障環境の変化を踏まえれば、真に必要な予算を積み上げた結果として防衛費が増額されることは否定しません。しかしながら、五年間で四十三兆円という増額目標は、最初から数字ありきで、全く合理性や必然性を欠いています。そして、最大の問題は、その数字ありきの防衛費増額のために異次元の増税を決定したことです。まず、何よりも、復興特別所得税の流用は、いまだ復興の途上にある被災地の方々の心情を踏みにじるものです。到底認められるものではありません。そもそも、この復興特別所得税は、民主党政権時代、東日本大震災の復興財源を確保するために、国民の皆様の理解と協力を得て、二〇三七年までと期間を区切って御負担をお願いしたものです。あろうことか、その一部を防衛関係予算に流用し、課税期間を十四年間も延長するなどというのは、国民、とりわけ被災地の皆様に対する裏切りそのものであります。また、防衛増税の規模と開始時期についても、不誠実な説明が繰り返されています。財務省の資料を見れば、令和九年までに防衛増税で約三兆円の財源確保を目指していることは明らかであるのに、なぜか岸田総理はこれを正面から認めようとしません。それどころか、今国会冒頭に行われた施政方針演説では、防衛費増額の財源に言及しておきながら、税という言葉さえ発することがなかったんです。自ら決めておきながら、防衛増税をひたすら隠そうとする岸田総理の姿勢に、国民は不信感を募らせています。また、増税開始時期については、令和六年以降の適切な時期とされていますが、同時に、令和九年度に向けて複数年かけて段階的に実施するとした上で、令和九年度において一兆円強を確保するともされています。国民を欺くためによく考えられた表現です。令和九年度時点で一兆円強、トータルで約三兆円の財源を確保するということは、毎年一兆円ずつ確保するとしても、令和七年から増税を実施しなければならないことになります。ですが、段階的に実施するということは、いきなり一兆円を確保するのではなく、徐々に税収を増やしていくということです。ということは、どれだけ短く見積もっても、令和六年、つまり、来年から増税を始めなければ間に合わないんです。このように、国民には明らかにすることなく、着々と増税プランを進めているんです。なぜ自らが決断した防衛増税をここまで隠したがるのか。それは、コロナ禍や物価高騰で苦しんでいる国民に更なる負担を押しつけようとしていることに後ろめたさを感じているからではないんでしょうか。今からでも遅くはありません。防衛増税は撤回すべきじゃないんですか。総理、防衛増税そして安保三文書の問題については、四月以降、全野党で連合審査を求め、徹底的に予算委員会並みの質疑を求めています。岸田総理、そのときまでに、国民に分かりやすく説明できるように、よく勉強して待っていてください。お願いします。次に、性的マイノリティーの方々に対する差別発言の問題です。荒井勝喜前総理秘書官は、性的マイノリティーの方々に対して、口にするのもはばかられるような差別発言を行った上に、同性婚の法制化については、国を捨てる人が出てくるなどと常軌を逸した発言を繰り返しました。これが荒井前秘書官個人にとどまる問題でないことは、岸田総理の、同性婚を法制化すれば社会が変わってしまうという明らかに否定的な意味合いの発言からも明らかです。総理は、今年五月に地元広島で行われるG7サミットに向けて全力を傾注されていますが、G7で同性カップルに法的保障を認めていない国は日本だけなんです。岸田総理が総裁を務める自民党にはLGBT理解増進法案にさえ難色を示す議員が多いようですけれども、LGBTに対する差別を禁止するという世界標準のまともな人権意識を政府・与党も持っているんだということを、広島サミットで世界に示すべきではないんでしょうか。今年、日本はG7の議長国です。御地元の広島サミットで世界に恥をさらす前に、総理の御英断を求めます。我が国で、世界標準のごく当たり前の常識であるLGBTの差別解消法や同性婚、選択的夫婦別姓制度の法制化が進まない大きな理由は、自民党と統一教会との癒着にあります。昨年末、被害者救済法案が成立しましたが、二月二十二日、五十人の被害者が十六億円余りの損害賠償を求めて、弁護団とともに、統一教会に対する集団交渉を始めました。これは氷山の一角です。第二、第三の集団交渉が行われる可能性もあり、被害者救済はまだまだ進んでいません。そんな中、統一教会は、五月七日、韓国で、数千人、数万人が参加すると言われる盛大な合同結婚式を三年ぶりに予定しております。献金集めも依然として継続しています。政府は、一刻も早く解散請求を行うべきです。まさか、統一地方選挙の後まで遅らせる、そういうつもりはないでしょうね。多くの被害者が救済されていない状況にもかかわらず、何と自民党は、統一教会からの支援を受けて統一地方選挙を戦おうとしているのではありませんか。統一教会との関係を断ち切っていない、つまり、統一教会に支えられている自民党の地方議員や候補者がいまだに多く残っています。岸田総理は、自民党総裁として、統一地方選挙の前に自民党の全ての都道府県連と候補者について統一教会との関係を改めて調査し、関係を断ち切ることを強く求めます。総理、統一教会の問題は終わっていません。参議院でも徹底追及してまいります。以上申し上げたとおり、予算の提出者たる岸田総理の基本姿勢には、看過し難い問題が多く見受けられます。予算そのものにも多くの問題が存在しています。令和五年度予算の一般会計総額は百十四・四兆円に上り、十一年連続で過去最大規模を更新しました。令和四年度当初予算と比較して約七兆円以上、そして、極めて異例なことに、概算要求時点から四兆円以上も増額されています。昨年成立した令和四年度第二次補正予算には概算要求から前倒しで計上された予算が多く含まれていることも踏まえれば、歳出抑制のために存在しているはずの概算要求制度は完全に機能不全に陥っており、財政規律は崩壊していると言わざるを得ません。そして、本予算最大の焦点は、やはり、五年間で総額四十三兆円規模を確保するとした防衛費であります。防衛関連予算の中身は、驚くべき兆単位の丼勘定であります。合理性、必然性がそこにはありません。政府が反撃能力として活用するとしているスタンドオフ防衛能力の取得予算として、五年間で五兆円が計上されています。国内で開発を進めるこのスタンドオフ兵器は、いまだ開発中で、実用化もされていません。開発が成功するかどうかも分からず、費用が幾らかかるかも分からぬまま、取りあえず五兆円を積んでおく、こういうずさん極まりない予算計上なんです。そして、何よりも許し難いのは、本来、年金特別会計に戻すべき地域医療機能推進機構、JCHOの積立残余金三百二十四億円を、防衛費増額の財源に充てようとしていることです。これは年金財源の流用にほかならず、年金生活者の皆様を始め、必死で年金を納めている国民には許し難いことであります。将来世代に対して無責任な巨額の国債発行も改めるべきです。本予算において、税収は六十九・四兆円を見込んでいるとのことですけれども、過去最大規模となった歳出とのギャップは大きく、その穴埋めのために三十五・六兆円の新規国債を発行することとしています。普通国債の発行残高は昨年末に史上初の一千兆円台に突入しており、財政赤字の更なる深刻化は看過し難いものがあります。ここ十年間に及んだ異次元の金融緩和は失敗に終わり、様々な副作用をもたらしていることから、今後、遅かれ早かれ、金融政策は正常化していかなければなりません。その過程で金利が上昇した場合、巨額の国債発行は利払い費の急増に直結し、国家財政への影響は一層深刻なものになりかねません。以上申し上げたとおり、予算の提出者たる岸田政権の基本姿勢、そして国民の汗と涙の結晶である税金を財源とした予算そのものについて、国民に更なる負担を強いる増税を始め、認めることができない数多くの問題が存在していることから、我々は、令和五年度予算に断固として反対するものであります。今後も、政府の問題点をただすとともに、国民最優先の政治を実現させていくことをお誓い申し上げ、私の反対討論を終わります。ありがとうございました。(拍手)
○議長(細田博之君) 牧原秀樹君。
○牧原秀樹君 自由民主党・無所属の会の牧原秀樹です。私は、会派を代表し、令和五年度一般会計予算外二案に対し、賛成の討論を行います。(拍手)ロシアのウクライナ侵略開始から一年がたちました。改めて、ロシアに対し、強く非難し、直ちに侵略行為をやめるよう求めます。また、トルコ、シリアで発生した大地震では、五万人を超える犠牲が出ています。御冥福をお祈り申し上げますとともに、地震被害のつらさ、苦しさを最もよく知る我が国として全力で支援すべきと考えます。予算委員会は一月二十七日からスタートし、総審議時間約八十時間、分科会約九十六時間、三年ぶりの地方公聴会、及び、中央公聴会も行われました。安全保障、外交、少子化、子育て支援、物価高、賃上げ、エネルギー、GX、食料安全保障、新型コロナ、同性婚、選択的夫婦別姓など、本当に幅広い内外の諸課題について審議がなされました。まず、逢坂筆頭理事を始め野党理事や関係者の皆様には、昭和から続いてきた審議拒否のような古い手法ではなく、正々堂々と質の高い審議の中身で勝負し、結果、国会審議を充実させてくださったことに感謝を申し上げます。日本が置かれた状況の厳しさや問題の難しさ、複雑さに鑑みれば、国会の中で与野党が足の引っ張り合いをしている状況ではありません。本予算委員会は、まさに与野党が政策や議論の中身で勝負する政治の新しい時代の象徴になったと国民の皆様には申し上げたいと思います。その上で、本予算案に対する賛成の主な理由は、第一に、安全保障、外交です。昨年末、政府は、我が国を取り巻く厳しい安全保障環境を踏まえ、国民の命と平和な暮らしを守るために新たな国家安全保障戦略など防衛三文書を策定し、本予算案には、五年間で四十三兆円の新たな防衛力整備計画の初年度として必要な防衛予算を計上しております。自分の国は自分で守る、その気概がなければ、いざというときに他国も守ってくれません。そのことを私たちはウクライナの皆様に教わっております。本予算は、まさに我が国がそうした意思と能力を有することを世界に示す、極めて大切なものとなっております。また、今年、我が国はG7議長国、国連安保理の非常任理事国を務め、日・ASEAN友好協力五十周年、TICAD三十周年など、外交上、極めて大切な年です。本予算案には、こうした様々な国際会議や周年行事を成功に導き、力強い外交を展開するために不可欠な予算が盛り込まれております。第二に、少子化、子育て政策です。昨年の出生数は年八十万人を割り込むと見込まれ、中位推計よりも八年ほど前倒しで少子化が進んでおります。その深刻さを与野党が認識を共有いたしましたが、まずは、司令塔として本年四月にこども家庭庁が設置されます。そして、出産一時金の四十二万円から五十万円への過去最高となる引上げ、妊娠時から出産、子育てまでの一貫した伴走型支援と経済的支援のパッケージの継続実施など、今後の更なる少子化、子育て政策の推進につなげるものとなっております。第三に、新しい資本主義実現のための道筋がより一層つけられています。その第一の柱とも言える科学技術立国実現のため、前年に引き続き過去最大級の約一・四兆円もの科学技術振興費を確保し、量子、AI分野を中心とする重要最先端技術の研究開発を戦略的に推進するとともに、基礎研究、若手研究者向け支援を実施するなどしております。また、二〇五〇年カーボンニュートラル宣言以降、我が国は環境立国としての立ち位置を明確にし、GXが新しい資本主義の柱の一つとされています。本予算案には新たなGX経済移行債の発行が定められ、民間のGX投資を大きく促すものとなっております。第四に、物価上昇を超える賃上げ実現のため、リスキリングによる能力向上支援など人への投資を推進するとともに、中小企業における下請取引適正化や価格転嫁促進といった対策を強化する予算を盛り込んでいます。第五に、活力ある地方の創生に向けて、デジタル田園都市国家構想交付金により、自治体のデジタル実装加速化やデジタルの活用による観光、農林水産業の振興などを支援し、リーマン・ショック後最高額となる地方交付税交付金を確保することで地方の行財政基盤を支えています。このほか、中小企業の生産性向上や事業再生、事業承継に対する支援、防災・減災、国土強靱化推進、食料安全保障の強化など、現下の諸課題に対応するための予算が盛り込まれており、まさにこうした問題に応えるためにも、速やかな成立が求められるのではないでしょうか。以上、本予算案に賛成する理由を申し述べました。昨年、安倍元総理が凶弾に倒れました。私たち政治家は、文字どおり命を懸けて、国のため、国民のため、そして未来のために活動しています。与野党の立場や主義主張の違いこそあれ、この歴史の転換期に国権の最高機関に身を置く者として、共にその使命を果たしていこうではありませんか。このすばらしい国を、未来に胸を張って引き継げるようにしていこうではありませんか。そのためにも本予算案に御賛同賜りますことを切にお願い申し上げ、私の賛成討論といたします。(拍手)
○議長(細田博之君) 青柳仁士君。
○青柳仁士君 日本維新の会の青柳仁士です。私は、ただいま議題となりました令和五年度一般会計予算三案について、会派を代表して、反対の立場から討論いたします。(拍手)まず、反対の最大の理由であり、背景にあるのは、身を切る改革を進めることなく、負担を国民に押しつけ、将来世代に先送りし続ける自民党政権の財政運営の基本姿勢に、いささかの反省も変化も見られないことです。その最たる例が、岸田総理が突き進む防衛増税、増税路線です。一月三十一日の予算委員会において、岸田総理は、防衛費増額の財源として、所得税、法人税、たばこ税の年間一兆円の増税を行うことを明言しました。これに対し、我が党は委員会質疑を通して度重なり撤回を求めてまいりましたが、岸田総理が聞く力を発揮する場面は最後までありませんでした。政府・与党は、この増税について、深刻化する昨今の国際情勢を鑑み、防衛費の拡充は不可欠であり、その財源を得るために仕方がないものだ、このように説明しています。しかし、これは国民を欺く詭弁であると言わざるを得ません。防衛費増額に必要な予算額四兆円のうち、三兆円までは増税なしで確保することが既にできています。今回の一兆円の増税が必要なのは、防衛費増額の規模が四兆円だからであり、仮に三兆円以下であったなら増税は必要ありません。つまり、防衛費を増額するために増税が絶対に必要なわけではないのです。裏を返せば、増税以外の手段でもう一兆円の財源を確保できれば、増税は必要ないということです。この点は自民党内からも同様の意見があり、検証の動きがあるようです。しかし、結局のところ、岸田政権の増税路線には寸分の変更もありません。結果に影響しないのであれば何の意味もなく、結局は国民向けのパフォーマンスであると断じざるを得ません。検証するまでもなく、この一兆円の財源が増税以外で確保できることは、予算委員会の質疑の中でも明らかになっています。例えば、毎年、政府は大量の予算を使い残しています。去年は六・三兆円、おととしは三・九兆円です。これだけでも増税額の十年分になります。また、それ以前の十年間を見ると、毎年一・四兆円から二・八兆円の予算を使い残しています。増税が必要な一兆円を優に超える予算が、毎年、安定的に余っているんです。なお、委員会では、他会派より、増税以外で財源を得るには何か具体的に削るべきものが必要との意見もありました。歳出削減は重要であり、徹底的に行うべきことは、これまで我が党も主張し続けてきたとおりです。しかし、国債発行でも歳出削減でもなく、増税相当額の予算が余っている中で、それらが存在しないかのように財源論を語ることは、財政の全体を見た上での地に足の着いた現実的な議論とは言えません。そもそも、令和四年度の補正予算で、税収は年間で三兆円増えています。本来は、こうした経済成長による増収こそ真の安定財源ではないのですか。これに対し、経済成長はその時々の景気の状況によるので安定財源ではないという反論が財務省からありました。これは、政権を預かる政府・与党として正しい認識でしょうか。日本以外の各国では、経済成長とそれに伴う税収の増加が安定的に起きています。一九九三年からの三十年間で、欧州各国の経済規模は約二倍になりました。アメリカとカナダは三倍を超えました。韓国は四倍以上、中国は二十八倍です。この間、日本はたったの一・一倍です。三十年前とほとんど経済規模が変わっていません。安定的に成長していないのは日本だけなんです。そして、この三十年間のほとんどの期間、政権を担っていたのは自民党です。岸田政権の新しい資本主義のように、看板を何度もかけ替えながら幾度となく成長戦略を出し続け、毎年毎年何十兆円もの大量の税金を使い続けておきながら安定的な経済成長を起こせていないのは、自民党の政権運営が悪いからです。民間企業であれば、そんな経営陣はとっくに全員首になっています。この期に及んで経済成長を安定的に起こす自信がないというのなら、今すぐ政権を返上するのが真に国民と国家のためではないでしょうか。加えて、新型コロナの対策費が令和二年度と三年度だけで百十四兆円計上されています。今年の五月八日以降、新型コロナの感染症カテゴリーが二類相当から五類に変更されれば、緊急事態宣言等の行動制限はできなくなり、内閣府、総務省、経産省、国交省、厚労省等に積まれた大量の新型コロナ予算が不要になります。増税が必要な額の何と百十四年分という途方もない額です。政府・与党が多用する、安定財源だから増税が必要であるという説明もうそです。鈴木財務大臣が答弁の中で認めたとおり、財務省は歳入と歳出を突き合わせた予算管理などしていません。来年度の当初予算では、歳入のうち国債、すなわち非安定財源が三割を占めている一方で、国債関連経費以外の歳出のほぼ全てが安定財源の必要な恒久的支出です。子ども・子育て政策や地方創生など、誰がどう考えても安定財源でなければならない予算は増税なしで出すにもかかわらず、防衛費だけは増税が必要という政府・与党の説明は、完全に論理が破綻しています。さらに、岸田総理は、今回の増税は現行の家計の所得及び法人の九四%には全く影響が出ないと繰り返し答弁しました。しかし、鈴木財務大臣は、増税される復興特別所得税について、支払いが終了する期限年以降も負担が継続するという意味においては、今までになかった負担を国民にお願いすることになると真逆の見解を答弁で述べました。当たり前です。国民が今払っている税金が継続するだけなら負担はないなどというのは、傲慢な政治家の感覚であり、取る側の論理です。そもそも、払わないでいいお金は一円も払いたくないというのが当然の国民感覚です。法人税についても、約十六万社が徴税の対象になります。これは、全ての上場企業と多くの中堅企業が含まれます。総理が賃上げを期待する中心的な企業群です。日本商工会議所と東京商工会議所からは、今回の増税措置は企業の前向きな賃上げや投資意欲に水を差しかねないという会頭のコメントも寄せられています。また、昨年の政府の経済対策では、物価高対策には価格転嫁が必要であるとされていますが、大企業や中堅企業から資金力を奪えば、下請となる中小企業への価格転嫁は当然起きにくくなります。岸田政権の突き進む増税とは、国民の将来の家計収入を取り上げ、企業の賃上げを抑え込み、中小企業の取引先が値上げを受け入れるための原資を年間一兆円分奪うものです。現行の家計の所得及び法人の九四%には全く影響が出ないなどという岸田総理の認識は、事実でもなければ、国民や中小企業の実感からもかけ離れています。改めて、今回の一兆円の増税は撤回すべきです。予算委員会全体を通して、こうした我が党からの指摘に対して、政府・与党からは答弁になっていない同じ説明が繰り返されるばかりで、何一つ論理的な反論はありませんでした。それにもかかわらず、何の修正もなく予定どおりの増税へと突き進む岸田政権の傲慢な態度は、国権の最高機関たる国会、そして主権者たる国民の民意を余りにも軽視していると言わざるを得ません。その一方で、我が党が繰り返し求めている議員定数、議員歳費の削減や調査研究広報滞在費の改革など、国会議員の身を切る改革は進捗がほとんど見られません。新たな財源を考える際、自らの身分やそれを支える既得権の利益は守り、国民負担を先に考えるという発想は、どの角度から見ても間違っています。こうした自民党政権の財政運営が長年続く中で、我が国の財政規律は末期的状況に陥っています。そして、更なる劣化に歯止めがかからない状況です。令和五年度の一般会計予算においても、主に次の四つの点においてその問題が表面化していると考えています。第一に、歳出と国債発行の規模が無制限に拡大し続けています。今回の予算は一般会計予算として過去最大です。歳出規模は増加の一途をたどり、毎年、過去最大を更新し続けています。歳出の三割を借金に頼る状態が常態化しているにもかかわらず、税収の自然増分に見合う国債発行削減すら行われておらず、今年度から不要になる予算額も過小に見積もられています。第二に、当初予算が少なく、補正予算が過度に膨張する傾向が続いています。例えば、昨年度の経済産業省の予算は、当初一・二兆円に対し、補正は十二兆円、約十倍です。財政法二十九条によれば、補正予算とは、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出に限り認められます。当初予算の十倍の予算が事後に発覚した緊要な予算であるなどという説明は、常識的に考えられません。法文の解釈として許される範囲を明らかに逸脱しています。第三に、本来は特例的な予算である予備費が、令和二年度を境にそれまでの十倍から二十倍の規模に急増し、無制限に拡大し続けています。令和五年度予算では当初から五兆円計上されており、たがの外れた巨大予備費の既成事実化に更なる拍車がかかっています。最後に、三十年間経済成長が停滞している日本において、再び成長力を呼び起こすための戦略性を持った予算づけがなされていません。少子化対策やGXなど看板施策の名をかりた不要不急のびほう策への支出ばかりで、既得権へのばらまき優先の予算積み上げが続いています。個別の予算づけでは、岸田総理は異次元の少子化対策を打ち出しながら、どこにも異次元の子ども・子育て予算は見当たりません。日本の将来世代への財政支出は、先進諸国の中で最低レベルにとどまっています。日本維新の会が立憲民主党と議員立法を提出した児童手当の所得制限撤廃や、教育無償化の全国展開など、かけ声だけでなく、具体的な予算措置が不可欠です。また、岸田政権が成長戦略の柱に掲げるGXも中途半端です。世界的なエネルギーコストの高騰により、今後、電気料金の大幅値上げが予定されています。その後も収束の見込みは立っていません。短期的な政府による価格対策も十分でない上に、中長期的なエネルギー安定供給のための抜本改革やそのための投資は、本予算案のどこにも見当たりません。以上述べてきた問題点を取りまとめ、我が党は令和五年度一般会計予算三案の編成組替えを求めましたが、与党は一顧だにすることもなく反対し、動議は否決されました。日本維新の会は、国民と国家の利益を最優先に考え、政府・与党に対して、必ずしも反対ばかりではなく、是々非々で臨む政党です。しかし、どこまで是の部分を大きく見積もっても賛成しようがないのが今回の予算案であり、現在の自民党の財政運営であると考えています。イギリスの政治家、歴史家ジョン・アクトンは、権力は腐敗する、絶対的権力は絶対的に腐敗すると言いました。自民党は、長期政権とそれがもたらす絶対的権力に芯までつかり、既得権のしがらみや古い政治の体質がしみついて構造的な欠陥を抱えるようになり、国民と国家にとって合理的に考えて正しいことを素直に実行できない政党になってしまっていると感じます。今回の予算案にはそのことがよく表れています。日本維新の会は政権政党を目指しています。しかし、その目指す姿は、今の自民党とはほど遠いものです。我々が目指すのは、既得権を持つ団体や組織ではなく広く一般の国民と感覚を共有し、時代に即した改革を勇敢に実行し、真に安全で豊かで持続可能な国家と国民の暮らしをもたらすことのできる新しい政権政党です。我が党は、こうした志を共にする政治家とは是々非々の政策ベースで連携をしながら、これからも正々堂々と自民党、岸田政権と対決していくことをお誓い申し上げ、令和五年度一般会計予算三案に対する反対討論とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(細田博之君) 鰐淵洋子君。
○鰐淵洋子君 公明党の鰐淵洋子です。ただいま議題となりました令和五年度予算案について、賛成の立場から討論を行います。(拍手)令和五年度予算案は、我が国が抱える重要課題の解決に真正面から取り組む予算となっています。以下、主な賛成理由を申し述べます。第一に、四月からのこども基本法の施行、こども家庭庁の創設を踏まえ、少子化対策、子育て支援を着実に前進させる予算となっている点です。公明党は、昨年十一月、結婚、妊娠、出産から子供が社会に巣立つまで、ライフステージに応じた切れ目のない支援策として子育て応援トータルプランを発表しました。本予算案は、同プランを着実に具体化するものであると評価いたします。例えば、出産育児一時金は、これまで公的病院の平均出産費用を勘案して設定されていましたが、今回は私的病院等も含む全施設の平均出産費用を勘案して、四十二万円から五十万円に増額されます。また、令和四年度の補正予算で先行実施した、妊娠時から出産、育児まで一貫して家庭に寄り添う伴走型相談支援と、妊娠届出時に五万円分、出産届出後に五万円分、計十万円分の経済的支援を一体的に実施する出産・子育て応援交付金を令和五年十月以降も継続して実施するための費用が計上されています。公明党は、制度の定着、恒久化に全力で取り組んでまいります。さらに、保育所の空き定員等を活用して、専業主婦の御家庭を始め、保育園を利用しない未就園児を定期的に預かるモデル事業が計上されています。将来的には、このモデル事業の実施結果を踏まえ、全国展開を図るべきと考えます。また、新婚世帯の家賃、引っ越し費用等を補助する結婚新生活支援事業の拡充など、結婚から妊娠、出産、子育てに対する支援の充実が図られています。そのほかにも、子供の健やかな成長を保障する観点から、教科担任制の推進等を図るとともに、外部人材の活用等により教員が授業等に注力できる環境や、いじめ、不登校など課題を抱える児童生徒への支援体制が整備されるなど、教育の充実も図られます。第二に、物価高から国民生活を守り抜くとともに、本格的な経済再生に取り組む予算となっている点です。直面する物価高やコロナ禍、ウクライナ情勢の変化による不測の事態に対応するため、一般予備費とは別に、新型コロナウイルス感染症及び原油価格・物価高騰対策予備費として四兆円、ウクライナ情勢経済緊急対応予備費として一兆円、計五兆円の予備費を確保し、国民生活に万全を期しております。政府におきましては、物価高など国民生活への影響を注視し、必要な追加策をちゅうちょなく実行するようお願いいたします。また、新しい資本主義における成長戦略の柱となるGX、DXに大胆に投資しています。GXについては、GX経済移行債の発行により、民間のGX投資を支援する仕組みを創設し、二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けた革新的な技術開発やクリーンエネルギー自動車の導入などの支援を開始することとしています。令和四年度補正予算と合わせて一・六兆円規模の支援となります。さらに、地域の脱炭素化が重要なことから、地域の再エネ導入や脱炭素事業への投資、また、住宅の省エネ化等を推進することとしています。DXについては、デジタルの力で地域課題を解決し、住民の豊かな暮らしや地域の魅力向上につながるデジタル田園都市国家構想を推進するための交付金として一千億円が計上されています。そして、所得の向上につながる、人への投資の抜本強化も進みます。まず、物価高の中においても、大企業のみならず中小企業も賃上げに取り組めるよう、下請Gメンを三百名体制に増員し、適正な取引や価格転嫁対策を一層強力に推進することとしています。また、DXやGXを通じた中小企業の生産性向上や成長力強化を後押しするため、令和四年度の補正予算で措置した補助事業に加えて、中長期的な生産性向上に向けて中小企業が行う研究開発に対する補助事業を計上するとともに、経営者に寄り添った相談支援を一層強化することとしています。さらに、構造的な賃上げの実現に向けて、無料でキャリアコンサルティングを受けることができるキャリア形成・学び直し支援センターの設置など、リスキリングへの支援がきめ細かく計上されています。第三に、厳しさを増す我が国を取り巻く安全保障環境に対処する予算となっている点です。昨年末に閣議決定した新たな国家安全保障戦略には、公明党の主張を受けて、国際社会の平和と安定、脅威の出現を未然に防ぐための外交力が第一に重要である旨の文章が明記されました。国際社会の平和と安定のためには、何よりも外交の役割が重要です。外務省予算も、対前年度比四百八十五億円増となっており、総理を先頭に、外交活動の抜本強化にも全力を挙げていただきたいと思います。そして、必要な防衛力を整備するため、令和九年度までの五年間で約四十三兆円を積み上げることとしています。令和五年度においては、新たな国民負担は求めず、歳出改革や決算剰余金の活用、税外収入から捻出するとした点は評価しますが、引き続き、国民負担を最小限に抑える努力をすべきと考えます。いわゆる反撃能力の保持については、一部に専守防衛を逸脱するのではないかとの指摘もありますが、公明党の主張もあり、平和国家として、憲法及び国際法の範囲内で専守防衛に徹すること、先制攻撃は許されないことが国家安全保障戦略に明記されたところです。公明党としても、絶対に戦争を起こさせない覚悟を持って、今後も党外交に全力を挙げてまいります。そのほか、激甚化、頻発化する災害から国民の生命財産を守るための流域治水の本格的な実施など、ハード、ソフト両面にわたる防災・減災対策のための予算や、食料安全保障や農林水産物、食品の輸出力の強化など、農林水産業の生産基盤の強化や成長を後押しする予算が数多く盛り込まれています。以上、令和五年度予算案は、新しい資本主義を具現化し、我が国が持続可能な社会の構築に向かっていよいよ加速するための予算であります。本予算案の速やかな成立と着実な執行を強く求め、私の賛成討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(細田博之君) 斎藤アレックス君。
○斎藤アレックス君 国民民主党の斎藤アレックスです。私は、会派を代表して、ただいま議題となりました令和五年度総予算三案に反対の立場から討論します。(拍手)我が国は、長期にわたり停滞する経済、止まらない少子化傾向という深刻な問題に直面しています。これらを改善、解決し、日本に希望と未来を取り戻すためには、これまでの凋落の三十年間を招いた政策体系から大きく転換し、給料が上がる経済に資する予算、人づくりに資する子ども・子育て政策関連の予算を編成しなければなりません。しかし、岸田政権が編成した令和五年度総予算にはそのような日本の根本的な問題への解決策が欠落しており、これまでと同様、問題解決を先送りし、そして、これまでと同様に更に問題を大きくする結果を招くことは火を見るよりも明らかです。岸田総理がかねてから主張し、そして年頭会見で表明した異次元の少子化対策に必要不可欠な子育て関連予算の将来的な倍増については、増額の規模や時期など詳細は全く示されませんでした。防衛力強化は一定の評価をするものの、過度な秘密主義で中身を確認できない予算、そして防衛増税は、これまでの政府からの不十分な説明では、とても国民の理解を得られるとは思えません。賃上げに関連する政策も過去の延長線上のものにすぎず、より大胆な賃上げ税制が盛り込まれることはなく、最低賃金の大幅な引上げの意思も総理の予算委員会での答弁では感じられませんでした。賃上げを妨げると同時に人手不足を招いている年収の壁問題を突破するための給付、そして根本的な社会保険制度の改革に関しても、検討するとの受け答えに終始し、働く人たちの声も経営者の声も全く聞いていないのではないかと疑わざるを得ません。国民民主党は、対決よりも解決の理念の下、批判は常に対案を示しながら行っています。限られた時間ですが、以下、具体的な対案を申し述べることで反対討論に代えさせていただきます。まず、賃上げ税制は、赤字企業、事業者が賃上げ原資を確保できるようにするため、法人税に加え、法人事業税や固定資産税もその対象に含む内容に修正するべきです。次に、子育て予算に関しては、児童手当を始めとした子ども・子育て支援における公的給付の所得制限を撤廃するとともに、岸田総理も就任時に公言した子供予算倍増の内容に修正し、とりわけ障害児福祉に関する公的給付の所得制限は即刻撤廃すべきです。そして、ガソリン減税と電気、LPガス代値下げを実現するため、ガソリン、軽油のトリガー条項の凍結を解除するとともに、電気料金に上乗せされている再生可能エネルギー発電促進賦課金の徴収を停止すべきです。加えて、地方において重要なインフラとなっているLPガスについても、所要の対策を講じることが必要です。また、我が国の構造的な問題を解決するために、次の五点の対策を講じることを求めます。一点目は、労働力不足、女性の社会進出の障害となっている年収の壁問題について、抜本的な社会保険改革を早急に行うとの約束の下、当面の対策として、年収の壁を超えて労働する場合の収入減少分を穴埋めする、年収の壁突破給付を導入すること。二点目に、金融所得の総合課税を含む所要の措置を講じ、一億円の壁に代表される税負担の公平性の問題を改善すること。三点目は、教育国債発行による財源を確保し、教育など人づくりのための予算及びデジタル化、カーボンニュートラルを柱として科学技術関係予算を倍増し、日本の科学技術と産業の国際競争力を取り戻すこと。四点目に、少なくとも持続的な賃上げが定着する経済社会状況が実現するまでの間、増税はしない方針を盛り込んだ内容に防衛予算を見直すこと。五点目に、日銀保有国債の一部永久国債化、外為特会の一般会計への繰入れ等により財源を多様化するとともに、予備費縮減、決算剰余金の透明化などにより財政規律を強化すること。国民民主党は、このほかにも、インフレ手当の支給、消費税減税とインボイス制度導入延期などを提案しています。残念ながら、これらを盛り込んだ予算組替え動議は予算委員会で否決されてしまいましたが、国民民主党は、一つずつでも国民生活を支える政策を実現できるよう、引き続き、真摯な議論を他党に働きかけてまいります。戦後、目覚ましい発展を遂げた日本ですが、一九九〇年代以降の日本は経済の長期低迷が続き、国際競争力も科学技術力も凋落の一途をたどり、一人当たりGDPは先進国で最低水準。全体のGDPでも、人口が日本よりも大分と少ないドイツに間もなく抜かれて、かつて世界第二位の経済大国であったものが、四位にまで日本は順位を落とすことが見込まれています。少子化傾向は止まらず、今後三十年間で労働人口が三割も減ると推計されており、そもそも社会を維持することができるのかさえ危ぶまれる状態です。何よりも問題なのは、そのような環境下で、あらゆる年代の人たちが将来不安を膨らませ、若い人たちでさえも明日に希望を持てていないことです。総理は、先日、第二次安倍政権以降の自公政権は前進の十年であったと胸を張っておられましたけれども、本気でそう思っているのでしょうか。問題から目をそらしたり、間違いを認めずに機能していない政策体系に固執したりして、問題解決ができるはずがありません。岸田政権には、改めて現実に目を向け、真摯に日本の課題に取り組むことを求めます。国民民主党は、困難な問題から目をそらさず、対決よりも解決の理念で、日本を再生する仕事に全力で取り組むことをお約束して、会派を代表しての討論といたします。御清聴ありがとうございました。(拍手)
○議長(細田博之君) 宮本徹君。
○宮本徹君 日本共産党を代表して、二〇二三年度予算案に反対の討論を行います。(拍手)本予算案は、国民の暮らしをそっちのけにして、専守防衛を投げ捨て、憲法違反の敵基地攻撃能力の保有、異次元の大軍拡を進める戦後最悪の予算です。断じて認められません。政府は、これまで、敵基地攻撃について、ほかに全然手段がない場合、法理的に可能だが、国連の援助や日米安保条約がある下で、平生から他国を攻撃する、攻撃的な脅威を与えるような兵器を持つことは憲法の趣旨ではないと答弁してきました。審議の中で、岸田総理は、これまでの答弁との整合性について全く説明できませんでした。内閣法制局長官だった阪田雅裕氏は、反撃能力を持つことはまさに憲法九条が禁じた戦力を持つことです、国民を誤解させて国の形を変えようとする昨今の政治は法治国家の名を汚すものと厳しく批判しています。本予算案は、立憲主義をじゅうりんするものにほかなりません。予算委員会公聴会で、公述人から、岸田政権は、バイデン政権に追従し、米国の戦争に巻き込まれるリスクを高めているとの指摘がありました。バイデン政権の国家安全保障戦略は、中国を唯一の競争相手と位置づけ、同盟国との連携によって競争に打ちかつ方針です。アメリカは、攻撃と防御を一体に行う統合防空ミサイル防衛、IAMDの体制を地球規模で同盟国と協力して築く方針です。日米共同声明では、日本の反撃能力の開発及び効果的な運用について協力を強化することが確認されました。そして、岸田政権は、安保三文書に、敵基地攻撃能力について、日本への武力攻撃がなくとも集団的自衛権として行使し得ると明記し、本予算案では、トマホーク始め大量の長射程ミサイルを購入、開発しようとしています。これでは、自ら進んでアメリカの戦争に巻き込まれる道と言わなければなりません。地域の緊張を高め、際限のない軍拡競争になりかねません。審議の中で、浜田防衛大臣は、日本が攻撃されていないのに集団的自衛権として敵基地攻撃能力を行使した場合、相手国からの反撃で我が国に被害を及ぼす場合もあり得る、大規模な被害が生じる可能性も完全に否定できないと答弁しました。国民を惨禍に巻き込む、亡国の道ではありませんか。ミサイル部隊が配備される南西諸島の住民に、戦争を呼び込むものだと不安が広がっております。弾薬庫を全国で百三十も整備する計画にも不安が高まっています。敵基地攻撃能力保有は撤回すべきであります。日本には、世界に誇る憲法九条があります。徹底した平和主義の国として、米中双方に緊張を高める行動をやめること、対立の緩和と軍縮を働きかけ、地域の安定した平和をつくることこそ、日本政府の果たすべき役割だと強く指摘したいと思います。さらに、五年で四十三兆円もの大軍拡の財源確保のために、国民の暮らしを犠牲にすることは断じて許されません。復興特別税の軍拡財源への転用は、復興のために協力している国民を愚弄するものであります。国立病院機構や地域医療機能推進機構の積立金は、法律で医療や年金の財源とされております。年金財源が足りないといって年金を目減りさせながら、年金財源を横取りして大軍拡に流用することは、国民の理解は到底得られません。今、物価高で苦しみの中にいる国民、事業者の皆さんがたくさんいます。高い授業料で進学を断念する若者、奨学金の返済で苦しむ市民がいます。少ない年金のため、七十を過ぎても年末年始なく働く高齢者の方がいます。老老介護をしながら特養ホームの空きを待っている方がいます。大軍拡に充てる巨額の財源を国民の生活の支援に回せばどれだけの国民が助かるか、想像すべきであります。岸田政権は子育て予算倍増を掲げましたが、審議では、何をベースに倍増というのか明らかにならず、子育て支援の具体的な提案にも、これから検討と言うばかり、何一つ中身は具体的に示されておりません。十年前の約束であった保育所の配置基準の改善、これは直ちにやるべきであります。国際公約である大学までの教育無償化も早急に進めなければなりません。障害児福祉を始め子育て施策は、所得制限を撤廃し、拡充こそ必要であります。岸田政権の進める子育て支援には大きな問題があります。財源です。新年度から実施される出産一時金の引上げ自体は当然の施策でありますが、その財源として、年収百五十三万円、月でいえば十二万七千五百円以上の七十五歳以上の医療保険料を引き上げようとしています。財源を求めるところが間違っているんじゃありませんか。一億円の壁を始め、大企業優遇、富裕層優遇税制を正すべきです。何よりも、大軍拡をやめれば、教育無償化、子育て支援も大胆にできるではありませんか。今、国民が求めているのは、電気、ガス、食品、飼料を始めとする物価高騰から暮らしとなりわいを守る支援の抜本的な強化です。中小企業や非正規労働者などへの賃上げへの支援です。介護、障害者福祉、子育て支援などを拡充して、誰もが安心して暮らせる社会です。気候危機を打開するために、再エネ、省エネを抜本的に推進することです。原発の運転期間延長、新増設など、福島の教訓を忘れた原発回帰は断じて許されません。消費税を五%に緊急減税し、インボイスの導入は中止すべきです。以上、大軍拡予算は撤回し、国民の暮らし最優先の予算に組み替えるべきことを強く求め、討論を終わります。(拍手)
○議長(細田博之君) これにて討論は終局いたしました。ただいまから十分後に記名投票をもって採決いたしますので、しばらくお待ちください。静粛に願います。令和五年度一般会計予算外二案を一括して採決いたします。この採決は記名投票をもって行います。三案の委員長の報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参されることを望みます。なお、今回の投票につきましては、順次間隔を空けて登壇していただくため、通常より時間をかけて氏名点呼を行わせます。――議場閉鎖。氏名点呼を命じます。
〔参事氏名を点呼〕
〔各員投票〕
○議長(細田博之君) 投票漏れはありませんか。――投票漏れはありませんか。――速やかに投票してください。――速やかに投票してください。――速やかに投票してください。ただいまから一分以内に投票されるように望みます。その時間内に投票されない方は棄権とみなします。――速やかに投票してください。
〔投票継続〕
○議長(細田博之君) 一分が経過いたしますと、投票されない方は棄権とみなします。――速やかに投票してください。それでは、制限の時間が参りましたので、投票箱の閉鎖を命じます。投票箱閉鎖。開票。――議場開鎖。投票を計算させます。
〔参事投票を計算〕
○議長(細田博之君) 投票の結果を事務総長から報告させます。
〔事務総長報告〕
投票総数 四百五十五
可とする者(白票) 二百八十九
否とする者(青票) 百六十六
○議長(細田博之君) 右の結果、令和五年度一般会計予算外二案は委員長報告のとおり可決いたしました。(拍手)