2023年4月19日 衆院厚生労働委員会 保険証廃止は撤回を 宮本徹氏 不合理性を追及
配付資料 出典:阿部彩他「子どもの医療費助成制度の受診抑制に対する影響 ~大規模自治体データを用いた実証研究~」『医療と社会』医療科学研究所2021年度、Vol.31 No.2から抜粋
配付資料 出典:日本医療労働組合連合会提供資料
日本共産党の宮本徹議員は19日の衆院厚生労働委員会で、マイナンバーカードと健康保険証を統合し保険証を廃止する政府の方針によって保険証がない人が出ると指摘し、廃止の撤回を求めました。
宮本氏は、修学旅行や部活の遠征の際、健康保険証のコピーを持っていくが、マイナンバーカードには保険者番号がないので、保護者が資格確認書を毎回申請する必要があり、負担になると指摘。厚労省の伊原和人保険局長は「(確認書の)有効期間も含めて議論する」と答えました。
宮本氏は、マイナンバーカードを取得しないと意思表示している人に、資格確認書を何度も申請させる合理性はどこにあるのかと質問。伊原保険局長は、医療を受けられる方法について「関係者の意見を聞きながら実効的な検討を行いたい」と言うだけで説明できませんでした。
宮本氏は、申請方式では保険証を持つことができない人が出るとして、これまで通り「健康保険証を使い続けるしかない」と主張。加藤勝信厚労相は「申請していただけない場合は職権交付をおこなう」と答えました。宮本氏は、個別に確認しながら職権交付を行うのは、自治体の業務にとっても大きな負担だと指摘しました。
以上しんぶん赤旗ホームページ2023年4月22日配信記事から抜粋
≪2023年4月19日 第211国会衆院厚生労働委員会第9号 議事録≫
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。まず、今日も、子供の医療費有料化問題について初めにお伺いします。この間、政府が引用しております論文では、低額の自己負担によって子供の受診が減るということが明らかになっているわけですけれども、どういう家庭の子供の受診が減るのかというのが問題だと思うんですよね。今日、配付資料を御覧いただきたいと思いますが、これは阿部彩先生たちの実証研究の、グラフがあるページを載せました。このグラフを見ますと、受診抑制の割合は、小学校五年生困窮層で、無料なら二・四%、定額負担で八・七%、三割負担で一九%、償還払いで二三・九%。中二の困窮層では、無料五・五%、定額負担一一・四%、三割負担二四・二%、償還払い二〇・八%。このうち統計的に有意なのは三割負担と償還払いで、受診抑制が起きると。グラフを見たら、定額負担も受診抑制が起きているようにも見えるわけですけれども、サンプルが少ないので、定額負担の場合は統計的に有意な推計値にはなっていないということなんですね。阿部先生たちの論文、こう書いているんですね。定額負担の受診抑制への影響は、本分析からは全容が見えておらず結論づけることができない、より多くの自治体データが必要であるということでございます。先日の岸田政権のたたき台で、子供医療費の有料化を自治体に求めていく、こういう協議を行うと書いてあるわけですけれども、私は、それは問題だと思います。まずやるべきは、定額負担でどういう収入階層、どういう家庭状況の子供の医療が抑制されるのか、ここをしっかり厚労省として調べる必要があるんじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。
○加藤国務大臣 先般来から、飯塚教授の論文、また今、阿部彩教授の論文について御指摘を頂戴したところでございます。この論文について評価するのは差し控えたいというふうに思いますが。子供、子育て政策の強化に関する試案においては、適正な抗菌薬を含め、子供にとってよりよい医療の在り方について、今後、国と地方の協議の場などにおいて検討し、その結果に基づき必要な措置を講ずることが盛り込まれたところであります。厚労省としても、制度を所管する立場として、自己負担を設けることによる世帯状況に応じた受診行動への影響などについて、様々な観点から行われた研究報告などを分析しつつ、子供にとってよりよい医療の在り方について丁寧に検討していきたいと考えています。
○宮本(徹)委員 研究は、今お示ししたように、グラフでは、多分、やはり定額の負担でも影響が出そうだというのがあるんですけれども、ただ、統計学的にはnが足りなくてそこは示せていないから、より大規模な調査をしてほしいという意見もあるわけですから、やはりそこはしっかり厚労省としても、とりわけ困窮層への影響はどうなのかというのは調べていただきたい。それなくして自治体に対して自己負担を求めるのはあり得ないと思います。そのことは受け止めていただきたいと思います。よろしいですか。
○加藤国務大臣 先ほどの阿部さんのやつについては、サンプル数と、それから地域の偏りということが指摘をされておられたというふうに思いますが、ただ、飯塚論文もそうなんですが、ちょうど各自治体で切替えの時期なわけですね。ですから、サンプルで、ある自治体をやればいいんじゃなくて、ある自治体が変わった、あるいは変わったところと比較できる、こういう状況ということでありますから、それが今、じゃ、そうしたサンプルが取れるのかといった問題もあろうかと思います。そういった意味で、先ほど申し上げた、それぞれの研究報告などを分析しながら、子供にとってよりよい医療の在り方、まさにしっかり議論していきたいと考えています。
○宮本(徹)委員 子供にとってよりよいということを考えた場合、私は、子供の医療費は自己負担もなく無料というのがよりよいのは間違いないと思いますので、しっかりそこは受け止めていただきたいと思います。次ですけれども、賃上げについてお伺いいたします。今日、各委員から、介護分野の賃上げの話、先ほどは医師の、勤務医の処遇の改善のお話もございました。医療、介護、障害者福祉、保育の分野は、診療報酬だったり、介護報酬だったり、障害福祉サービスの報酬だったり、公定価格、公的価格によって賃金水準が左右されるわけでございます。まずお伺いしたいのは、今年の春闘の結果なんですよね。全体の傾向と医療・介護分野の傾向についてどうそれぞれ評価されているのか、お伺いしたいと思います。
○加藤国務大臣 結果等が必要だったら事務局から説明しますが、まだ春闘は途中の段階でありますので、まずは、引き続き労使の真摯な取組を見守っていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 途中ですけれども、途中段階についての評価をお伺いしたいと思います。
○岸本政府参考人 お答えいたします。まず、連合が四月十三日に発表いたしました二〇二三春季生活闘争の第四回回答集計結果によれば、加重平均での月例賃金は、賃上げ額一万一千二十二円、賃上げ率三・六九%と、昨年やコロナ禍前の二〇一九年の同時期の集計と比較いたしまして、大きく上回っているものと承知をしております。また、全労連が四月六日に発表されました二三国民春闘共闘賃上げ第四回集計によれば、加重平均で所定内賃金は、賃上げ額五千九百十九円、賃上げ率二・〇七%でありまして、賃上げ率は昨年やコロナ禍前の二〇一九年の同時期の集計と比べて、やはり上回っているものというふうに承知をしております。また、同じ第四回集計で見まして、全労連に加盟する日本医労連の回答金額を見ますと、加重平均での所定内賃金は、医療分野で、賃上げ額五千三百十六円、賃上げ率一・八九%、福祉分野で、賃上げ額二千八百九円、賃上げ率二・〇一%となっておりまして、昨年同時期と比較しまして、医療分野では〇・〇七ポイント下回り、福祉分野で〇・〇一ポイント上回っているものと承知をしております。いずれにしましても、先ほど大臣からも御答弁ございましたとおり、春闘の途中段階で、これから回答を引き出すところ、出てきた回答に対して引き続き労使交渉を続けていらっしゃるところがございますので、引き続き労使の真摯な話合いを見守ってまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 中間集計の数字を今お話しいただきましたけれども、連合の集計で見れば、この十年間で最高の賃上げに現段階ではなっているわけでございますが、医療でいえば、医労連の数字がありましたけれども、昨年と比べても若干マイナス、昨年並み、介護についても昨年並みということになっているわけですよね。それは当然だと思うんですよね。昨年と同程度の政府からの支援しかしないわけですから、今の政府のこの分野の賃上げへの支援を考えたら、そもそも春闘で大きな賃上げができる保証がないんじゃないですか。
○加藤国務大臣 それは、それぞれの医療機関等の経営も踏まえながら個々に交渉がされているということだと思いますが、ただ、今委員おっしゃるように、医療の場合、かなりの部分がいわゆる報酬にのっとって運営されているわけでありますから、報酬の改定あるいは処遇改善の取組、こういったものの影響は受けるのではないかというふうに思います。
○宮本(徹)委員 ですから、本当は、今、物価高の中で賃上げを、岸田総理も経団連に要請してということもやったわけですよね。民間ではこの十年で最高、こういう賃上げも一方では報じられているわけですけれども、肝腎要の政府が責任を負っている分野では、そのような賃上げがなされていないわけですね。物価高の中、賃金が上がっていない。これは、本当に政治が責任を持たなきゃいけないと思うんですよね。私、前もここで、臨時に報酬改定も含めて対応する必要があるんじゃないかと申し上げましたけれども、そういう決断をする必要があるんじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。
○加藤国務大臣 報酬改定に当たっては、それぞれの病院、まあ医療でいえばですけれども、病院等の経営の実態、あるいは物価、賃金の動向等々を踏まえて議論するということでございますので、今年は令和六年度の診療報酬改定の時期を迎えるわけでありますので、そうしたこともにらみながら、まずは、こうした賃上げの動向と、あるいは各医療機関の経営動向、これをしっかりと注視をしていきたいというふうに考えています。
○宮本(徹)委員 その答弁はもうずっと前からそうなんですよね。ずっと注視する注視する注視するで、注視し続けてもずっと、もう春闘の結果も見えてきているわけですから、今の支援では、物価高の中、政府が責任を負っている分野で賃金が上がっていないということなんですから、ここは本当に政治として決断しなきゃいけないんじゃないかと私は思います。加えて、昨年二月から、看護師四千円、介護九千円の処遇改善というのがあったわけですけれども、昨年十月から、これは報酬の臨時改定ということで、看護職でいえば看護職員処遇改善評価料、介護では介護職員等ベースアップ等支援加算ということになったわけですが、この看護職員処遇改善評価料は、就業している看護師のどの程度が対象となっているのか、実際の申請状況はどうか、現場でどういう処遇改善につながっているのか、把握されていますか。
○伊原政府参考人 お答えをいたします。看護職員の処遇改善につきましては、令和三年に閣議決定された経済対策、さらに、公的価格評価検討委員会での中間整理に基づきまして、給与を恒久的に一%引き上げるために昨年二月から九月までは補助金による支援、そして昨年十月からは、さっき先生からお話ございました、給与を恒久的に三%引き上げるために診療報酬上の評価を行ったところでございます。この対象医療機関につきましては、看護職員の賃金水準が全産業平均に比べて高い状況の中で、コロナ医療など地域において一定の役割を担っていると評価できる医療機関を対象としておりまして、昨年九月まで実施した補助金を申請した医療機関数が二千四百十一でございましたが、十月から開始した診療報酬の評価料の算定届出を行った医療機関数は、今年の三月時点で二千五百七十五施設という形で、この制度を利用する医療機関が増えている状況だと認識しております。
○宮本(徹)委員 私が聞いたのは、就業している看護師のどの程度が対象になっているのか。人数で、大体分かりますか。
○伊原政府参考人 診療報酬上の評価の対象となる看護職員については五十七万人と見込んでいるところでございますが、この評価料の使途については、医療機関が必ず給与に還元するとしております。ただ、その場合は、対象は、各医療機関ごとの判断で、看護職員のほか、看護補助者、理学療法士、作業療法士等のコメディカルの処遇改善にも充てることが可能となっておりまして、正確な数値というものについては把握できておりません。
○宮本(徹)委員 看護師五十七万人が対象の基礎だという話なんですけれども、就業している看護師の数というのは百六十六万人いるんですよね。結局、支給要件に該当する医療機関というのは一部だけですよね、先ほど答弁ありましたように。一定規模の、救急搬送件数が二百件以上だとか、こういう要件が課されているために、医療機関のうちの一部しか対象になっていないので、就業している看護師さんからすれば三分の一ぐらいしか、そもそも対象になっていないんですよね。私、医療というのは本当に地域全体で担っているということを考えたら、やはり全ての看護師を対象にしてこうした報酬は出すべきだと思いますよ。先ほど、看護職員の賃金水準が全産業平均に比べて高いから絞ったんだという説明がありましたけれども、それは夜勤を入れているから高く見えているわけで、夜勤を抜いたらそんなことは全然ないんじゃないですか。やはりこれは、地域でみんなで医療を担っているということを考えれば、全ての看護師を対象にするよう制度を改善すべきだと思いますが、いかがですか。
○伊原政府参考人 御指摘いただきました、看護職員の方々の処遇改善をもっと広げていくかどうかということにつきましては、今般実施しました処遇改善の措置が職員の給与にどのように反映されているかといったことにつきまして、来年の同時改定に向けた議論の中で検証していくこととしております。あわせまして、令和三年十二月の公的価格評価検討委員会の中間整理を踏まえまして、費用の使途の見える化を行いながら、現場で働く方々の処遇改善や、業務の効率化、負担軽減に取り組んでいきたい、このように思っております。
○宮本(徹)委員 初めに春闘の結果の紹介がありましたように、もう見えているわけですから、今のやり方では全然賃金は上がらないと。抜本的に報酬改定で報酬を引き上げて、賃上げの責任を果たすべきだということを申し上げておきたいと思います。最後のテーマですけれども、健康保険証の廃止に関わって幾つかお伺いしたいと思います。資格確認書を設けるということになっているわけですが、この申請というのは役所等の窓口に行く必要があるのか、それとも受取人払いの封筒つきで申請書が皆さんに送られてくるのか、どちらなんでしょうか。
○伊原政府参考人 お答えいたします。資格確認書につきましては、申請が必要となる事情がカードの紛失など様々な、被保険者の方ごとによって、ケースによってありますので、全ての被保険者に対して交付する健康保険証とは異なりまして、本人の申請に基づいて保険者が交付するという仕組みにしております。資格確認書の申請方法など具体的内容については今後検討していくことになりますけれども、窓口で御本人から直接申請していただくといったほかに、申請書を保険者のホームページから入手していただき、郵送で行っていただくといった運用も、実際、保険証の場合は行われておりますので、そうした実例も参考にしながら考えていこうと思っております。いずれにしましても、被保険者が必要な保険診療をきちっと受けることができるように、関係者の意見を伺いながら、申請勧奨時などの資格確認書が必要となる場面に応じまして、実効的な方法を検討してまいりたいと思っております。
○宮本(徹)委員 今の例示だと、ホームページで申請するか、窓口に行くかという話なんですね。この間、本委員会でも議論になっていますけれども、子供の修学旅行だとか部活の遠征の際にこの資格確認書を持っていくということになろうかと思うんですよね。有効期間はどうなるんでしょうか、一年にするんでしょうか。
○伊原政府参考人 お答えいたします。学校現場におきまして修学旅行とかそういった際にどのような形で資格確認のための書類を使うのか、これについては、今後、関係省庁とも議論をしていくことだと考えております。具体的な内容を検討するに当たりましては、先ほど先生から御指摘のありました資格確認書の有効期間も含めて議論をし、丁寧に検討していきたい、このように考えております。
○宮本(徹)委員 今だったら、健康保険証をコピーして持っていけばいいわけですけれども、資格確認書、もし有効期間が一年じゃなくて、修学旅行の間とか部活の遠征の間だとか、こんな発行の仕方をしたら、それこそ毎回毎回申請しなきゃいけなくなっちゃうわけですよね。今の仕組みでも、最大一年ですかね、毎年毎年申請しなきゃいけないということになるわけですね。これだけ見ても、子育て世代からしたら大変な負担になると思いますよ。大体、マイナカードのように、共通IDだけ記していて、券面を見ても被保険者資格が分からないようなカードに健康保険証を統合しちゃうから子育て世代に新たな負担をかける、こういうことになっちゃうんじゃないかと思いますよ。加えてお伺いしたいと思いますけれども、今は自動的に健康保険証は届けられるわけですけれども、マイナカードを取得しないと意思表示している方にも何度も何度も毎回申請させる合理性というのはどこにあるんでしょうか。
○伊原政府参考人 先ほど御説明いたしましたように、資格確認書を必要とする場面は様々、被保険者によってございますので、そうした事情も異なるので、先ほど申し上げたように、御本人の申請というような形を基本に置いております。ただ、いずれにしましても、先ほど先生からお話ございましたように、保険診療を受けることができないという事態を防がなければいけないという意味からすると、保険証利用の登録を行っておらず、資格確認書の申請も行っていない被保険者に対するアプローチの仕方、それも、御本人にとってしっかり医療が受けられるような形でやるための方法、これについては、関係者の意見を聞きながら実効的な方法を検討してまいりたいと思っております。
○宮本(徹)委員 結局、私、マイナ保険証もそうですけれども、この資格確認書もそうですけれども、申請方式ということにすると、どうしても保険証がない人が多く出ちゃうと思いますよ。保険証を持たない人が出ないようにしようと思ったら、今と同じように健康保険証を使い続ける、配り続けるしかないと思いますよ。大臣、それしかないと思うんですけれども、いかがですか。
○加藤国務大臣 何度も申し上げているように、マイナンバーカードと健康保険証を一体化することによってよりよい医療を受けていただく、そのメリット、それを考えて、今般、健康保険証を廃止をするということにしたわけですが、廃止をしたからといって、委員が御指摘のように、保険診療が受けられないという事態、これは引き起こしてはならないということで、今、局長からも答弁させていただきましたけれども、様々な措置を講じ、そして、申請をしていただけない場合は職権交付を行う、こういった手段も講ずる中で対応していきたい。そして、全ての方が必要となる医療を保険診療の形で受けられる、こうした状況はしっかり確保していきたいと考えています。
○宮本(徹)委員 本当に、自治体からしても大変な負担になると思いますよ、この人は職権交付が必要かどうかとか一々確認しなきゃいけなくなるわけですから。今までどおりやれば、本当に何の問題もないわけですから。加藤大臣はそのことを分かっていると思うんですよね。分かっているけれども、河野大臣に気を遣ってこんなことになっちゃっているんじゃないかと。本当に、全ての国民の医療をしっかりお届けして健康と命を守る、この立場で考えていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。