2023年5月10日 衆院厚生労働委員会 経口中絶薬 高額10万円 宮本徹氏「無償化・負担減こそ」 配偶者同意要件「廃止すべきだ」
配付資料 出典:WHO中絶ケアガイドライン エグぜクティブサマリー 日本語版
配付資料 出典:m3.com 医師調査 2022年10月8日
配付資料 出典:NHK人工妊娠中絶で配偶者の同意は必要か
配付資料 出典:沖縄タイムズ2022年12月8日
配付資料 出典:内閣府男女共同参画局webサイト
日本共産党の宮本徹議員は10日の衆院厚生労働委員会で、国内で初承認された経口中絶薬について、費用が高額であれば「中絶が必要な人がアクセスしづらい状況は変わらない」として、無償化や自己負担額の抜本的な引き下げを求めました。
宮本氏は、中絶薬の世界平均の価格は約1000円とされているが、日本産婦人科医会は費用について「診察代などと合わせると10万円程度になることが予想される」としており、「高すぎる」との声が広がっていると指摘。自己負担額はいくらを見込んでいるのかとただし、加藤勝信厚労相は「本剤による中絶費用は把握していない」と述べました。
宮本氏は、世界保健機関(WHO)が「誰もがアクセスできて、手の届く価格」を推奨していることを示し、中絶費用の無償化や保険適用を迫りましたが、自見はなこ内閣府大臣政務官は「公費による自己負担の軽減は慎重に検討する必要がある」と否定的でした。
宮本氏はまた、配偶者同意要件により、中絶が困難になる深刻な事態や、配偶者が同意せずに出産を強要するDV(配偶者などからの暴力)まで起きていると指摘。「すべて国民は個人として尊重されるとの憲法13条に明白に違反する同意要件は廃止にすべきだ」と追及しました。自見政務官は「国民的な合意形成が必要だ」と述べるだけでした。
以上2023年5月11日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2023年5月10日 第211国会衆院厚生労働委員会第12号議事録≫
○三ッ林委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。ようやく日本でも経口中絶薬が承認されました。選択肢が広がります。しかし、今回の承認はWHOの中絶ケアガイドラインと異なる点が多々あります。WHOのガイドラインでは、選択肢として遠隔医療や薬剤による中絶の自己管理を推奨しておりますが、日本の承認においては、母体保護法指定医師の確認の下での投与、そして、当分の間は入院可能な有床施設において使用すること、こうされました。そこで、まず費用の問題からお伺いしたいと思います。中絶薬は、世界平均で見ますと価格が千円程度と言われておりますが、報道によりますと、日本産婦人科医会が、薬の価格はおよそ五万円と見られ、診察料などと合わせると十万円程度になることが予想されるとしております。これだと今の中絶手術と価格は変わらない、こういうことになるわけですね。ですから、選択肢が増えると思っていたのに十万円じゃ高過ぎる、こういう声が大きく広がっております。まず大臣にお伺いしたいと思いますが、今回の経口中絶薬による中絶費用の自己負担額というのは幾らぐらいと見込んでいるんでしょうか。
○加藤国務大臣 今委員御指摘の経口中絶薬はメフィーゴパックだと思いますが、これについては、四月二十一日の薬事・食品衛生審議会薬事分科会において承認して差し支えないとされ、これを受け、四月二十八日に承認を行ったところでございます。現時点においては、本剤は我が国でまだ未発売となっており、厚労省において本剤による中絶費用は把握していないところでございます。
○宮本(徹)委員 把握していないということですけれども、問題は、これは本当に、十万円と言われておりますけれども、十万円では中絶が必要な人がアクセスしづらいという状況が変わらないわけですよね。資料の七ページ目を見ていただきたいと思いますけれども、自己負担額によって医学的に安全な中絶のタイミングを逃した経験があった、こう答えた病院勤務医が一五・四%、診療所の医師が一八・五%ということになっているわけですね。アンケートの記述を見ますと、中絶費用を工面するのが難しいということでタイミングを逃し、出産されて、子供を特別養子縁組として託された方がいた、あるいは、お金を集めるために時間がかかってしまって、中期中絶になってしまったなどなど、深刻な状況が記されているわけです。やはり、この中絶費用の自己負担額の重さによって医学的に安全な中絶のタイミングを逸する方がいる、こういう事態は放置できないんじゃないかと思いますが、いかがですか。
○加藤国務大臣 人工妊娠中絶の在り方を含めて、妊産婦その他母性の保健向上に関すること、これは今こども家庭庁の所管となっておりますので、同庁において必要な検討がなされるものと考えております。他方で、厚労省に関して申し上げれば、健康保険制度を預かっております。同制度においては、例えば重度の妊娠高血圧などの理由で妊娠の継続が母体にとって危険な場合において、その状態を解消する治療として中絶が行われるなど、治療上の必要性がある状況で行われた中絶については保険適用となっているところでございます。また、出産育児一時金についても、死産であることは問わず、妊娠満十二週以降の出産に対して支給がなされているということで、人工妊娠中絶の場合でも、こうした場合には支給されるというのが現状の運用となっているところでございます。
○宮本(徹)委員 まず、保険適用は治療の必要がある場合ということになっていて、治療の必要に当たらない場合は保険適用にはならない。そして出産一時金についても、中期の段階までならないと当たらないわけですよね。中期になってからの中絶というのはなかなか本当に大変なわけですよ。ですから、大変な苦しみが生まれているわけですね。これまでは出産について、これは病気じゃないから治療には当たらないということで保険適用は困難だとずっと答弁が続いてきましたけれども、今度は出産については保険適用しましょうということになったわけですよね。でしたら、あわせて、私は是非中絶についても保険適用について真剣に考えなければいけないと思いますが、大臣、いかがですか。
○加藤国務大臣 先ほど申し上げましたように、人工妊娠中絶については、現行制度で、治療上の必要性がある状況で行われた中絶については保険適用となる一方で、経済的理由による中絶等、治療上の必要性がない状況で行われた中絶については、疾病や負傷の治療等に当たらないため保険適用となっていないということ。また、出産育児一時金については、生産、通常の分娩ですね、また死産を問わず、妊娠満十二週以降の出産に対して支給されるものであり、人工妊娠中絶の場合でも支給されるというのが今の制度でございます。健康保険上、出産は疾病や負傷とは別の保険事故として今位置づけられており、出産育児一時金として現金給付が行われているところであります。仮に出産を保険適用することとした場合は、これは現物給付で行うということになるわけですが、その場合、中絶の取扱いをどうするか、現状の取扱いも踏まえて議論していく必要があるだろうというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 現状の取扱いを踏まえると、なかなか保険適用に進んでいかないわけですよね。ですけれども、WHOのガイドラインの日本語版を、私、抜粋して、今日資料でお配りしておりますけれども、昨年出されたWHOのガイドラインでも、中絶ケアを可能とする基礎となる環境ということで三つ掲げられているわけですけれども、その一つとして、誰もがアクセスできて、手の届く価格で、利用しやすい、よく整った保健医療制度であることということで、WHO自身が、ちゃんと、保健医療制度で、誰もが手の届く価格でアクセスできるように中絶はしなければならないということを推奨しているわけですよね。ですから、是非ここは、しっかりと中絶についても保険適用というのは私は真剣に考える必要があると思います。その上で、今日は、こども家庭庁の所管になってしまったということで、私も本当に、何でこども家庭庁に、厚労省の、この区分けが大変おかしいなという思いを持っているわけですけれども、自見政務官にも来ていただきました。自見政務官にお伺いしたいと思いますけれども、中絶費用の自己負担額の重さによって医学的に安全な中絶のタイミングを逸する方がいる事態というのは放置できないんじゃないかと思いますが、お医者さんでもあると思いますので、お答えください。
○自見大臣政務官 お答えいたします。人工妊娠中絶につきましては、母体保護法に基づきまして、指定医師が妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるものに実施することができることとされておりまして、人工妊娠中絶の必要性や実施時期、方法等が適切に判断されているものと考えてございます。こども家庭庁といたしましては、性と健康の相談事業といった事業がございまして、これによりまして、予期せぬ妊娠に悩む女性に寄り添った相談支援の体制を今整備をして推進をしているところでございます。引き続き、関係省庁や関係団体と連携しながら、母体保護法の適切な運用に努めてまいります。
○宮本(徹)委員 私のお聞きしたことにお答えになっていないんですけれども。この調査を見ましても、中絶費用の自己負担額の重さによって必要な安全な中絶のタイミングで中絶ができない方がいらっしゃる、これは放置できないんじゃないかということをお伺いしているんですけれども、その認識はいかがですか。
○自見大臣政務官 繰り返しになって恐縮でございますけれども、こども家庭庁といたしましては、性と妊娠の相談センター事業といったものがございまして、予期せぬ妊娠に悩む女性に寄り添った支援というものを行ってございます。こういった事業と併せまして、しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。
○宮本(徹)委員 ですから、相談ももちろん大事ですけれども、負担額の重さというのがこの問題であるということなんですよ。そこについてはどういう認識でしょうかということをお伺いしております。
○自見大臣政務官 お答えいたします。治療上の必要性がある状況で行われている人工妊娠中絶につきましては、医療保険が適用され、自己負担の軽減が図られているところであります。他方で、現在でありますけれども、自由診療で行われている場合には、個々の医療施設によって価格設定が行われているという現状がございます。先ほど加藤大臣からも御答弁ございましたけれども、るる御検討が進むということもございますが、公費によって自己負担の軽減を行うということについては慎重に検討する必要があるということも考えてございます。
○宮本(徹)委員 なぜ公費での負担軽減を慎重にしなきゃいけないんですか。WHOは、誰もが手の届く価格で利用しやすい整った制度にすべきだということを言っているわけですよね。その点を慎重にしなきゃいけないというのはおかしいんじゃないですか。
○自見大臣政務官 先ほどから繰り返して大変恐縮でありますけれども、加藤大臣も御答弁されたこともございますけれども、様々な論点が、ここから議論が進んでいくことかと思いますが、自己負担ということの御指摘もございました。この点につきましては、人工妊娠中絶そのものにつきましても、個人の倫理観や家族観等様々な課題もあることから、国家的な合意形成も必要な課題だともまず認識しております。その上で、我々のこども家庭庁の事業の中で、性と健康の相談センター事業というものがございまして、こちらは、悩んでいる妊婦さんに対しまして様々な支援を行っております。例えばでございますけれども、こちらの方の予算額といたしましては九・五億でございまして、その内数でございますけれども、産科受診をするための支援ですとか、あるいは受診するための費用、さらには、拡充をいたしまして、交通費も一件当たりの受診に二千円など、様々な具体的な支援も行っているところでもあります。こども家庭庁といたしましては、引き続き、予期せぬ妊娠に寄り添った支援をしっかりと進めてまいりたいと存じます。
○宮本(徹)委員 やはり中絶費用の無償化だとか自己負担費用の抜本的な引下げというのは、私は必要だと思うんですよね。先ほど、慎重に考える理由として倫理観だとか家族観だとかというお話をされましたけれども、倫理観とか家族観とかというのがなぜこの自己負担費用の引下げと関係するのか、私、今の答弁を聞いていて、全く理解できません。加えまして、今回の経口中絶薬の服用については、厚労省は、原則、配偶者同意が必要としているわけであります。ここにも批判の声が上がっています。リプロダクティブヘルス・アンド・ライツ、産むか産まないかを決めることは女性の基本的な人権であります。WHOのガイドラインをつけておりますけれども、本人以外のいかなる個人、団体又は機関の承認の必要なく、女性、女子、その他妊娠した人の希望に応じて中絶できるようにすることを推奨するとしているわけですね。世界で中絶に配偶者の同意を必要としているのは、日本を含む約十か国程度であります。G7では日本だけです。先ほどのアンケートの後ろにNHKの調査もつけておりますけれども、十ページのところも御覧になっていただきたいと思います。配偶者同意要件がある下で、配偶者が中絶に同意せず女性に対して出産の強要が行われるということも、産婦人科医師の一一・三%が場面に遭遇していると。あるいは、性暴力を夫に打ち明けられないというケースも少なくないわけですけれども、にもかかわらず、配偶者同意を求める運用が広く行われております。未婚やDVで婚姻関係が破綻している場合は配偶者同意は不要とされておりますけれども、実際には、訴訟リスクやトラブルを恐れて同意を求める運用が行われており、医療機関をたらい回しにされたり、中絶が困難になる深刻な事態が起きております。私は、憲法十三条「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」この憲法十三条に照らしたら、配偶者同意要件というのは憲法違反じゃないかと思いますが、いかがですか。
○自見大臣政務官 お答えいたします。母体保護法におきまして、人工妊娠中絶には原則として配偶者の同意が必要とされておりますが、配偶者が知れないときや意思を表示することができないとき、また、妊娠後に配偶者が亡くなったときは本人の同意だけで足りることとされております。また、令和三年三月でございますが、新たに当時厚労省から考えを示しておりますけれども、配偶者からDV被害を受けているなど、婚姻関係が実質破綻しており、人工妊娠中絶について配偶者の同意を得ることが困難な場合は本人の同意だけで足りる場合に該当するとの解釈を明確化して、関係機関に周知を図っているところであります。母体保護法における人工妊娠中絶の配偶者同意要件につきましては、議員立法の制定当時からある規定でございまして、立法府にて合憲であるとの判断の下に定められたものであると考えてございます。引き続き、関係省庁や関係団体等と連携して、母体保護法の適切な運用に努めてまいりたいと存じます。
○宮本(徹)委員 これは戦後の直後に作られた優生保護法から来ていますから、ある意味、戦前の古い家族観を引きずっているというのがこの配偶者同意要件につながったんだと思うんですよね。しかし、どう考えても女性の自己決定権を奪っているわけですよ。女性自身が、自分の体、自分の人生が他人によって左右される。これはどう考えても、今の憲法の解釈から考えたら、私は明々白々な憲法違反だと思いますよ。加えて、男女共同参画局に来ていただきましたけれども、夫婦間のDVの例として、嫌がっているのに性行為を強要する、中絶を強要する、避妊に協力しないなどの例示がされております。中絶をしたいという女性に対して、配偶者が同意せずに出産を強要するというのは、これはDVに当たり得るということでよろしいですね。
○畠山政府参考人 お答え申し上げます。配偶者暴力防止法におきましては、配偶者からの暴力を、配偶者からの身体に対する暴力又はこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動と定義しており、こうした暴力の防止や被害者の保護のため、配偶者暴力相談支援センター等を通じた必要な相談支援等を行っているものです。御指摘の配偶者が同意をしないといった事例については、個別のケースにより様々な状況があり得ることから、配偶者暴力防止法の配偶者からの暴力に当たり得るかについては、一概にお答えすることは困難です。
○宮本(徹)委員 一概に当たり得るか分からないとおっしゃいますけれども、場合によっては当たり得るというのが今の答弁かと思いますが、基本的に、どう考えても、配偶者がこの法律を盾に、同意せずに出産を強要するというのは、私はDVの定義からしたら、これはまさにDVに当たると思いますよ。そういうことを法律上認めてしまっているのが今の母体保護法なんですね。自見政務官、お医者さんですから、医療現場のこともいろいろお詳しいと思いますけれども、配偶者同意要件があることによって、女性の側の意見だけで中絶したのは問題だと医師を訴える訴訟というのもこの間起きております。去年の十二月にも、資料の十一ページにつけておきましたけれども、その訴訟の判決もありました。ですから、こういう訴訟を回避するために、女性がDVだと説明しても、医療機関の側が配偶者同意を求める運用を行っている医療機関というのは少なくないわけです。配偶者同意要件によって、医療現場も大変苦慮している状況があると思います。読売新聞の調査を見ましたら、岡山県医師会、産婦人科医師の七割以上が配偶者同意要件の撤廃を求めているわけですよね。私、こういう声を多分自見政務官もお聞きになったことがたくさんあるんだと思うんですよ。先ほど議員立法で作られた法律だということをおっしゃいましたけれども、与党の皆さんも含めて、これはおかしいと思っている方、たくさんいると思うんですよね。これは見直しに向けて、是非、与野党を超えて、配偶者同意要件は廃止していく、このために力を合わせていきたいと思いますが、最後、自見政務官から一言もらいたいと思います。
○三ッ林委員長 自見内閣府大臣政務官、答弁は簡潔にお願いします。
○自見大臣政務官 お答えいたします。母体保護法におけます人工妊娠中絶の配偶者同意要件につきましては、一九四八年の議員立法による制定当時からある規定でございますが、その廃止につきましては、個人の倫理観、家族観等に関わる難しい問題でもございます。様々な御意見や御議論があることから、国民的な合意形成が必要だと考えてございます。こども家庭庁といたしましては、引き続き、関係省庁や関係団体、また妊婦さんの声、様々連携いたしまして、母体保護法の適切な運用に努めてまいります。
○宮本(徹)委員 個人の倫理観、家族観で中絶をしたい女性に対して中絶をさせないことができるようなことがあったら、おかしい話なわけですよね。配偶者同意要件については本当に一刻も早く廃止するしかないということを強く申し上げまして、質問を終わります。