2023年5月19日 衆院厚生労働委員会 人材紹介業者の手数料上限規制を

 日本共産党の宮本徹議員は19日の衆院厚生労働委員会で、介護、保育、医療などの職業紹介手数料の高騰が事業者の経営を圧迫しているとして、手数料の上限規制とハローワークの機能強化、適正認定事業者の基準見直しを要求しました。
 有料職業紹介事業の常用就職1件当たり紹介手数料は、5年前に比べ、介護職で25万円から42万円に、保育士では24万円から53万円に高騰。宮本氏は、公定価格で成り立つ医療、介護、保育分野については手数料の上限規制を設けるべきだと迫りました。
 加藤勝信厚労相は「人材の供給に支障が生じかねない」と答弁。宮本氏は「人材紹介会社が撤退すればハローワークが役割を果たせばいいだけの話だ」と反論しました。
 宮本氏は、適正認定事業者から紹介された保育士が4月1日から勤め始め、8日に離職したため、7日以内の離職なら手数料が10%で済むところ50%支払った例を紹介。認定基準の見直しなど直ちに改善が必要ではないかと質問。加藤厚労相は「早期離職の場合の紹介手数料の返還、返戻に関する事項を含め、認定基準の見直し等について検討していきたい」と答えました。

以上しんぶん赤旗ホームページ2023年5月26日配信記事から抜粋

≪2023年5月19日 第211国会衆院厚生労働委員会第15号議事録≫

○三ッ林委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。くしくも、小川さん、田中さんに続きまして、私も有料職業紹介についてお伺いしたいと思います。私も何度もこの問題を取り上げてまいりました。最近、こういう相談があったんですね。適正認定された事業者から紹介された保育士さんが、四月一日から勤め始め、四月八日に離職した。この人材紹介会社は、七日以内の退職なら手数料は一〇%、八日目以上なら五〇%支払う規定になっており、八日目の離職だということで手数料の五〇%を請求された。労働者と事業者が結託して食い物にしているんじゃないか、こういう疑念を持っているというお話でございました。果たして、これが適正認定していいような事業者なのかという疑問の声が上がっております。そして、内閣府の規制改革推進会議の医療・介護・感染症対策ワーキンググループが、四月十四日に人材紹介会社の問題について議論をしております。資料の四ページ目につけておりますけれども、そこで内閣府が様々提案しているんですけれども、適正な紹介事業者を選択できるための認定基準の見直し、採用後一定期間内、例えば六か月以内に離職した場合に手数料の返戻を行うことを認定基準に組み込むなどが必要ではないかということとされているわけですね。大臣、直ちにこうした改善は必要じゃありませんか。
○加藤国務大臣 その場においてもお答えをさせていただきましたけれども、認定制度の更なる改善を図るため、早期離職の場合の紹介手数料の返還、返戻に関する事項を含め、認定基準の見直し等について検討していきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 直ちにやっていただきたいと思います。その上で、有料職業紹介について、この間、介護職や保育士さんの手数料が上がってきていると現場から声が上がっております。ちょっと数字を紹介していただけますか。
○田中政府参考人 有料職業紹介事業者に対しましては、毎年、四月三十日までに前年度分の職業紹介事業の状況の報告を求めております。その事業報告を基に、御指摘の、常用就職一件当たりの手数料という形で算出いたしますと、経年的に、五年前と、それから最大で比較可能なデータが存在する七年前、それから直近の令和三年というのを比べてみますと、まず、介護サービスの職業については、七年前の平成二十六年度が二十五万円、五年前の平成二十八年度が十九万円、令和三年度が四十二万円ということでございます。それから、保育士に関しましては、七年前の平成二十六年度が三十四万円、五年前の平成二十八年度が二十四万円、それから令和三年度が五十四万円という形の数字となっております。
○宮本(徹)委員 ここに来て、ぐっと上がっているわけですよね。介護職でいえば、五年前、七年前は十九万、二十五万だったのが四十二万円。保育士さんでいえば、二十万円台、三十万円台だったのが、今、五十四万円だと。これは令和三年度ですから、更に上がっている可能性があるわけですよ。これは本当に経営も圧迫する事態になっていますし、先ほど来お話がありますように、本来、賃金に回すべきものが回らないという事態になっているわけでございます。規制改革推進会議のワーキンググループに、業界団体の皆様が、様々資料を出しております。こういう声も出ているんですね。紹介手数料の原資となっている介護報酬が下がっている現状で、紹介手数料を支出しながら介護人材の処遇改善は限界に来ているなどなど、医療、介護、保育の分野で、人材紹介手数料に事業者が苦しむ状況が記されております。大臣、御覧になられて、どう受け止められているでしょうか。
○加藤国務大臣 手数料のお話がありました。一部の事業者で負担感があるという話も承知をしておりますけれども、常用就職一件当たりの手数料という数字だけで見ますと、全職種平均額が約八十四・五万円であるところ、例えば介護では約四十二万円、こうした水準になっているというのはあるんだろうと思います。厚労省としては、様々なニーズや事情がある中において、求人者、求職者双方に対し、多様なサービスの中から選択できる環境を整備することが重要と考え、紹介手数料等の情報開示、優良な事業者認定制度の運用、こういった取組も進めてまいりました。その上で、紹介手数料の水準について、労働市場の需給に応じて変動し又は求人の内容に応じて様々であるところ、特定の分野の紹介手数料に一律の上限規制を設けると、その結果として、その分野を取り扱う紹介事業者間の人材の供給に支障が生じかねないといった懸念もあるものと考えております。ただ一方で、求人者、求職者が多様なサービスの中から選択できる環境を整備するということは必要でありますので、手数料に関して、規制改革会議においても、都道府県ごとに、職種ごとに、国が手数料の平均値、下限値等を公表してはどうかといった提案もなされているところでありますので、そうしたことも踏まえて、更なる取組について検討を進めていきたいと考えています。
○宮本(徹)委員 先ほど、手数料が全産業よりも低いじゃないかという大臣の答弁がありましたけれども、これは基本的に、年収に対して何%でやっていますから、介護や保育の人材の処遇が低いから、一件当たりの手数料も、そういう全産業に比べて低くなっているという話であって、お医者さんなんかは物すごい大きな額、あるいはエンジニアなんかも物すごい大きな額で手数料が出ているわけですから、何%ということでいえば、本当に同じように取られているわけですよね。しかも、民間の会社と違って、介護も医療も保育も、全部、税金と保険料で、公定価格でしか来ないですから、手数料が増えれば増えるほど、経営は本当に深刻な事態になるわけですよ。それで、先ほど大臣からは、一律の手数料の基準を設けると、その分野での人材の供給が心配だというお話がありましたけれども、元々ハローワークがやっていたわけですよ。別にハローワークがやっていた頃に、人材の供給が心配だなんてことは起きていないですよ。別に、そこで人材紹介会社が撤退したら、ハローワークがしっかりやればいいだけの話なんですよね。これは今日、各委員からもお話が出ていますけれども、例えば一割とかこういう水準で、過去は、自由化する前は一〇・一%という数字もあったわけですから、上限規制をしっかりこの分野については設けるべきだと思いますが、いかがですか。
○加藤国務大臣 基本的にさっきと同じことでありますので、まさにそれぞれ、民間民間の中で水準が決められていくということなんだと思いますが、ただ、それが適切に進められるためにも様々な情報の開示がなされなければならないということで、更なる情報を提供する中で、適正な水準といったものの中でそれぞれが判断していただくという環境をつくっていくことが必要だということと、一方で、ハローワークにおいては、先ほどから申し上げておりますように、こうした分野における職業の相談というんでしょうか、あっせんというんでしょうか、そういったものに対してもしっかり取り組んでいかなきゃならないと思っております。それから、もう一つあるのは、やはりそれぞれの事業者において、引き続き長期において雇用が継続されていくということが、結果的に見れば、そうした費用が発生せずに事業を経営し、そして、逆を言えば、その分が働く方の処遇改善にもつながっていくということだと思いますので、そういった意味で、引き続き、それぞれの事業所において、希望すれば長期に働いていただける、こういった環境もつくっていくということが大事だというふうに考えています。
○宮本(徹)委員 私は、初めの大臣の答弁に対して、一律の手数料を一部の分野だけ決めたら人材の供給の点で懸念があると言うから、いや、そんなことは起きないでしょうということを申し上げたわけですよ。それはそうですよね。医療、介護、保育について、手数料を上限規制を設けたからといって、それによって就職したい人の人数が減るということはないんじゃないですか。ハローワークがちゃんと受け止めて、あるいは看護協会だとかいろいろなところが受け止めてやればいいだけの話じゃありませんか。
○加藤国務大臣 もちろん、ハローワークがしっかりやっていくということは、先ほど申し上げたところであります。ただ、就職される方が、必ずしも、例えば介護に就職されるというわけではなくて、別に介護の現場じゃなくても、違うところという選択というのもあり得る。実際、介護で働いている方が違う分野に行かれる、違う分野の方が介護に入っていかれる、そういう出入りもあるということを考えて先ほどのことを申し上げたわけで、今委員おっしゃるように、一つの固定化した市場だけを考えればそうかもしれませんが、そこから出たり入ったりするということを考えたときに、そこにそうした紹介業者の動きが、それだったら介護じゃなくてこっちへ行ってよ、そうした対応を取ることが、結果として、当該介護市場における労働者の市場から外に流出してしまうことを誘引するおそれもあるのではないかということを申し上げたわけであります。
○宮本(徹)委員 私は、そういうおそれは全くないと思いますよ。それは本当に大臣の推測みたいな話で、それを裏づけるようなデータがあるんだったら是非出していただきたいと思います。その上で、もう一点お伺いしたいんですけれども、適正な認定事業者なんですけれども、適正な認定事業者に認定する基準というのは、手数料が高い低いは関係ないんですよね。手数料を公表すればいい、いろいろなものを公表すればいいという話になっていまして、決して手数料は低いわけじゃないんですね。手数料の平均というのは、どのぐらいなんですか、この事業者の皆さんは。
○田中政府参考人 現在、介護職種に関する職業紹介事業者の手数料等については、それぞれホームページ等において、実際の手数料、それからサービス内容等を公表していただいているところでございます。ただ、この中に手数料の水準というものも記載されているわけですけれども、この公表情報について、厚生労働省が手数料等の一定割合以上はどれぐらいかというようなことを、一定の割合を示して整理して表明した場合には、この基準となった数値に何らかの意味合いを生じてしまう、先ほど少し申し上げましたけれども、職業紹介事業の業界の、手数料の決定に関する市場原理をゆがめてしまいかねないというふうに考えておりまして、そういう数字は出しておりません。機械的に計算すれば出ますけれども、厚生労働省として申し上げることは差し控えさせていただきたいということでございます。
○宮本(徹)委員 それは全く理解ができない答弁ですね。認定している事業者の手数料の平均は幾らかと言ったら、それを公表したら市場に影響を与えるというのも本当によく分からないですね。私も取りあえず事務所でそれぞれ一覧表を作って出しましたけれども、大体二五から三〇パーとか、二〇から三五パーとか、三〇パーとか、中には五〇パーというところもありますね、今のは介護の話ですけれども。介護の認定事業者が二十一あるうち、高いところは、三〇%以上となっているところは十三あるわけですね。六割ぐらいがそうなっているわけです。保育も同じような状況なんですね。一方で、一〇%未満だとかというところはないですよ。その一方で、私、今日お配りしております資料の一ページ目を見ていただければ分かりますけれども、有料職業紹介活用の実態というところで、これは民間の団体のアンケート調査ですけれども、手数料水準が年収の一割未満のところ、これは一割ぐらいはあるわけですよね。実はもっと低いところがあるのに、そういう低いところじゃないところが、適正認定事業者として適正だというふうに紹介されているという実態があるんですね。これは、せめて、適正な認定事業者については、紹介手数料の水準については、年収の一割程度だとか、そういうのをしっかり決めていくべきなんじゃないかと思いますけれども、大臣、いかが思いますか。
○田中政府参考人 繰り返しの答弁になりますけれども、職業紹介の手数料というものは、職業紹介サービスの対価として両当事者によって決定されているものですから、それについて一定の水準を示したり制限を加えたりすることは非常に慎重に考えないといけないというふうに思っております。その前の段階として、やはりそういった値決めというものがきちっと行われるための情報が公平に両当事者に行き渡るように、国としても努力しないといけない部分もあるというふうに思いますので、そういった内容の取組を今後しっかりと強めていきたい。いわば、手数料の見える化といったアプローチで対応していくべきではないかと考えております。
○宮本(徹)委員 見える化といったって、これは調べるのも大変なんですよね。それぞれのホームページから、適正な事業者の数を、物すごい一部しか、限られていますけれども、その手数料水準がどこに出ているのかという別に一覧表がどこかにあるわけでもないですし。全然見えないですよ。よほどの人が、一生懸命、一生懸命、それぞれの一社一社がどこに出ているのかなというのを調べない限り、全然見える化もやっていないですよ。本当に、私、やはりこの業界を自由化したこと自体が大きな間違いだと思いますよ。介護、医療、保育というのは、税金と保険料でやっているわけですから、ここはやはりちゃんと公的に、しっかり規制が及ぶ分野にすべきだということを重ねて申し上げておきたいと思います。あと、時間が少なくなってまいりましたので、もう一点、ちょっと違う問題について質問させていただきます。資料の最後のページを御覧いただきたいと思います。ハーバード大学の研究チームが先日発表しましたPFASに関する論文なんですね。泡消火剤が使われた米軍のケープコッド基地の消防訓練区域の汚染状況を基に解析したところ、前駆物質が微生物の活動で長期間かけて化学変化して、アメリカで法的規制の対象として検討中のPFAS六種類のうち、PFHxSやPFBSの地下水濃度を引き上げることが分かったということなんですね。そして、この研究チームは、泡消火剤による汚染物質の多くが、通気帯、土壌の隙間が水で満たされていない領域、ここに保持されると指摘しております。この通気帯の浄化ができなければ、下流域の地下水汚染が数世紀にわたり続く、こう警告しているわけですね。日本でも、沖縄や、あるいは横田基地など米軍基地の周辺あるいは下流域の地下水でも高濃度のPFASが確認をされております。大臣にお伺いしたいと思いますけれども、水道を所管する大臣として、通気帯が浄化できなければ地下水のPFASの汚染が数世紀にわたって続くという研究を、どう受け止めるのか。米軍基地への立入検査を含めて、汚染源の確認、除去のために真剣に取り組む必要があると思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 PFAS、PFOSあるいはPFOAをめぐる問題については、この委員会でも度々取り上げられておりますし、地域の皆さんからも不安の声が上がっていることは承知をしております。政府としてもこれまで様々な取組をしておりまして、汚染の未然防止の観点から、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律に基づき、PFOSとPFOAを第一種特定化学物質に指定し、製造、輸入、使用の原則禁止をする。汚染の拡散防止の観点から、自衛隊や消防機関等が保有しているPFOS等を含有する泡消火剤については、非含有のものへの交換を進める。あるいは、人体への暴露を低減する観点から、令和二年四月以降、PFOSとPFOAを水道水の水質基準体系における水質管理目標設定項目に位置づけ、合算値で五十ナノグラム・パー・リットル以下という目標値を設定をして運用しているところでございます。厚労省として、米軍基地への立入調査云々について申し上げる立場にはありませんが、汚染源の把握に資するものとして、環境省では、全国の河川等におけるPFOSの存在状況を把握するための調査も行っているところでございますし、さらに、科学的根拠に基づいたPFOSに対する総合的な対応を検討するとともに、国民への分かりやすい情報を発信することを目的に、本年一月、PFASに対する総合戦略検討専門家会議も設置されたものと承知をしております。厚労省でも本年一月に、環境省の会議と合同で水質基準逐次改正検討会を開催し、PFOSとPFOAの取扱いについて検討を行ったところであります。今後も、引き続き、毒性評価等に関する国内外の科学的知見の収集、我が国の水道水における検出状況等の把握に努めつつ、専門家の御意見も伺いながら、更に検討を進めていきたいと考えているところでございます。さらに、内閣府の食品安全委員会では、本年二月にワーキンググループを設置し、PFASを摂取することによる健康への被害について、科学的な評価を進めているところであり、この評価の結果が得られ次第、速やかに水質基準逐次改正検討会での検討にも反映していきたいと考えております。こうした形で、政府としても、この問題に対しては取組を進めているところでございます。
○宮本(徹)委員 厚労大臣として米軍基地への立入検査についてはコメントできないようなことをおっしゃっていましたけれども、汚染源を確認して除去しないと、ずっと汚染が続く。地下水の汚染が続いたら、東京の多摩地域の水道には地下水が入っております。もちろん地下水のうちのPFASの濃度が濃いところは止めておりますけれども、それ以外のところからは、地下水はまだ今でも使っているわけですよね。そうすると、当然、その水道を通じて人体への影響が出かねないということがあるわけですよ。水道行政は今度移管するということになっていますけれども、現時点では司令塔は厚労省なわけですから、加藤大臣が水道行政の司令塔なんですから、そこは、汚染源もちゃんと対応しなきゃいけないんだという立場に立ってもらわないと、米軍基地への立入検査がほとんどできない状況で、東京の横田基地でいえば、汚染源の確認もできなければ汚染源の除去もできないという状況が続いているわけですよ。何世紀も先まで影響を及ぼすという研究がここまで出てきている以上、ここは、政府として、そして水道行政を所管する厚労大臣として、しっかり責任を持った対策を取っていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。