2023年5月31日 衆院厚生労働委員会 介護・医療削減許されない 少子化対策財源 宮本徹氏追及

日本共産党の宮本徹議員は5月31日の衆院厚生労働委員会で、少子化対策の財源として介護、医療の社会保障削減が狙われている問題を追及し、削減は許されないと強調しました。
日本医師会や日本看護協会、老人保健施設協会など関係12団体は5月25日、「少子化対策は大変重要ですが、病や障害に苦しむ方々のための財源を切り崩してはなりません」とする合同声明を発表しています。宮本氏は「当然の意見だ」として、「社会保障の2兆円ものカットは許さないと、職を賭してでも止めるべきだ」と迫りました。
加藤勝信厚労相は「全ての世代で能力に応じて負担し、支え合う仕組みの構築に向けて、引き続き給付と負担の見直しにも取り組んでいきたい」と答弁し、社会保障財源の削減に踏み込むことを否定しませんでした。
宮本氏は、介護などは人手不足であり、処遇改善してケアできる体制をつくることが必要であり、診療報酬や介護報酬を減らすのではなく増やさなければならないと強調。医療や介護の財源を削ることは許されないとはっきり意思表明すべきだと主張しました。

以上しんぶん赤旗ホームページ2023年6月6日配信記事から抜粋

≪2023年5月31日 第211国会衆院厚生労働委員会第18号議事録≫

○三ッ林委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。この後、通称ゲノム法案が提案されます。ゲノム情報によって、保険だとか就職あるいは結婚などで差別や社会的不利益が行われないように国の施策が求められるわけです。今日は、雇用の分野に限ってお伺いします。先ほどの中島委員への答弁では、現状、雇用の分野では就職等での差別が行われないよう周知啓発している、こういう答弁がありました。周知啓発も大事なんですけれども、やはり事業者による遺伝情報の取得の原則禁止、そして遺伝情報に基づく採用、昇進、解雇などの不利益扱いの禁止、不利益を受けた場合の救済について、更なる法整備も含めた国の対応が求められると思いますが、いかがでしょうか。
○堀井政府参考人 お答えいたします。今、宮本委員から御指摘があったように、まず、採用選考に当たって講じている措置、そしてまた昇進、解雇等、そういったことにおける不利益取扱いがされた場合、こういった場合については、労働契約法において、使用者が、労働契約に基づく権利行使に当たって、それを濫用することがあってはならないと規定をされていますので、解雇の要請については、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は無効となるとされている、そういったことが最終的には司法において個別の事案ごとに判断されることになると考えています。そしてまた、解雇等の不利益な取扱いを受けた場合につきましては、全国の労働局等に設置をした総合労働相談コーナーで相談を受け付けております。そして、相談の内容や相談者の希望に応じて、事業主に助言、指導を行っているほか、紛争調整委員会によるあっせんも行っております。厚生労働省としましては、遺伝情報について雇用の分野において不利益な取扱いを受けることがないようにすることから、こういったことが重要であるということで、これらの取組を進めてまいりたいというふうに考えております。また、委員御指摘の不利益取扱いの禁止規定を設けるべきかどうかという点につきましては、関連する状況を踏まえた関係部局による検討等を要するもので、今にわかにお答えするということは困難でございますが、今後の遺伝情報やゲノム情報の利用の状況に注意を払いつつ、遺伝情報について不利益な取扱いを受けることがないよう、雇用の分野について、先ほど申し上げたような取組を進めてまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 にわかに答えられないということなんですけれども、今回、理念法としてですけれども、国として差別は許さない、不利益取扱いを許さない、必要な対応を取っていくということが中身に入っているわけですから、それに基づいて具体的に、諸外国ではしっかり不利益取扱いの禁止、ここまで法整備をしている国もあるわけですから、しっかり検討をしていっていただきたいと思います。大臣、うなずいていただければと思います。それから、もう一点、この後、戦没者の遺骨収集の推進に関する法律の改正案も委員長から提案される予定であります。これに関わってお伺いしますけれども、今、沖縄県の南部には多くの遺骨が残り、ガマフヤーの皆さんなど、遺骨の収集が続けられております。ところが、防衛省の設計変更では、この辺野古の新基地建設の軟弱地盤を固めるために土砂が当初の六・七倍必要だとして、土砂の調達先を変更して拡大して、県内土砂の七割を南部の激戦地の地域から調達しようとしているわけであります。これに対して、戦没者の尊厳を冒涜するものだということで、全国で三月末までに二百二十九の自治体から、辺野古の埋立てに南部の土砂を使うな、こういう意見書も上がっている状況です。まず、大臣の基本的な認識をお伺いしますけれども、この南部の激戦地の土砂、まだ遺骨も混じっている、こういう土砂を基地の埋立てに使っていくというのは、戦没者の尊厳に対するこれほどの冒涜はないと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 沖縄戦では、さきの大戦末期に県民を巻き込んだ凄惨な地上戦が行われ、軍民合わせて多くの貴い命が失われたところであります。特に、御指摘の本島南部では多くの住民の方が犠牲になったものと認識をしております。厚労省としては、沖縄県において、県と役割分担をして遺骨収集を進めており、御遺骨を収容する仕組みも構築をされているところでございます。実際、地下ごうや開発現場などから御遺骨が発見された場合、この仕組みにより市町村等へ通報していただくよう伝えているところでございます。厚労省としては、引き続き、沖縄県と連携して、一柱でも多くの御遺骨を御遺族にお返しできるよう取り組んでいきたいと考えております。そうした中で、今、普天間飛行場代替施設建設事業にございましたが、事業そのものは防衛省の事業でございます。我々は、今申し上げたようなスタンスで、一柱でも多い御遺骨の収容に取り組んでいきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 一柱でも多く遺骨の収集をしたい、やはりそれは本当に戦没者の無念、そして遺族の皆さんの思いをしっかり受け止めてというのが厚労省の立場だと思うんですね。その立場に立ったら、防衛省に対して、ここの土砂を埋立てに使うなんてまかりならぬ、このことをしっかり厚労大臣として迫る必要があるんじゃないですか。
○加藤国務大臣 先ほど申し上げましたが、沖縄県においては御遺骨を収容する仕組みが構築をされており、防衛省を始め関係機関に対し、地下ごうや開発現場などから御遺骨が発見された場合、この仕組みによって市町村等へ通報していただくということをお願いをしているところでございます。また、防衛省に対しては、開発行為等の過程で御遺骨が発見された場合の通報手順などについて関連事業者により丁寧に周知をすべく、沖縄における遺骨収集の背景、現状、適切に御遺骨を収容する必要性などの理解を深められるよう、事務レベルで適切に説明を行ってきているところであります。
○宮本(徹)委員 何か心がない答弁なんですよね、本当に。与党の皆さんも、この後、皆さん全体で、この遺骨収集の集中期間を延期しよう、こういうことをみんなで委員長発議を確認しようとしているのに、それと全く反することが沖縄でやられるかも分からないわけですよ。これは止めなきゃいけないじゃないですか。是非その立場に与野党を超えて立っていただきたい、このことを強く申し上げておきたいと思います。続きまして、次の問題に行きます。少子化対策の財源として、この間、医療保険料への上乗せや介護、医療の歳出改革、こういうことが報道されているわけであります。医療保険料への上乗せ、社会保険料の問題は、私もここで駄目だということを申し上げさせていただきました。さらに、今回出てきている医療、介護の歳出改革ということが言われているんですね。五月二十五日に、医師会だとか看護協会、四病院団体協議会、老人保健施設協会などなどの連名の声明が出されております。その中でこう書いているんですね。子供、子育て、少子化対策の財源を捻出するため、診療報酬、介護報酬の抑制、医療機関収支の適正化等を行うべきとの意見もあります、子供、子育て、少子化対策は大変重要な政策ですが、病や障害に苦しむ方々の財源を切り崩してはなりません、当然の意見だと思うんですよね。私は、本当だったら、与野党でここで特別決議を上げて、こういう財源を使っちゃいけない、子育て施策のためだと称して医療や介護の財源を持っていくなんてとんでもないというのをみんなで示していかなきゃいけないような話だと思うんですね。大臣、幾ら子育て支援が大事だといっても、医療や介護、ましてや、今日も人手不足の問題とかいろいろな話もありましたけれども、どこも本当に人手不足で、もっと処遇を改善して、しっかりケアできる体制をつくっていかなきゃいけない、この分野の二兆円ものカット、こんなのは絶対許さないと職を賭してでも止めなきゃいけない話じゃないかと思いますが、いかがですか。
○加藤国務大臣 現在、子供、子育て政策については、こども未来戦略会議において議論が進められております。五月二十二日の第四回の戦略会議では、子供、子育て政策を抜本的に強化していくため、今後三年間を集中取組期間として実施する加速化プランを支えるための安定的な財源について議論が行われました。そして、総理からは、歳出改革の取組を徹底するほか、既定予算を最大限活用することにより国民の実質的な負担を最大限抑制すること、企業を含め、社会、経済の参加者全体が連帯し、公平な立場で広く支え合っていく新たな枠組みについて具体的に検討し、結論を出す必要があるといった方向性が示されたところでございます。子供、子育て支援の推進によって少子化、人口減少のトレンドの流れが変わっていくことは、社会保障の持続可能性を高めることにもつながると考えております。厚労省としては、必要な社会保障サービスが必要な方に適切に提供されるようにするとともに、全ての世代で能力に応じて負担し、支え合う仕組みの構築、まさに全世代型社会保障を構築する、それに向けて、引き続き給付と負担の見直しにも取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。
○宮本(徹)委員 自民党の議員の皆さんの中からも、とんでもない話だという声がたくさん聞こえてくるわけですよ。しかし、そういう言葉が加藤大臣から聞こえてこないんですよね。本当に、やはり医療や介護の財源は削らせません、そのために頑張りますと、皆さんにここではっきり意思表明をすべきじゃないですか。与党の皆さんもそれを求めているんじゃないですかね。何か笑っている与党の方もたくさんいらっしゃいますけれども、本当にこれは真剣な問題ですよ。いかがですか。
○加藤国務大臣 まさにそういった意味で、先ほど申し上げた全世代型社会保障を構築しようということでこれまでも努力をしてまいりました。そして、そうした中で、今、医療を取り巻く、あるいは介護を取り巻く、特にコロナ禍を越える中で、物価あるいは賃金の上昇、こういった事情もございます。こういったことも踏まえて、先ほど申し上げた、引き続き持続可能な社会保障制度、あるいは、その下で必要な社会保障サービスがしっかり提供されるように、引き続き努力をしていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 必要なサービスを提供するためには、診療報酬や介護報酬を減らすんじゃなくて、増やさなきゃ駄目なんだと、そうだということが与党からもたくさん上がっていますので、是非大臣にはきっぱりと、頑張っていただきたいと思います。最後に、子育て支援の問題に関わってもう一点だけお伺いします。財務大臣が、児童手当拡充の際には扶養控除の廃止を検討すべきだと主張をされているわけですよね。総理は、少子化対策財源確保のための新たな税負担は考えていないと言っています。これは閣内不一致じゃありませんか。
○井上副大臣 お答えいたします。まず、子供政策強化の内容、予算、財源につきましては、現在、総理の下で議論を行っているところでありまして、また、今後、与党における議論も行われていくことから、現段階で確定的なことを申し上げられないことについては御理解をいただきたいというふうに思います。その上で、これまでの財務大臣の会見で申し上げたことを改めて御説明をさせていただきたいと思います。二十二日のこども未来戦略会議におきまして、総理から、少子化対策の財源確保のための消費税を含めた新たな税負担は考えていないことが大前提であることを発言がありました。児童手当の拡充を検討する際には、これまでの児童手当をめぐる制度改正の経緯があることから、歳出と税制の在り方を総合的に考える中で扶養控除との関係をどう考えるか整理する必要があると考えていますが、少子化対策の財源確保を目的として検討されるべき事柄であるとは考えておりません。子供、子育て政策強化における加速化プランの具体的な内容や、それを支える安定的な財源の在り方については、現在、こども未来戦略会議におきまして議論されているところでありまして、現在、何ら確定していない段階で予断を持ってお答えすることは困難だというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 年収六百万円の方でも、扶養控除を廃止しちゃったら、児童手当が増えてもその六割は税金で消えちゃうんですよね。税理士の計算では、年収八百五十万円を超えたら、児童手当の増額分は全部増税で消えてしまう、そういう話なんですよ。本当に、子育て支援といいながら、子育て世代の中での所得の再分配にしかならない話なんですね。これは異次元の少子化対策なんですか。そもそも、こんな発言が出てくること自体が、全然真剣に少子化対策を考えていないということだと思いますよ。二度とこういう言葉は使わないように財務大臣に伝えていただきたい、そのことを申し上げまして、今日は時間になりましたので、質問を終わります。