2023年6月7日 衆院厚生労働委員会 医療機関に未収リスク マイナ保険証運用マニュアルの改訂 宮本徹氏が追及

配付資料 出典:社会保険診療報酬支払基金「病院・診療所向けオンライン資格確認等システム運用マニュアル」より宮本徹事務所作成
配付資料 出典:保健医療機関及び保健医療養担当規則

日本共産党の宮本徹議員は7日の衆院厚生労働委員会で、改定マイナンバー法が成立した2日に改訂されたマイナ保険証の「システム運用マニュアル」の問題を追及しました。
改訂前の「オンライン資格確認等システム運用マニュアル」は、有効な資格確認ができなかった場合、「患者からは10割分を受領」するとしていましたが、改定後は「マイナンバーカード券面の生年月日情報で自己負担分(3割など)の支払いを可能とし、事後に訂正のある場合は所要の手続きを行うことが考えられる」としています。
宮本氏は「“考えられる”というのは、医療機関に責任を丸投げということか」と指摘。医療機関からは「事後に資格確認ができなかった場合、残り7割分は未収にならないか」との批判の声があがっており、資格確認ができない場合の7割分の支払いを「(医療機関は)もれなく受けられるのか」と追及。厚労省の伊原和人保険局長は医療関係者と調整中で、「具体的に申し上げることは難しい」として答えられませんでした。
宮本氏は「マイナンバーカードの券面情報だけで確認できるとすると、保険に未加入の方もマイナカードで受診して3割負担の運用となるが、7割は審査支払機関が医療機関に払うのか」と重ねてきくと、伊原局長は「保険に加入されていない方は、給付の対象にならない。確認をどのように行うのか議論中」と答弁しました。
宮本氏は、患者と医療機関の両方を守るために資格確認をしないなら不正は防げないと指摘。答えが出ない問題であり、健康保険証の廃止を撤回すべきだと重ねて求めました。

以上2023年6月8日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2023年6月7日 第211国会衆院厚生労働委員会第19号議事録≫

○三ッ林委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。先週に続きまして、マイナ保険証、健康保険証廃止問題についてお伺いいたします。お手元に資料を配付しておりますが、六月二日にオンライン資格確認等システム運用マニュアルが改定されました。トラブルでマイナンバーカードで資格確認ができず、保険証などでも確認できない場合、これまでは、「患者からは十割分を受領してください。」とありました。改定版では、「マイナンバーカードの券面に記載された生年月日情報に基づいて自己負担分(三割負担等)をお支払いいただき、事後に正確な資格情報の確認ができた段階で、」「所要の手続を行っていただくことが考えられます。」というふうになったわけですね。「考えられます。」という表現で、医療機関に責任を丸投げか、事後に資格が確認できなかった場合は残り七割分は未収にならないのかと批判の声が上がっております。まず、健康保険法、療養担当規則との整合性についてお伺いしたいと思います。資料裏面に療養担当規則を載せておきました。三条、「保険医療機関は、患者から療養の給付を受けることを求められた場合には、」「電子資格確認又は患者の提出する被保険者証によつて療養の給付を受ける資格があることを確認しなければならない。ただし、緊急やむを得ない事由によつて当該確認を行うことができない患者であつて、療養の給付を受ける資格が明らかなものについては、この限りでない。」こうあるわけですね。今でも、保険証を忘れて、継続的に通っている患者さんの場合は資格が明らかだということで扱っている医療機関が多いと思いますが、新規患者の場合はなかなかそうはいきません。お伺いしますけれども、初診の患者について、マイナンバーカードの券面の生年月日情報の確認というのは、この療養担当規則第三条、これを満たすことになるんでしょうか。
○伊原政府参考人 お答えいたします。今、七十条に基づく療担規則三条の解釈についてお話がございました。今の三条一項では、保険医療機関は、患者から療養の給付を求められることがあった場合は、電子資格確認又は保険証で資格確認をしなければならない、ただし書で、緊急やむを得ない事由によって行う場合で、療養の給付を受ける資格が明らかなものについては、この限りでないとありまして、初診の患者さんでも、例えば緊急で運ばれてきた、あるいは緊急で治療を受ける、事後的に保険証で確認するというような場合は、こうした扱いでこの療担規則に該当するということは、ただし書に該当するということがあるというふうに考えてございます。
○宮本(徹)委員 確かに、救急車で運ばれてきたとか、そういう、本当にすぐに治療しなければ命に関わる問題のときはそうだと思うんですけれども、今回はそういう話を書いているわけじゃないわけですよね。今回のマニュアルというのは、オンライン資格確認で、トラブルによって資格確認ができなかった場合のことを書いているわけですよね。それは当たるんですかとお伺いしているんです。
○伊原政府参考人 もう少し事例を申し上げますと、例えば、今、災害時では、診療報酬請求の取扱いにおいて、氏名、生年月日、連絡先等を確認いただいて、保険証がなくても資格確認ができるということははっきり明示してお伝えしているところでございます。こうした中で、療担規則のただし書に基づきまして、現在でも現場の医療機関の窓口で柔軟に対応いただくというケースはございます。国会でも何度も答弁させていただいておりますけれども、今回、マイナンバーカードで受診した際に、一定の事情で資格確認がその場で行えない場合につきましても、カードの券面に記載された生年月日情報に基づいて自己負担分をお支払いいただく、事後的に正確な資格情報の確認ができた段階で訂正の必要がある場合には所要の手続を行うなど、医療機関において柔軟に対応していただくことは可能だと考えてございます。
○宮本(徹)委員 ですから、その人がいつも通ってきている患者さんだったら、この人はこの保険だろうということで請求できるケースは、当然マイナ保険証のトラブルでも対応していますよ。しかし、新規患者の場合はそうならないから医療現場では大変困っているわけですよね。さっき、災害のときはこのただし書の対応をしているんだとお話ししますけれども、マイナンバーカードのトラブルというのは災害じゃないじゃないですか。人災じゃないですか。人災のトラブルと災害時の対応を一緒にするというのは、驚きの話だと思うんですよね。大体、今まで、これは人災で、トラブルだから、六月二日以前のマニュアルは、十割取ってくださいと皆さんは書いていたわけでしょう。それを今回、批判があったからマニュアルは書換えだということになったわけです。問題は、三割だとかということで対応することも考えられますというふうに言った上で、じゃ、医療機関は、患者から三割負担等の支払いを受けたけれども、事後で確認したら確認ができない、その人の保険がどこなのか、こういう場合もあるわけですよ。あるいは、事後に調べたら無保険だという場合もあるわけですよね。こうした場合は、レセプトに、このマニュアルどおりに扱ったけれども確認できませんでした、こういうふうに記載したら、残り七割というのは支払いをちゃんと医療機関は漏れなく受けられるんですか。
○伊原政府参考人 お答えいたします。医療機関におきましては、受診時にまず患者についての御本人の確認、それから医療保険についての資格の確認、これを行っていただいて、レセプト請求上は、その患者の加入する保険者番号と被保険者等記号・番号、これをレセプトに記載して請求していただくということでございます。具体的に、マイナンバーカードで受診した場合には、医療機関においては、顔写真つきの身分証、最高位の身分証と呼んでいますけれども、マイナンバーカードで御本人を確認いただきまして、その上で、オンライン資格確認により医療保険の資格情報を取得して、それに基づきレセプト請求を行っていただくとなってございます。先生今御指摘のように、オンライン資格確認において、例えば機器が故障しているとか、それから停電が起こっているとか、あるいは資格エラーがあるとか、いろいろな事情で資格確認を行えない場合があり得るわけですけれども、その場合でも、マイナンバーカードで本人確認は可能でございます。住民票上の住所も明らかですし、生年月日も分かります。その上で、その場において、又は事後に保険者名とか被保険者等記号・番号を確認していただく、その場で御家族に電話して被保険者番号を聞く、そういうようなことも可能でしょうし、事後的に送っていただくということも可能だと思います。そういう意味で、診療報酬請求を行っていただくことを想定してございます。ただ、さっき先生がお話しいただきましたように、そうしたプロセスの中で、どうしても被保険者等記号・番号が確認できないというときには、現在、診療報酬請求に支障が生じることもあり得るところでございまして、そういう中では、やはり、我々としましては、マイナンバーカードでオンライン資格確認を行えないケースをできる限り少なくするということが何よりも重要だと考えておりまして、今、記録の誤りを正すという作業を急ぐとともに、それから、転職等の場合にやはり新しい保険証が届くまでに時間が必要になります。それから、登録までにも多少時間がかかります。そうしたことを短くしていくためにも、まず個人番号を出していただくという省令改正を行いました。そうした取扱いをする中で進めていっているところでございます。
○宮本(徹)委員 さっきの御答弁だと、結局、オンライン資格確認ができないトラブルはできるだけ減らそうという努力はするけれども、その場で確認ができない、そして事後にも確認できない、こういう人については七割の支払いは受けられない、こういうことですね。
○伊原政府参考人 お答えいたします。こうした様々な事情が考えられますし、今御指摘のような事例もあり得ると思いますので、現在、その場で資格確認を行えない場合の取扱いにつきまして、医療関係者と調整しているところでございます。その中で、具体的な方向について整理し、お示ししていきたい、このように考えてございます。
○宮本(徹)委員 いやいや、今医療機関と調整しているというお話をされますけれども、七割の支払いは、じゃ、どうやったら医療機関と調整してできるんですか。本人確認と資格確認と両方必要なわけですよね。資格確認をやらずに支払いをするという方法も考えているということでよろしいんですか、調整の中には。
○伊原政府参考人 今まさに調整中でございまして、ここで具体的に申し上げることは難しいんですけれども、マイナンバーカード自身は、これはまさに、住民基本台帳法に載っている、まさに御本人の、まさにその人自身の情報でございますし、それから顔写真もついている、非常に本人確認上重要な情報でございます。こうしたことを入手できることを前提に、どこまで今先生がおっしゃられたような形で実務上運用できるか、そこを今整理しているところでございます。
○宮本(徹)委員 もし仮にですよ、仮にマイナンバーカードの券面情報だけで確認できるというふうになると、例えば、保険に未加入の方がマイナンバーカードで受診する、こうした方が無効だとかと表示される、こういう方についても三割負担でいいという運用になっていくということになると思うんですよね。そういうケースも、医療機関には七割分を、審査支払い機関がちゃんと、保険者は分からないけれども払う、こういうことも含めて考えているということなんですか。
○伊原政府参考人 お答えいたします。まず、保険に加入されていない方の場合は、医療保険上は保険の給付の対象になりませんので、そういう確認をどのように行うか、どういう形で行うかも含めて、いろいろ今議論をしているところでございます。
○宮本(徹)委員 これは、はっきり言って、私は答えが出ない問題だと思うんですよね、何回も議論になっていますけれども。患者さんは、保険に入っていたら、やはり三割負担だったら三割負担になるのが当たり前の話だと思いますし、医療機関からすれば、残り七割というのは、未収になったら困るわけですよ、ちゃんとそれは支払ってもらわなきゃいけない。ただ、その際に、資格確認ができないというものをそのままにしておいたら、医療機関と患者さん両方守ろうと思ったら、今度は、資格確認せずにでも出すんだということになって、これは不正が防げなくなっちゃうんですよね。ですから、これは幾ら考えても答えが出ない問題だと思いますよ。大臣、そう思いませんか。
○加藤国務大臣 現在の紙においてもそういったことは起こり得るわけですよね。例えば、保険証を持ってこない、それから切替えのとき。逆に、今回、切替えのときには、切替えをした後にマイナンバーできちんと申請をしていただけば、登録した段階からもうマイナンバーが保険証として使えます。しかし、そうでない場合は、紙が発行されて本人に届かなければ、これは保険証として使えないわけです。そういった課題が今もあるという、そうした前提の中でこれをどうクリアしていくのか。一番大事なことは、まずは、新規あるいは書換えのとき、その期間を、先ほど局長が申し上げたように、いかに短くしていくのかという努力を一方でしていく。それから、一方で、システムダウン等々の事態がないようにこれを取り組んでいく、これがまず基本だと思います。その中で、あと個々の事案においてどうするかということの詳細については、今、医療機関といろいろなケースを想定しながら詰めさせていただいているということでございます。
○宮本(徹)委員 これは紙の場合とは全然違いますよ。紙の場合は、紙の保険証は見ればすぐ本人の確認ができるわけです。持ってきていなければ、それは当然そのときの対応というのはあるわけです。マイナンバーカードの場合は、そもそもマイナンバーカードを見ても保険者は全く分からないものなんですよね。しかも、トラブルだらけなんですよ。トラブルだらけ。ICチップが壊れているというトラブルもいっぱいあるわけですよ。こんなのは紙の保険証じゃ起こりっこない話ですよね。何か、洗濯したら字が読めなくなるようなことを言っているばかな発言もありますけれども、ICチップが壊れるなんてことは紙の保険証では起こり得ないんですよ。それから、いろいろなシステムによるトラブル、顔認証ができないだとか暗証番号を忘れただとか、暗証番号を何回も押して使えなくなっちゃったとか、こんなことも紙の保険証なら起き得ないわけですよ。紙の保険証をそのまま残せばいいだけのものなのに、わざわざ紙の保険証を廃止しようとするから、答えが出ない問題についてずっと検討、検討ということが続いてしまっているんじゃないですか。大臣、今日、読売新聞も、社説で、健康保険証を廃止するのは見直すべきだ、一旦廃止は凍結すべきだと、非常に良識ある社説を掲げられましたよ。大臣も心の中ではそのとおりだと思っているんだと思うんですよね。これは決断すべきだと思いますよ。いかがですか。
○加藤国務大臣 紙の保険証だって、更にそれが有効でないかどうかというのは常にあるわけでありますから、こういった事態というのはいろいろなケースがあって、それに対して一つ一つ対応していかなきゃいけない。それから、読売新聞の社説に対しては政府の立場としてコメントするのは差し控えたいと思いますが、ただ、御指摘いただいているように、誤ったひもづけが起こったことを通じて国民の皆さんのこうしたシステムに対する信頼を毀損する、こうしたことがないようにしっかり努めていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 時間になりましたから終わりますけれども、これはもう本当に、こんな状態のまま健康保険証廃止をそのまま粛々と進めるというのはあり得ないということを申し上げておきたいと思います。あと、もう時間が終わっちゃいますけれども、本当に、今日、自見政務官に来ていただいたのに、申し訳ございません。阿部知子さんから先ほど加藤大臣にもお話ありましたけれども、優生保護法の問題で本当に不当な判決が仙台高裁で出ました。しかし、こういう判決が出ちゃいますと、最高裁の判決はかなりの時間がかかるということになってしまうんじゃないかということは、多くの皆さんが考えていることです。そういう中で、本当に、被害者の皆さんがどんどん亡くなられていくということがあってはならないと思うんですね。本当に政治の責任でこれは解決していかなければならないことだと思います。今日、与野党の皆さんも政府の皆さんも、是非そこは速やかな全面解決に向けて直ちに動きましょうということを呼びかけまして、自見政務官、一言ありますか。もうやめた方がいいですか。よろしくお願いします。
○三ッ林委員長 答弁は簡潔にお願いします。
○自見大臣政務官 お答えいたします。先ほど委員も御指摘いただきました、六月一日木曜日には、仙台高裁において、除斥期間を適用して国の損害賠償責任を否定する判決が言い渡されたことは承知をしております。他方で、これまで国の責任の一部が認められた判決につきましては、それぞれの具体的事情も異なることから一つ一つ丁寧に対応しているところでありまして、そのような観点から、内容を精査したところ、除斥期間の法律上の解釈適用に関して、いずれも旧優生保護法上に関わる本件事案にとどまらない法律上の重大な問題を含んでいる等のことから、上告をせざるを得ないとの判断に立ったものでもございます。ただし、一方で、こうした方々に対して、超党派の優生保護法下における強制不妊手術について考える議員連盟が立ち上がり、既に御指摘いただいているように、御高齢であるということも十分踏まえまして、できる限り早期に法律案が取りまとめられ、国会において全会一致により一時金を支給するための法律が定められました。一時金の支給につきましては、支給法におきましては令和六年の四月が請求期限となっておりますが、今後の対応の在り方につきましては国会に相談をしているところでもございます。また、同じ問題意識でございまして、昨日行われました超党派議連役員会におきましても、政府から、一時金の支給状況や様々な訴訟の状況について、御報告を丁寧にさせていただいたところであります。政府といたしましては、引き続き、国会での御議論の進展に向けて最大限の協力をさせていただくとともに、御議論の結果を踏まえて、適切に対応して、検討してまいります。
○宮本(徹)委員 皆さんで一刻も早く解決しましょう。終わります。