2023年4月26日 衆院厚生労働委員会 生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の質疑と討論
≪2023年4月26日 第211国会衆院厚生労働委員会第11号議事録≫
○三ッ林委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。本法案で厚労省に残ります食品安全行政は、マンパワーが非常に大事だと思います。輸入食品は検疫所が主に担い、国内では主に保健所が担っております。検疫所の食品衛生監視員は、この四年間、人員は横ばいです。都道府県を見ますと、専任の食品衛生監視員が一人もいないところが約二十府県もあるという状況なんですね。そこで、まとめて三つお伺いしますが、一つ目、輸入食品の十年前と直近の検査率、そして、直近の違反件数について教えていただきたいと思います。二つ目、検疫所の食品衛生監視員の数、地方自治体の食品衛生監視員の体制は十分と大臣はお考えなのか。三つ目に、この法改正によって食品安全監視行政を担う国、地方自治体の職員数が減ることはないのか。以上三点、お伺いします。
○加藤国務大臣 まず、食品衛生法に基づく輸入食品の監視指導については検疫所の食品衛生監視員が、また、輸入業者による届出の内容の審査や一定数を抽出して検査を行うモニタリング検査等を実施をしているところであります。輸入食品に対する検査の実績としては、検査率に関しては、平成二十四年度が一〇・二%、令和三年度は八・三%。違反件数に関しては、平成二十四年度は千五十三件、令和三年度は八百九件となっております。また、検疫所における輸入食品の監視体制については、輸入食品の届出件数の増加などを踏まえ、適切に監視指導を実施するための体制整備を図ってきたところであります。令和四年四月時点における食品衛生監視員は四百二十二人と、平成二十四年の四月に比べると二十三名の増加となっております。また、国内で流通する食品に対する地方の食品衛生監視体制については、各都道府県ごとにおいて監視指導の実施のために必要な人員を適切に確保した上で、監視指導が実施されるものと承知をしております。なお、地方公共団体の食品衛生監視員の総数は令和四年三月末時点で八千三百二十七名となっており、これは平成二十五年の三月時点と比較すると三百三十二名の増となっているところでございます。本法案は、食品衛生基準行政を厚生労働省から消費者庁に移管するものであり、検疫所や都道府県等が対応を行う食品衛生監視行政の内容そのものを変更するものではないというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 内容そのものは当然法律上は変わらないわけですけれども、分割されていくことで、そこに対しての予算だとか人員削減で食品安全監視行政が後退するようなことがあってはならないと思っております。その上で、先ほどの検査率のお話を聞いても、検査率が下がると、その分、違反件数も減っているというふうにも見えるんですよね、数字を見ると。九割以上が届出のうち検査ができていないということを考えると、増員こそ必要だということを申し上げておきたいというふうに思います。あと、もう一点お伺いしますが、今回の法改正によって、食品基準行政、水道行政に関わる職員数、消費者庁、国交省、環境省の本省の職員数というのは、現在の厚生労働省の本省の担当の職員数よりも増えるのか減るのか、お答えください。
○加藤国務大臣 移管後の各省庁の体制については、移管業務に関わる厚生労働省の組織・定員も併せて移管することを基本とし、令和六年度の組織・定員要求の過程で具体的に検討、決定されていくことになりますので、今の時点で具体的なことを申し上げることはできないことは御理解いただきたいと思いますが、食品衛生基準行政や水道整備、管理行政の機能がより一層強化充実されるよう、必要な体制の確保に努めていくことはこれまで同様というふうに考えております。
○宮本(徹)委員 仮に、強化ということで、減るということはあり得ないというふうに思うんですよね。減らないという約束はできないということも大変心配なんですけれども、時間になってしまいましたので、五分しかないので、これで終わらせていただきます。
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○三ッ林委員長 以上で本案に対する質疑は終局いたしました。これより討論に入ります。討論の申出がありますので、これを許します。宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党を代表して、生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案に反対の討論を行います。そもそも、本法案には立法事実が見当たりません。感染症対応の強化、大臣の負担軽減が本法案の出発点とされます。国民の食の安全を守るために食品安全行政をどう強化していくのか、公衆衛生の向上と生活環境の改善のために水道行政をどう強化していくのかということから出発した法案ではありません。厚生労働省が公衆衛生の向上の観点から一体的に行っている食品安全行政と水道行政を移管、分割することについて、国民から懸念の声が出ております。食品衛生行政の消費者庁への移管については、食品安全の規格基準の策定と監督指導の分離で連携が十分に取れなくなる懸念があります。規格基準の策定に際して、厚労省所管の国立医薬品食品衛生研との連携が弱められる懸念も指摘されております。さらに、消費者庁等には食品メーカーからの天上がりが少なくない下で、本法案の改正目的として、販売現場におけるニーズを規格基準策定の議論にタイムリーに反映させることと掲げられたことを踏まえますと、科学的根拠に基づいて決められるべき基準が食品メーカー等の意向に影響され、食の安全がないがしろにされる懸念が拭えません。また、かつて省庁再編の際、厚生省自身が、水道行政は国民の生命、健康の安全を確保する観点から、施設の整備も含め一元的に管理できる厚生行政が所管することが必要としてきました。厚生科学審議会生活環境水道部会でも、一体性、迅速性が損なわれるのではないのかとの懸念や衛生上の確保に懸念が示されております。公衆衛生の向上の観点から、効果的な食品安全行政、水道行政はどうあるべきか、専門家、関係者の参加の下、合意形成をしていくことが必要だと指摘し、反対討論とします。
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○三ッ林委員長 以上で討論は終局いたしました。これより採決に入ります。内閣提出、生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案について採決いたします。本案に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○三ッ林委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。この際、本案に対し、田畑裕明君外五名から、自由民主党・無所属の会、立憲民主党・無所属、日本維新の会、公明党、国民民主党・無所属クラブ及び有志の会の六派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。提出者より趣旨の説明を聴取いたします。野間健君。
○野間委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。案文の朗読により趣旨の説明に代えさせていただきます。生活衛生等関係行政の機能強化のための関係法律の整備に関する法律案に対する附帯決議(案)政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
一 水道・下水道事業の施設整備に係る必要な予算を確保すること。また、近年多発する災害への対応強化や迅速な復旧がされるよう十分な予算を措置すること。
二 水道・下水道事業の基盤強化に向け、国や事業者が事業運営等に必要な組織、人員と専門性を確保できるよう、必要な措置を講ずること。
三 水道事業におけるこれまでの「官民連携」の実態を把握するとともに、その結果を踏まえつつ、水道事業の公共性や持続性に十分留意したものとなるよう必要な助言を行うこと。
四 水質基準の必要な規制強化と実効化を高めるため、必要な予算の配分や人員の配置を行い、水質基準の策定や管理・検査の体制を確立すること。
五 食品衛生基準行政の消費者庁への移管に当たっては、食品安全推進の取組に支障や停滞が生じることがないよう、規格基準の策定と厚生労働省が引き続き所管する監視指導・調査研究との連携等に万全の措置を講ずるとともに、消費者の選択の権利の確保のためには、食の安全は当然として、食の安心にも十分に留意すること。
六 移管の対象となる行政分野において支障や停滞が生ずることのないよう、権限の移管に当たっては、移管元の厚生労働省と移管先の省庁及び関係機関との間で連携を図り、必要な予算の配分や人員の配置など万全の措置を講ずること。
以上であります。何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
○三ッ林委員長 以上で趣旨の説明は終わりました。採決いたします。本動議に賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○三ッ林委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。この際、加藤厚生労働大臣から発言を求められておりますので、これを許します。加藤厚生労働大臣。
○加藤国務大臣 ただいま御決議になられました附帯決議につきましては、その趣旨を十分尊重いたしまして努力してまいります。