2023年11月8日 厚生労働委員会 医師の抜本増員こそ 宮本徹氏、「隠れ宿日直」追及

 日本共産党の宮本徹議員は8日の衆院厚生労働委員会で、実際には働いているのに労働時間規制が適用除外となる医師の「隠れ宿日直」の実態を追及し、医師の抜本増員こそ必要だと迫りました。
 「宿日直許可」は、医師の宿直や日直が労働の必要がほとんどない場合であれば、特例的に労働時間規制が適用除外となるものです。
 宮本氏は、夜間に急患26人に対応するなど宿日直許可の基準を満たさない事例が続出しており、病院側が許可をとるさい、厚労省担当者に業務日誌を見せ「もっと診療時間を短く」と指摘された事例も示し「実態を反映しない報告をさせるケースがゴロゴロあるのでは」とただしました。
 武見敬三厚労相は「基準に適合しなければ許可することはなく、全ての病院を調査することは考えていない」と強弁。宮本氏は「許可基準を満たさない事例がたくさんあるのに、見て見ぬふりか」と厳しく批判しました。
 宮本氏は、仮眠時間も労働時間と認められた最高裁の判例も示し「病院の宿日直業務は、仮眠時間中も患者の診療・治療を拒むことは許されず、労働からの解放が保障されているとは到底言えない。判決に照らしても今の宿日直許可は到底認められない」と批判。時間外労働の上限規制など医師の「働き方改革」を前にした宿日直許可の乱発は脱法的やり方だとして、「医師そのものを増やさなければ解決しない」と迫りました。

以上しんぶん赤旗ホームページ2023年11月10日配信記事から抜粋

≪2023年11月8日 第212国会衆院厚生労働委員会第2号 議事録該当部分抜粋≫

~省略~
○宮本(徹)委員 ~略~ 続きまして、医師の働き方改革についてお伺いしたいと思います。来年四月から、医師の働き方改革として勤務医の時間外労働の上限規制が始まります。宿直や日直を労働時間とみなさなくてよい宿日直許可というのが急増しております。昨年の許可件数は一千三百六十九件と、二年前の十倍ということになります。そこで、何が起きているのか、配付資料の四ページ目を見ていただきたいと思いますが、急患、夜間に二十六人、朝四時にやっと仮眠室に入れた、こういうものでも宿日直許可が出ているという話なんですね。宿日直許可の基準でいえば、宿直の場合は夜間に十分な睡眠が取り得るもの、その上で、少数の軽症の外来患者や、かかりつけ患者の状態の変動に対応するため、問診等による診察等を行うことということで、極めて限定的な場合にしか宿日直許可というのは本来出されないはずなんですね。これは大臣にお伺いしますけれども、夜間に急患を二十六人も診て、朝四時まで診続けている、こういうのは宿日直許可の基準を満たしているとは到底言えないと思いますが、大臣、いかがお考えですか。
○武見国務大臣 医療機関における宿日直許可については、特殊の措置を必要としない軽度、短時間の業務や、夜間に十分な睡眠が取り得る業務など、宿日直許可基準に適合しているものに限って労働基準監督署が許可の判断を行っております。こうした許可基準に適合していなければ、許可することはありません。個別の事案についてお答えすることは差し控えますけれども、一般論として、宿日直許可の趣旨に反して通常の勤務時間と同様の業務に従事することがあった場合には、その時間を通常の労働時間とし、時間外労働に対する割増し賃金の支払い義務などが生じることとなります。そのような義務が果たされないなど、宿日直許可の不適正な運用により労働基準関係法令違反が疑われる場合には、労働基準監督署において適切に対応していきたいと思います。
○宮本(徹)委員 これはどう考えても基準を満たしていないわけですから、本来、これは許可を取り消さなきゃいけないような場合だと思うんですね。この記事で書かれているお医者さんは、労基署は病院の実態をよく把握せずに許可したのではないのか、長時間労働の医師が患者を治療すれば事故も起きかねない、こう指摘しているわけです。この記事を載せたら反響メールがいっぱい来たということが朝日新聞には書かれておりました。資料の五あるいは六も同様の話が書かれているわけですね。これは宿日直許可を申請する際の話ですね。資料五、労基署の担当者に業務日誌を見せると、救急車の受入れ数がちょっと多い、もっと診療時間を短くしてくださいと指摘され、診療時間から検査結果の待ち時間を除き、救急車が少ない季節を選んで日誌を提出すると許可が下りたと。それから六ページ目ですね。申請に当たっての調査で、宿日直中の業務も急患対応以外は書かないでくれという指示があった、通常は一晩に急患を十人ほど受け入れているが、コロナクラスターの影響もあって調査時期は二、三人、この内容で労基署に提出し、許可が出たと。これも新聞記事で書かれている話ですけれども、大臣もこういう話を聞いているんじゃないですか。医療関係者の話では、実態を反映しないような報告をせよという話がごろごろあるわけですよ。宿日直許可がかなりいいかげんに出されているんじゃないか、こういう話、御存じなんじゃないですか。
○武見国務大臣 医療機関における宿日直許可については、特殊の措置を必要としない軽度、短時間の業務、夜間に十分な睡眠が取り得る業務など、宿日直許可基準に適合しているものに限って労働基準監督署が許可の判断を行っております。許可基準に適合しなければ許可することはなく、全ての病院について改めて確認することは考えておりません。
○宮本(徹)委員 これから確認することはしませんなんということを言うわけですけれども、これは記事に書かれているだけでも幾つも出ているわけですよね。厚労省は、宿日直許可を出すことを前提に、形だけの調査しかしていないんじゃないかということが現場から指摘されている。同様の話はいっぱい私どもは聞いております。何でそんなかたくなに調査する気はないという話をされるのかよく分からないんだけれども、これだけたくさん指摘されておいて調査をしないというのは、何か理由があるんですか。
○武見国務大臣 労働基準監督署が適切に宿日直許可の判断を行えるよう、令和四年六月に厚生労働省から各労働局に対して参考事例の周知を行っているほか、宿日直許可に関わる処分の判断について、斉一的に対応するよう徹底を指示しております。その上で、宿日直許可の不適正な運用により労働基準関連法令違反が疑われる場合には、労働基準監督署において適切に対応してまいりたいと考えます。
○宮本(徹)委員 これだけたくさん報道されているのに対して、何の対応も取っていないということですか。
○鈴木政府参考人 お答え申し上げます。先ほど大臣が答弁申し上げたように、私ども労働基準監督署におきましては、許可基準に従いまして、実態を調査した上で、許可基準に該当する場合に許可を行っているところでございます。仮に、許可を受けた病院におきまして、許可基準、許可の基準に反するような形で通常の勤務と同様の勤務が行われた場合には、その勤務につきましては、通常の労働時間としてカウントして取り扱うということに取扱いがなるわけでございます。仮に、通常の労働時間として扱わずに、これがカウントされていないというような実態につきましては、先ほど大臣が申し上げたように、個別に労働基準監督署が調査を行いまして対応するということでございます。
○宮本(徹)委員 その対応が間違っているんじゃないですかね。そもそも許可の基準を満たしていないものに許可が出ているんじゃないのかという告発がたくさん寄せられているわけですよ。一回許可を出していて、そこは通常の労働だから、それは労働時間とその部分だけカウントしてくれ、そういう話じゃないと思うんですよね。ちゃんと基準を満たしていないものに出しているんじゃないかという告発がこれだけ新聞に出ている。にもかかわらず対応しなくて、体調を崩される、くも膜下出血になる、あるいは過労死される、こういう医師の方が出たら、厚生労働省として責任を果たしたと言えないですよ。これだけの指摘があるのに、何で調査もしようとしないんですか。理解できない。
○鈴木政府参考人 調査をしないのではなく、個別にいろいろ、そういった労働基準法に反するような事態が生じた場合には、申告あるいはいろいろな情報によりまして、個別に労働基準監督署において対応しているということでございます。
○宮本(徹)委員 新聞に書かれている話というのは、宿日直の許可基準を満たしていませんよね、どれもこれも。満たしていないものがこれだけたくさん告発されている、これ以外にもたくさん同様の事例がある。恐らく皆さんも知っているはずです。知っているにもかかわらず、見て見ぬふりをしていいのかというのがこの告発なんじゃないですか。見て見ぬふりしていいんですか。何のための医師の働き方改革なんですか。
○鈴木政府参考人 見て見ぬふりをしているというわけではございませんで、どこの医療機関がこういう実態にあるということが申告等でございましたら、個別に、労働基準監督署がそこに立ち入りまして、いろいろな調査を行っているというものでございます。
○宮本(徹)委員 個々人の告発はなかなかしにくいんですよ、現場のお医者さんは。それは、病院の運営にも影響があるかも分からない、自分の患者さんの手術が翌日入っていたら、そのこともあってなかなか言い出しにくいとか、いろいろな事情が現場の方々にある。だけれども、ちゃんと医師の働き方改革をやって、お医者さんの健康を守ろう、お医者さんの健康を守ることは患者さんの安全を守ることだということで、ちゃんと宿日直許可の制度というのは許可制としてつくられてきているはずなんですよね。それが甘々の運用をされている。これはまずいと思いますよ、はっきり言って。調査するとも言われない。ちなみに、これは多分、与党の議員の方々の方が詳しいんじゃないですか。ちなみに、最高裁判決では、かつて、大星ビル管理事件というもので、こういうのが出ているんですね。ビル管理会社の従業員が、仮眠時間中であっても、待機や電話への対応など、労働契約上の役務の提供が義務づけられていると評価されている場合には、労働からの解放が保障されているとは言えず、労働基準法三十二条の労働時間に当たる。これが最高裁の判決なわけです。ですから、これを当てはめれば、病院の医師の宿直業務というのは、仮眠時間中も必要に応じて患者の診断、治療を行うことが想定され、当然、これを拒むことはできません。入院患者の急変や救急患者の受診があったときに患者の命を守るために全力で対応する、これが宿直されているお医者さんの仕事になっているわけですね。ですから、労働からの解放が保障されているとは到底言えないわけですよ。ですから、私は、この最高裁判決の趣旨からいっても、救急病院などの急性期病院で働く医師に宿日直許可を認めるということはそもそも間違いだと思いますよ。断続的な労働なんだということを皆さんはおっしゃるわけだけれども、宿日直をやっているお医者さんは、患者さんが病院で急変が起きたら、それにずっと対応し続けるわけでしょう。翌日の次の担当の医師に引き継ぐまで、その仕事が途切れることはないわけですよ。断続的な労働とはとても言えないわけですよね。ですから、今行われている宿日直許可というのは、この間の最高裁の判決に照らしても到底認めるわけにはいかないものだと思いますが、この点、大臣、いかがですか。
○鈴木政府参考人 御指摘の最高裁判決につきましては、個別の事案におきまして、仮眠の時間も使用者の指揮命令下に置かれているため、労働時間に当たるという判決が下された例だと認識してございます。一方、私どもの医療機関におきます宿日直許可につきましては、こちらについては、その時間が労働時間であるという前提の下に、個別の医療機関の状況を踏まえつつ、通常の労働者と比較して労働の密度が低い。したがいまして、労働基準法三十二条の労働時間規制等を適用しなくても労働者の保護に欠けないと判断された場合に限りまして、監督署長の許可を条件に規定の適用を除外をするものでございまして、これは最高裁判決と矛盾するものとは考えているところではございません。
○宮本(徹)委員 この最高裁判決の趣旨からいったら、およそ、全く今の宿日直許可の基準というのはおかしいと思いますよ、さっきは、それはおかしくないようなことをおっしゃいましたけれども。労働の密度が低いとか高いとかじゃないんですね、ちゃんと指揮命令系統の下にあって、断続的な労働ではなく、ずっと継続的な任務を求められているという状況になっているわけですから。この点は、引き続き私は問題提起していきたいと思います。元々、医師の働き方改革をやろうという話になって、なぜこんな事態が、宿日直許可の乱発というのが起きる事態になったのかというのを考えると、勤務医の数が少な過ぎるわけですよ。だから、労働時間規制に合わせるために、今まで労働時間とカウントしていたものを、宿日直許可を出して労働時間とカウントしない、こういうことをやっているわけですよね。脱法的なやり方をやっているわけですよ。これはやはり、医師そのものを増やしていく、私は、そのことをやらないと、この問題はちゃんと解決しないと思いますよ。そのことを申し上げておきたいと思います。最後の問題について質問いたします。
~以下略~