2024年2月27日 衆院予算委員会第二分科会 事業者に削除義務を SNSなりすまし 宮本徹氏要求 総務相「課題整理」

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 「毎日シェア急騰株」―。昨年秋、SNSに日本共産党の宮本徹議員のなりすましが現れ、投資詐欺に勧誘する投稿を繰り返しました。宮本氏は27日の衆院予算委員会分科会で自らの経験を取り上げて、SNS上のなりすましに法律で削除義務を課すよう検討を迫りました。
 宮本氏はなりすましアカウントの削除をSNSの運営事業者に申請していますが、いまだ削除されていません。やむなく東京地裁にアカウントの削除を求める仮処分命令の申し立てを行ったといいます。宮本氏はこうしたなりすましについて「名誉毀損(きそん)にあたる事態だ」と指摘。松本剛明総務相も「違法の可能性がある。なりすまし行為に対してはなんらかの対応が必要だ」と応じました。
 政府は今通常国会に、SNS等の運営事業者に対して削除対応の迅速化や運用状況の透明化を求めるプロバイダ責任制限法改定案の提出を予定しています。宮本氏は「事業者に対しなりすましの削除義務を明記する必要がある」と指摘しました。
 フランスの法律では選挙投票日の3カ月前から虚偽情報が拡散されている場合、SNS運営事業者に偽アカウント対策の協力義務を負わせ、裁判官は運営事業者に対して送信防止措置を命ずることができます。
 宮本氏は「民主主義の根幹である選挙で、なりすましやフェイク動画について(日本でも)もっと早急に対応できる対策を法的に考える必要がある」と追及。松本総務相は「なりすましの対応を含めて課題の整理などをしっかりしていきたい」と答えました。

以上2024年2月29日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2024年2月27日 第213国会衆院予算委員会第二分科会第1号議事録≫

○宮路主査 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)分科員 日本共産党の宮本徹です。今日は、まず、SNSの成り済まし対策についてお伺いしたいと思います。資料をお配りしておりますけれども、最近、著名人、政治家、企業なんかの成り済ましのアカウントが相当問題になっております。私自身も、昨年秋に、全くそっくりの成り済ましのアカウントが作られました。その裏面を見ていただいたら分かるんですけれども、X、旧ツイッターでの私の成り済ましアカウントは、リプライ機能を使っていろいろな人に働きかけている、こういうことをやっているんですね。「毎日シェア急騰株、優良成長株、LINEに参加して受け取ることができます」ということで、この手のものは投資詐欺にも多くあると指摘されているわけですが、私が怪しげな投資の勧誘、投資詐欺を行っているかのように、これだけを見れば映る事態が生まれているわけですね。はっきり言って名誉毀損に当たる事態だと思います。大臣、この裏面に書いてありますので。まず大臣の基本的な認識をお伺いしたいと思いますけれども、SNS上の成り済ましの問題点について、どう認識されているでしょうか。
○松本国務大臣 成り済まし、どのように定義をするかという議論もあろうかというふうに思いますけれども、一般的には、先ほどもお話がありましたように、著名人など実在する他人の氏名などを使用するなどしてSNS上で投稿を行うことで、あたかもその他人が投稿を行っているかのような外観を作り出す行為だというふうに考えられるかと思っております。このような成り済ましの行為によって、成り済まされた方の社会的評価を下げる、名誉権や名誉感情、肖像権を侵害するなど違法の可能性があり、また、今、分科員がおっしゃったものもこれに該当するのかどうかは、私どもは個別の認定はいたしかねるところではありますけれども、成り済まし行為によって投稿された情報が本人によるものと誤解をされた場合、閲覧者に財産上の被害をもたらすこともあり得るということでありまして、成り済まし行為に対しては対応が何らか必要ではないか、適切にやらなければいけないというふうに考えております。この国会で、成り済ましを含めた違法、有害情報への対応について、総務省で、SNS等のプラットフォーム事業者に対し、利用規約などを踏まえた適正な対応を求めるとともに、当該プラットフォーム事業者に対して削除対応の迅速化や運用状況の透明化を求めるプロバイダー責任制限法の改正案の提出を予定しているところでございます。既に申し上げておりますが、今回の改正案におきまして、これまで当該法案は、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律となっておりましたけれども、改めて、題名におきましても特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関するということで、権利侵害の問題が非常に大きな問題であるという認識の下に、改めて制度をお願いしていこうかというふうに思っております。
○宮本(徹)分科員 権利侵害への対応というのは本当に求められるわけですけれども、ぞっとするのは、民主主義の根幹である選挙において、SNS上でこうした成り済ましや、あるいは政治家のフェイク動画の拡散が行われるケースなわけですね。海外を見ていても、SNS等を使って、他国の選挙の干渉も起きています。今、AIがありますので、精巧なフェイク動画も簡単にできる状況になっているわけですね。とりわけ、選挙における成り済ましアカウントやフェイク動画による虚偽の発信、拡散については早急な対策が必要だと思いますが、いかがでしょうか。
○松本国務大臣 おっしゃったように、表現の自由は民主主義の根幹として極めて大切なものであると考えられるところでありますが、表現の自由のいわば基盤となる情報の信頼性そのものにも問題がある意味では出てくるという、この偽・誤情報問題ということには、我々も様々考えていかなければいけないということであろうかというふうに思っております。現行制度においては、成り済ましや公職の候補者に関する虚偽の事項を発信、拡散することについて、公職選挙法の虚偽事項公表罪や氏名等の虚偽表示罪などの罰則はございまして、これに該当するかどうかは、具体の事実に即して、捜査機関、最終的に司法によって判断をされるものではございます。平成二十五年、議員立法によりインターネット選挙運動が解禁された際に、併せて、先ほど申しましたプロバイダー責任制限法が改正されて、プロバイダーが候補者などからの申出を受けて情報を削除する場合において、プロバイダーの損害賠償責任が制限されるために必要な発信者への情報の削除に係る確認期間が一週間から二日に短縮されているところでございます。また、偽・誤情報への対応ということについては、技術革新のスピードが速いため、偽・誤情報を判別するための対策技術の開発、実証を行うなど、技術面からの対策も進めてきているところでございます。さらに、デジタルプラットフォーム事業者の対応や、広く、多様な方々にリテラシーの向上なども必要になってくると思っており、様々な政策を組み合わせることで対応しているところでございます。
○宮本(徹)分科員 問題は、この私の成り済ましアカウントですけれども、これはいまだに消えていないんですね。残り続けているということなんです。私も、運営事業者に対して、これは成り済ましだということを繰り返し申請しておりますけれども、削除されないわけですね。やむなく、先日、アカウントを削除するように東京地裁に仮処分命令の申立てをしました。当然、これはお金もかかる。時間もかかる。一方で、ほかの成り済ましアカウント、例えば財務官の成り済ましアカウントなんて、申請したらその日に削除される。大変不透明な対応が今起きているのではないかというふうに思うんですけれども、この点、いかがですかね。
○今川政府参考人 お答え申し上げます。一般に、SNS事業者による投稿の削除やアカウント停止などの対応につきまして、その基準が曖昧であるとともに、運用状況が不透明であるといった課題が指摘されているところでございます。こうした課題を受けまして、総務省の有識者会議で御議論いただきまして、その結果、SNS事業者による投稿の削除やアカウント停止については、法制上の手当ても含めて、その基準や運用状況の透明化を図ることが必要との報告書をいただいております。その報告書を踏まえまして、先ほど松本大臣からもございましたように、今国会において、削除などの運用状況の透明化などを求めるプロバイダー責任制限法の改正案の提出を予定しているところでございます。
○宮本(徹)分科員 これはXの場合ですけれども、ちょっとお伺いしたいんですけれども、成り済ましアカウントは直近どれぐらい報告があって、どれぐらいのアカウントの削除を行ったのか。どのような審査体制で行っているのか。X社に直近の運用状況を聞き取って答えてほしいということを通告しておりますけれども、どうでしたか。
○今川政府参考人 お答え申し上げます。御指摘のX社に問い合わせましたところ、審査体制につきましては、成り済ましに関する基準を策定した上で、日本語での専用報告機能を設け、第三者を含め、誰でも成り済ましを報告できるようになっており、二十四時間三百六十五日、日本語対応可能なチームが報告に対応している、そういった旨の回答がございました。また、成り済ましアカウントの報告数と削除数につきましては、現時点では国内の数字で共有できるものがない旨の回答がございました。X社はこのような状況でございますが、各SNS事業者による削除などの運用状況は必ずしも透明ではないものと考えられるため、この点、先ほど申し上げたとおりでございますが、総務省の有識者会議で御議論いただきまして、その結果、SNS事業者による投稿の削除やアカウント停止については、その基準や運用状況の透明化を図ることが必要との報告書をいただいているところでございます。
○宮本(徹)分科員 全く、どれぐらい成り済ましの報告があって、そのうちどれだけ対応したかも分からないという大変不透明な状況で、だからこそ法改正するんだというお話なんですけれども、果たして、私自身がこういう被害に遭って、それが対応されないという下で、今度の法改正の中身で必ずこうしたものへの対応がなされるのか、そういう懸念もあるわけですよね。私は、プラットフォーマーに対して、成り済ましアカウントなど、成り済ましについては削除義務を明記する必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○今川政府参考人 お答え申し上げます。総務省の有識者会議におきましては、削除対応の迅速化や運用状況の透明化を図ることが必要との報告書をいただいております。また、御指摘の成り済ましも含めまして、削除義務を課すことにつきましては、有識者会議の報告書においては、個別の情報について罰則つきの削除義務を課すことは、表現の自由を萎縮させることから慎重であるべきと取りまとめられております。この総務省の有識者会議の報告書を踏まえまして、先ほどから申し上げているとおり、今国会において法案の提出を予定しているところでございます。なお、報告書では、運用状況の透明化につきまして、削除基準の策定、公表が適当である旨も盛り込まれておりまして、プラットフォーム事業者においては、自ら定めた削除基準に基づいて、成り済ましも含めて適切な対応を促していく仕組みが必要ではないかと考えております。
○宮本(徹)分科員 表現の自由というのは非常に大事な問題だと私は思うんですよね。ですから、権利侵害情報といっても、例えば、これが誹謗中傷に当たるかどうかというのはなかなか判断が難しいケースもあると思うんですね。そういう場合にプラットフォーム事業者が過度に削除してしまうという危険があるというのは、それ自体はその懸念はあると思うんですけれども。ただ、成り済ましというのは、そういうケースとは全く違うと思うんですよ。成り済ましというのは本人の意思に反して成り済まされているわけですから、これを削除したからといって表現の自由の侵害には全く当たらないじゃないかと思うんですけれども、これは分けて議論しなきゃいけないんじゃないかと思いますけれども、その点は。
○今川政府参考人 御指摘の点につきましても、今後、国会へ改正法案の提出をさせていただきまして、詳細な制度整備、それから制度の運用などを進めていくに当たりまして、参考とさせていただきたいと思っております。
○宮本(徹)分科員 運用じゃなくて、まだ法案を出していないわけですから、是非そこは御検討いただきたいというふうに思います。加えて、今回の検討されている法案、報道を見ますと、いろいろな問題、通報があった場合は一週間以内で返事を出すということになりそうだということなんですけれども、選挙ということを考えた場合に、成り済ましあるいはフェイク動画というのが一週間も放置されるというのは許されないと思うんですよね。私たちのこの国は、選挙というのは、選挙の本番は大変短いわけですけれども、フランスの法律なんかを見ますと、投票日三か月前から対応しているわけですよね、三か月前から。それぐらいからは当然選挙にも大きな影響を与える期間だということになると思うんですけれども、フランスの法律では、投票日三か月前から、こうした虚偽情報が拡散されている場合、その偽アカウントに対しての対策を、プラットフォーム事業者に協力義務を負わせている。そして、虚偽情報が拡散されている場合は、検察官、候補者等利害関係者から求めを受けた裁判官は、プラットフォーム事業者に対して送信防止措置を命ずることができる。裁判官は、申立てから四十八時間以内に停止に関する判断を行わなければならない。ですから、かなり強力な体制で対策を取れるようになっているわけですね。もちろん、これは、先ほども言いましたけれども、権利侵害情報といってもいろいろありますからね。幅広くやったら表現の自由との関係の問題というのは私も出てくると思っていますけれども、少なくとも、成り済ましだとか政治家の偽動画、最近も岸田総理の偽動画というのが出回っているというのがありましたけれども、こういうのがそれこそ選挙の三か月前ぐらいの間からいろいろな形でやられる可能性も否定できないわけですね。しかも、外国勢力によってやられる可能性だってあり得るというのが今の現状だと思うんですね。ですから、こういうものがやはり放置されることがあっては絶対ならないと思いますので、これは本当に、もっと早急に対応できる対策というのを法的にも考える必要があるんじゃないかと思うんですけれども、いかがですかね。
○松本国務大臣 おっしゃるとおり、民主主義の基盤を成す選挙は、選挙人の自由に表明する意思によって公明かつ適正に行われることが必要である中で、選挙運動期間中の誹謗中傷に係る情報の流通によってこうした点が毀損されるおそれがあることは大変大きな課題であるかというふうに思っております。先ほど申し上げたように、個別の事案が現行の公職選挙法の規定に抵触することはあり得るところでございます。その上で、しかし、この成り済まし、冒頭でも申し上げましたように、定義をどうするかといったことも含めて、しかし、これも、先生から今御提示いただいたもの、確かに、アルファベットのiの字が違うんですね。(宮本(徹)分科員「iをlにしているだけなんですよね」と呼ぶ)これ、lなんですね。(宮本(徹)分科員「上がiで下がlなんですね。そこが違います」と呼ぶ)なるほど。しかし、ほとんど区別がつかないかのようにも見えるものであることも確かでありますし、成り済ましにどのように対応するかということも含めて、何らかの課題の整理などをしっかりしていきたいと思っております。今回、国会に法案を提出させていただくと申しましたけれども、情報通信の環境は、これは技術も、使われる方々の環境も非常に速いスピードで今変わってきておりますので、私たちもたゆまず課題の把握には努めていきたいと思っております。
○宮本(徹)分科員 これは、本当に、与野党を超えて、次の選挙までに考えなきゃいけない問題じゃないかということを申し上げておきたいと思います。そして、私のケースでいいますと、このX社がなぜ成り済ましアカウントを削除しないのか、理由も分からないわけですね。申請フォームから送って、不明な点があれば連絡してほしいと私の連絡先まで明記しても、返事は返ってこない。ちなみに、X社というのは、私はツイッター時代にイベントにまで出て協力したことがあるのに、そういうつれない仕打ちを受けているわけでございます。ですから、プラットフォーム事業者に対して、今回、ちゃんと申請窓口を丁寧に設けようというのは法改正なんかでもやられようとしているわけですけれども、今の申請のフォームが少々丁寧になっただけでは進まないケースもあると思うんですね。だから、メールだとか、場合によっては電話だとかで問合せに個別に応じる窓口も義務づける必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○今川政府参考人 お答え申し上げます。御指摘のとおり、一般に、SNS事業者による権利侵害情報の削除について、削除の申請窓口や申請フォームが分かりにくい、また、受け付けた旨や判断結果について申請者に必ずしも通知されていないといった課題が指摘されているところです。こうした課題を受けまして、総務省の有識者会議では、議論の結果、プラットフォーム事業者に対し、申請窓口の明示や、受付通知、判断結果及びその理由の通知を求めることが必要との報告書をいただいております。この報告書を踏まえまして、今国会において、窓口や手続の整備なども含めた削除対応の迅速化を求めるプロバイダー責任制限法の改正案の提出を予定しているところでございます。
○宮本(徹)分科員 ですから、それは多分、この法律の範囲だと、極めて形式的な、何個かのタイプの通知が返ってくるだけで、なぜなんだろうというのは、本当になぜこれが削除されないのかという、やり取りが進んでいかない状況が考えられるんですよ。そこをどうするのかという対策が必要だと思います。加えて、今回通報して分かったんですけれども、成り済ましの通報をする際に、本人確認として、公的機関が発行した顔写真のついた身分証明書の画像が求められるんですね。ただ、公的機関が発行した写真つきの身分証明書を持たない国民というのもいらっしゃるわけですよね。マイナンバーカードは持たない方もいらっしゃいますし、運転免許証を持たない方もいらっしゃるわけです。さらに、私なんかでいえば、実は、宮本徹というのは旧姓なんですね。旧姓で私は活動しております。戸籍は妻の名字になっているわけですね。ただ、私の場合は政治家ですから、衆議院ですから、ちゃんと衆議院という公的機関が発行した身分証明書はありますから、顔写真つきの身分証明書は私はあるわけですけれども。ただ、旧姓で活動している人の場合は、確かに旧姓併記、マイナンバーカードとかはしていますけれども、上のところは旧姓と書いているわけではないわけですね。運転免許証もそうですね。裏面ですか、旧姓なんかの併記というのはなっているわけですよね。そうした顔写真つきの身分証明書となるものを持たない方だとか、あるいは旧姓を使ったアカウントで活動している方の成り済まし通報なんかにも必ず対応できる仕組みなんかをプラットフォーム事業者には設けさせる必要があるんじゃないかと思いますし、その際に必要な書類なんかも分かりやすく明示を求める必要があると思うんですけれども、いかがでしょうか。
○今川政府参考人 お答え申し上げます。御指摘のとおり、成り済まし被害に係る削除対応の申請を受け付ける際に、本人からの申請であることを確認するため、SNS事業者によって、本人確認書類の提示を求める場合があるということは承知をしております。その上で、一般論として言えば、SNS事業者には、利用者などの利益に資するため、削除などの対応の透明性を確保するとともに、削除などの申請に当たっては、できるだけ多様な利用者の状況に応じて削除申請に柔軟に対応していただきたいと考えております。繰り返し申し上げて恐縮でございますが、今国会におきまして、削除対応の迅速化などを求める法案の提出を予定しておりますが、その中で窓口や手続の整備といったことも課題になってくると思っておりまして、そういった御指摘の課題についてもそういった中で対応がなされていくものと考えております。
○宮本(徹)分科員 多様な利用者にしっかり対応できる、法律でそこまで書くのかどうかはありますけれども、その指針だとかガイドラインだとかでしっかり求めていっていただきたいというふうに思います。加えまして、これは先に答弁が出ちゃっている感じもするんですけれども、SNS上の成り済ましというのを犯罪としている国もあるんですね。国会図書館に調べていただきますと、国としては、カナダだとかデンマークは、これはSNS上の成り済ましを犯罪としております。アメリカでは八つの州で犯罪とされている。あるいは、ルーマニアの高等裁判所は、偽アカウントの作成を、デジタル詐欺の要件を満たすということで犯罪だ、こういう判決も下しているわけですね。ですから、成り済ましの抑止のためにも、SNS上の成り済ましを法律で禁止していく、これも私は検討していくべきだということを申し上げておきたいと思います。ただ、これは初めに答弁がもうあったと思いますので、答弁は求めません。その上で、インターネット上の誹謗中傷についてもお伺いしたいと思います。法務省の人権擁護機関による削除要請と削除対応率という資料を拝見しますと、サイトによっての対応率が大きなアンバランスがあります。一〇〇%対応しているサイトがある一方、ツイッター、現X社は二五・一七%ということで、法務省の方から要請しても、これは人権侵犯だということで要請しても、四分の一しか削除されていないというのがX社の対応だということなんですね。検討されている法案では、削除指針の公表だとか、投稿の削除等に関する判断基準や手続の記載などが検討されているようですけれども、それで削除が進むのか。法改正は検討されているわけですけれども、少なくとも、法務省の人権擁護局が削除要請の判断基準としているものがサイト運営事業者としっかり共有されていく、こういう手だてが必要だと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○今川政府参考人 お答え申し上げます。総務省の有識者会議の報告書におきましては、運用状況の透明化について、削除基準の策定、公表や運用状況の公表などが必要とされておりまして、制度整備がなされた場合には、各事業者は自ら削除基準を策定、公表するといったことが想定されるところでございます。事業者による削除基準の策定に当たっては、分科員御指摘の、法務省の人権擁護機関が削除要請において参照している商事法務研究会の有識者会議における取りまとめなども活用されるように、検討してまいりたいと考えております。
○宮本(徹)分科員 法務省は人権擁護のためにされているわけですから、そこが今インターネットの相談に乗って、やっているわけですから、やはりそこで、こういうのは問題だというのをしっかり、どこのサイトでも同じように削除されるような手だてをしっかり取っていただきたいと思います。続いて、開示請求についてもお伺いしたいと思います。アカウントや投稿の削除というのは、事業者が対応しない場合、裁判手続というのはあるわけですね。これは、損害賠償請求する場合も裁判手続を取るわけですけれども、被害者にとっては、弁護士費用もかかりますし、時間もかかるというものになっています。発信者情報開示請求も、私もそっちもやろうかなと一瞬思ったんですけれども、そちらも別にお金がかかるということで、しかも、ちょっと時間がたっていたものですから、そっちはやらなかったんですけれども、発信者情報開示請求について、国民が更に簡便にできるようにできないのかなという思いがあるんですね。前回、法改正されて若干簡便にはなっているわけですけれども、ただ、更に簡便にするように、五年を待たずに法改正を検討すべきではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
○今川政府参考人 お答え申し上げます。御指摘のとおり、令和三年のプロバイダー責任制限法改正によりまして、迅速な発信者情報開示を可能とする簡易な裁判手続を創設したところでございます。総務省といたしましては、まずは、この改正法による発信者情報開示制度の運用状況について、その効果を注視してまいりたいと考えているところでございます。なお、裁判手続による削除は、被害者にとって金銭的、時間的に負担があるということで利用の障壁となっている部分もあるということでございますので、今般、プラットフォーム事業者に対して一定の対応、自らの対応を促すような法改正案の提出を予定しているということでございます。
○宮本(徹)分科員 前回の法改正の状況をまずは見るということなんですけれども、本当にお金がかかるというのは大変なことですので、当人でできる、弁護士さんだとかに頼らずにできるというぐらいに簡便に是非していただきたいと思いますし、あと、取りあえず、今でも本人でも当然できるわけですけれども、こういうふうにやればいいですよというのは示されているんですけれども、そういうものについては、もっと丁寧に、請求のひな形だとか参考例なんかはもっと丁寧なものを示すというのも是非やっていただきたいなというふうに思います。それから、もう一点ですけれども、インターネット上での誹謗中傷の抑止力として是非やってほしいことがあるんですけれども、発信者情報開示請求が認められたケース、裁判で名誉毀損で賠償命令が出ているケース、こうした例を、可能ならば賠償金額も加えて、こういう判決が出ているんですよということで、政府として広く周知をしていっていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○松本国務大臣 おっしゃったように、発信者情報開示の請求も含めて様々な手続を広く周知することも大変大切だというふうに思いますが、今お話があったことも一つの課題として御提起をいただいたかというふうに思っております。私ども総務省としては、誹謗中傷対策としては、誹謗中傷等を書き込まないように利用者に働きかけていく継続的な取組も大切だと考えているところでございまして、例えば、総務省の協力によって、プロバイダー責任制限法のガイドラインに係る関係団体が、名誉毀損を理由に発信者情報開示が認められた裁判例や、名誉毀損、プライバシー侵害を理由に損害賠償を認めた裁判例を集約して公開しているところでございます。こうした具体的な事例を分かりやすく周知することは、誹謗中傷を抑止するための対策として有効であると私も考えており、更に連携を深めてまいりたいと考えております。
○宮本(徹)分科員 そういう団体がやっているものと連携を深めるということですけれども、是非、政府としても周知していっていただけたらなというふうに思います。ちょうど質疑時間が終了というのが来ましたので、これで私の質問を終わりたいと思いますけれども、法改正がありますけれども、それだけでは対応し切れない問題もあるんだということも申し上げましたので、しっかりと対応を、さらに、具体化をしていただきたいということを申し上げまして、質問とさせていただきます。
○宮路主査 これにて宮本徹君の質疑は終了いたしました