2024年3月2日 衆院予算委員会 麻生派裏金報道受け「改めて徹底調査を」/教育無償化に悪影響 「授業料後払い」を批判

配付資料 大学授業料の値上げ(初年度納入額)
配付資料 高等教育機関に対する政府支出の対GDP比(2020年)

以下2024年3月4日付赤旗日刊紙より抜粋

 日本共産党の宮本徹議員は2日の衆院予算委員会で、自民党派閥のパーティー収入をめぐる裏金事件で新たに麻生派で元万博担当相の井上信治衆院議員が派閥の政治資金パーティーのキックバックを政治資金収支報告書に記載せず裏金にしていたとスクープした「赤旗」日曜版報道(3日付)を示し、自民党全議員を対象に改めて徹底調査するよう求めました。
 井上氏は2018年の収支報告書に派閥からのキックバック458万円を記載していませんでしたが、18年以降の5年間についての自民党の「全議員調査」で収支報告書への「不記載」等があったのは、安倍派と二階派の議員だけで、井上氏の名はありません。
 宮本氏は「井上議員は『全議員調査』にうその報告をしていたことになる」と指摘し、麻生派も含む徹底調査を要求。岸田文雄首相は「党のアンケートとの食い違いについては、党として確認する」と応じました。
 宮本氏は、麻生派では18年以降、派閥から所属議員への寄付が毎年収支報告書に記載されるようになったが、17年以前はそのような記載がないと指摘。「17年以前に麻生派で裏金づくりが行われていた疑念がわく」と強調し、自民党として18年以降の5年間に限定せず、過去にさかのぼって調査するよう迫りました。
 岸田首相は、資料が存在しないなどとして「5年は合理的だ」と言い逃れを図りました。
 宮本氏は「真相究明に後ろ向きなのは、これ以上事態が明るみに出るのを避けようとしているとしか思えない」と批判しました。

 日本共産党の宮本徹議員は2日の衆院予算委員会で、岸田政権が打ち出す「授業料の後払い制度」の導入が授業料減免制度や教育無償化の流れに悪影響を与えかねないと指摘し、大学までの学費無償化にこそ全力で取り組むべきだと求めました。
 「授業料の後払い制度」は、在学中は授業料を徴収せず卒業後の所得に応じた納付を可能とするもの。宮本氏は、同制度が高い学費を借金にして背負わせる新たなローンだと告発し、国際人権規約が定める高等教育の漸進的無償化を進めるものとは呼べないと批判しました。
 「授業料後払い制度」のモデルはオーストラリアの「HECS」制度です。宮本氏は、高等教育授業料を卒業後に徴収する同制度を導入している同国には低所得者を対象とした大学授業料減免制度がないと指摘し、「授業料後払い制度」導入が前払いの授業料減免制度を拡大しない理由となり「授業料減免制度が後退するのではないか」とただしました。
 同制度と授業料減免を「両立させながら取り組む」と述べる岸田首相に対し、宮本氏は、日本の高等教育への公的財政支出(国内総生産比)が経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の半分以下である一方、私費負担はOECD平均の倍だと指摘し、高等教育無償化を求めました。

≪2024年3月2日 第213国会衆院予算委員会第16号 集中審議議事録≫

○小野寺委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。裏金事件、本当に総理の姿勢は全容解明に後ろ向きと言わなければなりません。私たち、麻生派も含めて裏金事件の疑惑があるんじゃないかと指摘をしてまいりました。自民党は全議員のアンケート調査を行って、しかし、答えた方は、安倍派と二階派の方々だけが不記載とお答えになったわけです。ところが、私どもの機関紙のしんぶん赤旗日曜版の最新号で報じておりますけれども、麻生派の井上信治議員がキックバック分を不記載にしていたのではないのか、このことを報じさせていただいております。私も確認しましたけれども、二〇一八年の麻生派の志公会の政治資金収支報告書を見ますと、六月七日に四百五十八万円出ておりますが、その年の井上信治議員の信政会の収支報告書には、それに該当する寄附が志公会からは記載をされていないんですね。井上信治議員は、自民党のアンケート調査に対してうその報告をしていたということになるんじゃないですか。これは、麻生派の議員も含めて聞き取り調査をしっかりとやるべきじゃないですか。総理、いかがですか。
○岸田内閣総理大臣 派閥から議員の政治団体へのお金のやり取りの中で、派閥の報告と議員側の報告が食い違うという御指摘かと思いますが、それについては、本人がそれを承知していたか等を始め、確認をしなければならないことであると思います。本人がこれを説明する、このことは重要であると考えます。
○宮本(徹)委員 いえいえいえ、自民党の調査としてやったわけでしょう。不記載が過去五年間についてあるんですか、ないんですかと自民党が調査したわけですよ。その調査と食い違っているんですから、それは、なぜ自民党の調査と違う事態になっているのか、党として調べる責任があるじゃないですか。
○岸田内閣総理大臣 党のアンケートとの食い違いについては、党として確認をいたします。
○宮本(徹)委員 党として確認するということですから、しっかり調べていただきたいんですね。その上で、この井上信治議員だけなのかという問題があるわけですよね。ほかの方々はうそをついていないのか。もっと言えば、私は、なぜ二〇一八年から二〇二二年の五年間だけなのかということを、本予算案の審議の一番初めの質問で岸田総理に問いたださせていただきました。五年より以前、麻生派で裏金づくりが行われていたんじゃないですか。不思議なんですよね。二〇一八年と二〇一七年以前を見ますと、二〇一七年は麻生派は為公会だったわけですけれども、二〇一七年以前の為公会の収支報告書にはキックバックと見られる記載は見当たらないんです。ところが、二〇一八年以降の収支報告書を見ると、キックバック分、派閥から所属議員への寄附が突如毎年書かれるようになるわけですよね。キックバック分を裏金化、二〇一七年以前、為公会でしていたのではないのか、この収支報告書を見れば見るほど、そういう疑念が湧いてくるわけですよ。これはちょっと麻生派も含めて徹底的に調べる必要があるんじゃないですか。
○岸田内閣総理大臣 調査の対象を五年としていることについては、資料の保存状況、そして刑事責任との関係ということで五年で線を引き確認を行った、こうした次第であります。それ以前の部分については、多くはもう資料が存在しないなど確認が難しいという実情があります。その中で、五年以降の実態について把握に努めた次第であります。
○宮本(徹)委員 これだけ疑念が湧く材料はたくさんあるわけですよ。総理は、刑事責任以外にも政治的、道義的責任はあるんだということをおっしゃっていましたよね。一人一人の政治家には、刑事責任が問われなかった方も含めて、政治的、道義的責任があるんだと。だったら、五年に限らずに、刑事責任は問われないかも分からないけれども、政治的、道義的責任をしっかりそれぞれの議員が果たせるように、自民党として過去に遡って調査すべきじゃありませんか。
○岸田内閣総理大臣 資料等を通じて確認できる、こういった現状を考えた場合に五年という線を引いて全党的に調査、アンケートを行った、こういった次第であります。実態を把握できる、資料等を通じて把握できる、そうした限界等を考えましても、五年というのは一つ合理的であると考えます。
○宮本(徹)委員 安倍派の裏金づくりについて、経緯を遡って聞くことは一定の範囲ではやったわけですよ。なぜ麻生派についてはそれができないんですか。
○岸田内閣総理大臣 まずアンケートを行った上で、収支報告書の修正を行う、行ったことを申し出た議員に対して聞き取り調査を行ったということであります。この結果として、清和研、そして志帥会の議員が中心になったということであります。
○宮本(徹)委員 二〇一八年の政治資金収支報告書はもう直せないんですよね。ですから、直した人だけ対象ということをしたら、これはもうずっと未来にわたって無罪放免ということになりますよ。本当に私、総理が真相究明に後ろ向きなのは、これ以上事態が明るみに出ることを避けようとしている、こうとしか思えないんですよ。森元首相にも一切聞こうとしないじゃないですか。何でかたくなに拒否するんですか。調べられることを調べようとしない。そういう姿勢では、国民の政治への信頼を回復することはできないですよ。そこをしっかり考えていただきたいということを申し上げまして、今日は私のライフワークであります教育無償化について質問させていただきたいと思います。私の卒業論文のテーマです。大学授業料も大変値上げラッシュということになっております。初年度納付金、早稲田大学は、法学部で百十七万円から百二十五万円へ八万円の値上げ、理工学部は百七十万九千円から百八十四万七千円へ、実に十三万八千円もの値上げです。慶応や上智でも二年連続の値上げ、国立の東京農工大学でも十万円以上の値上げ。先日お話を聞いた学生さんは、学費等のためにアルバイトを月百二十時間しているという話でございました。また、東大生にもちょっと聞きましたけれども、本当に、アルバイトのため、履修したい授業を諦めなきゃいけない、教科書が買えない、奨学金とバイトを頼りに生活しているので大学院進学をちゅうちょする、こういうお話をたくさん聞きました。岸田さんは、二〇二五年から、子供を三人以上扶養しているときの大学授業料の無償化と打ち出しましたけれども、一人、二人でも大変なんですね。そして、多子世帯だけの無償化というのは国民の中でも私は分断を生むと思います。教育を受けることは憲法で保障された権利です。大体、多額の授業料を本人とその家族に課すこと自体がおかしいんですよ。全員の授業料の無償化に踏み出すべきじゃありませんか。
○岸田内閣総理大臣 高等教育費の負担軽減については、これまでも、低所得世帯を対象に授業料等の減免と給付型奨学金の支給、これを併せて行ってきたところであります。そして、それに加えて、子育てや教育費により理想の子供の数を持てない状況は、三人以上を理想とする夫婦で最も顕著であることから、この現状を打破していく必要があると考え、令和六年度から給付型奨学金等の多子世帯及び理工農系の中間層への拡大を行うとともに、令和七年度からは、子供三人以上を扶養している場合、国が定めた一定の額まで大学等の授業料、入学料を無償とする、こうした対応を行うことを決めているところであります。そして、その上で、引き続き、高等教育の負担軽減については着実に進めてまいりたいと考えます。
○宮本(徹)委員 軍事費にどんどんどんどん割いているお金があったら、本当に子供の未来のために教育の無償化こそ優先すべきだと申し上げたいと思います。そして、私が指摘したいのは、こども未来戦略を見ていますと、子供を三人以上扶養している世帯以外の対策は、岸田政権が打ち出したのは、授業料の後払い制度の学部段階への本格導入、これを検討すると書いているんですよね。授業料後払い制度というのはローン、借金にするということです。今でも返済額が所得に連動する貸与型の奨学金がありますけれども、これと本質的には変わらないものなんですね。お伺いしたいんですけれども、この後払い制度と銘打った制度を本格導入するということは、私たちの国が批准している国際人権規約で言う高等教育の漸進的無償化を進めるものと言えますか。
○岸田内閣総理大臣 御指摘の授業料後払い制度については、在学中は授業料を徴収せず、卒業後の所得に応じて納付を可能とするという観点から実施するものであり、まずは大学院修士段階に導入し、学部段階への本格導入に向けた更なる検討を進める、このようにしているところであります。そして、その一方で、高等教育の無償化については、これまでも、先ほど申し上げたように、低所得世帯を対象として実施をし、さらに、令和六年度、七年度、無償化の対象を拡大する、こういった取組を進めており、今後とも、御指摘の国際人権規約で定められているとおり、無償教育に漸進的に取り組んでまいる所存であります。それぞれ進めてまいります。(発言する者あり)
○小野寺委員長 御静粛にお願いします。
○宮本(徹)委員 ですから、この後払い制度そのものは高等教育の漸進的無償化の政策とは呼べないということでいいわけですよね。
○岸田内閣総理大臣 現実の、授業料等で困難を感じている学生に対して支援を行うために共に重要な政策であると認識をいたします。
○宮本(徹)委員 聞いたことにお答えにならないんですけれども、到底、高等教育の無償化政策とは呼べないものですよ、後払い制度というのは。後払い制度というのは、モデルとなった国があるわけですね。オーストラリアのHECSでございます。問題は、私、この後払い制度を本格導入した場合、これによって、授業料減免あるいは教育無償化の流れに対して悪影響を与えないのかということがあると思うんですね。オーストラリアでは、無償だった授業料を有償化する際に、授業料負担の緩和策として、このHECSという後払い制度がつくられました。ところが、文科省にお伺いしましたけれども、オーストラリアでは、国として低所得者対象に大学の授業料を減免する制度はないというんですね。総理、オーストラリアでは、国として低所得者対象の大学の授業料減免制度はない、理由を御存じですか。
○岸田内閣総理大臣 御指摘のオーストラリアにおける国の授業料減免制度については、文部科学省において調べたところ、そのような制度は確認できておらず、その理由については、承知していない、確認できていないと聞いております。なお、各大学の判断によって授業料減免を実施している、こういった場合は存在すると聞いております。
○宮本(徹)委員 国として低所得者対象の減免制度というのはないわけですね。オーストラリアでは、一括前払いで授業料が割引になる制度というのが以前はあったんですけれども、二〇一七年に、公平性の観点からこれはなくなったんですね。つまり、学部学生に後払い制度が本格導入されて、大学の授業料というのは学んだ本人が負担するものだ、こういうことになっていくと、これは公平性の観点から、前払いで払う方の負担を軽減する授業料減免制度の根拠が揺らいでいくことが起きるのではないか、私はこれを大変懸念しているんですね。私は総理にお伺いしたいんですけれども、この後払い制度を学部段階まで本当に本格導入していく、こういうことをしたら、これ以上授業料減免制度を拡大しない理由になっていくのではないのか、さらには、今ある授業料減免制度が後退していくことにならないのか、その点、お伺いしたいと思います。
○岸田内閣総理大臣 授業料後払い制度については、まずは令和六年度から大学院修士段階に導入し、本格導入に向けては、その活用状況、教育費負担の在り方、制度の国民的な理解、受入れ可能性を考慮した上で、更なる検討を進めて、今後の各般の議論を踏まえて速やかに結論を得てまいる、これが方針であります。そして、高等教育の無償化については、こども未来戦略、加速化プランに基づいて、安定的な財源を確保しつつ、先ほど申し上げたように、令和六年度、令和七年度の授業料等減免の対象拡大、これを着実に進めてまいります。これは両方とも、現実に対して大切な取組であると考えています。どちらかを優先させるとか、置き換わるとか、そういったものではないと認識をしております。両立させながら取組を進めてまいります。
○宮本(徹)委員 本当に後払い制度を導入していったら、大変、世論との関係でもいろいろな複雑な問題が私は起きかねない、ここは本当に皆さんもしっかりその懸念は共有していただきたいというふうに思います。質問時間が来ましたのでこれで終わりますけれども、資料の裏面に載せておりますけれども、高等教育機関に対する政府支出の対GDP比、OECDの平均の、日本は半分なんですよね。その一方で、私費負担はOECD平均の倍ですよ。それが今の日本の状況なんですよ。しっかりと、高等教育無償化、全員無償化こそ全力で取り組むべきだということを申し上げまして、質問を終わります。
○小野寺委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。これをもちまして集中審議は終了いたしました。