2024年3月22日 衆院厚生労働委員会 家賃補助制度創設を
配付資料 厚生労働省ホームページより宮本徹事務所作成
配付資料 朝日新聞2024年3月8日
配付資料 財務省提出資料、国土交通省提出資料、厚生労働省ホームページより宮本徹事務所作成
配付資料 セーフティネット住宅の家賃低廉化支援について
配付資料 公営住宅(全国、都道府県)の募集戸数、応募者数、応募倍率
日本共産党の宮本徹議員は22日の衆院厚生労働委員会で、生活困窮者支援法改定案には盛り込まれていない家賃補助制度の創設を求めました。
持ち家取得を支援する住宅ローン減税による所得税の減収見込額は2023年度予算ベースで約8000億円、適用見込み対象者は約540万人にのぼります。1人当たり年15万円弱、13年間で200万円近い支援になっています。一方、家賃を最大4万円引き下げる国土交通省の家賃低廉化支援の対象は、全国の22年度実績で457戸、国費執行額は7280万円にすぎず、厚労省の住居確保給付金も、22年度支給実績で約3万8千件、支給済み額は77・2億円にとどまっています。
宮本氏は、家賃低廉化支援の執行額と住居確保給付金の支給額は「それぞれ住宅ローン減税の1万分の1、100分の1にすぎない」と指摘し、「持ち家で暮らす人への支援に比べ、民間賃貸住宅で暮らす人への支援が弱いという認識はあるか。家賃補助制度が必要だ」と主張。武見敬三厚労相は「国交省とも連携し、さまざまな支援を講じていきたい」と答えただけで、家賃補助の具体策は示しませんでした。
同案は、家賃が安い住居への転居費用の給付を設けますが、宮本氏は、高齢者の転居にはリスクがあり、住み慣れたコミュニティーで暮らせる支援こそ必要だと指摘。武見氏は「体調を崩したり、環境や人間関係の変化によって認知機能や意欲が低下するおそれがある」と認めました。
以上2024年3月27日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2024年3月22日 第213国会衆院厚生労働委員会第4号議事録≫
○新谷委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。まず、法案の問題点からお伺いいたします。本法案では、都道府県の新たな役割として、医療扶助について調査等を行い、市町村に対して医療扶助の適正な実施について必要な援助を行うように努めることというのを設けまして、厚労大臣は都道府県が調査等を行うため必要な支援を行うものとするとしております。厚労省の医療扶助の見直しに向けた整理を見ますと、国による参酌標準としての数値目標の設定というのが明記されております。前回の法改正において、医療扶助については後発医薬品の使用を原則化するという、生活保護利用者への差別的取扱いが盛り込まれました。本法案が改正された場合、医療扶助の適正化ということで、国による参酌標準として後発医薬品の使用割合というのが入るんでしょうか。
○朝川政府参考人 医療扶助における後発医薬品の使用につきましては、平成三十年の生活保護法改正により原則化が図られておりまして、令和四年度の数量シェアは八六・四%となっています。後発医薬品の使用割合については、新経済・財政再生計画改革工程表二〇二三におきまして、毎年度全ての都道府県で八〇%というKPIが既に設定されておりまして、これに基づいて進めていくものと考えております。一方、本法案で新たに設ける都道府県による援助等の仕組みでは、都道府県が広域的な観点からデータ分析を行い、市町村に対して取組目標の設定、評価等を行うに当たって、国から都道府県に対して参考となる考え方をお示しすることを考えておりまして、その具体的な内容につきましては、今後、有識者の意見も踏まえて検討を進めてまいります。
○宮本(徹)委員 否定されないという答弁なわけですよね。既に、後発医薬品の使用割合というのは、生活保護利用者の方がかなり高い状況になっているわけですね。一方で、人権に配慮した運用をしている自治体なんかもあるわけです。今回の法改正が圧力となって、差別的取扱いが更に進む危険があるのではないのかということを大変懸念をしております。もう一点、医療扶助でお伺いしますけれども、こういう話をよく聞くんですね、神奈川の難病患者の方が東京の医師に受診したいと言っても拒否をされると。こういうことが行われているわけです。配付資料を見ていただければいいんですけれども、医療扶助運営要領にはこういう文言があります。生活保護制度は、国民の最低限度の生活の需要を超えないものでなければならないという原則において、他制度と基本的な差異があることに留意して、実施の適正を期すること。大変な差別的な考え方だと思います。そして、生活保護は事務監査をやられているわけですけれども、事務監査実施要綱に出ている監査の着眼点というのを見ますと、医療機関の選定は、真にやむを得ない場合を除き、患者の居住地に近い医療機関となっているか、こういうことを監査の着眼点として厚労省は示しているわけですね。こういう考え方の下で、現状でも医療へのフリーアクセスを実質的に制限する事態というのが様々、医療扶助については起きております。今回の改正案によってこういう事態が加速するという懸念があるんですけれども、いかがでしょうか。
○朝川政府参考人 医療扶助の実施につきましては、例えば福祉事務所における医療扶助の取扱いの一つとして、居住地に比較的近距離に所在する医療機関を選定することを基本としつつ、患者の医師に対する信頼なども考慮し、本人の希望を参考として取り扱うことなどを通知で定めております。こうした通知で定めました医療機関の選定等を含めて、福祉事務所等における生活保護法の執行事務につきましては、都道府県等が監査を実施しております。監査においては、施行事務の適否を関係法令や通知等に照らして検討するものとされています。一方、本法案で創設する仕組みは、都道府県が市町村に対して医療扶助等の実施に関して支援を行うものでありまして、監査とは法律上の位置づけや内容等が異なっております。具体的には、本法案で創設する仕組みは、都道府県が広域的な観点からデータ分析を行い、市町村に対して都道府県が取組目標の設定、評価や助言等の支援を行うことにより、地域全体を通じた医療扶助の適正かつ効率的な実施の促進をするものでございます。このため、この仕組みによって通知で定めました医療機関の選定等の取扱いが変更されるといったものではなく、御指摘の点は当たらないと考えてございます。
○宮本(徹)委員 通知の中身で今いろいろおっしゃいましたけれども、実際には、監査だとか、あるいは運営要領に基づいて、既に患者の希望が通らない事態というのがいっぱい起きているわけですよ。そういう苦情は皆さんのところにも寄せられるわけでしょう。それが実際に起きているわけですよ。都道府県がデータ分析をする、取組状況を評価する、そして助言をする、そういう中でこうしたことが更に進みかねないじゃないかということを私は指摘をしているわけですよね。元々、運営要領の文言を変えるんだったらいいですよ。あるいは監査の着眼点を変えるんだったらいいですよ。こういうのをそのままにした下で都道府県から自治体に対して様々助言するということになったら、当然、こうしたものを踏まえてということになるじゃないですか。本当に、生活保護利用者の医療へのアクセス権、自己決定権を医療扶助の適正化の名の下に制限しかねない危うさがあるということを指摘しておきたいと思います。次に、単身高齢女性らへの経済支援等についてお伺いしたいと思います。阿部彩先生の集計で、単身高齢者の相対的貧困率が四四・一%にもなるということが報道されました。女性は年金が十万円未満の方が多く、私たちのところにも、貯金を使い果たして生活保護を利用する、こういう相談がよく来ます。家賃の支援があればやっていけるのにと、こういう声もたくさん聞いているわけです。大臣にお伺いしますけれども、単身の高齢者の貧困の割合を政府としてはどう分析しているのか、経済的支援を更に強めなければならないという認識はあるのか、そして、その支援の中で住居費への支援のニーズが極めて高い、こういう認識はあるのか、お伺いしたいと思います。
○武見国務大臣 六十五歳以上の高齢者の相対的貧困率については他の世代と比べて高くなっており、このうち単身世帯では、男女共に相対的貧困率がより高くなっていると認識しております。このため、単身の高齢者も含め経済的に困窮している方々に対しては、社会保障制度全体で総合的に支援していくことが必要であると考えており、具体的には、年間最大六万円の年金生活者支援給付金の支給、そして、介護保険における低所得者の方を対象とした補足給付の支給、それから、医療保険、介護保険における低所得の方への保険料軽減措置や、所得に応じた自己負担、利用者負担の上限額の設定などにより、経済的な支援を行っております。また、生活困窮者自立支援制度におきましては、生活にお困りの状況に応じて、家計改善に向けた支援や住まいの支援等を行っております。特に今般の法改正では、単身高齢世帯の増加等により居住支援のニーズの高まりが想定されることを踏まえまして、居住支援の強化を図ることとしております。御指摘の家賃負担の軽減に関しても、本法案において住宅確保給付金を拡充し、家計の改善により自立を目指す高齢者等が低廉な家賃の住宅に転居する際の費用を補助することとしておりまして、こうした取組により、単身の高齢者も含めて経済的に困窮している方々に対して必要な支援を行ってまいりたいと思います。以上です。
○宮本(徹)委員 今の支援では足りない、全く足りないから、年金生活者の皆さんが生活保護を利用されるということにどんどんなっているわけですね。さっき大臣から説明がありましたように、今回の法案は住宅確保給付金を拡充するというわけですけれども、中身というのは、家賃の支払いが困難になった人に、家賃が低いところに住み替える際の転居費用を出すという話ですよね。私は、東京の多摩の北部の地域が選挙区です。二十三区から転居してくる高齢者もかなりいらっしゃいます。もちろん、転居費用の支援があれば助かるというのはそれはそのとおりだと思いますけれども、しかし、高齢になってから引っ越して、一から人間関係をつくるというのは本当に大変なんですよね。私は、住み慣れたコミュニティーで暮らし続けたい人には、そこで暮らせる経済支援というのも必要だと思うんですよ。大臣にお伺いしたいと思いますが、高齢者の転居に伴うリスクというのはどのようなものがあるというふうにお考えですか。
○武見国務大臣 高齢者が転居する場合のリスクでありますが、例えば、転居の際のストレスや疲れが原因で体調を崩すおそれがあることであるとか、それから、新しい生活環境に適応するのが容易でなかった場合、今委員御指摘のとおりであります、周りに知り合いがいなかった場合など、転居に伴う環境や人間関係の変化などによって認知機能や意欲が低下するおそれがあるといったようなことがリスクファクターとして想定できると思います。こうした観点も踏まえて、転居が必要な場合は、本人の希望を踏まえながら、可能な限り住み慣れた地域において住まいの確保と入居後の生活支援を一体的に切れ目なく行っていく必要があると考えております。本法案には家賃の低廉な住宅への転居のための初期費用を補助する内容を盛り込んでおりますが、家賃が下がればどこへ転居してもよいというわけでもなく、あくまで御本人の自立に資するかといった観点から転居の支援を行うよう、自治体にも周知をしてまいりたいと思います。また、本法案では、見守り等の支援の実施を自治体の努力義務としておりまして、転居後も地域で安定した生活ができるように支援をしていきたいと思います。
○宮本(徹)委員 転居のリスクがあるというのは、大臣も当然認識されているわけですよね。ですから、住み慣れたコミュニティーで住み続けられるようにするというのがやはり最善の策だということだと思うんですね。では、住み慣れたコミュニティーでより安い家賃で暮らせるところがあるかといったら、そうないですよ。同じ地域は大体家賃は同じ相場ですし、東京では、御存じのとおり都営住宅の入居倍率は極めて高い、入りたくても入れないわけですね。ですから、家賃の低い多摩の西へ西へと引っ越さざるを得ないということが起きているわけです。家賃に困っているのは単身高齢者だけじゃないわけですね。中高年のシングル女性団体が調べた調査というのを前、国交委員会で紹介したことがありますけれども、四十代、五十代の単身女性は、住まいはどこに住んでいるかというと民間賃貸住宅が一番多くて、大変住居費が重くのしかかっているという状況がございます。ですから、住み慣れた地域で生活が困窮されても住み続けられるためには、住み替えの支援をしていくというのじゃなくて、やはり、そこでしっかり住める家賃補助をしていくというのが私は極めて大事だと思います。資料の三ページ目を御覧いただきたいと思うんですけれども、これは国交省と財務省と厚労省、それぞれの住宅への支援政策を並べておきました。大変、日本の住宅支援の政策というのはいびつなんですよね。持家への支援である住宅ローン減税、二〇二三年度の予算ベースで見ますと、減収見込額は約八千億円程度、適用見込み者は五百四十万人程度。五百四十万で八千億を割ると、一人当たり年十五万円弱になります。これは十三年間受けられますから、平均的にはお一人二百万円近い支援ということになるわけですね。一方、一番下が国交省のセーフティーネット住宅の家賃低廉化補助というものですけれども、これはもう始まってしばらくたつわけですけれども、家賃を最大四万円引き下げるという、これ自体は非常にいい制度な面はあるわけですけれども、ただ、いかんせん、ほとんど使われていないわけですね。全国で四百五十七戸、執行額は七千二百八十万円。住宅ローン減税の一万分の一しか予算をかけていないということになるわけですね。この家賃低廉化補助がなぜ使われないのかというと、自治体負担があるので自治体が手を挙げない、仮に自治体が手を挙げても、大家さんにもいろいろな不利益があるから、大家さんも手を挙げないということで、つくってもう七、八年たつと思うんですけれども、七年ぐらいですかね、これは平成二十九年からですから。もう何年たってもほとんど広がっていないという状況であります。一方、厚労省のやっている住宅確保給付金、二〇二二年度の実績は、支給済額で七十七・二億円、支給決定件数で、再支給も含めて三万七千七百九十件とあります。これはコロナの影響もあって特例再支給というのもあったわけですけれども、二〇二三年度の実績、十二月までで見ますと、新規の決定件数は七千四百四十四件で、支給済額は十九・四億円ですから、恐らくこのペースでいけばせいぜい三十億円程度の支援ということになるんですね。ですから、片や持家に対しては八千億円支援されながら、民間賃貸住宅で大変苦労されている方には、厚労省と国交省の支援両方合わせても、その百分の一にもいかない。これが私たちのこの国の住宅政策なんですよね。大臣の認識をお伺いしたいと思いますけれども、この数字を見て、持家で暮らす人に対する支援に比べて民間賃貸住宅で暮らす人への支援が大変弱い、こういう認識はございますか。
○武見国務大臣 生活困窮者自立支援制度において、生活に困窮した方々に対して個別の状況に応じた支援を行うこととしておりまして、現在の住居が持家か賃貸住宅かにかかわらず必要な支援を実施しております。特に、離職等により住居を失うおそれが生じるような方に対しては、求職活動中にも安定した住まいを確保できるように、民間の賃貸住宅の家賃相当分を住居確保給付金として支給をしております。また、住まいの確保等に困難を抱える方が地域の中で安定して生活ができるように、地域居住支援事業において民間賃貸住宅等への入居支援や見守り支援なども行っております。さらに、本法案におきましては、個々の状況に応じて切れ目のない支援を講じていく観点から、生活困窮者支援の窓口等において住まいに関する相談を包括的に受け止めること、それから、入居後の見守り等の支援や社会参加への支援を強化することといった内容が盛り込まれております。厚生労働省としては、今国会に提出された住宅セーフティーネット法等の一部改正法案と併せて、民間賃貸住宅を含めて、高齢者などが長期にわたって安定した住まいを確保できるような環境整備に取り組むこととしており、国土交通省とも連携をして、民間賃貸住宅にお住まいの方に対しても様々な支援を講じてまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 せっかく数字を紹介したんですよね。これはどう見ても、民間賃貸住宅の方々へ国の施策としては支援が余りにも弱いんじゃないかと思うんですよ。私は、家賃補助制度にしっかり発展させていかなきゃいけないというふうに思いますけれども……(発言する者あり)ちょっと、大臣の認識を聞け聞けといって、時間が来ちゃうからなかなか悩ましいのがあるんですけれども、じゃ、二つお答えください。厚労省のさっきのペーパーは横に置いて、住宅ローン減税と比べて民間賃貸住宅への支援というのは大変弱いという認識があるのか、大臣の率直な認識をお答えいただきたい。加えて、家賃補助制度、これは本当につくっていくべきだと思うんですよね。その点について、この二点をお答えいただきたいと思います。
○新谷委員長 武見厚生労働大臣、簡潔な御答弁でお願いいたします。
○武見国務大臣 はい。現行の制度の中では、先ほど申し上げた家賃の補助だけなんですね。それを今度の法律によって引っ越し等の支援金の補助まで追加されて、これによって選択肢が増えているということは、私は、重要な一つの新たな、課題をきちんと解決する糸口を示したと思います。したがって、そうした観点で、民間の賃貸に関わる支援というものと組み合わせて、新たに全体として御理解をいただきたいと思います。(宮本(徹)委員「答えていないです」と呼ぶ)
○新谷委員長 申合せの時間が経過しておりますから、御協力を。
○宮本(徹)委員 いやいや、ちゃんと、委員長、差配してもらわないと困るんです。私が聞いたことを答えてもらわなきゃいけないですよ。まあ、また続き、やらせていただきます。終わります。