2024年4月25日 衆院本会議 「平和国家」投げ捨てる 次期戦闘機共同開発条約 宮本徹議員が批判 衆院本会議

 英国・イタリアとの次期戦闘機の共同開発・生産・輸出を推進するための政府間機関(GIGO)を設立する次期戦闘機共同開発条約が25日の衆院本会議で審議入りしました。日本共産党の宮本徹議員は、同条約は殺傷兵器の戦闘機を英国などと共同開発・生産し、価格低減を理由に第三国に売りさばくもので「憲法の『平和国家』としての立場を投げ捨て、日本を武器輸出でもうける『死の商人国家』へと堕落させるもので断じて容認できない」と強調しました。
 宮本氏は、歴代政府が国会議論の中で全面的な武器輸出の禁止を原則とする武器輸出三原則などを表明し、1981年の衆参両院での全会一致の国会決議で「憲法の理念である平和国家としての立場」を踏まえた「国是」と確立したと指摘。ところが岸田政権は、昨年12月に外国企業の許可を得て国内で製造するライセンス生産兵器の輸出に続き、3月には次期戦闘機の第三国への輸出を解禁したとして「憲法に基づく『国是』をなぜ一片の閣議決定で覆すことができるのか」とただしました。
 上川陽子外相は、武器輸出三原則の下でも「例外化措置を講じ、個別判断で海外移転を認めてきた」などと強弁しました。
 宮本氏は、政府が輸出先を「国連憲章に適合した使用」を義務づける協定の締約国に限定するとしながら、国連憲章違反のイラク戦争(2003年)を主導した米英が含まれていると指摘。「現に戦闘が行われている国」は除外としているが、輸出対象国の自国領域内で戦闘が行われていなければ該当せず「イラクなどで国際法違反の戦争を繰り返してきた米国でさえ該当しないのではないか」と追及しました。上川外相は、イラク戦争は「国連安保理決議により正当化されている」などと強弁しました。
 宮本氏は、戦後の武器禁輸政策に立ち戻るべきだと述べ、同条約の廃案を求めました。

以上2024年4月26日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2024年4月25日 第213国会衆院本会議第24号議事録≫

○議長(額賀福志郎君) 宮本徹君。
○宮本徹君 私は、日本共産党を代表し、次期戦闘機共同開発条約について質問します。(拍手)本条約は、イギリス、イタリアとの次期戦闘機の共同開発、生産、輸出を推進するための政府機関、GIGOを設立するものです。殺傷兵器の最たるものである戦闘機を、アメリカとともに国際法違反の戦争を繰り返してきたイギリスなどと共同開発、生産し、価格低減を理由に第三国に売りさばいていこうとするものです。憲法の平和国家としての立場を投げ捨て、日本を武器輸出でもうける死の商人国家へと堕落させるものであり、断じて容認できません。戦後の日本は、一九六七年の武器輸出三原則、七六年の政府統一見解により、全面的な武器輸出の禁止を原則としてきました。この原則は、国会論戦の中で歴代政府が表明した方針であり、八一年の衆参両院における全会一致の国会決議によって、日本国憲法の理念である平和国家としての立場を踏まえた国是として確立したものです。ところが、岸田政権は、昨年十二月のライセンス生産兵器に続き、今年三月、次期戦闘機の輸出を与党の密室協議と閣議決定で解禁しました。国会決議で確立した、憲法に基づく国是が、なぜ一片の閣議決定で覆すことができるんですか。九一年四月、当時の中山太郎外務大臣は、武器輸出三原則で国際平和のために一切武器を輸出していない、これが日本の国是であると答弁しています。この答弁との矛盾をどう説明するんですか。次期戦闘機は、航空自衛隊のF2戦闘機、イギリス、イタリアのユーロファイターの後継機です。イギリスがサウジアラビアに輸出したユーロファイターは、イエメンでの無差別攻撃に使われました。イスラエルがガザへの無差別攻撃を実行できるのも、戦闘機を含むアメリカの巨額の軍事援助があるからです。国際紛争を助長する殺傷兵器の輸出方針は撤回すべきであります。政府は三つの限定と二重の閣議決定を強調していますが、全くのごまかしと言わなければなりません。今回、第三国への輸出を認めるのは次期戦闘機に限定すると言いますが、政府の判断次第で幾らでも追加できるのではありませんか。国連憲章に適合した使用を義務づける協定の締約国に限定すると言いますが、現締約国の米英が国連憲章違反のイラク侵略戦争を主導した事実をどう説明するのですか。現に戦闘が行われている国には移転しないと言いますが、その判断は、仕向け国・地域における戦闘の規模や期間等を踏まえるというものです。これでは、輸出対象国が自国の領域外でどれだけ戦闘を行っていても、自国領域内で行われていなければ該当しないのではありませんか。戦後、ベトナムやアフガニスタン、イラクなどで国際法違反の戦争を繰り返してきたアメリカでさえ該当しないのではありませんか。次期戦闘機の開発費は二〇年度からの五年間で既に三千八百億円を計上しています。開発完了を見込む三五年度までに全体で幾らと見積もっているのですか。上限はあるのですか。巨額の財政負担を国民に強いることになるのではありませんか。F2戦闘機は当初の見積りに対し一一七%増の三千五百八十九億円、F35戦闘機は一七年時点で六一%増の六・一兆円を要しています。巨額の開発費を回収するために、第三国への輸出にのめり込むことになるのではありませんか。今、日本の軍需産業は、安保三文書に基づく大軍拡で、生産ラインを次々と拡大しています。一旦拡大した生産ラインは、どうやって維持するのでしょうか。戦争に依存する経済をつくってはなりません。戦後の武器禁輸政策に立ち戻り、民需での発展を追求すべきです。以上、本条約の廃案を求め、質問を終わります。(拍手)
○国務大臣(上川陽子君) 先ほどの青柳君に対する答弁におきまして、この仕組みは、本条約、適用のある国際協定についてのところ、本条約、運用のある国際協定と発言いたしましたが、正しくは、この仕組みは、本条約、適用のある国際協定でありますので、訂正をさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。宮本徹議員にお答えをいたします。防衛装備移転三原則等の改正についてお尋ねがありました。防衛装備移転三原則及び同運用指針は、外国為替及び外国貿易法の運用基準及びその指針を定めるものであり、同法の運用は行政権の作用に含まれることから、同法にのっとり、政府がその主体となって判断していくことが適切であると考えています。その上で、防衛装備移転三原則においては、平和国家としての基本理念を引き続き堅持していくこととしており、今後ともこの点が変わることはありません。いずれにせよ、我が国の政策について国民の皆様の一層の御理解を得ることが重要であり、国会における質疑も含め、丁寧に説明してまいります。防衛装備移転三原則等の下における装備品の移転についてお尋ねがありました。防衛装備の海外移転について、御指摘の外務大臣の答弁の時点も含め、当時の武器輸出三原則等の下においては、実質的には輸出を認めないこととなっていた一方、その時々の事情に応じ、必要がある場合には、例外化措置を講じ、個別判断により海外移転を認めてきたところです。防衛装備移転三原則に記載しているとおり、国連憲章を遵守するとの平和国家としての基本理念及びこれまでの平和国家としての歩みを引き続き堅持していく考えです。防衛装備の移転方針についてお尋ねがありました。防衛装備移転三原則等の下で移転を認め得る場合は、平和貢献、国際協力の積極的な推進又は我が国の安全保障の観点から積極的意義のある場合等に限定され、その場合であっても、移転先の適切性や安全保障上の懸念の程度を厳格に審査し、総合的に判断しています。特に、自衛隊法上の武器に該当する完成品に係る防衛装備の海外移転については、仕向け国・地域において武力紛争の一環として現に戦闘が行われているか否かを含めた国際的な平和及び安全への影響等を考慮して、慎重に検討することとなります。その上で、次期戦闘機の移転先については、武力紛争の一環として現に戦闘が行われていると判断される国には移転せず、また、他国への侵略など国連憲章に反するような行為に使用されることがないよう、国連憲章の目的と原則に適合する方法での使用を相手国政府に義務づける国際約束の締結国に限定することとしています。このため、我が国から移転した次期戦闘機が他国への侵略に使われるようなことは想定していません。次期戦闘機の第三国への直接移転についてお尋ねがありました。今後、我が国の防衛力整備上の必要性から参画する案件であって、我が国からの完成品の第三国移転が必要となるという要件に合致する国際共同開発の案件が生じた場合、第三国への直接移転が認められるためには、その都度、その必要性を検討した上で、国家安全保障会議決定を行い、防衛装備移転三原則の運用指針を改正する必要があります。その上で、国民の皆様の理解を得ることは重要であると考えており、国会における質疑も含め、丁寧に説明することとなります。また、次期戦闘機の移転先国は、国連憲章の目的と原則に適合する方法で使用することを義務づける国際約束の締結国に限定しているところ、我が国から移転した次期戦闘機が国連憲章に反するような行為に使用されることは想定していません。なお、二〇〇三年のイラクに対する米国及び英国の軍事行動については、国連憲章第七章の下で採決された関連する安保理決議により正当化されているものと考えています。そして、運用指針における武力紛争の一環として現に戦闘が行われていると判断される国に該当するか否かは、仕向け国・地域における戦闘の規模や期間等を踏まえて、個別具体的かつ総合的に判断するものです。その上で申し上げれば、政府としては、米国内においては、武力紛争の一環として現に戦闘が行われているとは認識していません。(拍手)
○国務大臣(木原稔君) 宮本徹議員にお答えいたします。まず、次期戦闘機の開発費についてお尋ねがありました。次期戦闘機の開発費については、日英伊共同開発に当たっての具体的な作業分担等、本条約も踏まえた国際協力の詳細な在り方により今後大きく変動し得ることから、お答えできる段階にはありません。日英伊三か国で検討を深め、可能となった段階で公表できるよう検討してまいります。その上で、次期戦闘機の開発費については、将来の航空優勢を担保する優れた戦闘機を開発するために必要な経費をしっかりと精査した上で、年度ごとの予算案として国会で御審議いただき、国民への説明責任を果たすとともに、適切な予算執行に努めてまいります。次に、次期戦闘機の開発費と第三国輸出の関係についてお尋ねがありました。まず、次期戦闘機の開発費については、先ほど申し上げたとおり、必要な経費をしっかりと精査した上で、年度ごとの予算案として国会で御審議いただき、国民への説明責任を果たした上で確保していくものです。また、次期戦闘機の将来的な第三国への輸出については、その可能性について三か国の様々なレベルで検討しておりますが、何ら決まったものはありません。いずれにせよ、開発費を回収するために第三国への輸出にのめり込むとの指摘は当たらないと考えております。(拍手)
○国務大臣(齋藤健君) 宮本議員の御質問にお答えします。防衛産業の維持と防衛装備移転の考え方についてお尋ねがありました。令和四年に策定された国家安全保障戦略等において、防衛生産・技術基盤は、いわば防衛力そのものと位置づけられ、その維持強化は必要不可欠とされています。経済産業省としては、防衛省などの関係省庁と連携し、様々な産業振興を通じて、防衛産業の維持強化に取り組んでまいります。なお、防衛装備品の海外への移転に当たっては、これまで同様、厳正かつ慎重に対処する方針であることに変わりはありません。(拍手)
○議長(額賀福志郎君) これにて質疑は終了いたしました。本日は、これにて散会いたします。