2024年4月24日 衆院厚生労働委員会 転勤命令を規制せよ 宮本徹氏 育児・介護に絡み提起 障害のある子の親の両立支援を
配付資料 出典:朝日新聞デジタル2023年9月3日
配付資料 転勤命令を適法とした裁判例
日本共産党の宮本徹議員は24日の衆院厚生労働委員会で、単身赴任を強いるなど、育児・介護と仕事の両立を困難にする転居を伴う配置転換命令への規制を求めました。
労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査で、転勤経験者の65・8%が通学期の子どもの教育が難しいと答えています。
育児・介護休業法では、事業主に配慮義務がありますが、厚労省は配慮義務規定に基づく2022年度の改善指導件数は、育児関係がわずか1件、介護関係は該当なしだと明らかにしました。
宮本氏は、転勤命令をめぐるこの間の司法判断について「通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものでない限り有効とされている」と指摘。「配転命令権を広く認める考えは、男女とも育児・介護などの家庭的責任を果たそうという政府方針と合致しないのではないか」と述べ、育児・介護との両立を困難にするような転勤命令を法律で厳しく規制するよう求めました。
武見敬三厚労相は「事業主の配慮義務の上に、さらに厳しい規制とすることは企業の事業運営や人材育成を困難とさせる懸念がある。相当慎重に検討する必要性がある」などと答弁し、経済界に配慮する姿勢を隠しませんでした。
以上しんぶん赤旗ホームページネット配信より抜粋
≪2024年4月24日 第213国会衆院厚生労働委員会第16号議事録≫
○新谷委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。前回の続きでございます、障害のある子の親の両立支援ということです。前回、最後に、十八歳の壁の問題について取り上げました。大臣、青年期の余暇活動の支援、居場所など、青年期の支援ニーズについて是非実態調査をしていただきたい。あわせて、全国的な給付サービスを新たに設けることも含めて、青年、成人期の余暇活動、居場所について抜本的に国としての支援を強める、やっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○武見国務大臣 障害者の余暇活動や居場所を含めた支援のニーズについては、教育、文化、芸術、スポーツ、それから自らの趣味など、様々な分野に関わるものがございます。このため、厚生労働省において全ての支援ニーズを網羅的に調査するのはなかなか難しいのでありますけれども、例えば、日中一時支援や、地域活動支援センターにおける余暇活動や、地域の居場所としての利用の実態などについては、当事者等のニーズも丁寧に伺いながら、必要に応じてこうした調査の実施を検討したいと思います。
○宮本(徹)委員 その調査を踏まえて対策が必要だと思うんですけれども、その点、いかがですか。
○武見国務大臣 今申し上げたとおり、こうした様々なケースがありますので、しっかり状況を把握して調査をし、それを踏まえた上で検討を進めていきたいと思います。
○宮本(徹)委員 日中一時支援でいうと、自治体によっては、給付サービスと同じ日には使えないというルールを設けているところもあるんですよね。ですから、そうすると、前回言った生活介護の後の時間帯というのはもう本当に親が見るしかない、こういう自治体もあるわけです。あとは、本当に、前回も言いましたけれども、財政的な支援が地域生活支援事業というのは大変弱いですので、法人の持ち出しで支えている面があって、ニーズはどんどんどんどん放課後等デイサービスを卒業して増えていくわけですけれども、良心的な法人の努力だけではどうにもこうにも支え切れない状況がありますので、是非具体化をお願いしたいと思います。もう一点です。朝日新聞の調査を今日も前回同様お配りしておりますけれども、自宅から学校や作業所などへの送迎の支援をしてほしい、こういう強い要望もあります。移動支援について、継続的通学に使える自治体というのは一三・二%というのが、調査として出ております。大半は継続的な通学には使えません。もちろん、特別支援学校等の通学については、合理的配慮の第一義的責任は文部科学省にあるのははっきりしているわけです。文科省と教育委員会が対応しなければならないわけですけれども、実態としては、スクールバスが使えない様々なケースもたくさんあります。だからこそ、この支援をしてほしいという声がたくさん出ているんだと思うんですね。是非、移動支援について、実態を踏まえて、どこの自治体に住んでいても必要な場合は通学や就労でも使えるようにしていただきたいと思います。その上でも問題は予算になってくるんですね。今、移動支援は地域生活支援事業の丸々で来るお金の中で割り振っていますので、移動支援自体もレクリエーションだとか買物だとかの支援に使っていますので、予算のパイ自体を大きくしないと、必要な支援を縮めなければ通学の支援なんかに回せないというのが現状でありますので、移動支援に対するやはり国の財政的な支援を抜本的に強めていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○武見国務大臣 委員御指摘のとおり、障害のある方の通学については、障害者差別解消法に基づき教育機関に対する合理的配慮が求められているという、まさに文部科学省の所轄になっているわけであります。しかし、障害者本人の希望を尊重しつつ、能力に沿った就学を実現することは極めて重要です。文部科学省や教育機関の取組との連携を今着実に進めているところなんです。現在、地域の実情やニーズに応じまして、一部の自治体では、地域生活支援事業等を活用して、家族や支援者が対応不能な場合などの緊急時の通学などの支援を行っているというふうに承知しております。地域生活支援事業につきましては、毎年度必要な予算を確保しているところでございまして、地方自治体において事業が円滑に実施され、それから障害者の方々に必要な支援が届くよう、引き続きこうした努力を進めていきたいと思います。
○宮本(徹)委員 大臣、必要な予算は確保できていないんですよ。だから、必要なだけの移動支援のサービスができませんので、いや、少しずつ増えているのは知っていますよ、地域生活支援事業の予算が増えているのはそれは私も知っておりますけれども、まだまだ必要な支援をするためには足りないということで、努力していただきたいと思います。その上で、ここからは追加の通告でございますけれども、前回と今日と併せて、障害のある子の親の両立支援ということを質問させていただいているわけですけれども、これは労働法制の面からも支えなきゃいけない、そして福祉サービスの面からも支えなきゃいけない。そして、放課後等デイサービスはこれはこども家庭庁になっていますし、あとは通学とかを考えたら文科省ということにもなってくるわけですね。ですから、是非大臣が音頭を取っていただいて、どうやって本格的に支えていくのかと。今、やはり相当、働けないという悩みがあるわけですね。とりわけ、働けてもパート以上では働けないという悩みを多くの方が持っていらっしゃいます。ここは本当に、政府は本格的に検討していかなきゃいけないときに来ていると思うんですね。是非そういう検討の枠組みを設けてスタートしていただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○武見国務大臣 この点についても、障害児や障害者、それからその周囲の御家族への支援については、厚生労働省とこども家庭庁が必要な情報共有、連携を図りながら議論を進めるなど、関係省庁一丸となって取り組んでおります。今回の法案に関しても、障害児や医療的ケア児を育てる親の両立支援に関する検討を行う際も、例えば、この有識者の研究会におきまして、厚生労働省内、当時は現在のこども庁も入っていたわけでありますが、その障害児支援を所管する部局が出席した上で、障害児や医療的ケア児を育てる親の方々や関係団体からのヒアリング、アンケート調査の結果なども参考にしながら、関係省庁連携しながら議論を進めておりました。障害のある子供を育てる方々を含めて、男女が共に仕事と育児を両立できる環境を整備することが重要であるという認識の下で、今後とも、関係各省庁との、当事者との連携をしっかりと進めた上で、実際に検討を進めていきたいと思います。
○宮本(徹)委員 何らかの新たな検討会を是非大臣のイニシアチブで立ち上げていただきたい。うなずいていただいていますので、よろしくお願いしたいと思います。あともう一点ですけれども、今回の法案では、障害のある子の親の両立支援について、指針で望ましい対応を示すということになっております。じゃ、指針で示された望ましい対応を取らない企業に対して国はどうするのか、これをお答えいただきたいと思います。障害のある子の親の両立支援のための相談体制、あるいは事業者への助言の体制、こうしたものはしっかり整備しなければならないのではないかと思いますし、また、中小企業については助成金の制度も更に検討する必要があるのではないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○武見国務大臣 指針で望ましいとお示ししているにもかかわらず取らない企業というのが現実に存在しているということは事実でありますし、それにどう対処するかという問題意識、私どももしっかりと持っております。子に障害がある場合など、子や家庭の様々な事情に対応できるように、今回の法案では、労働者からの仕事と育児の両立に関する個別の意向の確認とその意向への配慮を、これは事業主に義務づけました。それから、事業主が個別の意向に配慮するに当たって、更に望ましい対応として、子に障害がある場合であって希望するときには、短時間勤務制度や子の看護休暇制度などの利用可能期間を延長するなどをこうした指針で示しております。指針に対応しない企業に対しましては、一般的には、育児・介護休業法に基づき定められた指針において事業主が取り組むことが望ましいものとして示す内容は、法第三十条の規定に基づき、雇用管理等に関する相談、助言等の必要な援助を行うことができるということになっております。また、今回の制度見直しの施行に当たりましては、都道府県労働局におきまして、障害のある子を育てる労働者からの相談には特に丁寧に対応するということと、それから、法の趣旨に沿った望ましい雇用管理の実現がされるように、事業主への助言等の働きかけも更にきめ細かく行うということを考えております。さらに、中小企業事業主の方も、今回の法改正に円滑に対応していただけるように、両立支援等助成金による支援を行うこととしておりまして、例えば柔軟な働き方選択制度等支援コースにおきましては、法を上回る措置として、年間十日以上の子の看護休暇を付与する場合等に助成の対象としております。これらの取組によりまして、障害のある子を育てる労働者を含め、仕事と育児の両立の支援にしっかりと取り組んでいきたいと思います。
○宮本(徹)委員 今年から創設された新しい助成金もあるわけですけれども、それをもっと、障害がある子の支援をした中小企業にかみ合わせた形で、要件なんかも是非設定して発展させていただきたいと思いますけれども、局長、いかがですか。
○堀井政府参考人 お答えをいたします。助成金につきましては、丁寧な周知というのが非常に大事だと思いますので、この改正法案が成立した暁には、成立した改正法案の内容と相まって、丁寧な周知に努めてまいりたいと存じます。
○宮本(徹)委員 周知と同時に、中身も、要件なんかも含めて、障害がある子の親の両立支援を支えようという事業主がしっかり使える助成金制度にしていっていただきたいと思います。続きまして、次のテーマに移ります。昨日の参考人質疑で、転居を伴う配置転換命令への規制をしてほしい、こういう意見がございました。JILPTの調査を見ましても、転勤経験に照らして困難と感じたことは何かということで、結婚しづらい二九・三%、子供を持ちづらい三二・四%、育児がしづらい五三・二%、通学期の子供の教育が難しい六五・八%となっておりました。大臣の認識を伺いたいと思いますけれども、転勤があることが結婚や子を持つこと、仕事と育児の両立を妨げる要因になっている、こういう認識はございますか。
○武見国務大臣 厚生労働省で行っておりますこのJILPT調査の中でもそうした傾向がしっかりと示されていることはもう事実でありますので、委員御指摘のとおり、転勤は、結婚や子供を持つことなど、労働者の生活に大きな影響を及ぼすものであります。このため、転勤に関する雇用管理におきましては、企業の事業運営の都合や人材育成などの観点と、それから、労働者の意向や事情への配慮との間で折り合いをつけていくことが重要だと思っています。こうした観点から、厚生労働省では、事業主が転勤の在り方を見直す際に参考とするためのポイントをまとめた資料を作成しているほか、特に転勤により育児や介護が困難となる労働者につきましては、育児・介護休業法により、その状況に事業主は配慮しなければならないというふうにされております。そのことについての周知を図ってまいります。引き続き、労働者が仕事と生活と両立をしっかりとできるように、雇用の管理を推進していきたいと思います。
○宮本(徹)委員 育介法二十六条で育児、介護に対する配慮義務規定が、大臣がおっしゃったとおりあるわけですけれども、じゃ、この規定に基づく改善指導件数というのはどれぐらいでしょうか。
○堀井政府参考人 お尋ねの育児・介護休業法二十六条の配慮義務に関しましては、令和四年度に都道府県労働局が是正を求めた件数は、育児関係について一件、介護関係については該当がございませんでした。
○宮本(徹)委員 余り指導件数はないわけですね。法律が配慮義務ということでそうなっているのかなと思うんですけれども、実際は裁判でも争われてきているわけです。配付資料の裏面に、転勤命令を適法とした裁判例というのを少しまとめてみました。司法判断の今の基本になっているのが、一番上に書いてあります、東亜ペイント事件の最高裁判決なんですよね。これは、小さい二歳のお子さんとお母さんとパートナーと暮らしていたわけですけれども、転居を命令されたということで争って、地裁では労働者の側に有利な判決も出たわけですけれども、最高裁は、それをひっくり返して、神戸から名古屋への転勤というのは、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益ではないという判断をしたんですね。これが今の裁判所の判断枠組みなんですね。通常甘受すべき程度を著しく超える不利益でない限りは、転勤命令は有効とされてしまうわけです。甘受すべき程度を超える不利益ではないじゃないですよ、著しく超えなければ転勤命令は無効にならないわけですね。ですから、その下にあります帝国臓器製薬事件でも、これも、単身赴任が三人のお子さんがいて命じられても、これは転勤命令は適法だとされました。その下、ケンウッド事件では、三歳のお子さんがいる女性労働者がとてもじゃないけれども通えないところまで異動命令が出たけれども、これも、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものではないということで適法とされる。その下、パナソニック事件は、これは高齢の御両親との関係ですけれども、これも、福井にまで配転することも適法とされたと。さらに、二〇二一年になっても、NECソリューションイノベータ事件でも、これは、お子さんが自家中毒に罹患していることや通院しなきゃいけないんだという話なんかも原告から訴えられたわけですけれども、これも、通常甘受すべき程度を著しく超える不利益があるということではないということで適法と裁判所では判断されてしまっているということで、今の司法判断の枠組みというのは、配転命令権を極めて広く認めているということになっています。この配転命令権を広く認めるという考え方というのは、男女とも育児、介護などの家庭的責任を果たせるようにしようという今の政府の考え方とは合致しないんじゃないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○武見国務大臣 個別の事案に関して、司法で判断された内容について厚生労働省としてとやかく言うというのは差し控えさせていただきたいと思うんですけれども、裁判例では、転勤を含む配置の変更、これは、就業規則等に根拠があれば使用者が広い裁量を持つが、業務上の必要性がない場合や業務上の必要性が認められる場合であっても、労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときなどには権利の濫用となると解される、こうなっております。司法判断についてのコメントは差し控えますけれども、厚生労働省としては、男女共に希望に応じて仕事と育児や介護が両立できる職場環境の整備に努めることが重要だというふうに考えておりますので、住居の移転等を伴う就業場所の変更により仕事と育児や介護の両立に関する負担が著しく大きくなり、就業の継続が困難となる場合があることから、育児・介護休業法により、事業主は特に転勤により育児や介護が困難となる労働者の状況には配慮しなければならないということにされております。
○宮本(徹)委員 配慮しなければならないんだけれども配慮をせずにこうした転勤というのは、たくさん実際には行われているわけですよね。裁判で争われる例なんて、ごくごく一部にすぎないわけですよ。私、こういう解釈を許してしまう今の法体系自体をやはりもう時代に合わせて変えていかなきゃいけないんじゃないかと思うんですよね。やはり、男女とも育児、介護の家庭的責任をしっかり果たせるようにするために、育児、介護との両立を困難にするような転勤命令はしっかり法律で厳しく規制する、こういう法改正を是非検討していただきたいと思うんですよ。今日、やりますと言っていただかなくて、まず検討を是非していただきたいと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○武見国務大臣 我が国の雇用慣行におきましては、労働契約上、包括的な転勤命令権が認められていて、転勤を含む配置の変更については、基本的には事業主の裁量に委ねられております。一方で、仕事と生活の両立支援の観点から、育児・介護休業法において、転勤により育児や介護が困難となる労働者の状況への配慮を事業主に義務づけております。これを更に厳しい規制とすることにつきましては、企業の事業運営であるとか人材育成を困難とさせる懸念や企業の包括的な転勤命令権との関係で、これは相当慎重に検討する必要性があるなと思います。一方で、今回の法案においては、子や家庭の様々な事情に対応できるよう、勤務地を含む労働者の個別の意向の確認とその意向への配慮を事業主に義務づけることを更に盛り込んでいるところなんです。引き続き、転勤に関する配慮義務について周知をさせるとともに、法案が成立した暁には、個別の意向の確認と、その意向への配慮義務の内容についても周知徹底を図っていきたいと思います。
○宮本(徹)委員 時間が来ましたので繰り返しませんけれども、これはやはり、今の、幾ら周知しても、もちろん周知は大事ですよ、配慮しなければならないという規定自体があるわけですからそれは配慮してもらわなきゃいけないんだけれども、それでも、配慮しましたと企業の側は言って、無法な転勤をさせているわけですよ……
○新谷委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いいたします。
○宮本(徹)委員 これをやはりそのまま放置するわけにいかないと思いますので、是非、法改正を検討していただきたいということを強く申し上げまして、質問を終わります。