2024年4月23日 衆院厚生労働委員会参考人質疑 育休改正案を議論
衆院厚生労働委員会は23日、子の看護休暇の対象を小学校3年生まで拡大することなどを盛り込んだ育児・介護休業法等改正案について参考人質疑を行いました。
日本労働弁護団本部の小野山静事務局次長は改正案について、▽子の看護休暇の対象の小学校6年生までの拡大と日数増・有給化▽「柔軟な働き方を実施するための措置」を小学校6年生まで拡大し将来的に労働者が選択できる制度とすること▽男性による育休取得に関する目標設定が不十分であること▽長時間労働是正の観点が希薄であること―の4点を強調しました。
日本共産党の宮本徹議員は、仕事と育児・介護の両立の妨げになっている、企業の転勤命令を規制する法改正が必要ではないかと質問しました。
東京大学大学院経済学研究科の山口慎太郎教授は、転勤が配偶者や子どもに悪影響を与える懸念があると指摘。小野山氏は育介法26条の育児・介護を行う労働者への配慮義務を法的義務に格上げし、裁判所の判断枠組みを見直すことが必要だと述べました。
宮本氏は、男性が育児・介護に責任を果たす上で何が必要かと質問。UAゼンセン日本介護クラフトユニオンの村上久美子副会長は「長時間労働の是正が必要」だとし、小野山氏は給与相当額全額保証が急務だと述べました。
以上2024年4月28日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2024年4月23日 第213国会衆院厚生労働委員会第15号議事録≫
○新谷委員長 これより会議を開きます。内閣提出、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律案並びに柚木道義君外八名提出、訪問介護事業者に対する緊急の支援に関する法律案及び介護・障害福祉従事者の人材確保に関する特別措置法案の各案を議題といたします。本日は、各案審査のため、参考人として、一般社団法人日本経済団体連合会労働法制本部参事布山祐子君、UAゼンセン日本介護クラフトユニオン副会長村上久美子君、東京大学大学院経済学研究科教授山口慎太郎君、東京大学名誉教授佐藤博樹君、日本労働弁護団本部事務局次長小野山静君、以上五名の方々に御出席をいただいております。この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、どうかよろしくお願い申し上げます。次に、議事の順序について申し上げます。最初に、参考人の方々から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。なお、発言する際はその都度委員長の許可を受けることになっております。また、参考人は委員に対して質疑することができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。それでは、まず布山参考人にお願いいたします。
○布山参考人 おはようございます。経団連労働法制本部の布山と申します。本日は、育児・介護休業法等の一部を改正する法律案に対する経団連の考え方について御説明する機会をいただきまして、誠にありがとうございます。改正法案に賛成の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。まず、今回の育児・介護休業法や次世代育成支援対策推進法の改正は、昨年六月に政府が取りまとめた当時のこども未来戦略方針、これを踏まえたものと理解をしております。経団連といたしましても、同方針に盛り込まれた共働き、共育ての実現につきましては大変重要と考えております。そこで、昨年六月には、十倉経団連会長名で、会員企業、団体に対しまして、全ての社員が働きやすい環境整備の推進とともに、特に、男性の育児休業につきましては、政府が掲げる取得率の目標の達成だけではなく、男女がイコールパートナーとして家事、育児を実質的に担うことができる十分な日数の取得に挑戦するよう要請をいたしました。加えて、本日お手元にお配りしておりますが、春季労使交渉における経営側指針として今年一月に経団連が公表した二〇二四年版経営労働政策特別委員会報告では、賃金引上げのモメンタムの維持強化と併せて、女性に偏っている家事、育児の負担の軽減に向けて、アンコンシャスバイアスを払拭するための研修の実施や、男性による長期の育児休業取得の促進、さらには、性別を問わず、時間外労働の削減、柔軟な就労時間の設定、テレワークの活用、家事、育児支援サービスの利用促進などを広く呼びかけてまいりました。この辺は経労委の報告書の三十六ページあたりに書いてあるところでございます。その上で、厚生労働省の労働政策審議会における育児・介護休業法の見直しに当たりましては、女性の家事、育児負担が大きい現状の改善や、中小企業における対応のしやすさ、育児期、介護期の社員をサポートする周囲の社員への配慮などを特に重視して議論に臨んでまいりました。今回の改正法案は、こうした経団連の考え方が反映されており、仕事と育児、介護との両立をしやすい環境整備を大きく発展させるような内容と考えております。それでは、改正法案に盛り込まれている各措置につきまして、特に重要と考えているものを五点に絞って申し述べます。まず、子が三歳以降小学校就学前までの間、労働者が柔軟な働き方を活用し、フルタイムで働くことができる措置についてです。本制度は、従来、育児休業を延長したり、あるいは短時間勤務で就労していた可能性のある女性が、柔軟な働き方により、フルタイムで就労しやすくすることに加え、男性の仕事と家事、育児の両立を促進する観点から、大きな効果が期待できるものと考えております。設定されている五つの柔軟な働き方につきましては、事業所内の業務の性質、内容に応じて組合せを変えられることのほか、テレワーク等は一か月十日の基準を設けつつも、これを柔軟に運用することが可能とされていること、新たな休暇の付与は、業務の性質、実施体制に照らし、時間単位での取得が困難な業務に従事する労働者について労使協定で除外できることなど、いずれも企業における多様な働き方の実態を踏まえた仕組みと評価しております。二点目は、子の看護休暇の拡充についてです。取得事由に入園式や卒園式などの行事参加、感染症に伴う学級閉鎖が追加されること、子の対象年齢を小学校三年生修了まで延長されること、そして、継続雇用期間六か月未満の労働者を労使協定で対象から除外する仕組みを廃止することにつきましては、子供が診療を受けた日数の実態などを勘案した上、多様な労働者のニーズやコロナ禍で生じた学級閉鎖等の状況を踏まえた必要な措置と考えております。三点目は、子が三歳になるまでの適切な時期に、三歳から小学校就学前までの柔軟な働き方を実現する措置に関する面談等を義務づけること、あわせて、勤務時間や両立制度の利用期間などに関する労働者の意向を確認した上、配慮することを事業主に義務づける制度についてです。これらの措置は、企業が育児期の全ての従業員の両立を支援する観点から、有効なものと考えております。各企業の状況に応じて、勤務時間や配置、業務量の調整などについて配慮することが望ましいことが例として示されることになっており、経団連としても周知してまいりたいと考えております。なお、障害児や医療的ケア児に関しましては、こうしたお子さんを持つ従業員の要望を受けて、短時間勤務や子の看護休暇等の利用可能期間を延長することが望ましいことも指針で示される予定です。障害児、医療的ケア児につきましては、育児と介護の両面からのアプローチが必要な問題と認識しており、例えば、要介護状態の要件を満たせば介護休暇等の制度を利用可能であることなど、企業に周知してまいりたいと考えております。四点目は、次世代育成支援対策推進法の見直しについてです。まず、同法の期限を二〇三五年三月末まで十年延長することにつきましては、急速に進行する少子化に歯止めをかける観点から、不可欠な措置と考えます。その上で、同法に基づく一般事業主行動計画において、男性の育児休業取得率などの状況を把握、分析し、計画を定めること、さらに、行動計画策定指針において、男性の育児休業取得期間に関する目標を設定することが望ましい旨を明示することにつきましては、各企業が自社の状況を踏まえ、男性の家事、育児を促進し、共働き、共育てを実現していく観点から、必要な施策と考えております。最後に、介護期の両立支援についてです。家族の介護の必要性に直面した労働者が申出をした場合、事業主が両立支援制度等に関する情報を個別に周知し、意向を確認することを義務づけること、また、四十歳のタイミングなどにおいて、事業主が労働者に一律に情報提供を行うこと、介護に関する両立支援制度の利用が円滑に行われるよう、研修の実施、相談体制の整備等の措置を講じることを義務づけることにつきましては、従業員の介護離職を防止し、仕事と介護との両立を支援していく観点から、有効な措置と考えます。政府におかれましても、自治体等と連携しながら、介護保険制度の更なる周知にお取り組みいただくとともに、中小企業の事業主が周知に活用できるツールの提供などの支援をお願いしたいと思います。以上が、主な措置についての考え方でございます。今回の改正法案は、共働き、共育ての実現や介護離職の防止などの観点から大変多くの見直しが盛り込まれており、企業としても、労働組合等と協議しながら準備、対応をしっかりと進めることが求められます。あわせて、男性の育児休業取得促進や全ての従業員を対象とした長時間労働の是正など働き方改革を継続し、仕事と育児、介護を両立しやすい環境整備に取り組んでいくことが必要と考えております。経団連といたしましても、引き続き、男性の家事、育児に関する好事例の周知などを通じまして、企業の取組を後押ししてまいる所存でございます。私からは以上です。ありがとうございます。(拍手)
○新谷委員長 ありがとうございました。次に、村上参考人にお願いいたします。
○村上参考人 皆さん、おはようございます。私は、UAゼンセン日本介護クラフトユニオンで副会長を務めております村上でございます。本日は、参考人としてお招きいただきまして、ありがとうございます。私ども日本介護クラフトユニオン、略称NCCUと申しますが、企業の垣根を越えて、全国の介護従事者で組織しております、日本では珍しい職業別労働組合です。現在、組合員数は約八万七千名、労使関係のある法人が六十四法人です。本日は、介護従事者、労働者の立場から意見を述べさせていただきたいと思います。まず、育児・介護休業法の、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充についてです。私も共働きで子供を二人育ててきて、その間、一番大変だった時期が、子供を保育所に預けて職場復帰した生後六か月から、子供が小学校に上がって自分で自分のことが何とかできるようになった小学校三年生までの間でした。今回の改正法案を見てみると、柔軟な働き方の中にテレワークが入っていることはありがたいと思いました。ただ、子供は小さければ小さいほど病気になることが多いので、三歳までの施策については、努力義務というだけではなく、より多くの企業が導入できるように工夫していただければ、今より一層働きやすくなるのではないかと思います。また、小学校では学童保育のお世話になりますが、受入れを小学校三年生まで、時間は十八時までとしているところが多いです。しかし、学童は保育所より預けられる時間が短いということから、いわゆる小一の壁というものが立ちはだかっています。この壁を乗り越えることができなくて、仕事を辞めてしまう親がいます。それを考えると、所定外労働の免除については、子の看護休暇と同様、小学校三年生まで延長していただき、壁を乗り越える手助けをしていただきたいと思います。次に、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援の強化についてです。両立支援制度等に関する情報の周知が事業主に義務づけられるということです。私どもも介護離職防止についてお話しさせていただく機会がありますが、両立支援制度自体を知らない方がとても多いです。また、お手元の資料がございますけれども、一ページを見ていただきますと、仕事を辞める理由となった勤務先の問題で最も多いのは、勤務先に介護休業制度等の両立支援制度が整備されていなかったとなっています。このようなことから、周知を義務化することによっておのずと自社の制度を整備しなくてはならなくなりますので、介護離職防止にとても有効だと思います。また、先が見えない介護期の対応としてテレワークが選択できることはとてもありがたい措置ですが、努力義務となると対応は企業の裁量に委ねられることから、要件を加えた上での義務化が望ましいと思いました。一方で、資料二ページを見ていただきますと、こちらは施設入所できるまでの期間が載っています。三か月以内が最も多いのですが、次いで、二年超が一七・九%となっています。介護休業は法律で九十三日、三分割で取れることになっていますが、法律の範囲内では足りません。入所できるまで在宅で切り抜けようと考えたとしても、資料の三ページにありますように、在宅での重度者が多く利用している看多機、定期巡回の事業所数は、全国の自治体数にも満たない状態です。地域包括ケアシステムは二〇二五年を目途に構築を目指すとしていますが、このように地域によって整備の仕方にばらつきがある状態では厳しいと思います。結果として、仕事を辞める理由となった介護サービスの問題として、利用待ちが発生していて利用できなかった、希望する介護サービスが地域で提供されておらず利用できなかったということです。つまり、仕事と介護の両立を支援するために法律を整備することはすばらしいのですが、実際に両立しようとした場合、介護サービスが充実していなければ仕事に戻れないことになるのです。ところが、今、介護現場は疲弊しています。資料の四ページですが、私どもが毎年行っている調査での組合員の記述内容です。幾つかピックアップしました。最も多い内容が人手不足、次が賃金の低さです。また、介護サービスの中でも在宅サービス、そして訪問介護サービスは要であると言っても過言ではなく、仕事との両立、そして家族のレスパイトの観点からも欠かせないサービスです。しかし、その訪問介護のサービスの求人倍率は、資料五ページにあるとおり、十五倍を超えています。その結果、資料六ページを見ると、介護を必要としていても介護員がいないため断らざるを得ないというような状況になっていて、いわゆる介護難民が発生することになっています。そのような中、本年四月から、介護報酬の改定によって処遇改善加算率が大幅アップされるとともに、訪問介護サービスの基本報酬が切り下げられました。もちろん、私ども働く者にとって、各種処遇改善加算が一本化され、加算率も大幅アップしたことについては大変感謝しております。ですが、加算率のアップと基本報酬の引下げとは別の話です。それは現場の従事者もよく理解しています。資料の七ページのデータを御覧ください。基本報酬の引下げには九九・二%が反対。処遇改善加算の加算率を高く設定したため、事業収入全体では影響がないという説明に納得できるとした割合が僅か五・八%。そして、加算率を高くするだけでは人材は確保できないとした割合が九〇%。確かに、私たちは、人材の確保、定着のための最も有効な処方箋は処遇改善であるということを言い続けておりますが、雇用される事業者が安定した運営がなされているということが大前提です。その事業者ですが、ある法人では既に四月になる前に、継続の見込みが立たないと判断した事業所を数か所廃止しました。また、これまでやってこなかった訪問事業所の統廃合に踏み切る考えがある、現行の給与を下げることも視野に入れなければいけないという声も聞かれています。訪問介護員の賃金は、処遇改善加算だけで支払われているわけではなく、そのほとんどは基本報酬から支払われています。基本報酬が引き下げられ事業収入が落ちても、賃金を下げることなく、そして引き上げていこうとしたら、事業運営に支障を来します。先行き不安な事業所に、果たして人は集まるのでしょうか。このようなことから、次期改定を待たずに訪問介護事業者が需要に応じて安定的に提供できる体制を確保する観点から、補助金の支給が必要だと考えております。また、介護人材の不足ということから、厚労省は介護経営の大規模、協働化を図っていく方向であるのは承知していますが、特に地方で暮らす高齢者が要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしく最後まで暮らすことができるように、通所介護のように規模別に分けて単位数を決め、小規模事業者に手厚くするということも必要なことではないかと思います。介護離職防止のためには介護サービスの利用は必須なのですが、それを担う介護従事者が充足していなければサービスを提供することができません。介護従事者の確保、定着のためには、処遇改善が重要です。岸田総理も全産業平均との格差是正や構造的賃上げについておっしゃられていましたが、資料八ページを見ていただくと、介護従事者の平均賃金と全産業平均との格差は五万五千円。そして資料九ページ、昨年の賃上げ率、一般企業では過去最高の三・五八%でしたが、介護分野では一・四二%。今年の春闘は、四月二日現在、五・二四%、介護分野は二〇二四年度分が二・五%の賃上げ見込みとなっています。これでは、国が行っている処遇改善加算によって縮まりかけていた格差は広がるばかりです。したがって、介護従事者の賃金と全産業平均賃金を同水準にするべく、更なる処遇改善をお願いしたいと思います。育児・介護休業法が改正され、育児、介護の両立支援体制が強力に推進されることはすばらしいと思いますが、一方で、この法律だけではカバーできない両立支援の問題があり、それを解決していかなければ、労働力人口減少への対策にはならないのではないでしょうか。以上で、私からの意見陳述を終了いたします。ありがとうございました。(拍手)
○新谷委員長 ありがとうございました。次に、山口参考人にお願いいたします。
○山口参考人 おはようございます。東京大学大学院経済学研究科の山口慎太郎と申します。本日は、家族政策、労働政策の実証研究を行う経済学者の立場から、本改正案について意見を述べさせていただきたいと思います。最初に総論を述べさせていただいて、その後、主要な三点についてお話しさせていただきます。総論としましては、まず、ワーク・ライフ・バランスの改善で、多くの人が活躍する社会をつくることができるのではないかというふうに期待しております。現在、少子高齢化で、労働力不足が実際に進行しておりますし、これが今後深刻化していくことが見込まれていますが、ワーク・ライフ・バランスが改善することによって、全ての人が労働市場に参加していただくことで、御本人も経済的に収入を増やすことができるし、経済社会の安定にもつながるというふうに考えております。とりわけ、短期的には女性の労働市場における活躍が進むのではないかという点に特に注目しております。一方で、育児、介護をしながら働けるようになるということになると、じゃ、女性がもっと育児、介護をやったらいいよねというふうに期待されてしまうのではないかという懸念も同時に抱えております。いわゆるマミートラックに女性が押し込められてしまうのではないかということも重要な懸念点として指摘しておきたいと思います。ワーク・ライフ・バランスの改善、それ自体は望ましい方向だというふうに認識しておりますが、同時に、男性が家事、育児を積極的にやりやすくなるような、より踏み込んだ強い措置についても、今後何らかの施策が講じられる必要があるのではないかというふうに考えております。では、三つの主要な点について意見を述べさせていただきます。一つ目、子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充についてです。子供を持つ労働者により配慮した制度になることで、子育てと仕事の両立が一層しやすくなるというふうに期待しております。また、全ての職種で利用可能なわけではないんですが、可能な方については、テレワークの利用というのも、非常に効率的で有効な取組になるのではないかというふうに考えております。私たちの研究グループでは、テレワークがどのように労働者、特に男性の中高年の方の家事、育児に影響するのか、働き方に影響するのかという点について研究を行いました。その結果、テレワークが増えることによって、家事、育児時間が延びて、家族と過ごす時間が増えていくという好ましい方向の変化が起こることが分かりました。同時に、通勤時間が減ることによって、労働生産性を犠牲にすることなくワーク・ライフ・バランスの達成に寄与することも分かっています。特に東京のような大都市部では通勤時間が二時間になることも珍しくありませんので、週一日、二日といった少ない日数でも、家族に対して大きな変化を及ぼすことができる非常に有効な施策だというふうに考えております。また、育休取得などについて個別に意向聴取を行う、個別に配慮を行うことを事業主に義務づけることも非常に重要な取組だというふうに認識しております。実は、日本は、育休制度については世界でも最も充実したものの一つであるということが、国際機関、ユニセフによって指摘されております。しかしながら、実際の男性の育児休業の取得率を見てみると、先進国の中でも極めて低水準にとどまっています。この背景にあるのは、やはり、職場で同僚、上司に気兼ねしてしまう、遠慮してしまう、そのために、実際のところ、取得はできない、制度としてはあるんだけれども使いにくいというのが現状になっています。こういった周囲に対する気兼ねを打ち破るための一つの方法として、第一歩として、意向聴取を個別に行う、配慮を個別に行うということは重要な変化になり得るというふうに思っています。もっとも、それだけで直ちに男性の育休取得が容易になるというふうには考えにくいと思われますので、何らかの踏み込んだ施策が更に必要になってくるというふうには考えています。例えば、一部の民間事業所では行われていますが、育休取得者の代替あるいはバックアップとして入る従業員の方に、仕事量が増えるわけですから、追加の手当を支払う、それに対して行政が補助金をつける、そういった取組も、一つの男性育休取得を促進するための有効な取組ではないでしょうか。二点目、育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進、強化についてです。多くの若い労働者は、例えば私のような四十代、五十代あるいはそれ以上の労働者と比べて、ワーク・ライフ・バランスを非常に重視する世代だというふうに認識しています。これは各種アンケート調査にも顕著に表れるものですし、男性の育休取得意向などを見ても二十代、三十代ですと八〇%から九〇%で、もう育休を取るということが基本になっています。こうした状況を必ずしも上の世代は理解できていないのではないかという懸念があるわけなんですが、企業が育休の取得状況を公表することによって、若い労働者がどういう企業で働こうかと選ぶ際にワーク・ライフ・バランスの重視というのが重要な観点になってくる、この部分の情報を透明化することによって、ワーク・ライフ・バランスを重視しているような企業がより若い労働者に選ばれやすくなってきて、将来的には、社会全体で育休を取りやすいような状況をつくり出せるのではないかというふうに期待しています。今回の改正法案では三百人以上の企業ということになっていますが、今後は、この適用範囲を広げていくことが望ましいというふうに考えています。また、数値目標の設定も必要な措置だというふうに考えております。一定以上の規模を持つような企業であったとしても、必ずしも自社の状況を把握できているとは限らないというふうに認識しています。自社の状況が正しく把握できていなければ適切な措置を講じることができないので、こういった形で公表義務ですとか数値目標を設定させることによって、社会がより育休を取りやすくなる、ワーク・ライフ・バランスを重視するような方向に進めていくことにつながっていくというふうに思っています。そして三点目、介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化ですが、先ほども申し上げたように、今後、高齢者人口比率というのが上昇していくわけで、そうなってくると労働者不足が大いに懸念されてくるわけです。また、全体の年齢層が上がってくるということは、介護を行う人が今後増えていくことが見込まれています。こうした状況で、介護離職で労働力を失ってしまうというのは、企業にとっても社会にとっても大きな損失となり得ます。同時に、介護を行われる労働者御本人にとっても所得の減少、喪失につながるので、介護離職を事前に防げるような措置を講じておくというのは社会にとって非常に重要な取組になってくるというふうに認識しております。最後に、改めて、まとめとして、今改正法案についての意見を述べさせていただきます。育児、介護と仕事の両立支援を充実させることは、多くの人材を活躍させるために必要な措置であり、労働力不足を迎える日本経済にとって重要な措置になり得るというふうに考えております。一方で、育児、介護しやすくなるからといって、女性に育児、介護の責任を期待してしまう、押しつけてしまうといったことにならないように、同時に注意していくことも必要であり、男性が育児、介護でもっと大きな役割を担っていくような措置も同時に取っていかなければいけないのではないかというふうに考えております。私からは以上です。ありがとうございました。(拍手)
○新谷委員長 ありがとうございました。次に、佐藤参考人にお願いいたします。
○佐藤参考人 おはようございます。東京大学名誉教授の佐藤です。本日は、人事管理が専門です、その中で、今回の法改正の中で、仕事と介護の両立に絞って私の意見を説明させていただければというふうに思います。お手元に資料があると思いますので、飛ばしながら、ところどころ説明させていただければというふうに思います。今日お話ししたいのは、一枚目ですけれども、企業にとって、これから社員の高齢化はますます進んでいきますので、後でお話ししますように、仕事と介護の両立というのはすごく重要になってきます。ただし、企業も社員も、仕事と介護の両立の仕方について誤解が結構あります。仕事と子育ての両立と同じようにすれば仕事と介護の両立ができるというふうな誤解があるということですね。今回の法改正は、その点を解く上で非常に重要だなというふうに思っています。そういう意味で、法改正の評価については、仕事と介護の両立の仕方について、企業や社員に適切に、事前に情報提供するという点で貢献できるかというふうに思います。三ページですけれども、社員が四十五歳を過ぎると、親御さんは七十五を過ぎてきますので、大体七十代後半から高齢者、要介護、要支援の人がだんだん増えてきますので、そういう意味では、企業からすると、四十五歳、後半以降、つまり四十代後半から定年までの社員というのは、仕事と介護の課題に直面する層だということであります。それともう一つ大事なのは、本人もですけれども、企業も、誰が定年までに介護の課題に直面するか、これは事前に分からないんですよね。一定の確率で発生する。確かに、今、四十代前半で介護の課題がある社員は、四ページにあるように、このパーセントですけれども、じゃ、この人以外の人たちが来年、再来年、介護の課題に直面しないのかというと、そうは言えないんですよね。それともう一つは、これはある一定時点で介護している人の割合なわけでありますけれども、結婚している社員でいうと、親御さんは四人いる可能性があるんですよね。一人の親御さんの介護の課題が過ぎると、また別の、別の、場合によっては四人の親の介護の課題に直面する可能性がある。それが介護の課題であります。五ページですけれども、そういう状況がある中で、企業にとって、社員が仕事と介護の両立ができないと、先ほど、介護離職ということが起きたり、あるいは、離職しないまでも、今日親はちゃんと家で過ごせているかな、そういう心配を持ちながら仕事に集中することはなかなか難しいですよね。やはりモチベーションが下がってしまう。つまり、生産性が下がるということが起きてしまう。企業にとっても、やはり、社員が仕事と介護の両立をうまくマネジメントできないと、離職や生産性の低下という大きな課題を受ける可能性があります。社員にとっても、確かに仕事と介護の両立は結構大変です。ただ、辞めるともっと大変なんですよね。介護離職した人に調査をすると、六ページにありますけれども、やはり辞めなければよかったという人がほとんどであります。もちろん、ですから仕事と介護の両立が易しいという意味ではありません。ただ、辞めるともっと大変なんですね。そういう意味では、どういうふうに仕事と介護を両立しながら、できるだけそれを円滑にやれるような支援というのがすごく大事な状況にあるというふうに考えています。八ページですけれども、先ほどお話ししましたように、仕事と子育ての両立と仕事と介護の両立は違うんですよね。一番大きいのは、事前に、企業であれば、四十五歳以上の社員の誰が介護の課題に直面するか、いつか、いつ誰が、これは分からないです。本人もなんですね。親がいても、七十五だけれども今元気だなと、でも、翌年、庭で転んで腰の骨を折って要介護状態になる、こういうことが起きるわけですね。つまり、事前に予測できない。これがすごく大事であります。そういう意味では、そういう問題が起きる前から、親がいる限り、もし自分の親が要介護の状態になったらどういうふうに両立していいのかということを事前に知っておく、これがすごく大事なんですね。親が要介護になってから、どうしよう、これじゃ遅いんですよね。事前の知識を得ておくというのがすごく大事であります。それともう一つは、いつまで続くか分からない。これなんですよね。これが子育てとの違いであります。お子さんが生まれた、育児休業を取り、保育園に預けて短時間勤務を取り、すると、お子さんの成長に応じてどういうふうに仕事と子育ての両立をしていいか、ある程度見通しが立つわけであります。企業も、それに応じた支援もできるわけでありますけれども、介護の場合は、いつまで続くか分からないんです。九ページにありますけれども、平均五十か月ぐらいなんですよね。十年以上かかる人もいるんです。一か月の人もいる。これは分からないんですよ、事前に。ですので、例えば、自分で介護をしようとすると、介護休業期間が足りなくなるんです。しばしば、だから介護休業を延ばせという議論はあるんですけれども、じゃ、十年以上に延ばせるかという話なんですね。つまり、いつまで続くか分からないというのが介護の課題であります。そういう意味では、社員が自分で介護しちゃいけないんですよね。介護は、両立をマネジメントする、介護自体は専門家に任せるということがすごく大事になってきます。この点でも子育てと違うんですね。ですから、育児休業というのは、社員が子育てするような仕組みですよね、男性も含めて。介護休業は違うんですね。もちろん介護しなきゃいけないときもあるんですけれども、介護休業を使って介護を続けると、いつまで続くか分かりませんから、仕事を辞めるということが起きるんですよね。ですので、同じ休業といっても、中身が違う、目的が違うということがすごく大事であります。しかしながら、そのことを知らない社員がたくさんいるんです。十一ページにありますように、介護休業の制度や介護保険制度、両方についてきちっと説明している企業は半分を下回っていますし、社員も、介護休業や介護保険制度の仕組みについて知らないという人が多いわけであります。十三ページ、十四ページに、介護休業の利用の目的について社員や企業に聞いているんですけれども、社員だけじゃなく企業もまだまだ、介護休業は介護するための制度だと思っている人は結構いるんですよね。この辺を変えていくということがすごく大事だろうというふうに思います。そういう意味では、十六ページにありますように、社員が、親がいる限りいつかは介護の課題に直面する可能性があるという心構えを持ち、もし親が要介護になったら、自分が介護するのではなくマネジメントする、仕事と介護を両立することを優先するんだということをする。そのためには、介護保険制度の利用の仕方、例えば、地域包括支援センターを知らないという人がいるんですね。介護保険制度は認定の手続を経ないと使えないんですけれども、こういうことを知らないんですよね。一つは、四十歳のときに介護保険制度の被保険者になりますが、保険証は来ないんですよね。保険証が届くのは六十五歳です。つまり、四十歳になると介護保険料は取られるわけでありますけれども、自分自身が介護保険制度の被保険者というふうに知らない人は結構います。それはそうですよね、保険証がないわけでありますから。でも、自分は六十五歳の誕生月になると保険証は届くわけですけれども、実は、その前に、親がいる限り、親の介護の課題に直面したときに、子供が、親が要支援、要介護認定を受けたりとか、介護サービスの、在宅であればケアマネジャーを探したり、これは多分子供がやるわけですよね。そうすると、介護保険制度のサービスをどうすれば利用できるかということを知らなきゃいけないわけでありますけれども、そういう知識を欠いている人が多いということであります。そういう意味で、十九ページのように、社員が介護の課題に直面したときに、自分で介護するわけではなく、もちろん緊急対応はしなきゃいけないんですよ、その後、自分はマネジメントに徹して、仕事に戻れるようにしていく、このことを知っておくということであります。そういう意味では、介護保険制度の利用の仕方あるいは介護休業の利用目的、こういうものを事前に知っている、そして、自分に親がいる限りいつか親が要介護になるかもしれないという事前の心構えを持っておく、これがすごく大事だというふうに思います。そういう意味で、今回の法改正の評価でありますけれども、二十三ページに書いてありますように、今回は、社員が親等の介護の課題に直面したら、個別周知します。これはすごく大事だと思います、それまで知らないですし。あるいは、事前に、四十歳になったとき、これが一つのポイントだと思います、介護保険制度の被保険者になりますから。四十代後半ぐらいから親の介護の課題に直面する社員は増えてきますから。一つは、四十歳になったときに、介護保険制度の仕組みなり、親御さんはまだ元気かもしれないけれども要介護状態になったらこういうふうに両立するんですよというような研修をする、こういうことがすごく大事であります。そして、介護休業の目的ですよね。もちろん、緊急対応で介護しなきゃいけないこともあるわけでありますけれども、介護はいつまで続くか分からないので、介護休業というのは、両立体制を準備する、そういう体制をつくるための準備のために使う、これをきちっと社員に周知するということが大事であります。そういう意味で、法律上は介護休業という名称ですけれども、企業によっては、介護休業・両立準備休業。これだけでも違うんですね。今回も、多分、厚労省は、法律が通った後、そういうような情報提供を始めるかと思いますけれども、やはり育児休業にやや引っ張られ過ぎちゃっているということはあると思いますので、介護休業の違いということもきちっと分かるような情報提供も大事だと思います。最後に、これからますます社員自身が両立をマネジメントしていくときに誰と相談するか。もちろん、企業も大事ですけれども、介護の場合は個別性が高いです。まず在宅から始まるわけですから、そうするとケアマネジャーさんと相談する、これは結構多いんです。ただし、ケアマネジャーさんの仕事は、要介護者の状態をきちっと把握して、要介護者が質の高い生活を送るためどういう支援をすればいいかと考える、これが役割ですよね。でも、要介護者の家族はケアマネジャーに相談するわけですよね、仕事と介護の両立をどうしたらいいか。そういう意味では、ケアマネジャーさんがそういうことのアドバイスもできるようなこともこれからは必要になるのではないかというふうに思います。実際、ケアマネジャーの団体、ちょっと誤植もありますけれども、二十四ページ、日本介護支援専門員協会が、ワークサポートケアマネジャーという上乗せ資格、ケアマネジャーさんが要介護者家族の両立についても相談できるような仕組みをつくるというようになっていますので、こういうこともこれから必要になるのかなというふうに思います。あと、最後、家族の役割は何かということはこれから大事だと思います。是非その点も御検討いただければというふうに思います。どうもありがとうございます。(拍手)
○新谷委員長 ありがとうございました。次に、小野山参考人にお願いいたします。
○小野山参考人 日本労働弁護団本部事務局次長の小野山静と申します。本日は、日本労働弁護団本部事務局次長として、また、小学生の子供を育てる一人の親としてお話をさせていただきます。日本労働弁護団としましては、現在審議されている育児・介護休業法等の改正案について、主なものだけでも四点、問題点があると考えております。まず一点目が、子の看護休暇制度の見直しが極めて不十分だという点です。今回の改正案は、子の看護休暇を、対象年齢を現行の小学校就学前から小学校三年生修了前まで引き上げるという内容になっていますが、小学校三年生までとする合理的な理由はあるんでしょうか。お手元に配付しました、子の看護休暇制度に関するアンケートを御覧いただくと、日本労働弁護団が実施し、四月二十一日時点で七百十四件の回答が集まっております。このアンケートにおける、子の看護休暇制度は子供がどのくらい大きくなるまで必要ですかという問いに関する回答結果を御覧いただくと、小学校三年生まで必要であるという回答は僅か三・九%です。小学校卒業までという回答が四五・二%、中学校卒業までという回答が三二・四%となっています。小学校卒業まで必要であると回答された方の中には、病気の小学生一人では病院に行けないからという意見が多く見られました。また、中学校卒業まで必要であると回答された方の中には、中学生までは小児科扱いで受診には保護者の同伴が必要だから、また、田舎では通院に車が必要なため子供だけでは通院ができないという意見が見られました。実際に子育てをされたことがある方であれば、こうした意見は当然納得されると思います。国民の声に真摯に耳を傾けていただけるのであれば、子の看護休暇制度の対象年齢は少なくとも小学校六年生まで引き上げていただきたいです。小学校三年生までというのは、はっきり申し上げると中途半端です。また、今回の改正案は、子の看護休暇の取得日数については何ら触れていません。つまり、現行の日数のままということになります。しかし、一年間に五日、子が二人以上の場合には十日という現行の日数は、十五年も前に改正されたものです。十五年前と比較して、共働き世帯は約三百万世帯も増加しています。それでもまだ、十五年前に改正された日数で足りると思われますでしょうか。アンケートにおいても、現行の日数では十分ではないと回答した方は実に九二・五%に上ります。現行の日数で足りていると思う当事者なんてほぼいません。アンケートの結果を見ると、子一人当たり年間十日、二人以上の場合には二十日を希望する人は四四・三%、子一人当たり年間十五日、二人以上の場合は三十日を希望する人は四一・七%です。インフルエンザなどの感染症にかかった場合に、年に一度感染しただけでも五日間の看護休暇を使い果たしてしまうことがあります。子の看護休暇制度の拡充を求めているおかゆプロジェクトのメンバーの方も、既にインフルエンザ、溶連菌、扁桃炎で入院もあって、残り有給休暇五日、子の看護休暇二日ほどしか残っていない状況で、あと八か月、これで乗り切れるとは到底思えないとお話しされています。こちらに関しても、国民の声に真摯に耳を傾けていただけるのであれば、子の看護休暇の取得可能日数も是非速やかに見直していただきたいです。ちなみに、スウェーデンでは子一人につき百二十日間の看護休暇制度が設けられていて、フランスでも最長四か月の子供に付き添うための休暇というものが設けられています。さらに、今回の改正案は、子の看護休暇の有給化についても一切触れられていません。しかし、アンケートの結果を見ると、子の看護休暇制度を有給にすべきであるという回答は八二・九%に上ります。有給にすべきであるという回答の理由を見ると、有給でないと金銭面でも苦しい、子供とお金をてんびんにかけたくないという切実な声が上がっています。親であれば、経済的な心配をすることなく、病気の子供の看護に専念したいです。しかし、残念ながら、子の看護休暇を有給としている事業所の割合は二七・五%にとどまっています。子の看護休暇制度を本当の意味で労働者にとって利用しやすい制度にするには、法律による有給化が急務と言えます。二点目は、柔軟な働き方を実施するための措置に関する提案が不十分な点です。改正案では、柔軟な働き方を実施するための措置として、始業時刻変更等の措置、在宅勤務等の措置、短時間勤務制度、新たな休暇の付与、ベビーシッターの手配や費用負担、これら五つの中から事業主が二つ以上選択して措置を講じる義務を設け、労働者は事業主が選択した措置の中から一つ選べることとなっています。しかし、はっきり申し上げて、事業主が二つ選択して、その中から労働者が一つ選択することができる、まだそんな次元の議論をしているのかというのが改正案に対する率直な意見です。始業時刻変更等の措置、在宅勤務等の措置、短時間勤務制度、ベビーシッターの手配や費用負担、これら四つは日常的な働き方に関する措置と言えますが、全部必要かつ重要です。私も、夫と共働きで小学生の子供を今現在育てていますが、これら四つをフル活用して何とか仕事と育児を両立させているのが現状です。確かに、柔軟な働き方を実施するための措置を講ずる事業主の義務というものが新たに設けられること自体は前進と言えます。しかし、今回の改正はあくまで経過措置にすぎないと考えていただき、将来的には、原則としていずれの措置も労働者が選択できる制度を構築すべきであると考えております。また、柔軟な働き方を実施するための措置について、改正案では、子の対象年齢が小学校就学の始期に達するまでの子とされています。この部分を読んだとき、正直申し上げて、私は自分の目を疑いました。小一の壁が社会問題にもなっていて、早朝から出勤する保護者の子供を受け入れるために、大阪の小学校が朝七時に校門を開放することにしたというニュースが先月も報道されたばかりです。それなのに、柔軟な働き方を実施するための措置に関して、子の対象年齢を未就学児までにしようとしている。本当に子育てをしたことのある方がこの改正案を検討されたんでしょうか。小一の壁のほかにも、小三の壁も言われています。少なくとも子供が小学生の期間は、仕事と育児やキャリア形成の両立を果たすには柔軟な働き方が必要不可欠です。そのため、対象年齢は小学校六年生まで引き上げていただきたいです。三点目は、男性による育児休業取得に関する目標設定が不十分な点です。二〇二三年六月に出された、今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会の報告書では、政府において男性の育児休業取得率の目標を掲げる場合には、取得率だけでなく、男性の育児休業取得日数や育児、家事時間等も含めた目標の検討が必要であると記載されていました。ところが、改正案では、男性の育児休業取得率の公表義務の対象が拡大されただけにとどまり、男性の育児休業取得日数や育児、家事時間等も含めた目標の検討という部分が削除されてしまっています。なぜ、議論がこのように後退してしまうのでしょうか。出産、育児による女性の離職を防ぎ、男女共に育児と仕事やキャリア形成を両立できるようにしていくためには、男性の育児参加は不可欠であるということはもはや誰もが分かっていることだと思います。しかし、残念ながら、現状は、育児休業を六か月取得したのは、女性が九五・三%であるのに対し、男性は僅か五・五%であり、男性の育児休業は五日未満が二五%、五日以上二週間未満が二六・五%で、半数余りが二週間未満の取得となっています。男性が育児を手伝うのではなく、男性も女性も育児を共に分かち合うようにしていくためには、速やかに男性の育児休業取得日数の増加や家事時間等の確保も目指すべきであり、それらも含めた目標の検討が現段階から必要です。最後の点は、長時間労働の是正という観点が極めて希薄であるという点です。仕事と育児、介護の両立の最大の障壁は長時間労働です。現在の長時間労働による働き方が変わらないままでは、仕事と育児、介護の両立を幾ら掲げても、現実に家庭責任を負わされがちな女性労働者や、配偶者とともに育児や介護を担う責任感のある男性労働者がキャリア形成から阻害されてしまうことになります。また、両立支援に向けた制度をどんなに充実させても、周囲が長時間労働を行っている中では制度を利用しづらいというのが実態です。育児や介護もそうですが、誰しも、ほかの人と負担を分け合わなければ乗り越えられないような人生のステージがあります。私も、夫と育児の負担を分け合い、両親に支えてもらって、どうにか弁護士として十年以上働き続け、今日ここでお話をさせていただきました。女性労働者だけが育児や介護の責任を感じて勤務の継続やキャリアの形成を諦めるという状況を、もういいかげん打破していかなければいけません。今まさに育児や介護に向き合っている当事者の声に耳を傾けていただき、異次元と呼べる抜本的な法改正をお願いいたします。以上です。(拍手)
○新谷委員長 ありがとうございました。以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。これより参考人に対する質疑を行います。質疑の申出がありますので、順次これを許します。金子容三君。
○金子(容)委員 おはようございます。衆議院議員、長崎四区の金子容三でございます。今日は、貴重な御意見をいただきまして、大変ありがとうございます。私も、小学校六年生と四年生の男子を持つ親として、また、昨年までは民間企業で働いていた、そういった経験も踏まえて質問をさせていただければというふうに思います。まず、育児休業の期間に関しまして御質問をさせていただければと思います。柔軟な働き方を実現するための措置、これは今回の法改正で就学までというふうなところになっております。加えまして、看護等休暇、こちらも小学校三年生修了時点までというふうなことになりますけれども、私自身、コロナ禍でテレワークで働くことによって、それまで自宅から会社まで片道一時間通勤をしていたんですけれども、まず、その往復二時間の通勤がなくなったということによって、子供たちと一緒に朝御飯が食べられるようになった、それから夜も一緒に晩御飯が食べられるようになった、そういったことで、家族との触れ合いの時間というものが本当に増えたなと。それによって、今まで、コロナの前までは、遅くまで働いて、夜遅く帰ってきて、子供が寝た後にちょっと妻と話すみたいな、そういうふうな生活が続いていたんですけれども、テレワークの活用によって、私のワーク・ライフ・バランスというものも本当に変わったなというふうに思っております。しかし一方で、コロナが明けて、企業は徐々に徐々に、やはり出社を原則としていくというふうな形に戻っていったのかなというふうに思っております。家事、育児というふうに言われますけれども、料理を作ったりとか、洗濯、畳んで、それから皿洗いをするみたいな、これだけが家事というふうなことではない、家事、育児ではない。やはり、子供たちというものは、学校に行って、いろいろなことがあって、心のケアをしたりとか、あるいは、中学に近づいてくると受験勉強が忙しくなって、そのフォローもしなければいけない。そういう子供たちのケアというものは非常に多いものでありまして、これはもちろん、女性だけではなくて、親、両親で育てていかなければいけないというふうなことを最近本当に強く思っているところなのでございますけれども。まず、期間について、先ほど小野山参考人からは小学校六年生までに延長すべきだというふうな話がございましたけれども、ほかの参考人の皆様方におかれまして、事業者側のやはりニーズというふうなもの、そういったバランスもあると思いますけれども、期間について御意見をいただければなというふうに思います。
○布山参考人 御質問ありがとうございます。今回の柔軟な措置を小学校就学までということであれば、一応、子供が生まれてから三歳までは、育児休業を取り、その後、例えば育児休業を会社によっては延長したり、あるいは短時間勤務等で三歳まではそれでいく。その後、この法案の考え方、労働政策審議会の中で議論していたときには、三歳以降小学校就学までの間は、むしろ女性に関してもフルタイムで働きたいというニーズもありますし、それから男性については、それよりも前の段階、お子さん、前の段階から通常どおり働きたいというニーズがあると、できるだけフルタイムで働けるような選択肢をメニューとして措置をするという形で考えています。子の看護休暇について言えば、小学校三年修了時までの延長ということについては、実際に子供の年間の診療日数を見ると十歳以降は減少する傾向が見られて、それから、子の看護休暇自体は、少なくとも御両親がいる場合、男女共に、両親共に取れるような制度でございますので、そうすると、この関係、それから育児期の従業員を支える周囲の従業員との公平性の確保、そういうことを考えると、ケアの必要が高い小学校三年生までということで審議会の中では取りまとめました。以上です。
○村上参考人 御質問ありがとうございます。まず、三歳になるまでの子を養育する労働者に努力義務としてテレワークというお話でございますが、私も、子供を育てたことから考えると、これはやはり三歳までというよりは、小学校に入るまで延ばしていただきたいなというのがちょっと感覚としてあります。やはり、保育所に預けていると、ほかの子供が熱を出したらすぐに熱がうつってしまうとか、それですぐ呼び出されるんですね。それは男性ではなくて、やはり母親にかなり電話がかかってきて、行かなきゃいけないということがすごくあって、何で父親じゃなくて母親ばかりなんだろうとすごく思っていたことがあるんですよ。そういうことも考えると、やはり小学校の始めまでは、入るまでは、テレワークというのは結構、コロナ禍でも利用はさせてもらいましたけれども、今もかなり便利なツールだと思っておりますので、テレワークに関しては、言ってみれば努力義務ではなくて義務化していただいて、小学校始期までというのがありがたいかなとは思います。それからあと、看護休暇なんですけれども、小学校三年生まで延ばされたということなんですが、ありがたいことに、私の子供たちはそんなに病弱ではなかったので、余り看護をする機会というのはなかったんですけれども、やはり小学校に入って三年生くらいまでは、小学校に慣れて過ごしていくのに、ちょうど小学校三年生というのは一つの区切りじゃないかなと思っていて、病気なんかも、やはり三年生ぐらいを過ぎるとかなり安定してくるのではないかと思うんですね。ですので、もちろん、小学校六年生までとしていただければすごく助かるとは思うのですが、一つの区切りとして、小学校三年生までというのはいいのではないかなというふうに思います。以上です。
○山口参考人 ありがとうございます。短時間勤務、育休など様々な施策について、対象となる子供の年齢を引き上げていくこと自体は、より子育てに対して時間をかける余裕があるという意味ではプラスの面があると思います。ただ、同時に懸念してしまうのが、特に女性に起こりやすいのですが、マミートラックに押し込められてしまう、子育てがあなたの仕事の中心であって、家の外で働く部分というのはあくまで副次的なものですよということにされてしまうのではないかという懸念があります。経済学の研究でも、国ごとによる育休制度の違いがどのように女性の就業に影響を及ぼすのかを見た研究というのが複数あるんですが、例えば、育休ですと、一年程度だったら女性の就業にとってプラスであるんですが、三年ぐらいに長くなってくると今度は就業にマイナスになってくるという側面があります。したがって、もちろん、子供が大きくなっても短時間勤務が使えるというようなプラスの側面もあるんだけれども、同時にマイナスの面もある。子の福祉を考えた場合には、むしろこれは、病児保育などの制度の充実で対応するという方法もあるかもしれないというふうに考えています。そして、女性だけに育児、介護がどうしても期待されてしまうというマイナスの側面が大きくなってしまうという点に対して、育児休業の取得と同様に、男性だけが取れる枠というのを設けて、男性の取得を促すというのも一つの解決策かなというふうに考えております。以上です。
○佐藤参考人 今回の、育児休業、短時間勤務、その後の小学校就学までの柔軟な制度、二つ選択ということで、あと、子の看護は小学校三年まで。今、山口委員が言われたように、基本的にはカップルで子育てをする、かつ、女性もフルタイムでできるだけ早く仕事に復帰し、フルタイムで両立できるということを考えると、僕はこれで基本はいいのではないか。ただし、大事なのは二つあります。一つは、男性も含めた勤務先の働き方改革ですよね。これが同時に進んでいくという前提だと思います。ですので、ここに書かれていませんけれども、社員全体の働き方改革、つまり、フルタイムでも無理なく仕事と子育てを両立できるような、そういう全体の働き方を用意する。もちろん、保育サービスや病児保育、こういうことも大事ですけれども、それを進めていくということがすごく大事かなというふうに思います。あと、子の看護休暇をもし延ばす場合は、大事なのは、社員全体とのバランスというのを考えて、僕は、やはり病気休暇などを広げていく中で、本人や家族のという中で入れるというのはあり得るかと思います。つまり、子育て中の人だけじゃなく社員全体の、日本は、病気休暇をきちっと企業の中で制度化していくという中で組み込んでいくというのは、小学校三年の上についてはあり得るかなというふうに思います。
○金子(容)委員 ありがとうございます。ちょっと時間がなくなってしまっているんですけれども、次に、介護に関しまして佐藤参考人に御質問をしたいと思います。大体四十代半ばぐらいから介護が発生するというような方が多いと思うんですけれども、実際、今は結構晩婚化が進んでいて、二十代後半とか三十代前半から介護を行うというふうな人も結構増えてきているのではないかなと思います。ただ、その年代だと、まだまだお金が、給料も少なくて、親の介護をするのにちょっとお金が足りないというふうな、そういった切実な課題というものがあったりすると思いますけれども、そういった方に対するあるべき支援制度の在り方について御質問いたします。
○佐藤参考人 どうもありがとうございます。四十代後半ぐらいから、親がいる限り、介護の課題に直面する人は増えるんですけれども、御指摘のように、二十代、三十代でもいらっしゃる方はいます。ですから、そういう意味では、若い人たちも含めて、仕事と介護の両立支援、すごく大事だと思います。その上で、お金のことなんですけれども、まず大事なのは、親御さんの介護に要するお金は誰が負担するのか。基本は親のお金を使うんですよね。ここは、結構これも誤解があって、子供が財政的な負担をするのではなく、もちろん、親の経済状況、いろいろでありますので、一律に全て親のというわけではありませんけれども、基本的には、私は、親の年金収入なり貯金等を使って親の介護に関わる、精神的なサポートと両立支援のアドバイスということが子供がやる役割ではないかなというふうに思います。
○金子(容)委員 ありがとうございます。最後に、中小企業にとっては、大企業よりも負担が多くなる、重くなるのではないかなというふうに思います。中小企業の方が少ない人数で事業をやっておりますので、代替要員が確保できないとか、そういったいろいろな問題があると思いますけれども、中小企業の両立支援制度のあるべき姿について布山参考人と山口参考人に御質問いたします。
○布山参考人 ありがとうございます。育児、介護の支援については、会社の規模にかかわらず、やはり全体的に同じように行うべきだと思っております。ただ、その中で、先生御指摘のとおり、中小企業の対応というのはなかなか難しい点もありますので、これは、政府の中でやる施策について助成をしていただいたりだとか、あるいは、特に代替要員の確保のところについては、行政の方でもサポートしていただくということが重要ではないかというふうに思っております。以上です。
○山口参考人 ありがとうございます。もちろん、中小企業においては、人数が少ないこともあり、育休で欠員が出てしまうと仕事を進めることが難しくなってしまうという問題があるわけですが、同時に、中小企業の今後の将来的な存続を考えた場合に、育休、介護休業というのをきちんと提供できるような体制にしていなければ若い優秀な労働力を確保することができなくなってしまうため、中小企業であっても、今後は育休、介護休業を取れるような体制にしていくことが必要だというふうに思っています。その上で障壁になるのは、規模の小ささというのはもちろんそうなんですが、必ずしも効率的な経営がなされていないのではないかという点について懸念しております。特に、中小企業において男性の育休取得が進んだ企業においては、ある意味、働き方改革、具体的には、IT投資などを行うことによって情報の共有化などを進めることによって、効率的な人員配置を可能にした好事例などが既に報告されておりますので、そういった取組を支援していくことによって、中小企業においても働きやすさというものを高めていけるのではないかというふうに考えております。
○金子(容)委員 ありがとうございました。質疑を終わらせていただきます。
○新谷委員長 次に、井坂信彦君。
○井坂委員 立憲民主党の井坂信彦です。本日は、前半はまず介護のこと、後半は育児のことについて伺いたいと思います。まず、村上参考人に介護を伺います。介護離職の原因は介護サービスが十分に提供されないからだというお話がありました。そして、その介護サービスが足りないのは介護の給料が安過ぎて人手不足だからということであります。介護職全体で見ると、月給の方の平均賃金に着目しがちなんですが、例えば訪問介護事業所で訪問介護員をされて現場を支えている方は主に非正規雇用の方が多いと認識しています。そこで質問ですが、訪問介護員のうち非正規雇用の方の平均月収というのは幾らぐらいで、どのような特徴が見られるのか、また、訪問介護員の人材不足対策としてどのようなことが考えられるのか、伺います。
○村上参考人 御質問ありがとうございます。おっしゃるとおり、訪問介護サービスの主力というのは、非正規雇用の時給で働く皆さんです。これはほかの介護サービスとは違います。この方たちの働き方というのは、御自分の自宅から御利用者のお宅へ直接行ってケアをしてまた自宅に戻ってくるという、直行直帰の働き方になります。ですので、例えば、九時から十八時まで拘束されているのではなくて、ケアの時間と、あとは、連続して稼働する場合には移動時間、こちらが拘束になります。月収は、時間にもよるんですけれども、二〇二三年度の調査では平均十三万円弱、年収が百五十五万ぐらいです。時給に関しましては、身体介護と生活援助というのが分かれていまして、時給は、身体介護が千五百二十円ぐらいで、生活援助が千二百二十円ぐらい。ですので、時給自体はそんなに他産業と比べて大差ないというか、むしろいいくらいなんですけれども、やはり、この方たちのケアの時間ですね、三十分とか一時間、連続したらその移動時間、こちらの部分に時給が発生するという細切れの働き方になっているので、このような収入になってしまいます。訪問介護員の人材不足対策について、もちろん処遇改善は必ず必要なんですけれども、働き方の問題というのもあると思います。介護保険制度が始まった頃というのは、今のように人材不足が深刻ではなかったと思います。ただ、時がたつにつれて高齢者が増えてきて、要介護者も増えてきたということで、そこに訪問介護員の伸びがついていっていないということなんですね。時給の訪問介護員の方というのは、子供が幼稚園に行っている間とか、日中空いている時間とか、あとは、生活費の足しになれば、そのような感覚で、専業主婦の方が多かったんですね。ところが、共働き世帯が今増えています。総務省の労働力調査によりますと、介護保険が始まった二〇〇〇年では専業主婦世帯が四九・三%、令和五年では二八・八%と、今はもう七割が共働き世帯になっています。もちろん、その背景には、社会の変化とか、女性活躍推進法とか、あと男女の意識の変化、あと物価高騰、様々な要因があると思うんですけれども、そうなると、この細切れの働き方ですね、専業主婦から転向する方が多かった時給の訪問介護員というのは、もう不足するのは明らかです。私どもNCCUは、この不安定な働き方をなくして、多様な働き方という観点から、短時間正社員制度の導入というのを推進しています。子育て期で、子育てが終わった方がフルタイムで働けるようになったら正社員になるということであれば、人材も安定してくるのではないかというふうに思います。以上です。
○井坂委員 ありがとうございます。続いて、ちょっと村上参考人に介護の処遇改善の実際について伺いたいと思います。事業所が処遇改善加算を取っているのに、それが職員の賃上げにつながっていない、加算をもらえていないという声、私も地域を回っていると本当によく聞くんです。そのことについてどう思われるかというのが一つと、それからあと、今年の二月に始まった介護職員処遇改善支援の補助金、月額平均六千円相当の引上げとなっていて、二月、三月は一時金として支払って、四月からは月々払うということになっています。これも質問なんですが、現時点で分かっている範囲で結構ですので、賃金がどの程度上がっているのかということについて伺いたいと思います。
○村上参考人 御質問ありがとうございます。処遇改善につきましては、法人の経営状態が厳しい場合、具体的には、キャッシュフローが不足をしていて事業が継続できないとか、あと、長期的に赤字が継続している、こういった問題がある場合には、処遇改善加算を取得しても、特別な事情に係る届出書というのがあるんですが、これを出すことによって、それを職員に配分しなくてもいいことになっているんです。ただし、その経営状況が改善されたら速やかに配分することということになっているんですけれども、こういった、経営上の課題がある場合に処遇改善加算をいただきながらも配分しなくてもいいというルールがあるわけなので、当然、厳しい経営状況、特に訪問介護事業所は四割近くが赤字だというデータがありますので、その事業所が処遇改善加算を配分していないということは当然あることだと思っています。今回の訪問介護事業者に対して基本報酬を下げて処遇改善加算をアップしたという方法を取ったことに関してなんですけれども、先ほど申し上げた仕組みがある限りは、基本報酬を下げたことによって赤字になれば、たとえ処遇改善加算を上積みしていても、その上積みして得た分を職員に配分しない特別な事情があるんだということを法人が訴えれば、まあそういう法人が増える可能性が今後出てくると思うんですね、処遇改善加算分のアップ分がそのまま職員に行き渡らないということが更に増えるということが懸念されています。一方で、処遇改善加算の対象者であるにもかかわらず、支給されたかどうかが分からないという人が、私どもの調査でも一定程度います。その理由は、支給ルールが分かりにくいということなんですね。これは制度の仕組みの問題だと思います。加算が創設されたときから、制度そのものが、これは加算分というように、明確に分けて支給するようにというふうになっていなかったんですね。ですので、加算を処遇改善手当という名称で支払っているところとか、あと、定昇に使っているところ、それとか、両方のやり方で支払っているところとか、既存の手当に積み増ししていっているところ、いろいろあって、使われ方が多様化していて、複雑な配分になっているんです。ですので、給与明細の中で加算分を切り分けて記載するということができなくなっています。ですので、制度そのものが明確に分けて支給するようにとなっていればこのような声は出てくることはなかったというふうに思います。それからあと、二月から始まりました支援補助金なんですけれども、まず、六千円ということが言われているんですが、六千円というのは平均額であって、必ずしもその金額だけもらえるわけではありません。数字にすごくインパクトがあって独り歩きをしてしまうということがこれまでにもありました。一番大きなインパクトがあったのが、二〇一九年十月からの特定加算ですね。こちらで、勤務年数が十年以上の介護福祉士に八万円程度の処遇改善を行うということだったんですが、この八万円が独り歩きをして、それで私どものところにも毎日電話がかかってきて、私は八万円もらえるんでしょうかとか、勤続十年以上なんだけれどもどうなんだとか、すごい多くの問合せがあったんです。ですので、実際にその数字どおりの金額がもらえなかったときに現場の人たちのモチベーションにかなりの影響を与えるということは、御承知おきいただきたいと思います。現時点で、支援補助金分だけで大体平均すると四千円ぐらい、まだ交渉真っただ中なので全ての数字は出そろってはおりませんけれども、四千円ぐらい。施設に関しましては、介護職員を法定人員以上に職員を配置しているところがほとんどですのでもちろんその六千円にはなりませんし、訪問介護についても、時給制の方が多いので常勤換算すると六千円にはならないというところでございます。以上です。
○井坂委員 処遇改善加算というのはなかなか現場では必ずしもうまく機能していないことがあるということで、我々もやはり本体の報酬引上げが必要だというふうに考えております。続きまして、今度は、育児のことを山口参考人と、それから小野山参考人に同時にお伺いしたいと思います。一つは、男性の育児参加についてです。育児休暇を増やしても少子化は余り改善しない、むしろ、土日も含めて男性が育児、家事を何時間するかの方が少子化には影響するというデータがあったかと思います。山口参考人は、男性が家事、育児をしやすくなる踏み込んだ施策が必要だとおっしゃいましたし、小野山参考人も、男性の育児、家事時間の目標がないのは駄目だと厳しくおっしゃいました。それぞれ、どのような施策が考えられるのか、先進国の例、アイデアなど、もしありましたらお願いしたいと思います。
○山口参考人 ありがとうございます。男性の育児参加というのは、非常に、少子化対策としても重要だというふうに認識しております。特に日本においては、男女の間で家事、育児時間の差というのが非常に大きくなっています。今回、男性の育休の取得状況についての公表義務があるんですが、実際の日数となると実態としてはかなり寂しい状況になっているということが指摘されています。特に、取得状況だけの数字を見かけ上をよくしようとして、一日でも二日でも取ったら取得したとして報告できるため、期間として短くなっています。したがって、取得期間についての公表義務づけというのも一つのよい方向性ではないかというふうに思っています。また、男性の育休取得を進める上で諸外国で有効だった取組の一つとしては、育休の給付金の引上げというのもございます。これについても、日本で短期間でよいから更に充実させるというのも可能性としてはあるのではないかというふうに思っております。そして、日本特有の状況として踏まえておきたいのが、周囲に気兼ねしてしまうというものですね。これについては、民間事業者の中で、周囲の同僚に対して、支援してくれたことに対して手当を支払うという取組が起こっていて、それによって周りも納得するし、本人も気兼ねしないで取れるようになったということが報告されていますので、こういった施策について財政的なバックアップを行政の方から行っていくことも有効ではないかというふうに考えております。以上です。
○小野山参考人 御質問いただき、ありがとうございます。まず、先ほども申し上げたように、長時間労働の是正が大前提ではないかなというふうに思います。フランスは、週法定労働時間が三十五時間制を取っていまして、週三十五時間制が生活に与えた影響に関する調査というものが二〇〇一年になされていて、もうかなり前なんですけれども、もうそれぐらいからフランスは法定労働時間が週三十五時間というふうになっているということになりますが、三二%の男性、三八%の女性が、そうした長時間労働の是正後、家庭生活と職業生活の両立が容易になったという回答をしていたりしますので、やはり、実質問題、そこは、先ほど土日のお話がありましたけれども、家事、育児時間に男性がどれだけ関与をするかというところ、そこを改善していかないことには先に進まないのではないかなというふうに思っております。あと、男性の育児休業なんですけれども、育児休業を取得しても少子化が改善されないというデータもあるのかもしれませんが、やはり、まずは、今、育児休業取得率が非常に低い状態ですので、そこを更に改善した上での結果を見ていく必要があるかなと思っております。男性の育児休業を取得しやすくするためには、先ほどもお話がありましたけれども、一部期間だけでも給与相当額を全額保証するとか、経済的な不安をなくすということですね。あと、人事上の不利益を一切なくすというところも、労働者側の弁護士としては、やはり非常に重要であると考えております。あとは、経営方針として事業主の方にも育児休業の取得を推進していただくという辺りであったりとか、育児、介護の理解促進のための研修の実施、あと、育児取得者に不公平感を抱かないような職場風土というものを醸成しなければ、やはり、事件として、ハラスメント、マタニティーハラスメント、パタニティーハラスメントの事件も多数扱っていますので、そうしたところを改善していく必要があるというふうに思っております。以上です。
○井坂委員 ありがとうございます。私も子育て支援とかを本当に促進をしている立場なんですが、最近気になっているのが、山口参考人もちらっとおっしゃった、周りの人にしわ寄せが行ってしまうという問題。ネットなんかを見ていると、子持ち様がまた早く帰ってしまった、こっちはもうまた忙しくなるみたいな、ちょっと分断を生むような形になりつつあるので、おっしゃったような、バックアップの方への手当、それに対する補助金などというのは、今日、本当にいいアイデアをいただいたと思いますので、また質疑に生かしてまいりたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
○新谷委員長 次に、遠藤良太君。
○遠藤(良)委員 日本維新の会の遠藤良太でございます。本日はよろしくお願いします。貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。私からは別の観点というか、男性の育児休業取得が望ましいということは前提であるんですが、一方で、男性が自宅に滞在する時間が長くなっていく、その中で、親子関係の深まりにも寄与するということもあるんですが、男性が長期間自宅にいることでむしろ夫婦関係に関して悪化したりということも考えられると思います。一方で、意図せずに離婚が起きてしまったりとか、こういうことが考えられるとすると、出生率を引き下げる原因にも、引き下げる方向性に働く可能性もあるんじゃないかなというふうに思うんですが、この点について、五名の参考人に御意見をお伺いしたいと思います。
○布山参考人 御質問ありがとうございます。男性が家で仕事をすることによってどういうふうになるかというのは、各それぞれの御夫婦間の内容だと思うので、なかなか私の方から、こうではないかということは言いづらいんですが。でも、少なくとも、私ども、イコールパートナーシップという中で、男女共に仕事も育児、介護も行うということを是としておりますので、それぞれの御家庭の中できちんと、お互いに、変な役割分担をせずにそれぞれやっていただくということがよろしいのではないかというふうに思います。
○村上参考人 御質問ありがとうございます。自宅に滞在する時間が長くなって夫婦関係が悪化するのではないかというようなことでございますが、恐らく、旦那さんの方が自宅にいたら奥さんの方が外で働くとかそういうような感じ、二人が一遍に自宅にいるということは余りないのかなという感じがしました。自分がコロナのときにどうだったかなということを考えたときにそんな感じがしました。それからあと、男性の方が自宅で仕事をする場合には、リビングで子供たちが騒いでいるところではなくて、どこか一室で真剣に集中してテレワークとかするという方法も考えられると思うので、御自宅の中で働く場所というのをちょっと考えられて、それで夫婦関係が悪化しないような形を取っていただければなと思いました。以上です。
○山口参考人 御質問ありがとうございます。夫婦仲に対する影響なんですが、男性の育休取得で見ると、夫婦仲にとってはプラスであったという報告が研究の中ではされております。一方で、育休を取ることによってかえって妻側の不満が高まったという事例、日本では確かに耳にすることが多いんですが、そうした事例に共通するのは、いわゆる取るだけ育休になってしまっている、男性の側に少し準備が足りなかったという問題があったと思います。諸外国で、あるいは国内でも、スムーズに育休を男性が取ることによって夫婦で協力して子育て期を乗り切った事例なんかを見てみますと、子供が生まれる前の段階に両親学級なんかに参加して、どういうふうに有効に育休期間を活用して二人で大変な時期を乗り越えていくかということについて、よい計画がなされていたわけです。ということは、子供が生まれる前に両親学級のようなものも既に提供されているんですが、行政が土日のような休日、一般の方が参加しやすいような時期にやるですとか、あるいは会社の中でやっていただいて、そこに対して補助金をつけていくといった形で、計画的に育休期間に入っていければよいのかなというふうに思います。また、出生率に対する影響なんですが、これはまだはっきりとしたことは分かっていないんですが、一事例として報告されているのは、出生率に対しては必ずしもプラスではない、その理由としては、今までは女性が育児をやっていたから、男としては子育て負担というのを分かっていなかったんだけれども、育休を取るようになると、こんなに大変だったら子供は余り欲しくないなみたいなことも分かったということも報告されています。過渡期ですので、そういった変化が日本でも一部には出てくるかもしれないんですが、やはり長期的に見ると、子育ての大変な時期を夫婦で乗り越えるということは、プラスの方が大きいのではないかというふうに考えております。
○佐藤参考人 男性が育休を取ることの意味なんですけれども、育休を取ることに目的があるのではなく、育休を取ったことが長い子育てに男性が関わることにつながるかどうかなんですね。そうすると、育休の取り方が大事なんですね。妻が産前産後休業を取る。今、産後休業中、これは母体保護の時期ですから、このときに夫が産後パパ休業、休暇が取れますから、そのときに取る、妻がきちっと休めるようにする。その後、妻が育休を取るときに夫の方は仕事に復帰する。それで今度、妻が育休から短時間勤務に、一般的に多いですよね、そのときに今度男性が育休を取る。つまり、夫婦共に同じときに育休を取る、これは駄目なんですよね。単独育休が大事なんです。男性が一人で家で子育てをするような取り方、今みたいな組合せで取っていくというわけです。それからもう一つは、夫婦で半年、半年育休を取る方が所得保障が一番いいんですよね。そういう意味では、夫婦で育休を半年、半年取るというのが収入面でもプラスになりますので、是非夫婦で育休の取り方を話し合って、育休を取ったことが夫の子育て参加につながるようなことを是非進めていただければというふうに思います。
○小野山参考人 夫婦の関係が悪化するのではないかということですけれども、先ほど申し上げたように、手伝うではなく、分かち合う、御自身も担うという意識を持っていただければ、そういった争いとか悪化というのは減るのではないかなというふうに思っております。内閣府の男女共同参画社会に関する世論調査が令和四年に発表されておりますけれども、二十代、三十代の男性のうち約八割が、育児について配偶者と半分ずつ分担を希望するというふうに回答されていますので、先ほどお話がありましたけれども、今まさに過渡期なんだと思いますけれども、そうした意識が変わっていく、それこそ教育とかも必要かもしれませんが、そういった中で、次第にそこは、共にやるというふうになっていくのではないかと思っております。
○遠藤(良)委員 ありがとうございます。次に、我が党は、ベビーシッターなど様々な子育て支援に利用できる子育てバウチャーというのを提言しているんですけれども、その中で、児童手当の拡充の現金給付ですね、現金給付と比較してその効果というのはどうなのかと思うんですが。例えば、学校給食の無償化についても、市区町村でばらつきがあって、実際できているところとできていないところがある。こういった観点で、現金給付がいいのか、こういう学校給食の無償化が効果があるのかというのは、この辺り、どういうふうなお考えをお持ちなのか、お尋ねしたいと思うんですけれども、布山参考人と山口参考人と小野山参考人にお願いしたいと思います。
○布山参考人 御質問ありがとうございます。どういう形がよいかというのは、それぞれどんな施策をしていくかということに尽きると思います。今、少子化ということの中でどんなことをやっていくかという中で、全体的な財政と、それから子育てをしている方のニーズと、それからそれを支える方というか国民全体の社会的な機運とともに行う形なので、どちらがどういうふうにというのは、やはり組合せということもあろうかと思いますし、結局、施策の内容次第ということになるのではないかというふうに思っております。以上です。
○山口参考人 ありがとうございます。現金給付についてですが、これはいろいろな国で導入されていまして、それに対する出生率への影響というのも評価されていますが、それほど大きくはないということが知られています。そういった意味では、費用対効果が必ずしもよくない政策だというふうに認識しております。それに対して、バウチャーあるいは現物給付というものですが、具体的なその中身が重要になってくると思います。バウチャーなら何でもいい、現物支給なら何でもいいというわけではなくて、やはりニーズが高いものに絞って行うことが重要だと考えております。特に、遠藤委員が御指摘になったような学校給食の無償化については、非常に重要で、優先度の高い政策になってくるというふうに考えております。給食が提供されることによって、子供の健康面でのプラスですとか、登校の出席率が上がるというのは海外の研究でも報告されております。また、日本においても、子供にとってプラスであるということについては国民の中で了解が取れているものだというふうに思っています。一部の自治体ではもう既に無償化に取り組まれているわけですが、給食の必要性というのは地域にかかわらず間違いなくあるものですので、これを国で一律に行っていくというのは理想的な政策の進め方だと思います。同時に、無視できないのが、学校給食を無償化することによって、給食費の徴収の手間の削減になると思います。今、先生方は大変お忙しくしていらして、子供と向き合う時間が足りなくなっているわけですが、先生にはやはり教育に時間を使っていただきたいところですので、そういった観点からしても、学校給食の無償化というのは望ましい政策だというふうに考えております。
○小野山参考人 御質問いただき、ありがとうございます。ベビーシッターのバウチャーというお話がありましたけれども、やはり、なかなか労働者の賃金が上がらない状況が長年続いています。そういう中、ベビーシッターを利用したいけれども費用が高くつくので利用が難しいという方も非常に多いのではないかと思います。私自身、先ほど申し上げたように、ベビーシッターも含めてフル活用をしている状況ですけれども、毎月の負担は決して軽くはないなと思う中、そういったバウチャーとか支援がある中で何とかやりくりをしているところがありますので、是非、そういったところの拡充というのは進めていただけるといいかなと思っております。
○遠藤(良)委員 ありがとうございます。介護についてちょっとお尋ねしたいんですけれども、人材の確保が難しくなってきている中で、今後更にそういう傾向が強まるということが予想されています。実際、今、外国人の積極的な活用という方向性もあると思いますし、家族介護者に現金給付をしていくという方向性も考えられると思うんですが、この点について、村上参考人、山口参考人、佐藤参考人にお尋ねしたいと思います。
○村上参考人 ありがとうございます。人材確保がすごく厳しくなってきて、外国人の方を介護者としてということでございまして、今、国の方も外国人労働者を介護現場に入れるということをすごく積極的にされております。私どもNCCUの中でも外国人の組合員は増えてきています。やはり人手が足りませんので、いろいろな、アジアの方に行って法人がいろいろ契約をして入れる、そういうパターンがすごく多くなっているんですが。外国人の方で懸念されることというのが、やはり言葉の壁というものがありまして、御利用者の少しの感情だとか、あとは慣習だとか、それとか、方言だとか、特に認知症の方たちとの会話とか、そういうのがかなり厳しくなるのではないかということが懸念されています。ですので、特に訪問介護の方に今度、外国人を入れるということになっておりますけれども、ちょっとこの辺りは慎重にしていかなければならないのではないかなというふうに思います。また、外国人の方も、ほかの産業のように、介護の方に、どんどん増えてきているというか、増加率がすごく低くなっているんですね。以前に比べて、入ってきてはいるんですけれども、その増加率がすごく低くなってきておりますので、そういう方たちは、皆さん、欧米の方に行かれる、あえて日本には来ないというような形を取られています。やはり言葉の壁というのはすごく大きいんだと思うんですね。あとは賃金の問題です。ですので、そういうところは、外国人の方を入れるにしても、やはりもう少し日本の介護の現場を整理してからの方がいいのではないかなというふうに思っています。あと、家族介護者に現金給付というのは、ちょっと私どもとしては賛成いたしかねるというところでございます。以上です。
○山口参考人 介護を行う家族に対して給付を行う点について意見を申し上げます。介護は、多くの方が考えているよりも過酷な仕事になってしまうということが専門家から指摘されています。したがって、家族に給付することによって家族自ら介護を行ってもらうことを促すよりも、むしろ、佐藤参考人からお話がありましたように、家族はマネジメントに徹して、介護専門職の方に介護をお願いする方が、御本人の経済的な状況にとっても、仕事を続けやすくなるのでプラスであると思いますし、同時に、家族であるからこそある意味甘えが出てしまって、深刻な場合は虐待にもつながってしまうという事例も報告されておりますので、家族に給付をするのではなくて、専門家が介護を行うのが望ましいというふうに考えております。
○佐藤参考人 前半の介護分野における外国人の方の活用ですけれども、介護労働安定センターの調査、これを担当してやっているんですけれども、施設について言えば、受け入れている事業所の方の評価は比較的高いです。受け入れていないところは、いろいろ心配であるという方が多いんですけれども、受け入れている事業所は、確かに言葉の問題はあるわけでありますけれども、入居者さんから好評とか、職場の活性化、比較的若い方がいらっしゃるので。そういう意味では、きちっとした、受け入れて教育できるような施設、特に施設が受け入れるのはあり得るかなと。訪問介護について今検討中のようですけれども、やはりコミュニケーションの問題があるので、少し時間が必要かなと。あともう一つは、やはり、介護は今、日本の資格がもしかしたら国際化する可能性はあり得るので、中国、アジアでも高齢化が進んでいますので、日本で介護の資格を取っていただいて、日本で覚えていただいて戻るというようなことにつなげるのもあるかなと思います。あと、家族介護ですけれども、やはり、介護福祉士の方でも自分の親の介護はできないと言います。つまり、手を出し過ぎるんですよね。やはり大事なのは、親を介護すればいいわけじゃないですね、自立支援であります。専門職の方でも自分の親の介護はできないと言います。そういう意味で、やはり、家族は精神的なサポート、何もしないわけじゃないですよね、精神的なサポート、マネジメント、介護自体は専門職に任せるというのが望ましいのではないかと思います。
○遠藤(良)委員 貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。質問を終わります。
○新谷委員長 次に、伊佐進一君。
○伊佐委員 公明党の伊佐進一です。本日は、貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。早速質問させていただきます。まず、布山参考人と山口参考人に伺いたいというふうに思います。こうした今回の法案でいろいろな制度が新しく始まりますが、これが生かされるかどうかというと、そのベースになる意識というのが非常に大事だと、いわゆるアンコンシャスバイアス、無意識の思い込み、これを解消していくことが、いろいろな、様々な支援の土台になるんじゃないかというふうに思っております。男女間の不平等、性別役割分担意識をどう解消していくのかということで、実は、当たり前だと思っていたことがそうじゃなかったんだ、これがアンコンシャスバイアスだったんだという気づきの機会の提供というのが非常に大事だと思っております。山口参考人の方も今日も言及がありましたけれども、制度はあっても取りにくい雰囲気があると。これもアンコンシャスバイアスにも関係しているのかなというふうに思いましたが、じゃ、これを改善していく、こうした意識の是正に向けて、これは政策的にやるのはちょっと難しいのかもしれませんが、具体的にどういう取組ができるのかということを布山参考人と山口参考人に伺いたいというふうに思います。
○布山参考人 御質問ありがとうございます。まず、例えば、出産、育児期のライフイベントに応じて柔軟な働き方を選択することで就労継続できる環境づくりというものをきちんと社内に周知するということがあると思います。今回の改正案の中で、育児期の方にそれぞれ制度の内容を説明して、それを周知して、意向確認をする、そういう一連の取組がございますが、周りの従業員の方についても、同じように、そういう制度だということをきちんと説明して、協力体制をつくっていただくというのがあると思います。先生おっしゃるとおり、いわゆる機運醸成なので、こうすればこうということはないかと思いますが、ただ、一つ一つ、男女のそれぞれ、やはり、特に若い世代では考え方も変わってきておりますので、少なくとも管理職の方がまずは模範を示して、会社全体の取組の中に、経営トップから働きかけるとか、あるいは、それぞれの管理職研修なり研修の中でそういうこまをつくるとかということで幅広く浸透させていくということが、ちょっと時間はかかるかもしれませんが、重要だと思います。
○山口参考人 御質問ありがとうございます。もちろん、意識下にあるアンコンシャスバイアスを直接動かすような施策というのは少し考えにくいと思うのですが、それ以前の問題として、まだまだやはり、世の中にはもっとはっきりした、露骨な差別なりバイアスなりというのがあるので、これに対してきちんと、問題であるという指摘をしていくことが重要になっていくと思います。企業の活動においては、企業内の格差を可視化する、男女間賃金格差の可視化ですとか、役職の女性比率といったものを詳しく示していくことが必要になると思います。既に男女間賃金格差については公表が義務づけられているわけですが、その内容が非常に大ざっぱなものにとどまってしまっているため、少なくとも大企業については、男女間賃金格差がどこから来ているのか、勤続年数なのか、役職なのか、あるいは学歴なのか、専門資格なのかといったところまで詳しく踏み込んでいって、どこが男女間格差の源泉になっているかというところまで公表するようなことを求めていく必要があると思います。そうした数字が出てきた後に、今後どういうふうに格差解消のための行動を行っていくのか、行動計画の策定も義務づけるのがよいかと思います。また、ジェンダー意識については、教育の役割も極めて重要だと思っています。やはり、大人になってから意識の方を変えるというのはなかなか進みづらいということが分かっているのですが、一方で、子供は大きく変化するわけです。したがって、教育現場において、例えば、生徒会長になるのが男の子ばかりに偏っていないだろうかとか、あるいは、理数系は男で文科系は女の子だというふうになっていないだろうかといった点についても常に統計で把握することが大事になってくると思いますし、同時に、教育現場の管理職であられる校長先生の方が男が多いといったことも解消していかなければいけないのかなというふうに考えております。
○伊佐委員 今、可視化が重要だというお話をいただいたので、ちょっと、どこまで可視化できるかという点、布山参考人に伺いたいと思うんですが。今回、男性の育休取得率の目標ですよね、目標については努力義務あるいは義務化された、百人超の企業は義務、百人以下は努力義務というふうになりました。じゃ、その目標を立てた後の成果、実際に取得率がどうだったかというところの公表はいまだ一部の企業に限られている。具体的に言えば、今回、法改正でより広げはしましたが、三百人超までは拡大された。でも、三百人以下は義務化されていないという状況です。ここを引き下げていく必要があるんじゃないかというのは山口参考人もおっしゃったところだと思いますが、事業者サイドから見てどうなのかという点を伺えればというふうに思います。
○布山参考人 まず、今回、育児休業の取得率の公表については千人超から三百人というところに落としました。一応、現状、三百人超になったというところは、それ以下の企業については、まず実態として、なかなか対象になる方が少ないということもありますし、それをまた定期的に集計するということについてはかなり御負担もあるということで、まずはここからやろうということになっております。実際に、公表することによって各社のある意味アピールにもなりますしというところの中で、どれだけインセンティブを持ってやっていただくかということがこれから重要な一つのポイントになるのではないかと思います。
○伊佐委員 次に、マミートラックについて伺いたいんですが、まず小野山参考人に伺った後、山口参考人に伺いたいというふうに思います。これは非常に難しい問題だなと思っていまして、両立支援が充実すればするほど、例えば過度に依存してしまう、そうすると女性の能力開発の機会が減ってしまう。実は、ずっとこれまで議論があったのが、今回の法改正につながっている子育て中の短時間勤務。これは三歳になるまでは事業主の義務でした。三歳以上をどうするかというのは、私もいろいろ声もいただいていたので、せめて就学前まで拡充したらどうかということをこれまで国会でも取り上げてきたんです。そのときの厚労省の答弁はどうだったかというと、短時間勤務制度を利用している労働者の多くは女性なので、拡充すれば女性だけが短時間勤務に、それに更に縛りつけられることになると。いわゆるマミートラックですよね。でも、今回、結局それを一歩踏み越えて、三歳以上も取れるようにした、いろいろな制度も取れるようにしたということになりました。だから、充実してほしいという声がある一方で、充実させるとマミートラックになるんじゃないかというバランスが難しいなと思っていまして。一時期、だっこし放題三年みたいな話もありましたけれども、三年間、本当に、長ければ長いほどいいというものでもないと私も思っておりますが、この辺のバランスが難しいと思うんですが、まず小野山参考人にお考えをお伺いした後で、山口参考人に伺いたいというふうに思います。
○小野山参考人 御質問いただき、ありがとうございます。今お話があった時短勤務もそうですし、子の看護休暇制度の取得日数でも同じ議論があったと思います。拡充をすることで女性にかえって偏るのではないかという理由が書かれていたのを私も拝見いたしました。ただ、これはちょっと、鶏か卵なのか本末転倒なのかちょっと分からないですけれども、制度自体はやはり充実をさせて、女性だけが取るのではなく、男性も取りやすいもの、男女関係なく取れるものにしていけば、そこから先、女性だけが取るものだよねという意識は変わっていくのではないかと思うので、女性に今偏っているから制度の拡充を制限しようというのは、私はそれは逆の議論ではないかというふうに思います。なので、まずは制度自体、充実したものになり、先ほど、子持ち様というようなお話もありましたけれども、周囲の労働者の負担も、代替要員の確保だったりして軽減をして、全労働者がやはり負担がないような制度で、充実した、当事者も取りやすい制度をつくっていけば、それは女性だけに偏る、マミートラックというふうに言われますけれども、そういったものから離れることはできるのではないかと思います。
○山口参考人 どうもありがとうございます。マミートラックについては、過去に幾つかの企業の事例を研究したところ、やはり、短時間勤務を拡大したところ、女性だけが取るようになって、かえって役職への昇進が進まなくなってしまった、あるいは、別の企業では、子持ちの社員であったとしても夜間ですとか休日の勤務を促すようにしたところ、むしろ仕事へのコミットメントが高まることによって仕事で活躍するようになったということが報告されているので、現在の性別役割分業に対する見方を所与とすると、働きやすさ、子育てと仕事の両立をしやすくするだけだとマミートラックが発生してしまうという懸念は現実のものだというふうに憂慮しているところであります。一方で、選択肢が増えること自体は労働者にとってプラスであることは間違いないわけで、選択肢を増やすと同時に、男性の家事、育児、介護への参加を促すような施策というのにも同時に取り組んでいく必要があると思います。そのためには、例えば、病児休暇についても、男性だけが取ることのできるような枠、育児休業などでは既に設定されているわけなんですが、男女別に枠を設定することで、男性も取らないと活用できないというふうな仕組みをつくっていくことも解決策につながるのかなというふうに考えております。
○伊佐委員 ありがとうございました。次に、佐藤参考人に伺いたいというふうに思います。本当に、今日の陳述を伺っていて、目からうろこでした。おっしゃっていただいた、育児と介護は違うんだ、いつ、大体どれぐらいでめどがつくかと分かっている育児、しかも、パパとママが育児することを支援するという支援策と、いつ終わるか分からない介護、それで、マネジメントが大事なんだ、そこをどう支援するかという介護、ここが余り、介護が育児に引っ張られるとよくないよというお話は、非常に目からうろこでした。その上で、最後におっしゃった、家族の役割の検討も大事だとおっしゃっていただきましたが、ちょっと私、是非伺いたいのは、当然、専門家にいろいろと介護を任せるべきだという流れと同時に、今の政府のいろいろな政策を見ていますと、在宅の流れというのがあるわけです、地域で、在宅でと。ここを、介護を社会化してきたにもかかわらず、また地域で、在宅で、また揺り戻しているような、この流れをどう御覧になっているか、伺いたいというふうに思います。
○佐藤参考人 ありがとうございます。基本的には、僕も、介護の社会化ということを前提に、仕事と介護の両立支援をやることが大事だと思います。ですので、私が家族の役割と言ったのは、家族介護という意味ではなく、基本的には、介護の社会化といったときに家族の役割は何なんだろうか。一つは、僕、何度も言いましたように、精神的なサポートですよね。それともう一つは、マネジメント。例えば、在宅介護であれば、月一回、ケアマネジャーさん、一時間かかりませんけれども、話をして、親御さんの状況とか、来月どうするという話をするわけですよね。こういうことをきちっとやるのが家族の役割だと思うんですね。その辺が、ただ、介護保険制度の中に書かれていないんですよね、家族は何をやるのか。ですので、家族はもっと介護しろというような議論も出てきたりするので、そこを僕は、もう一度、家族の役割というのは何なのか。それともう一つは、やはりこれから単身化ということにもなってきますよね。基本的には、一人でも、高齢期になって要介護状態になったら介護サービスを受けられるということも考えていかなきゃならないので、そういうことも踏まえた上で考えていく、家族がいない人も出てくるわけでありますので、そういうことを踏まえた上で議論していただけばいいかなというふうなことで、ちょっと言ったわけであります。
○伊佐委員 最後に、村上参考人に一言だけ伺いたいというふうに思いますが、さっき、井坂委員の質問に対して、いわゆる処遇改善が取れていない事業所の中で、特段の事情があれば処遇改善加算を取っていても配分しなくてもいいというようなことを伺って、私は正直そこは不勉強で知らなかったもので、実際、現場でどれぐらいの事業者がそういうようなことを知っているのか、ちょっと、肌感覚になるかもしれませんが、是非伺えればというふうに思います。
○村上参考人 御質問ありがとうございます。現場の事業者でこのことを知っているというのは、恐らく、処遇改善加算を取られている事業所は全部知っていると思います。ただ、私どもと労使関係のある法人に関しましては、そういう経営状況がすごく悪化して届出書を出したというところはございませんので、恐らく、もっと地方に行った中小とか零細とか、そういうところに関しては、出されているところはかなりあるのではないかと思います。以上です。
○伊佐委員 時間になりました。終わります。ありがとうございました。
○新谷委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。今日は、五人の参考人の皆様、大変貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございます。まずは、小野山参考人にお伺いをしたいと思います。今日、配られております日本労働弁護団の出している意見書を見ますと、転勤命令における育児、介護への配慮が必要だというお話が書かれておりまして、転勤命令に対する司法判断について、基本的に広く使用者の裁量を認め、労働者への配慮に余りにも欠ける硬直的な判断がなされる傾向が続いているという指摘があるんですけれども、最近の転勤命令をめぐる裁判ではどういう司法判断が特徴的なんでしょうか。
○小野山参考人 御質問いただき、ありがとうございます。実は、今お話あったように、全国転勤というか、転居を伴う配転命令ですね、いわゆる転勤というものですけれども、これが仕事と育児、介護の両立のすごく大きな障壁になっている、問題になっているということは、若い世代ほど実は認識をしていて、二十代、三十代の仕事と育児、介護を両方担っている労働者がそうした転勤命令を受けて転職をしてしまうというケースが非常に増えていて、そうした労働者を確保することが実は難しいというのが、最近、会社で直面している問題だというふうに聞いております。今御質問があった裁判所の判断なんですけれども、そういう状況があって、やはり、皆さんも御想像が簡単にできるかと思いますけれども、仕事をしていて、共働きで育児、介護をしているのに片方が転勤になってしまった、じゃどうするんだ、一緒についていったら共働きの片方は仕事を続けるのは難しい、単身赴任になったら一人で育児、介護を担わなければいけない、どっちの選択肢もかなり厳しいものがあると思います。ただ、そうした中、裁判所はいまだに転勤命令については昭和六十一年の最高裁判例の枠組みで判断をしています。御存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、東亜ペイント事件という、配転命令に関しては、労働問題を取り扱う弁護士であれば誰でも知っている事件になります。具体的には、転勤命令につき業務上の必要性が存しない場合又は業務上の必要性が存在する場合であっても、転勤命令がほかの不当な動機、目的をもってなされたものであるとき若しくは労働者に対して通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるときなど、特段の事情の存する場合でない限りは、転勤命令は権利の濫用になるものではないと。要するに、権利が、配転命令権が濫用されているかどうかという判断枠組みでしか考慮がされていません。その結果、もちろん、最近の裁判例の中で、そうした仕事と育児、介護の両立を視野に入れた判断が示されている下級審判例もあるんですけれども、他方で、現在の住所から通院できる医療機関でのみ受けることができない特別な治療を受けているとかでなければ、別に子供の生命等に重大な結果が生じるものではないので、特段の事情がないという判断がされてしまい、お子さんが実際に罹患して通院をしているにもかかわらず、転勤命令は有効だというふうに判断した下級審裁判例もありますので、非常にこの辺りは問題のある裁判所の判断の在り方だというふうに思っております。
○宮本(徹)委員 今、小野山参考人から、司法判断では企業の側に幅広く転勤命令権を認めるという判断が続いているというお話がありましたけれども、これは何らかの法改正なんかも必要ではないかと思うんですけれども、ちょっとその点について、五人の参考人の皆さんに、この問題、どう対応すればいいか、配転の育児、介護との両立の問題についてお伺いしたいと思います。
○布山参考人 御質問ありがとうございます。現在の育児・介護休業法の中でも、転勤の配慮という項目は条文の中にあったかと思います。それを踏まえて、企業の中でどういうふうに対応するか。ただ、必ずしも、申し出た労働者の希望どおりには、配転の問題なのでなかなか難しいかもしれませんが、一応、一度企業の中で配慮をして、その配慮した結果こうなったという形を御説明するという形になるのではないかと思います。
○村上参考人 済みません、御質問の件につきましては、専門的な知見がございませんので、お答えできません。失礼します。
○山口参考人 転勤についてですが、過去の調査では、介護については考慮されることが多いようです。介護しなければいけなければ転勤について時期をずらすといった対応が民間企業ではなされているようです。一方で、転勤自体が家族に対して悪影響を与えるということについては否めないものだと思っています。例えば、配偶者のキャリアが中断してしまう。さらには、子供たちの環境が変わってしまうことによる子供のメンタルヘルスに対する悪影響なども懸念されています。この点について、最低限、どれぐらい転勤を行っているのかという点について情報開示、転勤の方針についての情報開示なんかを行っていくことによって、育児休業の取得率と同様に、ワーク・ライフ・バランスにどれぐらい配慮しているのかという指標として開示することによって、労働者の方がそういった企業を選ばなくなるというような形になっていくことによって、無理な、企業からの一方的な転勤というのは減らすことはできるのではないかというふうに考えております。
○佐藤参考人 転勤問題は、企業の人事管理で今最大の課題だというふうに思います。確かに最高裁判例は変わっていないわけですけれども、企業のマネジメントとしては大きく変わりつつあると思います。基本的には、やはり、企業のモチベーションを維持する上、あるいは人材を確保する上で、無理やり、以前のように、会社の都合だからあっち行けこっち行け、これはできなくなってくるということですので、やはり社員と丁寧に対話するというような方向に変わってきていますし、あるいは、転勤を見直して、できるだけ転勤の頻度を減らすというような取組をしてきている企業が多い。あるいは、転勤をテレワークに代替するというような、つまり異動はするんだけれども居住地変更はしなくていいですよ、こういう会社も出てきています。今、ちょうど過渡期かなというふうに思います。それと、もう一つは、この四月からですか、採用時点で就業地の範囲を、異動の範囲を明示しなきゃいけなくなりましたので、このことも異動についての見直しを進めるのではないかなというふうに思います。
○小野山参考人 先ほども申し上げたように、転勤命令に対する司法判断が、現在、残念ながら硬直的なものと言わざるを得ません。他方で、労働者に対する転勤によって生じる影響というのは非常に重大なものです。そのため、先ほど御指摘あったように、育児・介護休業法二十六条で、転勤する場合に育児、介護を行うことが困難となる労働者への配慮義務というものは定められているんですけれども、こちらはやはり、法的義務に格上げをしていただくということが必要かと思います。また、具体的な義務の内容についても、指針にとどめるのではなくて、そちらについても、育児・介護休業法の中で条文として明記をしていただくということが必要であると、日本労働弁護団としては考えております。また、転居を伴う転勤命令が、先ほど申し上げたように、権利濫用でなければ無効となるものではないということが、現在、裁判所の判断ではありますけれども、ちょっとこの枠組み自体も見直す必要が今現在出てきているのではないかと。個別の同意であったり、先ほどお話あった、個々の労働者の事情を配慮したりというところまで踏み込んだ、そうした施策が必要ではないかというふうに思っております。実際に、昨年、日本労働弁護団では、配転に関するシンポジウムを開催しまして、複数の労働組合からヒアリングを行いました。その中で、労働組合の方で個々の労働者の育児や介護の状況をヒアリングした結果を人事と共有しながら、配転に関しても配慮をしていくと。それはなぜするかというと、労働者の保護ももちろんありますけれども、それをしないと、先ほど申し上げたように、会社自体も優秀な人材を手放さなければいけなくなるということなので、労使双方共にとってそうした協力関係というのが重要になってきている、今、時代なのではないかと思います。
○宮本(徹)委員 ありがとうございます。次の質問ですけれども、男性が育児、介護を女性と同じようにしていかなければならないというお話が今日もたくさん述べられて、その中で、今日、山口参考人からクオータ制をイメージしたお話があったんですけれども、山口参考人以外の方にちょっとお伺いするということなんですけれども、このクオータ制についてどう考えるか、あるいは、それ以外に、男性が家事、育児に、やはり更に家庭的責任を果たす上でどういうことが必要になるのか、お考えをお聞かせいただけたらなというふうに思います。
○布山参考人 御質問ありがとうございます。まず、クオータ制ということでございますが、現状の育児休業自体が、労働者の権利として、取りたい期間、まあ子供が一歳までというのが法定上ですが、子供が一歳までであれば、希望する期間、いつからでも取れるような制度になっております。その中で一定のものを男性に必ずというよりも、男性がそれぞれ取りやすくするように、今回の法案の中でも、きちんと制度を説明して意向確認をするということも、現状、もう既にそういう制度になっていて、そこについては企業の方からきちんと意向確認をするような形になっていて、これまで取りにくいなと思っていた男性についても企業の方で後押しするような、そういう仕組みになっているのではないかと思います。その他の制度についても、これから同じような仕組みを導入するということの法案でございますので、そういう形でまずは進めていくということが必要ではないかというふうに思っております。
○村上参考人 男性の育児、介護につきましては、まず、先ほど来お話ありますけれども、育児休業等とかを女性の方がかなり取っているということで、もっとこれを男性の方が取るような何か施策があればいいのかなというふうに思います。それとあとは、労働時間ですね、長時間労働の是正、これが必ず必要ではないかと思います。以上です。
○佐藤参考人 先ほどお話ししましたように、やはり、男性が育児休業を取ると、その後、子育てに関わるということですので、やはり、現状でいうと、妻が育児休業を取っているときに夫が取るようなケースが多いんですよね。これは駄目なんですよね。もちろん、妻の産後休業中は、母体保護で家事、子育てをしちゃいけないわけですから、そのとき、男性が産後パパ休業を取って子育てをするし、妻が仕事に復帰したときに夫が育児休業を取るというような、そういう意味で、取り方についてきちっと情報提供していくということが大事かなと思います。そういうようなことをやっていただければというふうに思います。
○小野山参考人 御質問いただき、ありがとうございます。やはり、男性の正社員の労働者の方がなぜ育児休業制度をなかなか利用できなかったのかという理由に関しては、収入を減らしたくなかったから、職場が育児休業制度を取得しづらい雰囲気だったから、この辺りの回答が多くなっています、アンケートとかでも。なので、先ほども申し上げたように、育児休業を取得しやすくするためには、一部期間でもいいので、やはり給与相当額全額保証ということが急務ではないかというふうに思います。現在、聞き及んだところによりますけれども、職業安定分科会雇用保険部会においても、両親が共に十四日間以上育児休業を取得した場合には、手取り収入が育児休業前の実質十割になるように育児休業給付を拡充する案というものが示されていると伺っておりますので、是非、労働者がそうした経済的な不安から育児休業を取れない、特にそれは男性が多いと思いますけれども、そうしたところを払拭していただければ男性の育児休業の取得につながるのではないかなと思います。あと、もう一点が、弁護士としてはやはり、パタニティーハラスメントの事件、皆さんが想像している以上に私は何件かやっております。育児休業を取得したい、特に長期間取得したいという労働者に対して、上司から心ない言葉を投げつけられる、そんなのをやるやつはばかだとか、そんなことをして将来どうなるか分かっているのかとか、皆さん、耳を疑うかもしれませんが、本当にそういうことを実際に言う上司がまだまだいます。なので、マタニティーハラスメントももちろんですけれども、パタニティーハラスメントに関しても知識をもう少し広めていただいて、そうしたことはいけないんだ、就業環境を害するような、そういう発言は禁止されているんだということを、認識を広めていただければと思います。
○宮本(徹)委員 最後ですけれども、障害のある子をケアする親御さん、この方々への両立支援というのは、今回、指針で望ましい方向を示すということになったんですけれども、指針で示すだけじゃ不十分かと思うんですけれども、この点、布山参考人と小野山参考人に御意見をお伺いしたいと思います。
○布山参考人 御質問ありがとうございます。まず、障害を持っているお子様を持っている方、医療ケア児を持っている労働者に対して、おっしゃるとおり、配慮をするような形になっています。配慮の中身については、どういう状態なのかというのはケース・バイ・ケース、それぞれだと思いますので、細かいことを法律に書くというよりも、指針の中できちんと示していって、それを企業が、できることをきちんと行っていくということがいいのではないかというのが労政審で議論した結果でございまして、私もそのように思っております。
○小野山参考人 御質問いただき、ありがとうございます。実は、私自身が、子供が障害があります。障害のある子供を育てている親の一人です。子供は実際に特別支援学校に通っていますけれども、特別支援学校の保護者会とかに参加をすると、圧倒的にお母さんの出席率が多いです。突発的な呼出し、急な対応、通院等も多いので、そもそも、配偶者、特に女性が仕事を継続するということは、障害児の親に関しては難しいというのが現状です。そうした中、就業を継続できるような支援というのは是非行っていただきたいと思いますが、その大前提としては、やはり両親が共に協力し合わないと到底乗り越えられません、障害児の子育てというのは。なので、長時間労働の是正であったり、障害児を持つ親に関しては特にそうした配慮を行うという辺りは是非、条文化していただいて、使用者の方にもそうした認識を明確に持っていただければというふうに思います。
○宮本(徹)委員 時間になりましたので終わります。大変貴重な御意見、ありがとうございました。
○新谷委員長 次に、田中健君。
○田中(健)委員 国民民主党の田中健です。今日は、参考人の皆さん、貴重なお時間、ありがとうございます。早速質問をさせていただきます。まず、村上参考人にお伺いします。介護の件であります。今回、訪問介護の基本報酬引下げがありました。訪問介護の利益率が全てのサービス平均を上回るということでありましたが、私たちは、それは大企業だけである、中小企業や個人でやっている方はそうではないということをこの委員会でも質疑をしてまいりました。先ほどの説明の事業者アンケートの中でも、これについては九九%が反対だということも示していただきましたが、実際、介護の従事者ないし働く現場もこの問題についてどのように思っているかというのを聞きたいと思っています。恐らく、大きな声が様々上がっているかと思うんですが、現場の声というのはどのような声が聞こえているか、教えてください。
○村上参考人 御質問ありがとうございます。まず、基本報酬の引下げ自体に関しては、介護の在り方、訪問介護の在り方に対する意見というのがかなりありました。訪問介護の必要性を軽く見ているとか、国は在宅介護を捨てたと思うとか、訪問介護を何だと思っているのか、住み慣れた自宅で生活をするために支えている訪問介護や定期巡回の単位数を下げるなんて国の考えと逆行している、このようなことになっています。それからあと、事業所の経営状態のことをすごく心配している、不安に思っている方がかなりいらっしゃいました。事業所として利益が減少する、それから、現時点でも赤字が出ている状態なのに、更に収入が減少することに心配しかない、あとは、訪問介護事業所の倒産を多く耳にする中、今ある事業所を守っていただけない状況をつくるのはおかしいとか、そういうようなことですね。それからあと、最も多いのは、やはり、基本報酬が引き下げられたことによって自分自身の賃金が引き下げられるのではないかということなんです。基本報酬の引下げイコール賃金の引下げと捉えている従事者が非常に多いのにちょっと驚きました。賃金が引上げになるのではということで、すごく心配だと。基本報酬が下がることで、賃金が引き下げられる可能性が大きく、更に離職が増加する。報酬が下がると、会社はどこかで経費を削減する、そして、それは働き手にしわ寄せが来て、ますますヘルパーをしたいと思う人が減るとかいうことですね。今回の調査をして、かなりの数の回答がすごく早い段階で返ってきたというのにすごく驚いておりまして、訪問介護員のモチベーションにかなり影響があったなということを感じている次第です。以上です。
○田中(健)委員 ありがとうございます。大変厳しい声、また現場の声があるということなんですけれども、そんな中で、先ほど、離職をする人が多いということと、また賃金が低いということで、人材の話がありました。訪問介護の人材不足対策は、先ほど質疑がありましたけれども、介護全体としても、今、人材不足というのが大きな課題となっておりますが、処遇改善以上に、またそれ以外で、どのような人材確保のために必要なものがあるかというのを、現場からの声があれば教えていただければと思います。
○村上参考人 御質問ありがとうございます。処遇改善のほかには、やはり職場の労働環境の改善ということが重要かなと思います。働きやすい職場づくりということですね。それで、介護業界には、一般的に言うハラスメントのほかに、利用者、家族からのハラスメントというものが発生しています。こちらにつきましては、私どもが二〇一八年に御利用者、御家族からのハラスメント調査を行いまして、実に回答者の七四・二%の方がハラスメントを受けたことがあると回答しています。この結果を受けまして、厚生労働省の方も検討委員会を設置していただきまして、私の方もその委員に参画いたしましたけれども、その検討会で対策マニュアルとか研修の手引とか事例集とか、そういうものも作成しました。これは厚労省のホームページの方にも載っております。ただ、様々な対策を講じたとしても、やはり利用者とか家族が介護保険についてちゃんとした理解を持たなければ、このようなハラスメントというのはなくならないというふうに思っています。ですので、国とか自治体とか、もちろん事業者もそうなんですけれども、利用者、家族に介護保険制度のことをもっと理解するように周知をしていただければいいかな、そういうふうに思います。あと、新しい人を業界に入れるということだけではなくて、今いる人たちを定着させるということも考えていかなければいけないかなと思います。特に、職場の環境をよりよくするためには、管理職の方がすごく重要でございまして、管理職の方は、管理職に就いたが、研修を受けることなく、かなり、まあ、言い方は悪いですけれども、放置されているような状況があったりするので、管理職教育というのを事業者の方もきっちりしていただきたい。それとともに、介護従事者の職員の方たちも、いろいろな勉強とか研修会とかをしていただくことによって介護のサービスの質というものが向上しますから、こういうこともやっていただきたいということ。あとは、本当に何でも話し合える風通しのよい職場づくり、これが本当に重要だと思います。以上です。
○田中(健)委員 ありがとうございました。最後に村上さんに質問なんですけれども、先ほどの質疑の中で、介護専門家も自分の親の介護はできないというような話がありました。実際、まだ介護休業というのは、全体の労働者、三百二十二万人の中でも一・六%と低い中で、実際介護をしている、介護のプロである介護事業者の中で介護休業を取得した人というのは実際いらっしゃるのか、そういう数がもしもあれば教えていただければと思います。
○村上参考人 私どもNCCUの組合員の中で、介護休業取得者というのが昨年一年間で四十七人です。組合員比率で〇・〇五%です。ですので、ほかの産業に比べて少ないというのが実態です。介護従事者の皆さんというのは、介護保険制度というのは知っている、理解しているということが前提にあって、それで、介護休業を取ると、介護休業給付金で給与の六七%が保障されるということなんですけれども、今、平均賃金が二十六万ぐらいなんですが、現在もらっている賃金が目減りをするということで、休みを取るのをちゅうちょするということなんですね。それで、実際、仕事と介護の両立はできると言った方たちに質問をしたんです。では、どうすればいいんでしょうかということなんですが、やはり職場の理解、それからあとは、様々な社会資源、これを利用して介護を乗り切りたいということで、その方は世帯主の方だったんですけれども、働かないと生活ができないので、仕事と介護の両立ができるかできないかではなくて、しなければ生活できないんですということだったんです。ですので、やはり公的介護サービス、こちらが充実すれば、介護離職というのは減らせるのかなというふうに思います。以上です。
○田中(健)委員 ありがとうございました。引き続きまして、佐藤参考人に伺いたいと思うんですけれども、佐藤参考人から、介護離職のない社会ということでお話を伺いましたが、村上参考人の資料に、施設入所の手続期間が三か月から二年と大変長いということがありまして、施設を使いたくても、また介護を使いたくても、期間があるんだという中で、その中で、先ほど最後の方のキーワードで介護・介護両立休業ですかね、ないしは、参考資料で読ませてもらった中では、介護・介護準備休業というような形で、名前を変えたり、そのような形の普及をしていくのがいいんじゃないかという御提言もありましたけれども、もう少しそれについて詳しくお聞かせいただければと思います。
○佐藤参考人 まず、介護休業についての取得率はどのぐらいなんですかという議論があるんですけれども、育児休業と違って、介護休業を取得しないのが一番いいんですよね。取得しないで両立できれば、それはそれでいいわけで。つまり、介護の場合、長い休業を取る必要はそれほどないんですよね。ただし、例えば、親が地方にいるので、認定を受けるためでも一週間、二週間休まなきゃいけない、こういうふうに取らなきゃいけない場合はあるかも分かりませんけれども、そうじゃない場合であれば、認定を受けるときも、近居、同居であれば、介護休業を使わなくて済んだりする。ですから、まず、介護休業を取りやすくして、みんなが取らなきゃいけないということではなくて、普通の働きをしながら仕事と介護を両立していく、これが一番いいわけですよね。ただし、長い休業を使わなくても、例えば、今、在宅介護だけれども、ちょっと要介護度が上がって施設に入らなきゃいけない、地方なので施設を探さなきゃいけない、これが一か月ぐらい時間がかかるというようなときに、介護休業を取る。こういうとき、時々、介護休業を取らなきゃいけないということが起きるのですけれども、そういう取り方ができるということが大事かなというふうに思います。ですので、もう一つは、介護サービスの方ですよね。先ほど、在宅、それから在宅で施設に移れない、今、要介護三以上じゃないと特養に入れませんけれども、もちろん、空きがあるかどうかということがありますよね、それで待機があるというようなことがありますので、そういう意味では、同時に、他方で、介護サービスの方が、現状では人手不足ということがあると思いますけれども、そういう中で、介護の社会化ということを進めながら、やはり介護サービスの基盤をきちっとつくっていただくということをやらないとなかなか難しいかなというふうに思います。ですので、企業による様々な情報提供と、社員が仕事と介護の両立のマネジメントの仕方を知ると同時に、介護サービスの利用の仕方なり、サービスの充実というのがセットでいかないと、介護離職というのは減らないかなというふうに思います。
○田中(健)委員 ありがとうございます。介護の関係で、布山参考人にもお伺いしたいんですけれども、今、企業が介護の情報を提供するということは大切だということもお話しいただきました。今回の制度では、四十歳のときに個別の周知や意思確認をすると掲げられましたが、これもデータを見ますと、なかなかまだ実際は行われていない。また、四十歳といっても、親と離れていたりしますとまだまだ介護という実感がないという中で、どのようにして企業が四十歳の人たちに介護の情報やまた現状というのを知らせていくのかというのは大変重要なテーマであり、課題かと思っています。それについて、どのような課題があって、どのような取組が企業にとって必要なのかという御見解があれば、教えていただければと思います。
○布山参考人 ありがとうございます。まず、四十歳の時点で、今、企業が何かしら周知をしているかとなると、それは、やっている企業というのはそんなに多くないと思います。今回、労政審で議論していたときに、先ほど佐藤先生からもお話がありましたけれども、まずは、御本人が被保険者になった段階で、余り実感がない、そうすると、どこかのタイミングで、まずは介護保険というのはこういうものだというのを知らせる必要があるだろうというところで、四十歳、被保険者になるところを一つのタイミングというふうに考えました。ですから、これは四十歳以外のところでも、例えば何かの、企業の中の節目節目の研修等の中に入れるということもあると思います。その中で、介護保険が何なのかということについては、実は保険者もきちんと周知をしていただきたいなというふうに思っておりまして、少なくとも、企業が従業員に周知をするだけではなくて、まずは保険者が被保険者になった方にきちんと周知をしていただきたいのと、そのため、企業が、特に中小企業が対応するためには、それなりの説明ができるようなツールも御用意いただければ大変ありがたいと思います。いずれにしても、そこで一回、介護保険というのはこういうものだというふうに分かれば、その先、何かあったときに、何も頭にないのと、そういえばこんな話を聞いたということがあるのでは、随分違うのではないかと思っています。
○田中(健)委員 ありがとうございました。最後、山口参考人に伺いたいんですけれども、育休制度の件です。もろもろ、答弁の中にもありましたし、また、「子育て支援の経済学」を読ませていただいたんです。その中でも、育休制度というのが母親の就業に及ぼした影響は全体的に高い、短期的には仕事への復帰時間を遅らせる傾向があるものの、中期的には影響はないということでした。また、一年間の公的休業制度は女性の就業を促進する効果がある一方、三年間に延長しても効果はないということもありました。さらに、費用対便益についても、保育は正当化されるけれども、育休政策は当てはまらないという経済学からの指摘もあり、これについて、ちょっと私もどきっとするというか、経済学からするとそうなんだなという、すとんとは落ちなかったんですけれども、それについてちょっと教えていただきたいのと、あくまで、これは母親の就業についてでありまして、これを男性に置き換えられることはできるのかということを最後に教えてください。
○山口参考人 ありがとうございます。田中委員より御指摘のあったように、女性の育休については、ある程度までは就業にプラスになるんだけれども、余り長くなってしまうとかえって女性をマミートラックに押し込めてしまうということが分かっているので、その使い方については十分気をつけなければいけない、あるいは、女性だけに家事、育児を押しつけるようなことにならないような別の施策、男性の家事、育児参加を促すような施策とセットで行うことが重要なのかなというふうに思っています。一方で、男性の方の育休取得についてなんですが、これが国際的に見ても仕事に悪影響を及ぼすといった事例については報告されておりません。むしろ、子供の発達上プラスであるとか、夫婦仲、離婚率で測った場合なんですが、そちらについてもプラスであるということが分かっています。なので、男性に関しては、今のところ、取り過ぎを心配するよりも取らな過ぎを心配する方がよいのかなというふうに理解しております。
○田中(健)委員 時間となりました。ありがとうございました。小野山参考人、済みません、質問できませんでした。
○新谷委員長 次に、福島伸享君。
○福島委員 無所属の四人で会派を組んでいる有志の会の福島伸享と申します。五人の参考人の先生方、今日は有意義な話をありがとうございます。最後の質問ですので、あとちょっとおつき合いいただければと思います。五人の方に一人ずつお伺いしたいんですけれども、まず布山参考人で、今回の制度改正、全面的に賛成だという話がございましたけれども、逆に、経営者側が全面的に賛成というのは、もうちょっと経営者側がこれは大変だと汗をかくぐらいじゃないと、こういうのはうまくいかないと思うんですね。今回の制度改正で、逆に、これは本当は厳しいんだけれども我慢してやったというものがあれば教えていただきたいですし、それがないんだったら、せめて、看護休暇が小三というのは私はどう考えても合理性がないから小六まで広げるとか、あるいは無給を有給休暇にするとか、その程度はできるんじゃないかと思うんですけれども、その辺りの認識はいかがでしょうか。
○布山参考人 ありがとうございます。賛成の立場というのは、私、労政審の議論で、その建議に基づいて、建議した内容に基づいて法案を策定していただいたので、当然、そういう意味で賛成の意味ということでございます。当然、企業にとっては、なかなか難しい点というのはそれぞれにとってあります。先生から御指摘いただいた子の看護休暇というところについてなんですけれども、もちろん、審議会の中でも、もう少し後ろまで、例えば小学校の修了まで拡充すべきではないかという御意見もありました。ただ、先ほども申し上げましたけれども、子供の年間の診療日数を見ると、ケアすべきところというのはやはり小学校三年生までというところがありまして、そういうところがまず一つ、そういう傾向が見られるということと、育児期に、もちろん、従業員を支える、先ほど、ハラスメント的なことがあるというふうにおっしゃる参考人もいらっしゃいましたが、やはり、周りの方々がサポートしようという形で、そういう公平性の確保の観点とかを考えると、まずはケアの必要性が高い小学校三年生の修了時まで延長するということが妥当ではないかというふうに思っております。また、有給か無給かということについても議論になりました。これもいろいろ考え方はあるとは思うんですけれども、少なくとも、ほかの制度との整合性、あるいは、基本的に、働いていない、ノーワーク・ノーペイという原則をそのまま貫いた形で制度設計をしていただければありがたいなと思います。以上です。
○福島委員 ありがとうございました。あした、委員会でまたこの点は議論したいと思います。次に、村上参考人にお聞きしたいんですけれども、今回の介護報酬改正で訪問介護の基本報酬が引き下げられる、私もこれは全く理由になっていないと思うんですよ。じゃ、訪問介護の事業者がそれほど経営状況がいいかといったら、ほかに比べてトータルで見たらいいのかもしれませんけれども、しかし、報酬を引き下げるものでもないと思うんですね。私は、理由がない中で下げられたら、何か別に理由があるんじゃないかと思うんですよ。財務省との力関係とか、業界団体の政治力とか、何かその辺りの思うところがあれば述べていただければと思います。
○村上参考人 ありがとうございます。訪問介護の経営状況、収支差率がかなりよかったというのはすごくあると思うんです。ただ、おっしゃられたとおりすごく差があって、収支差率が一三%以上のところもあれば一%前後のところもかなりあって、一・何%というところも三三%ぐらいですか、ありましたので、これを一緒くたにして改定率というのをぼんと出されると非常に困るなとは思ったんですね。それが、その引き下げた理由というのが、恐らく、平均値を取って、全体のサービスよりも高かったからというので、数字だけで、現場のことは関係なくと言ったら怒られちゃうんですけれども、数字だけを見て恐らく切り下げたんだと思うんです。やはり、上げるところと下げるところ、そういうめり張りをつけるというところで、訪問介護の方がちょうどそういう数字になったので引き下げられたということだと思います。以上です。
○福島委員 是非、御遠慮なくおっしゃっていただければと思います。もう一問、村上さんについででお聞きさせていただきますけれども、介護の現場には子育てをされている方もいっぱいいらっしゃって、今回の法律の、子供の年齢に応じた柔軟な働き方の対応というのがありますけれども、これを会社側が決めるときに、過半数の労働者で組織する労働組合か、労働者の過半数を代表する者の意見を聞くとなっています。恐らく、今、皆さんの介護クラフトユニオン、八万七千いて、六十四法人ということですけれども、なかなか一つの法人当たりだと組織率が低かったりとか、あるいは横割り的な、企業ごとの組合じゃないんですよね、多分、職種の組合なので、そうしたときに、この制度というのは本当に労働者の意見を聞いたことになるのか、実効性があるのか、その辺りの現場の感覚を教えていただけたらと思います。
○村上参考人 私どもは職業別労働組合なんですけれども、活動の単位を分会という形で、各法人で一つ分会をつくって、そこで交渉するようにしているんですね。ですので、そこの法人の方と直接NCCUの職員が話合いをして、それで決めていくという形になります。ですので、八万七千名全体ではなくて、そういう活動の仕方がありますので、大丈夫だと思います。
○福島委員 でも、なかなか全体で、組合があるところはいいんですけれども、ほとんど私の周りで見ても組合があるところというのはないわけですから、そこで過半数の働く人といってもなかなか大変なのかなと私は個人的に思っております。次に、山口先生にお聞きをするんですけれども、テレワークが、家事、育児の時間の削減とか、労働生産性をアップするのに効果があるという話がございました。私は、ここまで効果があるんだったら、今回の努力義務じゃなくて、きちんと義務化した方がいいんじゃないかと思うんですよね。会社も大分対応できるんじゃないかと思うんですけれども、努力義務自体がちょっと遅れているというか、時間的に遅れているんじゃないかと思いますし、あと、今回、三百人以上の事業主に育児休業取得率の公表義務があって、小野山参考人からありましたけれども、これは取得率だけじゃ駄目で、特に男性の場合はどのぐらいの期間を取っているかというのが大きいと思いますので、取得率だけではなくて、その中身も含めて公表させた方がいいと思うんですけれども、その点についてのお考えはいかがでしょうか。
○山口参考人 ありがとうございます。テレワークについては、やはり仕事の内容によって大きく実行可能性が変わってくるので、一律の取組というのはまだまだ難しいのかなというふうに思っています。とはいえ、コロナが明けても、それまでテレワークができたのが急にできなくなる、そこに対して必ずしも正当化できるような理由がなかったりすることも見られるので、今後もテレワーク促進というのは進めていただきたいところだと考えております。また、育休について、取得割合では不十分だという御指摘は私も同意するところであって、取得期間についても公表を義務づけていく方向で進めるのがよいと思っております。
○福島委員 ありがとうございます。この点もあしたの審議につなげていきたいと思っています。次に、佐藤参考人の今日の話は本当に我が意を得たりという思いで、私も最近父親がパーキンソン病にかかって、政治活動をしながら、ちょっと離れているところに住んでいる父親一人、母親が亡くなっていて、弟は海外にいて、私しか介護できないというので苦労した経験があるので、子育てと介護は違うというのはそのとおりだと思います。とりわけ、今、子育てとか少子化が言われていますけれども、今後の人口構成の変化を踏まえると、介護と仕事の両立は、子育てと仕事の両立と同じか、それ以上に深刻じゃないかと思うんですね。特に、一人っ子で未婚の男子と一人の親となるのが今度すごい多いと思うんです。実は、私の秘書もそれでこの間、介護のために離職をせざるを得ないというのがあったので、この辺りの、今後の人口構成の変化とこの問題の対応の深刻さという辺りについて、是非御説明いただけませんでしょうか。
○佐藤参考人 どうもありがとうございます。これから介護の課題に直面する、特に親御さんの介護の課題に直面する介護の負荷は、その方の親御さんが経験した介護の負荷よりか大きくなっています。なぜか。一つは、寿命が延びていますよね。ただし、健康寿命が延びているわけじゃないんですよね。要介護の期間が延びている。そういう意味では、介護に係る平均的な期間が延びるということです。あともう一つは、兄弟数が少なくなっていますよね。ですので、今御指摘のように、一人っ子で親二人、そういう意味では、介護負荷が増えているということは一つ大きいです。あと、結婚していても、男性は、自分の親の介護のときに、妻がと思っても無理ですよね。今日、帰られたら奥様に聞いてみてください、介護してくれるのと。すると、あなたの親、私の親と言われる、何で私があなたの親まで見なきゃいけないのと。そういう意味では、介護の課題というのは、もう一つは男性の課題なんですね。ただし、これから介護の課題に直面するのは、子育てに関わってこなかったような人、そういう意味では、余りワーク・ライフ・バランス、仕事と子育ての両立の経験がないような人たちが仕事と介護の両立の課題に進むという点で、そういう意味では、結構これから大変だと思います。そういう意味でも、今回の法改正を踏まえて、早めにそういう状況をきちっと提供し、知識を持っていただいて、一人っ子でも親御さんの介護ができるような体制を準備していただくといいなというふうに思います。
○福島委員 ありがとうございます。私の周りでは、未婚というか、結婚していない人が多いんです。それが五十、六十になってくると大変になるのかなというふうに直感をしております。あと、もう一つ佐藤先生にお伺いするんですけれども、確かに、介護休業とか介護休暇制度というのを知って、仕事と介護をどうマネジメントしているか分かるかが必要だということなんですけれども、ただ、今の介護休暇なり介護休業の制度を知ると、介護は介護の課題がいつまで続くのか事前予測が困難という話がありましたけれども、対象家族一人につき三回までしかできなくて、通算九十三日。例えば、うちの父の例で見たら、確かに足は動かないけれども、頭は元気なんですよ。これから認知症になってきたら、それは大変だから、もし私の立場であれば、今介護休暇を取ることを手控えると思うんですね。つまり、予測不可能だからこそ、一回ぽっきりで、三回しか取れないとなったら、なかなかできないから、知れば知るほど、今取るのをやめておこうとなっちゃうと思うんです。四十代のうちから本当はこまめにやらなきゃならないんだけれども、それに対応するような介護休暇、休業。休業も、一年に五回だったら、例えば透析とかに親を連れていくんだ、週に三回とかのうち、妻とかほかと分担したって、五回じゃ到底無理なわけですね。こうした制度上の問題が逆に取得を低くしているように思うんですけれども、その点についての認識はいかがでしょうか。
○佐藤参考人 介護休業期間を延ばす必要があるのではないか、あるいは法定の分割回数を増やすんじゃないかという議論は、これはかなり前からありました。ただし、先ほどお話ししました、いろいろなデータを見ると、この九十三日の分割取得なら大体カバーできるというのが現状だと思います。そういう意味では、利用の仕方ですよね。先ほど通院についても、介護休業ではなく介護休暇を使うとか、あるいは通院の支援もヘルパーさんがやってくれたりしますよね。なので、やはりその辺は、自分がどこまで、実際に介護を担わなきゃいけない分はどの程度なのか、そのために、介護休業なり介護、これはもう少しきちっと情報提供をするということが大事かなと。データ的に見ると、かなりこれでカバーできると思います。ただし、仕事と介護の両立のために九十三日が足りないという議論は、ですから、僕はあり得ると思うんです。ただし、多くの場合は、本人が介護するには足りないというんですよね。それは足りないんです、本人が介護するのでは。十年以上の方も一〇%ぐらいいますので、そうすると十年以上に延ばすのかという議論になってしまいますので、やはり両立のためのマネジメントとしてどれぐらい必要なのかという議論でいうと、現状、いろいろなデータを見ると、かなりの部分はカバーできているというような理解です。
○福島委員 ありがとうございます。最後に、小野山委員にお聞きします。今回の法改正も様々な問題があるということで、冒頭、経営側の委員の方に、布山先生に厳しいことを申し上げましたけれども、私、この厚生労働分野は門外漢で、今期から初めて関わっているんですけれども、やはり何かというと労働政策審議会が、労働政策審議会がというのに非常に違和感があるんですよ。果たしてこの労働政策審議会、公益代表、労働者代表、使用者代表と言っているけれども、労働者代表に非正規を代表しているような人はいないし、フリーランス的な働かせ方を反映する人も少ないであろうし、労働者側も、どちらかといえば名前の知った企業の方が多いというような状況でありまして、こうした政策決定の仕方自体に問題がないのかというのが一点。二問まとめますけれども、先ほどの村上参考人と同じなんですけれども、今回、子供を持つ方の柔軟な働き方の措置で、過半数の労働者が加盟している労働組合か、あるいは労働者の過半数と。私が知っているのは、例えばJR東日本というのは、過半数の労働組合を潰して、今、会社側が親睦会みたいなのをつくってやっているわけですね。そういうところで言ったって、やはり意見は言えないと思うんですよ。この在り方についてどう考えるか。この二点についてお答えください。
○小野山参考人 御質問いただき、ありがとうございます。まず一点目なんですけれども、ちょっと労政審議会の問題点というのを私の方から指摘するのはなかなか難しいんですけれども、日本労働弁護団としましては、そこで議論されている内容を定期的に確認をさせていただいて、随時、意見書や声明は出させていただいております。意見書を最初に出したときに、長時間労働の是正が必要だという点を指摘しましたところ、その次の審議会ではそうした議論もなされたというふうに伺っておりますので、今後も、そうしたところを我々としても注視しながら、適宜必要に応じて意見をさせていただければというふうに思います。二点目の、そうですね、おっしゃるとおりで、私も労働組合と一緒に事件をやっております、労働組合と一緒に労働問題をやっておりますけれども、じゃ、過半数を取っている労働組合かというと、なかなかそうではないんですね。労働者のために本当に一生懸命働いている、活動されている組合が過半数を取っているかというと、残念ながらそうではないのが現状というふうに言えます。なので、そうした組合が意思決定をしたことが本当に労働者の意思を反映していると言えるのかというところは私自身も疑問に思うところでして、今回、柔軟な働き方の措置の方で、措置の対象とならない労働者に関して、こちらに関しても、労使協定の中で除外規定ができるというふうになっております。一部の労働者、一年に満たない労働者については、労使協定で措置を講じないということが定められるというふうになっていますけれども、今申し上げたように、じゃ、本当にその労使協定というのが個々の労働者の意思を反映しているのかどうかというのが非常に疑問ですし、そもそも論、柔軟な働き方というのは個々の労働者にとって本来認められる権利だと思いますので、そこを、労使協定だったり、過半数を占めるような労働組合だからといって、制限する方向で何か権限を与えるというのは批判すべき点ではないかと思います。
○福島委員 ありがとうございました。時間が参りましたので、終わりにいたします。ありがとうございます。
○新谷委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。貴重な御意見をお述べいただきまして、参考人の方々におかれましては、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)次回は、明二十四日水曜日午前八時四十五分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。