2024年5月10日 衆院法務厚労連合審査会 技能実習生転籍制限やめよ 宮本徹議員 業界の利益優先を批判
配付資料 出典:厚生労働省労働基準局編『令和3年版 労働基準法 上 労働法コンメンタール3』(労務行政、2022年)
配付資料 出典:西谷敏・野田進・和田肇・奥田香子編『別冊法学セミナー 新基本法コンメンタール 労働基準法・労働契約法【第2版】』(日本評論社、2020年)
配付資料 出典:ILОホームページ
配付資料 出典:一般社団法人外国人材共生支援全国協会ホームページ
配付資料 出典:法務省提出資料
日本共産党の宮本徹議員は10日、衆院法務・厚生労働両委員会の連合審査会で、入管法・技能実習法改定案にある技能実習生が職場を移る「転籍」制限について質問し、「外国人の転職の自由・人権を不当に制約する転籍制限は認められない」と主張しました。
宮本氏は、労働基準法上、有期雇用契約では、自由に退職できない状態が長期化しないように1年で退職することができるとされているが、改定案は「最長2年」転籍できないとされていると批判。転籍制限が、有識者会議の「1年を超えたら転籍可能」という方針から「最長2年」に変更された背景に業界団体や自民党からの働きかけがあったとして、「不当な人身拘束から外国人の人権を守るより、業界団体の利益を優先するのか」と迫りました。小泉龍司法相は「育成就労者を受け入れる実施者の経営を視野に入れる必要がある」と正当化しました。
宮本氏は、政府方針は転籍制限を「当分の間」としているが、「転籍制限が恒久化されない担保はあるか」と質問。小泉法相が「(転籍制限の期限は)条文にはないが、不断の検討を行う」と答えたのに対し、宮本氏は「期限を区切って明示すべきだ」と主張し、看板を掛け替え技能実習制度を実質的に温存する改定案の廃案を求めました。
以上2024年5月11日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2024年5月10日 第213回国会衆院法務委員会厚生労働委員会連合審査会第1号議事録≫
○武部委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。今日は、転籍制限について質問をしたいと思います。有識者会議の最終報告書でも、「様々な人権侵害を発生させ、深刻化させる背景・原因となっている」、こう指摘されているわけです。二〇二二年のアメリカ国務省の報告書でも、技能実習制度の下での人権侵害が指摘され、全ての外国人労働者が雇用主、業種間の変更を含む転職を可能とするよう、こういう勧告がされたわけであります。基本的な認識を法務大臣にお伺いしますけれども、転職を可能とすることが人権侵害を防止するために重要である、こういう認識はございますか。
○小泉国務大臣 これは国際的にも指摘されていることでありますし、また、アメリカの今の御指摘の報告書にも、本人意思による転籍を認めるルートをしっかりつくれ、こういう勧告もありました。もちろん、そういうことを踏まえて、我々も同じ考えでございます。転籍制限を緩めて労働者としての権利をしっかり確保しよう、こういう考え方で、今回の措置は取ろうとしているところでございます。
○宮本(徹)委員 その転籍制限の緩め方が全く不十分じゃないかと言わなければならないと思うんですね。昨年の十月十八日の最終報告のたたき台案では、一年を超えたら転籍可能という方針が出されていたわけであります。そして、関係閣僚会議の決定の中でも一年という言葉が出てくるんですね。人材育成の観点を踏まえた上で一年とすることを目指しつつとされていますが、ここで一年という数字が出てくるこの根拠についてお伺いしたいと思います。
○小泉国務大臣 本人意向による転籍については、計画的な人材育成の観点から、三年間を通じて一つの受入れ機関において継続的に就労を続けることが効果的であり望ましいものの、労働法制上、有期雇用契約であっても一年を超えれば退職可能であることなどを踏まえて、政府方針においては、一年、人材育成の観点を踏まえた上で一年とすることを目指しつつとしたものでございます。
○宮本(徹)委員 労働法制上、一年で退職できることになっているということなわけですよね。何で労働法制に合わせないのか、目指しつつになってしまうのか、ここが大変問題だと思うんですけれども、今日、厚労大臣にも来ていただいておりますが、改めて、労基法のコメンタールも資料でお配りしております。労働基準法附則第百三十七条は、期間の定めのある労働契約を締結した労働者は、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができると規定しているわけですね。この規定の趣旨とは何なのか、また、この規定は外国人にも適用されるのか、お伺いしたいと思います。
○武見国務大臣 この規定ですが、平成十五年の労働基準法改正において有期労働契約の契約期間の上限が一年から三年に延長された際に、そのことによって労働者が自由に退職できない状態が長期化することへの懸念が指摘されたことを踏まえまして、衆議院での法案修正で設けられたものでございます。(宮本(徹)委員「外国人」と呼ぶ)本条は、労働者の国籍を問わず適用されます。
○宮本(徹)委員 当然、外国人も含めてこれは適用される。それで、先ほど大臣の答弁がありましたように、自由に退職できない状態が長期化することへの懸念が指摘されて、これは国会の側から修正をして入れた条項なわけですよね、与野党を超えて。一年以上退職できない期間があるというのはまずいだろう、不当な人身拘束の懸念があるということで修正して入れた法改正だったわけですよ。ところが、これを一年を超えてを認めるということに今度の法案はなっているわけですね。ちなみに、コメンタール、今、資料の一につけているコメンタールは、これは厚労省の労働基準局のものですよね。元々本条の、十四条の方の趣旨は、長期労働契約による人身拘束の弊害を排除するためというので上限を設けたという、これは三年の意味の話なんですけれども、さらに、裏面に別の、民間のコメンタールもつけておきましたけれども、一年から三年への緩和を行った二〇〇三年の労基法改正においては、身分的拘束への懸念から、議員提案に基づき附則百三十七条が挿入されたということで、議員立法で、やはり身分的拘束、人身拘束、これを懸念するという国会の側の意思で入れたわけであります。じゃ、何で労基法の趣旨を踏まえて一年にしないのか、何で最長二年まで転籍制限を認めるのか。自由に退職できないことが、どんどん長期化を認めてしまうわけですよね。これは問題じゃないですかね。大臣、いかがですか。
○小泉国務大臣 このスキームを全体として見渡してみると、外国人労働者のほかに、育成就労実施者というものがまた一つの主体としてあるわけであります。その実施者の経営が成り立つのかどうか、そういった観点もこれはやはり視野に入れる必要がある、このスキームは入れる必要がある、そういう点がございます。ですから、労働者として適切に権利保護していく、制度の魅力を向上させる、そういう観点に立てば一年を目指すのが相当であり、それは委員がおっしゃったとおりでありますが、人材育成上の懸念、途中で期間が過ぎてしまって、転籍によって本当に人材育成が中断しないのかどうか、受入れ機関の人材流出への不安、こういったものに対応する必要があるとの判断から、激変緩和のための措置として、当分の間、受入れ対象分野ごとに、二年までの範囲内での転籍の制限を認めることにしたものであります。外国人の権利保護やこれによる制度の魅力向上という観点と、人材育成上の懸念や受入れ機関の人材流出への不安への対応という観点、この両方のバランスを取った内容でございます。ただ、一年を超える期間を設定する場合には、一年経過後には転籍の制限を理由とした昇給その他待遇の向上等を義務づける形にしております。
○宮本(徹)委員 人材流出への実施者の懸念とのバランスを考えたという答弁なんですけれども、人権というものはそういうものとのバランスで考えるものなのかと、私は今の答弁は大変疑問なんですよね。もう一つ配付資料をつけております。三ページ目ですね。昨年八月九日、技能実習生及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議の追加のヒアリングに際してILO駐日事務所が提出した資料で、転籍制限の緩和について、こう言っているわけですね。期間、内国民との雇用機会均等の観点から、民法及び労働法の規定との平仄を保ち、最長一年間、ただし、やむを得ない事由がある場合には契約解除可とすることには、一定の合理性がありそうであるというふうにしているわけですね。逆に言えば、一年を超えての転籍制限を設けるということには合理性がない、本法案には合理性がないというのがILOの考え方ということになるわけですよね。外国人労働者に内国民との均等の雇用機会と同等の権利を保障しない本法案というのは大変差別的なものと言わなければならないと思いますが、大臣、いかがですか。
○小泉国務大臣 これは、一定の条件の下で、外国人材に日本で働きながら学んでいただく。今までの技能実習よりも更にその性格は強いと思います。成長していただく、ステップアップしていただく。そういう過程において、実習実施先の協力も必要であります。全体としてのスキームの継続性、そういったものも必要であります。もちろん、その中で人権の確保、労働条件の確保、それが最重要であることは論をまちませんが、全体のスキームの持続性、そういった観点もやはり我々は考慮したわけでございます。
○宮本(徹)委員 スキームの持続性のために人権を制約していい、こういう理由には私は絶対にならないと思うんですよね。大体、憲法で職業選択の自由というのは保障されていますよね、当然。憲法の職業選択の自由は外国人にも当然保障されるものですよね。
○小泉国務大臣 人権を守り得るその範囲の中で、スキームの継続性というものに配慮したわけでございます。この研修先がなくなってしまえば、外国人労働者を受け入れることができない。彼らも日本に来ることができないわけです。その継続性というものは、やはり、人権確保という大きな枠組みの中に存する限りにおいては、考慮要素として認められるべきものだと思います。
○宮本(徹)委員 いえいえ、それは、外国人の実習先がなくなるとか、そんな話にはならないんじゃないですか、転籍の自由を認めたからといって。私たちの社会は人手不足であることは間違いないわけで、外国人の皆さんに選んでもらわなければならない側の社会に今立ち至っているわけですよね。多くの方々に来てもらわなきゃいけない。だったら、日本人と同等の権利を保障しよう、こういう考え方に私は立つのが当然だと思うんですよね。先ほど来、スキームの継続性、継続性と言うわけですけれども、いろいろな団体から、最終報告書のたたき台が出た後に働きかけがあったわけですね。配付資料四ページ目、五ページ目には、NAGOMiという団体の資料をつけておきました。これは、武部委員長のお父さんである武部勤元自民党幹事長、元農水相が会長を務める業界団体ですね、外国人材共生支援全国協会。転籍制限について、三年間を基本とすべき、少なくとも二年、こういうふうに提言をされている。あるいは、自民党のグローバル人材共生推進議員連盟も、三年間を原則とすべき、こういう提言をしているということなわけです。こういう中で、元々一年にしようという話が、最長二年ということになってしまったわけですよね。結局、不当な人身拘束から外国人の人権を守ろう、こういうことよりも、業界団体の利益を優先したというのが事の本質ということなんじゃないんですか。
○小泉国務大臣 これはちょっと繰り返しの御説明になって恐縮でありますけれども、このスキームは、やはり実習実施者、育成就労実施者、そして外国人労働者、また様々な機関、そういったものによって構成されている、それによって稼働していく、それによって継続性を持ち得る、そういう制度でございます。人権を守ることはまず一番であります。韓国や台湾よりも緩やかな転籍制限になっております。また、期間を延ばした分はちゃんと経済的に補填しましょう、こういう規定も置いているわけでございます。二重、三重に我々は大事にそれを守りながら、制度全体の継続性ということにもそれは一定の配慮をすることが適切、不適切ではないと思っております。
○宮本(徹)委員 私は、人権というのは、そういう後回しにしていい問題だとは思わないですよ。それで、先ほど韓国や台湾よりはましなんだというお話を、転籍制限が緩いんだというお話をされましたけれども、資料の最後の六ページ目に、これは法務省、出入国在留管理庁が作っている外国人労働者受入れ制度の概要版というものを載せておきましたけれども、韓国、台湾よりは柔軟なものだというわけですけれども、じゃ、ほかの国と比べてどうですかと。アメリカ、イギリス、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、どこも転職は可、可と書いているところがほとんどですよね。こうした欧米諸国と比べると、結局、大変厳しい制度になっているということなんじゃないですか。何で韓国、台湾とだけ比べるんですか。選ばれる国にするんだったら、やはり進んでいる、もっと外国人の労働者の人権を守る国と比べる必要があるんじゃないですか。
○小泉国務大臣 これは各国それぞれ事情があり、制度の違いがあり、歴史の違いもあり、国民性の違いもありますが、私が先ほど韓国、台湾と申し上げたのは、そのエリアにいる外国人材にとって、この三つの、少なくとも日本、韓国、台湾、これは競争上の存在になるんですよね、どこに行くこともできる、東南アジアの若い方々にとっては全て選択可能なマーケット、労働マーケットでありまして、我々が少なくともまずその中で選ばれなければならないという意味を持ってその二つと比べたわけでありますが、基本的には、ヨーロッパ、アメリカを見ると、おっしゃるように、転籍制限がないと思われる制度ももちろんございます。それはそれぞれの国の歴史が成すべきものだと思います。そういうふうに御理解いただきたいと思います。
○宮本(徹)委員 それぞれの国がということでおっしゃるわけですけれども、韓国と台湾とだけ比べるというのは大変御都合主義だと私は思いますし、韓国、台湾と比べるんだったら、手数料の問題も比べなきゃいけないじゃないですか。手数料、韓国に比べて日本は大変高い状況にあるのは、これは大臣も御存じのことですよね。こういうところだけで韓国と台湾の名前を出すというのはいかがなものかというのを申し上げておきたいと思います。その上で、激変緩和措置ということが言われているわけですけれども、一年を超えて転籍制限を認めることについて、最終報告書では経過措置で当分の間とされたわけですね、関係閣僚会議の決定でも当分の間とされたわけですが、しかし、この当分の間という表現すら法案には盛り込まれていない、期限も明示されていない。これはこのまま恒久化されるんじゃないですか。
○小泉国務大臣 これは、本年二月の関係閣僚会議で決定した政府方針、その中で、一年とすることを目指しつつも、当分の間の措置であるということを明確にしております。条文には含まれておりませんが、明らかに立法意思としてここには明記をされています、政府の方針として。国会で御議論いただいて、その上での話でありますけれども、法案が成立した際には、これはしっかりと立法意思として記録され、また我々もそういう考え方で進んでいこうということでございます。
○宮本(徹)委員 法律の中に当分の間と書いてあっても、明治からずっと続いているものというのはあるんですよ。私、昔ある委員会で議論して、内閣法制局に調べてもらったら、法律の間に当分の間と書いてあるのに、ずっと戦前から変わっていないものもあるんですよ。今回の法律は、法案にすら当分の間と書いてないんですよ。それで恒久化されない担保というのはどこにあるんですか。
○小泉国務大臣 これは、この委員会でも、また法務委員会でも、この点を含めて様々な御指摘、御議論がありました。それは非常に貴重なものであって、法案を成立させるに当たって重要な議論としてこれは国会にも引き継がれ、我々もそれを忘れることはありません。
○宮本(徹)委員 引き継がれて忘れることがなくても、そのまま見直さないということはよくある話なんですよ、残念ながら。当分の間と書いてあって、そうなってしまうんですよ。期限を区切って書かない限り、こういうものが恒久化されない保証というのはないんですよ、それは。絶対に、これは何年か後に、五年後の見直しで変わりますと言えますか、言えないでしょう。
○小泉国務大臣 制度というのは、一度つくったら未来永劫、恒久不変のものではありません。どんな制度でも改正が行われます。そういうふうに思われても、実際は、制度というのは不断の見直しが行われ、様々な議論が常に行われ、開かれた国会の場で、政府も含めて、これだけの方々が見守っている法案でありますから、それが見過ごされて、政府方針にあるものが忘れ去られる、むしろ、それこそ考えにくいことだと私は思います。
○宮本(徹)委員 国会答弁が無視されたことなんていっぱいあるんですよ、残念ながら。例えば、日本学術会議の任命の問題だってそうじゃないですか。当時の中曽根総理が、この任命は形式的なものだと答弁したにもかかわらず、それを覆したのは誰ですか。皆さんじゃないですか。今の自民党政権じゃないですか。恒久化されない保証があるというんだったら、ちゃんと法律に書かなきゃ駄目ですよ、そのことを。そう思われませんか。
○武部委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いします。答弁は簡潔にお願いします。
○小泉国務大臣 今日のこの議論も、まさに未来永劫、恒久的に記録に残されます。重要な御議論をいただいたということで、我々はしっかりそれを真摯に受け止めて、不断の見直し、不断の検討を行っていきたいと思います。
○宮本(徹)委員 時間になりました。終わります。言いたいことはいっぱいあったんですけれども、また次回と言いたいですけれども、次回はないようなので、終わります。