2024年5月29日 厚生労働委員会 ハラスメント禁止法を 宮本徹議員が主張

 日本共産党の宮本徹議員は29日の衆院厚生労働委員会で、ハラスメントを受けた労働者が会社の窓口に相談しても救済されない実態を示し、国際労働機関(ILО)のハラスメント禁止条約批准と包括的なハラスメント禁止の法整備を求めました。
 2019年のハラスメント関連法改定で、事業主には相談窓口設置など防止措置義務が課せられましたが、都道府県労働局は企業に相談窓口があるかなどを助言・指導するだけで、直接の被害救済には動きません。
 宮本氏は、パワハラでうつ病になり、相談窓口に住談したが、報告書ではパワハラが認定されないばかりか、被害者本人に問題があるとされたなど三つの事例を示し、企業まかせの対策では、被害救済が図られず、逆に被害者が不利益をこうむる事態も生まれていると指摘しました。
 宮本氏は、法律でハラスメントを禁止すれば、個人も違法行為として認識し抑止力となり、行政が企業に対して被害の是正、救済の指導をおこなう法的根拠にもなると強調。19年の衆参両院の付帯決議を踏まえ、「ハラスメント禁止条約を批准し、包括的ハラスメント禁止の法整備に進むべきだ」と主張しました。
 武見敬三厚労相は「付帯決議における検討事項も踏まえつつ、引き続き専門家の知見をふまえて検討を進める」と述べました。

以上2024年5月31日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2024年5月29日 第213回国会衆院厚生労働委員会第21号議事録該当部分抜粋≫

○宮本(徹)委員 ~略~ 次の質問に行きます。先ほど、大西議員とのやり取りの中で少し言及がありましたけれども、今、厚労省で、カスハラや就活生のハラスメントを含めたハラスメント対策の検討会が行われております。二〇一九年の法改正で、職場におけるパワハラ防止措置義務は企業に課せられました。しかし、果たしてこれが実効性がどの程度あるのかというのが問われていると思います。昨日、ハラスメントに遭い、自社の企業の相談窓口に相談した三人の方のお話をお伺いしました。お話しします。Aさん。部長から、どなる、机をたたく、あるいはタブレットを取り上げ、床にたたきつけられるなどのパワハラが繰り返され、PTSDになった。パワハラ相談窓口に相談したが、調査で部長が否定し、ハラスメントがないことにされた。労基署に相談したら、会社に相談窓口があれば会社に相談してと言われた。Aさんは警察に相談し、今、警察が動いているということです。Bさん。上司から、同僚の前で、女は扱いが面倒、部下に要らないと言われたり、ばかと叱責されたりし、休職して、うつ病の診断を受けた。内部通報したけれども、報告書では、ハラスメントの事実を認められず、Bさんに問題があったかのように書かれた。Bさんは今、裁判に訴えておられます。Cさん。パワハラと安全配慮がないことについて親会社のコンプライアンス窓口に相談したが、すぐに子会社に連絡が行き、同じ部署の社員もCさんを遠ざけるようになり、精神的苦痛で身体症状が発生、今、精神障害者手帳二級、こう診断されている、こういう話なんですね。企業の内部調査はブラックボックスだ、企業の相談窓口に相談したのが失敗だった、こういう声まで聞きました。大臣に認識をお伺いしたいんですけれども、やはり、企業任せのハラスメント防止対策では被害者の救済は図られず、逆に被害者が不利益を被る事態も生まれております。厚労省の調査でも、パワハラを知った後の勤務先の対応で、何もしなかったというのが五三・二%に上ります。そして、今の法制では、労働局に相談しても、企業に相談窓口はあるかだとか、こういう観点での企業に助言、指導するだけで、直接の被害者の救済では動けないわけですね。是非、大臣の認識をお伺いしたいんですけれども、ハラスメントを根絶していく上で、五年前の法改正の事業主に対して防止措置義務を課すだけで十分だった、こういう認識があるでしょうか。
○武見国務大臣 御指摘の二〇一九年の法改正で、パワーハラスメントについて、事業主に対して相談体制の整備等の雇用管理上の措置を講ずる義務を新設をいたしました。その後、厚生労働省が二〇二三年に実施した職場のハラスメントに関する実態調査によりますと、過去三年間にセクシュアルハラスメントやパワーハラスメントを受けたと答えた労働者の割合は、二〇二〇年と比べて減少しているということがあります。対策に積極的に取り組んでいると労働者が評価した勤務先では、ハラスメントを経験したと答えた労働者の割合が相対的に低くなっていることなども明らかになってきているところであります。こうした点について、令和五年厚生労働省委託事業で、職場のハラスメントに関する実態調査といったようなことを労働者を対象に行ってきているわけでございまして、こうしたことからも、事業主の雇用管理上の措置義務は意義あるものと考えております。そしてまた、労働者の意見というものもこうした形で調査もしているわけでありまして、引き続き、この方針、遵守されるべく、徹底的に取り組んでまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 意義がなかったとは私も言いませんよ。それは意義はあったと思います。実際、労働者の中でのハラスメントを受けた人の割合というのは減っていますけれども、ただ一方で、労働局へのハラスメントに関する相談件数、資料もつけておりますけれども、それは一向に減っていないわけであります。そして、実際に、企業の相談窓口に相談したけれども、解決されないどころか、逆に、相談した当人が苦しむという事態が生まれているわけですね。私は、事業主に対するハラスメント防止措置義務だけでは極めて不十分だと思います。ILOのハラスメント禁止条約では、企業にハラスメントの防止対策をさせるだけではなくて、法律でハラスメントを禁止して、被害者の救済、支援を確保しなければならない、こうしております。適用範囲も、労働者だけでなく、フリーランスや就活生も入っている。ハラスメントの定義も大変広いわけですね。ILOの条約が言うように法律でハラスメントを禁止すれば、個人も違法行為として認識しますので、当然ハラスメントの抑止力になります。行政も企業に対して被害の是正、救済の指導を行っていく法的根拠にもなってきます。司法の場でも被害者救済に資することになってまいります。資料をつけていますけれども、ハラスメント禁止条約を批准する国も増え続けておりまして、今現在三十九か国。G7で批准していないのはアメリカと日本だけということになっております。五年前の衆参の附帯決議にもあるわけですけれども、大臣、ハラスメント禁止条約の批准、そして包括的なハラスメントを禁止する法整備に進んでいくべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○武見国務大臣 委員御指摘のハラスメント行為そのものを禁止する規制の法制化については、これは民法など他の法令との関係で整理が必要となります。また、ILOの第百九十号条約について、その趣旨はおおむね妥当だと考えておりますけれども、条約において仕事の世界におけるハラスメントなどを禁止するための法令の制定が求められていること、それから条約の保護の対象にボランティアなど雇用関係のない者まで含まれていることなどについて、国内の法制との整合性が更なる検討課題であるというふうに思います。検討会におきましては、ハラスメントの現状と対応の方向性などについて議論を行っているところでもあります。御指摘の附帯決議における検討事項も踏まえつつ、引き続き、専門家の知見を踏まえて、こうした検討を進めてまいります。
○宮本(徹)委員 民法その他の法令との関係の整理というお話もありましたけれども、そこはしっかり、ハラスメントは、確かに、雇用の現場よりも更に広いところのハラスメントも含めて禁止していこうというのがILOの立場ですし、世界的に見ても労働法制だけでやっていないケースもあるということは私も知っていますので、これも厚生労働省だけの仕事だと私は申しませんけれども。しかし、やはり、現実に、企業の相談窓口に相談してもなかなか、企業の側がもみ消そうというふうになった場合は被害者が救われない、行政に相談しても行政は被害者救済に乗り出せないというのが今の法律なんですよね。これでは本当に救われないと思いますので、そこは本当に、今の検討会の中では、今、カスハラ対策とか就活生の問題は検討の俎上には上っているというのはよく分かるんですけれども、肝腎要の衆参の附帯決議で求めてきたハラスメント禁止の法整備、ここを本当に中心に置いて、是非しっかり検討を進めていっていただきたいと思います。最後、一言だけですけれども、是非、今のハラスメント対策の状況をどう改善したらいいのかという点でも、被害者の当事者の皆さんの意見を聞く場も検討会で設けていただけないかと思うんですけれども、その点だけ大臣にお願いしたいと思います。
○新谷委員長 武見厚生労働大臣、申合せの時間が経過しておりますので、簡潔にお願いします。
○武見国務大臣 はい。厚生労働省におきまして、本年二月から、雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会を開催をし、ハラスメントの現状や対応の方向性の検討に当たり、これまで、業界団体、企業、労働組合などからヒアリングを実施いたしました。ハラスメントに関しましては、流通、サービス業分野や鉄道業界の産業別労働組合から、被害者である労働者への心身の影響等についてお話しをいただくとともに、企業からも、対策を講じる端緒となった労働者のハラスメント被害等に関するお話も伺うなど、被害者の状況把握にも努めております。こうしたこと、引き続き、実態を踏まえて、専門家による検討を行ってまいりたいと思います。
○宮本(徹)委員 引き続き、被害者の声もしっかり踏まえていただきたいと思います。終わります。