2024年6月5日 厚生労働委員会 生計費調査実態踏まえて 宮本徹氏 最賃審資料でたらめ
日本共産党の宮本徹議員は5日の衆院厚生労働委員会で、最低賃金審議会で労働者の生計費の資料として使われている「標準生計費」のデタラメぶりを明らかにし、労働者の生活実態を踏まえた生計費調査を行うよう求めました。
最低賃金法は、最賃は「地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない」とし、「労働者の生計費」の資料として、各都道府県人事委員会が作成した標準生計費(4人世帯)を用いています。
宮本氏は、2023年4月の標準生計費が一番低い愛媛県(13万8810円)は一番高い石川県(27万8070円)の半分で、前年から6万円も変化している自治体もあると指摘。物価高騰にもかかわらず標準生計費が下がっているケースもあるとして「生計費をつかむ、まともな統計をつくる必要がある」と迫りました。
武見敬三厚労相は「仕組みをどう変えるかは決して簡単なことではない。どのような適正な議論の仕方があるのか、相当丁寧に議論をしなければならない重要課題だ」と答弁しました。
宮本氏は、全労連が行った最低生計費試算調査では、全国どこでも時給1500円から1700円前後が必要だとの結果が出ているとして、労働者の生活実態を反映する生計費調査が必要だと主張しました。
以上しんぶん赤旗ホームページネット配信より抜粋
≪2024年6月5日 第213回国会衆院厚生労働委員会第22号議事録該当部分抜粋≫
○宮本(徹)委員 ~略~ 二つ目の問題です。最低賃金についてお伺いをしたいと思います。最低賃金法では、最低賃金は、労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払い能力を考慮して定められなければならない、こうされているわけですね。この間、厚労省は、労働者の生計費については、最低賃金審議会で資料として使われているのが、各都道府県人事委員会が作成した標準生計費と説明しております。そこで、資料を是非御覧いただきたいと思うんですけれども、二ページ以下、各都道府県の県庁所在地を基本としているんですけれども、都道府県の人事委員会のホームページに出ている標準生計費なんですね。これは皆さん、見たら驚きますよ。皆さんも地元の都道府県と自分の周りのところがどうなっているかというのを御覧いただいたらと思うんですけれども、例えば四人世帯、二ページが四人世帯ですけれども、一番低い愛媛は十三万八千八百十円。四人世帯で十三万八千八百十円で標準で暮らしているんですね、愛媛の人は。隣の高知は二十一万三千円で、随分な差があるわけですね。一番、四人世帯で高いのは石川で、二十七万八千七十円になっているんですね。何で石川が愛媛の二倍、もっと言えば、愛媛は石川の半分しかないのか。あるいは、都市部との比較でいくと、例えば愛知は十九万八千八百円、隣の三重は二十七万七百三十円と、三重の方が一・四倍近くあるわけですよね。これは二〇二三年四月の標準生計費です。次に、その前の年と、その前の前の年も載せておりますけれども、年ごとの変動もすごいんですね。大阪は、二〇二三年が二十四万七百九十円ですけれども、その前の年は十八万千五百二十円で、一年で六万円も変わるんですよ、この標準生計費というのは。あるいは、この二年間で物価は上がっていますけれども、二年前よりも下がっているというところも結構あるわけですね。さらに、資料、次のページ、五ページ目は、単身世帯の標準生計費ですね。基本は四人世帯で見ているそうですけれども、単身世帯の方もすごいんですよね。愛媛は単身世帯の標準生計費は七万七千六十円。どうやって暮らすのかなと思います。愛知も十万八千八十円。三重なんかは十七万円ということであるわけですけれども。これはちょっと、今日は愛媛の政務官がいらっしゃいますので、いつも私は余り政務官を指名することはないんですけれども、特別に今日は感想を述べていただこうと思って塩崎さんに指名させていただきましたので、よろしくお願いいたします。
○塩崎大臣政務官 お答えいたします。委員からお示ししていただいたこの資料ですけれども、標準生計費、このとおりだとすると、愛媛県というのは全国で一番生活コストが安いということで、これは、うれしいやらショックやら、ちょっと複雑な気持ちでございますが。確かに、最低賃金については、やはり経済の実態に即した形で定められるということが大事だろうというふうに理解をしております。そういった意味で、最低賃金を定める上では、こちらの標準生計費だけでなくて、消費者物価指数や生活保護基準に関する資料、こういったものを踏まえてこれまでも定めてきているというふうに考えておりますので、そうした形で、今後も実態に即した議論をしていただくことが大事だというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 実態に即した議論をしなきゃいけないということになると思うんですよね。実態にとてもじゃないけれども即していないというのが、政務官の思いなんだろうというふうに思います。大臣、最低賃金法では労働者の生計費を考慮して決めなければならないと言っているのに、生計費と名前のつく資料というのはこれだけなんですよね。確かに、今政務官がおっしゃったように、生活保護基準、これも参考にしているという話ですけれども、生活保護基準は、御存じのとおり五年に一回ですよ。しかも、それ自体、決め方はいろいろな議論もあるわけですけれども、五年に一回ですよ。毎年毎年の最低賃金改定とは少し違うわけですよね。こっちの標準生計費なるものは毎年毎年出ているんですけれども、毎年毎年、とてもじゃないけれどもこんな数字は参考にならないじゃないかと、地方の最賃審議会でもこれは何だという声が上がるようなものが資料として使われているんですね。これはちょっと、是正して、ちゃんとまともな生計費をつかむ統計を作る必要があるんじゃないかと思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○武見国務大臣 まず、こうした最低賃金の審議などに関してはどのような調査を資料として用いているかというのは、公労使の三者構成の最低賃金審議会自身で御議論し、決定していただいているところなんですよ。それぞれお地元の公労使の中でどういう資料を使うかを議論してこういう格好になっているわけですね。その労働者の生計費の考慮ということになっては、人事委員会が作成した、これは先ほども政務官から話をしましたけれども、標準生計費だけではなくて、消費者物価指数であるとか生活保護基準に関する資料などを含めて御議論いただいているところでありますから、労働者の生活実態を踏まえた審議が私はなされているんだろうというふうに思います。こうした最低賃金の決定に当たっては、こうした資料等を踏まえ、生計費を含む三要素、これはすなわち、賃金とそれから企業の支払い能力ですよね、これをやはりちゃんと考慮に入れながら、こうした最低賃金審議会においてしっかりと議論をしていただきたい、こう思っております。
○宮本(徹)委員 ですから、今、委員の皆さんからも見直した方がいいという声が出るように、これはさすがに、各都道府県で決めているとおっしゃいますけれども、厚労省自身のホームページでも、四十七都道府県の標準生計費をまとめて審議会のところにも出しているんですよね。(発言する者あり)いや、三重県が高い、十七万円というのは、私はそれぐらいが適当な額だと思いますよ。三重県が高いというんじゃなくて、三重県は割と実態を反映しているんじゃないかと思いますけれども、労働者の生計費ということを考えたときに。ですけれども、これは本当に、極めてサンプル数が少ないものを使ってやっているから、年ごとにばらばらになるし、地域ごとにもいろいろなことが起きるという事態になっているんですね。これはちゃんとした指標を作るべきではないかと。だって、これが使えないということになったら、生活保護基準でやるんですかという話になるんですよ。労働者の生計費なんですから、生活保護基準とはまた違うんですよね、概念が。労働者の生計費と生活保護基準はまた違うわけですから。生活保護基準は、健康で文化的な最低限度の生活の権利です。最低賃金は、低廉な労働者の生活の安定のための基準として定めていくわけですから、生活の安定のために決めていくわけですからね、本来ならば、当然、憲法二十五条の生活保護の基準よりも高い水準になるのが当たり前のことだと思うんですね。ちょっと、大臣、おかしいと思うでしょう、この標準生計費の数字は。
○武見国務大臣 担当の方から詳細の説明はしてもらおうと思いますけれども、物事の決め方というのは今までの経緯を非常にやはり重視しなきゃなりません。したがって、各都道府県の中で政労使がきちんと議論をして、どのような資料を使うかどうかも含めて合意の上でこうした最低賃金に関わる議論を進めるという仕組み、これをどう変えるかというような御議論になると、それは決して簡単なことではございません。改めて、基本的な今までの議論の仕方というものを踏まえた上で、さらに、どういうふうな適正な議論の仕方があるのかということを、これは相当丁寧に議論をしなければいけない重要課題だと思います。
○宮本(徹)委員 丁寧に議論しなければいけない重要な課題と。本当に重要なんですよ、最低賃金というのは、一番賃金が低い方々の生活を守る上での非常に大事な指標になりますので。今年の非正規春闘というのがあったんですね、非正規春闘の取組の結果を見たら、半分近くの事業所では賃上げがなかったというんですよね。最低賃金が上がった、十月には賃金が上がるんだけれども、それ以外は、春は上がらなかったと。もっと最低賃金を上げないといけないということも表していると思うんです。最後、資料だけ紹介しておきたいと思いますけれども……
○新谷委員長 申合せの時間が経過しておりますので、御協力をお願いします。
○宮本(徹)委員 時間が来ますので。資料六ページのところに、これは、静岡県立大学の中沢准教授の下で労働組合の皆さんが行っている最低生計費の調査であります。二〇一六年は千五百円弱のところが多かったわけです。千五百円前後ですね。それが千七百円前後になってきているんですね、時給でいえば。これが実態だと思うんですよ。ですから、先ほどの標準生計費、各都道府県の人事委員会からいえば、三重あたりが恐らく今の実態なんじゃないか、愛媛はその半分になっているんじゃないかと思われますので、しっかりこれは、最低賃金を引き上げていくというのは政権の方針だとも思いますので、それに使える、実態を反映した資料を、統計を作っていただきたい、そのことを申し上げまして、質問を終わります。