2016年3月1日 衆院財務金融委員会 価格転嫁問題深刻に 宮本徹議員実態を告発
日本共産党の宮本徹議員は1日の衆院財務金融委員会で、中小零細業者が厳しい競争のため消費税を価格に転嫁できず、納税義務だけが重くのしかかっている実態を告発し、消費税率10%への引き上げは事態をさらに深刻にするとして、中止を求めました。
宮本氏は、日本商工会議所が主に個人事業主2千社超を対象に行った消費税率8%増税(2014年4月)に伴う価格転嫁の実態調査で、売上高1千万円以下の事業者や、小売業・飲食業等の半数が「全く転嫁できない」と回答していることを指摘。業者が消費税の納付について「生命保険を解約して払った」「自分の年金から払った」などの声を宮本氏に寄せていることも紹介し、政府の認識をただしました。
麻生太郎財務相は、消費税分を転嫁できないことによって「事業者が利益として確保することを想定している額は減少する」と認め、「そうならないように対策に取り組む」と述べました。
宮本氏は、政府が対策をしても価格転嫁できない事情があり、それでも納税義務が課されるのは「欠陥税制だ」と厳しく批判。消費税率10%への引き上げにより、「業者の苦しみはますます拡大する」と述べて、再増税の中止を求めました。
以上2016年3月2日付赤旗日刊紙より抜粋
≪第190回 財務金融委員会第10号 2016年3月1日 議事録≫
○宮下委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。きのう、参考人質疑がありましたが、二つの法案への批判的な意見もたくさん出されました。そういう点でいえば、きょうはこの後質疑終局ということになりますけれども、審議はまだまだ尽くされていないということを申し上げまして、質問に入りたいと思います。質問通告の順序をちょっと変えますけれども、初めに一点、法案の附則百七十一条の二の意味について確認しておきたいと思います。先ほど宮崎岳志議員からもお話しありましたし、本委員会でも何度も何度も、インボイス制度の導入で免税事業者が取引から排除されるのではないか、あるいは、そうならないために強制的に課税業者への転換が迫られるんじゃないか、このことが繰り返し指摘されてきました。きのうの参考人質疑でも、業者の皆さんの代表としてお米屋さんの太田さんがいらっしゃいましたけれども、課税業者になるのか、それとも、もうBツーBは諦めてBツーCに特化した業者になるのか、どちらを選んでも将来はもう潰れるしかない、悪魔の選択だ、こういうことを訴えておられました。そこで、この法案の附則百七十一条の二なんですけれども、インボイスの導入に係る事業者の準備状況及び事業者取引への影響の可能性などを検証し、必要があると認めるときは、その結果に基づいて法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとするというふうにあります。法律を見ると、この検証をやるのは軽減税率制度導入後三年以内をめどと。三年以内をめどということはインボイスが始まる前に検証するということがここの文言としては書かれているわけですが、ということは、ここで言われている必要な対応というのは、インボイス制度の導入を延期するということも含むということでよろしいのでしょうか。
○麻生国務大臣 これはまず宮本先生、複数税率というものを導入した以上は、インボイス制度、この制度というのは、いわゆる納品明細書の説明という、こういったものをきちんと整備しないと複数税率というのはなかなか施行できない、まずこれが大前提です。その上で、このインボイス制度というものをやります場合には、免税事業者が課税事業者へ転換というものをやれるかやれないか、そっちの方が得か損か、いろいろなことを考えられると思いますが、そういったものを準備される部分には当然時間があって、あしたからどっちかを選べなんと言われたってそれは無理なので、そういったもので私どもとしては、まずは、インボイス制度の導入は平成三十三年の四月ですから、約四年間の準備期間を設けさせていただきます。それと同時に、導入から約六年間は、免税事業者からの仕入れにつきましては一定の仕入れ税額控除というものを認めます。一定にしてといった形にさせていただいて、その上で今般の税制改正法案の附則において、政府としては、この導入に係る事業者の準備状況等々、事業者の取引への影響の可能性などを考えながら必要な対応を行うということにしております。いずれにしても、これを導入するに当たっては、我々としても、これは日本で初めての制度でありますのでどんなことが出てくるかというのは、ちょっと正直なことを言って、商売をしたことがない役人にそんなことがわかるはずもないんだと私は最初から言ってありますので、これはそんな簡単に、きのう、きょうからあしたとすぐできるわけがない。時間をかけてみない限りは絶対こんなものは追っつかないから、そういった意味では少々最初から厳しくやったってこれはえらいことになるので、きちんとした時間をかけてやっていく必要がありますということを最初から言い続けてきております。そういった意味では、我々としては、この事業者の件にさらに六年の時間をかけてきちんとインボイスの時期というものを考えてやらせていただきたいと思っております。その間約十年あるという話をして、この間、こういったある関係者の人に会ったら、大臣、わしはもうそのころ死んでおるからもうええわとかなんとか言われて、いや、おやじさん、十年して生きておったらどうするんですかと言って、もうちょっと真剣に息子の話も考えたらどうという話もして、るる説明するとわかるんです。そんなに今までの仕入れのあれとむちゃくちゃ違うわけではありませんので、るる説明させてもらうと理解を得られる方もおられますので、時間をかけて丁寧にやっていかねばならぬと思っております。
○宮本(徹)委員 だから、私が聞いたのは、必要な対応と法律で言っている中には、インボイス制度の導入を延期するという選択肢を、検証の時期をわざわざ三年以内をめどにというふうに書いたわけですよね。わざわざインボイス制度が始まる前に必要な措置をとると言っているのは、今の法案では、軽減税率制度導入後、四年後からインボイス制度が始まるわけですけれども、その前に見直すこともあり得るということは、インボイス制度の導入の延期という選択肢も含むのかということをお伺いしているんです。
○麻生国務大臣 これはあくまでも、インボイス制度の導入それ自体を延期するということを想定しているわけではありません。その上で、今ありました百七十一条の第二項に基づきます必要な措置というものの具体的な内容につきましては、これは軽減税率を導入した後、約三年ということになるんですが、それをめどに検証というのをさせていただいた結果を踏まえてその内容を検討するということを考えておるというので、現時点で具体的な対応が固まっているわけではありませんので、そういう書き方をさせていただいております。
○宮本(徹)委員 否定はされないからあれなんですけれども、インボイス制度が始まる前に、三年以内に検証ということは、この三年以内と入れた意味はどういう意味なんですか。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。大臣から御説明申し上げましたように、インボイス制度というのは非常に大きな制度改正でございます。四年間の準備期間を置いておりますので、その間にさまざまな準備等々が行われてくるということで、そこで、どういうふうな対応、例えば、延期ということではなくて、何か追加的にすべきことがあるかどうかというのをスタート前にはしっかりと責任を持って検証して、何か必要ということであればやるということを申し上げているわけでございます。スタートしてしまった後では遅いということもあるでしょうから、前には検証し、必要な対応をするということでございます。
○宮本(徹)委員 大臣の答弁だとまだいろいろな幅があるのかなと思いましたけれども、今の主税局長の答弁だとインボイス制度導入の延期は絶対ないというふうにとれるんですけれども、そういうことですか。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。この条文としては、そういう状態は想定していないということでございます。あくまでインボイス制度がスタートする前の段階で準備が進んでおりますので、その状態がつつがなく進んでいるのか、どういう状態かというのをしっかり検証して、必要な措置があるのかどうかということも検討するということを政府に義務を課しているということでございます。
○宮本(徹)委員 今の段階で想定していないということかもわからないですけれども、その後、いろいろ検証してみたら、これはとても日本じゅうの業者を潰すことになっちゃうということが、ここではそういう議論がされてきたわけですけれども、そのことも政府も認識するに至って、今の時点では延期は想定していないけれども、その時点で延期するということもあり得るということなんですか、それとも、この法律上の文言は延期は絶対しないということなんですか。どっちなんですか。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。延期を規定しているというものではなくて、なるべくそうならないように万全の対応をとるという趣旨でございます。
○宮本(徹)委員 なるべくそうならないように必要な対応をとると。今の時点で延期を想定しているものじゃないけれども、私が延期というものは絶対ないと言い切れるかと言ったら、絶対延期はないんだとは言われなかった、ということでいいわけですよね。
○麻生国務大臣 同じことを向こうの方が品よく言うから何となくわかりにくいんだと思いますが、導入を延期するという考えを基本に置いているわけではありません。
○宮本(徹)委員 基本に置いていないのは、それは法律として出しているからわかるわけですけれども、ただ、ここでとる必要な措置というのには、そういう事態もあり得るということで書いているということでよろしいんですね。わざわざ、三年以内と。
○麻生国務大臣 いろいろ初めてのことでもありますので、導入というものに当たっては、いろいろなものが、我々の想定以外のものというのは普通はちょっと税制の世界では考えられないんですが、初めてのことをやりますので、いろいろなことが起こり得るかもしれぬということでそういったときのことを考えて、少なくとも四年したら導入はします。したがって、それまでの間いろいろやってみた結果、ここは附則やら何やらについていろいろ検討ということが十分に起こり得る。しかし、我々として、複数税率というものをやる以上はこのインボイスというものは避けて通れぬと思っておりますから、複数税率導入に当たってはインボイスというものを四年後導入するというのはきちんといたしております。
○宮本(徹)委員 今はそうしたいというのはわかるわけですけれども、延期は絶対しないんだということもおっしゃらないということは確認しておきたいというふうに思います。それとあわせて、その含まれる措置の中には、免税業者の皆さんが課税業者に絶対強制的にならなくてもいいような、何か新しい、この法律には書かれていないような仕掛けを考えるということもあり得るということですか。
○佐藤政府参考人 お答え申し上げます。いずれにしても、四年間という準備期間がございます。その間にさまざまなことが起こり得る、先生おっしゃったようなことも起こるかもしれません。そういうことをやはり検証した上で、何か制度的対応が必要ということもあるかもしれません。そういうことを附則でわざわざ入れておりますのは、そういうことをしっかりやることでつつがなくスタートできるようにと、そういう趣旨でございます。
○宮本(徹)委員 いろいろなことを考えるということですけれども、インボイス制度を今のままやればつつがない状態には絶対ならないというのは、この間の議論でも、多分大臣自身もよくよくわかっていらっしゃるようなことだと思うんですね。さっきの宮崎議員の資料を見ても、一目瞭然なわけですよね。ですから、こんな中で、課税業者への転換を強制する、もしくは、免税業者を取引から排除していくようなインボイス制度をこのまま導入するということは絶対やってはならないということを重ねて申し上げておきたいと思います。あと最後残された時間で、消費税の転嫁の問題について少しだけ議論させていただきたいと思います。この間、各種の団体が消費税の転嫁の問題の実態調査をやっています。日本商工会議所も、昨年、価格転嫁に係る実態調査をやられて三千百社の会員さんに聞いていますが、この調査では、消費税が全部価格に転嫁できたというのは、二〇一四年は六〇・六%だったと。それが去年は五七・六%ということで、全部転嫁できたという方は減っているという結果になっておりました。そして、小売業、生活関連サービス業、飲食業の半数が、転嫁が困難だというふうに回答されております。あと、宿泊業や卸売でも転嫁できないという回答がふえているというのがその中で出ておりました。聞きますけれども、転嫁できない消費税があった場合、業者が税務署に納める消費税というのはどこから出してくるんでしょうか。
○麻生国務大臣 基本的には、消費税というものは、これは価格に転嫁することによって、最終的には消費者に御負担をいただくということが予定されているという、税の基本的な体系としてはそうなっておりますので、仮に今御指摘のような消費税に転嫁できない場合ということになりますと、これは、事業者が利益として確保することを想定している額は減少する、はっきり言えばそういうことになろうと思います。したがって、こういうことにならないようにするために、事業者の方々が消費税を価格に転嫁していただくことは極めて重要なことなのであって、政府としては、転嫁対策特別措置法等々に基づいてしっかり転嫁対策というのに取り組んでまいりたい。私たちは、その法律によって、これは最初に、五から八のときに非常に激しくやったんですけれども、ずっとこういった形でやらせていただくということになるんだと存じます。
○宮本(徹)委員 政府がいろいろな対策を打っても、実態としては、政府の調査を見ても、いろいろな業者団体の調査を見ても、価格には転嫁できていない方がたくさんいらっしゃる。利益が上がっているところは利益を減らす、赤字のところは、赤字でも消費税を納めなきゃいけないですから、保険を解約して払っただとか、ある方なんか年金の方から消費税を払ったんだとか、私自身も本当に大変な話をたくさん伺ってきました。そういう点でいえば、価格が転嫁できないという事情があるにもかかわらず、消費税は納めてくださいというのは、私は、これは欠陥税制だ、一番の消費税の欠陥だというふうに思っています。これを一〇%に引き上げたら、この業者の苦しみはますます拡大すると思いますので、消費税は絶対増税してはならないということを申し上げまして、時間になりましたので質疑を終わります。