2016年5月20日 衆院国土交通委員会 地元無視の道路整備、国の責任でやめさせよ
日本共産党の宮本徹議員は20日の衆院国土交通委員会で、東京都が計画する都市計画道路について、都内各地で反対運動が広がっていることを示し、住民の意向に関係なく交付金を交付する国の姿勢をただしました。
宮本氏は、都市計画道路の財源の社会資本整備総合交付金に関して、会計検査院が自治体の行う事前評価で「地元の機運」など8項目の検証を求めていると指摘。栗田卓也都市局長が「通知を出し事前評価の適切な実施を求めている」と答弁したのに対し、宮本氏は東京都の特定整備路線では住民からの異議申し立てが4千件にものぼっていることをあげて、「地元の特定」について、まともな検証は行われていないと指摘しました。
宮本氏は、東京都が3月に決定した優先整備路線320区間について、小金井市議会で「計画見直しを求める意見書」が可決され、荒川区の補助92号線でも対象地域の世帯の7割が反対署名し、区も「強引に進めることがないよう都に働きかける」としていることを指摘し、地元の機運があるといえるのかと質問。石井啓一国交相は「地元の理解を得ながら進めるべきだ」と答えました。
宮本氏は社会資本整備総合交付金について「道路では55%が国の税金だ」と指摘。「地元の機運」があるか基準を明確にし、チェックを自治体任せにせず、国自身が行うべきだと強調しました。
≪第190回 衆院国土交通委員会 第16号 2016年5月20日 議事録≫
○谷委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。きょうは、東京のまちづくりについてお伺いしたいと思います。ちょっと通告順序を入れかえまして、まず、東京都内の都市計画道路の問題について伺いたいと思います。何十年間も事実上凍結されていた都市計画道路がこの間次々復活をして建設が打ち出されております。都内各地で立ち退きを迫られる住民などから反対運動が起きております。都市計画道路の財源は社会資本整備総合交付金になっているわけですが、これについては、ことし二月に会計検査院から、「社会資本整備総合交付金等による事業等の実施状況について」という報告書が出ました。大臣も読まれていると思いますが、あり方について大変厳しい意見がたくさん出ているわけであります。この中で、例えば、自治体が行っている事前評価についてはこう指摘しております。事前評価に当たっては、地域住民等の意向や合意形成等を踏まえた事業実施の確実性を検証することが求められており、国土交通省が例示した八事項を全て検証することが望まれる、こういう記述があります。この国土交通省が例示した八事項の中には、「円滑な事業執行の環境」、これもあります。それから、「地元の機運」という項目もあります。大臣にお伺いしますが、会計検査院のこの部分の指摘を受けて、今年度から社会資本整備総合交付金については、「地元の機運」など八項目、全て事前評価をちゃんと行うことを求めるようにしたんでしょうか。
○栗田政府参考人 社会資本整備総合交付金についてのお尋ねでございます。まず、その交付金の趣旨でございますが、地方にとって自由度が高く、創意工夫を生かせる交付金として平成二十二年に創設されています。地方公共団体が交付金を求める場合には、社会資本総合整備計画の提出に合わせまして、自主的、主体的に検証した結果を記載する事前評価書を添付することとなっています。今委員御指摘のとおり、本年二月には、会計検査院から、事前評価においては、上位計画との整合性あるいは地元の機運、こういった八項目全ての確認事項について検証することが望ましい、あるいは事前評価書を提出していない地方公共団体があったことなどが指摘されておるところでございます。こういった指摘も踏まえまして、二月二十四日のことでございますが、国土交通省から地方公共団体に対しまして通知を発出しております。その中では、事前評価を適切に実施し、国土交通大臣に整備計画を提出する際にはこれを添付することを求めております。これに基づきまして、三月中に事前評価書が添付された整備計画が提出されているところでございます。今後とも、社会資本整備総合交付金の本来の趣旨である自由度というものを尊重しながらも、検証すべき事項は検証して適切に事業が進められるように努めてまいります。
○宮本(徹)委員 通知で適切な実施と書いたと言いますけれども、私が聞いたのは、会計検査院はこの八項目について全て検証することが望まれると言っているわけですよ。この八項目を検証しなさいということは通知に書いたんですか。
○栗田政府参考人 通知の中で八項目というように文字で表現しておるものではございませんけれども、通知の中では、地方公共団体等においては、事前評価を適切に実施し、あるいは国土交通大臣に整備計画を提出する際にはこれを添付するというように明記をしておるところでございます。
○宮本(徹)委員 会計検査院は八項目全てを検証することを求めたわけですよ、望ましいと。それに対して、適切にだったら全然話にならないじゃないですか。会計検査院は憲法上の組織ですよ。そこがわざわざ指摘したことについても改善を図らないようじゃだめですよ。もう一回通知を出し直すことを私は求めたいというふうに思います。それで、今、国土交通省は事前評価を求めているわけですけれども、自治体から上がってきた事前評価のチェックシートを見て、それぞれの項目に丸がついているかどうかということしか見ていないわけですよね。本当に地元住民の中に機運があるのかだとか、こういうのは全然見ていないわけですよ。そういう姿勢ですから、先ほど紹介もありましたように、事前評価書が添付していなくてもそのまま国土交通省はこれまでたくさんの計画について受領していて、そして予算の配分もやってきた、このことも会計検査院に厳しく指摘されているわけですよね。二〇一四年度から始まった東京都の特定整備路線の事業、延焼遮断帯という名目で二十八路線、二十六キロメートルあります。星薬科大学のキャンパスを貫くということで、大学もこれはどうにかしてくれということで見直しを求めております。商店街をぶち切る路線もたくさんあります。住民からも異議申し立てがこの特定整備路線だけについても四千件寄せられているということになっているわけですよね。この特定整備路線が含まれた社会資本整備総合計画についても、東京都は事前評価書を添付していませんでした。会計検査院からの調査があった後に、後から事前評価書を出したわけですね。それを見たら、まちづくりの機運というところに丸が入っているわけですよ。異議申し立てが四千件も出ている、こういうものについて丸をつけて出しているわけですよね。大臣、ちょっとお伺いしたいんですけれども、国土交通省自身は、円滑な事業実施の環境や地元の機運などということで、八項目をわざわざホームページで事前評価の項目について例示しているわけですよね。こういうチェックは自治体任せではなくて、国自身がちゃんと行う必要があるんじゃないですか。
○栗田政府参考人 お答え申し上げます。先ほど申し上げました交付金事業、地方公共団体の自主性を最大限尊重する仕組みとなっております。事前評価も一義的には事業主体である地方公共団体がみずからの責任で行い、住民への説明責任を果たすべきものと考えております。地方公共団体が作成する事前評価書の中では、地元の機運等を含めた確認事項についても評価されることとなりますが、具体的な検証項目につきましては地方公共団体が定め、評価することとなります。それから、東京都の特定整備路線に限りませず、都市計画道路の整備におきましては、事業主体が関係者の理解と協力を得ながら事業を進めるということが重要なことというふうに考えておるところでございます。東京都の特定整備路線について申しますと、事業主体であります東京都が関係者の理解と協力を得ながら事業を進められるものというふうに認識しておるところでございます。
○宮本(徹)委員 そういう官僚答弁するから、私は大臣に答弁を求めているわけですよ。そういった官僚答弁を聞きたくて私はきょうこの委員会に来ているわけじゃないんですよね。
大体、国自身が適切なチェックを行ったら、こういう反対運動が起きるような道路づくりというのは進まないはずなわけですよね。私は都市計画道路については国が真剣にチェックすることが絶対に必要だと思いますよ。これからの問題でもあるんですよね。三月三十日に、東京都は、これから十年間で優先して整備すべき路線として第四次事業化計画を決定しております。三百二十区間、二百六十キロメートル。七十年以上前に、戦後、復興院が線を引いた、そういう路線も多くあります。この対象道路に係る住宅の数は一万三千棟ということを言われております。東京都はこの決定に先立ってパブリックコメントを行いました。四千百二十六件のパブリックコメントが東京都に寄せられました。そのうち二千百十一件、半分が小金井の道路、小金井三・四・一号線と小金井三・四・十一号線外の二路線でした。この小金井の二路線が通る地域というのは、国分寺崖線、はけと私たち呼んでいますけれども、まだ貴重な自然が残る地域で、実は十年前から国の予算も投入して自然再生事業が取り組まれている地域です。三月二十三日に小金井市議会では計画の見直しを求める意見書が可決されております。にもかかわらず、東京都はこの第四次事業化計画を決定したということになりました。大臣、一般論としてお伺いしますが、地元議会で見直しを求める意見書が可決されたような道路建設は、地元の機運があると言えるんでしょうか。
○石井国務大臣 一般論で申し上げれば、事業主体は地元の理解と協力を得ながらやはり事業を進めるべきであるというふうに思っております。
○宮本(徹)委員 理解を得ながらという点でいえば、地元の議会で見直しを求める意見書があるということでいえば、理解がない、地元の機運がないということでいいですね。
○石井国務大臣 今のは個別論でございますので、一般論で申し上げれば、地元の理解を得ながら事業を進めるべきだと思っております。
○宮本(徹)委員 理解を得るのは当然なんですね。ですから、一般論で聞いているわけではなくて、地元の自治体が見直しを求めているようなものについては、地元の機運はあるとは言えないですね。
○栗田政府参考人 都市計画道路の整備につきましては、これは東京都の特定整備路線に限らずでございますが、事業主体が関係者の理解と協力を得ながら事業を進めることが重要なものと考えております。先ほど申し上げました交付金の仕組みの中で、事前評価も一義的には事業主体である地方公共団体がみずからの責任で行い、住民への説明責任を果たすべきもの、こういうふうに考えておるところでございます。
○宮本(徹)委員 そういう官僚答弁をするんだから、あなたは答えなくていいです。私は大臣と議論したいわけですよ。それで、もう一つ聞きます。荒川区では、補助九十二号線が計画されております。西日暮里四丁目地区では、この九十二号線の対象となる地域で、世帯の七割、七百五十六筆の計画の見直しを求める署名が集められて、昨年十二月の区議会で住民の陳情が趣旨採択となっております。さらに、区議会で荒川区側自身が、強引に進めることがないよう今後都に働きかけていくというふうに言っております。大臣に一般論としてこれもお伺いしますが、区当局が、自治体当局が強引に進めるべきでないと言っている道路は、地元の機運があると言えるでしょうか。(発言する者あり)
○石井国務大臣 一般論として言えば、街路事業にかかわらず、都市計画事業を進める事業者は住民の理解を得ながら事業を進めていただきたいと思っております。
○宮本(徹)委員 今何かやじが、どこかの議会でやれよなんてやじが飛びましたけれども。何で会計検査院が社会資本整備総合交付金について報告書を出したのかというのを皆さん真剣に受けとめた方がいいですよ。道路では五五%が国の税金なんですよ。国の税金から出ているからちゃんとチェックしなさいということを会計検査院が言っているわけでしょうが。こうした道路について、この荒川区の補助九十二号線だとか、あるいは小金井の道路だとか、東京都が仮に地元の機運がある、こう言って事前評価書に丸をつけてきたらどうするんですか。国は、これでも地元の機運があるというふうにするんですか。相変わらずチェックせずに、先ほどの一番初めの答弁でいきますと、それは地元が評価することですという話で済ますんですか。どっちですか。
○石井国務大臣 交付金事業はそもそも地方公共団体の自主性を最大限尊重する仕組みでございますので、事前評価も一義的には事業主体である地方公共団体がみずからの責任で行うべきものと考えております。なお、国土交通省では、この交付決定時にかかわらず、事業の執行に当たっては、住民の理解を進めるなど、適宜必要な技術的助言を行っているところでございます。
○宮本(徹)委員 適切な助言をやるんだったら、こういうことについては地元の機運があるとは言えませんよということを、ちゃんと基準を明確にして言うべきですよ。そのことを重ねて申し上げておきたいというふうに思います。それから、国交省によるチェックという点でもう一点ただしたい点があります。先ほど紹介した東京都の特定整備路線を含む社会資本整備総合計画にかかわって、会計検査院も多く問題点を指摘したわけですが、この計画づくりにかかわっていた当の東京都の職員が、ことし四月から国交省の同じ街路の担当になって出向していらっしゃいます。Aさん。二〇一四年度四月からは東京都の街路計画課課長補佐、事業化担当係長、二〇一五年度は街路計画課統括課長代理、事業化計画担当、そしてこの四月からは国土交通省の街路交通施設課の課長補佐となっています。東京都で道路計画をつくって進めてきた方が、今度は道路の認可だとか、先ほど言った必要な助言を行う側に回るということになっているわけですね。利益相反の考え方からいったら、こういう人事交流はふさわしくないと思いますが、大臣、どうでしょうか。
○石井国務大臣 人事交流によりまして地方公共団体から国に出向している者は、当該地方公共団体を退職いたしまして国の職員の身分となっております。このため、出向先である国の組織の職責にのっとって、上司の指示に基づき職務を遂行するとともに、守秘義務も課されておりまして、特段の問題はないものと考えております。
○宮本(徹)委員 その感覚、どうかしていると思いますよ。私がなぜこれを聞こうかと思ったかといいますと、先月、住民の皆さんと一緒になって国交省にレクを受けた際にAさんが見えていたわけですよ。Aさんがこの道路づくりについて得々と、東京都の姿勢の擁護も含めてやられるわけですよ。余りにもおかしいじゃないかと。住民の方から聞いたわけです、あれ、Aさんは東京都の職員でしたよと。私もびっくりしましたよ、そのとき聞いて。何でAさんが国交省の席に座っているんですかと。会計検査院が、不十分だと、この社会資本整備交付金については言っています。そして、東京都のこの事業については、たくさんチェックの印が会計検査院の指摘ではあったわけですよね。国交省は東京都に対して、先ほどの話でも指導しなきゃいけない、助言しなきゃいけない立場にあるにもかかわらず、こういう人事交流をやっていたら、東京都を擁護する、国と都のなれ合い、癒着で公平公正な道路行政ができるのか、真剣に考え直していただきたいということを強く求めまして、質問を終わります。