2016年11月2日 衆院財務金融委員会 軍事研究へ誘導やめよ
提出資料①:東京都農林・漁業振興対策審議会答申 2016年8月 から抜粋
提出資料②:国立大学法人理学部長会議声明 2016年10月31日 から抜粋
日本共産党の宮本徹議員は2日の衆院財務金融委員会で、軍学共同推進をやめて大学の基礎研究予算を増やすよう求めました。
防衛省は、大学などと連携して研究開発を進める安全保障技術研究推進制度を、今年度の6億円から来年度は110億円への増額を求めています。宮本氏は「研究費がほしい状況を利用して軍事研究に誘導しようというもの」と批判しました。
一方、応募総数は昨年度の109件から今年度は44件に激減。宮本氏は「兵器の基礎研究に手を染めたくないという多くの研究者の意思の表れ」と述べた上で「応募が半減したのに予算要求が20倍というのは、“本制度の今後の予算規模は応募状況などを踏まえて検討する”という国会答弁に反する」と批判しました。
若宮健嗣防衛副大臣は「採択するに十分な応募件数があった。過去の答弁と矛盾することはない」と強弁しました。
宮本氏が「研究結果は武器輸出や国際共同開発につながるのでは」とただすと、防衛装備庁の野間俊人部長は「成果を踏まえて検討する」として否定しませんでした。宮本氏は「イスラエルと無人機を共同開発する動きがあるなかで紛争当事国との共同開発にまで大学研究者を巻き込む制度だ」と批判。「研究成果は公開可能と説明するが、契約書の文言では防衛省の都合で非公開にすることが可能になる」と指摘しました。
以上2016年11月5日付赤旗日刊紙より抜粋
同日2日の衆院財務金融委員会の中で、宮本徹議員は、上記赤旗掲載記事部分のほか、都市農業の振興についての質疑も行いました。
≪第192回 衆院財務金融委員会第7号 2016年11月2日 議事録≫
○御法川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を続行いたします。宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。きょうはまず初めに、春に続きまして、都市農業を守るための税制の改善について質問いたします。昨年制定されました都市農業振興基本法に基づいて、ことし五月、都市農業振興基本計画が閣議決定されました。都市農業の安定的な継続、都市農地の保全が掲げられました。そして、税制改正要望についても、都市農業振興基本計画に基づいて、農水省、国交省等から出ております。前回もお話ししましたけれども、この十年で東京の農地は一千ヘクタール以上失われました。市街化区域内の農地ということで見れば、十年で二割近い農地が減少いたしました。その一番の原因は、相続税の高さということにあります。そして、きょうは大臣にまずお伺いしたいのは、都市農業の継続と都市の農地の保全のためには、やはり相続税などの税制改正は緊急性のある課題ではないか、この認識はあるでしょうか。
○麻生国務大臣 この法律の制定の以前より、都市農業というのは、新鮮な農作物の提供、そんなに、それほどたくさん来ているわけではありませんけれども、それに加えて、緑とか、また、農業体験の経験をさせるという場の提供とか、また、いわゆる防災とか、そういったものに避難するときの空間の確保などなど、これは多様な機能というのを有しておりますので、この振興というのは極めて重要な問題であるんだと認識をしております。そのような状況で、都市農業の重要性というものも踏まえて、ことしの五月の閣議決定で都市農業振興基本計画というのが出されて、いわゆる生産緑地が貸借されたという場合の相続税の納税猶予制度というものにつきましては、これは、それ相応の政策的意義や公益性を有していること、また、土地の利用規制とのバランスなどなどを考慮した上で、税制措置が適切に講じられるようにすることが重要というようにされておりますのは御存じのとおりです。したがいまして、現在、生産緑地におきます土地利用規制等につきましては、これは関係省庁の間で、農林省等々いろいろ検討が進められている段階だと承知をいたしておりますので、いずれ具体的な要望が出されてくるんだと思いますので、その段階で財務省としてはその問題につきましては検討させていただきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 今検討中ということですが、都内の農家の平均年齢も六十四歳になっておりまして、七十代以上もたくさんいます。相続税の単位というのは、東京の場合は大体億の単位ということになっております。きょうは、都市農業にかかわって、東京都が新たな振興プランに向けてまとめました「都市と共存し、都民生活に貢献する力強い東京農業の新たな展開」という東京の農林・漁業振興対策審議会の答申を、抜粋も持ってまいりましたが、この中でも、今、都市農地の保全に踏み出さなければ、農業、農地を生かした町づくりの機会は永遠に失われてしまうと、大変切迫感を持って書かれております。先ほど麻生大臣から御紹介がありました税制改正要望、今出されているものの一つが、農水省から出ております、相続税の納税猶予の対象に生産緑地を貸借した場合も適用するということがありますが、これが都市農業の振興にとってどういう意義を持つのか、農水省、説明していただけるでしょうか。
○細田大臣政務官 ありがとうございます。先ほど財務大臣からお話がありましたとおり、都市農業は、新鮮な農産物の提供、緑や農業体験の場の提供、防災空間の確保等の多様な機能を発揮していると考えております。このような機能を適切かつ十分に発揮するためには、都市における限られた資源である農地を有効に活用するということが大変重要であると私どもは考えております。昨年、議員立法によりまして、都市農業振興基本法を国会で全会一致で成立をさせていただきました。そして、本年五月に、この基本法に基づいて都市農業振興基本計画を閣議決定したところでございます。この基本計画の中に、生産緑地等を貸借する場合における相続税の納税猶予の適用などが盛り込まれておりまして、私どもといたしましては、来年度から実施される税制改正にこれらの要望を財務当局にお願いをしているところでございます。私どもとしては、これらの措置が実施されることによって、意欲ある都市農業者などによる農地の活用を促進するとともに、都市における公共財である農地が維持保全されるものである、こういうふうに考えております。
○宮本(徹)委員 意欲ある都市農業者によって活用され、さらに、都市の農地を保全される上でもこれは非常に大事な意義があるというお話でした。麻生大臣も同じ認識だと思われますので、ぜひ来年度の税制改正の中で実現をお願いしたいと思います。そして、もう一つお伺いしたいのは、これは農水省にお伺いしたいんですけれども、今回、この相続税の納税猶予の対象の拡大、あるいは総務省宛てには、市街化区域内の農地の固定資産税の引き下げなどを要望として出されておりますが、果たしてこれだけの措置で都市農業、都市農地は守られる、そういう認識なんでしょうか。
○細田大臣政務官 ありがとうございます。今回の税制改正要望の実現は、市街化区域内の都市農地について円滑に貸借できる環境を整えるものでありまして、都市農地の荒廃や減少を防ぎ、ひいては都市農業を守ることにも寄与するものであるというふうに私どもは考えております。これ以外に、先ほど申し上げたとおり、本年の五月に都市農業振興基本計画を閣議決定いたしました。この振興基本計画の中には、先生十分御存じだと思いますが、農産物を供給する機能の向上及び担い手の育成及び確保、農産物の地元での消費の促進、農作業を体験することができる環境の整備、あるいは、学校教育における農作業の体験の機会の充実などの各般の施策が記載されているところでございます。これらの施策を関係省庁が一体となって推進することとしているところでございまして、これにより都市農業の一層の振興を図っていくことが重要であるというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 いや、私がお伺いしたかったのは、税制について、今回出した税制改正要望だけで都市農業保全に向けて大事な対策となっているのか、税制要望としてもこれだけでは不十分じゃないかということをお伺いしているんですけれども、その点どうですか。
○細田大臣政務官 私どもといたしましては、先ほど申し上げたとおり、基本計画に基づいて各般の施策を実施することとしているところでございまして、この基本計画の中におきまして、先ほど申し上げたような措置を講ずべきところとされているところでございまして、この基本計画の考え方に沿って税制改正要望を財務当局にお願いしているということをぜひ御理解いただければというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 私の聞いたことに答えていないんですけれども。その基本計画に沿って出しているのはわかるわけですけれども、この基本計画に盛り込まれなかった点でも、現場の農業者の皆さんが、都市の高い地価の中で農業を続けていくためにはもっと支えてほしいと言っていることがたくさん聞こえていると思うんです、農水省には。私は春のときにも質問いたしましたけれども、納屋だとか農業用施設用地あるいは屋敷林だとか、そういったものにかかわる相続税や固定資産税の問題についても対策をとってほしいという話がたくさん寄せられていると思うんですよ。なぜ相続税が億になるのかといったら、やはり農家は、野菜を収穫して出荷していくためには、農作業をする場所も必要なわけですよ。納屋も必要ですし、一定の広さを持った庭も必要ですし、機械を収納する場所も必要ですよね。そういうものがあって初めて農業は成り立っているわけですよ。そういうところにかかわる相続税が高い。生産緑地のところは納税猶予の制度があったとしても、生産緑地だけで農業が成り立つわけじゃないですから、そういうところまで含めて対策をとってもらわないと、幾ら都市農業を守ろうといっても、三代たったら相続税で全部なくなっちゃうんじゃないか、こういうことが言われているわけであります。そして、前回質問した際にこういう答弁がありました。農地と比べて権利移転等にかかわる厳しい規制が存在しないので、課税の公平性という観点から問題があるのではないか、こういう答弁があったわけですね。きょう資料でお配りしております、先ほど紹介した東京都の審議会の答申では、こういうことを言っております。都市農業の経営承継を円滑にするためには、農地の定義を耕すための土地だけではなく、もう少し広い範囲の活動も対象にして、例えば、直売所や市民農園に附属する倉庫や休憩所やトイレなどについても、広義の解釈として農地の定義に含めることを検討すべきである。また、農地に限られていた納税猶予制度の適用を、一定の土地利用制限のもと、農業経営に必要な畜舎や農業施設用地等にも拡大が必要だというふうにしております。この答申は、JAの東京の組合長さん初め関係者がたくさん集まって、有識者も集まってまとめたものですが、本気で都市農業を守ろうと思ったら、相続税、固定資産税を含めてこういった部分を本当に真剣に検討する必要があると思うんですが、その点、どうでしょうか。
○細田大臣政務官 ありがとうございます。今先生御指摘になった点については一つの問題提起をしていただいたというふうに受けとめておりますが、一方で、今お話があったとおり、現在のところ、畜舎あるいは農業用施設用地は宅地扱いということになっておりまして、農地と比べて権利移転あるいは転用行為に係る厳しい規制が存在するということではございません。現在のこのような制度を前提といたしますと、相続税の納税猶予等々の税制上の優遇措置を講じるということは、課税の公平性の観点から問題があるのではないかというふうに私どもとしては考えているということでございます。ぜひ、この点について御理解をいただければと思います。
○宮本(徹)委員 ですから、先ほどのこの東京都の答申も、権利移転の規制がないという前回の答弁に対して、一定の土地利用制限をかけた上で新たな制度を検討すべきじゃないか、そういうふうに言っているわけですよね。そういう点については検討すべきじゃないですか。
○細田大臣政務官 一つの問題提起として受けとめさせていただきますが、ただ、先生御指摘になったようないわゆる規制の強化については、恐らくさまざまな意見が農家の方にもあるのではないかというふうに考えておるところでございます。また、こういう点も含めて、私どもとしていろいろと考えさせていただければ、こういうふうに思います。
○宮本(徹)委員 次の代にわたって、都市農業の中でも、農家の皆さんにも後継者が育って、やはり継ぎたいということで頑張っている方もたくさんいらっしゃるわけです。そういう方がしっかりと都市農業を継いでいけるような税制になるように、一つの問題提起ということで済ますのではなくて、真剣な検討を重ねて求めておきたいというふうに思います。そしてもう一点、この要望の中で、「新たな物納制度の創設」ということも東京都の審議会の中では提案されております。相続税を納めるために売却されたら、農地は大体、宅地になったり、住宅が建ったり、マンションが建ったり、商店になったりというふうになっていくわけですよ。そして、仮に物納されたとしても、国は、当然農地として持っておくわけじゃなくて、売却してしまう。ですから、農地として保存されることはないわけですよ。そこで、この提案の中でも、次善の策として、市街化区域内の農地について物納を積極的に認める、そして、物納された農地を自治体に貸与し、農業者や、市民農園として活用する新たな制度を検討すべきではないかという提言もされていますが、こういう提案についても真剣に検討する必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。これは財務省です。
○麻生国務大臣 基本的に租税というものは、これは国の歳出を賄うために徴収するものでありますから、金銭による納付というのが原則ということになろうかと存じます。ただ、今話題になっております相続税につきましては、これは財産課税であります。したがって、これは、金銭による納付が困難ということになった場合に、税務署長の許可というものがあったときに限り、一定の財産をもって物納するということが認められているというのが現状であろうと思っております。こういった物納制度の趣旨というものを踏まえると、これは、農地につきましても金銭納付ができるのかとかいうことを考えるんですが、金銭納付ができるにもかかわらず物納を積極的に認めるというのは、これはちょっと不適当なのではないかと考えております。なお、実際に物納された土地については、公的な目的のために自治体からの利用の要望というものがあった場合は、個々のケースに応じていろいろ検討させていただくというのが現実でありまして、今はたしか五百件だか五百二、三十件、そういったものがあると記憶をします。いずれにしても、都市農業の振興につきましては、今回の都市農業振興基本計画などを踏まえて、これは関係省庁、今、細田政務官からも答弁があっておりましたけれども、農林省に限らず、いろいろ検討が行われるものと承知をしておりますので、財務省といたしましても、いわゆる具体的な要望というものが提出された段階で検討させていただくということになろうかと存じます。
○宮本(徹)委員 具体的な要望が出たら検討するということですが、とにかく、まず金銭で納めてくれという前提のところから出発すると、売っ払ってマンションになってしまうというのが現実なわけです。これだとやはり都市農業は守れないということになりますので、この点は、都市農業は守るべきものなんだ、都市の農地はあるべきものなんだと、閣議決定されたわけですから、その点に立ってこの制度も見直しをお願いしたいというふうに思います。次のテーマに入りますので、農水省はここで退席していただいて結構です。どうもありがとうございました。次に、大学の研究予算について伺います。先日ノーベル賞を受賞されました大隅さんは、このままでは日本の科学が空洞化すると告発されて、基礎研究予算の増額を訴えられておられます。この間、研究者が個人の研究に自由に使える研究予算というのは大きく減少してまいりました。この夏に文科省が大学の個人研究費についての調査を行っていますが、調査結果について、文科省、簡単に説明していただけるでしょうか。
○板倉政府参考人 お答えいたします。本年七月、文部科学省におきまして、科研費採択上位二百の大学などに所属する研究者を対象といたしまして、個人研究費等の実態に関するアンケートを実施したところでございます。本調査におきましては、所属機関から研究者に対して自由な研究活動の実施等のために支給される資金でありまして、外部資金を除いたものを個人研究費と定義をいたしまして、配分形態、方法、現在の規模、十年前との比較についてアンケートを行ったところでございます。アンケートに対しまして三千六百四十六名から回答を得まして、年間の個人研究費が五十万円未満の者が約六割、百万円未満の者が約八割であるほか、十年前との比較で、個人研究費が減少した者は四割を超えるなどの結果が得られたところでございます。
○宮本(徹)委員 六割の方が年間の個人研究費は五十万円未満、減った方が四割、十年前と比べてふえた方は一割ということです。この間、国立大の運営交付金を毎年一%削減してきた影響というのが深刻にあらわれております。今週月曜日に、国立大学法人理学部長会議が声明を出しました。きょう資料でお配りをしております。この声明の中では、役立つ研究推進の大合唱が好奇心を基礎とした基礎研究を萎縮させていますと訴え、大学の運営費交付金が継続的に削減されている現状を告発しております。運営費交付金の削減が基礎研究の体力を奪っているんだと。多くの国立大学で大幅な教員削減が提案され、若手教育者、研究者が多くの大学で採用できない状況になろうとしているということも告発をされております。そして、そういう中で基礎科学を目指す若手の急激な減少をもたらしているということも訴えた上で、「大隅先生や梶田先生の研究で見られた、若手研究者が生き生きと未知のものに挑むためのポストも場所も資金も失われつつあります。」と言っております。こういう声明も出されたわけですけれども、麻生大臣はこの理学部長会議の声明をどう受けとめられるでしょうか。大学現場の危機感というのを共有されているでしょうか。
○麻生国務大臣 国立大学法人理学部長会議声明、これは十月三十一日に出されておりまして、運営交付金の削減が基礎研究の体力を奪っていると主張されておられるということは私どもとしては承知いたしております。財務省といたしましては、国立大学におけます基礎研究の推進というのは極めて重要なものであると認識をしております。運営費交付金を初めとします基礎研究のいわゆる二十九年度予算等々につきましては、これは引き続き、文部科学省を初めとして、関係省庁と議論をしてまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 基礎研究は重要だと考えているということですので、これはぜひ増額をしていただきたいと思いますが、去年は運営交付金の額は総額は変わらなかったんです。ずっと削減が続いてきたのが、去年は変わりませんでした。しかし、その中身が少し変わったんです。機能強化経費という部分が膨らんだわけです。これは、各国立大学に評価に応じて差をつけて再配分する。そして、この機能強化経費の部分は、いわゆる基盤的な経費としては使えない。人件費だとか、そういうところに回せないということになりました。そういう中で何が起きているのかということですけれども、例えば新潟大学では、今年度から二年間、新規採用は凍結する。そして、ゼミがなくなるという影響も出ております。北海道大学では、二〇二一年度までに教授二百五人分に相当する人件費の削減案も出ている。東北大学では、非正規の職員三千二百人を雇いどめという問題も起きております。そして、国立大学協会の予算要望を見ますと、筆頭に掲げられておりますのは、国立大学運営費交付金の総額の増額ということになっております。この間、十一年間で一千四百七十億円削減されてきて、決算ベースで見ると、国立大学法人の経常収益に占める運営交付金の割合は、平成十六年度の四八%から平成二十六年度の三五%まで低下というふうに予算要望の中では紹介されております。これは財務省にお伺いしますが、そもそも、ここまで国立大学の運営費交付金を削減してきた理由というのは何なんでしょうか。
○木原副大臣 宮本委員にお答えいたします。国立大学法人の経常収益に占める運営費交付金収益の割合が、今委員御指摘のとおり、平成十六年度は四八%から平成二十六年度に三五%に低下をしている、年々低下をしているということは事実でありまして、ちなみに、おっしゃったように、この平成二十八年度はその前年度とは同額になっているということも承知をしております。その要因といたしましては、この経常収益に占める運営費交付金収益は低下をし、また、学生納付金収益、これも学生数の低下によって低下をしているということと、加えて、診療報酬等による附属病院収益は増加をしているということ、また、競争的資金等も増加をしているということで、国立大学法人全体の経常収益というものは伸びている中で運営費交付金の割合も金額も減少している、そういう状況にあるというふうに認識しております。
○宮本(徹)委員 いやいや、だから、その一千四百七十億円削減したのは、なぜそれだけ削減してきたんですかということをお伺いしたわけです。
○木原副大臣 この運営費交付金につきましては、先ほど申し上げましたけれども、これまでの、国立大学法人化以降、一千四百七十億円の削減でありますけれども、これをマクロ的に見てみますと、先ほど申し上げた、国立大学附属病院の赤字解消によってマイナス五百八十四億円、それから、退職手当の支払い額の減によりマイナス五百四億円の合計が一千四十七億円といった、いわゆる研究活動等に直接影響のない減が大宗を占めて、これを除くとマイナス三百八十二億円、これはパーセントにすると三・一%の減ということになっております。この間でございますけれども、国立大学への入学者数が三・三%減になっておりまして、そういうことを踏まえると、マクロ的にはですが、イコールとは言えませんけれども、そのようなプラスマイナスということになっております。
○宮本(徹)委員 この一千四百七十億円削られたことによって、先ほど出た個人研究費の大幅な減額がもたらされているわけですよ。競争的資金はかなりふやしてきましたが、基本の運営交付金を減らすことで、やはり自由な研究ができなくなっている。そのことを大隅先生も訴えられて、報道を見ましたら自民党本部でも大隅先生は講演をされて、国立大の運営交付金が減って政府の助成対象としている産業への応用研究が重視されている現状についてとても危惧している、こう訴えられたというふうになっているわけですよ。受賞後の大隅先生の会見を見ますと、研究費を獲得しやすい分野の研究者を採用する傾向が強まり、未知の課題に挑戦することが難しい雰囲気を助長している。すぐ企業化できることが役に立つと同義語のように扱われる風潮がある。何が将来人類に役立つかは歴史で検証されると。私、こういう言葉はやはり真摯に受けとめなきゃいけないというふうに思います。自由に使える基礎的な予算をしっかりふやす方向にかじを切るべきだというふうに思います。来年度予算についてはこれから相談するということですから、しっかりふやしていただきたいというふうに思います。それで最後に、防衛省にもきょう来ていただきました。安全保障技術研究推進制度についてお伺いします。この制度は、防衛省が、兵器の開発に役立つ基礎研究のテーマを設定して、大学や研究機関から公募を募る制度です。そして、その研究者のアイデアを吸収して、研究成果で使えそうなものがあれば防衛省での兵器研究の開発につなげていくというものになっております。これは二〇一五年にスタートしました。予算規模は、二〇一五年に三億円、二〇一六年に六億円。そして来年度の概算要求を見ますと、一気に二十倍近い百十億円というふうになっております。百十億円といったら、平均的な国立大学の運営費交付金に匹敵する額です。ちなみに、横浜国立大学は七十八億円でした。埼玉大は六十億円でした。先ほど紹介しましたけれども、研究費が減っているわけですよ、大学の先生の皆さん。喉から手が出るぐらい研究費が欲しい状況を利用して、軍事研究に誘導しようというのがこの安全保障技術研究推進制度だということだと思います。これに対して、今、大きな批判が研究者の皆さんから上がっております。科学者の国会と言われる日本学術会議は、戦後二回にわたって、戦争を目的とする科学の研究は行わない、こういう声明を出してきましたが、なぜこういう声明を出してきたのか、紹介していただけるでしょうか。
○駒形政府参考人 お答え申し上げます。日本学術会議の一九五〇年、六七年の声明についてのお尋ねです。日本学術会議は、一九四九年の創立に当たって、これまで日本の科学者がとりきたった態度について強く反省するとともに、科学文化国家、世界平和の礎たらしめようとするかたい決意を内外に表明しております。このことを背景に、一九五〇年の声明は、戦争を目的とする科学の研究には今後絶対に従わないというかたい決意を表明したものでございます。もう一つの一九六七年の声明は、当時の米国陸軍極東研究開発局よりの半導体国際会議やその他の個別研究者に対する研究費の援助等の諸問題を契機として、改めて、日本学術会議発足以来の精神を振り返って、戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わないという決意を声明したというものでございます。
○宮本(徹)委員 戦前、大学が侵略戦争に加担していった反省に立って、こういう声明が二度にわたって出されてきたわけです。今、今回の防衛省の安全保障技術制度をめぐって、日本学術会議でも議論されております。各大学でも議論がされております。例えば新潟大学では、昨年十月、科学者の行動指針を改定して、「軍事への寄与を目的とする研究は行わない。」という文言を追加しました。こうした動きが各大学で広がっておりますが、これを文科省はどう受けとめていますか。
○田野瀬大臣政務官 お答え申し上げます。新潟大学では、平成二十七年十月、委員御指摘のとおり、科学者の行動指針を一部改正いたしまして、「軍事への寄与を目的とする研究は行わない。」ということを定めたということは、私ども承知をさせていただいているところでございます。大学における研究のあり方につきましては、各大学の自主的な判断によるものでございまして、我々文部科学省といたしましては、各大学の判断を尊重したい、そのように認識をいたしておるところでございます。
○宮本(徹)委員 この制度は、応募総数、二〇一五年度は百九件だったのが二〇一六年度は四十四件に減りました。応募が減った理由についてはどう総括されているんでしょうか。防衛省。
○若宮副大臣 今委員が御指摘になりました応募数でございますけれども、この安全保障技術研究推進制度に応募するか否かということにつきましては、これは応募者御自身の御判断によるところでございまして、私ども防衛省としてはそれについてはコメントは差し控えさせていただきたいと思っておるところでございますが、この二十八年度の応募につきましては、採択するに十分な件数があったものというふうに考えているところでございます。引き続き、本制度の周知に努めてまいりたいというふうに思っております。
○宮本(徹)委員 喉から手が出るほどお金が欲しい状況があっても、やはり兵器の開発の基礎研究には手を染めたくないという多くの研究者の意思のあらわれではないかというふうに思います。昨年の国会審議の際に、政府は、この制度の今後の予算規模については、本年度の本制度の応募状況などを踏まえて検討してまいりたいと考えておりますと。普通に考えたら、応募が半減したら予算は減らすものだと思いますが、何で応募が半減したのに予算の規模が二十倍近くになっているんですか。整合性がないんじゃないですか。
○若宮副大臣 この安全保障技術研究推進制度、これに応募するか否かというのは、先ほど申しましたように応募者御自身の御判断によるところでございますが、平成二十九年度の概算要求におきましても、二十八年度も、採択するに十分な応募件数があったというふうに考えております。実際のところ、委員多分御存じのところだと思いますけれども、全てが採択されるわけではございませんので、その中で精査をいたしまして採択をすることになってございますので、過去の答弁と何か矛盾するあるいは異なるということはないというふうに承知いたしているところでございます。
○宮本(徹)委員 その答弁は苦しいです。だって、応募状況を踏まえて検討すると言っておきながら、応募が減ったのに予算をふやすというのは全く説明になっていないですよ。結局、金額をふやしたのは、できれば軍事研究にはかかわりたくないという研究者に対しても、札束を見せびらかして、軍事研究の基礎研究をやらせよう、こういう話じゃないんですか。それで、ちょっとこの制度について確認したいんですけれども、防衛省のペーパーを見ますと、研究成果は「将来装備に向けた研究開発で活用」というふうにあります。ということは、将来この制度の研究成果に基づいて開発された兵器が武器輸出だとか国際共同開発につながる、これも排除されていない。よろしいですね。
○野間政府参考人 お答えいたします。今委員御指摘のところでございますけれども、基本的に、この安全保障技術研究推進制度といいますものは、基礎的な研究分野におきまして、防衛省が外部の研究機関あるいは企業を対象に研究を公募いたしまして、先進的、独創的な研究を推進するものでございます。したがいまして、こういうところで出てきました成果につきまして、その成果を踏まえて検討させていただきたいということでございます。
○宮本(徹)委員 成果を踏まえて検討ということは、武器輸出や国際共同開発も排除されていないという答弁なわけですよね。今、イスラエルと無人機を共同開発しようという動きがある。これは新聞でも報道されましたが、こういう紛争当事国との共同開発にまで大学の先生方の研究が巻き込まれていくということに道を開くのが今回のこの制度じゃないかというふうに思います。この制度にかかわってもう一点聞きたいと思いますが、防衛省は、研究成果の公開について、研究者が望めば原則一〇〇%公開と説明されますが、契約書を見るとそうなっていないんですよ。「乙は、得られた成果について外部へ発表及び公開することができる。ただし、発表及び公開にあたっては、その内容についてあらかじめ甲に確認するものとする。」つまり、契約書の文言を見ると、防衛省が確認した範囲でしか公開できないように読める。この契約書の文言では、防衛省の都合で非公開にすることが可能になるんじゃないですか。
○若宮副大臣 今委員が御指摘になられた部分、同じく装備庁のホームページにも掲載がございます。これはQアンドAの形になっておりますが、ちょっとそのまま読み上げさせていただきますと、クエスチョンの方が「研究成果を外部に公開できますか。」ということで、アンサーの方が、「本制度では、得られた成果は公開することを原則としております。なお、知的財産権の取扱いについてお互いに確認するため、公開前にご連絡いただくこととしております。」という文がございます。安全保障技術研究推進制度、今委員が御指摘になったのは委託契約書の三十五条の一項かと思いますけれども、研究者は「得られた成果について外部へ発表及び公開することができる。」と規定をされているところでございます。これは、研究成果を自由に発表、公開していただくことを前提といたしているところでございます。あわせまして、発表とその公開に当たりましては、その内容をあらかじめ防衛省に「確認するものとする。」というふうに規定をしてございますが、これは、先ほどのQアンドAにもございましたように、研究者の成果としての知的財産権の取り扱いということにつきまして、事前に防衛省とその研究者との間で遺漏なく確認をするための規定となってございます。本制度におきましては、研究成果の発表、公開が防衛省から制限をされるというようなことは一切ないということで、引き続き明確に周知を図ってまいりたいと思っておりますので、そういったことで御理解をいただければと思っております。
○宮本(徹)委員 いや、一切ないんだったら、一切なく読める契約書にすればいいわけですよ。ところが、契約書はそうなっていないわけですよ。ですから、日本学術会議の検討会でもこの点についてこう言っているわけです。各府省の契約書と比較して、「制約が特に大きいというものではない。ただし、事前の内容確認の運用によっては、実態としての制約が変わる可能性はある。」というふうに指摘されているわけですよ。ですから、今、ホームページにこう載っていますという説明がありましたけれども、これがその次には変わっていく可能性だってあるわけです。契約書の文言上はそういうことが排除されないことになっているわけですよ、今言った説明は契約書には書かれていないわけですから。時間になりましたからこれで質問を終わりますけれども、今やはり、防衛省のひもつきの予算を受け取らないという大学もそして研究者もたくさんいらっしゃいます。そういう中で、軍事研究に大学を巻き込む制度はやめるべきだ、百十億円こういうところに出すお金があるんだったら、それこそ全国の大学が自由に研究する予算に回すべきだ、そうしてこそ人類にとっても社会にとっても大きく役立つことになるということを申し上げまして、質問を終わります。