2017年2月21日 財務金融委員会 製薬会社優遇を批判 研究開発減税撤回を
提出資料① 税制調査会「法人税の改革について」2016年2月
提出資料② アップルの海外での税引き前利益と税負担率
提出資料③ 経産省委託調査「2015年度内外一体の経済成長戦略構築に係る国際経済調査事業」2016年2月
日本共産党の宮本徹議員は21日の衆院財務金融委員会で、今年度で適用期限をむかえる研究開発減税の「高水準型」(試験研究費の対売り上げ比率が10%を超えた場合の控除制度)の延長についてただしました。
政府税調の原則では、「利用実態が特定の企業に集中している政策税制は(中略)廃止を含めた抜本的な見直しを行う」となっています。一方、「高水準型」の減税額の9割以上を上位10社が毎年占めています。
宮本氏は、政府税調の基準も無視して延長するなどもってのほかだと批判。星野次彦主税局長は、日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会などから恒久化・延長の要望がでていると明らかにしました。
宮本氏は、今回の税制改正案で、製薬業界など「高水準型」を使う百数十社だけが法人税額の最大4割引きの優遇が続くと指摘。内部留保等を積み増し、他産業に比べて利益率も高い製薬企業が同税制による優遇を受けていることをあげ、「一体なぜ優遇税制を残さねばならないのか大変疑問だ」と述べました。
麻生太郎副総理兼財務相は「内部留保はしっかり活用してもらう」と答えつつも、研究開発税については「大企業優遇ではない」と答弁しました。
宮本氏は、製薬業界が年間約9000万円も自民党に献金し、日本製薬団体連合会や日本製薬工業協会代表らの企業が同税制による上位減税企業に入っていることなどに触れ、「政界と製薬業界のおカネを通じた関係があるのではないか、と国民が疑念をもって当然だ」と批判し、同税制の延長を撤回すべきだと主張しました。
以上2017年2月22日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2017年2月21日 衆院財務金融委員会第4号 議事録≫
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。税制改正法案について質問いたします。まず、今回の法案がなぜ税収中立での改正なのかというのが大変疑問であります。一月に発表された二〇一六年度のプライマリーバランスは二十兆円の赤字と、昨年七月のときよりもさらに大きく悪化するということになりました。未来世代にツケ回しをしていかないということを考えた場合、やはりしっかり税収を確保していく必要があると思います。消費税増税をやらないというのは当然のことなわけでありますけれども、だったら、やはりそれにかわる税収確保策を考えるというのが、未来に対する政府の責任だというふうに思います。なぜ税収中立の改正になっているんですか、大臣。
○麻生国務大臣 平成二十九年度の税制改正では、いわゆる一億総活躍社会の実現を目指して、日本の成長力を底上げするための見直しを行うというのを大前提にいたしております。こうした中で、例えば配偶者控除の見直しについては、就業調整問題を解決するという観点から、配偶者の収入制限を引き上げる一方、所得再配分機能の回復などの観点から、納税者本人に所得制限を設けるということにいたしたところでもあります。また、法人税制に関しては、研究開発税制や所得拡大税制につきましては、大企業は、投資や賃上げに積極的な企業への支援を重点化しますけれども、中小企業につきましては、これらの税制による支援を充実させるとともに、設備投資促進税制等々の拡充を行うことといたしております。このように、今般の改正では、就業調整問題、投資や賃上げの促進といった政策課題に答えを出しつつ、財政への影響も考えながら、めり張りのついた手直しを行う。配偶者控除の見直しや法人税の見直しは、おおむね税収中立となっておりますが、負担を求めるべきところには負担を求めつつ、中小企業などに対しては配慮を行っているところだと考えております。
○宮本(徹)委員 ですから、なぜ全体として税収中立なのか。負担を求めるところにもっと求めるということが本来やらなければいけないことだったのではないかというふうに思います。本法案では、私が何度も取り上げてきました研究開発減税、この問題で、今年度で適用期限を迎える租税特別措置の延長が盛り込まれております。なぜ、本来ならば、このままやめてしまえば一千億円の財源が生まれるところ、これを、高水準型はそのまま延長、増加型はそのまま総額型に組み込んでしまうということになってしまったのか。研究開発減税の減税規模六千億円はほぼ維持されるということになっております。それで、改めて租税特別措置の考え方について聞いていきたいと思いますが、租税特別措置の見直しについては、二〇一四年の政府税調で基準が確認されております。その基準三について紹介していただけるでしょうか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。ただいま委員が御指摘されましたのは、政府税制調査会における平成二十六年度の法人税の改革に係る取りまとめにおける記述をおっしゃっておられるんだと思います。この中で、租税特別措置について、「利用実態が特定の企業に集中している政策税制や、適用者数が極端に少ない政策税制は、廃止を含めた抜本的な見直しを行う」「例えば、不特定多数の適用を想定しながら、上位十社の適用が八割超の場合や適用が十件未満の場合は、必要性や効果の検証を徹底する。」とされているところでございます。
○宮本(徹)委員 今紹介がありましたように、利用実態が特定の企業に集中している政策税制、上位十社の適用が八割超の場合、これは廃止を含めた抜本的な見直しを行うというふうにされているわけであります。そこでお伺いしますが、研究開発減税の今度延長されることが法案に書かれております高水準型、これは、減税額のうち上位十社が占める比率について、この五年間はどうなっていますか、紹介してください。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。研究開発税制の高水準型につきまして適用額上位十社の占める割合、これは、直近租特の適用実態調査によりますと、平成二十三年度から二十七年度までの五年間の比率を申し上げますと、九四・五%が二十三年度、以下、九四・六%、九六%、九三・二%、そして二十七年度が九三・六%となっております。ただ、研究開発税制の高水準型、これは、先生も御案内のとおり、企業の研究開発投資を後押しするための研究開発税制の一つのメニューでございまして、研究開発税制全体として見ますと、適用額上位の十社で占める割合は、平成二十七年度、直近におきましては三一・九%になっているということでございます。
○宮本(徹)委員 私が今、きょう聞いているのは、高水準型についてなんですね。今お話あったとおり、八割どころか、上位十社で九十数%、この五年間、毎年毎年占めているというのがこの高水準型ということになっております。ですから、政府税調の基準からいけば、廃止を含めた抜本的な見直しを行うということが求められていたはずなんですね。昨年の臨時国会でも指摘しましたが、総務省の行政評価局がこの研究開発減税の高水準型の延長を求めた税制改正要望に対して、想定外に特定の者に偏っていないことについて十分な説明がされていないというふうに指摘していたわけですね。その前の年は、会計検査院も、適用額から見た業種や企業の偏り状況等について国民に対する説明責任を的確に果たしていくことが望まれるというふうに指摘もされていたわけであります。政府部内の役所からも国民に対する説明責任が果たせていない、こう批判されていたものを、政府税調の基準も無視して延長するというのは、私はもってのほかの話だというふうに思います。一体いかなる力が働いてこんなことになったのかというのが問題だと思うんですね。この高水準型の恒久化を求める要望を政府や与党に出してきた業界団体がありますね。どこですか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。研究開発税制の高水準型に係る要望を行った業界団体といたしましては、財務省で把握しているものについて申し上げますと、まず、恒久化を要望したのは、日本化学繊維協会、中部、関西、中国地方の経済連合会、日本製薬工業協会、日本医療機器産業連合会、日本製薬団体連合会でございました。このほか、延長等を要望したのは、日本経済団体連合会、日本産業機械工業会、日本工作機械工業会、日本ロボット工業会、石油連盟、日本自動車部品工業会でございます。
○宮本(徹)委員 この税制を利用しているのは、二〇一五年で百四十社ですよね。ということになっております。先ほど、日本製薬団体連合会、日本製薬工業協会というお話もありましたが、この研究開発減税の高水準型の適用総額の上位十社で多い業界、これは製薬業界ですよね。
○星野政府参考人 租特の適用実態調査の報告書で分類されている分類で見られる範囲で申し上げますと、租税特別措置の適用実態調査において公表されている情報を踏まえれば、平成二十七年度において高水準型の適用上位十社のうち多いのは、化学工業に属する企業と考えられます。
○宮本(徹)委員 化学工業の中には製薬業は当然入りますよね。
○星野政府参考人 入ります。
○宮本(徹)委員 過去の報道を振り返ってみますと、いろいろ出ています。日刊薬業という業界紙がありますが、昨年十月六日の報道では、自民党の製薬産業政策に関する勉強会で、製薬企業側は年末の税制改正に向け、今年度までの時限措置となる研究開発税制の上乗せ措置のうち、製薬業界の利用率が高い高水準型の恒久化を求めたというふうに報じられております。いろいろな団体、先ほど述べられましたけれども、その中でもとりわけ、日本製薬団体連合会、日薬連と、日本製薬工業協会、製薬協、ここは、繰り返し繰り返し、歴史的にも、政府や自民党に対して、この研究開発減税の高水準型の維持、恒久化というのを求めてきております。そして、今、日薬連の会長は大日本住友製薬の社長さん、製薬協の会長はアステラス製薬の社長さんとなっておりますが、この二社はいずれも、高水準型による減税額上位十社の中に入っていますよね。
○星野政府参考人 租税特別措置適用実態調査の中身として個別の企業名が入っているかどうかということについては、お答えを差し控えさせていただいております。
○宮本(徹)委員 いつも企業名を聞いたら答えないんですけれども、これは普通に有価証券報告書だとかそういうのを見れば、誰でもすぐにわかる話なわけですよね。昨年十月七日付の薬事ニュースでのインタビューに答えて、日薬連の会長さんは、上乗せ措置が二〇一六年度に期限を迎える、総額型とオープンイノベーション型上乗せ措置を合わせた計四〇%の控除上限は何とか守っていただきたい、日薬連としても、引き続き製薬協とともに国会議員や行政に働きかけていきたいというふうに述べられております。お伺いしますが、今度の法案で、研究開発税制の控除の上限、これは税額の何%になりますか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。本年度の税制改正案におきましては、研究開発税制税額控除額の上限を維持及び引き上げをしているわけでございますけれども、増加型の廃止に伴いまして、高水準型が適用できない、当期を含めた四年間の平均売上高に対する試験研究費の割合が一〇%未満の企業につきましては、特別試験研究費に係るものを含め、法人税額の三〇%となります。また、高水準型が適用できる企業につきましては、高水準型の一〇%と総額型の三〇%を合わせて、引き続き法人税額の四〇%となります。
○宮本(徹)委員 つまり、これまでと違い、これまでは研究開発費をふやすと、増加型を利用すれば、あらゆる企業に対して四〇%税額控除上限という選択肢があったわけですけれども、今度は増加型を総額型に組み込みましたので、この高水準型を使っている百数十社、この百数十社だけが最大法人税の四割引き、こういう制度が今度の法案の改正では続いていくということになります。私たち、研究開発減税全体が大企業を優遇する制度だと批判してきましたが、その中でも、この高水準型を利用する企業、業界でいえば製薬業界等を極めて大きく優遇する税制という形に今度の法案ではなるわけですよね。先ほど、研究開発費用が多いところを応援するんだとお話がありましたけれども、製薬業界の利益率というのは他の製造業と比べて高いというのが国民的な常識だと思いますが、そうじゃないんですか。
○星野政府参考人 利益率を何で見るかという議論はあると思いますけれども、仮に、例えば、政策投資銀行が出している調査がございますけれども、それによりますと、売上高に占める税引き後利益の割合は、平成二十七年度におきまして、医薬品等の主要企業におきましては一〇・一%となっておりまして、製造業全体の主要企業三・九%より高くなっております。
○宮本(徹)委員 今紹介がありましたように、製薬業界の利益率が高いというのは、これはもう国民誰もが知っているような話なわけでありますよね。そこに対して、なぜ減税額を最大税引き四割という優遇税制を残していくのか、大変疑問であります。製薬メーカーの売上高上位二十社の内部留保、利益剰余金と資本剰余金、この三年間を見てみましたけれども、二十社合計で三千百七十億円もふえているんですよね。ですから、こういう減税をやらなくても、十分に研究開発に投資するだけのお金を製薬メーカーは持っています。逆に、こうした減税分というのは、全部内部留保に回ってきているというのが算数上の説明ということになるというふうに私は思うんですよね。こういう、利益も高く、そして内部留保も積み増している製薬業界等のために、一体なぜ、政府税調で確認された見直しの基準も無視して、そして総務省行政評価局の指摘も無視して、この高水準型の延長を行ったんですか、大臣。おかしいでしょう。
○麻生国務大臣 御指摘になっているのは、高水準型を延長しても、企業が研究開発投資をふやさないで、内部留保をため込むだけじゃないかという話を言っておられるんだと思いますけれども、平成二十九年度の税制改正において、研究開発税制の適用額の大宗を占めるいわゆる総額型につきましては、これはもう単純に試験研究費の一定の割合を税額控除する仕組みになっている、この点を見直して、試験研究費の増減に応じていわゆる控除額を変動させるということで、試験研究費の増加を強く促す仕組みに改めることといたしております。一定の税額あるいは比率を、今までのものでいくと、一定の税額で八から一〇だったものを、今回、幅を広めて、六から一四というような形、パーセントへということで、変動するような制度へと見直しております。一方で、売上高に比して、既に高い水準で研究開発投資を行っている企業もあります。そうでない企業に比べて、試験研究費を増加させることが難しいという点にも一定の配慮が必要であると考えられます。こうした企業が引き続き高い水準で研究開発投資を行っていくということを促すために、高水準型を二年間延長することとしておりますが、このように、研究開発税制の改正案を全体として見れば、研究開発投資の増加を強く促す仕組みへとある程度なっておりまして、内部留保というものも、これをしっかり活用してもらうべく工夫を講じたところだと思っておるんです。いずれにしても、取り組みの効果を見きわめてまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 取り組みの効果を見きわめたいというふうにおっしゃいますけれども、これまでの取り組みの効果が結局どうだったのか。内部留保をどんどんどんどん製薬メーカーもふやしてきたというのが実態だったということだと思いますよ。先ほど、この措置を続けることによって研究開発投資の増加を促すんだというお話がありましたけれども、こんなことをやらなくても、製薬メーカーは世界各地で競争していますから、必死で研究開発の投資はやると思いますよ。内部留保をどんどんどんどん積み増す、そんなお金があったら、そのための減税をするようなお金があったら、私は、よほど暮らしのために使うべきだというふうに思います。なぜ、こんな、政府部内でも説明がつかないと総務省からも会計検査院からも指摘されている租税特別措置が延長されていくのか。私、調べてみましたら、自民党への製薬メーカーさんからの献金というのは非常に多いんですね。直近の政治資金収支報告書を見ましても、年間約九千万円ぐらい自民党に渡っております。それだけじゃありません。製薬業界の政治団体である製薬産業政治連盟は、毎年政治家のパーティー券を買っております。二〇一五年、約百二十人の国会議員の方のパーティー券を買っております。四千七百万円分あります。結局、こういう製薬業界から流れてきているお金に応えて、こういう租税特別措置の延長をしたということなんじゃないですか、大臣。
○麻生国務大臣 いろいろ御意見はあるんだと思いますが、基本的に、薬というものの開発というのは、今、世界で新薬を開発している国は既に、世界百九十三カ国で四カ国か五カ国だけになっておりますので、日本としては、そのうちの一角を占めるという地位をきちんと維持していくというのは大切なことだと思っております。その上で、平成二十六年度の政府税制調査会の取りまとめとか総務省の政策評価の点検の結果において、上位十社の適用割合が八割を超える租税措置については、しっかりと必要性等の検証を、見直すべきであるとの指摘を私どもはいただいておるところであります。他方、高水準型の対象となります企業は、将来の発展に向けてリスクをとって多額の研究開発投資を行う企業であって、日本の経済成長の礎となり得る新薬、こうしたものに対して、企業の研究開発を支援していくということは極めて重要だ、我々はそう思っております。加えて、高水準型は、高い水準で研究開発投資を行う企業に限定して支援を行うものでありますので、結果として適用企業数が限られることになって、上位十社の割合が高くなっている面もあると考えられます。また、平成二十九年度の改正において、研究開発税制については、研究開発投資を積極的に増加させる企業に支援を重点化するという見直しを行っておりますが、高水準型の対象というものは既に多額の研究開発投資を行っておりますので、さらに研究開発投資を増加させることが難しい面もあります。こうした状況を総合的に勘案して、日本の民間企業の研究開発投資を全体として増加させつつ、加えて、高い水準で研究開発投資を行う企業における研究開発の維持、充実を図るためには、今回の税制改正において、高水準型の期限を延長することといたしたところでもあります。いずれにしても、この研究開発税制のあり方については、政府税制調査会の御指摘もしっかりと受けとめ、研究開発をめぐる企業を取り巻く環境や今般の改正の効果などをさらに踏まえながら、引き続き不断の見直しを行っていく必要があろう、先ほど申し上げたとおりであります。
○宮本(徹)委員 製薬業界は支援が必要だというお話をされますけれども、先ほど数字も出して説明しましたが、内部留保をふやすだけに、結果としては高水準型もつながっているんではないかということであります。そして、製薬産業政治連盟の政治資金収支報告書を私、見ていましたら、麻生大臣のパーティー券も購入していただいているんですよね。麻生太郎政経セミナー、二〇一五年二月三日二十万円、二月二十六日二十万円ということで書かれておりました。報道では、製薬メーカー献金額二位のアステラス製薬の担当者は、なぜ献金するのかということでこう言っています。産業界全体の動向を踏まえ、製薬業界の要望を伝える意味においても献金していると。一般的な社会貢献で献金すると言っているわけじゃないんですよ。業界の要望を実現してもらうために献金している、パーティー券も買っている、こういう話なわけですよね。文字どおり、企業がお金の力で税制をゆがめているということになるんじゃないですか。なぜ、総務省の行政評価局や会計検査院が説明責任を果たせていないと批判したのか、ここをやはりしっかり受けとめなければいけないと思います。政界と製薬業界のお金を通じた関係があるのではないかというふうに、国民が疑念を持つのは当然ということを言わざるを得ないと思います。研究開発減税の高水準型の延長は撤回すべきだと強く申し上げておきたいと思います。それからあと、研究開発減税、もう一点だけお伺いしますが、増加型も形を変えて総額型に組み入れられることになりました。二〇一五年度の租税特別措置の実態調査を見ますと、研究開発減税の一位はトヨタ、会社名は書いていないですけれども、九百三十九億円ということになっています。トヨタは、二〇一三年度も一千二百億円、二〇一四年度も一千八十億円、多額の研究開発減税を三年連続受けているということになります。一方で、トヨタの内部留保を見ましたら、二〇一四年度十七兆百九十三億円、二〇一五年度は十八兆二千四百七十三億円と、この一年間の間に一兆二千二百八十億円もふやしているわけですよね。トヨタを見ても、減税をしなくても研究開発する体力はおよそ十分あるということははっきりしていると思います。やはり大企業向けの部分に関しては、内部留保の積み増しだけにつながっているという面をしっかり見て、研究開発減税そのものを抜本的に見直して、縮小、廃止に向けてしっかり検討していく必要があると思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○麻生国務大臣 研究開発税制というのは、これは大企業を優遇するというためのものではなくて、経済成長の礎となる、いわゆる企業の研究開発投資を後押しするための制度であるのが基本的なところです。減税額を見ますと大企業の数字が大きくなっていますが、適用件数を見れば、大体全体で一万二千件ぐらいだと思いますけれども、中小法人の利用が三分の二ぐらいあったように思います。八千件を超えると思いますので、幅広い企業に適用されていると思っております。今般の平成二十九年度の税制改正において、この制度について、特に大企業については、研究開発投資を増加させる場合には高い税額控除率を適用する等々の一方、減少させる場合には従来よりも低い税額を適用する制度など、これは研究開発投資の増加という政策目標にかなった制度とするように、めり張りをつけた見直しを行ったところでもあります。いずれにしましても、研究開発税制を含みますこの租税特別措置というものにつきましては、これは不断の見直しを行っていくべきものだとは思っておりますけれども、今後とも、こうした改正の成果、結果というものを見詰めてまいりたいと思っております。
○宮本(徹)委員 私は、中小企業向けのものを見直せと言ったわけじゃないんですね。大企業向けの部分については見直して、縮小、廃止に向かうべきではないかというふうに申し上げたわけです。この研究開発減税、十年ぐらい前は税額控除の上限は二〇%だったわけですよ。それがどんどんどんどん引き上げられてくるということになっているわけであります。この研究開発減税に回っている六千億円のお金があれば、給付制奨学金、どれぐらいつくれるのか。今度の給付制奨学金の財源規模、二百二十億円ですからね、三十倍できるということですよ。やはり、どちらに投資する方が日本の未来の力になっていくのかということを真剣に考える必要があると思います。続いて、法人税引き下げ競争の問題について伺います。トランプ大統領は、選挙中から、法人税を一五%に引き下げるんだということを言ってまいりました。新たな法人税引き下げ競争が始まるのではないかということが大変懸念されているわけですが、麻生大臣にお伺いしますが、日米首脳会談では、この法人税引き下げ競争の問題点、これは指摘されたんでしょうか。
○麻生国務大臣 先般の日米首脳会談では、この法人税改革については議論は行っていないと記憶します。
○宮本(徹)委員 議論を行っていないということですが、有害な税の競争というのは、もうずっとこの間、OECDでも議論になってきたわけですよね。アメリカが法人税の大幅な引き下げに走るということになれば、世界への影響は大変大きなものがあるというふうに思います。日本は、この法人税引き下げ競争を食いとめるための役割を率先して果たしていかなければならないと思いますが、今後の日米の対話の中で、麻生大臣はこの問題についてどう臨まれるでしょうか。
○麻生国務大臣 御存じのように、トランプ政権というのはまだ発足したばかりでして、私は誰と交渉するか相手もよくわからぬようなぐらい相手はまだ決まっていないんですよ。それは御存じのとおりじゃないでしょうか。ムニューシンという人だって、先週だか今週の初めに決まったばかりですから。まだ、下の人、我々が直接交渉するアンダーデピュティー、デピュティー、全く決まっていないんですよ。それが今の現状。新聞を見られて、御存じなんでしょう。したがいまして、そういった意味で、今の段階で具体的なコメントをするということはとてもできる段階にありませんが、いずれにしても、私どもとしては、エコノミックダイアログというのを立ち上げておりますので、今から日米間でいろいろ交渉を調整していくことになろうかと存じます。
○宮本(徹)委員 ですから、これから話すテーマだとか、いろいろなことはそういうことになっていくんでしょうけれども、問題は、日本の政府の姿勢として、法人税引き下げ競争の問題点というのをアメリカに提起するかということですよ。それは麻生大臣も、この委員会で、法人税引き下げ競争は問題だという発言を繰り返されてきたと思うんですね。そして、その危険が今迫ってきているわけですから、麻生大臣の姿勢として、今後どういう構えで臨まれるのかというのをお聞かせいただきたいと思います。
○麻生国務大臣 これは今までもずっとやってきた話で、この四年間アメリカと同じ話をやってきておりますので、今回そういった話がまた出てくれば、その段階で同じようなことを申し上げることになろうと存じます。
○宮本(徹)委員 同じような話というのは、法人税引き下げ競争はよくないということでよろしいんですね。
○麻生国務大臣 今そう言ったように思っていたんですけれども、そう聞こえませんでしたか。済みません。
○宮本(徹)委員 ちゃんと確認をしておきたかったわけであります。次に参ります。次に、国際課税について伺います。まず、外国子会社合算税制、いわゆるタックスヘイブン税制についてです。現行の税制では、税率二〇%未満の国に対しては子会社の所得も合算する、だけれども、二〇%以上の国の子会社は合算をしない、経済実体を伴わない所得であっても合算されないということになっていて、税逃れの大穴があいていたわけであります。この穴を塞ごうということで、今回の法案では、ペーパーカンパニーなどについては所得の全額を合算するようにした。一方で、能動的所得と受動的所得を分ける事務作業が大変だ、こういう理由で、税負担率二〇%以上の会社は制度の適用が免除されるということになっております。これでは、全部の穴を塞いだということにはならないのではないかと思います。お伺いしますけれども、他の国を見れば、制度の適用が免除される税負担率が日本の二〇%よりも高い税率を設定している国というのがあるんじゃないですか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。外国子会社合算税制につきましては、諸外国におきましても、今般の日本の改正と同様、外国子会社の所得の内容に応じて合算対象を決定した上で、外国子会社の税負担率が一定の水準を下回る場合に限り合算するアプローチをとっているところが主要なところであると認識をしております。具体的なその際の税負担率でございますけれども、これはまちまちでございまして、先生御指摘のように、日本よりも高い国といたしましては、例えばアメリカ三一・五%以下、これはアメリカの最高税率三五%の九〇%以下、あとドイツが二五%未満ということでございますけれども、逆に低い国としては、イギリス一五%未満、フランス一六・七%未満ということで、さまざまでございまして、また、本国の法人税率の水準によって変動し得るものと認識をしております。なお、今般の改正におきましては、一見して明らかに受動的所得しか得ていないと考えられるペーパーカンパニー等につきましては、その税負担率が二〇%以上であっても合算の対象とすることとしております。
○宮本(徹)委員 つまり、日本より高い税率で設定している国もあるわけですね。制度の適用が免除される税負担率を、例えば二五%だとか、今回の法案にある二〇%より高く引き上げることになれば、より効果的に租税回避に対応できるし、税収としてもさらに確保できるということになるんじゃないでしょうか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。今般の外国子会社合算税制の見直しに当たりましては、国際的な租税回避への効果的な対応と企業の事務負担への配慮のバランスをとる観点から、所要の措置を講じたものでございます。二〇%、これは制度適用免除基準というものを設けたわけでございますけれども、制度見直しによって過度な事務負担が企業に発生しないように、現行制度との継続性等を踏まえて設定をしたものでございます。一方、租税回避にこれまで以上に有効に対応する観点からは、一見して明らかに受動的所得しか得ていないと考えられるペーパーカンパニー等が得る所得につきましては、その税負担率が二〇%以上であっても合算対象とすることとしておりまして、そういう意味では、両者のバランスをとった合理的な改正内容だと考えております。
○宮本(徹)委員 バランスをとったという説明なんですが、私が聞いたのは、例えば二五%に引き上げれば、より効果的に租税回避に対応できるんじゃないのかということと、税収としてもさらに確保できるんじゃないですかということを聞いたんです。どうですか、その点は。
○星野政府参考人 繰り返しになりますけれども、今般の改正は、国際的な租税回避への効果的な対応が一方の要請にあり、他方、企業の事務負担への配慮、これも考える必要がありまして、そこのバランスをとったということでございます。
○宮本(徹)委員 日本の財政状況というのは、ほかの国と比べても深刻なわけですよね。ですから、租税回避を許さずに、税収をしっかり確保するという点でいえば、他国でできているようなことは日本でもしっかりやっていくべきだというふうに私は思います。さらに言えば、今回、先ほど今までの制度との継続性というお話を言いましたけれども、現行の適用免除基準のトリガー税率の二〇%、これは、歴史的に言えば、法人税引き下げ競争の中でどんどんどんどん下がってきたわけですよね。ですから、私としては、これを引き上げていくということで、法人税引き下げ競争は許さない、こういうメッセージを日本が世界に発信していくことにもつながるというふうに思いますので、この点はさらに検討していっていただきたいというふうに思います。次に、CRSについてお伺いします。各国の税務当局間で口座情報を自動交換する仕組みが二〇一八年に始まります。タックスヘイブンとされるケイマン諸島なども参加するということになっております。富裕層の海外資産を把握する上で、大きな効果が期待をされております。一方で、このCRSに参加しない国もあります。とりわけ、日本とも関係の深いアメリカが不参加、こういう事態が続きますと、大きな抜け穴になっていく危険もあります。麻生大臣、やはりアメリカに対しても、CRSに対して参加を強力に呼びかける必要があるのではないでしょうか。
○麻生国務大臣 これは、BEPSのスタートからやり始めさせていただいて、OECDが正式にやりましたCRS、コモン・リポーティング・スタンダードでしたっけ、いわゆる非居住者の金融口座情報の自動的情報交換というものをするという制度なんですけれども、海外の資産隠しといったような道を、脱税とかそういった回避に極めて有効な手段であるのだ、私どもはそう認識しているんですが、日本としても、二〇一八年でしたかに、国際的な情報交換が実施できるようにということで、平成二十七年度の改正でこの制度を創設させていただいたところです。この制度を我々はスタートさせておりますので、可能な限り多くの国々の足並みをそろえて実施するということでその効果が発揮されるというのは当然のことなんですが、アメリカを初め本制度の実施にコミットしていない国、アジアでは例えばタイなんというのはそうですが、そういったところを初め、本制度の実施にコミットしていない国々に対して、これはG20や多国間の場とか、ビジネスダイアログ等々、多国間の協議の場等々で積極的に働きかけを続けていかないかぬところだと思っております。拡大に向けて、さらにいろいろ取り組んでいかなきゃいかぬところだと思いますが、これは、なかなか意識が変わらないので、政府は賛成しても議会が通らないというのが一番面倒くさいところですね、民主主義国家の場合は。
○宮本(徹)委員 引き続き頑張っていっていただきたいというふうに思います。アメリカのFATCAというのは、一方的に情報は寄せろという話でありまして、自分のところの口座情報は提供しない、こういうのでは全くだめだと思いますので、麻生大臣の頑張りに私も期待したいというふうに思います。さらに伺います。この間、超有名大企業の、多国籍企業の税逃れのスキームがたくさんあることが国民の前に明らかになってきております。国民がこうした外資も含めた多国籍企業の税逃れの実態を知ることが国民の納税意識にどのような悪影響を与えているのか、これはどう政府として認識しているのか。また、国際課税でこういう税逃れのスキームはだめだという事例集を政府が積極的に示していく、こういうことになれば、私は、税逃れを牽制する上でも非常に大きな力になっていくと思いますが、その必要性について政府はどうお考えでしょうか。
○飯塚政府参考人 お答えを申し上げます。いわゆるパナマ文書の公表ですとかBEPSプロジェクトの進展などを契機としまして、富裕層や海外取引のある企業による国際的な租税回避行為等に対しまして、国民の関心が大きく高まっている状況にあると認識をしております。国税当局としては、こうした国際的な動きも十分視野に入れながら適正、公平な課税を実現していくことが、国民からの税に対する信頼の確保につながるものと考えております。こうした国税当局の取り組みにつきましては、定期的な記者発表により調査事績を公表しておりますが、さらに、昨年の十月でございますけれども、国際的な租税回避行為に対する取り組みの現状と今後の方向を取りまとめました、国際戦略トータルプランというものを公表しております。その中で、いわゆるタックスヘイブンにおけるペーパーカンパニーを介して行った租税回避の事例でございますとか、あるいは富裕層や海外取引を行う法人の国際的な租税回避といった事例などについて公表しております。今後とも、国税当局といたしましては、調査等により把握した一般的な租税回避事例などにつきまして、守秘義務との関係も十分考慮しながら、必要に応じて公表してまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 ネットでそのプランを探す人も少ないと思いますので、いろいろな形で、国民に対して、こういうスキームはだめなんだということをさらに広く知らせていっていただきたいというふうに思います。残り時間が短くなってきたんですけれども、ここからはアップル社の税逃れを例にして聞いていきたいと思います。二〇一三年にアメリカの上院常設調査委員会で、アイルランドを使ったアップルの税逃れが指摘されました。きょう資料も配っておりますが、グラフを見ていただければと思いますが、アップルのアメリカ以外の税引き前利益というのは、アイフォンの販売開始以来急増しているわけですね。その一方で、税負担率は極めて低い状況になっております。二〇一〇年度でいえば一・二%。その後、批判が高まる中、税負担率は若干高まりましたが、それでも六・二%。アップルの税逃れの仕組みには幾つかのポイントがあります。一つは、アイルランドに海外の利益を集めていく。アップル本社と、あとアイルランドにつくった子会社との間で知的財産の研究開発コストを分担する、そのことによって、アイルランドの子会社がより多く知的財産についての経済的な権利を持つようにする、このことによって、アメリカ以外の海外での売り上げの利益がアイルランドの子会社に計上されるようにしております。それで、二つ目に、このアップルのアイルランドの子会社が元卸業者になって、この子会社からヨーロッパやアジアなどの他国の子会社に製品を売っていくわけですが、その際に、グループ内の取引価格を高く設定して、アイルランドの子会社に利益をため込む、ほかの海外の子会社はほとんど利益がなくなるという仕掛けになっております。そして、三つ目に、このアイルランドの子会社は税制上の居住地を持たないようになっております。アイルランドの税制の特殊性から、管理支配基準でやっていましたので、アイルランドではアップルの子会社は非居住法人として扱われ、アメリカでも非居住法人とされ、どちらでも課税権を持たないという状態になっていたわけですね。このアップルの税逃れによって、アメリカが税収を失っただけではなくて、アップルが販売活動などを行っている国も税収を失っているということになります。アメリカの上院報告書でも、アップルの日本での納税が僅少であるというふうに指摘しております。国税庁も、当然、このアメリカの上院報告書は認識されているというふうに思います。我が党のしんぶん赤旗が、アップルの年次報告書とこのアメリカの上院調査委員会の調査結果を突き合わせたら、二〇一一年度で見ると、アメリカ以外の諸外国が二百億ドル前後の税源を失ったという試算になります。それで、日本はどうか。二〇一一年度でいえば、アップル社の営業利益のうち二十一億ドルが日本での販売で発生しております。ところが、日本の子会社が得た税引き前利益は一億五千万ドル。九割以上の利益がアイルランドに流出しているという計算になります。確認しますけれども、BEPS対策の基本原則からいけば、企業は、販売活動という実質的な経済活動を行った、利益を上げた国でもきちんと課税をされなければならない、そうなっていると思います。そしてまた、一般論として聞きますけれども、今回の例のように、多国籍企業の税逃れが他国の税当局や議会調査局の調査で判明した場合、日本の国税もきちんと課税を追徴する、そういう対応が求められると思いますが、これは国税庁、しっかり対応されているんでしょうか。
〇飯塚政府参考人 お答えを申し上げます。個別の事例に関するお答えは差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにしましても、近年、多国籍企業による、各国の税制や租税条約の違いを巧みに利用した国際的な租税回避が世界的な問題になっております。BEPSプロジェクトによって、その対策がさまざま講じられているところでございます。こうした問題に対しまして、国税庁としましても、主要な国税局に国際課税を専門に担当する部署を設置するなど体制整備を図った上で、申告書に添付された別表ですとか、あるいは国外送金等調書等、あらゆる資料情報を収集、分析、検討し、海外取引について重点的に調査を行うこととしております。また、必要に応じまして、外国税務当局と連携して、租税条約等に基づく情報交換を積極的に実施するなどによりまして、問題取引の実態解明を行い、個別の事案に応じて、法令にのっとり、租税回避に適切に対応しているところでございます。さらに、今後でございますけれども、BEPSプロジェクトの勧告を踏まえまして、新たに導入された、国別報告書を初めとする多国籍企業情報が提供されることになります。国税当局としましては、今申し上げましたようなさまざまな資料情報を活用しながら、適正かつ公平な課税に努めていきたいと考えております。
○宮本(徹)委員 時間が来ましたけれども、これで終わりにしますが、昨年九月、東京国税局がアップルの子会社のアイチューンズに対して百二十億円の追徴課税をしたというふうに報じられましたけれども、これは、アップルジャパンに対してどうやっているのかとかというのは、何も情報は国民的には知らされていないわけですよね。適正な課税がやられているかどうかというのもわからないわけであります。しっかり対応をしているんだという話ですけれども、それが今の税制の枠組みで本当に対応できているのかということもあると思います。続きは、まだ質問ありますので、あしたもあるんですよね、あした続きはやらせていただきます。これで終わります。