2017年2月22日(水) 財務金融委員会 富裕層課税強化求める

日本共産党の宮本徹議員は22日の衆院財務金融委員会で、富の集中と貧困の蓄積をただし、再配分機能を高めるために富裕層に対する課税強化を主張しました。
宮本氏は民間シンクタンク発表の資料をもとに、富裕層(世帯の純金融資産保有額1億円以上)が2016年までの2年間で101万世帯から122万世帯に急増したことなどを指摘。政府に対して社会政策上、富裕層の金融資産と不動産保有の実態把握を求めるとともに、現在の所得税や相続税に欠陥があると認識しているかとただしました。
国税庁は、年間の所得金額が1億円以上だった納税者が15年までの5年間で約1.6倍に、相続税の課税価格が1億円以上だった被相続人が14年までの5年間で約1.2倍にぞれぞれ増加したと明らかにしました。麻生太郎副総理兼財務相は、「(富裕層が)近年増加していることは事実」と認め、「所得格差を固定化しないのは極めて重要」「(担税力について)丁寧な検討をしていく」と述べました。
宮本氏は、富裕層が増加する一方、約31%の世帯が金融資産を保有できていないことを指摘し、担税力を高めている「富裕層の課税強化についてしっかり検討すべきだ」と主張しました。

以上2017年2月23日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2017年2月22日 衆院財務金融委員会第5号 議事録≫

○御法川委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。きのうの続きで、まず国際課税について質問をさせていただきます。きのう、国際的な税逃れを牽制していくためには、こういう税逃れはだめだという事例集を積極的に示した方がいいんじゃないかというお話をしましたら、国税庁から、国際戦略トータルプランの後ろの方についていますという答弁がありました。改めてホームページを見て、その事例も拝見させていただきましたけれども、八つ事例が出ていまして、なかなか頑張っていろいろな海外の税逃れを摘発しているというのが非常によくわかるものになっているわけですね。ただ、問題は、こういうものが出ているというのを、ぱっとホームページを見ても誰もわからないですよね。結局、この国際戦略トータルプランというものに関心を持って、これを何回かクリックして、さらにこの二十何ページ目からですからね、この事例集は。そうしないと、どういう税逃れの事例があるのかというのはわからないようになっているわけですね。ですから、私は本当にこういうものを公表して税逃れを牽制していくということを考えたら、ホームページの、例えばバナーだとかをつくって、やはり入り口をちゃんと設けて、こういう税逃れは許しませんよというアピールをしていくべきだと思うんですが、国税庁、どうでしょうか。
○飯塚政府参考人 お答えいたします。昨年の十月に御指摘の国際戦略トータルプランを公表いたしましたけれども、公表いたしました際には、記者の方に集まっていただいて、その内容を詳しく御説明し、また、そのときにはかなり報道もしていただいたところでございます。今後とも、いろいろな周知広報に努めてまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 ホームページの改善も含めて広報していただけますか。
○飯塚政府参考人 その点も含めて検討させていただきます。
○宮本(徹)委員 よろしくお願いいたします。それで、きのうは、アップルを例にして税逃れについて質問している最中に時間になってしまいました。きのう、アップルは、アイルランドを使って、そこに利益を集めるいろいろな仕組みがあるんだというお話もしました。それで、今の税制で、このアップルのような税逃れに対応できているのか、特に移転価格税制で対応できているのか、この点についてお伺いしたいというふうに思います。移転価格税制は、仮に独立企業同士の市場取引ならどんな価格になるのか、これを算定して、子会社が得るべき適正な利益を割り出すという仕掛けになっているわけですね。しかし、例えばこのアップルのアイフォンでいえば、どの子会社にも同じ価格でアップルは売っているわけですね。非常に高い価格で売っている。しかも、このアイルランドの子会社からアップルの製品を買う子会社というのは、アップルの会社しかないわけですよね。それ以外に独立した市場があるわけではないわけですよね。ですから、適正な価格が何ぼなのかと参照できるようなものはないわけですよね。そうすると、今の異常な低いアップルの税負担率というのは、現在ある移転価格税制だけでは対応し切れていない、こういうことの裏返しなのではないかというふうに思います。ですから、租税回避を許さないということをやっていくためには、現実に即して、子会社が独立している、そういう架空の前提は取り除いて、多国籍企業のグループ、これについては単一の企業としてみなす、こういう扱いに切りかえる。そして、グループ全体の所得を合算して、そこで売り上げだとか資産だとか雇用者数、この一定の基準に応じて各国に税源を配分していく。定式配分方式と言われますが、こうした方向も国際会議の場で真剣に検討していく必要があるんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
○星野政府参考人 お答え申し上げます。今先生が御指摘になられました定式配分法でございますけれども、独立企業間価格に着目した移転価格税制の代替案として、これは長期にわたって議論されてきたものと認識をしております。国際会議などで検討するべきではないかということでございますけれども、これは概算的な形式基準によりまして国家間の税収分配に大きな影響を与えるものでありまして、売り上げ、従業員数、資本金等、数ある指標の中でどれを基準として採用するのか、また採用した複数の基準のウエートづけをどうするのかといったさまざまな点につきまして、各国の重視する基準がまちまちでありまして、なかなか、多国間で合意することは現実的には極めて困難であるという問題がございます。定式配分法については、合意できなければ二重課税、二重非課税を生むことが確実であるので、国際的な取り組みでございますBEPSプロジェクトにおきまして実行可能性が否定されているところでございます。なお、知的財産等の無形資産の移転に伴う租税回避に対応するべく、BEPSプロジェクトでは、移転時において評価が困難な無形資産につきまして、予測便益と実際の利益とが一定以上乖離し、納税者が予測の合理性を示せない場合に、実際の利益に基づき移転時の独立企業間価格を事後的に再計算する所得相応性基準等のアプローチが勧告されているところでございます。
○宮本(徹)委員 なかなか国際的に、現実的に一致するのは困難というお話ですけれども、移転価格税制は、先ほどのようなやり方で改善しようとしても、やはりなかなか、実際には参照すべきものが存在しないわけですから、難しいんじゃないですか。そういう限界、弱点というのはあるんじゃないですか。いかがでしょうか。
○星野政府参考人 おっしゃるとおり、なかなか困難がございます。したがいまして、BEPSプロジェクトなどでも相当議論が積み重なってきているわけで、今御紹介申し上げました所得相応性基準というのは、ある意味、事後的に適正に再計算できるような一つの考え方でございまして、そういった方法などがBEPSプロジェクトで議論されているということでございます。
○宮本(徹)委員 なかなか移転価格税制だけで対応するというのは私は大変な困難が伴うと思いますので、やはり国際社会で、本当に税逃れを許さない課税方式はどうあるべきかというのをさらに議論していかなければならないのではないかというふうに思います。それで、アメリカの上院報告書によりますと、アップルは税逃れする上で、アイルランドにそういう子会社をつくることをやっているわけですが、これはアメリカのチェック・ザ・ボックス規制というのも悪用しているということも指摘されております。アップルはこういうアメリカの税制、そして国際的ないろいろな税制、さまざまな措置を組み合わせて租税回避を行ってきたわけでありますが、実際にどれだけ税逃れがやられているのかということを各国で見ようと思ったら、やはり各国の子会社の利益や納税額がしっかりつかまれるということが大事だと思います。そして、税の公正のためには、多国籍企業の子会社の情報の公開が欠かせないというふうに思います。BEPS対策の一環として、子会社情報を記載した国別報告書を税務当局に提出するという措置は決まっていますが、これは一般には公開されないということになっています。私は、この国別報告書も含めて、公開されてこそ、社会の目にさらされることで税逃れの根絶につながるというふうに思いますが、大臣、その点はどうでしょうか。
○麻生国務大臣 最初に、まず、ちょっと宮本先生、今言われているのが仮に正しいとしても、これは一カ国でも抜けたら全然まとまらないんですよ。やっと秘匿性にするというところでここまで来ましたので、これがオープンに最初からするなんて言ったら、もう最初から入ってこないところがいっぱい出ますので、そういった意味では、まずは最初のステップから、ちょっと共産主義みたいにばさっといきませんから、うちの方は。そういった意味では、みんなでやりますので、百何十カ国を集めてこれをやるという話ですから、ちょっと少々、最初から簡単にいかないんだと思いますが、今言っておられる意味はよくわかりますけれども、最初からそこで言っちゃうと多分出さない。OECDがそれをやろうとしてアメリカに反対されて、はなからだめになっちゃったという例もありますので、そういった意味では、まずはクローズでスタートするぐらいがいいところかなとは思っております。
○宮本(徹)委員 確かに、各国の税務当局の間で子会社の情報を含めて国別報告書を共有する、これは大きな前進だと思います。まずそこからスタートするのは当然だと思いますけれども、その先に進んでいってこそ、やはり社会の目にさらされることで、これはまた牽制になっていくわけですよね。税務当局をもしだませたとしても、社会全体はだませないわけですね、そこの会社で働いている人だとかいろいろな人の内部告発なんかもありますから。そういう点でいえば、これは公開に向かっていく方向でぜひ日本の財務大臣としては働きかけをやっていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○麻生国務大臣 それをやれるときまで私が財務大臣をやっている保証がありませんので、最初にスタートしたときに、これは私が四年前の五月にこの話を持ち出して、BEPSで去年の十一月にやっとここまで来られましたので。ぜひ、そういった意味では、まずスタートして、今言われたような話で、そこまでも行っておりませんので、各国出すというところで、まずはというところから、今担当の財務官がOECDにきょうから行っていますけれども、この種の話でもう一回また行っているんですけれども。いずれにしても、こういったものは時間をかけてやっていかないかぬと思いますので、最初から完璧とはいきませんが、だんだんだんだんそういったオープンにして世間の目にというような、方向としてはそっちの方向が正しいんだと私もそう思います。
○宮本(徹)委員 オープンにしていく方向が正しいというふうに大臣もおっしゃいましたので、まあ、大臣がいつまで大臣をやられるかというのは私も全くわかりませんけれども、もしかわられても次の大臣にその考え方をぜひ伝えていただいて、オープンに向かう方向で努力をお願いしたいというふうに思います。国際課税については以上です。続きまして、本日の質問に入る、本日の質問というのは変な言い方ですけれども。先ほどまではきのうの通告分で、きょうの通告分に入ります。きのう、私は税収中立での改正というのはおかしいんじゃないかというところから議論を始めましたけれども、やはり暮らしを支えるための財源の確保というのは真剣に検討しなきゃいけないというふうに思います。これは、私たち重ね重ね言っていますけれども、消費税増税ではなくて、ないところから搾り取るのではなくて、あるところに負担をお願いする、これが必要だというふうに思います。まず、富裕層の資産の把握についてお伺いしたいと思います。この間、例えば野村総研がレポートを発表して、富裕層の金融資産についてどれぐらいなのかという試算を出しております。野村総研の場合は、純金融資産の保有額五千万円以上から五億円までを富裕層、五億円以上を超富裕層、こういうふうに独自に定義をしてやっているわけですけれども、この野村総研のレポート二〇一四年分と二〇一六年分を比較しますと、たった二年間で富裕層以上の世帯というのが百一万世帯から百二十二万世帯へふえ、純金融資産は二百四十一兆円から二百七十二兆円へ拡大しております。中でも超富裕層、五億円以上の金融資産を持つ層ですけれども、これは過去最大にふえ、この四年間で見ますと、この層が持っている金融資産は、四十四兆円だったものが七十五兆円へと、倍まではいかないですけれども、物すごい勢いでこの四年間でふえているということになっております。富裕層をどう定義するのかというのはいろいろな議論があると思いますが、政府として、いわゆる超富裕層の皆さんの金融資産の推移についてどう把握しているのか。あるいは、富裕層の金融資産と不動産、こういうものをリンクして把握する統計というのは今とっておられるんでしょうか。
○千野政府参考人 お答えいたします。総務省におきましては、全国及び地域別の世帯の家計収支や貯蓄、負債などの実態を明らかにすることを目的といたしまして、五年に一度、全国消費実態調査を実施しております。この調査では、世帯が保有いたします貯蓄から負債を差し引いた金融資産、それから、不動産につきましては住宅宅地資産を把握しておりまして、これらの結果につきましては貯蓄現在高階級別で公表しております。ただし、この貯蓄現在高階級につきましては、この調査が約五万六千世帯を対象とした標本調査でありますので、一定の統計精度を確保できるように、四千万円以上を一括した階級としているところでございます。
○宮本(徹)委員 つまり、四千万円以上ということで、例えば超富裕層というのを把握するという統計はないというお話でありました。例えば、日本のシンクタンクだけではなくて、クレディ・スイスも世界の富裕層の動向をまとめたレポートというのを出しております。グローバル・ウエルス・レポート二〇一六というのがありますけれども、これを見ましても、日本の富裕層の数の試算というのをやっています。日本の百万ドル以上の資産を持つ富裕層の数は、二〇一五年の二百八万八千人から、二〇一六年には二百八十二万六千人と、七十三万八千人増加したというふうに書かれております。そして、このレポートの一昨年版、二〇一五年版では、日本の富裕層は二〇二〇年には三百五十九万人に達する見込みであるというふうにしております。この場合の富裕層は一億円以上、日本でいえば約一億円ですが、百万ドル以上ということで出しておりますが、こういう形で、世界のシンクタンクも富裕層の動向というのはつかんでいるわけですよね。これは国税庁にお伺いしますが、野村総研だとかクレディ・スイスが富裕層の資産と世帯数の傾向について出しているわけですけれども、これは国税庁のさまざまな統計から裏づけることというのは可能なんでしょうか。
○飯塚政府参考人 お答えを申し上げます。御指摘の二つのシンクタンクによる調査につきまして、私どもその詳細を承知しているものではございません。国税庁のデータから、これらを導き出すことは困難でございます。
○宮本(徹)委員 富裕層がふえている傾向だとかというのは、国税庁の納税の調査だとかいうものでは全然出てこないということですか。例えば金融資産がふえている、その辺はどうですか。
○飯塚政府参考人 お答えいたします。いわゆる富裕層につきまして明確な定義はないわけでございますけれども、例えば申告所得税の所得金額が一億円を超えるという者について見ますと、平成二十二年分の調査におきましては一万一千八百四十三人でございましたが、これがその五年後の二十七年分調査では一万九千二百三十四人となっておりまして、五年間で七千三百九十一人、約一・六倍に増加しているところでございます。また、ストックに着目をいたしまして、相続税の課税価額が一億円を超える被相続人について見ますと、同じく二十一年分調査においては三万五千六百八十八人でございましたが、二十六年分調査では四万一千三百九十三人ということで、失礼しました、さっき同じくと申し上げましたけれども、二十一年分でございましたけれども、二十一年から二十六年にかけて、五年間で五千七百五人、約一・二倍に増加しているところでございます。
○宮本(徹)委員 国税庁の納税の統計を見ても、所得税で見ても、それから相続税で見ても、一定、裏づけはできるという傾向だというふうに思います。富裕層は日本でも大きくふえているということだと思います。私は、やはり社会政策をいろいろ考えていく上でも、日本の富裕層の実態を統計資料でしっかり明らかにしていくことというのは必要だというふうに思います。純金融資産と不動産、あるいはフローとストックの統計を組み合わせるなどして、立体的な解明というのを今後やっていく必要があるんじゃないかと思いますが、大臣、どうでしょうか。
○麻生国務大臣 今の一億という話は、フローの話ですよ、あれはたしか、ストックの話じゃないんだと思うので。所得や資産に関する統計としては、今、消費実態調査というので、家計の収入などのフローと金融資産、住宅、宅地資産などのストックと収入階級別の金融資産とか住宅、宅地資産などのフローとストックを組み合わせ等々の集計、公表しているんだということでしたけれども、ただ、この調査は標本調査だと今、総務省の人が言っておられましたけれども、高所得者層の収入、資産などの詳細な実態把握は困難であるというような指摘もしておられたので。一方、今、国税庁の方から答弁があっていましたけれども、国税庁の統計年報というのでいけば、高所得者層を含む申告状況等を集計して公表しているということなんでしょうけれども、財務省としては、まず、そうした既存の統計というのを最大限に利用しながら、今後も高所得者層を含む所得とか資産状況とかいうものの把握に努めて、今後の税制等々に当たっての企画立案等々を行うのに資したいというように思います。
○宮本(徹)委員 いろいろな統計を工夫しながら、調べることもそうですけれども、新しい統計のとり方もないかということも含めて、これだけ富裕層がふえてきているわけですから、それをつかむ方法の研究をぜひお願いしたいというふうに思います。先ほど国税庁からお話がありましたけれども、先ほどのお話でもはっきりしていると思いますが、今、日本でも超富裕層の皆さんの担税力が、この間、ぐっと増してきている、こういう認識は大臣も同じだということでよろしいですね。
○麻生国務大臣 今、国税庁の統計上、平成二十二年と二十七年で申告所得の伸びを見ますと、一万九千人と一万一千人だから七千人ぐらいふえておられるという計算になるんだと思いますが、統計上、多額の所得とか資産を有する方々が、近年、この二、三年間で増加しているという見方ができることは事実だと思いますね。他方、いわゆる富裕層に対する課税を強化するべきとの御趣旨なんだと思いますが、現行の所得税とか相続税は累進税率なので、もう既に所得や遺産等に応じて負担をお願いする仕組みとなっておりますので、こういった点も踏まえて、丁寧な検討が我々としては必要なんだと思っております。ことしも、四〇を四五に上げたり、分離課税を一〇から二〇%に上げたり、いろいろいたしておりますので、そういった面も含めて、我々はそういったものにそれなりの対応は今の段階でいたしつつあるということだという点も御理解いただければと存じます。
○宮本(徹)委員 所得税を四〇から四五に上げたというお話がありましたけれども、かつては五〇、さらにはもっと高いときもあったわけであります。やはり貧富の格差を固定化させない、所得の再分配をしっかり進めていくという点でいえば、私は現在の所得税、相続税だけでは不十分だというふうに思いますが、今の所得税、相続税で十分か不十分か。どうでしょうか、大臣。
○麻生国務大臣 所得格差を固定化しないとかさせないとかいう社会を構築していくというのは極めて重要なことだと思っています。この点は、政府の場合は税制調査会において、所得税につきましては、昭和六十年代以降、税率構造につきまして大幅な累進構造というものの緩和を行っておりますし、資産税につきましても、いわゆる一九八〇年代後半のバブル期の地価の上昇に対応した基礎控除の引き上げや税率構造の緩和が、地価の下落に伴い、これは見直されておりません。その結果、これらの再分配機能が低下したというのはいろいろ指摘がされているところであります。こうした中で、税の再分配機能を適切に確保するという観点から、今申し上げましたように、所得税とか相続税の最高税率について、二十七年から引き上げて、相続税が五〇から五五とか、所得税が四〇から四五とかいうので行ってきたところなんですが、こうした見直しの影響をまず見きわめる必要があるというように基本的には考えております。
○宮本(徹)委員 今までやってきたものの影響を見きわめるというお話がありましたけれども、大臣が言われたとおり、格差を固定化してはいけないということでいえば、今は相当な、一方における富の集中、一方における貧困の蓄積が起きているというふうに思います。日本銀行の金融広報中央委員会の二〇一六年の調査では、金融資産を保有していない世帯は三〇・九%。一方では、超富裕層が生まれる一方、金融資産を持っていない世帯が三割にも上るということになっているわけですよね。これを正していかなきゃいけないというふうに思います。どう正していくのかということですけれども、例えば富裕税を導入している国もあります。フランス、ノルウェー、スイスなどですね。いろいろな資産に課税していく。例えば、五億円以上持っている金融資産に課税する。さっきの野村総研の話でいえば、それだけで七十五兆円あるという話ですから、例えば〇・二%掛けるだけでも、今回の予算で社会保障抑制分の一千数百億円分は出てくるという話になるわけですよね。こういう富裕税の検討というのもあるんじゃないかと思います。あと、これは私たち、再三言ってまいりましたけれども、株式の譲渡益や配当に係る税制の見直しですよね。一億円以上の株式譲渡益の個人所得課税の税率は、日本が二〇%なのに対して、ドイツは二六・三七五%、イギリスは二八%、ニューヨークは三〇・七二六%、フランスは六〇・五%。これを二五%や三〇%に引き上げるだけでも、相当な財源は出てくるということになります。ですから、富裕層の皆さんへの、フロー、ストック、どちらでやっていくのか、いろいろあるとは思うんですが、新たな税負担を求めるということをさらに検討していく必要があるんじゃないかと思いますが、もう一度大臣にお伺いします。
○麻生国務大臣 今お尋ねにあっておりました、いわゆる富裕税を含みます富裕層への課税については、先ほど申し上げましたとおり、所得税とかまた資産税等々については、近年、累次、税制改正を既に行ってきたところであります、去年行ったばかりでもありますので。その中で、上場株式などの配当及び譲渡益についても、平成二十六年から、一〇%の軽減税率というものを廃止いたしまして、二〇%の本則の税率といたしておりますが、こういったことによって、高所得者ほど所得税の負担率が上昇するということになっておりますので、所得再分配機能の回復に一定の効果があったのではないか、そう思っております。加えて、今、富裕層への課税をさらに強化すべきとの御意見でありますが、これは、これまでの改正の効果は引き続き見きわめなきゃいかぬところだと思っていますが、景気の情勢とか市場の動向とか、また税制や社会保障等に関する所得再分配の状況などを勘案しておきませんと、こういった人たちの金がまた海外にいなくなるとか、また、こういったようなお金がきちんと国内で使われないとかいうようないろいろなことを考えにゃならぬことになりますので、私どもとしては、いろいろな案を勘案しつつやってまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 私がこういう質問をしますと、海外にいなくなるというお話を大臣はよくされるんですけれども、この間、海外に出ていけない仕組みをいろいろつくってきたわけですよね。出国税を設けるということもやりました。そして、今度の税制改正案、私もちょうど一年前に提案させてもらいましたけれども、相続税や贈与税がない国にどんどん多くの人が出ていっている、それを追っかける期間が五年というのは短いんじゃないかということを問題提起させていただきまして、政府の今度の改正案には、それを十年に延ばすということで、さらに追っかけていくんだという体制も強化しようとしているわけですよね。ですから、もう簡単に海外にお金を持って、税逃れしていくというのを許さない仕組みはどんどんできてきているわけですから、ここはやはり担税力のある方々にしっかり求めていくというのが大事だと思います。大臣は先ほどから改正の効果を見きわめるということをおっしゃいますけれども、この間、例えば金融所得課税の税率を本則の二〇%に戻したことによってプラスの効果はあった、所得再配分の機能を高めるという点ではプラスの効果はあったというふうに大臣はおっしゃったんですけれども、負の効果というのは私はなかったと思うんですが、負の効果というのはあったんですか。
○麻生国務大臣 負の方の効果を数字で捕捉することは極めて難しいと思いますけれどもね。
○宮本(徹)委員 数字で言えるような効果は私はなかったということなんだというふうに思います。いずれにしても、やはり富裕層はこれだけ担税力を増しているわけですから、しっかり検討していただきたいというふうに思います。ちなみに、きのう午前の予算委員会の中央公聴会に出ていました。公述人として東京大学の小林雅之教授がいらっしゃって、給付制奨学金のことなどについてお話をされていました。その中で、日本の大学の教育費の家族負担は重い、税金などで公的負担をふやすべきだというお話をされる中で、その財源として、例えばということで、やはり相続税をしっかり強化すべきじゃないかというお話もされていました。例えば、孫への教育資金の贈与のための減税というのはこの間できたわけですよね。そういうお話があったので、私もきのう改めて調べましたら、二〇一三年に始まった教育資金贈与信託の受託状況、去年の九月段階で一兆一千六百三十五億円と相当な額になっているわけですよね。贈与ができる資産を持っている余裕のある方はこういう制度を使えますけれども、庶民は使えない制度になっているわけですよね。このことによって失われている税源というのも、かなりのものに上るんじゃないかというふうに思います。ですから、いろいろな点で、やはり格差を固定化させない税制というのはさらに検討していく必要があるんじゃないかというふうに思います。あと、残り時間が短くなりましたので、配偶者控除の見直しについて質問をさせていただきます。配偶者控除が受けられる年収基準が百三万円になったのは一九九五年です。そのときに比べて、最低賃金の水準は今一・五倍ぐらいになっています。ですから、今回、配偶者控除が受けられる年収基準を百三万円から百五十万円に引き上げるという点については、これは最低賃金の上がり方からすれば合理性があるのかなというふうにも思います。しかし、なぜ見直す控除が配偶者控除だけなのかというのは大変疑問なんですよね。これは、配偶者で、パートの方が受けられるということになると思うんですけれども、厚生労働省のパート労働者総合実態調査を見ますと、パート労働者一千八十七万人の中で、主な収入源が配偶者と答えた方は約半数の五百三十八万人。一方で、親や子供と答えた方が百六十九万人います。今度の税制改正案で恩恵を受ける年収百万から二百万円が収入という層を見ても、同じ傾向であります。同じ少ない収入であっても、配偶者だったら控除が受けられ、配偶者でなければ控除が受けられない。これは、私は不公平なんじゃないかと。なぜ、扶養控除だとかそういうものを一緒にやらなかったのか。この点はいかがでしょうか。
○麻生国務大臣 御指摘の配偶者控除とか扶養控除というのは、これは一定の収入以下の扶養親族がいる方の税負担能力に配慮する仕組みというのが基本というのはもうよく御存じのとおりだと思いますが、今回の見直しは、こうした税負担能力に配慮するという事情に着目したものではなくて、あくまでも、就業調整をめぐる喫緊の課題に対応するというのが主たる目的と再三申し上げているとおりです。就業調整問題が生じるというのは、これは家計において稼ぎ手になることが多い配偶者と考えられるために、我々としては、就業調整問題に対応して設けられた配偶者特別控除、配偶者控除じゃありませんよ、配偶者特別控除の方における配偶者の収入制限を引き上げたところであります。したがって、配偶者控除における配偶者の収入制限を引き上げたものではありませんで、扶養控除を見直す必要はないのではないかと考えております。
○宮本(徹)委員 ですから、やはり控除というのはそもそも何なのか。やはり、税負担能力に応じてというのが控除の考え方の原則だというふうに私は思います。支援が必要な若者で見ると、やはりこの不公平は私は一層際立つと思うんですね。厚生労働省の若年雇用実態調査を見ますと、三十五歳未満の労働者は一千三百五十五万人いらっしゃいます。うち四百八十九万人が非正規労働者。月収別に見ますと、月十万から十五万円の層、年収でいえば百二十万から百八十万円の層が百九十八万人いらっしゃいます。この百九十八万人の方の主な収入源、家族の中で誰が収入を持っているのかを見ますと、配偶者というは二十八万人ですよ。親兄弟というのが八十一万人。三十五歳未満の非正規労働者、月収十万から十五万の層で見れば、配偶者よりも親や兄弟に支えられている方の方がたくさんいらっしゃるわけですね。大学を出て、なかなかたくさん収入が得られなくて、奨学金を一生懸命苦労しながら返済して、親元で生活している、こういう家族の場合は対象にならないわけですよね。これは、私は、大変税のあり方として公平性に反するのではないかということを指摘しまして、質問時間が来ましたので、終わらせていただきます。どうもありがとうございました。