東京都内の2015年保育料アンケートの結果について
2015年の「こども子育て支援新制度」の実施予定に合わせ、各自治体で保育料の改定が行われます。
2010年に年少扶養控除廃止の税制改正がおこなわれた際に、政府は、控除の廃止で所得税・住民税があがったことが保育料に影響がでないようにするための措置を自治体に求める通知をだしました。自治体もこの通知をうけ、年少扶養控除があるものとして税額を再算定して保育料を決めるなどの措置をとりました。
ところが、政府は「こども子育て支援新制度」についての自治体向けFAQでは、この税額の「再計算はおこなわない」と書きました。
保育料は税額で決まるために、これまでおこなってきた税額の「再計算」をおこなわなければ、こどもが多ければおおいほど、保育料負担が現在より増えることになります。
2012年当初、当時の厚労省の通知の趣旨の措置をとらない自治体にお住いの方で、お子さんが多くいる世帯から「保育料が年額で20万円もあがった」などの相談が、私たちのよせられるということことがありました。
そこで、都内の23区26市にご協力いただき、2015年度からの保育料についてのアンケートをおこないました。
結果の概要は以下のとおりです。
<23区>
・引き続き「再算定」を行なう自治体 3(検討中含む)
・一定期間の経過措置をとる自治体 3
・「再算定」を行わない自治体 10(検討中含む)
うち多子世帯の新たな負担軽減策をとる自治体 4
区独自の負担軽減策をとる自治体 1
・未定(現在開催中の定例議会で決めるなど) 7
<多摩26市>
・引き続き「再算定」を行なう自治体 6
・一定期間の経過措置をとる自治体 2
・「再算定」を行わない自治体 14
うち多子世帯の新たな負担軽減策をとる自治体 2
・未定(現在開催中の定例議会で決めるなど) 4
・未定との回答があった自治体のぞく38自治体のうち、多子世帯の保育料があがらないよう「再算定」をおこなう措置を継続する自治体(その方向で検討中を含む)は、9自治体(23.7%)です。一定期間の経過措置をとる自治体は5自治体(13.2%)です。「再算定」をおこなわない自治体(その方向で検討中を含む)は24自治体(63.1%)となっています。
・「再算定」をおこなわない自治体の多くが、こどもが2人いる世帯の保育料が、改定前後で中立になるように改定をおこなっています。この場合、こどもが3人以上いる家庭は負担増になります(多子世帯の新たな負担軽減策がない場合)。
・「再算定」をおこなわない自治体のうち、多子世帯の新たな負担軽減策をとると決めた自治体は、6自治体(15.8%)となっています。港区では第2子以降の保育料無料にふみだします。
・2015年から保育料全体の全体的な値上げをおこなうことを決めている自治体は台東区、武蔵野市の2自治体。港区は、新たに収入上位階層を設定し、上限額を引き上げます。
⚪︎アンケート結果についてのコメント
アンケートにより、2015年度の保育料を決めている都内の自治体の6割以上が、年少扶養控除の廃止による増税分を保育料に連動させないための「再算定」をおこなわないことが判明しました。〝こども子育て支援新制度では、再計算はおこなわない〟という自治体あてのFAQをだした政府の姿勢が、自治体の保育料決定にも影響を与えていることが見て取れます。
一方、子育て支援を後退させないために、引き続き「再算定」をおこなう自治体もかなりあります。港区のように踏み込んだ多子世帯の軽減策をおこなう自治体もあります。このことは、政府が姿勢をあらためれば、他の自治体でも多子世帯の負担が増えない対策がとれることを示しています。
「再算定」を引き続きおこなうか、多子世帯への抜本的な負担軽減策を新たにおこなうかしなければ、新制度で多子世帯ほど保育料の負担が増えることになります。
多子世帯ほど保育料負担が現在より増大するのでは、子育て支援に逆行します。政府は、「新制度では再算定をおこなわない」という姿勢をあらため、制度開始までに多子世帯の保育料が値上がりしないための措置をとるべきです。
⚪︎参考資料1 こども子育て支援新制度 内閣府HP 「自治体向け FAQ 第6版 平成27年1月」 30ページに関連の項目があります
⚪︎参考資料2 厚労省通知「控除廃止の影響を受ける費用徴収制度等に係る取り扱いについて」 平成23年7月15日付