2018年5月23日 衆院内閣委員会 米要求、際限なく危険 「日米新協議FTAにつながる」

 日本共産党の宮本徹議員は23日の衆院内閣委員会で、ライトハイザー米通商代表が日本との自由貿易協定(FTA)を示唆していることにふれ、4月の日米首脳会談で合意した「自由で公平かつ相互的な貿易取引のための協議」(FFR)が将来的にFTAにつながり、大幅な譲歩を迫られる恐れがあると指摘しました。
宮本氏は、同代表が昨年10月に「適切な時期にFTAを結ぶことに関心があると日本に伝えている」と述べたと茂木敏充経済再生担当相が認めたことに言及。「FTAを結ぶつもりがないと返事したのか」とただしました。
茂木氏と外務省の岡本三成政務官は質問に直接答えず、FTAの交渉につながる可能性も否定しませんでした。
宮本氏は米通商代表部(USTR)が毎年米議会に報告する「外国貿易障壁報告書」で、日本側が米国産米の流通増加などを受け入れてきたことが示されているとして、「米国が要求を際限なく持ち込んでくる。この下で新協議が始まるのは極めて危険だ」と警告しました。
また、宮本氏は、環太平洋連携協定(TPP)で、「コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖」の重要5品目を関税撤廃交渉から除外を求める「国会決議」が守られなかったと指摘。安倍晋三首相が17日の同委で、TPPに農業分野での譲歩があり、米国を除くTPP11にも引き継がれたと認めたことを批判し「TPPは撤回しかない」と迫りました。

以上2018年5月24日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2018年5月23日 第196回内閣委員会第19号 議事録≫

○山際委員長 質疑の申出がありますので、順次これを許します。宮本徹君。
○宮本(徹)委員 おはようございます。日本共産党の宮本徹です。打ち切られた先週の続きです。先週、米国は二国間ディールに関心を有すると総理が答弁した、この二国間ディールのディールは日本語にすれば何となるのかというふうに私がお伺いしましたら、大臣からは、ディールに対応する日本語はないかのような答弁がございました。私、ちょっと速記録を見ていましたら、十六日の当委員会で、茂木大臣は、グッドディール、いい取引をしたいという米国の思いはあって当然でありまして、こう答弁されているんですよね。グッドディール、それですぐ、いい取引をしたいと訳し直されているわけですよ、御自身で。ディールは取引というのは、大臣御自身がそういうふうに訳されているんじゃないんですか。
○茂木国務大臣 一つ一つの言葉をとって、その全体の文脈の中でいろいろなお話をわかりやすいようにしているわけでありまして、定義について言われたら、日本語と英語で、一対一で対応しないものもあるという話をしているわけであります。さらには、同じ言葉であっても、日本人が受け取る受けとめ方と、アメリカやヨーロッパの人が受け取る受取方というのは違ってくる。オリンピックが開かれたリオデジャネイロと、そして今度オリンピックが開かれる東京。恐らく、東京という言葉は、海外の人から見ると単に東京だと思います。一方で、日本にとっては、政治の中心が大阪や京都から江戸に移る、そしてそれが東の都、東京になる、こういった思いはどこかに日本人はあるんだと思います。一方で、リオデジャネイロ、これは……(宮本(徹)委員「そんな話は聞いていないんだからさ」と呼ぶ)いや、お話ししています。リオデジャネイロ、これはやはり、スペイン人、さらにはポルトガル人が中南米に入っていくときに、まずは一番いい港であるサンパウロをとる、そしてリオデジャネイロに進出をする。リオデジャネイロですから、一月の川、こういうことになるわけでありますけれども、どこかそういったニュアンスというのはあるんだと思います。コミットメントについて、先生は前回、関与という言葉をおっしゃいましたが、一般的に日本語で言う関与はインボルブメントだと思います。そして、正式な関与ということだとエンゲージメントになるんじゃないかな、私はそんなふうに思うわけですけれども。例えば、最近よくテレビのコマーシャルで、筋肉をつけたり、そしておなかの回りをスリムにする、こういうトレーニングについて、結果にコミットするということを言うんですけれども、もし結果に関与するということであったら、誰もそんなトレーニング、申し込まないんじゃないかな、そんなふうに思うわけであります。個々の言葉を切り出して、どういう意味かというのではなくて、全体の文脈、文章の中で解釈するのが適切である。その上で、改めて申し上げれば、日米間の合意なくして、どのようなディールも実行されることはないと考えております。(宮本(徹)委員「委員長、注意してください」と呼ぶ)
○山際委員長 答弁に関しては簡潔にお願いをいたします。
○宮本(徹)委員 短い時間しかないんですから、長々と聞いてもいないことに時間を費やしていただきたくないと思いますよ。あなた御自身が、大臣御自身がディールを取引と言いかえてやっていたのに、突然、ディールは当てはまる日本語はないんだということを言い始めるからおかしな話になるわけですよ。それで、ディール、取引がこれから茂木大臣とライトハイザーの間で始まっていくわけですよね。米側から適切な時期にFTAを結ぶことに関心があると日本に伝えたのは、昨年十月の日米経済対話のときであると大臣は先週答弁されました。外務省にお伺いしますが、このとき日本はアメリカに対して、FTAは結ばない、こう返事したんですか。
○岡本大臣政務官 お答え申し上げます。米国側から我が国に関しまして、今委員御指摘のように、日米経済対話の議論の中で、二国間FTAに関する考え方は確かに示されました。また、その後、ライトハイザー氏が議会の中で発言されているように、将来的な可能性といたしまして米国側が二国間FTAを視野に入れていることはもちろん政府として承知をしておりますが、私ども日本といたしましては、TPPが最良の策だというふうに考えていることは常々米国側にも申し上げてきておりますし、今後もその姿勢で臨んでまいります。FFRも何度か答弁させていただきましたように、日米FTA交渉と位置づけられるものではありませんし、またその予備協議でもないということを明らかに申し上げておりますので、今後もTPPが最良の策という姿勢で交渉には取り組んでいく姿勢でございます。
○宮本(徹)委員 お答えになっていないんですけれども。TPPが最良だと言っているというのはもう何回も聞いている話なんですよね。FTAについて、日本としてはこんなものは結ぶつもりはないと言ったのか、それとも拒否はしていないのか、どっちなんですか。
○岡本大臣政務官 米側の考えは示されましたけれども、私どもの対応は、TPPが最良であるということを常々申し上げてきておりまして、今後もその姿勢で取り組んでまいります。
○宮本(徹)委員 つまり、FTAは結ばないということは、日本側は明言はしていないということですね。
○岡本大臣政務官 同じお答えで申しわけありませんけれども、私どもが最良と考えておりますTPP、最善の策として交渉を続けていくということを申し上げております。
○宮本(徹)委員 つまり、こんなに聞いてもFTAは結ばないということを言っていないということは言っていないわけですよ。アメリカ側からすれば、日本は明示的には拒否していないとしか受け取れないですよ。私はそういうのは極めて重大な姿勢だと言わなければいけないと思います。安倍総理は、十七日の当委員会で、TPP12のとき、今、11でもそれは残っているわけでございますが、ここでの農業分野における譲歩というのはもうマックスだということは明確にトランプ大統領にも伝えているわけでございます、こう答弁されました。TPPは譲歩したんだ、こういうことを認めた重大な答弁だと思いますが、茂木大臣もこの総理の答弁と同様の認識ですよね。
○茂木国務大臣 TPPの交渉においては、特に農林水産分野について、重要五品目を中心に関税撤廃の例外をしっかりと確保し、関税割当てやセーフガード等の措置を獲得したところで、まさに全体の交渉の中で、攻めるべきは攻め、守るべきは守ったと考えております。国際交渉であります。そこの中で、一国の制度を少しでも変えるというのが譲歩だからだめだというのでは、国際協定は成り立たないわけであります。共通のルールをつくることもできないわけであります。自分の要望を全て通すけれども相手の要望は何も聞かないということでは、国際的な合意はできないと考えております。世界の成長センターでありますアジア太平洋地域に、自由で公正な二十一世紀型の新しい共通ルールを確立すること、そしてそれを日本がリードをしていくことは、日本にとっても、またアジア太平洋地域の発展にとっても、極めて意義のあることだと考えております。
○宮本(徹)委員 守るべきものは守っていないから問題になっているわけですよ。大体、国会決議は、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、砂糖などの重要五品目は、関税交渉からは除外を求めていたわけですよ、除外を。一部例外にしてくれという話じゃないんですよ、除外だったわけですよ。全くこの国会決議も守らずに譲歩したという話じゃないですか。守るものは守れていない。こういうことでは、TPPは撤回するしかないというのが結論になると思います。茂木大臣は、十七日の内閣委員会で、新協議、FFRの協議のテーマは、日米双方がお互いの関心事項を持ち寄る、こう答弁されました。アメリカ側の関心は、日本に対しては外国貿易障壁報告書があります。これは当然、ライトハイザー氏も頭に入れて臨んでくるというふうに思います。ちょっと外務省に確認しますけれども、過去のこのUSTRの外国貿易障壁報告書で、日本側が受け入れてきた項目というのはどういうものがありますか。
○岡本大臣政務官 委員今御指摘をいただきました報告書は、米国の一九七四年通商法に基づきまして、毎年、政府から議会に対しまして提出をされる、米国の貿易相手国に対する関心事項についての報告書であります。そして、この報告書が米国議会に提出されたその後、この報告書の位置づけですけれども、米国の政府が諸外国に対して何か措置をとるものという位置づけではございません。また、日本からも、その報告書を受けてこちら側から何か措置をとるという類いの報告書でもございません。報告書の位置づけ自体がそういうものでございます。
○宮本(徹)委員 だから、報告書をアメリカが議会に対して出しているというのは、その関心事項に基づいてアメリカは日本と交渉しているということじゃないですか。事細かに書いているじゃないですか。例えば、二〇一六年、郵便局ネットワークへのアクセスに関し、アフラック社のがん保険商品を取り扱う郵便局数が二〇一五年一月までに一千局から二万局以上にふえたことなど大きな進展があったとか、毎年毎年、書かれてきた項目がどう前進したのかということで、アメリカでは、USTRは議会に報告しているわけですよね。アフラックの話だけじゃないですよ。三十カ月齢未満の牛肉、牛製品、米国産の米の流通増加、農薬使用の緩和、木材輸入の緩和、アイダホ産のポテトの問題、ここで書かれたことは次から次へと譲歩してきているというのが実際の日米交渉の歴史じゃないですか。こういう歴史のもとで新協議が始まっていくと、極めて私は危険だと思っております。ライトハイザー氏は、ことし三月二十一日の米国議会下院歳入委員会の貿易政策に関する公聴会で、米国と個別のFTAを結んでない他の五カ国のうち、日本が最も重要だ、こういう認識を示されております。これは日本政府も同じ認識なんでしょうか。そして、TPP11参加国のうち、米国とFTAを結んでいない国はどこなんでしょう。外務省、お願いします。
○岡本大臣政務官 ライトハイザー氏の発言は認識をしておりますけれども、ライトハイザー通商代表がお考えになることですので、どういうふうなことかということを政府として正式にコメントする立場にありませんけれども、先ほど来申し上げているように、我が国の一貫した考え方は、TPPが日米両国にとって最善という考え方でございますので、この後の機会を通じましても、米国側にその立場をしっかりと説明してまいりたいというふうに思っております。また、二つ目の御質問の、TPP11の協定参加国のうち、米国が二国間FTAを締結していないのは、日本、ブルネイ、マレーシア、ニュージーランド、ベトナムの五カ国であります。
○宮本(徹)委員 ですから、日本が一番ターゲットになっているわけですよね。茂木大臣にもお伺いしますけれども、この日本をターゲットにアメリカは交渉をずっとやってくる。そうすると、アメリカのいわゆるロビー活動をやっているような業界団体も含めて、USTRの外国貿易障壁報告書に書かれていない部分も含めて、いろいろなものがこの交渉に持ち込まれてくるというふうに思いますが、その点はいかがですか。
○茂木国務大臣 実際に、私とライトハイザー通商代表との協議はこれからでありまして、そのテーマ、TORというものは、日米双方でお互いの関心事項を含めて今後調整していくものだと考えております。
○宮本(徹)委員 つまり、際限なくアメリカ側はいろいろな要求を持ち込んでくる場というふうになるわけですよ。そして、過去の歴史は、譲歩ばかり繰り返してきた。そして、最近、米韓FTAというのもありましたけれども、はっきり言ってアメリカの一方的な勝利なわけですよね。韓国の一方的な譲歩に終わったのが米韓FTA交渉の結果だったというふうに思います。そうすると、今回のこの新協議はFTA交渉に位置づけられない、そしてそのための準備の場でもないということを繰り返されますが、この間のライトハイザー氏の証言からいけば、二国間協議でいろいろな取引が行われて、その先はFTAに向けた二国間協議が実際には始まっていくことになるんじゃないですか。違いますか。
○茂木国務大臣 それぞれの国の交渉、違うんですよ。韓国とアメリカは、KORUSでずっとやってきているんです。そして、KORUSをどうするかという観点から見直しを行ったわけですよ。日本の場合は、TPPの中で相当の協議が進んできたのは事実でありますから、そういったことも踏まえて、今後の協議を進めていきたいと思っております。
○宮本(徹)委員 FTAに更に進んでいくということは絶対ないと。絶対ないと断言できるんですか。
○岡本大臣政務官 日本に関しましては、日米両国にとりまして最良の協定というのはTPPだというふうに確信をしておりますので、そのことを相手方に粘り強く申し伝えてまいりたいと決意しています。
○宮本(徹)委員 絶対ないとは言えないわけじゃないですか。絶対ないなら絶対ないというふうに、茂木大臣、言ってください。
○茂木国務大臣 FFRについての基本的な考え方は、先ほど答弁させていただいたとおりです。
○宮本(徹)委員 ですから、FTAに進まないということをこれだけ聞いても、外務省からも茂木大臣からも明言いただけない。これはもう、譲歩に譲歩を重ねた末、日米FTAに進んでいく可能性だって含まれているということになるんじゃないですか。既に、アメリカ側は日米FTA交渉に関心がある、そこを視野に入れているということが伝えられているわけですよね。そして、ライトハイザー氏も議会で、そのことをアメリカで報告しているというのが今の状況なわけですよ。新協議が終わればFTA交渉になる、そういう危険な可能性があるもとで、このTPP12、TPP11、新協議は即刻中止すべきだということを強く申し上げまして、時間になりましたので、質問を終わります。