2018年12月7日 衆院財務金融委員会 金融庁15年に不正把握 スルガ銀行融資。 未婚のひとり親にも差別なく寡婦控除の適用を

 日本共産党の宮本徹議員は7日の衆院財務金融委員会で、不動産投資で組織的な不正融資を行ったスルガ銀行について金融庁の監督責任を追及しました。
 同銀は不動産会社と結託し、シェアハウスやアパート投資などで顧客の通帳改ざんや不動産価格の偽装などを展開。不動産会社が倒産するなか、顧客は多額の借金に苦しみ、自殺者まで出ています。
 宮本氏は「なぜ金融庁は見抜けなかったのか」として、金融検査の方針転換で2012年以降定期的な検査をしていないと指摘。金融庁は宮本氏の質問に対し、15年1月には同銀の不正融資の苦情があったことを明らかにしました。宮本氏は早い段階で苦情が寄せられていたにもかかわらず金融庁は調査せず、前長官は高い利益率をあげる同銀を称賛していたと批判しました。
 また宮本氏は、同銀行が債権放棄する際、被害者に過大な税金がかかると指摘し「金融庁の検査見逃しによる被害者。対応を考えるべきだ」と求めました。麻生太郎財務相は「必要に応じて対応する」と答弁しました。
 宮本氏は、過剰な行員へのノルマ押し付け、必要もない顧客へのリスク商品の販売や貸し付けの是正を迫り、麻生財務相は「不適切なものがあれば必要な改善を促していく」と答えました。

以上2018年12月8日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2018年12月7日 第197回財務金融委員会第3号 議事録≫

○坂井委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。私はシェアハウス投資事件については通常国会で取り上げさせていただきました。スルガ銀行への立入検査や被害者の救済を含む指導を求めてまいりました。その後、金融庁の立入検査が行われ、一部業務停止を含む行政処分が下されることになりました。問題は、なぜもっと早く見抜くことができなかったのかというところが一つあると思います。スルガ銀行に対して、経営管理やリスク管理などのフルスコープ型の検査はこの十年でいうと二〇一〇年と二〇一二年。その後、金融検査の方針を変えたので定期的な検査はやっていません。その間に、スルガ銀行のアパートローン、シェアハウス投資などが拡大していったということになりました。ここでお聞きしたいんですけれども、金融庁の相談室には早い段階から相談が寄せられていたんじゃないでしょうか。いつからどんな相談があったのか、答えていただけますか。
○栗田政府参考人 お答え申し上げます。金融庁の金融サービス利用者相談室に寄せられましたスルガ銀行に関する投資用不動産融資に係る苦情相談につきましては、平成二十七年一月以降、把握している分につきまして申し上げますと、例えば、スルガ銀行と不動産業者が結託して物件価格を高額に設定し投資用不動産向け融資が行われていたですとか、特定の不動産業者は、融資後、建物も建てずに経営者が行方不明となってしまった、当行は同社の経営悪化を知っていたのではないかといったものがございます。
○宮本(徹)委員 一番早いものの相談はいつありましたか。
○栗田政府参考人 時期については全てを把握しているわけではございませんけれども、遅くとも二十七年からはあったということでございます。
○宮本(徹)委員 二十七年の何月からですか。
○栗田政府参考人 二十七年一月にはあったということでございます。
○宮本(徹)委員 つまり、捨てちゃったそれまでの相談は、二十七年一月以降しか把握していないんですね、文書が残っているものは。そのうち、一番古いものにもスルガ銀行からの相談はあったという話なんですね。その二十七年一月の相談というのは、さっきお話があった、スルガ銀行と不動産業者が結託して投資物件の価格を高目に設定して不動産融資をあっせんしている、こういう中身の苦情だったんですよね。
○栗田政府参考人 お答え申し上げます。今申し上げた例が二十七年一月ということではございませんけれども、類似のものが二十七年一月以降あったということでございます。
○宮本(徹)委員 類似のものはあったということですから、ずばり、この問題の核心の相談は、相当早い段階から金融庁に相談として寄せられていたわけですよ。ところが、何の検査にも入らなかった、金融庁はモニタリングの検査の対象ともしなかったということであります。アパートローンが急拡大する中で、こういう相談が寄せられている中で、なぜ、ああ、これはおかしいなと思わなかったのかと、私、不思議でならないんですよね。逆に、前長官は、スルガ銀行は突出した利益率を上げているということで、褒めるということまでやっていたと。全く不可思議であります。このスルガ銀行の違法、ずさんな融資、今回の一連の問題を見抜けなかった責任について、これは大臣、どうお考えでしょうか。
○麻生国務大臣 これは、先ほどたびたびほかの方の御質問に答えたのと同じことでありまして、こういったようなことがきちんと、いわゆるオンでもあって、オフでもあっても、いろんな形でやっていながら見抜けなかったというのは甚だ遺憾なことだと思っております。
○宮本(徹)委員 極めて重大なミスだったというふうに思います。そして、金融庁は業務改善命令の中で、元本の一部カットを含め、個々の債務者に対して適切な対応を行うための体制の確立をスルガ銀行に求めております。こういうことをスルガ銀行に求める以上は、個々の債務者に対して適切な対応が行われているか、金融庁として最後まで責任を負うべきだというふうに考えますが、この点、大臣、いかがでしょうか。
○麻生国務大臣 これは個々の話なんであって、基本的に銀行として誠意を持って対応すべきものだと思っております。
○宮本(徹)委員 個々の問題、銀行が誠意を持って対応すべきなんですけれども、業務改善命令の中でそのことをやりなさいということを言っている以上は、見届ける責任というのが金融庁の側にもあると思いますが、大臣、いかがでしょうか。
○栗田政府参考人 お答え申し上げます。金融庁といたしましては、当行が業務改善命令の内容を踏まえ、個々の債務者に対してどのような対応を行っているのかについては、今後ともしっかりとモニタリングをしていきたいというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 モニタリングをしながら、適切な、必要な指導もやっていっていただきたいというふうに思います。今、金融庁の業務改善命令を受けて、スルガ銀行も、元本の一部カットを含め、被害者の皆さんと話合いを進めております。今、和解のネックになっている一つが税金なんですね。例えば、被害者と銀行が八千万円の借金棒引きで和解した場合、債務免除益による一時所得として一体幾ら税金がかかるのか。ちょっと国税庁、きょう来ていただいていますので、お願いします。
○並木政府参考人 お答えいたします。御質問の税額につきましては、個々の事実関係により課税関係が異なりますことから、確たることは申し上げられないという点は御留意いただきたいと存じますけれども、その上で、先生御質問の前提に沿って、仮に賃貸物件の購入資金に係る借入金について、一時所得となる債務の免除を受けた場合で、例えば、所得税の課税所得が一千万円である納税者が八千万円の債務免除を受けたときについて試算をいたしますと、所得税及び復興特別所得税の合計額は約一千八百万円となり、このほかに地方税が生ずることとなるところでございます。今申し上げたとおり、この計算においては、一時所得がない場合とある場合の所得税及び復興特別所得税の合計額の差額につきましては、約一千六百万になるというところでございます。
○宮本(徹)委員 すごい額がかかるわけですね。一千八百万、一千六百万という数字が出ました。それ以外に地方税、住民税、これは一〇%ですから、八千万の場合は、五十万引いて二で割ったものが所得となりますので、約四百万近くということになりますから、合わせれば約二千万、税金が課されるという話になります。スルガ銀行と、今、債務者の皆さんの話合いというのは、全部の借金を棒引きという話になっていません。一定、幾らかの債務が残る。その上に加えて、二千万円更に税金が求められるということになると、負債を背負って更に二千万ですから、二千万の税金、手元にお金がない人が大半ですから、税金を払うために新たに借金しなきゃいけないという、こういう話になってしまうわけですよね。この経過は、スルガ銀行の問題もある。同時に、金融庁は、やはりこの間の検査で見抜けなかった、こういう問題もあるわけであります。そういう点では、スルガ銀行等による被害者であると同時に、金融庁の検査の見逃しによる被害者だというふうにも私は言えるというふうに思います。これほどの過大な税金を負わされたら、せっかくスルガ銀行との話合いが進んでも、税金によって自己破産に追い込まれるという、新たな悲劇が起きかねないというふうに考えています。東日本大震災の場合は、こういう問題について、税金を課さない仕組みを設けたりしましたけれども、この問題は、大臣、対応を考えるべきじゃないですか。
○麻生国務大臣 今の話は、いわゆる一部カットを行った場合に、漠然としているから具体的なことを言うと、一部カットされたことによって、それによって早い話が債務免除ということになるけれども、その免除によって差益が出ますから、それに対しての税金がという話をしているわけですね。簡単にはそういうことね。何かえらい遠回しな言い方をしているけれども、要はそういうことを言っておられるわけですね。これらを含めた、これは個々の債務者に対する個別的な、具体的な話なので、これについてのコメントをすることは差し控えさせていただきますけれども、その上で、これは金融庁としては、課税関係の問題を含めて、いわゆる個々の債務者に対して、可能な限り顧客との理解と納得を得て解決してもらうというより、目指してもらう以外に、ほかにないんですけれども、適切な処理をしろと言いますけれども、そういったものがどうなっているか、ちょっと個々の話になりますので、しっかりとモニタリングして、必要に応じて対応させていかないといかぬと思っております。
○宮本(徹)委員 今の話では、スルガ銀行と債務者の間で、税金の問題、これぐらい発生するんだから、その問題も踏まえて、銀行と債務者が納得できるような解決策をするようにモニタリングを進めるという話だったかというふうに思います。そういう点では、その問題は最低限、金融庁として、税金の問題も含めてどうするのかというのは、スルガ銀行と債務者の間で話合いをしっかり、債務者の皆さんが納得できる解決を図れるように対応していただきたいというふうに思いますし、場合によっては法的にこういう問題をどうするのかというのは、ほかの銀行でも起きている話ですから、スルガ銀行と同様の話というのは。これは考えていかなきゃいけない課題だということを申し上げておきたいというふうに思います。それから、スルガ銀行ほどではありませんが、顧客の利益よりも銀行の利益優先という銀行経営というのは大変広くあります。金融庁の調査でも、投資信託の半数弱の顧客の運用損益率がマイナスということで、今、低金利の中で、手数料ビジネスに金融機関が走っております。スルガ銀行の問題の背景には、パワハラと一体の過剰なノルマの押しつけがありました。これもスルガ銀行だけの問題じゃないんですね。全国の信金だとか地方銀行だとか、いろいろなところが加盟しております金融労連が行員対象に行ったアンケートを見ましたら、職場への不満、不安で二番目に多かったのが、リスク商品等のノルマの追求、これが二三・四%。目標という名前で、ノルマが支店ごとに割り振られ、支店のノルマが行員ごとに割り振られ、それも、投資信託何件、カードローン何件、こういう形で割り振られる。ノルマを課せられるのは営業担当だけじゃなくて、三時に窓口を閉めたら、営業担当以外も名簿に基づいて電話をかけているというのが広くあるそうであります。こういう中で、顧客にカードローンのカードをつくってもらって、では、今試しに借りてみましょうということで、その場で必要もないのに借りさせる、こういうことも起きているという話も聞いております。ノルマが強制力として働くのは、パワハラと同時に、ノルマをこなした件数というのが人事評価に結びついているという問題もあると思います。そこで、お伺いしたいんですけれども、金融庁は、各銀行での過剰なノルマや人事評価の基準など、つかんでいるんでしょうか。
○佐々木政府参考人 お答え申し上げます。今お尋ねの金融機関の収益目標や人事評価の基準は、金融機関のビジネスモデル、企業文化を実務面から示すものでございまして、金融機関の役職員の行動に大きく影響を及ぼすものであることから、例えば、金融機関において生じました法令等遵守の問題の根本的な原因を検証する際に有用な資料であるというふうに考えております。このため、金融庁といたしましては、金融機関に関する情報収集、あるいはリスク評価を踏まえた上で、必要に応じ、これらの基準を把握、検証することとしております。
○宮本(徹)委員 それで、その把握した上で、顧客の利益を無視したノルマと人事評価を結びつけることはやめるべきだ、スルガ銀行の事態も踏まえて、そういう指導もやっていく必要があるかと思いますが、これは、大臣、いかがですか。
○麻生国務大臣 金融機関の方が、いわゆる顧客保護というものを無視するとか、コンプライアンス等々に関してこれを遵守しないとかいうような話はふざけた話なんですけれども、今言われたように、適切な収益目標とか、また人事評価等々のあり方というのをきちんと整備、運用するというのは、これは当然の話なのであって、そういった意味としては、不適切なものがあるのであれば、これは、我々として、そういった問題が認められるということなのであれば、当然のこととして、今局長から申し上げましたように必要な改善というものを促してまいりたいと考えております。
○宮本(徹)委員 不適切なものがあれば必要な改善を求めていくということですけれども、手数料ビジネスがどんどんどんどん拡大しているというのは、その中で必要がない金融商品を高齢者の方だとかいろいろな方がいっぱい買わされているという裏返しの話だというふうに思いますので、これは本当に広くノルマの押しつけというのは金融機関で行われていますので、厳しく是正していっていただきたいということを申し上げておきたいというふうに思います。それから、あと、日銀にきょう午後も来ていただきましたけれども、重なる質問があったのでそこは省略をさせていただきますが、手数料ビジネスの拡大もそうですけれども、そしてスルガ銀行のシェアハウス投資事件もそうですけれども、超低金利の長期化を見越した過度のリスクテーク、過度の債務の増大という副作用が日銀の政策のもとで拡大しているというのは、これは事実じゃないでしょうか。違いますか。
○衛藤参考人 お答えをいたします。地域金融機関におきましては、御指摘のように、低金利環境の長期化ということに加えまして、人口や企業数の減少という構造的な要因というのが強く働いておりまして、この両方の要因によって基礎的な収益力が低下しているということでございます。こうしたもとで、各地域金融機関では、資金の運用利回りを高めるという観点から、いわゆるミドルリスク企業向けの貸出し、あるいは有価証券運用の多様化といった形で積極的に、御指摘のとおり、リスクをとりに行っているところがございます。もっとも、これまでのところは、金融機関は充実した資本基盤を備えているということでございますので、これとの対比で、リスクが過大、無理にリスクをとっているというところまではいっていないかなというふうに考えております。また、過度の債務の増大というお話がございましたけれども、経済規模との対比で、よく私どもは与信残高が大き過ぎないかということも見ておるわけでございますが、こういった幅広い指標を見ましても、それで金融循環に行き過ぎがないかということを見ておりますけれども、これまでのところは、まだ行き過ぎというところまではいっていないのかなというふうに理解をしております。ただ、やはり全体としてリスクをとりに行くという流れができてきておりますので、今後も、金融面で過度な不均衡が蓄積していないかということについては、丹念に私ども見てまいりたいというふうに考えております。
○宮本(徹)委員 いろいろな弊害が国民生活の中には実際は出てきているというふうに思いますので、日銀には今の政策の見直しを重ねて求めておきたいと思います。最後に、全くテーマはかわります。今、与党の税調もやっておりますが、非婚の一人親の寡婦控除の適用についてお伺いしたいと思います。この問題は何度か大臣にも質問してまいりました。与党の税調の議論の報道では、所得制限をつけるという話が出ているようです、二百三十万円未満。私はとんでもない話だと思うんですよね。もともと、寡婦控除が非婚の一人親には適用されないのは差別だから、この差別をなくそうというのが議論の出発点だったというふうに思いますが。せっかく寡婦控除の適用をするのに、非婚の一人親だけ二百三十万円未満という所得制限をつけるんだったら、これは新たな差別ということに私はなっていくというふうに思います。シングルマザーの中でも、非婚の場合というのは一番生活が厳しいというのも実態として出ております。非婚の一人親だけ差別的な所得制限をつけるべきではないというふうに考えますが、大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
○麻生国務大臣 これはもうたびたび似たような質問をこれまで伺いましたので、同じようなことしか答えられませんけれども、あらかじめお断りしておきます。未婚の一人親というものに対する税制上の対応の話なんです、この話は基本はね。ずっといろいろな質問をしておられますけれども、これは同じことを言っておられるんだと思うんですが。平成三十年度のたしか与党税制改正大綱の中に書いてありますのは、「児童扶養手当の支給に当たって事実婚状態でないことを確認する制度等も参考にしつつ、平成三十一年度税制改正において検討し、結論を得る。」ということとされている中の話で、外に出ている話の一部をとってしゃべっておられるんだと思いますけれども。一連の報道は承知しておりますけれども、御質問のあります論点も含めて、今たしか議論をいただいている最中だと思っておりますので、その結論を私どもはまだ伺っているわけではありませんので、政府としてそれを伺った上での話だと思いますね。
○宮本(徹)委員 与党の皆さんもいらっしゃいますので、与党の皆さんも税調の中で差別的な対応をすることはないようにということをお願い申し上げまして、私の質問を終わります。