毎日新聞経済プレミアで報道されました

 金融庁に4年前に届いていたスルガ銀不正への「苦情」
 不正が横行したスルガ銀行のシェアハウス向け融資をめぐり、国会の委員会で注目される質疑があった。スルガ銀行の不正融資に関する苦情が、金融庁の相談窓口に4年前から寄せられていたというのだ。12月7日の衆院・財務金融委員会で行われた質疑の内容を詳しく報告する。

 財務金融委員会は麻生太郎財務相(金融担当相)をはじめ財務省、金融庁の幹部が出席し、与野党の議員と質疑を行う。この日は立憲民主党、国民民主党、共産党の各議員がスルガ銀行の不正融資問題を取り上げた。

 立憲民主党の川内博史議員は、不正融資の責任をとって退任した岡野光喜・前スルガ銀行会長に対する退職金支払いの有無を尋ねた。金融庁の栗田照久・監督局長は「スルガ銀行によると退職金は支払われていない。今後も支払われる予定はないと承知している」と回答した。

 ◇2015年1月に苦情相談

 金融庁への苦情相談を取り上げたのは、共産党の宮本徹議員だった。スルガ銀行の不正融資について、金融庁がもっと早く把握し、是正すべきだったと批判したうえで、「金融庁の相談室には早い段階から相談が寄せられていたのではないか」と質問した。

 これに対し、栗田局長は、庁内の「金融サービス利用者相談室」に不正融資の苦情相談が寄せられていたことを認めた。記録が残っている分では2015年1月が最も早い時期の相談だったという。それ以前の記録は廃棄されており、もっと前に情報が入っていた可能性もある。

 スルガ銀行が不動産業者と組んでシェアハウス融資を本格化させたのは14年春だ。翌15年5月ごろから融資額が急増し、ピークは16年3月だった。金融庁に苦情が寄せられたのはかなり早い時期だ。栗田局長は苦情相談の内容を次のように説明した。

 「スルガ銀行と不動産業者が結託して物件価格を高額に設定し、投資用不動産融資が行われていた」「特定の不動産業者の経営者が、スルガ銀の融資後に建物を建てずに行方不明になってしまった。同行は経営の悪化を知っていたのではないか」

 ◇被害は18年1月に表面化

 例として挙げた二つの苦情が届いた時期は明らかにしなかったが、極めて具体的な相談であることがわかる。スルガ銀行の不正融資による被害が実際に表面化したのは、不動産業者の経営が行き詰まった18年1月になってからだ。

 栗田局長の答弁を受けた宮本議員は、「金融庁がなぜ『おかしいな』と思わなかったかと不思議でならない。金融庁は違法でずさんな融資を見抜けなかった責任がある」と追及した。

 これに対し麻生太郎・金融担当相は「金融庁としては他の金融機関と同様にモニタリング(監視)に務めてきた。結果としてこういう問題が起きたことを察知できなかったのは事実だ。反省すべきところは反省し、より効果的なモニタリングを行って、改善していかなければならない」と反省の弁を述べたのである。