2019年4月10日 衆院財務金融委員会 国保税滞納者の生活をこわす乱暴な差し押さえは改善すべき
宮本徹衆院議員は10日の衆院財務金融委員会で、国民健康保険税・料の滞納者に対して、給与や「国の教育ローン」が振り込まれる口座を差し押さえて滞納整理(処分)を行っている問題を追及しました。
宮本氏は「低所得者世帯に負担が重い国民健康保険の制度のもとで全国的に滞納問題が深刻になっている」と指摘。宮本氏は、強権的な差し押さえ問題として、宮城県地方税滞納機構が、滞納者の8万7597円のパート給与が振り込まれた銀行口座を差し押さえた件や京都地方税機構が、日本政策金融公庫の「国の教育ローン」が振り込まれた銀行口座を差し押さえたために、子どもが学費を支払えなかった事例を紹介しました。
宮本氏は、国税庁の「徴収事務提要」で滞納者への対応について「収支や財産の状況等、個々の実情を的確に把握した上で」滞納整理を行うとしていることを示し、「滞納者の生活実態を把握せず差し押さえを実行してもよいという方針か」とただしました。徴収法を所管する国税庁の並木稔次長は、給与や授業料にあてることが分かっていれば差し押さえないと答弁。総務省の稲岡伸哉大臣官房審議官は「滞納者の個別・具体的な実情を十分把握した上で、法令に基づいて適正な執行を行うべきだ」と答えました。
以上2019年4月25日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2019年4月10日 第198回衆院財務金融委員会第10号 議事録≫
○坂井委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。きょうは、国税徴収法に基づいて行われております地方税や国民健康保険税の滞納処分について質問をいたします。まず初めに、徴税当局の公権力についての認識を伺いたいと思います。一九五九年に現行の国税徴収法が制定された当時、租税徴収制度調査会の我妻栄会長は次のように述べております。私債権が他の債権に優先する効力を与えられる場合には、法律にその要件が極めて正確に定められている。また、その執行のために認められる強制力については極めて慎重な規定がある。それに反し、租税債権については、優先的効力の範囲にも、その用い得る強制力の程度にも、徴税当局の認定と裁量に任されている幅が相当に広い。これは、近代法治国家の公権力の作用としても異例に属する。こういうものだから、制度の運用に当たっては慎重の上にも慎重を期すことが当然の前提というふうに述べられております。これは現在でも通用することだと思いますが、国税庁の認識を伺いたいと思います。
○並木政府参考人 お答えいたします。ただいま御紹介のございました国税徴収法精解におけます我妻栄会長の序文の内容については、私どもも承知しているところでございます。国税庁におきましても、事務処理手続等を定めました徴収事務提要におきまして、滞納処分の執行は滞納者の権利、利益に強い影響を及ぼすことから、滞納整理に当たっては、まずは自主的な納付を促して納付の意思を確認するとともに、滞納者の事業の概況、収支、財産の状況等、個々の実情を的確に把握した上で、これまでの滞納整理実績を踏まえて処理方針を決定すること、この処理方針のもと、納税に対する誠実な意思が認められない滞納者に対しては財産の差押え等の厳正な滞納処分により滞納国税を徴収する一方、納税の猶予等の法令の要件に該当する滞納者に対しては適切に納税緩和制度を適用するなど、納税者個々の実情に即して、法令等の規定に基づき適切に対応することを滞納整理の基本姿勢としておりまして、この姿勢によって滞納整理に取り組んでいるところでございます。
○宮本委員 その考え方について、国税庁は、徴収事務提要で滞納整理など徴収事務の留意点を明記しておりますが、この滞納整理の基本姿勢について、税務職員にはどのように研修されているんでしょうか。
○並木政府参考人 お答えいたします。国税庁といたしましては、先ほども御答弁申し上げましたとおり、滞納整理に当たっては、納税者個々の実情に即しつつ、法令等に基づき適切に対応することが基本であると考えておりまして、そうした考え方に基づき滞納整理を実施するよう、随時開催する各種会議における周知、御指摘の徴収事務の基本を定める徴収事務提要や、各事務年度において指示する特に留意すべき事項の通達の発出などを行うことによりまして、常に国税局、税務署及びその職員に対して指示を実施しているところでございます。今後とも、国税局、税務署に対してこうした趣旨が徹底されるよう指導を続けていく考えでございます。
○宮本委員 総務省にお伺いしたいんですけれども、今、国税庁の方から、滞納整理の基本姿勢と研修の状況のお話がございました。収入や財産の状況等、個々の実情を的確に把握した上やっていくんだという話がありましたけれども、地方税や国民健康保険税などの徴収に当たって、同じ認識で研修というのは行われているんでしょうか。
○稲岡政府参考人 お答え申し上げます。地方税に関しましても、滞納処分に当たっては、滞納者個々の実情に即しつつ、法令等に基づき適切に対応することが基本であると考えております。こうした点を踏まえつつ、地方団体の職員向けの研修としては、例えば、総務省自治大学校、全国地方税務協議会などの関係機関における徴収事務に関する研修の中で滞納整理についても取り上げるなどの取組が行われております。また、地方団体においても、徴収担当者に対して実務的な研修が行われているものと承知しております。これらの研修においては、滞納整理の基本姿勢と同様の認識に立って研修が行われているものと考えているところでございます。
○宮本委員 ところが、そうじゃない例がいろいろあるわけですよね。地方税や国民健康保険税、あるいは国民健康保険料などの滞納整理で、本来のルールを逸脱しているとも言える事案が起こっております。一つ配っているのは、二〇一七年九月十五日、宮城県地方税滞納整理機構が、国民健康保険税などの滞納処分として、滞納者の女性、当時六十三歳のパート給与が振り込まれた銀行口座の預金を直後に差し押さえた。八万七千五百九十七円であります。三十代で離婚し、一人で四人の子供を育て、現在は引きこもりの長男と二人暮らし。月八万から十一万円のパート収入で食いつないで、十年ほど前までは歯を食いしばって納税してきたが、無理がきかなくなり、市民税や県民税、国保税などの滞納が重なったということでございます。記事の最後を見ると、この機構の職員は、生活実態を把握してからでないと差押えができないわけではないと述べたと記されているわけですよね。先ほど取り上げた徴収事務提要の内容、答弁もあった、収支や財産の状況等、個々の実情を的確に把握した上、これと全く正反対の言葉が報道では記されております。総務省にお伺いしますが、一般論として、地方税等の徴収に当たって、滞納者の生活実態を把握せずに差押えを実行してもよい、これは総務省の方針なんでしょうか。
○稲岡政府参考人 お答え申し上げます。総務省といたしましては、個別具体の事実関係について承知する立場にはございませんが、地方税の滞納については、公平公正な徴収事務を行ってその解消に努めていく必要があります一方、地方税法においては、滞納処分をすることによって滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは、その執行を停止することができるとされております。このため、一般論で申し上げれば、各地方団体においては、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で、法令に基づいて適正な執行に努めることが重要であると考えております。このため、総務省としては、地方税関連事務の執行に当たっての留意事項等を示した通知において、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で適正な執行に努めるよう示しているところであり、各地方団体においては今後とも関係法令やこの通知に沿って適切に対応していただきたい、このように考えているところでございます。
○宮本委員 通知が全然徹底されていないということなんだと思います。国税庁にお伺いしますが、そもそも、国税徴収法の第七十六条では、給与等の差押えの禁止を定めております。その理由を述べていただきたいと思います。あわせて、母六十歳代、子供三十歳代の二人の世帯の場合は幾らまでは差押禁止ということになるのかも紹介していただけますか。
○並木政府参考人 お答えいたします。納税者が支給を受ける給与等につきましては、その納税者の最低生活の維持等に充てるため、国税徴収法第七十六条において、差押えをすることができない金額が定められております。具体的には、給与等から差し引かれる所得税、住民税、社会保険料などに相当する金額及び一月ごとに納税者本人につき十万円、また生計を一にする親族があるときはこれらの者一人につき四万五千円を加算する金額などの一定の金額については差押えが禁止されているところでございます。御質問の事例の給与等については、一般論で申し上げますと、少なくとも、母親本人についての十万円と生計を一にする子供一人についての四万五千円の合計十四万五千円については差押えが禁止されることになるものと考えております。
○宮本委員 給与生活者の最低生活費程度に相当する金額については差押えは国税庁としては禁止をして、その基準の額も示されているわけですよね。ですから、この考え方からいったら、八万七千五百九十七円のパートの収入を差し押さえるというのは、これは絶対にやってはならないという事例だというふうに思います。現在の日本では、ほとんどのケースで給与収入は銀行口座に振り込まれているわけです。宮城県の機構のように、銀行口座に給与が入金されれば即差押えができるということになれば、この七十六条は死文化しているというようなものになってしまいます。総務省にお伺いしますけれども、七十六条で言われております給与の差押えの禁止を実現するためには、今回のケースなんかを見ても、滞納者は一体どうしたらいいのかということになってしまうわけですよ。会社からの現金による給与の支払いを要求するしかないということになってしまうんじゃないですか。
○稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。給与が振り込まれた預金については、給与の差押えとの関係について言えば、法令等において差押えは禁止されていないものの、滞納処分に当たっては、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で、法令に基づいて適正な執行に努めることが重要である、このように考えております。
○宮本委員 国税庁にもお伺いしたいと思いますが、この宮城県の機構のように、給与が振り込まれた預金口座というのは、国税庁も差し押さえるんですかね。差押禁止財産である児童手当の振り込まれた預金口座が差し押さえられた事案では、鳥取地裁、広島高裁の判決で、差押えは無効との判決が出ております。国税徴収法第七十六条の給与の差押禁止を考慮すれば、銀行口座に振り込まれたからといって預金を差押えするべきではないというふうに考えますが、この点、国税庁の見解はどうですか。
○並木政府参考人 お答え申し上げます。給与が振り込まれました銀行口座の預金と差押えとの関係について申し上げますと、法令等において差押えは禁止されてはいないものの、国税の滞納整理に当たっては、法令等を一律、形式的に適用するのではなく、滞納者個々の実情に即しつつ適切に判断することといたしております。したがいまして、国税当局といたしましては、例えば、残高のない銀行口座への給与の振り込みを待って、差押禁止額を含めていわば狙い撃ち的に差し押さえ、具体的に入金された差押金額が実際に使用できなくするような状況にすることは適切ではないというふうに考えておるところでございます。
○宮本委員 ですから、今、ないとか、あるいはほとんどないも含めてですけれども、国税庁としては、もともと口座にほとんどお金がないような状況で、給与が振り込まれたのを待ってそれを差し押さえるのは適切ではないと考えていると明確におっしゃっているわけですよね。総務省は、国税庁と同じように、明確な答弁はできないんですか。
○稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。総務省といたしましても、国税庁から先ほど御答弁があったのと同様、例えば、残高のない預金口座への給与の振り込みを待って、差押禁止額を含めて狙い撃ち的に差し押さえ、具体的に入金された差押禁止額が実際に使用できなくするような状況にすることは差し控えるべきであると考えているところでございます。
○宮本委員 残高が少ない場合はどうですか。
○稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。先ほど申し上げましたとおり、差押禁止額を含めて狙い撃ち的に差し押さえて、入金された差押禁止額が実際に使用できなくするような状況にすることは差し控えるべきであると考えているということでございます。
○宮本委員 現実にはそれと違う事態が広がっているわけですよね。これは、やはり総務省として、研修をやっているとか何だとかというお話がありましたけれども、給与収入が振り込まれた銀行口座の預金は差し押さえるべきではないんだというのをはっきり指導すべきだということを申し上げておきたいと思います。これは宮城県だけの問題ではありません。低所得者世帯に負担の重い国民健康保険の制度のもとで、全国的に滞納問題は深刻になっております。その中で、全国で強権的な差押問題というのが起こっております。昨年、京都地方税機構が、国保の滞納処分として、日本政策金融公庫が行う国の教育ローンが振り込まれた銀行口座を差し押さえました。その子供の専門学校の学費が期限内に納付できないという事態が発生しました。これは、京都府大山崎町に住むAさん、建設関連の自営業者で、四人の子供のうち、長女が専門学校に通っております。不安定な収入の時期に国民健康保険税の滞納が続き、京都地方税機構から滞納整理の督促が続いておりました。納付相談の後、子育て費用を維持しながら納付できる範囲での分納の計画を立てて、約束した金額をずっとこの方は払っておりました。ところが、昨年の春に機構は財産調査を実施し、取り立てる財産がないことを確認したにもかかわらず、返済額の、分納額ですね、返済額の増額を要求し、ついに、昨年六月十一日に、国の教育ローンが振り込まれた預金口座残高五十万六千百二十六円全てを差し押さえました。この銀行口座は、国の教育ローンが振り込まれた後、日本政策金融公庫への利払いと学費納付以外には使われていない、そういう口座であります。八月末、最終学年後期分の授業料約五十万円を払うために、何度も差押解除を求めたが、解除されずに、納期内に学費を払うことができなかった。とんでもない例であります。総務省に確認しますが、日本政策金融公庫が行う国の教育ローンというのは差し押さえることができるんですか。
○稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。教育ローンにより借り入れた資金については、法令上、差押えを禁止する規定はないことから、差押えをすることは可能であると考えております。
○宮本委員 とんでもない答弁ですね。国税庁に確認しますが、換価の猶予の申請書や納税の猶予申請書を提出する際に添付する財産収支状況書の支出欄に生活費の項目があります。これは最低限の生活を保障するための項目だと思うんですが、生活の維持のために必要不可欠な支出に教育費の項目も含まれております。ここには子供の大学や専門学校の授業料も含まれますよね。
○並木政府参考人 お答えいたします。納税者の負担を軽減し、早期かつ的確な納税義務の履行を確保するため、国税庁としては従来から、納税者個々の実情を十分に把握した上で、納税緩和制度を適切に運用しているところでございます。猶予制度の適用に当たりましては、納税者から、換価の猶予申請書や納税の猶予申請書とともに、今御指摘のございました財産収支状況書の提出も求めているところでございまして、その中で、税金の納付可能基準額を算出するために、三という欄で、今後の平均的な収入及び支出の見込金額(月額)を記載してもらいますが、その支出欄の生活費には、納税者及び納税者と生計を一にする配偶者その他の親族の年齢、所有資産、健康状態などの事情を勘案して、教育費や養育費など生活の維持のために必要不可欠な支出として、必要最低限の所要資金の額を加算することができることとしておりまして、その教育費には子供の大学や専門学校の授業料も含まれているところでございます。
○宮本委員 含まれるわけですよね。そうすると、国税庁は、子供の大学や専門学校の授業料のために保管している銀行口座の預金を差し押さえることはしないということでよろしいですね。
○並木政府参考人 お答え申し上げます。授業料のために保管されている預金は差押禁止財産とされてはいないものの、国税の滞納整理に当たりましては、法令等を一律、形式的に適用するのではなく、滞納者個々の実情に即しつつ適切に判断することとしている点は、先ほどお答えしたものと同様でございます。
○宮本委員 つまり、確認しますけれども、子供の大学や専門学校の授業料のために保管している銀行口座の預金を差し押さえるということは、国税庁はやっていないわけですよね。
○並木政府参考人 お答え申し上げます。まさに、法律、法令等を一律、形式的に適用するのではなく、滞納者個々の実情に即しつつ適切に判断しているというところが実態でございます。
○宮本委員 いや、ですから、適切に判断するということになれば、先ほど国税庁は、納税の猶予や換価の猶予の際に授業料のこともちゃんと考慮するんだという話がありましたから、これは当然、子供の大学や専門学校の授業料のために保管している銀行口座の預金は差し押さえていないんじゃないですか。これ、先ほどの説明と矛盾するんじゃないですか。差し押さえないということですよね。
○並木政府参考人 お答え申し上げます。差押禁止財産とされていないわけですけれども、国税の滞納整理に当たっては、法律を一律、形式的に適用するのではなく、まさに滞納者個々の実情に即して適切に判断しておりまして、それに応じて差押えを行わない場合もあるし、もちろん、場合によってはその実情に応じて差押えをすることもあるということが、それがまさに実態でございます。
○宮本委員 いやいや、今の話では、子供の大学や専門学校の授業料のために保管している銀行口座の預金を差し押さえることもあるということですか、国税庁は。
○並木政府参考人 お答え申し上げます。まさにその個々の実情に応じてということでございまして、その振り込まれた金額なりが授業料に充てられるということが事前にわかっておれば、当然、そうしたものを差し押さえることは行わないということでございます。
○宮本委員 ありがとうございます。つまり、授業料に充てることがわかっていれば差し押さえないということなんですよね、国税庁は。ところが、先ほど総務省は、差し押さえることができると答弁をされているわけですけれども、これは国税庁と同じように、差し押さえるべきじゃないんじゃないですか、はっきりと子供の専門学校や大学の授業料のために使っている口座のお金だとわかっていたら。違いますか、総務省。
○稲岡政府参考人 お答えを申し上げます。先ほど国税庁から御答弁があったとおり、授業料のために保管されている預金は差押禁止財産とはされていないものの、地方税においても、滞納処分に当たっては、各地方団体において滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で適正な執行に努めていただくことが重要であると考えております。
○宮本委員 総務省のおっしゃっていることは、今国税庁が最後に述べられたことと違うんですよね。国税庁は、授業料のために保管している銀行口座だとわかっていれば差し押さえないと言ったんですよ。何で同じ立場に立たないんですか、総務省は。おかしいじゃないですか。何が起こるのかというのが問題なんですね。国の教育ローンが振り込まれた預金口座を全て差し押さえると、学費は払えず退学になります。そして、国の教育ローンの特約条項によればどうなっているのか、これは財務省に確認したいと思いますが、教育ローンで授業料を払わずに退学になるということになったら、期限の利益は喪失され、一括返済が求められる、こういうことになるんじゃないですか。財務省、仕組みを説明してください。
○市川政府参考人 お答え申し上げます。当公庫が実施いたします国の教育ローンは、主に学生生徒の保護者の方々向けに高校や大学等の入学資金や在学資金を融資するものでございまして、本資金につきましては、目的外流用を防ぐ観点から、契約書の中で、借入金を公庫が認めた資金使途以外に使ったとき又は借入れ後長期間使わなかったときには一括弁済を請求できるという特約条項を設けております。ただいま御指摘のございました退学につきまして、一般論として申し上げますと、仮に私どもが退学という事実を把握した場合においても、それで自動的に一括弁済を求めるということではなくて、資金の使用状況を確認いたしまして、目的外流用がなされていないか、また、どれだけの使い残しがあり、目的外流用のおそれがないかなどの点を踏まえまして、一括弁済を求めるか否かを検討することとしております。なお、一般に公庫が繰上げ返済を求める場合でも、常に硬直的に一括返済を求めるということではなく、確実な弁済確保の観点から、お客様から十分信頼できる申出があれば、お客様の個別事情や御要望をお伺いしながら丁寧に対応することといたしております。私どもとしては、こういう方針でやっておりますが、仮にそうでないというケースがあるという御指摘でございましたら、早急に調べさせていただきたいと存じます。
○宮本委員 今回のケースで一括返済を求められたということを私は言っているわけじゃないんですよ。仕組みとしては、一括返済を求められるという特約条項になっているわけですよね。今回のこの方の場合は、ほかに、知り合いに借りてお金を賄って、分割して授業料を納めたんですよ。そうしないと、子供のために親も必死ですからそうなりますけれども。本来、国税庁が差し押さえないと言っている大学や専門学校の授業料のための口座を差し押さえる、国の教育ローンを差し押さえるなんて、絶対にあってはならないわけですよ。時間が少なくなってまいりましたから、麻生大臣とあと総務副大臣に今までのやりとりの感想をお聞きしたいと思いますが、給与あるいは教育ローンが振り込まれた銀行口座を差し押さえる地方税あるいは地方の国民健康保険税の滞納処分について、これはあってはならないということだと思いますが、まず麻生大臣、いかがですか。
○麻生国務大臣 これは地方税の話で、当局の対応についてのコメントは差し控えさせていただきます。また、国税庁が先ほど答弁しておりましたように、国税の滞納整理というのに当たりましては、これは滞納者のいわゆる個々の実情に即して、当然のこととして法令に基づいて適切に対応しているものと承知をいたしております。財産の差押えに当たりましても、これは滞納処分に関する法令を一律、形式的に適用するのではなく、いわゆる実情に応じて適切に判断する必要があるだろうと考えております。
○宮本委員 総務副大臣にもお伺いしますが、国税庁は、教育ローンが振り込まれた口座、これは授業料に充てるというのがわかっている口座については差押えをやっていないという答弁がありました。しかし、総務省は、禁止財産、だからできるという答弁しかされないわけですね。基本的には、児童手当なんかと同じように、これは差し押さえるべきでない。子供の教育を受ける権利というのは、やはり憲法で保障されて、守らなきゃいけないものですから、これは総務大臣とも相談して、省内で、国税庁同様、授業料に充てる口座とわかっていたら差し押さえない、こういう通知は、やはり地方自治体への徹底は最低限やるべきだと思いますが、いかがですか。
○鈴木(淳)副大臣 まず、滞納処分に関する個別事案でございますが、これは個別性、具体性が強い問題で、各地方団体の税務当局の判断と責任において対応されるべきものと考えております。事務方から答弁しておりますとおり、地方税の滞納につきましては、公平公正な徴収事務を行いその解消に努めていく必要がありますが、その一方で、地方税法におきましては、滞納処分をすることによって滞納者の生活を著しく窮迫させるおそれがあるときは、その執行を停止することができるとされております。先ほど答弁したとおり、総務省としましては、地方税関連事務の執行に当たっての留意事項を示した通知を出しておりまして、納税者の個別具体的な実情を十分に把握した上で適正な執行に努めるよう示しているところでございまして、各地方団体におきまして、関係法令や通知に沿って適切に対応していただきたいと考えております。今後とも、機会を捉えてこの旨を地方団体に周知するとともに、地方団体の職員を対象とした徴収事務に関する研修を通じまして、徴収事務に従事する職員の資質向上に努めてまいりたいと思います。
○宮本委員 ですから、国税庁はやっていないわけですよ。その点をぜひ総務省内でも検討してください、国税庁ではやっていないんだと。今、一般的な回答をされましたけれども、国税庁では、授業料のための口座だとわかっていたら、それは差し押さえない。実際にやっていないわけですから。だけれども、実際は、地方自治体ではやられているわけですよ。何で、国がこれはやっちゃいけないと思っていることが許されるのか。そこをちゃんと省内で検討すると、それだけ答弁ください。
○坂井委員長 宮本君、申合せの時間が過ぎておりますので。では、一言だけ。
○鈴木(淳)副大臣 先ほど来答弁の中にありますように、その趣旨を含んだ形で研修も行っておりますので、御理解賜りたいと思います。
○宮本委員 終わります。