2019年11月22日衆院厚生労働員会 パワハラ指針案で「該当しない例」削除を 

 日本共産党の宮本徹議員は22日の衆院厚生労働委員会で、21日から意見公募(パブリックコメント)が始まったパワハラ指針案の「パワハラに該当しない例」は、使用者に誤解や弁解・正当化の余地を与えると批判し、削除を求めました。
 同指針案は、経営者(使用者)にパワハラ防止のための措置を義務付けるもの。21日の厚労省労働政策審議会分科会で指針案を取りまとめ、「該当しない例」から、10月の素案にあった「経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務に就かせること」を削除しました。
 その理由について、厚労省の藤沢勝博雇用環境・均等局長は、宮本氏が10月30日の質疑で「違法な配置転換、降格、リストラの弁解に使われる」と指摘したことに触れ、「そうした誤解を招く可能性があり、削除した」と説明しました。
 宮本氏は、「懲戒処分に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること」についても、「JR西日本福知山線の大事故の要因となった『日勤教育』のようなパワハラ研修が正当化されかねない」と削除を要求。パブコメの意見をよく反映させることも求めました。
 また、指針案では「職場」が「業務を遂行する場所」と定義されており、飲み会や休日、私的領域での行為には使用者の義務がないと誤解を生む危険があると指摘。「もっと踏み込んで明示的に書くべきだ」と強く求めました。

以上2019年11月23日付赤旗日刊紙より抜粋

≪第200回2019年11月22日衆院厚生労働委員会第6号 議事録≫

○盛山委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。きょうは桜ではありません。まず、介護分野での人材確保にかかわって伺います。人材確保が大変な中で、人材紹介会社からの紹介や派遣会社からの派遣に頼らざるを得ない、こういう事態が生まれております。この間、幾つかの特養ホームの施設長さんからお話を伺いましたけれども、複数の法人で、年間の人材紹介会社に払っている紹介料が一千五百万だ、こういうお話も伺いました。聞きましたら、介護人材の紹介手数料の相場はこの間高くなっていて、以前は年収の二〇%だった、ここのところは年収の三〇%になり、中には三五%を吹っかけてくるところも出てきたという話であります。それで、人材紹介会社の方は、紹介すればするほどもうかりますから、就職お祝い金を十万円上げますということで人を集めてやっているということであります。この一千五百万円払う手数料は本来職員の賃金やあるいは入所者のサービスに回すべきものだと、悔しそうに皆さんおっしゃっておられます。一千五百万円で直接雇用できれば、何人も職員の増員が実際は図れるわけです。そして、人材紹介会社からの紹介の人は、早期に退所する方が少なくないとも伺いました。中には、紹介した会社側に違約金が発生する六カ月を過ぎたらすぐに退職する、こういうケースも間々あるということです。紹介料の荒稼ぎの手口ではないかという指摘も出ております。配付資料をお配りしましたけれども、政府の職業紹介事業報告書の集計、この数年分を並べてみましたけれども、介護人材の紹介人数は、この二〇一四年から二〇一七年の三年で三倍にふえております。手数料の徴収の総額は、二〇一四年度の二十五億が二〇一七年度は百二十億円と五倍近くにふえている。これだけでも、この分野が人材紹介会社からはいかに稼ぎ口になり、そして手数料は高騰しているということもうかがえると思います。恐らくこれは、二〇一八年、二〇一九年と、もっと上がっていっているのではないかと思います。あるいは、人手不足で派遣会社頼みになっている法人では、都内でいえば、年間最高一億円を超す派遣料を支払っているという話も伺いました。派遣会社に一時間二千五百円ぐらい払っているという話であります。大臣の問題意識も伺いたいと思うんですけれども、本来職員の賃金や入所者のサービスに回すべき介護報酬が人材紹介会社への手数料やあるいは派遣会社へのマージンにどんどんどんどん消えていってしまっている、これは大変問題だという認識があるでしょうか。
○加藤国務大臣 問題は、何でそういうお金の使い方になるかということですよね。そこにはやはり、今委員も御指摘になった、介護であり保育であり、これは医療の分野でも指摘をされておりますけれども、そういったところの人手不足ということを背景に、どうしても人を集めていかざるを得ない。そうすると、一般、もちろんハローワークとかいろいろやっていますけれども、それ以外の手段として、こうした紹介業というんでしょうか、それを活用せざるを得ず、そして、その結果として、今委員御指摘のような形で費用が積み上がってきている。したがって、私どもとしては、まず、その根本である人手不足という中で、介護職であれば、介護職の処遇改善とか、いかに魅力ある仕事にしていくかとか、あるいはその人材の確保のための修学資金の貸付けとか、そういった多様な手段を講じることによっていかに人材を確保していくのか、また他方で生産性を上げていく努力をしていくのか、こういったことが必要なんだというふうに思っています。
○宮本委員 処遇改善するのは当然必要なことなんですけれども、どんどんどんどん紹介手数料も上がっているという現状があるわけですよ。私なんかが伺っていると、やはりこういうのはちゃんと規制をしてほしい、ルールを設けてほしいというお話も伺います。人材紹介会社の届出制が導入される前は一律で上限手数料というのが決まっていたわけですよね、収入の一〇%程度だと。あるいは、人材紹介の業種から介護だとかそういうところについてはオミットできないか、こういう声も聞いております。ぜひこの分野での規制というのを検討していただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 結果的に、全体の労働需給の中で事が動いているので、ここだけ規制してうまくいくんだろうか、逆に言えば、こうした形をとることによって多くの人材を残念ながらコストはかかりながらも確保している、そうしたところも困難になってしまうのではないか、そういうふうにも思うわけでありまして、やはりここは王道として、先ほど申し上げた処遇の改善とかあるいは研修をしていくとか等々で介護あるいは保育に係る人材を確保していく、それに至らないと、結果的にどこかでこうしたことは起きてくるのではないかなというふうに思います。
○宮本委員 これを規制したからといって、逆に確保に困難が生じないと私は思いますよ。もともと野放しではやられていなかったわけですから、この人材紹介業というのは。規制緩和の中からこういう仕組みができ上がったわけじゃないですか。これをもとに戻したからといって、それぞれの事業所で人材の確保をハローワークを通じてやればいいわけですよ。今はハローワークからはなかなか集まらないわけですよ。さっきも言いましたけれども、人材紹介会社を通じて就職したら、六カ月たてば十万円上げますよ、こういうことがやられているわけですよ。それの全部、原資は介護報酬であり、本来だったら職員に支払われるものがそっちに回っているわけですよ。現場の介護を担っている法人の皆さんは本当に悔しい思いで今やっているわけですよね。ですから、ここは真剣に、今調査もやられていると思いますので、どうしたらいいのかというのを考えていただきたいというふうに思います。それからあと、人手不足の問題で、処遇の改善が王道だとおっしゃいました。その点は全く私も同じ思いですが、伺っている話では、ケアマネが幾ら募集しても集まらないという話をこの間伺っております。ケアマネの資格を持っていても、ケアマネの方にならずに特養の介護の職員になるという話なんですよね。以前は、特養ホームなどで介護職員の経験を積んでから、キャリアアップじゃないですけれども、ケアマネになって、そっちの方が収入が多かったわけですけれども、今、介護職員の処遇改善が進む中で、実は、介護職員をほんの数年勤めたらケアマネよりも収入が多くなるというケースもかなり出てきております。実際、政府の統計を見ましたら、ケアマネの試験を受ける人も激減しているんですね。おととし十三万一千人いた受験者は昨年四万九百人になった、ことしは、まだ集計中だけれども昨年程度という報道があります。ケアマネは、介護が必要な人に対して本当に一人一人に合ったケアプランを作成して、さらに利用者と事業者の間の調整役となっていく、なくてはならない専門家だと思っております。ですから、今、介護職員の処遇改善加算をやられていますけれども、私は、ケアマネも対象にするなどして、ケアマネの処遇改善も緊急に必要じゃないかと思いますが、いかがでしょうか、大臣。
○加藤国務大臣 ケアマネジメントは、要介護者に対するケアプランの作成やサービス事業者との連絡調整等を行う、この仕組みにおいて大変重要な役割を担っているというふうに思いますし、また、近年、さらには医療機関等との連携等、その役割もふえ、業務がふえている。そういう中で、業務負担の軽減や今御指摘があった処遇改善の話も出ているというふうには承知をしております。現在、社会保障審議会介護保険部会では制度見直しの議論を行っておりますけれども、適切なケアマネジメントを実現するためには、ケアマネジャーの処遇の改善等を通じた質の高いケアマネジャーの安定的な確保を図る必要、事務負担軽減等を通じたケアマネジャーが力を発揮できる環境の整備等を図る必要があるとの御意見もいただいておりますので、これを踏まえながら、しっかりと対応を考えていきたいと思っております。なお、介護職員の処遇改善加算については、加算制度を入れるときには、少なくとも介護職員の賃金が介護現場で働く他の職種と比較して低いということを踏まえて、介護職員が従事する事業者を対象として、介護職員への賃金改善効果を生むべく実施をしてきたということでございますので、当時は、賃金でいえば、ケアマネと介護職員と比べるとケアマネジャーの平均賃金の方が一定高かった、こういう認識であります。
○宮本委員 処遇改善加算を入れたときはそうかもわからないですけれども、今は実際はそうじゃない事態が生まれていますので、そこを踏まえた改善をお願いしたいと思います。それから、ヘルパーもなり手がいないというのはここでも議論になってまいりましたけれども、ヘルパーさんの処遇改善、確保策についてもお願いしたいと思います。それからあと、障害者福祉のことについてもお伺いしますが、この分野でも人手不足が本当に深刻です。とりわけ、障害者福祉の現場は、障害者福祉に理解がある人、そういう人材じゃなきゃだめなわけですよね。ところが、そういう人材の確保に本当にここのところ苦労しているというお話をたくさん伺います。十月から特定処遇改善加算が始まりました。これは介護と同時に障害者福祉も同じように始まったわけですけれども、私も歩いて聞いていますと、介護の方は、結構みんな、いろいろ複雑で面倒なところはあるけれども、一生懸命とろうとしてやっていらっしゃいます。ところが、障害者福祉の方は、人材確保が切実なのに、まだ申請していないところが少なくないです。いろいろ伺うのは、条件が厳し過ぎる、柔軟にしてほしいという声を聞くわけですよね。今回、経験、技能のある方は他の方の二倍以上の処遇改善にしなければならないというルールがあるわけですけれども、障害者福祉の現場の場合は、一つのところで働いている方も大勢じゃないです。少ないですよね。十人前後というところが多いわけですよね。そういう中で、小さな職場で一緒に同じような仕事をしているのに、リーダー格の人だけどんと賃金を上げたら、それこそチームワークで仕事をしている職場がおかしくなっちゃう、壊れちゃう、こういう話も伺います。それから、現行の処遇改善加算の一から三をとっていない事業所は特定処遇改善加算をとれない。しかし、現行の処遇改善加算の一から三をとっていない事業所が今現状でも二割あるわけですよね。こういうところはただでさえ賃金が低くて、人材確保に苦労しているわけですけれども、苦労しているところほどとれない。さらには、制度が複雑過ぎて、話を聞いても、本当にどうすればいいのかまだ思案中だという話もたくさん伺います。ですから、大臣にお願いしたいのは、この特定処遇改善加算について、障害者福祉の分野の取得状況、何に困っているのか、こういう実態を早急につかんでいただきたいと思うんですよ。そして、取得要件の柔軟化や取得に向けた支援など、ぜひ検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○加藤国務大臣 今御指摘の仕組みは、この十月から、リーダー級の職員について他産業と遜色ない賃金水準を目指して、経験、技能のある職員に重点化するということで、特定処遇改善加算ということで創設をしています。この障害福祉サービス等を提供する事業所に多様な役割を担う職員がいることを踏まえて、事業所内配分における職員分類について柔軟なルールを、これは介護よりもむしろ柔軟と言ってもいい部分があるのではないかなというふうに認識をしておりますけれども、また、本年八月には申請時に必要な書類の作成を支援するツールを配付するなど、加算の申請に係る事業所の負担軽減も行っております。今、状況の把握ということでありますけれども、十月にスタートしておりますので、通常のサイクルであれば、今年度末ごろに加算をしているかどうかの状況がわかってくるというふうに思います。いずれにしても、そうした状況をしっかり把握して、加算の取得促進に取り組んでいきたいと思っております。
○宮本委員 介護よりも柔軟にしているんだというお話や、あるいは支援もしているんだという話ですけれども、それでも、私が歩いた肌身の感覚として、私も地元しかわからないですから、全国はどうなっているかというのは統計をとらなきゃわからない話なんでしょうけれども、私が歩いて肌身で感じることでいえば、大変苦労されているところが多いと思いますので、本当に丁寧に実態をつかんで、早急な改善策、支援策をお願いしたいというふうに思います。次に、何人かの委員も質問されておりましたけれども、パワハラ防止指針についてお伺いしたいと思います。一昨日の労政審でパワハラ防止指針の案が確認をされました。素案の段階で、私もこの場で、パワハラに該当しない例、これは大変問題だということを指摘しました。そして、素案にあったパワハラに該当しない例のうち、今回、経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務につかせること、これは削除されました。この理由について説明していただけるでしょうか。
○藤澤政府参考人 御指摘の一昨日の雇用環境・均等分科会では、職場におけるパワーハラスメント防止のための指針案について御議論いただきまして、パブリックコメントの手続を進めることについて御了承いただきました。指針案では、十月二十一日の分科会でお示しをしました指針の素案において、パワハラに該当しないと考えられる例としてお示しをしておりました、今おっしゃいました、経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務につかせることという例は削除をさせていただきました。この例に関しましては、先般、今おっしゃいましたように、委員からもこの場で御指摘がございました。その際には、違法な配置転換や降格といったようなことを正当化する趣旨ではありませんということを御説明申し上げたところではございますけれども、そうした誤解を招く可能性もあり、また、端的にこれを修正することも困難と考えられましたことから、該当しないと考えられる例からは削除させていただいたところでございます。
○宮本委員 誤解を招く可能性があると。これをパワハラに該当しない例と載せたら、これはやっていいのかと誤解されたらだめだということで削除したんだと思うんですね。同じ基準で、ぜひほかの該当しない例についても見直していただきたいというふうに思います。該当しない例は、ほかは全部残っているわけですよね。それについて、報道を見ていましても、大変不安の声が出ています。悪用されて、これはパワハラではないとして、より陰湿な行為が横行しないか、あるいは、該当しない例を根拠に相談窓口で門前払いされないか、こういう声が上がっております。例えば、該当しない例で少し文言が変わって残っているのはこれがありますね。懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせること。JR福知山線の大事故のときに、JR西日本の日勤教育というのが大問題になりました。パワハラに該当しない例としてこの文言が代表格として残ると、このJR西日本の日勤教育のようなパワハラ研修が正当化されかねない。誤解を招くものは削ったということだったら、この例も私は削ってしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○藤澤政府参考人 今おっしゃいました項目につきましては、前々回、十月二十一日の分科会の素案では、処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させる前に、個室で必要な研修を受けさせること、そういう記載をしていたところでございます。一昨日の分科会でお示しをしました指針案では、この事例につきまして、恣意的な処分ではないことや一時的な対応であることが明確になるように修正をいたしました。懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常の業務に復帰させるために、その前に、一時的に別室で必要な研修を受けさせることと記載ぶりを修正をさせていただいたところでございます。また、指針案におきましては、こうした例に関します記載の前提といたしまして、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ることなどに十分留意し、広く相談に対応するなど、適切な対応を行うようにすることが必要という旨も記載をしております。さらに、事実関係の確認に当たっても、相談者と行為者の双方から、また、必要に応じて第三者からも確認する等により、迅速かつ正確な確認を求めているところでございます。先ほど申し上げましたように、一昨日の分科会で指針案につきましてパブリックコメントの手続を進めることが了承されたところでございます。今後、審議会での最終的な結論を踏まえて、指針を策定してまいりたいと考えております。
○宮本委員 そういう議論があったことは知っての上の質問なんですよね。JR西日本でも、ミスを理由にとんでもない日勤教育がやられて、それが事故につながったということがあるわけですから。パワハラの正当化、弁解に使われる可能性があるもの、過去のいろいろな事例を調べて、使われる可能性があるものはやはり該当しない例というところに載せるのは私はやめるべきだと。パブコメが始まっておりますので、いろいろな意見が寄せられると思いますので、ぜひ、寄せられた意見に基づいて修正していただきたいと思います。それからもう一点、職場のパワハラということなんですけれども、職場の定義が、業務を遂行する場所と定義されております。しかし、実際は、パワハラは職場以外でも起きており、そして、裁判でパワハラと認定されて、会社の損害賠償責任が認められた例というのはたくさんあります。ちょっと紹介したいと思いますが、サン・チャレンジ事件というのがあります。上司に仕事以外の場面で日常的に使い走りをさせられた、これはパワハラと認定されて、会社は安全配慮義務違反とされて損害賠償責任が認められております。それから、北本共済病院事件。先輩看護師が後輩看護師に、家の掃除、車の洗車、長男の世話をさせる、デート中に呼び出すなど、いじめを行って、これが裁判でいじめだと認定されて、病院の安全配慮義務違反として損害賠償責任が認められております。それから、コンビニエース事件や日研化学事件などでは、居酒屋での説教、これも説教パワハラだということで裁判で認定されているわけですよね。ですから、業務を遂行する場所以外、居酒屋でも、あるいは休日や、私的領域でもハラスメントというのは起きているわけです。しかも、それは、裁判でハラスメントと認定されているものがたくさんあります。こうした面でも当然使用者は防止の責任をとらなきゃいけないと私は思いますが、大臣、いかがですか。
○藤澤政府参考人 職場でございますけれども、事業主が雇用する労働者が業務を遂行する場所を指し、当該労働者が通常就業している場所以外の場所であっても、当該労働者が業務を遂行する場所については職場に含まれるというふうな記載に今回の案ではしてございます。これは、昨年十二月の労政審の建議でありますとかあるいはこれまでの分科会の議論を踏まえてこのような記載にさせていただいているわけでございますが、この点につきまして、職場におけるセクシュアルハラスメントの防止のための指針においても同様の記載が行われておりますけれども、その解釈通達において、業務時間外の宴会等であっても、実質上職務の延長と考えられるものは職場に該当することとされているところでございます。この職場におけますパワーハラスメントの防止のための指針の解釈につきましても、今申し上げましたセクシュアルハラスメントと同様の整理を今後解釈通達でお示しをしたいと考えているところでございます。
○宮本委員 宴会等、実質的に業務の延長だったらそうなると。ところが、家で掃除をさせる、車の洗車をさせる、長男の世話をさせる、こういうことを先輩後輩の関係を使ってやられているわけですけれども、これは裁判ではいじめだ、ハラスメントだと認定されているわけですけれども、こういうものはどう解釈されるわけですか。
○藤澤政府参考人 申しわけありません、今の御質問を正確に理解しているかどうかわかりませんが、パワーハラスメントについて、法律で定められました三つの要素に該当する場合はパワーハラスメントになるということでございます。
○宮本委員 解釈通達でそういうふうに書くというお話なんですけれども、私は、やはりこの防止指針にちゃんと書かないと、解釈通達まで一つ一つの会社で見て対応を具体化していくというところに本当になるのかなと思いますよ。やはり防止指針そのものに明示的に、職場は業務を遂行する場所だということよりももっと踏み込んで書くべきだと私は思います。そうしないと、居酒屋だとか休日だとか、私的領域のハラスメントについて、これは相談が来ても対応しなくていいものだと誤解が生まれる可能性があるわけですよね。あるいは、防止義務は会社にないんじゃないかと誤解を生む可能性があるわけですよ。ですから、解釈通達だとかよりも、ちゃんと防止指針にしっかりと書いていく必要があるということを申し上げておきたいというふうに思います。ちょっと残り時間が少なくなってまいりました。一年単位の変形労働時間制について伺いたいと思います。教員に一年単位の変形労働時間制を導入する給特法改正案が、今週衆議院で採決をされました。労基法では、一年単位の変形労働時間制の導入には当然労使合意が必要になっております。ところが、この給特法の改正案では、労使合意抜きで自治体の条例で導入することが可能になっているわけですね。労基法の原則に照らして大変な問題だと私は考えております。ちょっと確認いたしますけれども、労基法三十二条の四で変形労働時間制を導入する際に、なぜ労使協定を必要としているのか。端的に説明していただけるでしょうか。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。委員お尋ねの労基法三十二条の四ということで、これは一年単位の変形労働時間制ということでございまして、一カ月を超える一年以内の期間を平均して一週間当たりの労働時間が四十時間を超えないことを条件として、業務の繁閑に応じ労働時間を配分するということを認める制度でございます。この制度につきましては、設定できる変形期間の最長期間というものが一年と長いということで、弾力化の度合いが高いということで、制度を導入するに際しましては労使協定の締結を必要としているものでございます。
○宮本委員 つまり、歯どめとして、労働者の集団的な同意を必要としたということだと思うんですね。ところが、今回は、教員、公務員については、同意なく、条例でできるようにする、歯どめを取り払うということになっているわけですよね。もう一つ確認しますけれども、労基法の三十六条は、公立学校教員を含む地方公務員は地方公務員法上適用除外になっていますか。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。労働基準法三十六条でございますが、これは、使用者が法定労働時間を超えて労働させる場合、又は休日に労働させる場合には労使協定の締結を必要とすることなどを定める条文、いわゆる三六協定と言われるものに関する条文でございます。お尋ねは、地方公務員法の問題でございますが、同条につきましては地方公務員法においては適用除外とはされていないものと私どもは承知をしております。
○宮本委員 地方公務員法上の適用除外になっているわけじゃないんですね。ですから、三六協定は公立学校の現場でも結ぶことは可能なんですよ。労使協定を結ぶことは可能なんですよ。ですから、労使協定を結ぶことが公立学校の現場でも可能にもかかわらず、なぜ今回、条例だけで自治体が学校現場に、先生たちに一方的に一年単位の変形労働時間制を押しつけることができるのか。労基法の基本的な原則からいっても、とても許されるものじゃないというふうに考えております。大臣に伺いたいと思いますけれども、大臣は労基法を所管しております。一年単位の変形労働時間制は、労使協定もなしに公立学校の現場に導入すべきじゃないんじゃないですか。
○加藤国務大臣 今回の公立学校の教職員に導入する目的は、長期休業期間を活用して一定期間集中して休日を確保することである、そう承知をしておりまして、そういう観点から、そもそも地方公務員は適用が除外されているものを公立学校の教職員に限って適用可能とし、そして、その適用に当たっては今委員御指摘のように労基法上は労働組合との書面による協定が必要になっておりますけれども、地方公務員の勤務条件については、勤務条件条例主義というのがあって、それにのっとって対応されているというふうに承知をしております。
○宮本委員 ですけれども、勤務条件条例主義があるからといって三六協定を結んじゃいけないというルールはないわけですよ、公立学校の教員だって。条例で決める、そういうルールがあるのは知っていますよ。だけれども、三六協定自体は結べるわけですから、条例で決めるだけじゃなくて三六協定も必要だと加藤厚生労働大臣が言えばいい話じゃないですか。私はそう思うんですけれどもね。ですから、これはやはり三六協定もなしに導入すべきでないという立場にぜひ立っていただきたいと思うんですよね。時間が終了しましたというペーパーが来ちゃったのであれですけれども、もう一問、本当は後期高齢者医療制度の二割負担の導入の問題についても質問したいと思っていたんですけれども、時間がなくなってしまいました。二割に引き上げるという議論が全世代型社会保障検討会議でやられていて、そのニュースを見て、大変不安が広がっております。先週末も私も車座集会に出ていましたら、七十四歳の方が涙ぐんで訴えていましたよ。この一年で帯状疱疹などで三回入院した、自分は体が頑丈だと思っていたけれども、やはり年をとれば病院にかかることがふえる、年金から引かれるものがどんどんふえる中で、二割負担になったらどうやって暮らしていけばいいのか、こういう声も聞きました。ぜひ、二割に窓口負担を引き上げることはやらないという立場で頑張っていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。