子どもの歯の矯正 保険適用に 「治療」に重い負担
学校の健康診断で要治療となった子どもの歯の矯正は、保険適用にしてほしいー。山梨県北杜市の小尾直子さんの訴えから始まった署名が、8万1000人にまで広がっています。小尾さんは1月15日、橋本岳厚生労働副大臣に直談判。橋本副大臣は「保険適用されないのはスジが通らない」と改善を約束しました。
小尾さんの長男(高3)は中学2年のときの歯科健康診断で、「歯列・咬合」が「要受診」という結果の「お知らせ」を学校からもらいました。「お知らせ」には歯科を受診し、結果を学校に提出するよう書いてありました。
虫歯の治療の折に歯科医師に矯正の費用を相談することもありました。矯正は保険適用とならず自己負担です。精密検査だけで5万5千円。矯正費用は30万~70万円。毎回の診察も5000円から1万円で、総額65万~95万円かかることがわかりました。
小尾さんは母子家庭。本業だけでは生活費が足らず、アルバイトをする生活です。学校に出す受診結果には、「経過観察中」と書いてもらいました。
小尾さんの長男は以前、「もしおれが宇宙飛行士になりたくても、歯が悪いから、なれないな」と話したことがあります。「歯並びが悪いことで子どもの夢が壊され、将来の職業選択に影響が出ることもある。息子が笑ったときの歯並びを見るたびに苦しい思いになります」
共感広がり署名8万人
保険適用を求めて1人で自治体に請願を出すなかで共感が広がり、2017年1月、「保険適用拡大を願う会」が発足。昨年1月からとりくんだ「子どもの歯科矯正に保険適用の拡充を求める」国会請願署名は8万1000人にのぼりました。地元自治体や国会議員、日本学校歯科医会などの関係団体に要請を続けています。
検診項目作成に関わる日本学校歯科医会に「保険が適用されないのになぜ『歯列・咬合』の項目があるのか」と聞くと「歯並びが悪いと全身に影響を及ぼすため、項目から抜くことはできない」と言われました。
日本共産党の宮本徹衆院議員も同席した、橋本副大臣との面談で小尾さんは訴えました。「費用の負担が高額で治療に踏み切れない親子は周りにも多くいます。2人の子どものうちの1人しか治せない、という声も聞きました。学校検診で要治療と通知されれば、治療に該当します。治療が必要な場合は保険適用にしてほしい」
検診項目は厚労省とも協議して決めています。学校検診で要治療となる項目では、「歯列・咬合」以外に保険が適用されない項目は「ない」と橋本副大臣。
英国参考に判断基準を
歯科矯正の保険適用範囲は手術など外科的治療が必要なごく狭い範囲に限られています。通常は「美容」のためとして保険適用外です。小尾さんは「イギリスが使っている指標などを参考に治療の判断基準をつくってほしい」と求めました。
橋本副大臣は「学校から要治療と指摘され、受診結果を出せというものに保険が適用されないことはスジが通らない」とのべ、「関係団体と調整したい」と応じました。
小尾さんは「子どもはすぐに大きくなります。子どもの健康のために、今すぐにでも保険適用を拡大してほしい」と14日に再度要望書を届けに行く予定です。
以上2020年2月4日付赤旗日刊紙より抜粋