2020年2月28日衆院予算委員会 一斉休校要請のエビデンスをただす  フリーランス含め補償を 

 日本共産党の宮本徹議員は28日、衆院予算委員会で2020年度予算案の締めくくり総括質疑に立ち、新型コロナウイルスの感染防止対策として安倍晋三首相が27日に表明した、小中学校、高校、特別支援学校の全国一斉臨時休業の実施要請に対し、現場に混乱が生じていると指摘し、子どもの預け先への支援や労働者の休業補償など対策を求めました。
 政府が25日に発表した新型コロナウイルス感染症対策本部の基本方針では、学校の休校は感染の広がりに応じて都道府県が判断するとされていました。宮本氏は「わずか2日間で方針が変更された」と述べ、判断変更の科学的根拠を示すよう求めました。安倍首相は方針変更の根拠を示せず「政治の判断」と繰り返しました。
 宮本氏が一斉休校要請の法的根拠についてただすと、安倍首相は「法的拘束力はない」と答弁。宮本氏は「現場が柔軟に対応できるようにすることが大事だ」と強調しました。
 政府は、子どもの預け先として、学童保育や放課後デイサービスは開設時間を延長するよう求めています。
 宮本氏が、人員確保など体制整備が容易でないと強調したのに対し、安倍首相は「地域の実情に応じて柔軟な対応ができるようにする」と答えました。
 さらに宮本氏は、パートやフリーランスなどで働く人への休業補償も必要だと指摘。安倍首相は「雇用調整助成金制度の拡充・補完を含め検討する」と応じました。

以上2020年2月29日付赤旗日刊紙より抜粋

≪第201回2020年2月28日衆院予算委員会第18号 議事録≫

○棚橋委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。きょうは、昨夜、総理が発表しました、全国の学校への一斉の休校要請についてお伺いしたいと思います。余りにも唐突、突然でありました。三月二日ということを考えたら、平日はきょう一日しかないわけであります。現場も父母も大混乱という状況が起きております。医療、介護、福祉などの体制が維持できるのか。共働き、一人親で仕事が休めない場合は、子供の居場所の体制をそんなにすぐつくれるのか。仕事を休まざるを得ない場合、仕事がなくなった場合の所得補償はどうするのか。子供たちの学びをどう保障するのか。国民からは、不安の声がいっぱい上がっている状況であります。ところが、きのうは、そういう大きな判断を下しながら、その判断の根拠となるエビデンスも示されませんでした。また、これだけ社会的影響が重大であるにもかかわらず、それに対する具体的な対策についても総理は説明されませんでした。だから、一層国民の不安は起きているというふうに思います。まず、お伺いしますが、二十五日に基本方針を発表した際は、学校の休校は感染の広がりに応じて都道府県で判断するということだったわけであります。ところが、二日でこの方針が変更されました。感染者の確認されていない地域も多数あるわけですが、なぜ全国一律に変えたのか。この判断変更の具体的なエビデンスについて伺いたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 まず、今委員から御質問がございましたが、このエビデンスは何かという御質問でございますが、専門家の意見を踏まえて先日策定した新型コロナウイルス感染症対策の基本方針で示したとおり、感染の流行を早期に終息させるためには、患者クラスターが次のクラスターを生み出すことを防止することが極めて重要であり、徹底した対策を講じるべきと考えております。この基本方針に基づきまして新型ウイルス感染症対策を講じており、現在、北海道や千葉県市川市、大阪府、大阪市及び堺市など各地域において学校休業を行うなど、子供たちへの感染拡大を防止する努力がなされておりますが、専門家の知見によれば、ここ一、二週間が極めて重要な時期であり、先手先手の対応が求められる状況と認識をしております。このため、昨日、政府としては、何よりも子供たちの健康、安全を第一に考え、多くの子供たちや教職員が日常的に長時間集まることによる感染リスクにあらかじめ備える観点から、全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、来週三月二日から春休みに入るまで臨時休業を行うよう要請したものでありますが、今がまさに感染拡大のスピードを抑制するために極めて重要な時期であるとの認識のもと、政府としては、引き続き、対策本部を中心に、日々刻々と変わる情勢変化の先を見通しながら、何よりも国民の命と健康を守ることを最優先に、やるべき対策をちゅうちょなく決断し、実行していきたい、このように考えております。
○宮本委員 いや、ですから、この一、二週間が大事だ、勝負だというのは、それを踏まえて二十五日の基本方針が出たわけじゃありませんか。その二日の間に方針が変更するほど重大な何かが、我々に知らされていない何かエビデンスがあったのかというのを知りたいわけですよ。国民の中では、何か起きているんじゃないかという不安が広がっているわけですよ。オープンになっていない感染者の広がりがあるんじゃないかだとか、あるいは原因のわからない肺炎患者がどんどんどんどん広がっているだとか、何らかのエビデンスがあって、この二日間で判断を変更したということなんでしょうか。
○安倍内閣総理大臣 先ほど申し上げましたように、ここ一、二週間が極めて重要という専門家の御指摘をいただいたところでございまして、その中においては、先ほど申し上げましたように、多くの子供たちが集まる教室あるいは通学の途上ということも考えられるのではないか、こう思いますが、そういうリスクを減らし、新たなクラスターが発生することを、これを何よりも防がなければいけない、そのクラスターが子供たちの中で生じることは防がなければならない、こういうことでもあります。また、二〇〇九年ですかね、新型インフルエンザが流行した際には、兵庫県、大阪府等で学校を休業し、それがある程度の効果を発揮したという経験もあるわけでございます。これは、今、宮本委員がおっしゃっているのは、じゃ、どこかで発生したらやるのかということでございますが、我々は、まさに先手先手でやるべきだろうと今回は判断し、全国一律という判断をさせていただいたところでございます。まさに、科学的、学術的な観点からは詳細なエビデンスの蓄積が重要であることは言うまでもありませんが、一、二週間という極めて切迫した時間的制約の中で、最後は政治が全責任を持って判断すべきものと考え、今回の決断を行ったところでございます。
○宮本委員 政治が判断したんだと。エビデンスについては、おっしゃること、中身の話が全くなかったわけでありますが。専門家会議を設けたわけじゃないですか、専門家会議を。ところが、報道を見ると、専門家会議での議論を踏まえたものじゃないんだ、政治判断なんだという話が、この専門家会議のメンバーからもなされる状況なわけですよ。そして、その専門家会議のメンバーの方々の言っていることもいろいろなわけですよね。例えば、押谷教授は、学校でクラスターが発生しないとは断言できませんが、子供の感染例は中国でも非常に少なく、その可能性は低いです、一斉の学校閉鎖をすることは全体の流れからすると余り意味がないと。あるいは、岡部先生は、全国一律に小中高校の休校を要請するという国民に大きな負担を強いる対策を現時点ではとるべきではないと。専門家会議の皆さんも、今そういう対策がベストなのかといったら、そうではないという意見もたくさん出ているわけですけれども、なぜ今回の判断をするに当たって、専門家会議でしっかり議論されなかったんですか。
○安倍内閣総理大臣 お答えをいたします。これにつきましては、まさに専門家会議において、ここ一、二週間が瀬戸際であり、そして正念場であるという判断がなされたわけでございまして、ここにおいて、この一、二週間においていわば感染拡大を防止できるかどうかということが問われている、何をするかが問われているという判断をされた中において、そこでこちらは何をするかということでございます。そこで、これはさまざまな御意見があることは承知をしているところでございます。その中において、我々は、やはり子供たちの健康と安全を守ることを最優先にしなければならない、こう考えたところでございます。もちろん、今委員が言われたように、子供の感染は少ないということをおっしゃったわけでございますが、これは、少ないということは子供に発生していないということではもちろんないわけでございまして、事実、その発症例も国内でもあるわけでございます。つまり、それが広がってからでは我々は遅い、こう考えたところでございまして、今回、この一、二週間こそが正念場であるという専門家の皆様の御意見を受け、そして政治として判断をさせていただいたところでございます。
○宮本委員 先ほど来、政治の判断だということを繰り返されるわけですが、私は、感染症対策ですから、やはり何よりも専門家の知見というのを大事にするというのが政治の姿勢としても必要なことだというふうに思いますよ。今回のこの対策が社会の負担を上回るだけの効果が期待できるのかという声も上がっているわけであります。それで、学校は休校で、保育園、学童保育は開く。学童保育に子供たちはたくさん集まる。そうすると、感染拡大防止上、それほど効果があるのかという声も上がっているわけですよね。ちなみに、学童保育に比べて学校の方が感染のリスクが高いとか低いとか、そういう判断の根拠とか、何かあるんですか。
○加藤国務大臣 これはもう委員御理解いただいているとおり、感染拡大をする中においても、それぞれの皆さんは日常の生活を暮らしておられるわけでありますから、その日常の暮らしというものをどう維持していくのか、そして同時に、感染拡大の観点から何をすべきなのか、まさにそのバランスということで判断させていただいて、先ほど申し上げましたけれども、保育園というのは、もともと休みという形態がないということ、そして、それぞれ預かっておられる方は皆働きに出ておられること、そういったことを踏まえて、保育園においては感染防止策をこれまでも既に指示をして、指示というか、こういう感染防止をしてほしいということを申し上げておりますけれども、それを徹底していただきながら、ただ、地域において感染が出た場合には、もちろん、そうした保育園等においても休園をするということは当然になってくるわけであります。
○宮本委員 どちらにしても、子供たちは集まってしまうのではないのかということで、どこまで効果があるのか、そういう吟味なんかも必要なんじゃないかなというふうに思います。もう一点お伺いしますけれども、今回の全国一斉休校を総理が要請した法的な根拠と法的拘束力についてお伺いしたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 学童保育と変わりがないのではないかという先ほどの御質問でございましたが、これはまさに学童保育が必要となるのは、小学校でも低学年の子供たちなんだろう、こう思うところでございます。そして、例えば福岡の例でございますが、市長からもお話を伺ったところでございますが、まさにこれは、一律で対応していただいた場合は、いわば教室として、高学年の皆さんが使っている教室も使う、あるいは、学童保育的な形で学校でお預かりをする人数も当然ある程度限られるわけでございまして、一つ一つの教室についての子供の数は、相当これは、通常の授業とは人数は圧倒的に少なくなるわけでございまして、また、学校の先生にも、休業になる中で御協力をいただきながら対応していただくということもできるのではないか、そういう対応を行っていくというお話を伺っているところでございまして、そういう意味においては、状況は違う、こういうふうに我々は考えているところでございます。そこで、法的根拠についての御質問がございました。昨日の対策本部で決定した学校における全国一斉休校については、国として、ここ一、二週間が感染の拡大のスピードを抑制するために極めて重要な時期であるとの認識のもと行った要請であります。法的拘束力を有するものではないということでございます。政府としては、学校を設置する地方公共団体や学校法人等において、この要請を受けて、子供たちの健康、安全を確保する観点から検討し、適切に対応していただくことを期待をしているところでございまして、要請であり、法的拘束力を有するものではございません。
○宮本委員 法律上は、学校の臨時休業が判断できるのは学校の設置者ということになっていますので、当然、法的拘束力はないわけですが、現場がやはり柔軟に判断できるようにするというのが私は大事なことだというふうに思いますよ。その上で、共働きや一人親で仕事が休めない場合に、子供の預け先の体制をすぐにつくれるのかという問題があります。学童にしろ放課後デイにしろ、長期休みのときはアルバイトを募集して体制をつくっているところが多いわけですよね。そんな中で三月二日からと言われても、とても体制が組めない。とりわけ放課後デイなんかでいえば、看護師さんの確保なんかも必要になりますし、昼食の手配なんかもやるわけですよね。そういう点はどうお考えですか。
○加藤国務大臣 もちろん、通常であればこの時期は平日での対応ということを、今回は春休みと同様の、放課後児童クラブでいえばですね、お願いをする。また、放課後デイであれば、できるだけ長時間対応をお願いするということでありますから、当然、人的な担保、今委員御指摘、これは当然必要になってくると思います。これはまさに我々はそれぞれの皆さんにお願いをしていかなきゃならない。人的担保等をすれば当然経費がかかるわけでありますから、その経費に関しては、私どももしっかり対応させていただきたいというふうに思っています。
○宮本委員 ですから、その人的担保をつくるためには時間がかかるわけですよね。その辺の総理の認識というのはあるんですか。
○安倍内閣総理大臣 当然、発表させていただいたこの対策について検討してきたわけでございまして、今、厚労大臣からも答弁をさせていただきましたが、当然、そうした課題があることは認識をしているところでございます。そうしたさまざまな課題については、しっかりと政府としても対応していきたいし、また支援もしていきたい、こう考えているところでございます。また、これは地域地域において、当然、この対応は、その地域のさまざまな事情等もあるわけでございますので、その事情に応じて柔軟な対応をされる、このように考えて、柔軟な対応ができるという形で進めていかなければならないと思います。先ほど申し上げましたように、まさに、地方自治体がこれを受けて、そして各地域において対応をしていただきたい、こういうことでございますので、さまざまな柔軟な対応をしていただけるものと考えております。
○宮本委員 放課後デイにかかわってもう一点聞きたいんですけれども、病弱な子供なんかもいて、安全管理上の不安という声も聞くわけですよね。リスクが高い子供もいるので、こういう中で、放課後デイを閉めるという判断をされるところもあるかもしれません。現に、既に休校をやっている地域で、そういう話も伺っているわけでありますけれども。そうすると、その放課後デイ自体は補助金も入らないですし、休業補償も職員に対してできなくなってしまうのではないかという不安の声があるんですが、それはどう対応されますか。
○安倍内閣総理大臣 放課後等デイサービスについては、保護者が仕事を休めない場合に、自宅等で一人で過ごすことができない障害のある児童がいることも考えられることから、原則として開所し、可能な限り長時間開所していただくよう、昨日、自治体に依頼を行いました。また、開所に当たっては、長時間の開所に対応した高い単価を算定可能とするとともに、職員の配置等について柔軟な取扱いを可能とし、定員を超過した受入れを認めているところでございます。
○加藤国務大臣 今総理が申し上げたことを基本としながら、今委員の御質問は、むしろ休業した場合の話だと思います。都道府県等から休業の要請を受けて休業した場合は、利用者の居宅や電話などで健康管理や相談支援を行えば通常の報酬の対象になる、これは放課後等デイサービス事業所でありますけれども、通常の報酬の対象になるとすることにしております。
○宮本委員 しっかりと徹底していただきたいというふうに思います。それから、医療、介護、福祉などの体制が崩壊するのではないかという不安があるわけですよね。総理は、こうした措置に伴って生じるさまざまな課題については責任を持って対応してまいりますということをおっしゃったわけでございますが、この医療現場や、あるいは介護現場、福祉の現場というのはただでさえ人手不足なわけでありますが、先ほど来、議論でも、帯広厚生病院の話も出ておりますが、実際、人手不足で職場が回らなくなっている現状が既に起きております。どう対策をとられるんですか。
○加藤国務大臣 これは、地域地域、また施設施設で違うと思っております。一つは、ある施設が足りなくて、ほかでそれを補っていただけるのであれば、そういった連携を強化をしていただきたいということもお願いをしております。それから、一時的に本来あるべき定員から減ったとしても、今言った新型コロナウイルスの関係で、これは、従前どおり定員がそこにきちっとしていて、たまたま、例えばその人が新型コロナウイルスにかかっているかもしれないということで休んだり、あるいは今回のような格好で、保護者ということで休んだり、そういったことで一時的に定員が不足しても、それは、定員算定上、減算しない、こういう対応を考えております。
○安倍内閣総理大臣 医療や福祉の分野等も含めて、仕事を持つ親が子育てとの両立を図れるように、原則として保育所や放課後児童クラブは引き続き開所をしていただくこととし、昨日付、二十七日付で地方自治体に通知をしているところであります。また、子供を持つ保護者にも十分に配慮して対応してまいりたいと思います。また、子育てをしながら働く方々について、安心して休暇を取得できる環境を整えていただくことも重要でありまして、二十六日に、厚生労働大臣や経済産業大臣、国土交通大臣から、日本経団連等のトップの方々に直接要請を行っているところでございます。また、今後とも、事態の状況変化を見きわめながら、仕事を休んだ場合において働く方々の不利になることのないように、雇用調整助成金制度の拡充、補完なども含めて検討を進めてまいりたい、このように考えております。
○宮本委員 先ほどの、以前の質問で、所得の補償で、パートの方などの補償も考えているというお話がありましたけれども、フリーランスだとかの方への補償だとかも必要になってくると思いますが、その点だけ最後にお伺いして、質問を終わりたいと思います。
○安倍内閣総理大臣 先ほどお答えをさせていただいたとおり、働く方々の不利になることのないように、雇用調整助成金制度の拡充、補完なども含めて、さまざまな対応を含めて検討を進めてまいりたい、このように考えております。
○宮本委員 しっかりと、政府がちゃんと責任をとるというふうに言ったわけですから、国民生活に全力で責任を果たすことを強く求めまして、そして、そのためには予算をしっかりと組み替える必要があるんじゃないか、そのことを強く申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
○棚橋委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。