2020年3月11日 厚生労働委員会 賃金請求権3年に抑制 労基法改定案

4月からの債権の請求期間(消滅時効)が原則5年になるのに、労働者が未払い賃金を請求できる期間は3年にとどめる-。労働者の権利を不当に抑制する労働基準法改定案が11日の衆院厚生労働委員会で、わずか半日の審議で可決されました。日本共産党は労働者の保護を目的とする労基法に反するとして反対し、宮本徹議員が厳しく追及しました。
同法案は、4月施行の改正民法で消滅時効が原則5年となるのに合わせ、未払い賃金の消滅時効(現行2年)も「5年」としながら、経過措置として「当分の間」は3年にとどめるもの。施行5年後に「5年」にするか「検討」するとしますが、担保はありません。
宮本氏は、未払い残業代の請求事例が近年増える一方で、違法行為が長年続いていても、支払額は現行の消滅時効の2年分にとどまる「やったもの勝ち」が横行していると指摘。「在職中は声を上げられなかった労働者が、退職・転職を機に請求する例が少なくない」と強調し、2年以上未払いの実態を把握しているかただしました。
厚労省の坂口卓労働基準局長は、労働基準監督署の監督指導で100万円以上の未払い残業代を支払った企業が2016年と比べ、17,18年度で400~500件増えていることを明らかにしました。他方で、未払いが2年以上にわたる事例は「集計していない」と述べました。
宮本氏は「実態も分からないまま法案を出したのか」と批判。加藤勝信厚労相は「実態把握は大事だ。どういうやり方があるか検討したい」と述べました。
坂口氏は、「当分の間」3年にとどめる理由を「消滅時効が長期に及ぶことで賃金債権額が確定せず、企業が紛争の発生に備える必要性が生じる」などと説明。宮本氏は、「企業が賃金を適正に払っていれば紛争は生じない。企業側の言い分だ」と批判しました。

以上2020年3月13日付赤旗日刊紙より抜粋

≪第201回2020年3月11日衆院厚生労働委員会第3号 議事録≫

○盛山委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。労基法改正案について質問いたします。今回の労基法改正案、民法の改正されたものが四月から施行される、それに合わせて、本則では賃金請求権を五年にしながら、当分の間は三年。その当分の間も、先ほどの大臣の答弁では、当分の間というのは当分の間なんだと。いつまで続くかわからないということでございます。私は、こういう法案はおよそ認められないという立場で、質問させていただきたいと思います。まず、大臣の基本的な認識をお伺いしたいと思いますが、賃金の未払い、不払いはなぜ許されないんですか。
○加藤国務大臣 賃金は、まさに働く方の生活を支える重要な糧と言っていいんだろうと思います。そのため、一度労使間で定めた賃金、あるいはもちろん契約に基づく賃金と言うべきかもしれませんが、これは労働者保護のためにも確実に支払われなければならず、必要な規制を行っております。具体的には、労働基準法第二十四条など、賃金に関する規定があり、使用者はそれを遵守し、賃金が確実に労働者に支払われるようにしなければならないということであります。
○宮本委員 支払わなかった場合は刑事罰があると思いますが、どういう罰則でしょうか。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。今大臣からございましたとおり、労働基準法第二十四条では「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。」とされてございます。同条に違反した場合でございますけれども、労基法第百二十条第一項におきまして、三十万円以下の罰金に処すると定められております。
○宮本委員 刑事罰も課されるわけですよね、賃金を払わないということは。大臣からも、生活の糧であり、支払わないことは絶対許されないんだという話でございます。しかし、支払っていないことが横行しています。一番横行しているのはサービス残業ですよね。一体全体、今サービス残業というのはどれぐらいあるというふうに推計されているのか、お伺いしたいと思います。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。今議員の方からございましたいわゆる賃金の不払いの残業ということでございますけれども、どうした要因で起こるかということで見ますと、使用者の故意によるものだけではなくて、単純な給与の計算のミスによるものまで、内容もさまざまかと存じ上げます。また、労使間で自主的な解決ということも図られているケースということも多いということもございまして、私ども、その全てを行政で把握できているものではございません。あえて、行政で把握しているものとしてということで申し上げますれば、平成三十年度におきまして労働基準監督署が監督指導を行った結果として、一企業で合計百万円以上の不払いとなっている割増し賃金の支払いがなされたものにつきましてでございますけれども、対象労働者の方が十一万八千六百八十人ということがございます。
○宮本委員 今のは百万円以上のケースということですかね、一企業で。それ以外、全体を把握されていますよね。
○坂口政府参考人 サービス残業、いわゆる賃金不払い残業ということに限った形での状況ということについては、人数という意味ではございません。ただ、私ども、定期監督や申告監督という形では監督指導を行っておりますので、そういったものの法違反件数ということについてはございまして、定期監督等の実施事業所、例えば平成三十年におきましては十三万六千件強ございますけれども、このうち何らかの法違反が認められた事業所数は九万三千件強でございますけれども、うち賃金不払いに関する法違反が認められた事業所は二万六千九十九件というようなデータはございます。
○宮本委員 そうすると、十三万六千件のうち二万六千件ぐらいの比率である、大体、監督に入れば二割弱ぐらいが賃金不払いがあるという理解でいいわけですね。
○坂口政府参考人 今委員ございましたとおり、定期監督の実施事業所数全体に対して、先ほど、何らかの法違反が認められた事業所数が九万三千件強ということで、その違反率が六八%でございますが、賃金不払いに関する法違反につきましてはそのとおりで、二万六千件との対比ということでございます。
○宮本委員 ですから、大体、定期監督に入れば二割ぐらいは不払い残業、不払い賃金があるというのが状況なわけですよ。定期監督に入れているのは年間十三万数千件前後というのがこの間の実績ですよね。事業所全体でいえば、どれぐらいの比率で定期監督が入れているんですか。
○坂口政府参考人 申しわけございません、ちょっとお答えの向きが定かではないですけれども、先ほど申し上げましたとおり、定期監督に入った実施事業所数が、先ほど御答弁申し上げましたとおり、十三万六千二百八十一件というのが平成三十年度の指導監督かつ定期監督の状況ということでございます。
○宮本委員 数ぐらいは多分手元にあると思うんですけれども、一体、事業所数、分母が、定期監督は十三万だ、事業所の分母はわかるでしょう。
○坂口政府参考人 全体として、約四百十二万事業所のうちの先ほど申し上げた数字に定期監督を実施しておるということでございます。
○宮本委員 四百十二万分の十三万だから、三%ぐらいに入って、そのうち二割がある、残りの九七%も含めて恐らく全部指導に入ればそれだけサービス残業があるということですから、物すごい数があるわけですよね。ですから、今、労基署が是正できているサービス残業というのはごくごく一部だ、そういう認識は、大臣、お持ちですね。
○加藤国務大臣 これは別にランダムサンプリングして監督指導あるいは調査に入っているわけではなくて、さまざまな情報を受け取りながら、そうした違反の疑いがあるもの、そういったものを中心にしているわけでありますから、今申し上げた数字をもってそれを全てに敷衍するというのは、いささかちょっと乱暴なのではないかなというふうに思います。ただ、いずれにしてもそういう実態があるということを含めて、我々は引き続き監督指導にしっかりと取り組んでいきたいと思います。
○宮本委員 定期監督等というのは、申告監督は入っていないわけでしょう。先ほど大臣からは情報に基づいてとありましたが、申告監督は入っていない数ですよね、今のは。
○坂口政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたのは定期監督等ということでございますが、申告監督は、ですから、別ということでございます。ただ、先ほどの中に災害時の監督なんかも入っておりますし、先ほど大臣が申し上げましたように、定期監督も、我々は、それまでの届出状況とかいろいろなものを勘案しながら、やはり、優先的な、限られた体制の中で法違反の状況をしっかり是正していくという構えで定期監督を実施しているということでございますので、そういったことについての御勘案をいただければと承知しています。
○宮本委員 申告監督は別と。それとは別に労働者から不払いだ、直してくれというのは、また別に何万件とあるわけですよ、これ以外に。ですから、実際に是正できているのはごくごく氷山の一角なわけですよね。そして、現行法では二年の壁があったわけですよ。賃金請求権は二年だという時効があったために、多くの労働者が本来受け取るべき賃金を全額受け取れないということが大変問題になってまいりました。ちょっとお伺いしたいんですけれども、労基署の監督指導で是正を行ったサービス残業のうち、現在の時効である二年以上の不払い残業代があるケースというのはどれぐらいの比率を占めるんでしょうか。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。先ほど来申し上げていますとおり、労働基準監督署におきましては、割増し賃金について労基法三十七条違反が認められたという企業、事業所に対して割増し賃金の不払い分を遡及して支払うようにという指導を行ってございますけれども、私どもとしまして、不払いであります割増し賃金のその期間に着目した集計ということは行っておりませんので、委員お尋ねの、二年を超えて遡及支払いをした件数ということについてはお答えは困難でございます。
○宮本委員 いや、集計していないだろうからと思って二日も前に通告しているんだから、あらあらどんな感じかぐらいはわからないんですか。
○坂口政府参考人 私どもとして、そういった形での集計ということそのものもしておりませんので、申しわけございませんが、あらあらという形でもちょっとお答えは申し上げられないという状況でございます。
○宮本委員 労働者の糧で大事だ、賃金不払いは許されないと。そして、今回、賃金請求権を時効何年まで設けるのか、こういう法改正をするのに、一体全体実態として何年ぐらいたまっている不払い残業があるのか、そういう実態も何も議論せずにこの法改正案を出させたということですか。三年がいいのか、五年がいいのか、あるいは二年がいいのか、そういう議論をするときに、実態は何もわからないまま今度の法案は出てきたということですか。
○坂口政府参考人 今申し上げましたように、私どもとしましては、監督指導においての賃金不払い残業ということの是正ということについてはしっかり取り組んでいきたいということで、賃金不払い残業の状況についての公表ということは行っておりますけれども、今の段階で労働者に支払われるべき割増し賃金の額が何年間分ということについての、着目したという形でのものについては、期間に着目したということについては行っていないということでございます。今後、今回の検討規定等も受けまして、どういった形で今後また検討を行っていただくかということに際して、労使等の御意見も伺いながら、私どもとしても検討をしてまいりたいと考えます。
○宮本委員 いや、本当に、はっきり言って、今度の法案を議論する上での基礎的な材料すらないと言わざるを得ないと思いますよ。大臣、これはやはり、すぐというより、参議院の審議までに調べろとは言いませんけれども、調べられる範囲で調べなきゃいけないですし、今後、法案自体には見直し規定もあるわけですから、どれぐらいの期間、不払い残業が二年を超えるものはどれぐらいあるのか、三年を超えるのはどれぐらいあるのか、こういうものぐらいはちょっと調べる必要があるんじゃないですか、是正勧告している範囲だけでも。
○加藤国務大臣 これからとりあえず三年になるわけでありまして、それからまた五年ということになりますので、そういった中で実態がどうなのかというのは把握していく必要というのは大事だというふうに思います。ただ、これまでのやつを全部洗えといっても、これはなかなか大変な作業になりますので、どういうやり方があるのか、そこは中で検討させていただきたいと思います。
○宮本委員 これまでのが大変でしたら、これからのものを期間も含めて集計をとっていけばいいわけですから、一つ一つは、今でいえば二年分払いなさいという是正勧告は相当やっているわけですから、これからのは、将来集計するのは難しい話じゃないと思いますので、それをしっかりやっていただきたいというふうに思います。そして、二年以上の賃金不払い残業がどれぐらいあるかわかっていないということは、これを聞いてもお答えが何も返ってこないかもわからないですけれども、どういう類いのケースが、二年以上不払い残業があるケースというのがあるのか、それは何だかわかっているものはありますか。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。先ほど来御答弁させていただいておりますように、申しわけございませんけれども、件数とか、データ的な、定量的な形での二年を超える状況等々ということについては、現在も時効期間が二年ということでございますので、なかなかそういったものを私どもがデータ的に把握するというのは難しいし集計もしていないというのが、先ほど来御答弁をさせていただいているというものでございます。ただ、どういう類いのケースということで、事例ということでいくと、私どもの方でも、そういった過去の労働時間について指導したところ、あるいは、いろいろ、管理監督者該当なものとして時間外又は休日労働に対する割増し賃金を支払っていなかったというようなことで指導した中で、企業の方が二年を超えて割増し賃金を支払われたというような例は仄聞しておりますけれども、なかなか定量的にというような形での状況というのは私どもとしても把握しかねているということでございます。
○宮本委員 ぜひ、今後、実態把握をお願いしたいと思います。資料をお手元に配っていますが、先日の日経新聞に「「未払い残業代払って」急増」という記事が出ておりました。サービス残業の是正指導の中で、一企業で百万円以上の支払いがなされた企業の数が増加しているという記事ですが、これは原因は何でしょう。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。今委員の方から配付していただいている資料でございますけれども、先ほども申し上げましたデータを年次で追っていただいている記事かと存じ上げます。内容的には、私どもの方で先ほど申し上げました、労働基準法の三十七条の違反で是正勧告を受け、割増し賃金の不払い分を支払った金額が百万円以上の企業の数ということでございまして、平成三十年度が一千七百六十八企業、平成二十九年度が一千八百七十企業ということでございます。その直前の平成二十八年度が一千三百四十九企業ということでございますので、そのグラフにありますように、二十八年度に比べますと二十九年度、三十年度が増加しているということでございます。こういう状況について、要因ということを一義的に申し上げるというのはなかなか難しゅうございますけれども、考えられる、ちょうど先ほど申し上げました二十八年度と比べてというような形での変更時期については、私ども、平成二十九年の一月に、使用者による労働時間の適正な把握のために、労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインというものを定めまして、その周知、指導ということを行っておるということもございますが、そういったものも一因かとは思いますけれども、全体としての要因ということについてはなかなか難しいかと思っております。
○宮本委員 この記事を見ていますと、転職者がふえていることも一因じゃないかという分析が書かれているわけですよね。実際に働いている、在職している最中だと声が上げづらい、だけれども、転職を機に、前の職場の働き方は大変問題であったということで未払い残業代を請求するという人がふえている、日経新聞はこういう分析をされているわけですけれども、この未払い賃金の請求というのは、退職後に行われるケース、これがかなりの比率を占めるということなんじゃないでしょうか。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。賃金不払いにつきまして、監督署の方に対しまして労基法に基づく申告を行った方への対応ということで私どもは指導監督そして是正指導ということを行ってございますけれども、その方が在職中か退職後であるかということについての着目した集計は行っておりませんので、そのようなデータについてはちょっとお答えができないという状況でございます。
○宮本委員 データがないという答弁ばかりが続くわけですけれども。ブラックな職場に就職してしまった、やめよう、やめようと思ってやめるわけですよね。だけれども、ブラックな職場だったためになかなか、未払い賃金があっても、サービス残業が山のようにあっても、やめるまでは声を上げられなかった、しかし、やめるときに、やはりこれは請求しようということで、声を出して請求した。こういうケースは、その人がそのブラックな職場に就職してからある意味ずっと、退職して請求するまで全部未払い賃金になっているということでしょう。二年どころじゃないですよね。五年だったり十年だったりする人もいると思うんですよね。そういうことを考えたら、私は、可能な限り不払い賃金というのはさかのぼって払うのが当たり前じゃないかというふうに思いますが、大臣、そう思いませんか。
○坂口政府参考人 冒頭も大臣の方から申し上げましたとおり、賃金不払いということはあってはならないということで、私どもも是正指導ということについてはしっかり行ってまいりたいということで考えてございますが、その事実関係ということを確認するというすべについては、労使双方のいろいろ、書類、証拠であったり、あるいはその事実というようなものに応じて、やはり事実関係をしっかり確定した上で権利関係を整理していくということが重要かと思っておりますので、一定の時効制度という範囲の中で私どもとしてもしっかり対応をしてまいりたいと考えております。
○宮本委員 ですから、その時効を考えるときに、こういうブラックな職場でずっと我慢して我慢してやはり退職した、それは、五年なり十年なり未払い残業がいっぱいたまっているケースもいっぱいあるわけですよ。可能な限りそういう悪徳な働かせ方は是正していく、さかのぼって不払い賃金を支払わせる、こういう立場に政府は立たなきゃいけないんじゃないですか。大臣にお伺いしたいと思いますが、三年を超える賃金未払いで問題になった事件について、大臣はどういうものを記憶されているでしょうか。
○加藤国務大臣 具体的な事案ということですか。ちょっと私には、にわかに、すぐは浮かんではきませんけれども。
○宮本委員 よく新聞でいろいろ報道されておりますので、きょうは幾つか、新聞に報道されている昨年からことしのものの一部を配付資料として配らせていただきました。資料の二ページ目、これは公務の職場ですね。上にあるのは三原市ですね。嘱託職員の宿直時の仮眠時間を労働時間から外し、正当な賃金を支払っていなかったということで、過去二年間分、二千七百二十八万円を支給するという話です。ただ、これはいつからやっていたかといいますと、三原市は〇五年の合併以来同じようなことをやっていた。ですから、十数年、未払いの賃金があったということであります。それから、その下、これはことしの二月十日、先月出たニュースですけれども、埼玉県春日部市。ここは、超過勤務手当の支給額を予算の枠内に抑える、公務の職場ではよくやられている話ですね、予算の枠内に抑えるために過少申告が行われていたということであります。これも長年続いていた、慣例になっていた、だけれども、賃金請求権は二年だからさかのぼって支払いができないということで、二年分だけ支払ったという話でございます。次、資料の三枚目を見ていただきたいと思います。これはスバルですね、大企業。これも昨年流れたニュースですけれども、これは労基署が是正勧告をしていたという話ですけれども、これも残業を実際より少なく申告していたわけですね。職場で定められた残業時間の上限目安を超えないよう申告を控えていたということで、三千四百人が勤務記録にない残業をして、未払い残業代は七億七千万円。これも二年分ですよ、支払われたのは。その下、ヤマハ。これは計算の誤りということですけれども、一九九九年の操業開始時から社員の超過勤務手当の計算を誤っていて支払いが不足していた、請求権が消滅していない二年分について一千六百万円払ったという話なわけですよね。ですから、二年を超える未払い残業というのは山のようにあるんですよ。これを今度は三年に延ばす、でも、民法は五年なのに三年にとどめて、それで、当分の間は、いつまでかわからない当分の間、三年にとどめるというのは、今の不払い賃金の現状を正すという点では全く不十分だと言わなければいけないというふうに私は思います。こういう二年を超える不払い残業が山のようにある現状について、大臣はどう思いますか。
○加藤国務大臣 山のようにあるのか、何のようにあるかはなかなか把握が難しいところでありますけれども、そうした報道がなされてきているということを踏まえて、やはり、最初に申し上げた、賃金というのは約束したとおりに支払われる、これが大原則でありますから、それに向けて我々も、日々の監督行政を含めて、しっかり是正させるべきものは是正させていく、また、そうならないように、それぞれの事業主の理解、周知、それをしっかりと図っていきたいと思います。
○宮本委員 払ってもらうのは大原則なんですけれども、大原則をやらない事業所が少なからずあるわけですよ。そういう中で三年に賃金請求権の消滅時効期間をとどめるというのは、結局ある意味悪事のやり得ということを許すことになるんじゃないですか。
○加藤国務大臣 民法の改正をそのまま適用すれば四月一日以後は新たに結ばれる契約のみが対象になるわけでありますけれども、先ほどから申し上げておりますように、同じ会社の中で違う取扱いがなされるというのは適切ではないということで、これは、民法よりも踏み込んだ中身もこの中に盛り込まれている、そういったことも含めて御理解いただきたいと思います。
○宮本委員 いや、それは、起算点は民法と違うことにするのは当たり前の話だと。それは今もそうしているわけですから当たり前の話だと思うんですけれども、問題は、消滅時効の期間の問題ですよ。そっちがなぜ民法並びにならないのかということを私は問題にしているわけであります。次の資料の四ページ目を見ていただけたらと思うんですけれども、去年の十二月、セブンイレブンの残業代未払いの問題であります。これを見たら、計算式が間違っていたということなんですけれども、これも、未払いの方式がいつ始まったかわからないけれども、一九七〇年代からこうだった可能性があるという話ですから、本当に何十年、こういう事態が続いていたということであります。だけれども、セブンイレブンの場合は、記録のあるのは二〇一二年三月以降だ、四億九千万あるからこれは払いますよと。二〇一二年からですから七年ですかね、今の二年よりもさかのぼって払うというところもあるわけですよね。更に二〇一二年二月以前も含めて調べて払いたいということもこの記事の中には書いてあるわけですけれども、こういう形で、企業が持っている記録からしたら、二年とか三年とかじゃなくてもっと払うことが可能な場合もいっぱいあるんですよね、実態としては。こういうケースはもっと払うようにさせるというのが本来政府がとるべき態度なんじゃないですか。
○坂口政府参考人 個別の事案についてのお答えは控えさせていただきます。先ほど来申し上げているとおり、やはりこういった時間外労働等の割増し賃金を含めての賃金不払いというのはあってはならないということでありますので、私ども行政監督機関としましてはそういったことがないようにということで、各種情報からそういった違反が疑われるという事業所に対して監督指導をしっかり実施するという中で、法違反が認められた場合には、その是正に向けて法の枠の中で必要な指導をしっかり行うということでございます。私どもとしましては、そういった基準関係法令の遵守ということについての監督指導の徹底ということに努めてまいりたいと思います。
○宮本委員 ですから、セブンは何回も労基署から指導されているわけですけれども、そういう中で、時効を超えたものも含めて払う、こういう態度をとったわけですけれども、そういうことは多いんですね、政府として推奨していった方がいいと思いますよ。もう一点お伺いしますけれども、外国人技能実習生、以前私たちも国会で大問題にしたわけですけれども、最低賃金以下というのも少なくなかったわけですよね。借金をしてやってきて、本国に送り返されたら怖いという不安から声を上げられずに、ひどい労働条件で働き続けるという場合もあるわけであります。そして、帰国直前になってから不払い賃金があるということで労基署に申告するというケースもあると思うんですけれども、この外国人技能実習生でも三年を超える不払い賃金があるというケースは少なくないんじゃないですか。
○坂口政府参考人 この外国人技能実習生の関係につきましても、私ども、労働基準監督署の方に賃金不払いに関する申告がなされるケースは御指摘のようにございます。そういった中で、雇用されている事業場における技能実習の継続を希望せず、外国人技能実習機構に保護を求めた事例であったりとか、帰国直前に申告が行われた事例ということも含まれているということも承知はしてございますけれども、そういった事案の件数、あるいは賃金が不払いとなった期間に着目した集計ということは行ってはございません。いずれにしましても、私どもとしましては、引き続き、賃金不払いの労基法違反に対しての指導監督、厳正な対処ということをしっかり行ってまいりたいと考えております。
○宮本委員 帰国直前に申請があるということですよね、そういうケースもあるという話ですよ。そうすると、外国人技能実習生は最長五年ですから、五年間、それこそ余りにも劣悪な労働環境の中で働かされて声を上げられない方が、帰国のときにその分を払ってくれと言っても三年分しか返ってこない、これは私は理不尽だと思いますよ。この制度がもたらしているひずみの現状からしても、三年というのは問題がある面もあるんじゃないですか、大臣。
○加藤国務大臣 やや同じことの繰り返しになって恐縮なんですが、例えば今の技能実習の方々について言えば、例えば一年前に契約をしていた、今回の民法改正を適用すればその方々は引き続き二年にとどまっていく、要するに従前どおりのルール。この四月一日から新たに技能実習の契約を結んだ方だけが対象になるということになるんですけれども、やはりそういうわけにはいかないということで、四月一日以降の賃金支払い、これは、その基づく契約がいつの時点であってもその支払いをもって一律に取り扱うという民法の今回の改正を超えた改正もさせていただいている、こういったことを含めながら、また、先ほど賃金台帳の保存の話もありましたけれども、そういったいろいろな議論の中で、最終的に労使の合意を得て今回の法律を出させていただいたということであります。
○宮本委員 その起算点の問題については民法並びにしろということはこの議場内で誰も言っていないわけですから、そこはもう、大臣、何度も答弁されなくてもいい話だと思いますよ。そうじゃなくて、賃金請求権の消滅時効の期間について私たちは問題にしているわけであります。その上で、通告している質問に行きますけれども、賃金等請求権の消滅時効の在り方に関する検討会が昨年七月一日にまとめた論点整理には次のように書いてあります。仮に消滅時効期間が延長されれば、労務管理等の企業実務等も変わらざるを得ず、紛争の抑制に資するため、指揮命令や労働時間管理の方法について望ましい企業行動を促す可能性があると書いてあるわけですよね。これはどういう意味か、かみ砕いて説明していただけますか。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。今の委員の御指摘は、有識者の方にこの消滅時効のあり方についてお集まりいただいた検討会の中での取りまとめにおける記載ということかと存じ上げます。この記載については、その間の有識者検討会における委員の方々の御指摘を踏まえて盛り込まれたものと承知しております。例えばということで申し上げますと、委員の御指摘の中で、例えば、消滅時効期間が延長された場合に、これまで口頭で行われていた業務命令とか残業命令ということが明示的に記録が残るメールなどの形で行われるようになることなど、労働時間の適正な把握や紛争の未然防止に資するように企業の労務管理が変化する可能性ということが、こういった消滅時効期間が延長されるということによって行われる可能性もあるのではないかというようなことを念頭に置かれた発言があったということで、取りまとめの中にその委員の指摘を踏まえて盛り込まれたということでございます。
○宮本委員 その取りまとめの指摘からすれば、やはり消滅時効は三年から五年に延びた方がより望ましい企業行動を促すことになる、この点は大臣もお認めになりますよね。
○加藤国務大臣 今の文章しか私は聞いていませんから、全体を読んでいないからわかりませんが、何年にしろという話をしているわけではなくて、延ばすことがということでありますから、二年から三年に延ばすことにおいてもそういう意味があるんだろうというふうに思います。
○宮本委員 二年から三年に延ばしてそういう意味があるんなら、三年から五年に延ばしたら、よりそういう行動を促すということになるのは間違いないんじゃないですか、大臣。
○加藤国務大臣 ですから、この方は、そうやって延ばせばそうだということを言っておられるにすぎないということを、今はやりとりの文章しか見ていませんからわかりませんけれども、その文章からはそういうふうに受けとめさせていただき、そういった意味では、今回、二年から三年にさせていただいているということです。
○宮本委員 いや、これは、この方のただの発言として書いたわけじゃなくて、取りまとめの中に入れているわけですよ。全体としての、検討会のまとめに書いてある文章ですから、個人の見解じゃないですからね。検討会の見解の中に盛り込まれている話ですから。次に行きたいというふうに思います。民法の改正では短期消滅時効を今回廃止したわけですが、廃止の理由を端的にお答えいただけますか。
○竹内政府参考人 お答えいたします。改正前の民法では、債権の性質などに応じまして時効期間を三年、二年あるいは一年とする短期消滅時効の特例を設けておりました。ただ、時効期間が区々に分かれておりますことによって、どの規定が適用されるのかという確認の手間がかかることや、あるいは、適用の誤り、見落としのおそれがあるという指摘がございました。あるいは、取引自体が複雑多様化しておりますことによって、短期消滅時効の適用を受けると言えるかどうかという判断が容易でない場合もありました。そのようなことで、短期消滅時効自体の合理性に疑義が生じていたために、いわゆる債権法改正によりまして短期消滅時効の特例を全て廃止したものであります。
○宮本委員 簡単に言えば、いろいろたくさんあってわかりにくいから整理したということだというふうに思うんですよね。今回、先ほど別の委員の指摘もありましたけれども、労働弁護団からこういう指摘が出ています。民法よりも労働者に不利益な条件を労基法において認めることは労働者保護を目的とする労基法と根本的に矛盾することになると、大変厳しい指摘が出ているわけであります。やはり、労基法の労働者保護、この精神からしたら、民法の時効よりも短くする、こういう規定を労基法の中に盛り込むというのは、これはおかしいんじゃないですか。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。現行の労働基準法の中にも、例えば退職手当の請求権あるいは災害補償の請求権につきましては現行の民法の消滅時効期間を下回る消滅時効期間を定めているというようなものもございまして、一義的に今委員が御指摘のような点が言えるということではないのかと存じ上げます。また、今回の法案の中では、消滅時効期間につきましては、改正民法とのバランスも踏まえまして、最終的には本則の方という形に書いてございますとおり、改正民法と同様に五年としている中で、御指摘いただいているとおり、当分の間は消滅時効の期間を三年ということとしております。先ほど来大臣の方からも御答弁申し上げているとおり、いわゆる起算点ということではなくて、いわゆる経過期間なり適用関係として、改正民法の取扱いとは違って、今回の御提案させていただいておる改正法案では、経過措置として施行日以後に支払い日が到来する全ての労働者の賃金請求権に新たな消滅時効期間というものを適用することとしたということでございまして、そういった点につきましては民法とも異なるということで、そういった点も、全体を考慮して、必ずしも労働者保護に欠けるというようなことでは私どもとしては考えていないということでございます。
○宮本委員 いや、災害補償の請求権も延ばせばいいんですよ。民法が延びたんだから、合わせて延ばせばいいわけですよ。毎日毎日発生しているこの賃金の請求権について、なぜ民法よりもこんなに少ない期間にしてしまうのか。まともな説明になっていないと思いますよ。その上で、先ほど来議論になっていましたが、当分の間について議論させていただきたいと思いますが、なぜ、法律の検討を加える五年後ではなくて、五年間とせずに、当分の間は当分の間という大臣の答弁がありますけれども、当分の間にしたんですか。
○坂口政府参考人 改正の内容については、先ほども申し上げたような形で、当分の間三年ということにさせていただくということでございますが、今回の法案というのは、退職金を除きまして賃金請求権の消滅時効期間について初めて見直しを行うということでございますので、その影響についてやはり現時点で特定の期間ということを見通すということはなかなか難しいということで、この点については、労使の方でもいろいろ御議論いただいた結果として、今回、経過措置の期間を当分の間ということとさせていただいているという内容でございます。また、あわせまして、法案の中には、その改正法の施行から一定期間として五年経過後の状況を踏まえて検証するということもあわせて、そういった形で建議をいただき、今回御提案をさせていただいているということでございます。
○宮本委員 使用者側が反対をした、労使の議論の結果そうなったんだということですから、そうすると、使用者側がずっと反対し続ければ、ずっと当分の間ということになってしまうんじゃないですか。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。現時点でそういった、今どういった影響をというようなことで、その経過措置の期間を見通すことができないということで、建議を踏まえて当分の間という形で御提案をさせていただいているということでございますので、繰り返しになりますけれども、法案の中にも、附則の三条に、この施行後五年を経過した場合に、この法律による改正後の規定については施行後の状況を勘案しつつ検討を加え、必要があると認めるときはその結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするということも含めまして、この法案として御提案させていただいているということについて御理解をいただきたいと思います。
○宮本委員 きょうは内閣法制局にも来ていただきましたけれども、他の法律で、経過措置で当分の間が盛り込まれたもので、最も長い期間この経過措置の当分の間が適用されているものはどういうもので、何年でしょうか。
○平川政府参考人 お答えいたします。当分の間と定めている規定の適用期間の長さを網羅的に調べているわけではございませんので、確定的にお答えすることは困難でありますが、承知しているものを例として申し上げます。戦後の立法といたしましては、学校教育法附則七条の規定、小学校、中学校等には当分の間養護教諭を置かないことができるという規定でございますが、これは昭和二十二年四月から施行され、現在まで七十二年余り効力を有しております。さらに、戦前の立法を含めますと、刑法施行法の第二十五条第一項、旧刑法第二編第四章第九節の規定は、当分のうち、その当時は当分のうちという言葉を使っておりましたが、これは当分の間という今の用語と同じ意味でございますが、刑法施行前と同一の効力を有するという規定がございます。これは明治四十一年十月から施行されておりまして、百十一年余りにわたって効力を有している。さらに、労働分野の立法において申しますれば、例えば行政執行法人の労働関係に関する法律の附則第三項というものがございまして、職員の組合専従期間について当分の間同法の第七条を読みかえるという規定でございますけれども、これは昭和六十三年十月から施行されておりまして、現在まで三十一年余り効力を有しているというものでございます。
○宮本委員 ですから、当分の間というのは、私も初めて聞きましたけれども、長いものは百十一年ですよ、百十一年。大臣、当分の間は当分の間だという答弁じゃなくて、やはり大臣として目安をちゃんと示した方がいいんじゃないですか。そうしないと百十一年、法律をつくったらずっと変わらないんじゃないか、こういう思いを持ってしまうわけですよ。そういうことも過去例としてあるわけですよね。大臣の腹づもりとしては、百十一年だとか三十一年とかはあり得ないんだ、五年後を目指して準備を整えていきたいと。腹づもりとしてはそうなんだ、法律は当分の間だけれどもそうなんだとおっしゃってくださいよ。
○加藤国務大臣 今の法制局の答弁、私も大変勉強になりました。当分の間とか臨時とかがついていながら長い間あるものというのは結構あるなということを改めて認識をさせていただきました。本件の当分の間については、まさにこれから実態を見ながら御議論をいただくということになるんだろうと思います。歴史をそんなに、先ほどの明治から今の令和までとか、そんなに長い距離を想定しているわけではないということでありますけれども、いずれにしても、何で現在当分の間とされているのか、その理由はこれまで述べさせていただきました。それに対する対応を我々もしながら、また、この法律に対する周知も図りながら、まずはそれに努力をさせていただきたいと思います。
○宮本委員 期限を区切るかのようなことは言いづらいからなかなかしゃべられないんだろうと思いますけれども、先ほど労働分野の法制の話もありましたけれども、障害者雇用なんかも、障害者雇用の納付金は一九七六年に設けられて、これも、当分の間三百人超の企業から二百人超になるまで二十四年かかっているんですよね。だから、労働関係の法律でも当分の間というのが長いものはいっぱいあるんですよね。それは許されないんだという指摘をしておきたいというふうに思います。それから、当分の間三年ということですけれども、その理屈についてもるるきょうも答弁がありましたけれども、法案の提案理由の説明を見ますと、権利関係の安定に与える影響という文言が書いてあるんですね。労政審の建議では、労使の権利関係を不安定化するおそれがある、だから当面三年なんだという話でありますが、この権利関係の安定に与える影響というのは具体的には何を指しているんですか。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。お尋ねの関係でございますけれども、賃金請求権につきましては、いわゆるこの時効期間が満了するまでの間は、労働者の方からは使用者に賃金の支払いをその間求めることができるということでございます一方、使用者側から見ても当該賃金額ということが確定しないという状態に置かれるというような形になるわけでございます。このように、消滅時効期間が長期に及ぶということによって具体的な賃金債権額が確定をしないということになりますので、それによって労使間での紛争ということが事後的に生じたり、あるいは企業が紛争の発生に備えていろいろな対応をとることの必要性が生じるというようなことの影響が生まれるというようなことを指して、このような形で表されているということでございます。
○宮本委員 債権関係が確定しないということですけれども、もともと使用者が賃金を払っていれば不払いに基づくそういう紛争は発生しないわけですが、労働者の側が自分の正当な権利に基づいて、自分が払った分はちゃんと残業代も含めて払いなさいと請求することが権利関係を不安定化させるという論理が、私は全く納得できないんですね。労働者の側からすれば、債権関係は、二年分でも三年分でもなく、五年分確定してもらった方がいいわけじゃないですか。労働者の権利にとって、五年になって不利益なことというのはないんじゃないですか。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。要は、労働者の側にとって不利益かどうかというよりは、労働者にとって、労働者の方が御主張されているその権利関係、債権関係ということがどういった事実に基づいてそういったものなのか、あるいは、使用者としてそういったものについての対応ということにどう備えるかという意味での権利関係の安定ということを図る必要があるということでございます。
○宮本委員 ですから、労働者の側からすれば、五年分払ってもらった方が労働者の権利は獲得できるじゃないですかということを言っているんですよ。権利関係が安定化しないとか不安定とか、よくわからないですけれども、労働者の権利からすれば、五年分払ってもらった方が権利はある意味安定するじゃないですか。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。繰り返しになりますけれども、その労働者が御主張される権利というものが、実際、例えば、管理監督者に該当するかどうかというようなものの実態ということが本来的に労働者の御主張どおりなのか、そうでないのか、使用者はそうでない形で労使関係を結んでいたところということについての争いということが事後になって生ずるということについての問題として、権利関係が安定しないということを申し上げているということでございます。
○宮本委員 ますますよくわからないんですけれども、使用者側が労働者の言い分を認めないから不安定になるんだという話ですよね、今のお話を伺っていると。結局、使用者側の言い分そのものではないかということを言わざるを得ないと思います。それからもう一つ、先ほど来議論になっていますけれども、企業の労務管理の実務に与える影響、これがあるから当分の間三年なんだという話があります。今でも、賃金台帳等は三年間の保存義務があるわけですね。これを五年に延ばすというのは、普通に考えたら、捨てるタイミングを二年延ばすだけだと思うんですね。保存しているわけですから。必要になるのは、ほかのスペース、電子媒体なのか紙なのかによりますけれども、それぐらいなんじゃないかというふうに思いますけれども。それが実務に与える影響というふうに大げさに言われることが全く理解ができません。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。文書の保存の対応ということでございますけれども、やはり、紙媒体の資料の保管スペースというものの確保をどうするかという問題もあろうかと思いますけれども、それだけではなくて、いろいろ、電子媒体で例えば記録を保存されている場合には、そういった電子媒体での記録をするための労務管理システムの改修等というようなものも必要になるというような場合もあると考えてございますし、また、労働時間を正確に確認するためには、賃金台帳、タイムカードといったものだけではなくて、いろいろ、電子メールであったり入退館記録というようなものの記録も含めて保存しておくということが労働時間の正確な確認、把握ということにもつながるということで、そういったものも含めて、企業の方での保存の方法ということが、紙媒体、電子媒体、いろいろな対応の中であるということで、私どもとしてはやはり一定の影響があるということで考えているということでございます。
○宮本委員 今の説明を伺っても、保存しなきゃいけないものは今でも保存しているわけですよね。三年、建前上は保存することになっているわけでありますよ。それを、捨てるタイミングを二年ずらす。それ以外は保管のスペースと、あともう一つ今お話があったのは、システムの若干の改修が必要になるかもわからない。そんなに大きな負担だとはとても思えないんですよね。企業の違法行為を正し、労働者の権利を守るために、なぜその程度の実務がふえたらだめなのか、保管スペースがふえたらだめなのか。そこが今の説明ではとても納得できません。
○坂口政府参考人 お答え申し上げます。それは単に保存期間の延長ということで保存スペースが一年分余計に要るというだけではなくて、先ほども申し上げましたように、いろいろ、システムを使っての電子媒体での記録の保存というようなことになりますと、単なるスペースの問題だけではありませんので、そういった改修等の関係もありますし、先ほども答弁の中で申し上げましたような労働時間の管理、把握ということを適正に行っていただくためには、いろいろな形での大量の文書なりそういった電子媒体の保管ということもされておるということもございますので、やはりそういったものの保存期間が延びるということへの影響ということは考えられるということかと存じ上げます。
○宮本委員 電子媒体であれ、紙媒体であれ、必要なものは保存はしているわけですから、捨てなければ残り続けるだけなんですよ。もしかしたら、自動的に三年で消えるというシステムがあるんだったら、その部分については改修が必要かもわからないですけれども、それ以外はスペースだけの話じゃないですか。全く説明になっていないと思いますよ。その上で、最後にお伺いしたいのですけれども、厚労省に残業代の不払いはないのかということをお伺いしたいと思います。資料を最後につけておきましたけれども、厚労省の若手改革チームの皆さんが、約四分の三の職員が徹底した労働時間管理を行い正当な額が支払われるようにすべきだと、そして、各部局の支払いルール等を含めて実態を徹底的に調査し、不公平な運用があれば早急に是正すべきだと書いてあります。そして、霞国公という組合の調査では、霞が関で働く皆さんの四二%に不払い残業があると。最近は、かなり時間管理をやられるようになったという話は私も伺っております。そして、超過勤務を行ったら請求した分は払われるように大分改善してきたというお話を伺っておりますが、それでもこういう調査結果が出ているわけであります。厚労省自身は、残業代の不払いの対象人数、金額がどれぐらいあるのか。もしないというんだったら、なぜこういうペーパーが厚労省の中から出てくるのか。しかと説明いただきたいと思います。
○田中政府参考人 私ども厚生労働省の職員に対する超過勤務につきましては、超過勤務命令に従って行われた勤務に対し、給与法に基づいて適切に超過勤務手当を支給していると考えております。一方で、超過勤務の長さにつきましては、相当程度の超過勤務を行っている職員がおります。この縮減は喫緊の課題だというふうに考えておりますので、管理職による労働時間、業務のマネジメントの強化など、しっかり取り組んでまいりたいと考えております。
○宮本委員 全部払われている、超過勤務命令を出したと。命令を出さずに働いている人がたくさんいるからこういう結果が出ているのかなというふうに思いますけれども、今の説明では、こういう結果がなぜ出るのか、厚労省の若手改革チームの出されるようなものが出るはずがないじゃないですか。ちゃんと、もうちょっと血の通った答弁をしていただきたいというふうに思います。もう時間が来たから終わりますけれども、先ほど答弁にありました、労働時間の方がより重大な問題になっているというのは、その点はおっしゃるとおりだと思いますので、新型コロナ対策の問題で本当に厚労省の職員の皆さんも大変だと思いますので、私は、いいかげん、今の定数管理、どんどんどんどん削減していくというのはやめた方がいいということを強く申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。