年金改定法案 国民に ”働いて補え“ 安倍政権、削減の仕組み放置

 新型コロナウイルス危機への対応に全力を傾けることが求められているにもかかわらず、安倍政権が審議入りさせた年金制度改定法案が8日にも衆院厚生労働委員会で採決されようとしています。審議で浮き彫りになった問題点を改めて見ていきます。
 同法案は、安倍政権の推し進める「全世代型社会保障改革」の一環。柱の一つが、年金の受け取り開始時期を75歳まで後ろ倒しできるようにする措置です(現行60~70歳)。政府は、選択肢を広がることで「高齢者が意欲をもって働ける環境整備を進める」と主張しています。
 公的年金は、受け取り開始を65歳より遅らせると月々の受給額が増える仕組みです。安倍晋三首相は4月14日の衆院本会議で、75歳まで遅らせると「84%まで割り増しが可能」だと強調しました。
 日本共産党の宮本徹議員は、月額が増えるほど税や保険料の負担が増すと指摘し、政府がバラ色に描く‶月額8割増し″がまやかしであることを明らかにしました。
 厚労省の高橋俊之年金局長は、宮本氏の質問に、65~85歳まで月15万円受給した場合、住民税・所得税は総額42万円、受給開始を遅らせて75~85歳まで月27.6万円受給した場合は同225万円になると答弁しました。(4月17日)
 他方で、高橋氏は「65歳の平均余命は21.8歳で、もっと長生きする人も多数いる。85歳までの総額で比較するのは適切ではない」と釈明しました。
 そこで宮本氏は、平均余命を加味した87歳までの住民税・所得税・医療保険料の負担総額も質問(4月24日)。高橋氏は、65~87歳まで月15万円の場合は総額約153万円、75~87歳まで月27.6万円の場合は同510万円だと答えました。
 負担額を差し引いた月々の受給額でみると、75歳まで遅らせた人が、65歳から受け取り始めた人と同程度の額になるのは90歳0か月であることも分かりました。
 宮本氏は、そもそも同法案は、公的年金の水準を自動削減する「マクロ経済スライド」の維持が前提だとも指摘。この仕組みにより、将来の基礎年金の水準(所得代替率)は約3割減らされるため、マクロ経済スライド終了後に75歳から受け取り始めた場合の水準は、現在70歳から受け取った場合より低くなると追及しました。(4月17日)
 高橋氏は、前者の方が「所得代替率は低くなる」と認めました。
 宮本氏は、年金局の調査によれば、受け取り開始を65歳以降にした人・したい人のうち、「配偶者などの収入や自分の貯金などがあるから」と答えたのは6.6%にとどまると指摘。「年金水準が減れば、生活できる年金を確保するために(70歳以降も)働かなければならない人が増える」「年金削減の仕組みを放置する一方で、国民に自助努力を求める法案だ」と批判し、減らない年金・暮らせる年金への大転換こそ必要だと提起しています。

以上2020年5月8日付赤旗日刊紙より抜粋