2020年5月8日厚生労働委員会 年金改定法案、修正案に賛成、修正をのぞく政府原案に反対

提出資料 中小企業庁提出資料

 政府提出の年金制度改定法案が8日の衆院厚生労働委員会で修正の上で可決されました。修正案とそれを除く原案に自民、公明、維新、「立国社」会派が賛成。日本共産党は修正案にのみ賛成し、原案には反対しました。
 討論で日本共産党の宮本徹議員は、新型コロナウイルス対策に政治が総力をあげるべきときに与党が同法案を審議入りさせたために法案の質疑は極めて不十分になってしまったと抗議。次に予定される社会福祉法等改定案の質疑は先送りし、政府も委員会も新型コロナ対策に集中すべきだと強く求めました。
 その上で、年金改定法案は、年金が少ない人ほど将来の年金の減額率が大きくなる「マクロ経済スライド」の仕組みを放置する一方、年金の受給開始時期の選択肢を75歳まで広げたり、私的年金を拡充したりすることで、目減りしていく年金を就労延長など国民の自助努力で補うことを求めるものだと指摘。本来、政治がやるべきことは、65歳になれば働かなくても安心できる公的年金制度をつくることだと批判しました。
 また、政府は75歳まで受給開始を遅らせれば月々の年金は84%増えると宣伝しているが、税・社会保険料の負担も大きく増えるなど、平均余命より数年長生きしないとかえって可処分所得が減ると指摘。「まるで詐欺まがい」との指摘も紹介し、国民にはデメリットも明示すべきだと求めました。
 修正案については、マクロ経済スライドへの懸念を踏まえて制度の検討を求めているとして賛意を示しました。

以上2020年5月9日付赤旗日刊紙より抜粋

≪第201回2020年5月8日衆院厚生労働委員会第11号 議事録≫

○盛山委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。きょうは、牧原経産副大臣に来ていただきました。まず、持続化給付金についてお伺いしたいと思います。きょうから給付が始まったという報道が流れておりますが、要件が前年度比で売上げが五〇%以下ということです。フリーランスの方々の中には、主たる収入を事業収入ではなくて雑所得やあるいは給与所得として税務署に申告している方々がいらっしゃって、そういう方々が、何で自分たちは対象にならないんだということで、制度の改善を求めて、ネット上でも署名を集められておられます。ミュージシャンの方が、税務署に最初に相談したら雑所得として申告してほしいと言われたと言われていますね。あるいは、スポーツクラブのインストラクター、たくさんいろいろなスポーツクラブに出かけている方ですが、税務署から勧められて、一社は給与、ほかは雑所得で申告してきたと。イベントの司会業や講師の方々も契約書上は業務委託、普通、業務委託なら報酬で支払われると思うんですけれども、なぜか給与としての源泉徴収票が届くので給与所得で確定申告しているという話を伺いました。きょうはこういう質問をしますよと言ったら、更にいろいろなお話が寄せられました。通訳案内士の報酬が給与扱いされている例が多々あるとか、フリーランスで講師をしているが、税務署で言われるまま雑収入で確定申告をしてきただとか、あるいは建設業の一人親方、どう考えても個人事業主だと思いますが、人を雇っていないので給与所得として申告していたと。こういう話だとかがいっぱい寄せられています。あるいは、芸能の仕事をしている方からは、直接契約して業務委託をした場合は源泉徴収で給与、事務所を通すと支払い調書で事業所得と。扱いがばらばらになっているわけですね、実態は。税務署も、本来だったら、こういう方々には事業所得で申告しなさいというふうに指導するのが当たり前だと私も思っていたんですけれども、そうじゃなくて、主たる収入が雑所得として申告せよというふうに現場で事実上なっている例もあるわけですよね。私、今回のこの持続化給付金の趣旨というのは、本当に、こういうフリーランスの方々も含めて困っている方々、コロナの影響でイベントを自粛する、あるいはスポーツジムが閉まる、いろいろなことで収入を失った方々を救済する、支援する、これが目的だったと思うんですよね。そうすると、この本来の制度の目的からいえば、持続化給付金の制度の改善がこの点では求められていると思いますが、牧原副大臣の認識をお伺いしたいと思います。
○牧原副大臣 お答えします。宮本先生におかれましては、本当に、現場のさまざまな御事情まで、声をお届けいただきましてありがとうございます。持続化給付金につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響で極めて厳しい経営状況にある事業者や、フリーランスを含む個人事業主の方が本業として実施する事業の継続を支えるために現金給付を行うものとしているところでございます。こうした制度の趣旨に照らして、フリーランスの方の雑収入等の減少については支援の対象とはしていないということでございます。仮に本業に伴う収入が事業所得以外で申告されているとしても、極力簡素な仕組みとし、迅速に給付するとの持続化給付金の制度趣旨を踏まえると、所得の内訳について一つ一つ個別に審査を行って給付するということについては慎重な検討が必要であるということでございます。きょう発表もされましたけれども、数十万件の申請が既にあって、そして、五月一日からするときょうで一週間になりますけれども、きょう、もう二・三万者ぐらいの方にお支払いをしているという、この迅速さを、できるだけ早く進めていくということで、審査は簡単なものとさせていただいているということもまた御理解を賜りたいと思います。
○宮本委員 今の答弁を聞いたら、本当にフリーランスの皆さんはがっかりしますよ。がっかりすると思いますよ。本業の事業者は救済する。本業でミュージシャンをやっている、本業でスポーツのインストラクターをやっている、本業で司会業をやっている、そういう方々が税務署に言われて、税務署に言われてですよ、雑所得として申告しろと言われて、国に言われたとおりに本業としてやっていることを事業所得じゃなくて雑所得で申請したら対象外になるというのは、私はこんなおかしな話はないと思いますよ。そのおかしさというのは牧原副大臣には感じられませんか。
○牧原副大臣 個々の事情につきましては私のところにもお寄せをいただいているということもございますし、恐らく宮本委員のところでより詳細に実態も把握されているのかと思うんですが、他方で、個々の雑所得になっているもの、給与所得になっているものに実はこういう背景があるとか、実は税務署からこう言われたんだとかいうことを一つ一つ把握するということは困難でありますので、今のところ、この制度の趣旨に照らして、フリーランスの方についての雑収入等は見ていないということで御理解をお願いしたいと思います。
○宮本委員 今のところって、今までそうだったけれどもそれでは救われないという声が上がっているわけですよ。それで、先ほど、牧原さんのところにもそういう話が来ているという話じゃないですか。恐らく、経産省にも直接、おかしいんじゃないかという声が幾つも寄せられているというふうに思いますし、ちゃんと見ずに、雑所得のまま、今回給付金の申請を出した方々もいらっしゃいますよ。いらっしゃいますよ。そのままだと、はねられちゃうわけですからね。迅速にするためにそういうふうにしたということを言われるわけですけれども、迅速にしなきゃいけないぐらい窮している方々でもあるわけですよね、この方々は。その窮している方々を切り捨ててしまっていいのか。やはり、ここはちゃんと、どうやれば救われるのかという検討を。それは、答弁ペーパーは役所の中で書かれたことだと思いますけれども、牧原副大臣の政治家としての立場として、やはりこれは、どうやったら救済できるのかと省内でしっかり検討してみたい、こう言っていただけないと、皆さん、政府に期待している方は、もっと言えば、政府に言われて、税務署に言われてそういう申告をしちゃったんですよ、救われないという話になる。許されないと思いますよ。もう一度答弁をお願いします。
○牧原副大臣 お答えをします。先ほど申し上げましたように、ここはやはり極めて慎重な検討が必要だというふうには考えておりますが、慎重な検討を先生から言われておりますので、いずれにしても、とにかく形式的に、一つ一つが給与所得で、実はということを判断するというのは大変難しいということになりますので、その辺は御理解をいただきたいというところでございます。
○宮本委員 いや、慎重な検討というのは本当に何もやらないというのに等しい答弁で、これでは私も引っ込むわけにはいかないと思っていますので。与党の皆さんのところに寄せられている声も結構あると思いますよ。皆さん、ある、あると言っているじゃないですか。最近そういう話が多いんですよ。みんなが同じ話を聞いているんですから。ですから、与党の皆さんからもちょっと声を上げていただいて、コロナの問題で自粛に協力したことによって収入を失った方々をやはりそういうところで線引きしないというところで、改善を改めて求めておきたいと思います。次に参ります。次に、認可外保育園への支援の問題についてお伺いします。今、厚労省は、保育園に対して、認可、認可外を問わず登園自粛のお願いをされております。登園自粛をしたお子さんの保育料について、認可園については国の方針として日割りで返す、それも国の財源で返しております。一方、認可外は、登園自粛のお願いはしておりますが、ではその分の保育料をどうするのかということについては、国として出しますよという話もないわけであります。当然、認可外保育施設の利用者からは、保育料を日割りで返してほしいという声が上がっています。一方、認可外保育施設を運営している方々からは、利用料での収入というのをかなり……。失礼、牧原副大臣、戻っていただいて。ぜひ、宮本はこう言っていたということで、もう一回検討していただいて。失礼しました。認可外保育施設を運営している方々からは、運営が厳しい、日割りで返金する場合の減収に対する支援をしてほしいという声が上がっております。ちなみに、東京都は、認可外保育の中でも認証保育所など都の事業に当たる部分については、利用料を日割りで返す場合は都が半分、市区町村が半分支援するという制度を設けておりますが、全国的にはそういう制度はありません。東京でも対象外の施設もありますし。私は、やはり、登園自粛をお願いしているのは政府なわけですから、認可外保育施設についても保育料を日割りで返還できるよう、認可外保育施設の減収分を国が補填していく財政的支援をしっかり行う必要があるんじゃないかと思います。大臣の答弁を求めたいと思います。
○加藤国務大臣 今お話があった認可保育園にはそういう制度にさせていただいているところであります。また、認可外保育施設の利用料の減免について、そうした支援という御要望があることも承知をしております。ただ、他方で、認可外保育施設については、認可施設に移行するものを除き、運営費等の補助等の実施はしていないというのが現状であります。さっきの認証保育園は東京都がやっておられるんだろうと思いますが。また、利用者と事業者との私的契約に基づいた利用料が設定をされておりますから、これはまちまちということであります。したがって、国から事業者に対して利用者の減免の実施を一律には求めることはできないのではないか、そういった意味で認可保育所とは異なる点があるということで、先ほどと同じような答弁で恐縮ですが、慎重な検討が必要なんだろうというふうに思います。
○宮本委員 登園自粛をお願いしているのは、これまた国なわけですよね。国なんですよ。そして、そこに協力しているんですよね、利用者の皆さんも施設の側も協力しているんですよ。それに対して、持続化給付金をつくるだとか、あるいは今与野党の中でも家賃支援の話だとか、いろいろなところでちゃんとしっかり手当てしなきゃいけないという話になっているんですが、認可外保育施設については何もやらないというのは、政府の姿勢としてちょっと筋が通らないというふうに思いますよ。だって、認可外保育施設だって、例えば無償化の問題でいえば、認可園では待機児童全部の受皿としては足りないということで、無償化の対象に認可外施設もしているわけじゃないですか。一方ではそういう役割があるんだということを事実上政府も認めておきながら、この問題については、認可園の整備がおくれて、そこに行っている方々に対しての支援がないというのはまずい状況だと思いますよ。
○加藤国務大臣 保育料の無償化のときには臨時的、一時的な措置ということで対応させていただいているということでありますけれども、また、今委員のお話がありました、自治体によって認可外保育施設の利用料減免を行っておられるところがあると承知をしております。こうした自治体は新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金によってこうした対応もできるということになっており、それが補正予算にも盛り込まれております。なお、今のと直接ではありませんけれども、マスクや消毒液の購入費用に係る財政的な支援、一施設当たり五十万円まででありますが、これについては認可、認可外を問わず国としても実施をさせていただいているということであります。
○宮本委員 臨時交付金で減免の措置だとかがとれるという話ですけれども、そういうことを、自治体任せではなくて、登園自粛をお願いしている政府の立場としてちゃんと物を言わなきゃいけないんじゃないでしょうかということを私は申し上げているわけです。
○加藤国務大臣 同じ答弁の繰り返しになりますからあれですけれども、先ほど申し上げた、なかなか認可保育園との異なる点がいろいろあることはもう委員も御承知のところであります。したがって、それぞれの自治体において、その状況を踏まえながら単独でおやりになること、これについては先ほど申し上げた地方創生臨時交付金も使って対応できるということであります。
○宮本委員 やはり、もうちょっと登園自粛をお願いした政府として責任ある態度をとっていただきたいというふうに思いますね。できるじゃなく、自治体任せではなくて、ぜひこれを活用してやっていただきたいぐらい言わないと進まないですし、臨時交付金だって一兆円では足りないという声が、きょうもいろいろな委員から指摘がありましたので、これも積み増しを求めておきたいと思います。いずれにしても、認可外保育園も本当に経営的には大変なんですよね。園児が来なくなると、その分保育士さんに休んでいただく、休業補償は持ち出しの部分もあります。あるいは給食費。月七千円いただいているものも、四月についていえば、食材費は、既に契約しているわけですから、給食費を返すにしても、食材費だとかは全部、契約した分は自分たちで持ち出しをしている。あるいは、さまざま自治体の子育て支援の事業を請け負っていますけれども、私が聞いたところなんかは、子供が減ったから、六百万円がそれで入る予定だったのが二百万円しか四月は入ってこないんだとか。本当に、この分野でも大変な苦境が広がっていますから、そういうところもどう手当てしていくのかというのをぜひ厚労省としても検討していただきたいと思います。ちょっと残りの時間が少なくなりましたけれども、年金法についてお伺いします。前回の続きです。年金受給を繰り下げた場合、一カ月当たり〇・七%の増額率を設定しておりますが、平均余命が何歳程度延びればこの増額率というのは小さくなるというふうに見込んでいるんでしょうか。
○高橋政府参考人 増額率、減額率、数理的に年金財政は中立ということを基本として設定してございます。この増額率、減額率の設定につきましては、今般は受給開始時期の選択肢を七十五歳まで拡大する、そういうことに伴いまして、この際、増額率、減額率も見直すことにしたわけでございます。しかしながら、受給者の生活設計の安定を考慮すると頻繁に変更すべきものではないと考えてございまして、平均余命が現在から何歳程度延びれば増額率を小さくする改定を行わなければいけない、あるいはそういう検討をする、こういうことではないと考えてございます。
○宮本委員 よくわからないんですけれども、年金財政には中立に改定すると思うんですけれども、いや、タイミングはいつなのかということを聞いているんじゃなくて、何歳程度延びたらこの増額率〇・七から変えないと財政中立にならないのか、そういう話を聞いているわけです。
○高橋政府参考人 今回の改正の検討に際しまして、社会保障審議会の年金部会におきましても、例えば二〇四〇年と二〇六五年の将来生命表を使いまして、機械的な試算としてはお示しをしてございます。二〇四〇年の将来生命表で六十五歳平均余命が二十三・九年になる、二・一年延びるという場合には〇・六%の増額率で中立となる、また、二〇六五年将来生命表、これは三・四年延びる計算になっていますけれども、その場合におきましても増額率〇・六%という機械的な計算でございます。実際にそのくらいになったらどうするかということは別として、こういう試算をしてございます。
○宮本委員 わかりました。初めからその数字を言っていただければいいんですけれども。つまり、前回議論したときは、税金と健康保険の保険料を加味したら、平均的な十五万円の厚生年金の場合は九十歳で繰り下げた場合も実質の可処分年金がとんとんになるという話でしたが、実際は九十歳になる前に増額率を下げないとならないということがわかりました。ですから、やはり、年金受給を繰り下げた場合、年金財政に中立というやり方をとる限りは、なかなか平均寿命までしか生きない方からすればトータルで手元に入ってくる実質の手取りというのはふえないのかなというのがよくわかりました。次にお伺いします。この間、公的年金が削減されるということを前提に、政府は私的年金の拡充を図ってきました。税制優遇のメリットというのが強調されているわけですけれども、同時に、確定拠出年金は投資信託の型を選べば元本割れのリスクがあるわけですね。この確定拠出年金の運用利回りがトータルでマイナスとなっている方は今どれぐらいいらっしゃるんでしょうか。
○高橋政府参考人 公的年金に上乗せして加入する確定拠出年金、DCでございますけれども、加入者がみずからの年齢や資産の状況に応じまして元本確保型を含むさまざまな運用商品の中で選択する、こういう制度でございますけれども、現在はDC加入者全ての数字というものは統計はないのでございますが、大手の金融機関四社の企業型のDCの加入者四百九万人についての数字がございまして、加入以来の通算利回りを年率換算した通算運用利回りが二〇一八年度末で平均で一・八六%、利回りがマイナスとなっている方の割合は約六%程度という数字が公表されてございます。
○宮本委員 六%という話であります。ですから、十何人かに一人は運用利回りがマイナスになってしまっている。それは二〇一八年度末ですかね、さっきの数字であります。この間、コロナショックで株価が下がっていますから、六%どころじゃない方が元本割れになっているということじゃないかというふうに思います。確かに税制上の優遇措置があるということなんですけれども、受取額が実際は元本割れということになるというものをどんどんどんどん推奨していっていいものなのか。私はその点は大変疑念を持っているということを申し上げておきたいと思います。それから、あともう一つはiDeCoですね。iDeCoは手数料があります。国民年金連合会に月百五円、それから口座を維持する信託銀行に月六十六円支払います。また、給付を受ける際は一回四百四十円の手数料を払います。よく手数料負けという言葉があるわけですけれども、この手数料を前提に、平均的な掛金、これは一・五万円ぐらいと言われていますが、を二十年掛けて二十年間給付を受ける場合、いわゆる手数料負けしないためにはどれぐらいの運用利回りが必要なんでしょうか。
○高橋政府参考人 今の御質問に当たりましては、二十年間、毎月一・五万円の掛金を拠出して、その後二十年かけて年金給付を受け取る場合ということでございますので、拠出金は毎月一・五万円の掛金から百七十一円の手数料がかかっていきます。それに利息がつきながら個人別管理資産が積み上がる。受給時は、その積み上がった個人別管理資産を運用し、その間もまた利息がつきながらですけれども、利息がつきながら取り崩していく。取り崩す際は、毎月六十六円と、それから受給時に一回振り込むごとに四百四十円の手数料がかかる、こういったことでございます。iDeCoの受給は、一時金受給を選択する方が実は九割でございまして、そういう意味で、年金受給を選択する方が約一割程度でございます。また、年金受給の回数も、年に一回とか二回、三回、四回、あるいは六回、十二回とさまざまな設定ができます。受給時は一回四百四十円なので、回数が少ない方がそれが少ないということです。例えば公的年金と同様に二カ月に一回支払いを受けるという仮定のもとで、今先生がおっしゃった条件でも計算しますと、年金給付として受け取るために必要な利回りを機械的に計算しますと、元本割れしないということでの条件を機械的に計算しますと、年利約〇・一五%となるというものでございます。
○宮本委員 わかりました。年利が〇・一五%あれば手数料負けしないということであります。ただ、iDeCoは、元本確保型と、投資信託で運用してリスクとリターンとどっちなのかわからないタイプとあるわけですけれども、元本確保型を選んだ場合は〇・一五にいかないわけですよね。今、定期預金の利率も物すごく低いですから、元本確保型を選んだら手数料負けをする。元本確保型じゃない投資信託型を選べば、二〇一八年度末でいえば、あれは企業型DCの場合ですけれども、六%がマイナス。コロナショックということを考えたら、iDeCoは最近加入された方が多いですから、かなりの方が元本割れをしているということなんですよね。ですから、何といいますか、税制優遇をして、その部分についてはメリットというのは大変大きいんですけれども、実際は、そこの部分を除くと、利用者にとって安全、安心でメリットがあるのかといったら、なかなかそうじゃないじゃないかというのが今のiDeCoの現状なんじゃないかなと思います。 ですから、そういう、手数料負けするか、あるいは元本割れリスクがあるか、どちらかしかないものをどんどんどんどんふやしていく、その一方でマクロ経済スライドで基礎年金の減額を放置していく、こういうやり方は私は大変問題だなというふうに思っております。やはり、私的年金にどんどん依拠していくのではなくて、公的年金の底上げをしっかり図っていく、これこそ政治がやらなきゃいけないことだと思います。その点で、やはり、若い世代の年金の給付を確保しようと思ったら財源が必要です。ここは私は国民年金と厚生年金の財政統合を図るべきじゃないかということを申し上げてきましたが、もう一つ、社会保険料の問題ですね。標準報酬月額の上限を引き上げていく必要があるんじゃないかと思っています。とりわけ可能性があるのは、やはり大企業の部分というのはあると思っているんですよね。きょう、資料を一枚だけお配りしました。売上総利益に占める社会保険料の負担割合、中小企業、中堅企業は一三・七、一三・五となっていますが、大企業の社会保険料の負担率は九・七ということです。体力がない中小企業、中堅企業がここまでの社会保険料負担を今頑張ってやっていただいているというのが現状であります。今、コロナ禍の中ですから、今は負担増の話というのはなかなかやりにくいわけですけれども、ただ、今後ということを考えた場合に、やはり大企業に社会保険料の負担の増を求めていく、標準報酬月額の上限を引き上げるということを考えた場合、かなり大企業に係る部分が大きいというふうに思うんです。今後の社会保障を支えていく、年金も支えていくという点で、やはり大企業にしっかりと負担を求めていく、この道しか私はないというふうに思っているんですが、その点、大臣の考え方をお伺いしたいと思います。
○加藤国務大臣 委員のおっしゃる大企業というのは、負担の求め方、これは税とか社会保険料それぞれありますので、それぞれにのっとって違うんだと思いますが、社会保険料というのは基本的には、お互いに助け合い、支え、支えられる、そしてその保険料に見合ってサービスを受ける、これが基本になっているわけでありますから、そういった中で、今、例えば大企業に勤めていても中小企業に勤めていても保険料率は一緒、もちろん賃金が変われば保険料額そのものが変わる、こういう仕組みで運用している、その中で、今委員のおっしゃった、標準報酬の下限と上限というのが設定されている、特に年金と例えば保険料では上限額が違う、これはたしか前に委員からも御指摘がありました。ただ、年金の保険料額を上げるということになれば、当然、支給するべき年金額も上げていかざるを得ない、こういう関係にもなるわけでありますから、その辺を含めて標準報酬の上限額をどこに設定するのかというのはこれまで長々議論してきて、今の仕組みは、もう説明いたしませんけれども、そういう形になっているということであります。
○宮本委員 大企業に対して税で求める、社会保険料で求める、どちらも追求していくべきだと私は思っています。標準報酬月額の上限を引き上げた場合に、前も私は本会議でも言いましたけれども、アメリカのようなベンドポイントを導入していくという考え方も私はあるというふうに思っております。いずれにしても、やはり若い世代の給付水準を確保しようと思ったら、もちろん適用拡大とか、こういう問題も非常に大事な問題でありますけれども、やはり新たな財源を確保するというのは私は避けて通れない課題だと思っています。そこをやはりぜひ真剣に考えていただきたいということを申し上げまして、時間になりましたので、質問を終わらせていただきます。

≪第201回2020年5月8日衆院厚生労働委員会第11号議事録討論抜粋≫

○盛山委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。今回、野党案は撤回となりましたが、年金の少ない方への生活支援給付金の引上げ、GPIFの安定的な運用など、野党案は全面的に実現すべきでありました。この実現のために引き続き努力することをまず初めに表明したいと思います。その上で、修正案に賛成、政府提出原案に反対の討論を行います。私たちは、政府、厚労省が総力を挙げて新型コロナ対策に当たらなければならないもとで、本法案の審議の先送りを求めてまいりました。本来、五年に一度の財政検証に基づく年金法案の質疑は、国民の老後の生活保障に政治がどう責任を果たすのか、充実、徹底した議論が求められます。ところが、年金法案の質疑では、現下の状況のもと、与野党委員とも優先課題として新型コロナ対策の質問を迫られ、結果として年金法案の質疑は極めて不十分になってしまいました。次に予定されている社会福祉法改正案の質疑は先送りし、厚労省も、そして本委員会の運営も、新型コロナ対策に集中すべきだと改めて強く求めます。政府提出法案は、年金が少ない人ほど将来の年金の減額率が大きくなる、現状のマクロ経済スライドの仕組みを放置する一方、年金受給開始の選択肢を七十五歳にまで広げることや私的年金の拡充を行い、国民の自助努力で目減りしていく年金をカバーすることを求めるものであります。政治がやるべきは、年金が減るから七十五歳まで働いてくれと国民に求めることではなく、六十五歳になれば働かなくとも安心できる公的年金の制度をつくることであります。また、七十五歳まで年金受給開始を繰り下げた場合、月々の年金は八四%増になり、受給する年金総額は平均余命で繰り下げない場合とほぼ同じになりますが、平均的な厚生年金で見ても、税金、社会保険料の負担は大きくふえ、国民年金満額受給者の場合も年金生活者支援給付金がなくなります。平均余命より数年長生きしないとトータルの可処分所得は減ります。本委員会の質疑を報道したメディアからは、まるで詐欺まがいとの指摘も出ました。こうした制度設計でいいのか、甚だ疑問であります。また、国民に対して繰下げのデメリットについてもわかりやすく示すべきであります。本委員会の審議では、与野党から、基礎年金が長期にわたって削減され、所得代替率が下がるマクロ経済スライドの現状への懸念が示され、基礎年金の所得保障機能を高める必要性が指摘されました。修正案は、その懸念を踏まえて、年金制度のあり方の検討を求めるものです。我が党としては、さらに、年金減額の仕組みをやめ、将来世代の年金の給付水準を確保していくために、国民年金と厚生年金の財政統合や国庫負担の引上げ、標準報酬月額の上限の引上げとベンドポイントの導入などの真剣な検討を求めるものであります。以上、指摘し、討論を終わります。(拍手)