非正規差別是正を。メトロコマース、大阪医大、最高裁前アピールで連帯あいさつ
非正規雇用労働者に対する差別是正を求めている二つの最高裁訴訟で15日、弁論が行われました。大阪医科大のフルタイムのアルバイト職員に対する賞与(一時金)と、東京メトロ子会社・メトロコマースの契約社員に対する退職金の支給をめぐる訴訟です。
大阪医科大アルバイト職員の賞与をめぐる訴訟では大阪高裁が、まったく支給されないことは労働契約法旧20条違反とする初めての判断を示しました。ただし、正社員の60%を下回る場合について不合理としました。
弁論で意見陳述した原告の女性は、大学研究室で秘書として正社員と同じ仕事に従事していたが、賞与も手当も有休もなく正社員の3分の1の年収しかないと訴え。多忙で適応障害となり退職させられ、「さんざん低い労働条件で使われてポイ捨てされた」と述べました。
「コロナ禍のもとで真っ先に雇い止めされている非正規労働者に希望の光となる判決を」と訴えました。
鎌田幸夫弁護士は、同大学では賞与について、年齢や職務の内容の違いを一切問わず、正規職員や契約職員には一律の支給率で支給されている一方、アルバイトはゼロであると指摘。5年上限の契約職員にも8割の支給率で支給されており、経営側が支給理由にあげる「長期雇用のインセンティブ」にも該当しないと主張しました。
支給割合については今後の司法判断で積み重ねられていくものだが、非正規労働者の格差是正という法の趣旨がないがしろにされてはならないと強調。「法の下の平等」という人権問題であり、賞与不支給の不合理性を最高裁が肯定することは非正規労働者に希望の光を与える判決となると述べました。判決は10月13日。
東京メトロの子会社メトロコマースの契約社員として駅売店で働いた女性4人が訴えた裁判は、労働契約法旧20条にてらし契約社員の退職金をゼロとすることの是非が初めて争われています。
東京高裁判決では退職金に「賃金の後払い」と「功労報償」などの法的性格があるとして、原告らに「功労報償」分さえ支給しないのは不合理だとして正社員の4分の1の支給を認めました。
この日の弁論で原告弁護団は、退職金は勤続1年でも支給されることから賃金の後払いの性格が強く、功労報償的性格もあると指摘。高裁判決では4分の1支給の根拠が示されておらず、合理的説明もないとしました。
勤続年数も、正社員の大半は東京メトロからの中途入社のため10年に満たない一方、契約社員は勤続10年を超えていると指摘。「正社員は長期雇用、契約社員は短期雇用」という実態はなく、退職金の格差は著しく不合理だと主張しました。
契約社員は「セカンドキャリア」だという会社側主張に対して、原告らには生活の糧であり、週所定労働時間は正社員より長く、退職金を支払わない合理的理由はないと主張し、満額の支給こそ必要だと訴えました。
退職金以外の本給などについて最高裁は上告を棄却しています。判決は10月13日の予定。
裁判後の報告集会で原告の疋田節子さん(70)は、「私たちの退職金は正社員の4分の1。私たちの価値は4分の1しかないのか」と怒りをあらわにしました。
口頭弁論前に最高裁前で、二つの訴訟の原告らが「非正規差別ノー」と訴えました。
メトロコマース訴訟原告の一人、加納一美さん(71)は、「使い捨てライターのように扱われ、過酷な売店業務に従事して定年まで一生懸命、仕事をまっとうしてきました。公平な裁判で希望が持てる判決を期待します」と述べました。
全労連女性部の大西玲子事務局長は「差別に力を合わせて勝利すれば、女性差別を根絶する節目にもなる。勝利するまで奮闘します」と述べました。
日本共産党の宮本徹衆院議員、社民党の福島瑞穂参院議員が連帯あいさつ。宮本氏は「非正規雇用で働く国民の4割の皆さんの待遇改善にかかわる大事なたたかいです。皆さんと連帯し、非正規雇用差別をなくすため全力で頑張ります」と述べました。
以上2020年9月16日付赤旗日刊紙より抜粋