2020年1月29日 衆院内閣委員会参考人質疑 罰則化で感染拡大懸念

 衆院内閣委員会で29日、新型コロナウイルス対応の特別措置法、感染症法などの改定案についての参考人質疑が行われ、日本共産党の宮本徹議員が質問しました。
 宮本氏は「感染症法に罰則が盛り込まれることで、保健所の担う防疫業務にどのような影響が出るか」と質問。橋本英樹東大教授は「刑事罰、行政罰にかかわらず保健所としては違反があった場合には通告義務が生じる。現状のコロナへの対応の中で、そのために膨大な時間がとられれば、いまの保健所の体制では業務的に持たない」と答えました。
 宮本氏は罰則を恐れることで検査を受けなくなるなど、感染拡大防止対策が阻害される可能性があると指摘。橋本氏は罰則に国民が強い警戒心を持った場合には「(感染者が)水面下に潜るような行動を誘発してしまうかもしれない」と述べました。
 宮本氏は「感染症対策は国民の理解と協力があってこそ力を発揮する」と強調し、「感染を親しい人に広げてしまい苦しんでいる人もいる。そうした中で罰則を背景にした調査をやりづらいと保健所から声があがっている」と指摘。舘田一博東邦大教授は「差別や偏見に罰則がリンクして増長していく仕組みにならないように配慮が必要だ」「お願いベースで進めていくのがいい」と述べました。
 橋本氏は日本維新の会の足立康史議員の質問に「感染症法に関しては罰則は一切踏みとどまるべきだ」と答えました。

以上2021年1月30日付赤旗日刊紙より抜粋

≪2021年1月29日 第204回衆院内閣委員会第1号 参考人質疑部分の議事録≫

○木原委員長 これより質疑に入ります。この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。本日は、御多用中のところ本委員会に御出席を賜りまして、誠にありがとうございます。本案について、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。次に、議事の順序について申し上げます。まず、舘田参考人、橋本参考人の順に、お一人十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。なお、参考人各位に申し上げますが、御発言の際にはその都度委員長の許可を得て御発言くださるようお願い申し上げます。また、参考人は委員に対して質疑をすることができないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。それでは、舘田参考人にお願いいたします。
○舘田参考人 御紹介いただきました東邦大学の舘田と申します。貴重な時間をいただきまして、ありがとうございます。私は、感染症の専門家、法律の専門家ではありませんので、今日は皆様方に、新型コロナウイルス感染症の現状と、そして現在の問題点、それと、それに関連して、法律に関連するであろうそういったところを中心にお話しさせていただいて、後半の質疑に進めていただければというふうに思います。お手元に資料を配らせていただきましたけれども、簡単に振り返っていただければというふうに思います。最初のページで、まさに今、一億人の感染者が見られる状況の中で、死者も二百万人を超えるという状況になってまいりました。そして、今日の報道を見ても、アメリカでは今日三千三百人ですよね、一日で。そして、イギリスでは千二百人以上の方がお亡くなりになっているということが報告されています。非常に大変な状況が続いているということが理解できるかと思います。次のページは、一日当たりの感染者数及び死亡者数の推移ということで、左に感染者数、右に死亡数を示しています。これはよく報道されているとおりですけれども、今でも一日七十五万人以上の感染者数が出て、一日一万五千人以上の方がお亡くなりになっている。毎日です。そういう状況が続いています。下の図になりますけれども、一日当たりの感染者、日本です。皆さん方御存じのように、第一波、第二波、第三波、何とかそのピークを乗り越えている、そういった状況です。下は日本の死亡者数になるわけですけれども、やはり、残念ながら、この第三波において非常に感染者数が多くなってきているということがお分かりのところかと思います。もちろん、この第三波、冬のコロナということで、我々にとって初めての経験であり、予想を超える感染者数の増加がこの死者数の増加につながっているというふうに思います。次のページの上、これは世界の疫学ですけれども、ただ、これは非常に大事な事実を示しているというふうに思います。それは、よく言われるように、アメリカが二千四百万を超える感染者が出て四十万人以上の死亡者数が出ているとか、あるいは、ブラジルが、イギリスが、フランスがというのはよく言われているとおりであります。一方で、日本は、ここまでに三十万人ぐらい、残念ながら、四千人、五千人の方がお亡くなりになっているんですけれども、世界の中では、その感染者数も死亡者数も、かなり頑張って少なく維持してきているということがお分かりいただけるかと思います。そんな中で、私が今日強調したいのは、一番右側です、死亡率です。死亡率は、日本の死亡率は一・四%ですけれども、世界の死亡率でも二・一%、アメリカでも一・七%、ほかの国でも大体二%前後です。メキシコがちょっと飛び抜けて八・六%。まあ、やはりこれは医療事情の問題があるのかもしれませんけれども、大事なのは、死亡率においては大きな違いが見られていないということです。すなわち、それは、百人の人が感染すれば一人か二人がお亡くなりになる、千人感染すれば十人、二十人の方がお亡くなりになる。そういうことからも、感染者をいかに少なくできるのかということが非常に重要であるということが理解できるかと思います。下の図は、年齢別の感染者数と死亡者数ということですけれども、ちょっと見にくいですけれども、よく言われるように、二十代にピークがあり、続いて三十代、そういうふうなことになるわけですけれども、大事なポイントは、よく言われる高齢者において死亡者数が多いということと、もう一つは、ちょっと見にくいんですけれども、十代あるいはそれ以下では感染者数が少ないということも大事な事実になろうかと思います。次のページ、これは、この感染症は肺炎です。しかし、肺炎だけではないということが明らかになってきました。すなわち、これは、血管の内皮細胞にも感染を起こして、血管の障害、血栓をつくる。それが後遺症であったり重篤化につながってしまうということが明らかになっているわけです。この事実は非常に重要で、恐らくこういうふうなところから新しい治療薬の可能性が出てくるんじゃないかということが期待されているところです。次の下の図、もう一つ大事な事実は、このウイルスが口の中の唾液腺にも感染を起こし、そして唾液中に高濃度に排出される。だから、会話のときのマイクロ飛沫で感染が広がる。だから、それを使った検査ができるようになってきたということが大事な展開になろうかと思います。次のページの上、クラスター班の御努力によって、いろいろなこのクラスターの特徴が明らかになってきました。右上の接待を伴う飲食店、そういったところが最初は大きな問題になりましたけれども、何とかそれは皆様方の協力によってかなり抑えられている状況です。しかし一方で、普通の仲間同士の会食、飲み会の中でそれが広がるというようなことが、あるいは下、職場、特に、場面の切り替わりということで、休憩所とか更衣室とかそういったところで、油断のときに感染が広がる。あるいは、学校。授業中の学校の広がりというのはそうでもないけれども、サークルや合宿所や、そういった中での広がりが今でも問題になっているということは御承知のとおりです。右の下、インフルエンザとこのコロナの感染の広がりの特徴というものもはっきりしてきました。インフルエンザは、一人から二人、二人から四人、八人、十六人、面で広がっていくから、だからこれは学級閉鎖になる。一方で、新型コロナは、一人から五人に広げるけれども、五人のうち四人は発症、発症するけれども広げない、一人が次につなげていく、線で広がる、時々クラスターが見える。無症候感染者がそれをつくり出しているということも一つ大事な事実になります。次のページの上です。これも日本から出てきた新しい事実ですけれども、子供の感染において、子供というのは油断しているから子供の中で広がっているんじゃないかというのが最初の予想でしたけれども、実は、子供の感染は、お父さん、お母さんからの感染がほとんどである。学校の中では感染が広がっていないという、そういった事実に基づき、緊急事態宣言の二回目では、学級閉鎖、学校の閉鎖というのが行われなかったということは事実かと思います。下の図、これが今非常に大きく問題となっている数字になります。東京におけるということで示していますけれども、色がついているところの入院・療養等調整中、すなわち、PCR等で陽性になったけれども、どうすればいいのかということが宙ぶらりんで分からない、入院すればいいのか、自宅に行けばいいのか、宿泊所に行けばいいのかが決められていないような人が、この時点で七千人も超えていたんですね。当然、その中から重症例が出てお亡くなりになるということが残念ながら起きてしまっている。御存じのとおりかと思います。ここをしっかりとゼロに近づけていくような、そういった対策を早く取っていかないといけないということになろうかと思います。次のページの上、まさに、隠れCOVID―19のフェーズになって、感染蔓延期の中で、無症状のコロナキャリアがたくさんいる。この中で皆さん方を検査したら、陽性な人が出てもおかしくないわけですよね。そういう蔓延期になっている。接近した会話で、それでも伝播してしまう。全ての人が感染している可能性があるし、特に、高齢者がお集まりになるような、そういった場所が注意しなければいけない。一方で、検査に関しましてもいろいろな進歩がありました。下の図にありますように、遺伝子検査だけじゃなくて、高感度の抗原検査、簡易抗原検査等が出て、インフルエンザと同じように診断ができるようになってきた。しかも、鼻咽頭拭いみたいに奥まで入れるんじゃなくて、自分で鼻の中を拭うだけ、あるいは唾液を取るだけ、それで検査ができるようになってきたということは非常に大きな進展であり、それをどういうふうに活用していくのかということが今盛んに議論されています。しかし、いろいろな問題も見えてきました。次のページにありますように、この感染症は、症状が出る、発症する数日前からウイルスが排出されて、そしてうつしている。全く症状がない中で自分が誰かにうつしているということが起きている、それが大きな問題です。一方で、ウイルスは、感染して一週間ぐらいすると検出されなくなる、すなわち感染性は下がってくるということが明らかになっています。ただ、問題は、そういった患者さん、生きているウイルスが出なくなっている患者さんにおいても、PCRは陽性を持続するということです。すなわち、何を意味しているか。PCR陽性、陽性で見ていくと、その中には、感染性のない人が不必要な隔離が行われているような、そういった状況が生じてしまうということが明らかになってきた。こういうことを分かった上でどういうふうに対応していくのかということが非常に大事な問題になります。次のページの上、非常に大事な事実として、第一波、五月三十一日の時点と、第二波、八月三十日の時点での、これは右の赤いところだけ見てもらえればいいと思いますけれども、七十歳以上の死亡率が二五%から八%にまで減少しました。高齢者は依然としてリスクが高いんですけれども、それでも、第一波と第二波でこれだけ死亡率の低下が見られているということは、これは非常に大事な事実になろうかと思います。下、ワクチン。非常に期待されるものになるわけですけれども、ただ、私たち感染症学会としては、これは、過剰な期待を抑えて慎重に、冷静に判断していかなければいけないということは、今でもそういう思いで教育、啓発を行っているわけです。ただ、データは毎日のようにアップデートされる中で、次のページ、世界中で進行するワクチン接種に関して、新しいデータが蓄積されてきました。アメリカだけでも一千万人を超えるような人が接種される、あるいは、イスラエルでは人口の二五%、二百五十万人を超える人が接種される中で、その有効性が証明されてきているということは非常にプロミッシングなデータではないかなというふうに思います。もちろん副作用が出ています。しかし、それは予想の範囲内ということで、そういった状況の中で、いかに日本で効率的に早く、必要とする方たちにそれをお届けするのかということが大事になろうかと思います。もう一つ問題が出てきたのが変異株の問題ですけれども、これは昨日も埼玉でまた新しく報告されました。しかし、大事な事実は、今、日本で一万株以上の遺伝子の検索が行われている中で、変異株というのはまだ数十株ですよね。今の感染の状況においては、変異株というのは大きな役割を果たしていないというのが大事な事実です。ただし、今から、これからはどうなるかということは非常に注意していかなければいけないというのも、大事な方向性になろうかと思います。次のページの上になりますけれども、まさに第三波を今越えようとしているこの状況の中で、ハンマーとダンスの戦略が必要になってくるわけですけれども、皆さん方、我々の今の大きな問題、課題は、この緊急事態宣言をどういうふうに解除に持っていくのか。誰も一気に解除できるなんて思っていない、少なくとも私たちはそう思っている。恐らくどこかで、段階的な、より次の波が起きにくいような戦略を取っていかなければいけない。第一回目の緊急事態宣言のあの解除の経験を生かした、この二回目の緊急事態宣言の解除ということにつなげていかなければいけないことになろうかと思います。最後、最後のスライドですけれども、これが今、やはり法律においても大事なところだと思います。このウイルスは、人や社会や国に分断を引き起こしてしまうウイルスです。話せない、会えない、会話ができないわけですよね。そういう中で、差別や偏見が生まれやすい状況があって、実際にそういうふうな人たちが出てきているということも事実です。それをどういうふうに抑えていくのか、守っていくのかということは非常に大事。私たちの問題でもあり、これはメディアの問題でもあり、もちろん政治の問題でもあるということを考えています。市民と行政、専門家の温度差、リスクコミュニケーション、私たちが考えていることが一般の人たちになかなか伝わっていないというこの現実があります。どうやってそれを伝えて、そしてワンボイスの中で一緒にこの危機を乗り越えていくか、それが今政治に求められているんじゃないかなと思います。国民性というか、日本に住まわれている人たちの協力によって何とかここまでやってきているわけですけれども、その一方で、ある意味、みんなが協力してくれるというのは非常にありがたいことですけれども、それが、例えば自粛警察であったりとか、いろいろなところで差別や偏見につながる、そういったリスクにつながっているということも事実かと思います。それをどうやって防いでいくのか。そして最後は、このピンチをチャンスに変える、そういうふうな発想の中で私たちは進んでいかなければいけない。今までに見られた技術、革新、そして連携や協力ですよ。だから、このコロナを乗り越えたときには、我々はより感染症に強い社会を築き上げていなければいけないし、その次に必ず来るパンデミック感染症に対して、より高い備えを備えた国になっていかなければいけないというのが大事なところかと思います。そういう視点で、是非、法律の改正も含めてお願いできればというふうに思います。以上です。(拍手)
○木原委員長 ありがとうございました。次に、橋本参考人にお願いいたします。
○橋本参考人 東京大学の橋本でございます。私は、どちらかといいますと、医療政策とか公衆衛生の立場から発言をさせていただくことになろうかと思います。また、先般、御承知おきかと思いますけれども、日本医学会連合、それから日本公衆衛生学会、疫学会などから、特に感染症法に限ってですが、罰則規定、特に刑事罰の導入に関しまして反対声明を出させていただいたんですが、その際の声明の取りまとめを、私、お手伝いさせていただいたということも、立場として申し上げておきたいと思います。まず、今回の特措法の方は、私、存じ上げていないというか、不得意でございますので、感染症の方に関してのみお話しし、プラス検疫法に関してのみメンションさせていただきたいというふうに思っております。まず、感染症の方に関しましてですけれども、先ほど御紹介いたしました声明の方は、元々、感染症法が人権に関してかなり配慮した法律として作られてきたということ、それから、特に刑事罰を導入した場合に、実効性若しくは現場への混乱というものを考えた場合、その影響を加味していただく必要があるということについて触れさせていただいたものでございます。実は、私、四月の第一波、それから後、八月の第二波、大学でずっと象牙の塔で座っているのも申し訳ないと思いまして、四月は世田谷の保健所、それから八月は足立の保健所の方に学生とともに支援に入らせていただきました。本当に、現場の医師並びに保健師の方々、住民の方々が非常に強い不安、場合によっては非常に強い感情や怒りをぶつけられる中、一人一人、懇切丁寧に説明をして、そして納得をしていただく。私も、相談電話などを取らせていただいて、本当に、二十分ぐらいかなり罵声を浴びせられたこともあったんですけれども、それでも、コロナとはこういうものです、保健所はこういうことをやっています、こういうふうな決まりで、こういう形で、皆さん方にこういうふうに行動を取ってもらいたいんですということを、お話を聞きながら懇々と御説明していくと、三十分ぐらいすると、最後は、保健所も大変だと思うけれども頑張ってくださいと言って電話を切ってくださる。まさに、現場は、我々、医療、公衆衛生は、患者さんや地域住民の方に納得して協力していただくことをもって行動変容を図るということを、我々の、言ってみれば職務であり、かつプライドと思ってやっております。その点から、今回のこの罰則に関してなんですが、もう先生方も御承知のとおり、既に現行の感染症法でも七十七条に、過料については書いてございます。そこに一項、入院が加わるだけじゃないかというふうに仰せかもしれません。ただ、実際には、調査などそれから報告などに対して不協力だった場合に、じゃ、罰金を取っているか。ほとんどが、あれはバイオテロリズム対策で書かれているもので、住民の方が何らかの理由で拒否されたといった場合に目くじら立ててあの罰則を適用しているというのは、実際にはほとんどございません。むしろ、今回必要なのは、どうやって住民の方々の不安を取り除いていくかということに関わるかと思います。これは余り根拠なくお話しするのも申し訳ないと思いまして、実は、私、二〇一〇年から、首都圏で四市区、住民基本台帳で取ったランダムサンプルの住民調査をずっと続けているんですが、この十二月の二十四日からつい昨日までなんですけれども、千六百人の方からCOVID―19の影響調査というものに回答していただいていました。本当は資料として配付できればよかったんですが、昨日まで取っていて、今日の午前中、データの処理をやって分析してきたので、ちょっとまだ資料として配付するにはやや早いと思いまして、口頭での御報告になることをお許しください。その結果を見てみると、まず、やはり、四割ぐらいの方が、自分がコロナにかかるんじゃないか、若しくは家族がかかってしまうんじゃないかということを非常に強く不安に思っていらっしゃる。そして、その不安に思っていらっしゃる方ほど、実は、自分や自分の家族がCOVID―19の影響で差別や偏見を受けるんじゃないかということを心配していらっしゃる。その両者の関係性は統計学的に見て有意な関係が見られました。じゃ、これに対してどういうふうに対応していったらいいのか。一方で、そういう強い罰則などがなければ実効性が伴わないのではないかという見方もあろうかと思います。それは確かに仰せのとおりだと思います。実際、悪意を持って妨害する、若しくは抜け出すといったことをやる方もいらっしゃるとは思うんですが、ただ、そういう場合には、明らかに悪意に満ちていますので、現行法でも、例えば、人に対してわざとうつそうみたいなことをする人であれば、現行法でも傷害罪若しくは暴行罪、若しくは、我々、医療、保健所の活動を邪魔しようとするものであれば、威力業務妨害などを使うことで十分対応できますし、かつ、我々、医療、保健所は人を羽交い締めにする権利は持っておりませんので、むしろそういう形で、刑法の枠でやっていただいた方が、警察のお力などもかりて有効に対処していけるのではないかなというふうに考えております。では、具体的にどうやって人々に動いてもらったらいいのか。先ほど、また皆様方も御存じのように、どうやって人々の行動を変えていくのかといったところが問題だということはそのとおりでございます。実際、今回のこの調査、まちと家族の健康調査というのをやっているんですが、この調査で見てみたところ、マスク、ちゃんとやっていますか、ソーシャルディスタンシング、取っていますかというと、やはり九割五分ぐらいの方はやっていますと答えてくれます。まあ、本当かどうかは見ていないので分からないんですが、九割五分の方はやっていますというふうに言ってくれています。ただ、実際にそれをやろうとして、ふだんどれぐらいの頻度でやっていますかというと、マスクと手洗いはちゃんとやっているんですけれども、ソーシャルディスタンシングとか公共交通機関の利用は、それよりは少し比率が下がります。これはやはり、どうしてもお仕事の関係であるとか生活上の必要性の関係などでそういったことが起こっているのではないかなというふうに思います。つまり、何が申し上げたいかといいますと、人々の意識はあるので、それをどうやって行動変容につなげるかというふうに考えた場合、そのための環境整備というものを重点にしていただく必要があるだろうというふうに思うところでございます。その点では、既に我が国は、他国に比べても、例えば雇用の確保のための給付金であるとか、これはもう諸外国に比べて日本はかなりがっちりとやっていて、その効果は私は表れているというふうに信じております。ただ、一方で、プラスアルファ必要なものとしては、先ほど申し上げたような、例えば差別に対する対応であるとか。私、不勉強なので、ちょっとよく覚えていなかったんですが、昨年のたしか臨時国会で、高鳥議員の議員立法で、差別解消法案が提出されたかと思うんですが、あれがその後どうなったか、私ちょっと存じ上げませんで、例えば、ああいうふうなものの展開ということも今回考えに入れていただくことはあったのかなというふうに考えております。さらに、そういう差別だけの問題ではございません。人々の不安を取るということ。実際、今回の調査でも、心理的な不安の程度というのが、やはりこれまでの平時に比べると少しパーセントが上がっていました。じゃ、どういう方がそういう不安を抱えていらっしゃるんだろうというふうに見てみると、もちろん自分がかかるんじゃないかと考えている人もそうなんですけれども、一番関係性が強かったものは何かといいますと、自粛の、外に出られないとかそういうものも有意だったんですけれども、それ以上に強かったのが、生活の見通しが立ちにくい、これが一番相関が高い項目になっておりました。まさに、そういう見通しをつけられるような形で情報を提供していただくということが、一人一人の国民の方々に賢く動いていただくのに必要なのではないか。その点で、今回の改正上、国と都道府県とそして市区町村で情報の共有を図るようにしていただくような改正がなされたのは、これは大変ありがたいというふうに思っております。さらに、これを、情報を、調査などを活用するという部分についても今回改正で入れていただいているのは、これも非常に重要なポイントではないか。これを、単に調査の結果だけではなく、その調査の基になったデータなどについても、例えば匿名性などを担保した上で様々な活用を許すことをやれば、例えば接触アプリのもっとよいものの開発であるとか、人々に時々アラートを出してあげて、賢く動くことをアドバイスしてくれるようなアプリとか、そういったものの開発などにもつながるのではないかというふうに期待しているところでございます。そして、やはり何よりも人々にとって重要なのは、そういう形で自分たちがこれを克服していけるという自信を持つことにつながるのではないか。その自信をつけるための、今回、特措法並びに感染症法の改正という形で先生方にお取り組みいただいているということについて、深く感謝申し上げたいと思いますし、その成果が上がることを我々としても期待しているところでございます。以上、私の方からの発言はこれだけにさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
○木原委員長 ありがとうございました。以上で各参考人からの御意見の開陳は終わりました。これより参考人に対する質疑に入ります。質疑の申出がありますので、順次これを許します。藤原崇君。
○藤原委員 自由民主党・無所属の会の藤原崇でございます。参考人のお二方の先生方、今日は大変ありがとうございました。貴重なお話を伺わせていただきました。持ち時間は十分でございますので、早速質問に入ります。可能であれば、恐縮ですが、簡潔にお答えいただければ大変助かります。まず、舘田参考人にお伺いをいたしますが、分科会のメンバーでもございます。今、緊急事態発令後の現状についてどうであるかということ、これは、国民の皆様、非常に関心を持っておられることだと思います。分科会公式としての発言というのは当然できませんけれども、もし、差し障りのない範囲で、参考人の個人的見解として伺えればと思っております。
○舘田参考人 ありがとうございます。緊急事態宣言が一月の八日に発令されてから三週間を迎えます。そんな中で、どういうふうに推移していくのか、一人一人が非常に注目している状況ですけれども、今日も、先ほど西村大臣の方から教えていただきましたけれども、八百人ぐらいですか、八百人、九百人弱ぐらいだということを聞いていますけれども。この三週間の中で、なかなか最初の段階は下がってこないような状況でしたけれども、ここ一週間、二週間は、緩やかですけれども確実な減少傾向が見られている。そして、それをどれだけ続けていけるかということが今大事な問題であって、そして、その先には、恐らく皆さんが待っている、我々が待っている解除ということが見えてくるんじゃないかなというふうに思っています。以上です。
○藤原委員 ありがとうございます。今、感染症対策の面から不便を強いられている一般の方々、そういう方々に対して、改めて舘田参考人の方から、国民の皆さんにこれはどうしても伝えておきたいということ、もしあれば、御教示をいただきたいと思います。
○舘田参考人 今の緊急事態宣言は、本当にお願いベースの中で、お願い中心でやっているわけですけれども、本当に一人一人の方たちがそれぞれ行動変容を起こしてくださった、その結果が今こういうふうに表れているんだろうなというふうに思います。非常に、多分、大変な中でやっている人も多いんじゃないかなというところを感じますけれども、その辺のところは、例えば、医療現場のことであるならば医療現場に対するサポート、あるいは飲食店に対するサポート、その辺のところは政治がしっかりやっていってほしいなというふうに感じているところです。以上です。
○藤原委員 ありがとうございます。政治の場でも、しっかりと国民の皆様の負託に応えられるようにやっていきたいと思います。続きまして、橋本参考人にお伺いをしたいんですが、少し、感染症法そのものとはちょっと違う大枠の話になります。委員部からいただいた資料の中で、バズフィードニュースの四月三十日、昨年のですね、インタビュー記事、拝見させていただきました。そこをちょっと抜粋で読み上げさせていただきます。今回の感染症では、公衆衛生が一体何をすべきかを考えるときに、我々は答えを持っていません、政府の強制力で人を囲い社会管理で逃げ切った中国、検査という医学を使うことで人を囲った韓国、自粛という少し忖度や同調圧力を利用した括弧つきの民主的コントロールをやっている日本、どれが成功するかは誰も分かりませんということでありました。韓国の対応についてはもう少し社会管理の要素もあるのかなとは思っておるんですが、一年たって、この問いについて暫定的なお答えがもしあれば、伺いたいと思います。
○橋本参考人 わざわざ掘り起こしていただいて、ありがとうございます。実は、その点のフォローに関して、ちょうど昨日、韓国と、それからあと北京と香港とマレーシアの研究者とちょっと交換してみました。現時点では、結局のところ、どれが効果があるのかはいまだに分からない。というか、国によって、やはり元々の体制によって取るべきものが違う。やはり日本の場合には、国が強制的にやるよりは、一人一人の国民が、みんなのためにという形で動くのが一番どうもフィットしていたらしいと思われますので、やはりそこをうまく活用するというのが我が国にとっては一番ふさわしいのではないかなというのが個人的な見解でございます。
○藤原委員 ありがとうございます。いろいろな論評などを見ますと、中国という国の対策というのは、表面上はうまくいっているようにも見えます。経済と安全を両立をする、代わりに人権というものを制約を大きくかける、その結果として経済と安心を両立をしている。我々のような民主的国家では、人権を大きく制約をすることで経済と安全を両立をするということはなかなか難しい状態でありますので、そういう中で、今回、日本としてどういう道を取るかというのは、私もなかなか悩んでいるところがあるんですが、今回の特措法の改正というのは、大きくではないと思うんですが、若干社会管理的な要素を出してきているということがあると思います。それは何も罰則がどうこうではなくて、全体的に見たときに、そういうような方面を強化をしていく。罰則以外の面で、この法律、特に感染症法について、橋本参考人の御意見を伺えればと思います。
○橋本参考人 今御指摘がありました中国のやり方に関して一定の効果があったというのは、初期にはどうもあったみたいなんですが、現在は、御存じのように、北京周辺のところでまた起こり始めていて、実は、そこに入った段階で情報が表に出なくなってしまっているので、我々専門家の間でも、何が今北京周辺で起こっているのか、全く情報が入ってこなくなってしまっています。そういった点では、現時点で、中国のやり方が中国においてもベストだったかということに関しては、まだ検証が必要かなというふうに感じております。それとは別に、日本におけるこの感染症法において、どこまで社会管理の要素と、それからあと人権とのバランスを取るのか。これは、もうある意味、感染症法の元々のテーゼであるというふうに考えております。人権が重要だから経済を捨てなさいというふうなものではない。やはり状況に応じてこれは展開していく必要があると思います。その点で重要になってくるのが、どの時点で平時と戦時を分けるのか。まさにこの部分のマネジメント、運用の部分に関する規定というものが、恐らく今回の感染症法で追加で求められる要素になってきているのではないかなというふうに感じております。
〔委員長退席、平委員長代理着席〕
○藤原委員 ありがとうございました。そろそろ時間なので、最後に一問だけ舘田参考人に。必ずどこかの段階で、緊急事態宣言については恐らく解除になるだろうと思います。なった後に、直ちに原状に復していいのか、それとも、やはり一般の国民の皆様、我々含めて、解除になった後も、もちろん、基本的な対策をした上で、どういうことに気をつけてこれから新しい社会生活というか、送っていけばいいのかという点について、もし私見があれば、お聞かせをいただければと思います。
○舘田参考人 ありがとうございます。第一波のとき、第一回目の緊急事態宣言の解除、五月の二十五日だったと思いますけれども、あのときには、東京での一日の感染者数は十人から二十人ぐらいまで下がっていたんですよね。あれだけ下がっていた中で、実は、その裏で、歌舞伎町とか歓楽街において次の火がまた燃え出そうとしていた、そういうふうなことが後から分かってきました。この経験は非常に大事で、今回の第二回目の緊急事態宣言の解除をするときがチャンスですよね。ある意味、大きな火は消し止めた中で、どこが燃え残っているのかということをしっかりと見定めて、そして、そこにターゲットを当てた対策を継続するような、めり張りをつけた対策をどうやって考えていくのかということが我々の使命だというふうに思っています。それとともに、一般市民の人たちに関しましては、やはり今回いろいろなことを経験してきたわけですけれども、マスクの有効性、インフルエンザが今年は見られないんですよ、見られないぐらいになっている、ほかの呼吸器感染症もどんどん減ってきているわけですね。そういう意味では、マスクの重要性を改めて認識していくこと、手指衛生、手指消毒の重要性を改めて認識していくこと、そして、一人一人が、感染症に対してより強い社会のために行動変容を継続していくということが重要だというふうに思います。以上です。
○藤原委員 ありがとうございました。
○平委員長代理 次に、江田康幸君。
○江田(康)委員 公明党の江田康幸でございます。本日は、特措法並びに感染症法の審議に入った、その際の参考人質疑ということでございますので、できる限り私は先生方から答弁を引き出したいなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。先ほど感染症の専門家であられます舘田先生から様々なデータを見せていただきました。特に、一番先にありましたように、国内の死亡率において、これは国際的にもそうですけれども、コロナは死亡率が高い。一・四%と、国内でもそのくらいでしょうけれども、先生おっしゃいましたように、一・四%、百人に一人死亡するというような高率でしょうけれども、それがゆえに、感染者をいかに少なくしていくか、感染拡大防止が非常に重要であるということを示唆されたわけでございます。そこで、今回の新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正案は、現下の新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の実効性を、これを高めるがために、蔓延防止等の重点措置を創設して、そして営業時間の変更等の要請、また、要請に応じない場合の命令及び罰則を規定して、併せて事業者及び地方公共団体に対する支援を行っていくというものでございます。今般の緊急事態宣言下においては、昨年四月の緊急事態宣言と比較して、感染者数や重症者数、死亡者数が増加しているという一方で、要請に従わずに外出する住民や、また、二十時以降営業を継続する事業者も増えている。こうした状況下の中で、本法律を改正して感染拡大防止策を強化するその意義について、先生からまずお伺いをしたいと思います。特に、蔓延防止等重点措置というもの、緊急事態措置の一段階前の段階で蔓延防止等の重点措置を創設することによって、新型コロナの感染拡大防止に対して、さらには、将来的なパンデミックの発生の際の感染拡大防止に対して大きな効果を私は発揮すると思うわけでございますが、どのような効果が期待されるのか、併せて御答弁いただきたいと思います。
[平委員長代理退席、委員長着席〕
○舘田参考人 蔓延防止等の重点措置に関してですけれども、私は、この法律は大事な法律になるんじゃないかなというふうに感じています。それは、これはいろいろなところで議論されているし、分科会等でも議論されましたけれども、緊急事態宣言の発令というのは、これは伝家の宝刀ですから、そんなに簡単に抜けないんじゃないか。それだけに、重いわけですよね。しかし、実際にはですよ、その前の段階でもう少し強い措置が取れていれば、これだけ燃え盛らないで、早めの対応が、もう少し小さく、短くこれを抑えることができたんじゃないかということが個人的には感じています。そういう中で、緊急事態宣言の前段階として、その前の段階で、ある意味、焦点を絞った形、地域を絞った形、少し弱いかもしれないけれども、一般市民の方たちにアラートを出すような、そういうふうな法律、そういうふうなものはあってもいいんじゃないかなというふうに感じています。
○江田(康)委員 ありがとうございます。引き続き質問をさせていただきますが、ちょっと感染症法について、今日は橋本先生が来ていただいております。公衆衛生の専門家でもあられる先生にお伺いをさせていただきたいと思いますが、一方で、この感染症法の改正では、入院勧告、また宿泊療養、そして積極的疫学調査について、感染拡大防止を徹底するという意味で、それに協力しない患者等については、罰則、これは刑事罰に当初なっておりましたが、罰則を設けることになっておりますけれども、しかし一方で、先生がいろいろなところで主張されておりますように、これによってコロナへの恐怖心があおられて、医療従事者や感染者に対する差別、誹謗中傷がひどくなるとの懸念もあるわけでございます。また、この罰則が科されることを恐れる余りに、検査結果を隠す、また、検査を受けなくなるといったことになれば、感染状況がかえって把握しにくくなる、感染コントロールが困難になるということも想定がされます。したがって、本来の目的である感染拡大防止の実効性、これを高めるということは今我が国にとっても大変重要で、この法律の意義があるわけでございますが、一方で、こうした懸念を、副作用であるところのこういう懸念を払拭するこの罰則の在り方についてはどのように考えられますでしょうか。また、どのように持っていけばそれが両立するものだとお思いでしょうか。よろしくお願いします。
○橋本参考人 例えば、八時過ぎて飲んでいるとという話に関してなんですが、どうも、罰則を使うと、多くの方は、なぜその罰則があるのかではなく、罰則があって、これをやっちゃいけないなら、これはやっていいのねという行動を取られてしまうことが多くございます。つまり、八時以降飲んじゃ駄目なら、昼間飲めばいいのねといって、昼間、飛沫を飛び散らかして広げちゃっているということが起こっております。やはり人々になぜを覚えていただくということ、そして、そのなぜを知りながら違う行為を取るという場合には何らかの力をかける必要が出てくる場合もありますが、それはやはり悪意を持ってやられていることだと思います。多くは人々がなぜを十分に理解できていないところで起こっていることであるんだとすると、やはりまず理解を進めていただくということ、それがどのようにして自分を守ること、そして社会を守ることにつながるのかということに十分な御理解をいただくのが必要なのではないかというふうに考えております。
○江田(康)委員 ありがとうございました。最後に、今回、宿泊療養、自宅療養の要請が、これまでは法的根拠がなく行われてまいりました。これは舘田先生にお伺いをしたいんですが、今回の改正で、都道府県知事による宿泊療養、自宅療養の協力要請が新設されることになります。この点でこれまでと何が変わると専門家からは期待されるか、お伺いをしたい。そして、感染が急拡大している地域では、自宅で療養する方が急増していて、その中には症状が急変して死亡する事例も起きているのは御承知のとおりであります。そういう中で、宿泊施設での療養も推進すべきなんだけれども、十分な受入れができていない施設もある。公明党は、パルスオキシメーターの適切な使い方を徹底して、体調の悪化などを迅速に把握するための仕組みを厳格化する、それとともに、オンライン診療とか訪問診療の導入も含めて、体調の変化に応じて医療機関と確実につながる体制を早急に構築するよう、これは主張してまいったところでございます。こうした状況への打開策について、先生の方から御見識を伺えればいいかと思いますので、よろしくお願いします。
○舘田参考人 先ほどもありましたように、入院療養を調整中という問題がありますよね。それが非常に大きな問題で、一番大事なのは、この患者さんは、病状、状態から見て自宅で見てもいいんだよ、あるいは宿泊所の方がいいんだよ、やはりこれは入院させなければいけないんだよという、その判断が一番大事ですよね。ただ、その中で、今、病院におけるベッドがいっぱいになってしまって、入院させなければいけない人が入院できないというような、そういった状態になっています。その中に、もしも、例えば宿泊所でもいいんだという人がいる、自宅でもいいんじゃないかという人がいれば、それを適切な場所に移して、そして、本当に助けなければいけない、守らなければいけない命を病院で診るような、それをよりスムーズに動かすような、そういうふうな法律として、お願いベースになるんですけれども、ただ、そういうふうな中でもいいから、お願いでもいいから、それをしっかりと動かせるような仕組みをつくっていってほしいなというふうに思います。以上です。
○江田(康)委員 両先生、ありがとうございました。時間でございますので、これで終了させていただきます。ありがとうございました。
○木原委員長 次に、吉田統彦君。
○吉田委員 立憲民主党の吉田統彦でございます。本日は、参考人の両先生、本当に、大変にお忙しい中、内閣委員会に御出席いただきまして、また、お二人、それぞれのお立場で大変貴重な御意見を聞かせていただきましたこと、改めて衷心より御礼を申し上げます。今もコロナで苦しんでいる皆様方にお見舞い申し上げると同時に、我が党の羽田雄一郎参議院議員も含め、昨日までにコロナが原因で亡くなったたくさんの皆様に哀悼の意を表しますとともに、医療現場等で過酷な労働環境の中、感染リスクと戦いながら診療に当たっていらっしゃる医療従事者の皆様にもまず感謝を申し上げて、始めたいと思います。貴重な十分の時間ですので、直接質問に入っていきたいと思いますし、また、先生方しかお答えになれないだろうという質問をこれからしていきたいと思います。まず、橋本先生にお伺いしたいんですが、さっき藤原委員からも一部触れられていましたが、先生は、コロナを封じ込めるためには二つに一つと。一つは、中国ですね。監視社会として、厳しい罰則で管理をしていく方法。ただ、中途半端な対策、特に、今回議論の俎上に上がった過料の設定では逆効果であるような趣旨のこともいろいろなところで述べられていますね。隔離政策も、チフスのメアリーやキューバのHIV対策などを列挙されて、アンダーグラウンドに潜って逆効果だ、そういった示唆も先生はされておられますよね。そして、もう一つの方法は、先ほど先生が触れられましたが、一人一人が自覚を持って行動することとも先生は述べていらっしゃいます。この一人一人が自覚を持って行動するという点に関して、先生はさっき抽象的な御発言だったと思いますが、具体的にどういうことを意味するのか、そして、本法案にはどのように規定をすべきなのか、先生の御意見を御開陳いただけますか。
○橋本参考人 まず、法律上という点でございましたらば、既に、たしか百六十九回だったと思いますが、四十四条の方を改正していただいて、協力を求めることができるという形、そしてあと、受けた者は努めなければならないという規定を入れていただいているかと思います。その努めなければならないというものをどうやって努めさせるかといったところをプッシュしていただくということが必要なのではないかなというふうに思っています。具体的には、先ほど申し上げましたように、やはりコロナというのが見えないということから、我々専門家は取扱いについて感覚を持っていますが、見えないものは人々にとって非常に難しいという点がございます。これをどうやって取り組んでいただくかというと、やはり教育といいますか、健康教育という形で情報をちゃんとお渡しするということ。具体的には、行動を起こしやすいようなメッセージを出していくということ。やはり、余り詳しく情報を出すと、かえって皆さん混乱してしまうことが多いので、その辺りの、我々の領域でいうところの、ヘルスコミュニケーションというふうに言うんですが、コミュニケーションの技術というものをうまく利用していただいて啓発を図っていただくというのがいいのではないかなというふうに思います。そのための専門組織がないというのが、実は今一番私は問題なのではないかというふうに考えております。以上です。
○吉田委員 先生、ありがとうございます。重ねてまた橋本先生になんですが、また先生は、いっそ、ブラジルのようにコロナをもう野放しにする代わりに、高齢者に対して予防線を引く、こういった戦略もあるのではという趣旨のことを述べられていますね、以前。先生は保健社会行動学の御専門家でもいらっしゃると思うんですが、高齢者に予防線を引くとは具体的にどういうことであって、また、本法案に関してだとどのように規定をすべきであるかということを、先生、御開陳いただけますか。
○橋本参考人 一つの極端な例という形でお見せしたという形になっています。特に、今クラスターで管理ができなくなってしまっているというのが舘田先生のコメントからもあったと思いますが、そうなった場合に、全員を封じ込めてやるというのが困難であるというふうになるのであるならば、一つの作戦は、守らなければいけないハイリスクの人たちを守る方に、つまり、防戦の方に傾注して攻めはしばらく諦めるというのも一つの作戦かと。ただ、それをずっとやるのではなく、期間限定的に、若しくは地域限定的に行う。今回のコロナは、とにかく、全国一斉に何かをやるではなく、それぞれの地域と状況に合わせて戦略を立てて、ポートフォリオをうまく選んでやっていくという形でないとうまくコントロールできないのではないかなと。その戦略を選ぶメカニズムというものを是非今回の法律の中に取り入れていただくといいのではないか。
これは二〇一三年の新型インフルエンザ特措法の内閣行動ガイドラインの中には実は書いてあるので、それを現実化するように働きかけいただけるといいのではないかなというふうに思っております。
○吉田委員 もっと聞きたいんですが、ちょっと時間の都合で。舘田先生にもちょっとお伺いをしていきたいんですが、先日、東京オリンピックについて先生が書かれた記事を目にいたしました。東京オリンピックの開催について、どのような条件が整えば開催すべきであって、また、どのような条件になれば開催を中止すべきかということに関して、さっき先生、国際的な、グローバルなデータもお出しいただいて我々に御意見を御開陳いただいたので、国内、国際、双方の要因について、答えていただける範囲で結構でございます、先生個人の私見として、是非これは国民が聞きたいと思いますので、御開陳いただけませんでしょうか。
○舘田参考人 なかなか難しい問題だというふうに思います。そんな中で、私は前、何か書いたのは、こういった状況の中でオリンピック・パラリンピックを開くことができるのは、ある意味日本だけじゃないかというような、そういうようなことを書かせていただきました。それは、日本では、非常に皆さんの協力を得やすいし、みんながマスクを着ける、みんなが行動変容ができる、ある意味数少ない国の一つじゃないかなというふうに感じています。そういうような中で、まずは、日本の感染症の状況がしっかりと落ち着くことが大事です。そして、その上で、これは日本だけの問題ではなくて、オリンピック・パラリンピックは海外からたくさんの人が入ってくるわけですから、そういうような中で、それぞれの国の感染状況が、抑え込みながら、そして、選手選抜がしっかり行われて選手を派遣することができるかどうか、そこまでいけるかどうかということが次の課題になるでしょう。そしてもう一つは、入ってくる人たちを水際でどういうふうに抑えるのか、その仕組みを日本の中で構築していく。こういった幾つかの要因をクリアして、ようやくオリンピック・パラリンピックにたどり着くことができるんじゃないかなというふうに思います。ただ、まだ今諦めるのは早い、まだ、頑張って準備しながら、いろいろな方策を考えていってもいいんじゃないかなというふうに感じています。
○吉田委員 さっき橋本先生がおっしゃった、攻めのフェーズであることが一つの条件ですよね、先生。守りのフェーズになったらもう駄目だと、橋本先生のさっきのお話を聞いていて、今、先生のお話を聞いていて思いましたが、いずれにしろ、厳しい状況であるのは間違いないですので、どのタイミングでどのように判断するかというのは非常に重要だと思います。GoToトラベルの評価も先生にちょっとお伺いしたいんです。昨年九月十一日の新型コロナウイルス感染症対策分科会において、GoToトラベルで七百万人が旅行した中で陽性者が七人出たことを受けて先生は、この数字がどれだけ信頼できるかということはあるが、みんなが注意してガイドラインに従ってやれば、かなり抑えていけるということを、これで感じたいと述べておられます。しかし、最近、京都大学の西浦博教授らの研究チームが、詳細はちょっと時間がないので省きますが、キャンペーン開始後に、旅行に関する新型コロナウイルス感染が最大六から七倍増加したとの分析結果から、初期のGoToトラベルが感染拡大に影響を及ぼした可能性があると指摘しておられます。この西浦教授の分析について、先生はどのようにお考えになられるか、御意見を御開陳ください。
○舘田参考人 西浦先生のデータは、ちょっと済みません、僕は詳細に読んでいませんけれども、ただ、大事な事実は、人が動けば感染は広がりやすくなるというのは、そのリスクを高めるというのは、これは事実だと思います。ただ、今回のコロナに関しましては、人が町の中ですれ違って感染を起こすような病気ではないですよね。満員電車の中でも、マスクを着けて静かにして換気をしていれば、感染が広がるそのリスクというのはかなり低く抑えることができる。ただ、リスクはやはり密になってしまうその場。それがやはり、旅行に行って、家族旅行で、静かな温泉旅行で楽しむというだけだったら感染のリスクというのはそんなに大きくないのかもしれないけれども、百、千、万という人が動けば、その中の何組かは、残念ながら、羽目を外してしまって大騒ぎしてしまってということが、それが感染の拡大につながるリスク、そういうようなことがあると思います。そういうような中で、フェーズによって、それでも経済を進めるような、してもいいようなフェーズ、しかし今はそんなことをやっている時期じゃないでしょうというフェーズ、それをうまく分けながら対策を取っていくということが重要になるんじゃないかなというふうに思います。以上です。
○吉田委員 もう時間が来ましたので、一言だけ、先生、最後に。最後、大事なことをおっしゃいました。どのフェーズで再開すべきかですね、今の段階で。ステージ2で再開してもいいというような趣旨のことを政府の方でおっしゃっている方はいらっしゃるんですが、ステージ2でも再開すべき、さっき先生は大事なことを最後におっしゃいましたが、ステージ2、それだけお答えください。
○木原委員長 舘田参考人、恐縮ですが、簡潔にお願いします。
○舘田参考人 そうですね。これはやはり政府の判断になると思いますけれども、最低でもやはりステージ2とか、それと、全体の状況を見ながら判断していかなければいけない問題だというふうに思います。
○吉田委員 じゃ、時間ぴったりなので、終わります。ありがとうございました。
○木原委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。今日は、大変参考になるお話、ありがとうございます。共感しながら聞いておりました。まず、橋本参考人にお伺いいたします。今回、刑事罰から行政罰ということで、修正協議で行政罰になったわけですけれども、それでも罰則は罰則だということであります。入院拒否だとか、あるいは積極的疫学調査への協力拒否だとかについて罰則が設けられる、これが保健所の担っている防疫業務に対してどういう影響が出るとお考えなのか、詳しくお答えいただけたらと思います。
○橋本参考人 刑事罰の場合と行政罰の場合と、もちろん受ける患者さんの側の方は大分違うんですが、実は、これに関わる保健所の方からしますと、いずれにしても告発といいますか通告義務が発生するということ、そして、あと、曲がりなりにも、そういう反対したとか拒否したという証拠を示さなければいけないということ。実は、現行でも保健所は、例えば食品衛生法の違反であるとか旅館法の違反とかで刑事罰若しくは行政罰などの通告、告発というのはやっているんですが、そのために膨大な時間が取られるということが起こっています。現状のコロナのこの膨大な量の中で、もしそのようなものが一気に発生したらば、今の保健所ではちょっと業務的にもたないと思います。その点で、今保健所にこれ以上の負荷をかけることについては、やはり一定度御配慮いただく方がいいのではないかというふうに考えております。
○宮本委員 分かりました。もう一点、橋本参考人にお伺いします。今、保健所への負荷のお話がありましたけれども、感染をコントロールするという点では、刑事罰、行政罰の差というのはかなりあるのか、あるいは、行政罰であっても、やはりそれを恐れて検査を受けないでおこうということが生まれる懸念があるのか、その辺り、教えていただけるでしょうか。
○橋本参考人 受ける側の方が行政罰と刑事罰の区別がつくかという問題かと思います。どちらにしても罰則だという形で、さらに、警察などのお世話になるという形で映れば、懸念している水面下に潜ってしまうような行動を誘発するかもしれませんし、若しくは、単に交通違反と同じで切符を切られるだけだみたいな形であれば、結構気軽にやる方も出るかもしれません。この点に関しては、どのような形で通知、通達され、国民が理解するかに懸かっているかと思います。
○宮本委員 舘田参考人にも同じ点をお伺いしたいと思います。本当に、検査を受けてもらうということが私は大変大事なことだと思っていまして、やはり、第二波が全国に広がっていくとき、初め、歌舞伎町だとかで一生懸命、新宿区長と新宿の保健所長がホストクラブの皆さんと信頼関係を築いて検査を受けてもらって、かなり、一生懸命抑えるという活動はあそこでできたんだと思うんですね。そういう点で、検査を受けない動きが広がるというのも大変深刻な問題が発生すると考えているんですけれども、その点、行政罰を積極的疫学調査の答弁拒否に設ける、あるいは入院拒否に設けることがもたらすデメリットというのは、どのようにお考えでしょうか。
○舘田参考人 法律に関しての具体的なところは私はよく分かりませんけれども、ただ、大きな方向性としては、私は、これはお願いベースで進めていくのがよろしいんじゃないかなというふうに個人的には考えています。ですから、検査を受けてほしい人、受けてくださいと。それと、あと、入院も含めて、お願いの。だから、どうしてもお願いが守られていない、守ってもらえないというような場合に、それは周囲の人の、国民の安全、安心を守るためにという、そういうふうな最低限、最小限の法律という形で考えていくのがいいんじゃないかなというふうに個人的には感じています。
○宮本委員 ありがとうございます。お願いベースというのは大変よく分かりました。私も、基本的には、国民の理解と協力で進めてこそ一番の力を発揮するというふうに思います。あと、もう一点、舘田参考人にお伺いしたいんですけれども、今回の新型コロナは無症状の方が広げているというのが実態としてあります。厚労科学審議会でこの法案の基が審議された議事録が先日出てきたんですけれども、その中でも議論になっているわけですけれども、今回入院拒否で罰則をかけるというのは、感染を広げる可能性があるうちのごくごく一部について罰則を与えているということになるわけですよね。果たして、こういうものが感染拡大防止に効果があるものなのか。今回のコロナのように、無症状の人が、罰則がかかる対象の人よりもはるかに多くの人が実際は感染を広げているというものがある下で、感染拡大防止の効果というエビデンスがあるのかどうか、その辺はどうお考えでしょうか。
○舘田参考人 確かに難しいですよね。それは、先ほどもお話ししましたように、無症状の人ですから、何も分からないわけですよね。自分が感染しているか感染していないかも分からない中で、そういう人たちにどうしていくのか。そうすると、ランダムスクリーニングみたいな形にしなければいけないような形になってきてしまうし。ただ、今回のこの法律に関しては、もう少し、先ほどもありましたけれども、どうしても言うことを聞いていただけないような、そういうふうな人を対象とした、お願いベースではどうしても言うことを聞いていただけないような方を対象とした、最低限の法律的な縛りをつけるという、私の中ではそういうふうな理解でいます。
○宮本委員 あと、これは両参考人にお伺いしたいんですけれども、患者は、感染して、この間自殺した方がいましたけれども、やはり、自分が感染して自分の周りの親しい人たちに広げてしまったということで、大変苦しい思いをされている方もたくさんいらっしゃるのが現状ですよね。そういう下で、患者に対して、背景として罰があるんですよということで、調査に協力してください、こういうことをやるのは大変保健所としてはやりづらいというお話を保健所長さんからは聞いているんですけれども、そういう点はどうお考えでしょうかね。
○舘田参考人 なかなか難しい問題じゃないかなと思います。だから、先ほどありましたように、差別や偏見になるし、そして、それに苦しんでお亡くなりになるという方が出ているということも事実だと思います。そんな中で、これは、やはり僕は、私たちの責任が大きいなというふうに思いますし、医療従事者も含めてですし、あるいはメディアもそうですし、政治もそうですし、やはり差別や偏見が起きない社会をどうやってつくっていくのかということ、それと罰則みたいなものがリンクして更に増長されるような、そういうような仕組みにならないような、そういった配慮というのは、医療従事者も含めて、僕はやはり我々がやっていかなければいけないなというふうに感じています。
○橋本参考人 やはり、法律上は行為があったかなかったかだけで見るしかないというところ。一方で、実際には、それが悪意によって起こったものなのか、それとも、知識がなかったために起こったことなのか、環境的にそれが果たせなかったのかというところで決まってくるんだと思います。この両者の矛盾をどうやってこの感染症法上で表現するかというのは、私は非常に難しいと思います。その難しさを踏まえた上で、どこに踏みとどまるかということを御判断いただくしかないかというふうに思っております。
○宮本委員 時間になりましたので、終わります。大変ありがとうございました。
○木原委員長 次に、足立康史君。
○足立委員 日本維新の会の足立康史でございます。今日はありがとうございます。少し、もしかしたら御専門を離れる点もあるかもしれませんが、少し法律の議論、法律の議論は正直、大分終盤でありまして、審議入りする前から政府・与野党協議みたいなこともやっていましたので、むしろこの法律の今後の運用も含めて問題意識を持っていますので、御指導いただきたいと思います。まず、公衆衛生、公衆衛生の御専門だと思います、両先生に伺いたいんですが、公衆衛生というのは、感染症が蔓延しないように隔離をしたり、こういうフレームですね。それに対して保健医療、医療というのは、症状がある、軽症であれ何であれ、重症、そういう治療をする。全くというか基本的には別のベクトルというか、枠組みを持った世界だと思います。だから、今でも感染症法の運用については、少し二類相当がきついんじゃないかという議論があって、そのために保健所の体制が大きな根詰まり、まさに保健所のキャパで様々な制約が生まれているという議論があります。だから、保健所の体制強化というのはもちろんあるんですが、感染者数によってはもう限界なわけですから、むしろ、そういう感染症法上の位置づけを緩めて、重症者の治療に重心をシフトしたらどうかという議論が根強く、特に臨床医の皆様の間にはございます。こういう議論について、両先生、どんな御意見をお持ちか伺えればと思います。
○舘田参考人 非常に大事な問題だというふうに思います。そんな中で、先ほどお話しさせていただきましたように、この感染症の一つの特徴として、死亡率に関してはかなり一定の数字で見られる。すなわち、感染者が増えれば死亡の数も増えてくるというようなことが明らかになってきていますから、どうやって感染者を抑えていくのか。それが、ワクチンが普及するまで、あるいは特異的な治療薬が出てくるまでどうやって感染者を抑えて乗り切るかということが大事になるかと思います。そんな中で、確かに保健所の皆さん方も本当にもう大変な状況です。私もいろいろなところから聞いていますけれども、そんな中で、二類感染症を五類相当あるいは違ったような形にも持っていくのかということに、そういった議論もいろいろ出ているわけですけれども。なかなか難しいのは、先ほどお話ししましたように、感染者数を増やしてしまう、今の段階で増やしてしまうと、やはり死亡数は増えてくるということを考えながら、どういうタイミングでそれを変えていくのか、これは非常に議論を続けていかなければいけない問題だというふうに思います。
○橋本参考人 舘田先生の御専門ではございますが、仰せのように、このコロナの特徴は、一、死亡率がインフルエンザよりは十倍以上高い、二、インフルエンザと違って無症状がいる、この二つに尽きるかと思います。だからこそ、指定感染症扱いという形になっているかと思います。ただし、実際の取扱い上、五類化する必要が出てくるのではないかという議論が以前からあるのは承知しております。繰り返すようなんですが、守りに入るのならば五類にするしかないと思います。攻めるのならこのままいくしかないと思います。問題は、それを法律上指定を変えてしまうと、固定してしまうので、簡単に指定感染症と五類の間を行き来できないというところに、非常にこう、現場としてはもどかしさがあるという感じに考えております。
○足立委員 ありがとうございます。大変奥深い議論だと思うんですが、今の枠組みだと、すごく粗っぽく申し上げると、もうワクチン頼みというか、ワクチンの議論に、今、世の中の関心、マスコミも集中していまして、ワクチンがうまくいけば、これは管理していけると思うんですが、変異株の存在なんかも含め、あるいはワクチンもいろいろな評価が、それは別に感染しないわけでもない、重症化を抑えるとか。ワクチンについても要すれば万能ではないわけでありまして、少し、私は野党の立場でいえば、若干ワクチン頼みが強くて、菅政権、私は応援しておりますが、ワクチンでこけたら本当にこれは出口がなくなるので。だから、今申し上げたように、もしワクチンというものがやはりこの感染症にうまく対応し切れない、ワクチンがゲームチェンジャーになり切れないときは、今申し上げたようなことも、要は、感染症法上の位置づけなども視野に入ってくるのかなと思いますが、ちょっと更問いみたいになりますが、いかがでしょうか。
○舘田参考人 おっしゃることはよく分かります。ワクチンだけに頼るということは、非常に危険があると思います。ただ、ワクチンの中でも、今回、メッセンジャーRNAワクチンだけじゃなくて、DNAワクチンや、ベクターワクチンや、あるいはそのホールのワクチンとか、いろいろなものが試されていますよね。そういう意味では、こっちのワクチンが駄目でもこっちがもしかしたら効くかもしれないというふうな、そういうふうな幾つかの可能性を考えていくということ。それとともに、治療薬に関してもいろいろな試みが行われています。今はまだ、ドラッグリポジショニングといって、今ある、今まであった薬をこっちに使うというような、そういうふうな形でやろうとしているだけですけれども、もっと特異的な治療薬に関しても確実に研究が進んでいますから、そういうふうなものが出てくると、本当に、風邪としての治療ができるような、そういうふうなことになるのかなというふうに思っています。以上です。
○橋本参考人 集団免疫的な話はかなり議論があるところなので避けたいと思いますが、ワクチンの効果だけではなくて、人々が次第に学ぶという、行動を変えていくということは、これから起こり得るというふうに考えています。その点では、ワクチンはゲームチェンジャーの一つではあるけれども、決してこれだけでゲームが変わっていくわけではないというふうに考えております。
○足立委員 ありがとうございます。最後に、今日は、あるいは国会での議論も、罰則の議論が非常に激しく行われて、協議も行われてきたわけでありますが、私、罰則を罰則だけで議論する必要のある項目もあるんですが、むしろ罰則というのは、目的のある措置がちゃんと実効が上がるための一つのツールなわけでありまして、罰則以外に、例えば事業者であれ医療機関であれ、補償をしていく、罰則と補償というものの関係の中でシステムというか措置が実効性を上げられるかどうか、そんな思いでずっと取り組んできています。今日、実は本会議で、私は補償ということを、やはり自民党政権は戦後、補償、大嫌いでありまして、勝手に言ってはいけませんけれども、戦争被害も補償しない、こういう感染症も、有事ですが、これはもう受忍限度の範囲内だ、財産権の内在的な制約だと、こういう整理をしていますが、私はやはりもう少し、補償について、新しい、戦後レジームの脱却じゃありませんが、補償について、もう少し新しい整理をつくっていく作業をしながら、罰則との関係で、また実効ある制度をつくっていく必要があると思いますが、この点、もし御意見がございましたら賜りたいと思います。意見がないということであれば結構です。
○舘田参考人 私は、医療関係者の立場からすると、やはり今回の法律の改定は、基本的には、その思いは、患者さんに対するお願い、そういう気持ちで考えていくのが大事なんじゃないかなというふうに思います。ただ、先ほどもありましたように、どうしても聞いてもらえないような、そういった方が出てくる、その可能性もあります。そのときには、その人だけじゃなくて周りの人たちを守るという意味から、最小限の縛りというか法律を考えていただければ。それは、刑事罰というのはちょっと違うんじゃないかなというふうに感じています。以上です。
○橋本参考人 感染症の方に関しましては、今、舘田先生がおっしゃったものプラスアルファ、一切、罰則というものに関しては、やはり踏みとどまるところで考えていただければと思っております。特措法に関してはコメントしないと冒頭申し上げたんですが、素人ながら拝見していて、補償ももちろんだと思うんですけれども、プラス、医療機関、それからあと一般のビジネスの方々がほかに生き残れる道をつくれるような形で、様々な、言ってみれば、特区的な形で、いろいろな機会を与えていただくということも併せて御考慮いただくのがいいのではないか。その点では、河野大臣がやっていらっしゃるような、官庁をまたいだ形でアプローチしていただくのがいいのではないかというふうに個人的には考えております。
○足立委員 ありがとうございました。
○木原委員長 次に、岸本周平君。
○岸本委員 国民民主党の岸本周平でございます。今日は、舘田先生、橋本先生、参考人の御出席、ありがとうございます。お二人とも大学人ということでございますので、まず、お二人にお聞きしたいことがございます。今、医療の逼迫の問題あるいは医療崩壊の問題等が、いろいろな理由が言われていますけれども、例えば、公的等病院あるいは公立病院は比較的受け入れているんだけれども、民間病院はなかなか引き受けていないよね、引き受けられないよねというような意見があります。これは少し乱暴な意見でして、民間病院は二百床以下の病院が八割ですから、とてもとても無理です。それから、民間病院でも、四百ベッド以上のところは、八割がコロナ患者を受け入れていらっしゃいます。特に、有名な杉並区の河北総合病院さんは、四百七ベッドの中で何と百一ベッドも空けられて、四十三ベッド受け入れられている、民間病院で。そういうところもあります。一方で、大学病院でも、ほとんど受け入れているんですが、すごく協力していただいている病院と、なんちゃってというと失礼なんですけれども、形だけ受け入れていらっしゃる病院の差が余りにも大きいような気がいたします。これは、文科省にちょっと内訳を聞いたんですけれども、内訳は勘弁してくれということでしたけれども、聞いてみますと、八十ベッドが一番多いんですかね。四十ベッド以上出していただいているところが十二しかありません。二十ベッド以上でも六十ですね、大体百三十ぐらいの受入れ病院の中で。五とか四とか一とか、たくさんあって、そういうところがありますし、また、公立病院、公的病院等についても、私、厚労省に、ちょっと実際を教えてよと申し上げたら、何と把握していないと返ってきたんですね。今度の法律は、病院に協力を要請するようなたてつけですので、それじゃ、立法事実がないわけだと言って聞いてみたら、一応分かっていますと二回目に答えてきまして、それは、いわゆるG―MIS、新型コロナウイルス感染症医療機関等情報システムの情報があるので、実は病院の総合の数と受入れ可能数と患者数は把握しているんだけれども、任意で記入していただいているのでお答えできませんということでした。できれば、そういう高度急性期とか急性期のベッドをたくさん持っていて、そういうふうに位置づけられている病院の皆さんには是非協力していただきたいと思うんですが、どのようにすればよいのか、お二人の先生方の御意見を聞きたいと思います。
○舘田参考人 その問題は、今回、非常に大事な問題としてクローズアップされてきたと思います。これはなかなか、日本の今までパンデミック感染症に対する備えができていなかったということが大きな問題ですよね。だから、よく言われるように、SARSとかMERSを経験した国はそれなりの備えがあったけれども、日本はそれを幸いなことに経験しなかったから遅れてしまったというふうな、そういう反省、パンデミック、インフルエンザのこともあります。そういうようなこともあって、その反省が生かし切れていないということがあるんですけれども、そんな中で、今回、病院のベッドはたくさんあるんだけれども、新型コロナを受け入れている、その不均衡、病院によっての不均衡があるということ、それを何とかうまく是正しながら、より効率的な、組織的な体制にどうやって仕上げていくのかということが大事だなというふうに感じています。そんな中で、一つ民間病院の活用ということもあるんですけれども、ただ、民間病院には、おっしゃったようにいろいろな病院があるし、今まで受け入れていないところに無理やりに受け入れていただいたら、院内感染を起こして大変なことになってしまいます。ですから、民間病院だからというふうな形で数を決めてやるというような、そういうふうなことは少し難しいのかなというふうに思っていて、ただ、地域の中で、例えば、コロナ専門病院があり、そしてそれをサポートするような大学病院があり、あるいは基幹病院があるとか、地域の中で危機管理の視点でそういうふうな仕組みをどういうふうにつくっていくのかという、それを、これを乗り越えた後なのかもしれませんけれども、組み立てていかなければいけないなというふうに感じています。
○橋本参考人 まさに今、舘田先生がおっしゃったように、これは病院の一つ一つの組織で解決できるものではないので、地域全体でやるしかないと思います。その点では、医政局マターにはなりますが、既に地域医療推進協議会などがあり、かつ、地域推進医療法人などもございます。実際、民間病院などで私が知っている限りでは、ちょっと具体名を挙げていいか分かりませんが、上尾中央病院グループなどは、グループ内で機能シフトしてコロナのベッドを空けるというような工夫もされているというふうに聞いております。そういうものを地域医療推進協議会などをうまく利用する形で展開することは、現行の医療法のもとでもできるのではないかなというふうに考えております。
○岸本委員 ありがとうございます。確かに、今もう一つの問題点が、コロナは治ったんだけれども、フレイルとか、おうちに帰れない、その方を受けていただく病院がないというようなことでしたが、まさに地域医療の中でやっていただくことが今でも大変大事なんだろうと思います。御示唆に富む御意見、ありがとうございました。もう一つ、これまでも少し議論が出ましたけれども、社会疫学的な観点からもそうなんだろうと思うんですけれども、あるいは分科会の委員をされている舘田先生にもお聞きしたいんですが、リスクコミュニケーションというのがまさにとても大事なことになってくるんだろうと思います。是非お二方から、今回のような感染症の場合のリスクコミュニケーションの在り方について、要点と、これまでの政府のリスクコミュニケーションの在り方についてのもし御評価をいただければ、順番にお願いしたいと思います。
○舘田参考人 今回、改めて、リスクコミュニケーションの重要性というものを私個人は勉強させていただいています。分科会の中でも多くのリスクコミュニケーション関連の先生方にお入りいただいて、その方たちの意見をいただいて政策につなげようとしているわけですけれども、やはりなかなか難しいですね。本当に難しいなと感じています。最近の、テレビとか新聞とかをなかなか見ないような人たちもいらっしゃるというふうに聞きますし、そういう人たちにSNSを使ってどういうふうにそのメッセージを伝えていくのか。しかし、それだけでもなかなか動いていかないというふうに思います。先ほども議論がありましたけれども、やはり、これは我々の一人一人の感染症に対するリテラシーをどうやって高めていくかという教育、啓発の問題であって、それをしっかりと据えながら中長期的にも戦略を練っていく必要があるんだろうなというふうに感じています。
○橋本参考人 リスクコミュニケーションに関しましては、例えば、既にあるフレームとしては、米国CDCなどがエマージェンシー・アンド・リスクコミュニケーションのフレームというものを用意して、あとマニュアルも用意されておりますし、あと、これはCOVID―19に特化したようなものも既にホームページ上で入手できるようになっております。ただ、そういうものが発達しているアメリカですらああいう状況でございますので、決してリスクコミュニケーションだけで物が変わるというわけではないということは明らかです。ただ、やはりあった方がいい。かつ、これに関して特化した部局が厚労省の中にはございません、若しくは内閣府の中にはございません。また、恥ずかしながら、我々研究者の側、公衆衛生の側でも、このリスクコミュニケーションに関して極めて研究者の数が限られているというような状況がございます。この点は、是非、今回強化する、先ほどの情報システムに加えて、強化のための投資というものを考えていただきたいというふうに、この機会に申し上げたいと思います。
○岸本委員 時間の関係もありますが、最後に一問だけ橋本先生にお伺いしたいと思います。社会疫学の観点からなんですけれども、感染症だけじゃなくていろいろな健康被害が広がっていく中で、例えば、虐待が増えているのではないかとか、それから、特に若い女性の方の自殺が増えているようだとかいうことがありますので、こういうことを守っていくために何が必要か、是非お教えをいただければと思います。
○橋本参考人 貴重な御指摘だと思います。これに関しては、やはり、従前どおり、弱い人たちをどういうふうに見ていくのかというサービスを徹底していただくということ。それから、あともう一つは、やはり社会がこのときにこそ周辺に目を配っていただくということ、これをどのように涵養していくかに懸かっていると思います。私は、弱者を救うということとコロナ全体を克服するということは、同じベクトル上に乗っているのではないかというふうに信じております。
○岸本委員 終わります。ありがとうございました。
○木原委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。この際、一言御挨拶を申し上げます。参考人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。(拍手)