2021年2月12日衆院予算委員会 医療機関に減収・かかりまし経費をおぎなう支援を
提出資料① 日本年金機構ホームページ
提出資料② 厚生労働省提出資料
提出資料➂ 消費者物価指数の変化(2015年=100)
提出資料④ 全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律案新旧対照条文
日本共産党の宮本徹議員は12日の衆院予算委員会で、コロナ患者の受け入れの有無にかかわらずに医療機関への減収補填(ほてん)をすることや、大企業の非正規雇用労働者に十分な休業支援金の補償を行うよう迫りました。
宮本氏は、コロナ禍前から厳しい経営だった医療機関が、コロナによる減収で借金を重ねていると指摘。医療機関への危機対応融資は2019年度1247億円だったのが、20年度は1兆1260億円に膨らんでいるとして「減収に見合った支援をしないと先行きが見えない」と指摘しました。
宮本氏は、救急患者から陽性が出たため転送先が見つかるまで救急の受け入れができず、前年同月比1千万円も減収した事例や、空気清浄機やサーモカメラの設置など発熱外来での感染対策費だけで500万円かかった事例などを具体的に指摘。「コロナ患者の受け入れにかかわらず減収補填をしなければ医療機関がつぶれてしまう」と強調しました。田村憲久厚労相は「医療機関の状況をみて地域医療が守れるよう頑張りたい」と述べました。
さらに、宮本氏は、大企業の非正規雇用労働者へ新たに拡大された休業支援金をめぐり、昨春分について厚生労働省が休業前の賃金水準の6割を支給対象とする方向で調整していると報じられていることについて、事実関係をただしました。田村厚労相は「検討している最中」と述べました。
宮本氏は中小企業で働く非正規雇用労働者には休業前賃金の8割が支給されていると指摘。「非正規のみなさんの時給は最賃近くに張り付いている。6割と8割ですごい大きな差がある」と述べ、中小企業の労働者と差別することなく、昨春から8割を支給するよう求めました。
以上2021年2月13日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2021年2月12日 第204回衆院予算委員会第9号 議事録≫
○金田委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。組織委員会の森会長が、女性蔑視の発言の責任を取って辞任を表明しました。遅きに失したと思います。余人をもって代え難いなどとかばった与党の政治家の皆さんにも猛省を求めたいと思います。森会長が川淵さんを後継会長に説得しましたが、辞退するという報道が出ておりますが、そもそも、引責辞任する方が後任を指名するなどあり得ない話だったわけであります。大臣、やはり、まず何よりも、組織委員会の中で、今回の発言の何が問題だったのか、組織委員会自身にどういう弱点があったのか、よく議論することが大事だと思います。そして、やはり、多様性の尊重、ジェンダーの平等、こういうものの確立に向けて、ふさわしい体制はいかにあるべきか、ここもしっかり議論して、その上で、アスリートを始め国民各階層の意見をよく聞いて後任の人事は決めていく、こういう姿勢が大事だと思いますが、いかがお考えでしょうか。
○橋本国務大臣 本日十五時から行われているというふうに思いますけれども、東京大会組織委員会の評議員会・理事会懇談会の中で、適切な対応のために、多くの専門家の先生方、委員のメンバーが集まっておられる理事会でありますので、今後、より透明性に、そして、どのように、定款に基づいて、プロセスを踏んで会長が選任されるのか等をしっかりと議論をされていくものだと承知をしております。その中で、やはり、今回のこのような問題がなぜ起こったのかということのガバナンスコード、コンプライアンス、こういったことも含めて議論されるのではないかというふうに承知をしております。
○宮本委員 これを契機に、やはりジェンダー平等を隅々に確立していく、そして、日本社会に多様性尊重、これが根づくような機会にしていっていただきたいというふうに思います。橋本大臣、結構でございます。田村大臣、よろしいでしょうか。これは通告をしておりませんが、休業支援金について一点お伺いしたいと思います。今朝の日経新聞の報道では、休業支援金、四月―六月、昨年まで遡るけれども、それについては八割ではなくて六割の補償だということで流れているわけですよね。ですけれども、田村大臣と総理にお会いしていただいた方も飲食で働いている。当然、時給は最低賃金近くに張りついている。賃金が上がるときというのは、最低賃金が上がったらその幅で上がっていくという方々なわけですよね。ですから、六割と八割というのは、そういう本当に賃金が低い方にとっては物すごい大きな差があるわけです。ですから、ここは、六割とか中小企業で働いている方々と区別せずに、八割でしっかりと昨年春まで遡って補償すべきだと考えますが、いかがでしょうか。
○田村国務大臣 御通告をいただいていないんですけれども、今、この休業支援金に関しては、本来は大企業の方々には対象にしないということでやってまいりましたが、一月八日からの二回目の緊急事態宣言で、大企業に対しては、知事が要請をされている、そういう業種に対して、十分の十の補助率という形の中で、そのようなシフト関係、なかなか大企業、全てが全てじゃありませんけれども、雇調金の対象にされない方々に対しても対象にしていただきたいとお願いしてまいりました。しかし、それがなかなか対応いただけないという企業も散見されるというお話もございました。そこで、休業支援金の対象にするという形にいたしましたが、一月八日だけではなくて、それ以前も含めて対象にしてもらいたいというお声があったのも事実であります。今、それを検討している最中でございますので、ここでまだ検討の過程を申し上げるわけにいきませんけれども、一方で、一般論として、去年の四月、五月で雇調金で対応しておられる方々もおられます。シフトの方々が全て雇調金で対応されていないというわけでもないので、まあ、つぶさに調べていませんけれども、そういうことでもないんだと思います。そこで、大企業等々、十分の十の補助率ではありませんので、そういう意味では、そういうところで六割、つまり、休業手当は六割というのが一応法定の決まりでございますので、六割対処、こういうこともあり得るであろう、そういうこともあるということは事実としてお伝えはさせていただきたいと思いますが、今まだ検討している最中でございますので、つぶさにここでお話しするわけにはいかないということであります。
○宮本委員 法律は六割だけれども六割じゃ駄目だというのは、法律そのものも変える必要があるんじゃないかという議論も、昨年は田村大臣ともさせていただきましたけれども、実際、差別なく救うという観点で是非検討をしていただきたいというふうに思うんですよね。本当に、昨年四月からずっと収入が途絶えているという方々もたくさんいらっしゃるわけであります。その点を踏まえていただきたいというのを繰り返し申し上げて、次の質問に行かせていただきたいと思います。ここから先は通告している質問です。まず、医療機関への支援について伺います。コロナ禍以前でも、病院の経営は大変厳しかったわけであります。日本病院協会など三団体の調査では、コロナ前、平均の経常利益率は、二〇一七年度がプラスマイナス〇・〇%、二〇一八年度は〇・一%、赤字病院の割合は四三%、二期続けての赤字が三三・六%。厚労省の委託調査でも、医療法人の一般病院で四分の一が赤字ということだったわけです。この厳しい病院経営の上にコロナ禍が来たわけであります。多くの病院が減収で苦しんで、借入れを重ねております。これは数字を紹介していただきたいんですけれども、福祉医療機構の医療機関への新規の貸付金額は、二〇一九年と二〇二〇年、それぞれ幾らになっているでしょうか。
○田村国務大臣 お尋ねでありますが、二〇二〇年二月より危機対応融資というのをやっておりますので、それまでのものと、二〇一九年と比べるということは、条件がかなり変わってきておるということは御理解いただけるというふうに思いますが。福祉医療機構の医療機関等への新規貸付金額、これは暦年ではなくて年度での金額になります、二〇一九年度、これは危機対応融資と設備整備等の融資の合計額でありますけれども、一千二百四十七億円、二〇二〇年度は、十二月末までの危機対応融資の額が約一兆一千二百六十億円、こうなっております。
○宮本委員 一兆一千二百、十二月末までと。今年更に借りなきゃいけない病院が出ていれば、更に増えていくということになるわけです。福祉医療機構、最長五年据置きということにはなるわけですけれども、コロナ禍前でも、赤字経営の病院というのは、いろいろ設備投資、キャッシュがなければ借りてやってきたわけですよね。それがなかなか返せずにまた借りてというのを重ねている病院があったわけであります。そういう上で、今回新たに借りている多額のお金を返せるのかという不安の声をたくさん聞くわけであります。やはり減収に見合った支援をしていかないと、先行きが見えないわけですよね。病院の収入というのは、診療報酬、国の公定価格以外には基本的にはないわけです。そこをしっかり支援しないと、将来、医療機関がばたばた潰れかねない、こういう事態だと思います。その上でお伺いしますけれども、重点医療機関、協力医療機関以外の病院に対して、この間、感染拡大防止等の補助や、あるいは診療報酬の加算なんかも始めましたけれども、こうした国の措置で、これらの病院の減収というのはどの程度補えると見ていらっしゃるんでしょうか。
○田村国務大臣 なかなか個々というのが、我々もつぶさに数字を推計しているわけじゃないんですけれども、おおむね、病院種別による把握はしていませんが、診療報酬でどれぐらい、確定点数からどれぐらい下がっておったか、これは機械的に試算していますが、四月から十一月までの八か月間で、医療機関全体の減収は一・二兆円ということになっております。これに対して、先ほど一・一兆円貸付けだという話がございました。さらに、これはたまたま数字が近いというのはどういう整合性があるのかというのは、我々は分析しておりません。その上で、これまでも三・二兆円、既に御承知のとおり、補正等々で対応し、予備費もそうでありますが、さらに、今般、三次補正で一・四兆円という形であります。三・二兆円の中から交付金等々、これは緊急包括支援交付金だったと思いますが、これに関して、たしか一・一、二兆円、もう交付は済んでおるというふうに我々は認識いたしております。まだ順次、今来ております。さらに、いろいろな形で出しておりまして、交付金だけではなくて、例えば一般の医療機関、新型コロナウイルスの感染症とインフルエンザの感染症、これが共に起こる可能性があったので、ここは、患者の方が来なくても、一定の対応をしていただくところに関しては、二十人分だったと思いますけれども、その検査費用というもの、コロナの検査費用というものをしっかり対応するでありますとか、また、これは一般医療、これも入っております感染防護のいろいろな対応、感染を防いでいただかなきゃなりませんから、それぞれ、かかり増しの経費も含めて対応していただくというような形。さらには、それぞれ、小児等々に関しては、これは診療報酬でトリアージのための加算を取っていただいたりでありますとか、今般、診療報酬で、これは令和三年度からでありますけれども、小児科、それから小児科以外に関しても、こういうコロナの感染症対応ということで、対策という形でこれは対応させていただいておるということ。様々な入れ方をさせていただいておる。例えば、コロナの患者の方々が治った後の療養といいますか、そういう医療機関も、今般、加算を約七倍弱にまで上げさせていただいたり、いろいろなことをさせていただく中において、各医療機関の運営といいますか、経営というものが成り立つようにというふうに我々も考えている次第であります。
○宮本委員 いろいろいろいろ、いろいろな支援をやっているというお話ですけれども、一方で、個々の病院がどうなるのかというのは、当然、つかまれていないというのが現状だというふうに思います。たくさん、いろいろ出しても、当然、かかり増し経費もありますからね。かかり増し経費でいっぱいかかっているものもあるし、慰労金の部分というのは、当然それは人件費に、プラスアルファの人件費と出しているわけですから、これがそのまま全部、今出しているものが減収の補填になっているわけではないわけであります。とりわけ、コロナ患者を受け入れていないところに対しての支援メニューというのは、コロナ患者を受け入れているところに比べて少ないわけですね。額としても少ないわけであります。こういう話もあるんですね。例えば、ある病院、救急外来で発熱患者を検査したらコロナ陽性という場合も少なくない。転送先が見つかるまで、その病院で診なければならない。転送して消毒作業が完了するまで、その間、救急の受入れがストップする。それが数十時間、転送までかかることもある。この病院は、聞いた一月だけで、前年同月比一千万の減収とお話もありました。それから、あと検査のお話、先ほど大臣が言われておりましたけれども、こういう話も聞きました。一日の検査の登録を二十人でしている比較的大きなクリニック。十二月後半から発熱患者が増え、二十人を超えてくる日も出る。すると、補助金はゼロ円の日が続くということになります。医師の体制が足りなくなったので、派遣の医師を頼んで、一こま四万円、これで対応する。そして、当然、ガウンも手袋も一処置ごとに捨てるので、補助金はゼロだ、診療報酬で賄えるかといったら賄えないというお話でありました。ですから、発熱外来で患者さんを多く検査するほど経営的に厳しくなる。さらに、寒い中、外のテントで待たせられないということで、臨時に待合室もパーティションで仕切って作って、換気扇も入れなきゃいけないというので八十万円かかった。HEPAフィルターつきの空気清浄機を十台入れて百八十万円。入口にはサーモカメラ九十万円。発熱外来だけで、感染拡大防止で五百万円ぐらい飛んだ、感染拡大防止の初めの百万円と今年来た百万円、合わせて二百万円ではとても補い切れない、こういう話も聞いております。それからあと診療報酬の話がありましたけれども、ある割と大きめの病院ですけれども、外来の減収は五千から六千万円だけれども、診療報酬の特例加算を使って入ってくるであろうものは、大体試算で四百万円程度なので、減収のうち数%ぐらいしか、これでは補い切れないという話なんですよね。ですから、個々の病院によって、いろいろな状態というのは、違いはもちろんあるとは思いますけれども、コロナを受け入れている、受け入れていないにかかわらず、やはり減収を補填する規模での支援を私は絶対しなきゃいけないと思うんですよね。そうしないと、今後、医療機関が潰れかねないと思いますので、その点、しっかりとした更なる支援も検討していくということをお約束していただけるでしょうか。
○田村国務大臣 今回の発熱、いろいろな対応をいただいている医療機関があると思いますが、例えばキット等々で対応する場合、インフルエンザが疑われる、どちらか分からないということでインフルエンザのキットで検査いただければ、そちらの報酬は診療報酬として支払われるわけでございますので、そういう意味では、ただ単にコロナだけではないというような、そういう症状の方々も多々おられるんだというふうには思います。いろいろな、先ほど申し上げたように、コロナの患者は治っているんだけれども、その後、受皿で受け入れていただいた医療機関には、先ほど申し上げたようないろいろな対応もありますので、是非とも、今、コロナの病床を最大限生かすためにも、そこに治った方が、虚弱といいますか、高齢者が多いわけでありますので、そこにずっといていただくとコロナの方の病床が足らないということになりますから、一般病床に移っていただく、それに対する加算、いろいろなことで対応いただきたいと思いますが。いずれにいたしましても、医療機関の経営がどういう状況なのかというのは我々は常時しっかりとチェックを入れながら、地域医療というものを守れるように頑張ってまいりたいというふうに思っております。
○宮本委員 しっかりつかんで頑張りたいということなので、更なる支援も必要に応じてやっていくということだと理解をさせていただきます。よろしくお願いしたいと思います。その上で、次、生活保護の扶養照会についてお伺いします。この間、この予算委員会でも随分議論になっております。この間の予算委員会を見た方から、こんな手紙が来たんですね。私も、夫の姉が生活保護の申請をしたことによって扶養照会が来ました。夫は既にもう亡くなっているわけですけれども、私と夫の姉さんとの関係は大変良好で、よく話をしておりました。扶養照会の際は夫が既に鬼籍に入っていることを記して返信をしたのですが、このことを機会に義理の姉さんとは全く音信が不通になりました。扶養照会は良好であった人間関係を壊します。本当にやめるべきです。こういうお手紙だったわけですね。この間、ここの議論の中で田村大臣は、もうちょっと弾力的に運用できるようにしたいと、もうちょっとという表現を使われているんですね。もうちょっとじゃ駄目だと思うんですよ。やはり、この間、支援団体の皆さん、扶養照会をやめるべきだということでたくさんの署名も集めておりますが、その皆さんがおっしゃっているのは、少なくとも本人の承諾なしの扶養照会をしない、これを原則にすべきだということをおっしゃっておられます。私はそのとおりだと思います。少なくとも本人の承諾のない扶養照会はやめる、こういうルールを作るべきじゃないでしょうか。
○田村国務大臣 もうこれは委員も十分に御理解いただいているので御説明するのもあれなんですけれども、これは生活保護法四条にちゃんと扶養は保護に優先するというふうになっているわけでありまして、これは基本原理であります。でありますから、そのためには扶養照会をしないと、これは扶養ができないということになると思います。ただ、幾つか、やはり、そもそも扶養をしてもらえない方に扶養照会しても意味がないので、そういう意味では、高齢者施設に入ってもう扶養できるような状況じゃない方々、こういう方々には扶養照会はしない、こういう運用をいただいておりますし、それからDV、よく言うんですが、DVなんかで、照会したことによって本人の自立が余計に阻害されるというような場合には、これは扶養照会しない。一つ、もう人間関係が壊れているというので、二十年音信不通という事例がありまして、もちろん、それをそのまま守っていただいているところもあれば、守らずに、もうちょっと、何というんでしょうか、実態を調べておられる自治体もあるんですけれども、さすがに、事例で二十年といいますと、それは、昔は二十年、十年音信不通でも信頼関係がある。それはなぜかというと、例えば、田舎からずっと出てこられて、たまにしか、電車もその頃はそれほど発達していないというので帰れないというので、そういう時代は電話もなかった、スマホもなかったでしょうから、連絡も取れないというので、二十年というようなことを一つの基準に設けていますが、それはさすがに時代の変わり、変遷とともにそういうものではないだろうというので、ここはもうちょっと実態に合わせたものに変えていかなきゃなりませんし、ただ単に期間だけではなくて、本当に人間としての関係が壊れているということに対しても、幾つか事例等々を示しながら弾力的に運用していただく。ただ、やはり扶養照会というのは、本人が拒む拒まぬに関係なくと言ったら変なんですけれども、例えば、実際に扶養控除を受けているという場合もあるかも分かりません。そういうことを考えると、やはり一定の扶養照会というものは必要になってくるというふうに考えております。
○宮本委員 それだと、今本当に生活保護を客観的には使わなきゃいけないような状態である方が使えない。人間関係が壊れているからどうのこうのじゃないんですよ、扶養照会によって人間関係が逆に壊されてしまうということを当事者の皆さんは声を上げていらっしゃるわけです。大体、扶養照会が必要だ、必要だと言うわけですけれども、菅総理は、御長男の総務省幹部の接待疑惑については、ここで問われて、長男は別人格だというふうに答弁されているわけですよね。だったら、生活保護も別人格として対応するというのが、私は筋の通った考え方だと思いますよ。その上で、時間がないので次に行きます。年金の減額について伺います。二〇二一年度の年金はマイナス改定になりました。物価がマイナスでないのに年金がマイナスになったのは、初めてであります。来年度予算案では、年金は実は据置きで組んでいるわけですよね。据置きで組んでいるにもかかわらずなぜ年金が減額になったのか、端的に説明していただけるでしょうか。
○田村国務大臣 賃金変動率が物価上昇率よりも低い場合は賃金変動率を使う、名目賃金変動率でありますけれども、それを使って改定をするということになっております。それで、過去三年間の実質賃金の平均を出した上で、それに直近の物価を乗じるという形になりますけれども、計算した場合に、結果的にマイナス、マイナス〇・一%というような改定になるということであります。
○宮本委員 ですから、予算は据置きで組んだわけでしょう。なぜ予算と違う結果になっているんですか。
○田村国務大臣 予算はそういう話でありますけれども、実際問題、これに関して言いますと、予算に不足が生じるおそれがありませんので、そういう意味で、修正はいたしていないということであります。
○宮本委員 予算のときは、年金が減額するというふうに思っていなかったわけですよね。だから据置きで組んでいたわけでしょう。ですけれども、実際は、配付資料にありますが、二のところで、前年の消費者物価指数を、賃金改定率は足しますけれども、前年の消費者物価指数が〇・一か〇・二になる予定だったのが〇・〇になっちゃった、だから賃金改定率の方がマイナス〇・一になってしまって、年金がマイナスになったということですよね、その年金の予算のときとの違いというのは。その上で、今日、総務省に来ていただいておりますけれども、二〇二〇年の消費者物価について、主に上がった項目と下がった項目、それぞれが消費者物価指数に与えた影響について述べていただけますか。
○佐伯政府参考人 お答えいたします。消費者物価指数の二〇二〇年平均の総合は、二〇一五年を一〇〇として一〇一・八で、一年前と同水準になりました。内訳を見ますと、上昇した主な項目は、外食などの食料や、火災・地震保険料などの設備修繕・維持で、総合指数への影響はそれぞれ、〇・四ポイント、〇・一ポイントの押し上げとなっております。下落した主な項目は、ガソリンや電気代などのエネルギー、幼稚園保育料などの授業料等、宿泊料などの教養娯楽サービスで、総合指数への影響はそれぞれ、〇・三ポイント、〇・三ポイント、〇・二ポイントの押し下げとなっております。なお、GoToトラベル事業の開始で宿泊料が割引となったことによる影響を除いて二〇二〇年の総合指数を試算いたしますと、〇・一%の上昇となります。
○宮本委員 つまり、GoToトラベルの影響分ちょうど物価が伸びなくて、年金がマイナス改定になったということなわけです。ですけれども、上がったのは食費が上がったと。先ほど、下がったのは幼稚園無償化など教育費だと。高齢者というのは、食費はたくさんかかるわけですよね。ですけれども、子供が幼稚園に行っている高齢者というのは、まあ余り、めったにいないわけであります。ですから、消費者物価指数そのものは変動はないといっても、中身を見れば、高齢者にとっては大変、必要なものは上がったということなんですね。資料の三枚目を見ていただきたいと思うんです。これは総務省が、七十歳以上の高齢者の消費実態、消費品目ごとのウェートに合わせた消費者物価指数というのを公表しております。青い線が七十歳以上、赤い線が消費者総合物価指数そのものということになっております。全世代平均で見れば、二〇一五年を一〇〇とすると、先ほどお話あったとおり、二〇二〇年は一〇一・八。一方、七十歳以上の高齢者は、二〇一五年を一〇〇とすると、二〇一九年は一〇二・五、二〇二〇年は一〇三・〇ということで、高齢者バージョンの消費者物価指数で見れば、この一年で〇・五上がっているわけですね。一方で、年金は、幼稚園の無償化やGoToトラベルの影響でマイナス〇・一ということになるわけであります。そもそも、年金自体は、マクロ経済スライドもあって、この間上がっていないというのがあるわけですけれども。今度のこういう改定というのは、高齢者の消費生活の実態から見たら大変生活が厳しくなる改定ではないかと思いますが、そういう認識は、大臣、ございますか。
○田村国務大臣 GoToトラベルでという話がまずありましたが、GoToトラベルによって需要が増えているということでありますから、物価全体で見れば、それはGoToトラベルによって増えた需要というものが他の物価に影響を与えているということもこれは考えなければなりませんので、一概に総務省が言ったような話ではないんだろうと私は認識いたしております。その上で、要するに、賃金が目減りしておるということは、若い現役世代もその分だけ厳しい状況になっておるということでございますので、ここは、全世代型社会保障という面から考えれば、ひとつ、やはり高齢者も同じような形で対応をいただかなければならないのかと、大変申し訳ない話でありますけれども、お許しをいただきたいという気持ちであります。同時に、高齢者の方々の物価だけ変えるとなると、今度、高齢者物価が下がったときに、世の中全体は上がっているのに高齢者だけ下がった、年金が下がる、こういうことも、逆のことが起こり得るときに、そういう対応をしたときにどう思われるのかということもあると思います。それから、年金の財政計算という意味からすると、経済の成長というものを一定見込みながら長期的な計算をしておりますので、大体、総合物価指数たるものはそれに近いような動きであるだろうという話であろうと思いますが、高齢者だけ抜き出すというのが果たして全体の計算の中にどういう影響を与えるのか、これは経済全体の成長とは違う動きをする可能性がありますので、そういうことも勘案をしなければならない。幾つかのやはり問題があると思います。大変心苦しいわけでありますが、今般こういう改定であったということで、どうかお許しをいただきたいというふうに思います。
○宮本委員 高齢者の皆さんの生活実態に合わせた改定というのは、私は一番大事なことだと思うんですね。やはり年金というのは、高齢者の皆さんというのは年金しか収入がない、だから、物価が上がればそれに合わせて年金も上げてくるというのが戦後の日本の基本の年金の姿だったというふうに思うんですよね。ところが、五年前の年金カット法で、賃金がマイナスのときは物価が上がろうとも賃金改定率に合わせて下げるということになったわけでありますが、しかし、それに加えて、今日、総務省の資料をグラフにしましたけれども、やはり全世代の消費者物価指数と高齢者の消費者物価指数が乖離してきているわけですよね。同じような動きをしていれば同じような改定で説明がつくと思うんですけれども、ここまで乖離してきているということになると、これはやはり、高齢者の生活を守るためにはどういう統計を使うべきかということも含めて私は研究、検討しなきゃいけないというふうに思いますよ。その上で、もう一点だけお伺いしますけれども、二〇二〇年の実質賃金は、速報値でマイナス一・二%ということになりました。実は、年金に昨年の賃金が反映されるのは二から四年後の三年間ということになっていて、二〇二一年の年金には反映されないわけですね。その先の年金に反映されることになります。そうすると、二〇二一年はマイナスだと、二二年も二三年も二四年も、四年連続で年金は今のままではマイナスになる可能性が極めて高いんじゃないですか。
○田村国務大臣 物価の変動率でありますとか賃金の上昇率といいますか変動率というのは、これはなかなか我々も予見ができないわけでございますので、今ここで即座にお答えするというわけにはいかないということで御理解いただきたいと思います。
○宮本委員 ですけれども、大体想像がつくわけですよね。それは、よほど物すごいインフレが起これば、インフレだとか起これば、いろいろなことが起きたら何か起きるかも分からないですけれども、賃金がぼんと上がることとか、いろいろなことが起きれば分からないですけれども、普通に考えたら、これほどの実質賃金の低下があったら、それは当然、その先に大きくマイナスとして反映するわけですよね。仮に、今年も翌年も物価が上がっていったとしても、年金だけは下がり続けるという事態がこのままでは起きる。私は、五年前の、賃金に合わせて、賃金がマイナスだったら年金を下げていくというこの仕組みはやはり見直さなきゃいけないというふうに思いますし、高齢者の生活実態に合わせた年金にすべきだと。更に言えば、二〇二一年でいえば、予算では年金は据置きで組んでいるんですから、少なくとも据置きすべきだ、そのことを強く申し上げておきたいと思います。最後の問題です。七十五歳以上の窓口負担の二割負担、医療費の二割負担についてお伺いいたします。年金がこれから恐らく減額が続いていくであろう中、後期高齢者医療費の二割の負担増をすれば、受診抑制を招き、健康と命の問題に直結するのではないのかと思っております。二割負担の対象が単身者で年収二百万円、こういう線引きになったわけですけれども、二百万円で区切る根拠というのは何なんでしょうか。何を根拠に負担能力が二百万円からはあるとしているんでしょうか。
○田村国務大臣 これは、全世代型社会保障検討会議等々でも御議論をいただきながら、また、担当の審議会でも御議論をいただきながら議論をしてきたわけであります。機械的に、単身世帯でいいますと、年収百五十五万から二百四十万まで五つの選択肢をお示しさせていただきまして、最終的に、社会保障審議会医療保険部会等で御議論いただいて、政府・与党で協議した結果、こういう形になりました。なお、これは、課税所得二十八万円以上、七十五歳以上の高齢者のうちの所得上位三〇%に該当するということでございます。現役世帯の平均的な収入等々で見ると、四十年間厚生年金を納めた方の年金額というのが、月十五・六万円、百八十七万円でありますから、これよりかは高い層でございます。収入、支出を見ると、それぞれ、単身で年間十二万余裕がある、又は複数で三十六万余裕のある、複数家庭ですね、そういうような所得層であります。あわせて、これは国民生活基礎調査でありますけれども、これからちょっと数字を引っ張り出しましたけれども、年収二百万から三百万の年収世帯の貯蓄の分布でありますが、平均値一千六十五万円、中央値でいきますと五百五十万円であります。一方で、六十歳未満の方々、これでいきますと、平均値七百十三万円、中央値三百万円ということでございますので、現役世帯よりかは、この階層、貯蓄は、中央値、平均値とも高いということであります。
○宮本委員 十二万円単身世帯では余裕があるんだという答弁をされましたが、それは平均値ですよね。七十五歳以上の単身者世帯の収入と支出の状況というのは、確かに社会保障審議会の部会に出ている資料を私も見ましたけれども、例えば、家賃でいえば、年間住居費は十七万円ですね、住居費十七万円。家賃を払っている人も持家の人も平均するから十七万円になっているんだと思うんですけれども、家賃の人だったら、借家の人だったら、住居費年間十七万円なんてあり得ないわけですよね。そうすると、十二万円余裕があると、余裕があるという言い方もどうかと思いますけれども、年収と支出の差が十二万円あるからということをおっしゃいますけれども、平均で見るのとは一人一人は違うと思いますし、もっと言えば、医療費のかかり方というのは一人一人、とりわけ、たくさんの持病を抱えている方だとか大きな病気をした場合は、とてもじゃないけれども、平均で見るという議論をしていたら、これは全く足りなくなる、こういうことが起きるんじゃないですか。この点は更に引き続き議論したいと思います。最後に、一点お伺いしますけれども、窓口負担が二割になる対象について、法案では「所得の額が政令で定める額以上である場合」とあります。二割負担の範囲について、金額が法律には書いていないわけですね。結局、この法案を通すということは、時の政権に二割負担の範囲についてフリーハンドを与えることになるんじゃないか。現役世代の負担軽減という名目で、国会にも諮らずにどんどん対象が拡大されていくことになるんじゃないですか。
○金田委員長 田村厚労大臣、時間が来ましたので簡潔にお願いをいたします。
○田村国務大臣 これは全世代型という形で、若い方々がこれから負担が増えていくのをどう抑えていくかということでございましたので、先ほど、貯蓄で見ると、現役世帯の方が平均値、中央値ともこの所得階層の方々と比べれば少ないというお話もさせていただきました。そして、三年間、暫定的にですけれども、これは三千円、負担分で一月三千円で三年間は経過措置を置かせていただいております。なお、今の点で申し上げると、今、三割負担、これは現役並みの方々であります、現役並み所得のある方々に三割負担を七十五歳以上の方々でもしていただいておりますが、これも同じような考え方の下で対応させていただいておるということでございますので、御理解をいただければありがたいというふうに思います。(宮本委員「答えていない。委員長。質問に答えてください」と呼ぶ)
○金田委員長 厚労大臣、もう一度しっかり答えてください。
○田村国務大臣 今も三割負担、現役並みの方々三割負担、七十五歳でもしていただいています。これも同じように政令で定めておるということであります。
○宮本委員 三割負担も政令で決めているから、二割負担の範囲も政令で、時の政権でフリーハンドを握って幾らでも引き上げられるようにしよう、そういう宣言かと思いました。これは徹底的に追及したいということを申し上げまして、質問を終わります。
○金田委員長 これにて宮本君の質疑は終了いたしました。次に、美延映夫君。