2021年6月2日 衆院厚生労働委員会 建設石綿救済へ基金 衆院委全会一致可決
建設アスベスト(石綿)被害救済のための補償基金を創設する建設石綿給付金法案が2日の衆院厚生労働委員会で、全会一致で可決されました。
国と建材メーカーの責任を認めた最高裁判決を受けたもの。中皮腫や肺がんなど建設アスベストによる健康被害を受けた労働者や一人親方、遺族などを対象に、裁判を経ずに迅速に補償・救済する仕組みをつくります。
同日の質疑で、日本共産党の宮本徹議員は、最高裁が認めた賠償額のうち半分の企業責任分については、なお裁判を経ないと賠償されない課題が残るとして、全被害者の全面救済のためには、基金への建材メーカーの参加が必要だと強調しました。その上で、付則に盛り込まれた「国以外の者による補償の在り方の検討」について質問。田村憲久厚労相は「『国以外の者』とは建材メーカーを想定している」と答えました。
宮本氏は、検討にあたり、「建材メーカーも補償金を拠出することが目標だと明確にするべきだ。政府の責任で業界団体、建材メーカーを集め、全面解決に向けて話し合う場を設けるべきだ」と主張。実態に応じた柔軟な認定と、被害者を一人も残さないための丁寧な基金の周知を求めました。
以上2021年6月3日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2021年6月2日 第204回衆院厚生労働委員会議事録≫
○とかしき委員長 次に、宮本徹君。
○宮本委員 日本共産党の宮本徹です。今日、この後、建設アスベストの損害賠償の給付金の法案も採決される予定でありますが、前回もこの問題、大臣には質問させていただきましたけれども、まず大臣に基本的な認識をお伺いしますけれども、建設アスベスト被害について、全被害者の全面救済が必要だと考えますが、その点、いかがですか。
〔委員長退席、門委員長代理着席〕
○田村国務大臣 先ほどもおわび申し上げましたけれども、まずは、この建設アスベスト被害者の方々には、権限行使を国がしてこなかったわけでありまして、この規制自体を適切に行使しなかったがために、結果的に多くの皆様方が被害を受けられたわけでありまして、本当に、被害者の方、遺族の方、申し訳なく思うわけでありますし、多年にわたる本当にお苦しみをいただいたわけであります。改めて、おわびを申し上げます。五月十八日、判決が出、そして与党で取りまとめをいただいて、原告団とそしてまた弁護団の皆様方の合意書、これを取り交わさせていただきました。今般、今日この後、議員立法という形で可決をなされるんだというふうに思いますけれども、これに基づきまして、我々としては、しっかりと、給付金制度に基づく給付というもの、これに取り組んでまいりたいというふうに思います。なお、今言われた、全面的にというお話もございましたけれども、これまで業務に起因して石綿の健康被害を受けてこられた労働者の方々については、これは、労働者災害補償保険制度に基づく保険給付、これを適切に行うとともに、それ以外の方々に関しては、労働者災害補償保険制度に基づく給付金を受けることができない方々、こういう方々もおられるわけでございますので、ここは石綿健康被害救済法に基づく給付等々、これを行っているところでございます。いずれにいたしましても、この後可決される法律、これに基づいた、我々としては、今般の最高裁の判決に基づいての対応という形の中において、しっかりと給付制度等々にのっとった給付、これに向かって努力をしてまいりたいというふうに思っております。
○宮本委員 全面救済そして全被害者ということを考えた場合に、やはり今回の法案はまだ足りないところが幾つもあると思っております。先ほど来話がありますけれども、裁判での賠償額の半分については国が出す。だけれども、もう半分は、建材メーカーの賠償責任は裁判で争い続けなければならないということもあるわけです。私たち野党は、政治の仕事は被害者全員の全面救済のために司法の限界を乗り越えることだという考えで与党とも折衝してまいりました。野党が求めたのは、第一に、建材メーカーにも全被害者救済の責任を果たしていただくために基金制度への参加への道筋をつけること、第二に、補償の対象外とされた屋根工など、屋外作業に携わってきた被害者の救済にも道筋をつけること、第三に、補償対象の期間外とされた被害者の救済にも道筋をつけることであります。野党から働きかける中で、与党の合意を得てできたのが、先ほど長妻さんから紹介があった附則第二条の検討規定であります。ここで、国以外の者による損害賠償等の在り方についての検討を加えとあるわけですけれども、大臣に改めて確認しますけれども、この附則第二条で言う国以外の者とは、石綿含有建材の製造企業、販売企業を想定している、これでよろしいですね。
○田村国務大臣 今言われました附則第二条でございますが、国は、国以外の者による特定石綿被害建設業務労働者等に対する損害賠償その他特定石綿被害建設業務労働者等に対する補償の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとするという規定、検討規定が置かれているものと承知いたしております。この規定でありますけれども、今委員がおっしゃられましたが、建設アスベスト訴訟では、建設メーカーのうち提訴されたものは一部であるとともに、判決により責任を認められたメーカーもあれば認められなかったメーカーもあるといった状況の中で、与党建設アスベスト対策プロジェクトチームの取りまとめにおいて、建設メーカーの対応の在り方について引き続き検討することとされたことを踏まえて規定されているものであり、国以外の者は、言われたとおり、建材メーカーを想定しているものというふうに承知をいたしております。
○宮本委員 建材メーカーだということなわけですね。ですから、法案が成立すれば、附則にあるように、建材メーカーによる損害賠償の在り方について検討して所要の措置を取るというのが政府の責任になるわけであります。その点、大臣にお伺いしますけれども、最高裁判決で、建材メーカーについて連帯して損害賠償責任を負うと、建材メーカーの共同責任が明確にされた点についてどう考えているのか、お聞かせいただきたいと思います。
○田村国務大臣 五月十七日の最高裁の判決でありますけれども、建材メーカーの連帯責任を肯定いたしまして、それぞれの建材メーカーについて、損害の発生に対する寄与度に応じた範囲で損害賠償責任を負うと判示されたものと承知をいたしております。議員立法で準備されている法律案においては建材メーカーに関する検討規定が置かれている、先ほど申し上げましたけれども、このような形の中で、引き続き、与党プロジェクトチームでもこの対応の在り方に対しては検討していくということでございますので、それを踏まえて我々も対応してまいりたいというふうに考えております。
○宮本委員 最高裁判決でも、損害の発生の寄与に応じてそれぞれ建材メーカーが責任を負うとされているわけです。原告団、弁護団は、国だけではなく建材メーカーも加わった補償基金制度というのをかねてから創設すべきだと提案してきたわけです。ですから、やはり附則に基づく検討をどう進めるのか。目標は、建材メーカーも被害者への補償金を拠出する基金制度だ、ここをはっきりして検討を進めていくべきじゃないかと思いますが、大臣、いかがですか。
○田村国務大臣 先ほど来申し上げておりますけれども、この附則二条等々、そしてまた与党のプロジェクトチーム等々で、この今般の部分に関しましては検討するということでございますので、厚生労働省といたしましても、建材メーカーを所管する関係省庁、具体的には経済産業省ということになろうと思いますけれども、ここと協力をいたしながら対応してまいりたいというふうに考えております。
○宮本委員 やはり、目標をしっかり、明確に持ってやらないと駄目だと思うんですよね。建材メーカーにどう責任を果たしてもらうのか。やはり、今回国の基金制度ができるんだからそこに建材メーカーも参加してもらうんだ、そういう覚悟を持って取り組んでいかなきゃいけないというふうに思うんですよ。その上で、先ほど長妻さんからの質問に対して経産省が答弁されておりましたけれども、基金制度を創設するということを考えた場合に、どの建材メーカーがどういう分担で基金を拠出しようかということを考えた場合は、どうやっても、やはりシェアに応じた拠出金というのが合理的になっていくと思うんですよね。そのためには、建材メーカーの建材の製造量、販売量、シェア、この調査をやらなきゃいけないわけであります。先ほど調査について検討するということをおっしゃったわけですね。それぞれ個社についても問合せをしていくということをおっしゃったというふうに思うんですけれども。これは所管が大臣は違うとおっしゃるのかも分からないですけれども、大臣の立場からすれば、一つ一つの企業に対しての聞き取りというのは当然ながらやるべきまず第一歩の仕事だというふうに思われると思いますが、いかがですか。
○田村国務大臣 先ほども申し上げましたが、与党のプロジェクトチームの下でそこに関しては検討をいただくということで、その検討に基づいて、所管省庁であります経済産業省と連携して対応してまいります。先ほど経済産業省からはそのような旨の答弁があったというふうに認識をいたしております。
○宮本委員 そのような旨というのは、個社に聞くかどうかの調査について検討するというところでとどまっていて、本来だったら、これは当然、当たり前じゃないですか。業界団体に聞いて、個別の了解が得られないと言われたら、じゃ、私も前回言いましたけれども、それは一つ一つ聞けばいいじゃないかという話もしましたけれども。この法律を所管するのは経産省じゃないですよね。でき上がったら、田村大臣、厚労省じゃないですか、所管、責任を負うのは。これは大臣から経産大臣に、ちゃんと一つ一つの企業に対して聞き取りをやってくれ、そういうふうに言えばいいだけの話なんですよ。それも言えないわけですか。
○田村国務大臣 先ほど来申し上げておりますけれども、与党PTでこれに関して検討いただくわけでありまして、その検討を踏まえた上で、我々厚生労働省は直接所管ではないものでありますから、経済産業省が所管になってこようと思いますけれども、経済産業省と連携をいたしまして対応してまいりたい、このようにお答えをさせていただいておるわけであります。
○宮本委員 何か他人任せなんですよね。与党PTとは、それは与党との話合いの中で出ているんだとは思いますけれども、法律ができたらこの附則の実行というのは政府の仕事になるわけでしょう。厚労省の仕事になるわけですよ。そこの自覚が感じられないんですよね、先ほど来の大臣からの答弁では。そこはちゃんと自覚を持っていただきたいというふうに思います。やはり、建材メーカーの側からしても、業界全体で責任を負えば一社当たりの荷も小さくなるわけですよね。建材メーカーにとっても合理的な解決案だというふうに私は思いますよ。これは是非政府の責任で、業界団体、建材メーカーを集めて全面解決に向けてよく話し合う、こういう場を設けていく必要があるんじゃないかと思いますが、これは大臣、いかがですか。
○田村国務大臣 最高裁の判決においても統一的な基準が示されたわけではないというふうに理解をいたしておるわけであります。いずれにいたしましても、基本的な考え方というものはお示しをいただいているわけであります。議員立法、これは成立してからの話でありますから、成立した上でということになりますけれども、基本的な考え方というものはお示しをいただいているわけであり、そして、与党のプロジェクトチームと我々連携して今までやってまいりましたけれども、そちらの方でも判決を踏まえながら検討していただくわけでございます。そういう意味で、そのような考え方というのが根底にある中の下において、我々としては、それは成立すれば厚生労働省所管の法律になろうというふうに思いますけれども、直接業界の担当をいただいておるのはどうしても経産省になるものでありますから、そことも連携しないとなかなか物事は進んでいかないという意味で申し上げているわけでありまして、しっかりと連携をしながら対応をさせていただきたいというふうに思っております。
○宮本委員 やはり、業界団体はそっぽを向いている状況なわけですよね、今、建材メーカーの皆さんも。その姿勢を変えていくというのは誰がやるのかということを考えたら、法律ができるわけですから、今日、立法府の意思として法律を作るわけですから、それは責任を負って政府が建材メーカーをちゃんと話合いのテーブルに着かせていく、基金に向けて話合いのテーブルに着かせていく、こういう努力が政府には求められるんじゃないかということを私は申し上げているんですよ。
○田村国務大臣 法律は今日は成立しないと思いますけれども、これは、委員会で可決いただいて、衆議院の方で採決いただいた上で、参議院の下で成立を最終的にはするというふうに思いますけれども、法律の趣旨というのは我々も十分に認識をいたしておるわけでありますので、先ほど来から申し上げておりますとおり、法律の成立後というわけではありませんけれども、与党とも検討される中においていろいろな対応を我々もしているわけでありますので、これに関しては、経産省と連携をしながらということを再度申し上げたいというふうに思います。
○宮本委員 何か、積極的な解決に向けた姿勢がなかなか感じられないのは大変残念ですね。それともう一点、建材メーカーとの関係でお伺いしますけれども、今日は傍聴で弁護団の皆さん、原告団の皆さん、支援者の皆さん、遺族の皆さん、たくさんいらっしゃっておりますが、私の地元からも原告の方が今日見えております。その方からも言われているんですけれども、まず建材メーカーには謝ってほしいんだということなんですよね。先日も、ある建材メーカーとの協議を行ったそうです。最高裁判決が出ても建材メーカーは横を向いていて、原告に謝ってくれない。建材メーカーは、危険性を認識していたにもかかわらず、危険性を伝えてくれなかった。火事にも強い、長もちもする、だからすばらしいものなんだと言われて使い続けた。何で謝ってくれないんだという話であります。原告も遺族も本当に、最高裁判決が出たのにいまだに謝りもなくて、大変切ない思いをしているという話であります。国は、今日も大臣、おわびを表明されましたけれども、建材メーカーにまずは謝るようしっかり働きかける必要があるんじゃないですか。
〔門委員長代理退席、委員長着席〕
○田村国務大臣 国としては、本当に深くおわびを申し上げるわけであります。建材メーカーに関しては、これは国としてコメントするというような立場ではないわけでございまして、国としての責任というものをしっかりと我々としては認識して、この法律が施行されれば、当然のごとく、我々は給付ということに関してしっかりと対応させていただきたいというふうに思っております。
○宮本委員 いや、国は国でおわびはしましたからという話じゃないと思うんですよね。国は危険性を認識しながら放置していた。建材メーカーも一緒になって放置をしてきた。我々は最高裁の判決を受けて謝ったんだから、皆さんもちゃんと真摯な態度を示した方がいいんじゃないですか、こう働きかけるのは国として当然の責任だと思いますよ。国が使用を禁止していたら、建材メーカーだって当然使わなかったということになるわけですから、その国の方の大本の責任をしっかり自覚をして取り組んでいただきたいというように思います。それから、次に行きますが、法案の中身でございますが、認定についてですけれども、先ほど尾辻さんとのやり取りの中で、屋内作業、屋外作業の話がございました。最高裁では屋根工の方が認められなかったというのがあったわけですけれども、現実には、屋根工の人がいつも一〇〇%屋外で作業しているわけではなく、屋内で切断作業をすることもあるわけですね。現に今回の裁判で争った屋根工の中には、屋内の事故で労災を受けたという方もいらっしゃるわけであります。地方なんかでは、屋根工の方が、外壁も内壁も、一人何役もやっているという場合もあるわけですね。ですから、職種が屋根工であっても、機械的に職種だけではねるのではなく、一人一人に対して、屋内作業をしていたことはありませんかということをよくよく実態を聞いて認定に当たるという姿勢が大事だと思いますが、その点いかがですか。
○吉永政府参考人 新しい給付金の制度ができた場合でございますけれども、給付金の認定に当たりましては、提出された資料などを基に認定審査会に対しまして作業内容の実態等に関する審査を求めた上で、その審査結果に基づき認定を行うなど、適切に対応していきたいというふうに考えているところでございます。いずれにいたしましても、厚生労働省といたしましては、基本合意書に基づきまして、より多くの方が速やかに救済されるよう努力をしてまいりたいと考えてございます。
○宮本委員 実態に即して柔軟に、可能な限り最大限多くの人を救済するという姿勢で当たるということでよろしいわけですよね。屋根工の人でも屋内で作業をしていればそうなる、そこはしっかり見るということでよろしいですか。
○吉永政府参考人 職種というよりは、実際にそういう作業をしていたかどうかという実態を踏まえた形で適切に対応するということが原則だと考えてございます。
○宮本委員 屋根工の方でも屋内で作業をしているということがあれば、そこはちゃんと見ていただくという答弁だというふうに思います。そして、今回の法案の対象となる被害者が一人も漏れなく給付されるためには、制度の周知と申請の支援というのが大事だと思います。労災を、現に給付を受けている方は、これについてはもう、建設業で働いていた方というのは当然全て基本的に把握されているというふうに思います。また、石綿救済法の方は、先ほど話がありましたけれども、これは厚労省が主に所管をしているわけですけれども、こちらは職歴を問わずに給付は行っているということであります。まず、厚労省として、現に労災の給付を受けている被害者、また石綿救済法で給付を受けている被害者への制度の周知、それと申請の支援をどう行おうと考えているのか、お伺いしたいと思います。
○吉永政府参考人 厚生労働省といたしましては、五月十八日の基本合意書におきまして、制度につきまして広く周知するというふうに記載されてございますので、これを誠実に履行していくということが大事だろうと思ってございます。その上ででございますが、既に労災を受けていらっしゃる方、また石綿救済法の中で特別遺族給付金の給付を受けていらっしゃる方につきましては、御本人あるいはその遺族の方につきまして個別のお知らせを行うことを含めまして、丁寧な周知を行うことを検討しているところでございます。また、特別遺族給付金以外の石綿救済法の救済給付を受けていらっしゃる方につきましても、関係省庁と協議をしながら適切に行っていきたいというふうに考えてございます。また、今後、労災認定をされる方につきましては、労働基準監督署等の窓口におきまして、労災認定手続の中で個別にお知らせするということを検討してまいりたいと考えてございます。さらに、労災認定等を受けられていないが本給付金制度の対象になる方につきましても、給付金制度をお知らせするために、厚生労働省のホームページへの掲載など、広く一般に周知を行う方向で検討しているところでございます。いずれにいたしましても、制度発足時には丁寧な周知を行うとともに、給付金を受けるべき方が確実に申請いただけるように、請求手続につきましては分かりやすく周知をしていきたいというふうに考えているところでございます。
○宮本委員 今日、環境省にも来ていただいております。先ほど尾辻議員とのやり取りで過去のアンケート調査のお話もございましたが、是非、実際今給付を受けられている方のうち建設作業に従事した経験がある方がどれだけいるのかというのは、過去のアンケートの範囲でしか分かっていないということだと思いますので、今石綿救済法で給付を行っている被害者については全員個別に給付金制度について案内をする、また、過去に建設業に従事していた職歴がないか全員にアンケート等で調査を行うなど、給付から漏れる人が絶対出ないような取組をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
○田原政府参考人 お答えいたします。石綿健康被害救済法に基づき救済給付事務を行っている環境再生保全機構では、この認定の申請それから請求時に任意のアンケート調査を行っておりまして、職歴等の把握に努めているところでございます。こうしたアンケート調査の結果も参考に、今回新しく創設される給付金の制度につきまして、希望する方がしっかりと申請が行える環境を整えていくことが重要だというふうに考えておりますので、環境省といたしまして、今後どういった周知ができるのか、厚生労働省とも連携をしながら検討してまいりたいと考えております。
○宮本委員 今までの調査は任意ですので、全員のことが分かっているわけではないというのが現状だと思いますので。ですから、今、石綿救済法で給付を受けている方については、該当するのか該当しないのか分かっていない方についても、全員、環境省の責任で、漏れなく給付できるように調査を行っていただきたいということを重ねて申し上げておきたいというふうに思います。そして、環境省にもう一点お伺いしますけれども、今後も、アスベスト関連疾患を発症して、でも労災に入っていない一人親方の建設事業者が石綿救済法の申請をするケースもあると思うんですね。その際、是非、今度は任意じゃなくて、必ず建設業に従事していたかどうかも聞き、制度の周知と、そして、厚労省と連携しての申請の支援を行っていただきたいと思いますが、いかがですか。
○田原政府参考人 お答えいたします。環境省では、これまでも、石綿健康被害救済法に基づく申請に際して、申請者から提出される作業従事歴等を基に、労災の対象となる可能性がある方に関しては御本人にお伝えをして、同意を得た上で厚生労働省に情報提供を行うなど、厚生労働省と連携しながら取り組んできたところでございます。環境省といたしましては、こうした取組も踏まえまして、この新しい制度におきまして、きちんとその申請をされる方にもしっかりと周知をしながら制度を運用してまいりたいと考えております。
○宮本委員 しっかりした対応をお願いしたいというふうに思います。それと、この法案が施行されてその後のことにもなるわけですけれども、その前に一点、この法案、一年以内の施行ということになっているわけですけれども、できるだけ早くやはり迅速な給付を開始してほしいということを伺っております。それはこの法律の立法趣旨からいってもそうなると思うんですけれども、できる限り早く施行していただきたいと思いますが、いかがですか。
○田村国務大臣 この法案の趣旨でございますけれども、最高裁判決において国の責任が認められたことに鑑み、これらの判決において国の責任が認められた者と同様に苦痛を受けている者について、その損害の迅速な賠償を図るため、特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給について定めるものとする、こうされているわけであります。迅速なというふうな言葉もこの中に入っておるわけでございます。公布の日から起算して一年を超えない範囲内で政令で定める日というのが施行期日になっておりますけれども、我々といたしましては、損害の迅速な賠償を図るという法律の趣旨、これにのっとって、施行に向けた準備、これをしっかりとやってまいりたいというふうに思っております。
○宮本委員 できるだけ早く準備を進めていただきたいと思います。その際、本省、労基署、それぞれで丁寧な相談体制というのも必要ですし、漏れなく迅速に給付する体制も必要になります。そのためにも、人の配置というのは必要になると思うんですけれども、厚労省もコロナ対応で大変残業も増えているわけですが、しっかり定員も増やして人も配置していただきたいと思いますが、いかがですか。
○吉永政府参考人 今御検討いただいております法案が、やはり損害の迅速な賠償を図るためということでございます。この趣旨にのっとりまして、円滑な給付金の支給のために、相談や請求の受付、審査等に必要な体制の整備に努めてまいりたいと考えてございます。
○宮本委員 人を増やすという話じゃなくて。これは大丈夫ですかと思っちゃいますが、ちゃんと定員の確保を是非していただきたいと思うんですよね。そのこととの関係で、厚労省の四月の超勤の状況について、一、二月よりも大きく増えているわけですけれども、ちょっとその要因も含めて紹介していただけますか。
○山田政府参考人 お尋ねのあった本年四月の厚生労働省本省職員の超過勤務時間については、月八十時間以上百時間未満が四百二十三人、月百時間以上百五十時間未満が三百五十九人、月百五十時間以上が四十八人となっております。この中で最長の超過勤務時間は二百二十六時間となっております。御指摘のように、四月の超過勤務時間が一、二月よりも大きく増えている状態になっていますが、この要因については、一つには、例年この時期、四月の人事異動に伴う庶務関係業務だとか、年度末の経理関係業務等が集中すること、二つ目に、ワクチン接種だとか医療提供体制の確保等の新型コロナウイルス感染症対策、それから、国会にて御審議をお願いしている提出法案に関する作業等があったことが理由だと考えております。
○宮本委員 大臣、本当にコロナ禍で、多忙の中で、建設アスベストの問題もしっかりと迅速な給付をやろうと思ったら、やはり人をしっかり増やしていくということが必要だと思いますので、定員を増やしていく、この決意を最後に確認をしたいと思いますが、いかがですか。
○とかしき委員長 田村厚生労働大臣、申合せの時間が来ております。
○田村国務大臣 現状で、定員を増やすというのはなかなか、私の立場で今のところは申しづらいところがありますけれども、迅速に給付をするということは大変重要だということ、これは私も認識いたしておりますので、そのような準備体制というのをしっかりと取ってまいりたいというふうに思います。
○宮本委員 人の確保をしっかりお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
≪2021年6月2日 第204回衆院厚生労働委員会 アスベスト被害者救済法採決部分議事録抜粋≫
○とかしき委員長 次に、特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律案の起草の件について議事を進めます。本件につきましては、先般来各会派間において御協議いただき、今般、意見の一致を見ましたので、委員長において草案を作成し、委員各位のお手元に配付しております。その起草案の趣旨及び内容について、委員長から御説明申し上げます。令和三年五月十七日の建設アスベスト訴訟の最高裁判決において、国が規制権限を行使しなかったことが違法であると判断され、慰謝料等の損害賠償請求が認められたことは、重く受け止めなければなりません。国は、係属中の建設アスベスト訴訟については、裁判上の和解を進めていくこととしています。他方で、石綿にさらされる建設業務に従事し、既に石綿関連疾病にかかっていても未提訴の方々や、将来発症する可能性のある方々も多数いらっしゃいます。こうした方々が訴訟を起こさなければ救済されないとすると、重度の健康被害を抱えながら訴訟を強いられることとなり、肉体的にも精神的にも大きな負担となってしまうことが危惧されます。また、被害者の方々の高齢化が進んでいることからも、訴訟を経ることなく、早期に救済を図ることが求められています。本案は、最高裁判決等において国の責任が認められたことに鑑み、未提訴の方々について、その損害の迅速な賠償を図るため、訴訟によらずに給付金等の支給を行うための措置を講じようとするもので、その主な内容は次のとおりであります。第一に、国は、石綿にさらされる建設業務に従事することにより、石綿関連疾病にかかった労働者や一人親方等又はその遺族であって、認定を受けた方に対し、給付金を支給することとしております。ここで、対象となる業務は、最高裁判決等により示されたものとし、昭和四十七年十月一日から昭和五十年九月三十日までの間に行われた石綿の吹きつけ作業に係る業務と、昭和五十年十月一日から平成十六年九月三十日までの間に行われた一定の屋内作業場における作業に係る業務としております。第二に、給付金の額は、病態等による七つの区分に応じて、五百五十万円から千三百万円としております。給付金の受給後に症状が悪化した場合には、追加給付金として、進行後の病態等の区分における給付金の額と既に受けた給付金の額との差額を支給することとしております。第三に、厚生労働大臣は、給付金等の支給の請求を受けたときは、厚生労働省に設置する審査会に審査を求め、その審査の結果に基づき、支給を受ける権利の認定を行うものとしております。第四に、独立行政法人労働者健康安全機構に基金を設け、給付金等の支払いの業務を行わせることとし、政府は、機構に対し、給付金等の支払いに充てるための資金を交付するものとしております。第五に、国は、国以外の者による特定石綿被害建設業務労働者等に対する損害賠償その他特定石綿被害建設業務労働者等に対する補償の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとしております。なお、この法律は、一部の規定を除き、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。以上が、本起草案の趣旨及び内容であります。
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○とかしき委員長 本件について発言を求められておりますので、これを許します。長妻昭君。
○長妻委員 私は、立憲民主党会派で衆議院厚生労働委員会理事の長妻昭です。ただいま委員長による趣旨説明がありました特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律案について、法案の策定に携わった立法者として発言をいたします。筆舌に尽くし難い苦しみの中でお亡くなりになった多くの方々の御冥福をお祈りするとともに、いまだ苦しみの中で闘病されている多くの方々、その御家族、関係者に心よりお見舞い申し上げます。被害者の皆様に対する迅速な救済が求められています。本法案の附則第二条について申し上げます。この附則第二条は、本法案で明確化されなかった点について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずることを政府に求める条文です。実際の条文は、「国は、国以外の者による特定石綿被害建設業務労働者等に対する損害賠償その他特定石綿被害建設業務労働者等に対する補償の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとする。」とあります。附則第二条の対象の一つは、国以外の者による損害賠償です。これは、具体的には、石綿建設材料、すなわちアスベストを含有する建材を製造あるいは販売をした者などに、損害賠償の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものです。附則第二条の対象の二つ目は、本法案の給付金の支給の対象となる期間以外の期間における特定建設業務労働者等の石綿すなわちアスベストによる健康被害に対する補償の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるというものです。附則第二条の対象の三つ目は、屋外での石綿すなわちアスベストに暴露する作業に従事した特定建設業務労働者等に対する補償の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるというものです。与党建設アスベスト対策プロジェクトチームの座長との法案策定交渉の中で、附則第二条にある「その他」には、給付金の支給の対象となる期間以外の期間における特定建設業務労働者等と、屋外での石綿すなわちアスベストに暴露する作業に従事した特定建設業務労働者等が含まれていることが確認されています。附則第二条の対象として以上に挙げた三点が含まれていることを政府は肝に銘じ、本法案にのっとって適切、迅速に対応することを強く要請します。以上です。
○とかしき委員長 以上で発言は終わりました。この際、本起草案につきまして、衆議院規則第四十八条の二の規定により、内閣の意見を聴取いたします。田村厚生労働大臣。
○田村国務大臣 衆議院厚生労働委員長提出の特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律案につきましては、政府としては異議はございません。
○とかしき委員長 お諮りいたします。お手元に配付いたしております草案を特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律案の成案とし、これを委員会提出の法律案と決するに賛成の諸君の起立を求めます。
〔賛成者起立〕
○とかしき委員長 起立総員。よって、そのように決しました。なお、本法律案の提出手続等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○とかしき委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。大臣は御退席いただいて結構です。ありがとうございます。