2022年3月16日 衆院厚生労働委員会 失業給付水準あげよ
配付資料 出典:第201回国会 雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(抄)
宮本徹議員は16日の衆院厚生労働委員会で、ハローワークの求人賃金が上昇しているデータを示し、失業給付の水準を引き上げるよう強く主張しました。
政府は2003年の法改正で、再就職後の賃金との逆転現象を解消するとして給付水準を引き下げました。ところが、厚生労働省の田中誠二職業安定局長は、宮本氏の質問に、毎年の給付水準を決める際、再就職後の賃金との比較を行っていないと認めました。
宮本氏は、東京の求人賃金額は03年と22年の比較では下限額で1万8千円、上限額で3万7千円上がっているとし、「現場の実態に合わせて引き上げるのが当然だ」と迫りました。
20年の雇用保険法改定の際の附帯決議に反するのではないかと追及。後藤茂之厚生労働相は「定率負担とは別枠で機動的に国庫負担繰り入れができる仕組みの常設化を行う。過去の附帯決議の趣旨も踏まえたものだ」と強調しました。
17日の衆院本会議で雇用保険法改正案が賛成多数で可決されました。日本共産党などが反対しました。
以上2022年3月18日付赤旗日刊紙より抜粋
≪2022年3月16日 第208回衆院厚生労働委員会第7号 議事録≫
○橋本委員長 次に、宮本徹君。
○宮本(徹)委員 日本共産党の宮本徹です。先週の続きです。二〇〇三年に引き下げられた失業給付について、国庫負担を四分の一に戻せば、一人当たり月三・五万円増やせる、このことが答弁で分かったわけでございます。先週の質疑では、大臣は、失業給付の目的は、生活の安定だけではなくて早期の就職の促進、こう答弁されました。また、局長は、再就職後の賃金と失業給付の比較において、就職をちゅうちょするような高いレベルになりますと、失業が長期化する弊害がある、こうお述べになりました。この答弁を聞いた方からいろいろな意見が来ました。失業給付の水準が低いと、生活のために、労働条件が悪くても非正規であっても急いで職に就かなきゃいけないんだ、ブラック企業がはびこる一因にもなっているんじゃないか、実態を分かっているのか、こういう声が寄せられました。そのことを踏まえて質問させていただきますが、毎回、失業給付、基本手当の日額の上限を決める際に、再就職後の賃金と失業給付の比較、これは何の指標で行っているんですか。
○田中政府参考人 雇用保険の基本手当日額については、離職前賃金を基に算出されますけれども、再就職賃金額の水準のバランスを考慮する観点から、上限を設けております。この一定の上限につきましては、賃金構造基本統計調査を基にして、その一定水準を基準として定めているところでございます。
○宮本(徹)委員 それでは再就職後の賃金というのは分かるんですか。
○田中政府参考人 基本的には、労働市場全体の賃金構造を示す賃金構造基本統計調査を踏まえておりますので、そういう意味では、全体の賃金水準ということになります。
○宮本(徹)委員 全体の賃金水準で決めているということで、前回の答弁では、再就職後の賃金と失業給付の比較を行っているかのような答弁だったわけですけれども、そういう比較はやっていないわけですね。先週の答弁は何の根拠もないんじゃないかと思います。その上で、もう一点お伺いしますけれども、これは東京を例に教えていただきたいんですけれども、ハローワークの求人の賃金の下限額、上限額は、給付水準が引き下げられる前の二〇〇三年と二〇二二年を比較するとどうなっていますか。
○田中政府参考人 東京労働局では、二〇〇八年六月から二〇二二年一月までのハローワークにおける求人票の所定内賃金の上限、下限の平均値を公表しております。それによりますと、常用フルタイムの月給の所定内賃金は、二〇〇八年六月の上限が二十九・五万円、下限が二十・八万円、二〇二二年一月の上限が三十一・一万円、下限が二十二・六万円となっております。
○宮本(徹)委員 二〇〇三年のものは残っていないですか。
○田中政府参考人 はい、残っておりません。
○宮本(徹)委員 ちょっと、二〇〇三年のものがないというのも驚きなわけですけれども。二〇〇八年と二〇二二年の比較でも、今のお話では、ハローワークの求人の賃金は上限も下限も上がっているわけです。求人賃金の下限は、約一万八千円ぐらいですかね、一万八千円余りですかね、上がっているということになります。ちなみに、二〇〇三年について、法改悪されたときの国会の議事録を見ましたら、私どもの先輩議員が二〇〇三年一月の求人賃金を紹介しているくだりがありました。国会に一番近いハローワーク飯田橋で、都内の四十五歳以上の求人賃金の下限は二十万七千三百五十円、上限は二十八万一千五百二十二円と。先ほど、二〇〇八年の数字よりやや低いわけですね。そうすると、二〇〇三年のときから比べても、今、求人賃金というのは上限も下限も上がってきているというのは間違いないわけですね。かなり上がっているわけですよ。そういうことを踏まえると、政府が再就職賃金と失業給付を比較して逆転しないように決めたという水準なわけですね、今までの。ですけれども、これは、その政府の論理からいっても、二〇〇三年に比べて求人賃金が上がっているんですから、失業給付の基本手当を引き上げてもいいじゃないですか。一・八万円下限が上がっているんだったら、一・八万円失業給付を月で引き上げても逆転は起きないんじゃないですか。違いますかね。
○田中政府参考人 賃金の実勢を雇用保険の給付に反映する仕組みとして、毎年八月に、毎月勤労統計調査による賃金の変化率に応じて上限額等のスライドを行う仕組みとなっております。そういう意味で、労働市場における賃金の変化については、こういうスライドの制度を通じて雇用保険の給付額に反映されていると考えております。
○宮本(徹)委員 しかし、それよりも実際は、求人賃金の方は上がっているわけですよ。この間の、先週来の局長や大臣の答弁を踏まえれば、私は当然、求人賃金が上がっているんだから、再就職賃金との逆転をしないようにするという皆さんの口実からいっても、失業給付は実際の現場のに合わせて引き上げるのが当然のことだと思いますよ。これ以上答弁を求めても答弁は変わらなさそうですけれども、大臣、是非よく考えてください、ここは。二〇〇三年の法律を変えたときの言い分の状況と、実際は、再就職賃金、ハローワークの求人の賃金自体が変わって引き上がってきているわけですから、今までの、前回の答弁は全く成り立たないということだけ申し上げておきたいと思います。その上で、もう一点大臣にお伺いしたいことがございます。昨日、参考人質疑で、連合の冨高参考人から国会の附帯決議についての指摘がございました。私も今日改めて配りましたけれども、この附帯決議、連合さんからも配られておりました。大臣にお伺いしたいのは、二年前この附帯決議に大臣御自身が賛成された際、国庫負担率について、四十分の一の時限措置を本則に格上げするということが含まれるという認識でこれに賛成されましたか。
○後藤国務大臣 令和二年の雇用保険法の改正の際は、コロナ前の雇用情勢等を踏まえまして、国庫負担の暫定措置の延長を行うことに関して国会での議論が行われたものと考えております。私も確かにここに座っておりました。その後、コロナ禍における多額の財政支出に対応するために、雇用保険臨時特例法において、定率負担とは別の一般会計による国庫繰入規定を創設したところであります。そして、今年度の補正予算においては、この規定に基づいて約二・二兆円の繰入れを実施したところであります。今般の法案においては、こういった経緯も踏まえて、失業等給付の国庫負担については、雇用情勢及び雇用保険財政の状況に応じて負担割合を四分の一又は四十分の一とした上で、こうした定率の負担とは別枠で機動的に国庫繰入れができる仕組みの常設化を行うこととしたものであります。こうした見直しは、過去の附帯決議等の趣旨も踏まえつつ、雇用情勢や雇用保険財政の状況に応じて機動的な財政運営を可能とする仕組みを通じて、国の雇用政策に係る責任を果たし、雇用保険財政の安定化を図ることを目的とするものであると考えております。
○宮本(徹)委員 附帯決議の趣旨を踏まえていないから、連合さんも私も、こうやってこの附帯決議を配っているわけですよ。もう一度確認しますけれども、大臣が二年前賛成されたとき、国庫負担割合四十分の一を本則にするというのが含まれるなんて認識はなかったんじゃないですか。
○後藤国務大臣 今回の法律においては、四分の一、四十分の一、そして定率の負担とは別枠の機動的に国庫繰入れができる仕組みの常設化、この全体をもって原則と考えているということであります。
○宮本(徹)委員 もう一度お伺いしますよ。二年前に大臣が附帯決議に賛成した際、国庫負担率について、四十分の一の時限措置を本則に格上げするということが含まれると思っていましたかということを聞いています。
○後藤国務大臣 先ほどから申し上げたことの繰り返しになりますけれども、コロナ禍における多額の財政支出に対応するために、雇用保険臨時特例法において、定率負担とは別の一般会計による国庫繰入規定を創設したところでありまして、今年度の補正予算においては、まさにこの規定に基づいて約二・二兆円の繰入れを実施したところであります。今般の法案においては、こういった経緯も踏まえて、失業等給付の国庫負担については、雇用情勢及び雇用保険財政の状況に応じて負担割合を四分の一又は四十分の一とした上で、こうした定率の負担とは別枠で機動的に国庫繰入れができる仕組みの常設化を行うこととしたということで、こうした見直しは、過去の附帯決議等の趣旨も踏まえているということで、雇用保険財政の安定化を図ることを目的とするものでございます。
○宮本(徹)委員 私の質問に決してお答えにならないわけですね。趣旨は踏まえているなんて誰も思わないですよ、今回の法改正は。だから、雇用保険部会でも、四分の一に戻しなさいという意見が何度も何度も繰り返し出たわけでございます。本当に、もう時間がないのでこれで私の質問を終わらせていただきますけれども、質問時間、全く足りないですよ。全く足りない。そして、大臣も、こういう法案は本当に、少なくとも、附帯決議違反で申し訳ないぐらい言わなきゃまずいと思いますよ。そのことを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。